「ね、タカヒロ、こっち来て」
「?」
「もっとこっち」

アルファはそう言ってタカヒロの手を引っ張り、引き寄せると、自分から彼の唇に唇を重ねた。

「ん……」

いきなりキスされてタカヒロは驚いたようだったが、そのままアルファに任せている。
彼をさらに驚かせたのは、アルファの舌がタカヒロの唇を割り、彼の咥内に侵入してきたからである。
さすがにアルファを押しやって離れ、呆然と彼女を見ていた。
アルファはそんなタカヒロの瞳を覗き込むようにして言った。

「びっくりした? ……これが「おとなのキス」、なんだって……」
「……」
「あ、もしかして初めて? ファーストキスだった?」
「え……、あ、いや、ち、違う、けど……」
「あ……、そうなんだ」

アルファは少し拍子抜けしたようにそう言ったが、すぐにまた薄く微笑む。

「なーんだ、初めてじゃなかったんだ。相手は? あ、マッキちゃん?」
「ん……まあ……」
「そっか。でも、こういうのは初めてだよね?」
「うん……」
「ん。よし、じゃ、もう一回」

アルファは再びタカヒロを抱き寄せ、唇を合わせた。
今度はタカヒロも抵抗せず、自らもアルファの背に腕を回して抱いた。
両者の唇の隙間から「んっ」「ふっ」と言った声が少し漏れ出ている。
咥内では、遠慮がちで恥ずかしげにふたりの舌が絡み合っていた。
まだ互いの口腔を舌で愛撫し合い、咥内粘膜を刺激するような技巧など持ち合わせているはずもなく、ぎこちなさそうにキスを交わしていくのだった。

(……やっぱり、何も来ないな……)

タカヒロの舌を感じながらアルファはそう思った。

ロボット同士の場合、舌同士──正確には粘膜であればどこでもいいらしい──を接触させることにより、メッセージだけでなくイメージも伝えられる。
言葉や文章に限らず、一種3DのVR的な映像を脳裏に再生することが可能だ。

ただ、これはあくまでロボット間で出来ることであって、相手が人間では不可能とされている。
それはそうで、ロボットは粘膜からデータを受信し、あるいは発信する能力を備えているが、人間の側にはそのどちらの能力もないのだから。
しかし、これは気のせい、アルファの思い込みなのかも知れないが、タカヒロの舌からは、彼の純粋な好意と熱意を感じ取れたような気がした。

どちらからともなく口を離すと目が合ってしまい、ふたりは照れくさそうに笑った。
そしてアルファは、ちょっと躊躇してから聞きにくそうに言った。

「タカヒロ……、初めて?」
「え?」
「だから……、あの、その……」

すぐに察したタカヒロは、やや俯いて答える。

「うん……。初めて」
「……会社の人たちと、その、そういうところとか、行かないの?」
「何度か誘われたけど……うん、何となく、ね……そ、それにけっこう高いんだって、そういうの……」
「……そっか。じゃ、あの……」

マッキとはなかったのかと聞こうと思ったのだが、これはいかにアルファでも踏み込みすぎというものだろう。
タカヒロのことは何でも知っておきたい気持ちもあるが、アルファと同じように彼には彼のプライベートがあり、すべてをさらけ出して良いものではないのだ。
でも、恐らくマッキとはまだ身体の関係まで至っていないのだろう。
タカヒロはともかく、マッキの方がまだ女性として成熟していないこともあるに違いない。
どちらかというとマッキの方が積極的なのかも知れないが、タカヒロが気を使っているように見えた。
ということは、マッキとはまだ軽いキスだけの関係だということになる。
アルファは、何となく嬉しくなってしまう。
タカヒロのことは大好きだし、タカヒロも自分に好意を持っていることは知っている。

だが──、ロボットと人の関係である。
どんなに愛し合おうとも、人同士の結びつきには及ばなかった。
タカヒロ自身、アルファを女性として意識するよりは、仲の良いお姉さん的な意味合いの方が強かった。
淡い恋心を抱いたことがなかったわけではないが、それも一過性のものである。

アルファだってタカヒロに「男」を感じるよりは「保護者のひとり」としての思いが大きかったに違いない。
「可愛い年下の男の子」であり「弟」のような存在。
だから、恋人だの結婚だのという心情はわからないでもないが、あまり現実的ではなかったのだ。

