04.A little prayer for you

「 ・・・あ!おはよーさんっ。昨夜はよく眠れ・・・って、うおッ!? 」

「 おお、起きたか。疲れていたようだが大丈・・・っ!! 」

「 殿!おはようございまする!よい朝でござ・・・・・・ 」



朝の鍛練を終えて、お風呂から出たばかりの彼に抱きつけば、その身体が瞬間的に凍りつく。 それでも私は・・・飛び込まずには、いられなかったのだ。



「 幸村くん、幸村くん・・・本当に、ありがとうっ!! 」



私の声を聞きつけてか、少し離れた場所で、お館様と佐助さんが伺うようにこちらを見ている。 『 旦那、頑張って! 』と、佐助さんの小声( ではなかったけど )を背に受けて、 彼がぎこちなく身動ぎした。 動いた気配に見上げると・・・耳から首元まで真っ赤になった、半裸の幸村くんがいた。 こ、こんなに赤くなるとは思わなかったので・・・ちょ、ちょっと、びっくりしていると ( というか、やっぱりまずかった!?・・・よね ) 幸村くんが必死に笑顔を作ろうとしているのが、わかった。そして・・・。



「 ゆ、き・・・・・・きゃあああ! 」
「 わあ、旦那あーっ!廊下で、ちゃん襲うのは・・・!! 」



前のめりに倒れた身体の下敷きになって呻き声を上げていると、お館様に引っ張り出された。 倒れたままの幸村くんを見て、・・・佐助さんが苦笑する。



「 ・・・ちゃんに抱きつかれて、伸びちゃったみたい 」



破廉恥でござるぅ・・・と寝言のように呟く幸村くんに、私とお館様も肩を揺らした。









今朝・・・目を醒ますと、枕元にクリスマスプレゼントが用意されていた。
箱は全部で3つあって、すぐにそれが武田道場のみんなからだと気づいた。
幸村くんを運び終えた佐助さんにお礼を言うと、どういたしまして、と微笑んだ。



「 お館様には、以前、冬物も買ってもらっていたのに・・・ 」
「 何、気にするでない。プレゼントを贈るのに、回数は決まっておらんだろう。
  そなたにはいつも感謝しておる・・・ほんの、気持ちじゃ 」
「 旦那も、まだまだ女の子に免疫ないけどね。
  でもさ、ちゃん来てから、ずいぶん強くなった方だと思うよ 」
「 ・・・佐助・・・それは誉めておるのか、貶しておるのか? 」
「 あ、旦那が起きた 」



薄目を開いて、ゆっくり身体を起こした幸村くんは少し頭を振った。
そして、素早く正座して床に頭をつける( ちょっ・・・ )



「 申し訳ございませぬ!そ、某、ああああまりの密着に意識を・・・っ! 」
「 何だか・・・旦那が言うと、えろいなあ・・・ 」
「 黙れ佐助!殿は忙しい身の上なのに、遅れてしまっては申し訳ない! 」
「 い、忙しくないよ、大丈夫 」
「 しっ、しかし!もうそろそろ、バイトの時間では!? 」
「 あ・・・うん、そうだね。そろそろ出ないと・・・・・・え!? 」



時計に向けていた視線を、幸村くんに戻す。 私の不思議そうな表情と、佐助さんの呆れ顔と、お館様の溜め息に・・・幸村くんは、青ざめた。 あわあわし出した彼を見て、佐助さんとお館様が目を合わせて、私に向き直った。



「 黙っててゴメン。実は・・・お館様も旦那も知っていたんだ。ちゃんのバイト 」
「 え・・・ええええっ!? 」
「 必死に隠しておるようだったからのう。我らも気づかぬフリをしていたワケじゃ 」
「 お館様・・・す、すみません・・・あの、お小遣いが足りないというでは・・・ 」



わかっておるわい、と笑ったお館様が頭を撫でてくれる・・・あ、でもホントにもう行かなきゃ! 慶次さんを待たせるわけにはいかない。
慌てているのを一番に悟ってくれた佐助さんが、そろそろ出ないと、でしょ?慶次が迎えに来てくれるんだよね? と追い立ててくれた。私は慌てて自室から取って来た鞄を肩から提げて、靴を履いていると。



「 殿! 」



転がるように布団から出てきた幸村くんが、駆け寄ってくる。
そして私の手をぎゅっと握ったまま・・・しばらく、俯く。手を握られて心臓が高鳴ったけれど、 それ以上に彼の様子が気になって・・・そっと、尋ねてみる。



「 ・・・幸村、くん? 」
「 ・・・・・・・・・ 」
「 どうしたの?まだ具合悪い?? 」
「 ・・・いや。今夜は、帰ってきたら4人でクリスマスパーティでござるな 」
「 うん!今日は、少し早めに帰ってくるから・・・今まで内緒にしてて、ごめんね 」
「 、殿・・・某・・・ 」
「 ・・・・・・? 」
「 ・・・帰りを待っているで、ござる・・・いってらっしゃい 」



何か言