それでも、少なくともこの瞬間だけは、将来、タカヒロのパートナーになるであろうマッキよりも自分の方がタカヒロに近い場所にいるのは事実だ。
そのことがロボットであるアルファに、くすぐったいような微笑ましいような、ささやかな優越感を感じさせていた。
するとタカヒロが急に顔を上げ、逆に聞いてくる。

「じゃ、アルファは? アルファは誰か男の人と、その……」
「……どう思う?」
「……」

わからなかった。
考えたこともなかったのだ。
何度も言っているように、タカヒロはアルファと「セックス」を結びつけて考えたことなどなかった。
だから疑問すら湧かなかったのだ。
幼い頃はもちろん、長じてからもアルファに「女」を感じ取ることはあっても、あまり「性」とは関連づけなかった。
今日、この場になって初めて「そう言えば」と思ったわけだ。
アルファは少しタカヒロから目線を外して、小さく言った。

「……ある、よ……」
「……」
「ふふ、ガッカリした?」
「いや……、そんなことはないけど」

そう返事はしたが、少しだけショックを受けた。
そうか、このアルファをすでに「女」として扱った男がいたんだ。
タカヒロは少しだけ妬心が出たものの、すぐに打ち消した。

彼女──アルファは、タカヒロなんぞよりも「ずっと」年上なのだ。
はっきり聞いてはいないが、多分、もうこの地に来てからも20年以上は経過しているはずだ──今の姿のままで。
その頃は今よりもずっと人がいたはずだし、ならばそういう機会が過去にあっても何ら不思議ではない。
もしかしたら「相手」はアルファにもっとも身近な男性──そうか、「オーナー」って人なのかも知れないな、と思った。

タカヒロが、まだ見たこともない初瀬野氏に思いを至らせていると、アルファが彼の手を取って言った。

「でもね」
「うん」
「私、タカヒロが「まだ」って聞いて……なんだろ、えへへ、少しだけ嬉しい、かな……」
「そうなの?」
「うん。なんかうまく説明できないけどね。それと、ちょっとだけマッキちゃんに悪いなって気もする」
「……それはオレもおんなじ。でも、さ……マッキもなんかわかってくれるような気もするんだ。これはオレの勝手な思い込みなのかも知れないけど」
「そっか……」
「あ、でも言わないいけどね」
「うふふ、その方がいいね。じゃ、私は「経験者」でタカヒロは「まだ」なんだから、ねえちゃんがちゃんと「指導」しないとね」

アルファはタカヒロの手を取り、ベッドへと導いた。
タカヒロは人形のようにギクシャクした動きで従い、ベッドに腰掛ける。
どうしたらいいのか、わからないのだ。

リードするはずのアルファも、実はよくわからない。
初めてではないが、生きてきた年数に比して経験はお話にならないほど少ないのである。
それでも、何となくそうすればいいような気がして、タカヒロを仰向けに寝かせた。

その横に両膝を突いて、そっとタカヒロの身体に指を這わせる。
手のひらがタカヒロの胸に至ると、アルファの腕が止まった。
胸が軽く弾んでいる。鼓動が激しい。

「緊張してるね、タカヒロ。胸がこんなにドキドキしてる……」
「……かも」
「だいじょぶ、心配しないで。出来るだけ私の方が……うん」
「……」

緊張はしているようだが、下半身は既に臨戦状態だ。
もう完全に勃起してピクピクと震えている。
カリは割と大きめで、まだ半分ほど包皮を被ったままだが、亀頭が苦しそうに少し顔を出していた。

「じゃ、いい? ごめんね、またちょっと触るよ」
「……あっ」

アルファの白くて少し冷たい指が優しくサオを摘むと、その感触にタカヒロが小さく呻く。
このまましごいてもらって出してもいい、とすら思えるほどに気持ち良かった。

だがアルファはそんなつもりはないらしく、少し恥ずかしそうにしながら静かにタカヒロの腰の辺りを跨いだ。
アルファは膝立ちのまま少しずつ位置を移動させ、やや腰を落とした。
そしてタカヒロの顔を見て微笑んでから、自分が持っている彼のペニスを見る。
ピンクだったそれは赤く染まり、もう今にも射精してしまいそうなほどに興奮しているのがわかった。
アルファはまた少し腰を沈め、そっと自分の膣口にそれを押し当てた。

「んっ……」
「あっ……」

アルファとタカヒロはほぼ同時に声を上げた。
両者は、互いの性器の熱さを実感している。
アルファのそこは、まだ愛撫すらされていないのにすっかり熱く濡れていたのである。

「ロボットの人」も精神的な成長はある。
経験を積むことにより、新たな感情が目覚めたり、事象に対して鋭敏になってくることは珍しくない。
この場合も、アルファはタカヒロとの「行為」を想像して、肉体的にも精神的にも普段よりずっと敏感になっているのだろう。
膣内に早くも分泌液が湧き出し、零れ出そうになっていたのもそのためだ。

「タカヒロの……んっ……あ、当たってる、私の、そこに……」
「アルファのここ……すごいあったかくて気持ち良い……ぬるぬるしてるのに……」
「そう……ね。なんでだろ、タカヒロとするんだって思ったら、何だか身体が熱くなってきたのよね」
「ア、アルファ……」
「ん?」
「もっ、もうさ……」
「……」

アルファはそこで気づいた。もうタカヒロは「したくて」たまらなくなっているのだ。
それはそうだろう、アルファはまだ完全に入れることなく、腰を少し浮かしたり、また沈めたりを繰り返しているだけだ。
あそこにペニスの先をくっつけたり離したりして、軽い刺激を与えているだけでは、タカヒロにとっては焦らされているのと同じだし、責められているような気になるだろう。
アルファは一度腰の動きを止めると、再びタカヒロのペニスを軽く指で支えて慎重に自分の膣口にあてがう。
そして、ゆっくりと腰を沈めていく。

「んっ……! く、入……る……」
「う……」

アルファは、そこに硬いものが食い込み、拡げられていく感触にわななき、タカヒロはねっとりとした熱い膣襞に自分のものが包み込まれていく感覚に呻いた。
タカヒロのものが少し挿入されていくと、その分、愛液が溢れ出してくる。
充分に濡れて受け入れ態勢を整えていたそこは、勃起した若い肉茎を難なく飲み込んでいった。
タカヒロのものはアルファのそこを押し広げつつ、狭隘な膣道をこじ開けて奥へと進んでいく。

アルファは、徐々に高まる圧迫感に小さく呻きながらも、そそり立っていた肉棒をすべて胎内に受け入れた。
アルファの腰がタカヒロの腰にくっつく。
二人は互いの体温を心地よく感じ、なおも腰を押しつけ合った。

「は、入った……ああ……タカヒロのが全部、んっ……私の中に……あ……」
「う、うん……。すごいよ、アルファ。なんか熱くて柔らかくって……き、気持ち良い……」
「わ、私も……ああ……」
「う、動いてもいい?」
「いい、よ……。でも、ゆっくりね……」

タカヒロは小さく頷くと、アルファの下で少しずつ腰を揺すっていく。
上にアルファが乗っているから思うようには動けないし、ほとんど抜き差しは出来ない。
が、アルファの胎内に収まったペニスは内部をかき回すように蠢いた。

「うっ……、ああ……」

アルファは小声で恥ずかしそうに呻きながら、自分でも小刻みに腰を動かしている。
その裸身は少しずつピンク色に染まり始め、タカヒロが繰り出してくる快楽を受け止めていた。

「んっ……あ……い、いい……タカヒロ……いいよ……ああ……」
「おっ、オレも……すごくいい……くっ、だんだんアルファのが締まってきた……くっ……」

タカヒロは初体験だし、アルファも実のところ二度目の行為だから、動きはかなりぎこちない。
それでも本能的に気持ち良いところがわかるのか、動きにくそうにしているタカヒロの上でアルファは腰を円回転させている。
そうすることで膣と男根の摩擦を増やし、両者への快感を昂ぶらせていった。
動きも少しずつ大胆に、そして大きくなっていく。

「いっ……あ……いい……」
「くっ……アルファっ……」
「あっ!?」

アルファが甲高い悲鳴を放った。
あまりの心地よさに我慢できず、タカヒロがアルファの乳房を触ってきたのだ。
アルファが腰を振るたびに、その乳房が扇情的にゆさゆさと揺れ動いていたのだから、それも無理はない。
男なら誰だって「触ってみたい、揉んでみたい」と思うだろう。
そのタカヒロの指先が、たまたま乳首を擦っていたのだ。
その鋭い快感に、アルファはたまらず喘いでしまったのである。
タカヒロはアルファの声にびっくりしてすぐに手を離し、そして申し訳なさそうに謝った。

「ご、ごめん……痛かったの?」
「あ……、ち、違うの、痛くないから……」

乳首はもうすっかり硬くなっていたから確かに少し痛かったのだが、それよりも突き抜けるような快感にびっくりして声を上げていたのだ。
まさか、ここがそんなに気持ち良いとは思わなかった。
初めての時は、何が何だかわからなかったし、何より恥ずかしさの方が先に立ってしまい、実際の行為自体はあまりよく憶えていなかった。
ただ、気持ち良かったのは事実だし、抱かれていることで相手に対する愛情がより高まったことだけは実感していた。

アルファにはいわゆる「生理」はないから、乳房が張ったり乳首が硬くなったり、ということはあまりない。
全然ないわけではないが、今まではほとんどなかった。
だから乳首が痛いくらいに硬くなったり、そこを嬲られると背中が痺れるほどの気持ち良さがあることなどは今回初めて知ったのである。
タカヒロも、アルファの反応が「苦痛」などではなく「快楽」によるものだと覚り、両手を伸ばして左右に乳房を同時に揉み込んだ。

「ああっ」

今度ははっきりとした愛撫となり、アルファも思わず声を放った。
まだ技巧も駆け引きもない、ただ闇雲に自分の欲望の任せた愛撫なのに、なぜかアルファは強く反応した。
それは、めちゃくちゃに揉みしだいているだけのように見えるが、タカヒロなりに気遣って揉んでいることがわかったからだ。
アルファが痛くないようにと、爪を立てないよう、握りしめるような強い力で責めてくることはなかった。
それに気づいたアルファはタカヒロに対する愛おしさが増し、彼から受ける快感もより強くなっていった。

「あっ、ああっ……タ、タカヒロっ……んんっ……お、おっぱいばっかり……ああっ!」
「痛くない? 気持ち良い?」
「んんっ……い、たくないわ、ああ……気持ち、良い……ああ……」

アルファはさらにぐりぐりと腰を押しつけてくる。
快感のあまりの反応だが、同時に膣も強く引き絞られてくる。
膣の圧迫が強まって、タカヒロも上擦ったような声を上げた。

タカヒロの上に乗っているアルファの動きに変化が出てきている。
それまで腰をただ押しつけるだけだったのが、次第に上下運動となり、リズミカルになってきた。
タカヒロもその締めつけに応じて亀頭がググッと大きく膨らんでくるのを実感しながら、腰を何度も突き上げた。
もともと狭かったアルファの膣道は、さらに大きくなったタカヒロのペニスでぎちぎちになっている。
まだ幼いカリの部分が膣癖の粘膜を擦りつけ、アルファの快楽の喘ぎも大きくなっていった。

「あっ、あっ、タカヒロっ……いいっ……あっ……」
「あ、あ、アルファ、オレ、もうっ……」
「ああっ!」

もうどうにならなかった。
アルファの悩ましい表情と喘ぎ声を耳にしたタカヒロは、両手で彼女の腰をしっかり掴むと、そのまま何度か突き上げて、呆気なく射精してしまった。

「くうっ……」
「んああっ……」

タカヒロは呻きながら腰を小さく震わせ、ペニスをしゃくり上げるようにして射精している。
その体液の飛沫を膣の奥に浴びるたびに、アルファは小声で「あっ」「あっ」と喘ぎ、痙攣した。

タカヒロが精を放ち終えると、アルファはがっくりと彼の上に倒れ込んだ。
身体を抱くように覆い被さってきたアルファは、小さく身体を震わせながらタカヒロの耳元で喘いでいる。
たまらずタカヒロはアルファの顔を自分に向けると、そのまま激しく口を吸った。

「んんっ……」

アルファは少し驚いたようだが、素直に彼の欲望に従って舌を吸わせている。
舌を根本から引き抜くほどに強く吸い上げるだけの若く青いディープキスだが、それすらアルファには心地よく思えた。

「あ……」

口を離すと、タカヒロはまたアルファの身体をまさぐり出している。
アルファの臀部にはタカヒロの左手が這い回っている。ふたりの身体の間で柔らかく潰されてはみ出ていた乳房は、タカヒロの右手がゆっくりと揉み、撫でていた。

「ああ……、タカヒロの……私の中でまたおっきくなってるよ……」
「うん……、まだ出来そうなんだ……いい?」
「うふふ……、元気だね。そっか、若いんだもんね……。あっ……、私の中でもうこんなに硬くなってる……あ、すご……また大きく膨らんだ……」
「アルファ……、今度はオレが上で動いていい?」
「そうしたいの?」
「うん……」
「わかった……。いいよ」

アルファは頷いてタカヒロから離れると、起き上がったタカヒロはすぐにアルファを押し倒した。
どすんとベッドにお尻から落ちてアルファが驚いたように声を上げる。

「きゃっ……!」
「あ、ごめん……、なんか我慢できなくって」

タカヒロはすぐにそう謝ったが、またロボットのしなやかな女体をまさぐり出す。
身体を重ね、乳房を優しく揉み上げ、唇と舌で白く美しい首筋を愛撫した。

「ああ……」

タカヒロの舌が首筋を舐め、唇が鎖骨を軽く吸うと、アルファはクッと顔を仰け反らせて喘いだ。
その綺麗な顎のラインにもタカヒロの唇が這っていく。

官能に震えるアルファの美貌を見ながら、タカヒロは改めて彼女の身体の美しさを確認する。
特に今、口で愛撫している首筋辺りの美しさは特筆ものだと思う。
アルファは、その肢体の美麗さに反して、あまり肌を露出したりボディラインを強調するようなファッションはしなかった。
そうすることが嫌いなわけではなく単に無頓着だっただけなのだが、短いスカート履いたり、タンクトップ姿になることもあまりなかった(どうも彼女はスカートよりも、長短は問わずパンツの方が好みだったようだ)。

それだけに、たまにミニを履いたり、腕や肩が露出するような服装をしているのを見ると、タカヒロはドキンとしたものだった。
素直に伸びた長い脚や、見ているだけで滑らかそうなのがわかる肌を惜しげもなく晒すアルファからは清純な色気が発散していた。
少年にとっては些か「目の毒」だったかも知れない。

そんな中で、服装にもよるが首や鎖骨の辺りは割とよく見えていたから、余計にそこが気になっていたのだった。
アルファの身体から薫ってくる薄甘い香りもたまらなかった。
アルファの控え目な喘ぎ声や時折ピクンと反応する愛らしさを見ているだけで、タカヒロの男根はすっかり射精前と変わらない姿になっていく。
それがお腹や腿に押し当てられているのを知り、アルファは困惑し、恥ずかしさに顔を染めながら言った。

「タカヒロのが当たってる……おっきくなったね……。もう大丈夫?」
「うん……。じゃ、いい?」
「ん……」

タカヒロは上からアルファの股間をじっと見つめている。
まだ先ほどの快楽の余韻が残っているアルファの裸身はほのかに染まり、その肌や裸身を見ているだけでタカヒロの肉欲を強烈なまでに刺激した。
肝心の性器も肉の合わせ目を綻ばせ、その内部を露わにしている。
さっきまでタカヒロのペニスを飲み込んでいたそこはウソみたいに収縮していた。
それでも完全に口を閉じてはおらず、僅かに開けた小さな性孔からは、とろりとした粘液を零している。
アルファとタカヒロの体液がミックスされたそれは、この上なく淫らな欲情を醸しだしている。
彼の視線に気づいたアルファは、腕でタカヒロを押し返すようにして言った。

「あ、あんまり見ないでってば……あ、恥ずかしいんだから……。身体を見られるだけでも恥ずかしいのに、そんなところをじっくり見るなんて……」

決して見られてはならないところを、こんな間近から観察されるように凝視されている。
それだけでも消えてしまいそうなほどの羞恥心を覚えるのに、見ているのはあのタカヒロなのだ。
アルファはいたたまれないような恥ずかしさで身体を捩り、タカヒロの目から逃れようとする。
タカヒロはその動きを封じるようにアルファの腕を上から押さえつけ、両腿の間に膝を潜り込ませてそこを開かせた。
アルファはむずかるように身を捩り、腿を閉じようとしたが、もうこの格好ではどうにもならない。
なのに、なぜかアルファは少し微笑んで見せた。

「……これじゃ私、動けないわ……。私をどうしたいの、タカヒロ」
「抱きたい……」
「もう私は動けないんだから、タカヒロがして。好きにしていいから……」
「うん……」

もうタカヒロのペニスは張り詰めるだけ張り詰めていた。
これが単に「二度目のセックス」というだけなら、ここまでにならなかったかも知れない。
一度終えた後の行為や会話、アルファとのやりとりがタカヒロの興奮をより高めていたのだ。

もうすっかり包皮は剥かれて鈴口が顔を出しており、そこからはねっとりとしたカウパーと精液の混じったものが滴り落ちていた。
タカヒロはアルファを意識してそこからなるべく目を離し、そして彼女の脚に手を掛けると大きく割り開いた。

アルファは黙ってされるがままになっている。
震える手を自分の股間へ持っていき、指でそこを開いて見せた。
死ぬほど恥ずかしい行為だが、そうでもしないとタカヒロがうまく出来ないかも知れないと思ったからだ。
アルファのサポートを受けて、タカヒロは蕩けきっている媚肉に亀頭の先を持っていき、少しずつ押し込んでみる。
途端にアルファは「くっ」と声を上げ、仰け反った。

「んっ……入る……また入って……くるっ……あ、硬い……中に……ああっ!」

タカヒロの男根がアルファの狭い膣をこじ開け、そこの粘膜に粘り着かれながらも奥へと突き進めていった。
狭いが充分に潤っていて、挿入に支障はない。
ぬめぬめとした柔らかい、そして熱を持った粘膜がペニス全体を覆い尽くし、優しく包み込んだ。

「んっ……んうう……くうっ……ま、まだ入ってくるね……ああ、深いよ……あっ……」

膨れあがったカリが襞の全周を擦るようにして奥へ入り込み、ズシッとばかりにいちばん深いところまで入った。

「んあ!」

肉棒の先端がコツンと最奥にぶち当たると、アルファは全身をぶるっとわななかせて大きく喘いだ。
タカヒロの「もの」は人並み以上に大きいとか、もうおとなサイズだとか、そういうことはない。
至って平均的な大きさなのだが、それでも楽に底まで来るということは、アルファの膣道が短く浅いということなのかも知れない。
アルファは「はあっ」と深く熱い息を吐きながら言った。

「すご……。奥まで届いてる……ああ……男らしいよ、タカヒロ……んっ」

そうつぶやくアルファの口を、またタカヒロがキスで塞ぐ。
今度は焦ることなく、舌を絡め合っている。
ぎこちないことに違いはないが、それでも互いに気遣い、配慮し合って、舌で咥内を愛撫し、唇を吸っている。

しばらくキスされていると、アルファの顔がとろんとしてきた。
頭がボーッとしてくる。
もう「何をされてもいい」と、そんな気すらしてきた。

いつの間にかタカヒロはアルファの中を突き始めていた。
腰を振り、まるでアルファのそこをペニスで耕すかのように突き込んでいる。
ぬっ、ぬっと粘ったような水音が響き、肉棒が深々とアルファの媚肉を抉り込んだ。
そのたびにアルファは「あっ」とか「んっ」とか、声を洩らしている。
気持ち良いらしいのだが、その声を出すのが恥ずかしいようで、必死に口を閉じようとしている。
それでも突き込まれると、つい「ああっ」と喘いでしまい、慌てて口を押さえている。
それでも鼻からも「んんっ」と息が漏れ、もう、どうにも隠しようがなくなってきていた。
たまらずアルファはタカヒロに言う。

「あっ……、も、もうちょっと優しく……ああっ……ゆ、ゆっくりして……あっ……」
「でっ、でもっ……くっ……腰が……腰が止まらないんだよ、アルファっ」

そう叫ぶようにタカヒロは言うと、動きを抑えるどころか一層に強く責め立てていく。
アルファは甲高い声を上げて喘ぎ、何度も何度も身体を捩った。

「いっ、ああっ! お、奥っ……んんっ、深いっ……タ、タカヒロ、待って……うあっ……!」

アルファの痴態はより露わとなっていき、白かった肌はすっかり薄赤くなっている。
責めるタカヒロの側も、額に汗を光らせ、息を弾ませていた。

そこでタカヒロがふと気づいた。
アルファはほとんど汗をかいていない。
間違いなく快感は得ているようだし、興奮もしているし、呼吸も激しくなっていると思うのだが、タカヒロのように汗を滲ませるほどではないのだ。
そこでタカヒロは改めてアルファは人間ではないんだ、と認識した。
ロボットもほとんど人間と同じ構造だと聞いている。
だから体温調整のために汗もかくらしい。
しかし人のそれよりは遥かに効率が良いのか、汗みどろになるようなことはないのだろう。

でもタカヒロはほとんど違和感なくアルファを抱いている。
もともと「ロボットの人」を差別的に見ることはまったくなかったし、彼女をロボットだと意識することもほとんどなかった。
だから今もそんなことはまったく気にならず、ただ「好きだった女性」を抱いているという感覚しかない。

そのうち、ただ腰を揺するだけでは満足できなくなったタカヒロは、目の前で妖しく揺れ動く乳房に魅了された。
突き上げるごとにゆさっと弾む胸肉は酷く扇情的に思え、タカヒロは手を拡げて両方の乳房を鷲掴みにした。
柔らかい肉塊に指が食い込む感覚、そしてその手が可愛いタカヒロのものだと思うだけで、アルファのそこは熱く濡れてくるのが止まらなかった。

「んんっ、い、いきなり強く揉んじゃ……ああっ」
「ご、ごめん! 痛い?」
「い、たくはない、けど……ああ……」
「……感じるの?」
「……そういうこと、聞かないの。恥ずかしいんだから……」
「でも、知りたい……」
「……」

アルファは困ったような表情になったが、すぐに「うん……」と小さく、そして恥ずかしそうに頷いた。
それに気を良くしたタカヒロにまた乳房を揉まれると、うっとりとした表情を浮かべ、その愛撫に身を委ねる。

「ああ……、いいわ、タカヒロ……」
「オ、オレも……ア、アルファの中、急にまたきつくなってきた……」
「き、気持ち良いから……ああ……ち、力が入っちゃう……あっ……」

アルファの反応が生々しくなるにつれ、タカヒロの愛撫にも熱が籠もってくる。
乳房をこねくるように揉みしだくだけでなく、ぷくんと膨らんでいた乳首にも目を着けた。
そこは、アルファが痙攣するたびにビクッとと踊り、わなわなと震えている。

タカヒロはそこに手のひらを押し当て、転がすように手を動かした。
心地よいのか、アルファは「ああ……」と呻き、背を反って胸をタカヒロの手に押しつけてくる。
タカヒロもだんだんコツがわかってきたのか、今度は乳輪を指で摘んで乳首を括り出すようなこともしている。
絞り出された乳首を唇に含み、舌で転がすと、アルファは恥ずかし気もなく大きな声で喘いだ。

「ああっ、いいっ……んんっ、そ、そこ、あっ……い、いい……あ、吸っちゃ……ああっ!」

もうメリハリを付けて責めることも覚えてきたのか、タカヒロは乳房を鷲掴みにしてわしわしと強く揉み込んだかと思うと、全体を柔らかくたぷたぷと揉みほぐしたりしている。
中でもやはりアルファの反応がいちばん強いのは乳首のようだった。
そこは唇や舌で責めても、指で転がしたり擦ったりしても、どちらの愛撫にも激しく反応している。
無論それだけではなく、腰も動かしてアルファを突き込んでいる。
乳房をいじくりつつも、しっかり腰を打ち込んでその媚肉を抉り、深くまで貫いた。

「あっ、ああっ……タカヒロ、あっ……いいっ……」
「アルファっ……オレも気持ち良いっ……くっ……」

ふたりはもうリズムを合わせて腰を振り始めている。
タカヒロが上から打ち込めばアルファはしっかりと受け止め、彼が腰を引けば追いかけるようにして腰を持ち上げた。
息遣いも荒く、タカヒロの突き込みも、強く深いものから素早く浅いパターンに変化してきていた。
アルファの声も上擦り、裸身は仰け反りっぱなしである。
ふたりとも、もう昇り詰める直前なのだ。

「たっ、タカヒロっ……私っ、もうっ……」
「アルファっ、オレもう……で、出ちゃう、また出ちゃうよっ……」

濡れ濡れになった媚肉には、何度も何度もタカヒロのペニスが抜き差しされている。
そのたびにアルファの腰がベッドのマットレスに食い込んでいた。
アルファはもう口を開けっ放しで喘ぎ、激しく息をしている。

「あっ、あうっ……くうっ、当たるっ……奥に硬いの……タカヒロのが当たって……くあっ、すごっ……ああ、もうっ……」
「きついよ、アルファっ……そんなに締めつけたらオレも、もう……くっ」

最後の踏ん張りとばかりに、タカヒロは歯を食いしばって腰を打ち込んだ。
もう一回出してしまっているが、今度はアルファをいかせてから出したいと思った。
変なプライドだが、男にはやはりそうしたメンタルがある。

ひくつくアルファの媚肉を繰り返し何度も激しく突いた。
快楽の海に押し流されているアルファは、タカヒロの男根に貫かれるごとに膣から愛液を分泌させ、腰をうねらせた。

「もうっ、だめっ……タカヒロもっ……ああっ」
「で、出るっ……我慢できないよっ……」

そう言いながらも激しく打ち込んでくる腰に、アルファが長い脚を絡めていく。
ぎゅっと脚で締めつけ、タカヒロの腰を思い切り引き寄せた。
膣内の襞だけでなく、膣口までが強くタカヒロを食い締め、蠢動し、射精を促している。
アルファが腰を持ち上げてタカヒロの腰に密着させると、タカヒロも全体重を掛けるようにして抑え込んだ。

「ああっ!」
「アルファっ!」

その瞬間、ふたりの裸身が大きく跳ねた。

びゅるるっ、どびゅっ。
どびゅっ、びゅくくっ。

激しく射精が始まると、タカヒロの腰はぶるるっと激しく痙攣し、尻たぶに大きな窪みを作った。
そのまま何度も反り返り、唸りながら腰を押しつけている。
アルファは最奥に熱い精液の濁流を感じ取り、これも背中を弓なりにさせて絶頂した。

「あ、あはっ……はあ、はあ……んん……あ……はあ……はあ……はあ……」

アルファは美しい顔に恍惚の色を浮かべ、身体を痙攣させたままだ。
タカヒロの方も、一滴も残さず注ぎ込もうとでもいうのか、何度も繰り返し細かく腰を打ち込んでいる。

どぴゅっ。びゅっ。
どくっ、どくっ。
びゅるるっ。

ようやく全部出し終わったのか、タカヒロはアルファの身体の上にもたれかかった。
アルファも、絶頂した快楽の山を越えたらしく、ぐたりと脱力している。
時々、ぶるっと小さく痙攣しているのが生々しかった。

「……」

アルファは、そっとタカヒロを抱きしめ、その背中を撫でている。
手を伸ばし、額の端に滴っている汗を指で拭き取ってやった。
乳房が、汗にまみれた彼の胸に押し潰れされている感覚が心地よかった。

タカヒロはいつしかアルファの胸の谷間に顔を埋めている。
アルファは、さっきまでの獣じみたようなセックスとは打って変わり、甘えるような仕草を見せるタカヒロを見て何だかおかしくなり、クスリと笑った。

(こういうところは、まだまだ子供なんだ……)

微笑ましいと同時に、なんだか少し安心もした。
だが、タカヒロだけでなく男というのは誰でもこういうところがあるのかも知れない。
経験のほとんどないアルファにはわからなかったが、何だかそんな気がしていた。

「アルファ……」

突然に話しかけられ、アルファは現実に戻ってくる。

「あ、なに?」
「……しばらく……」
「ん?」
「しばらく、こうしてていい?」
「……いいよ。朝までずっとこうしててあげる。ずっと抱き合って寝よっか」
「……うん」

タカヒロは顔を見せてくれなかったが、真っ赤になっているだろうことは想像できた。
そして、きっと安堵の表情を浮かべていることだろう。
アルファは、そんな「弟」の頭をそっと撫で、彼の顔に頬を擦りつけた。



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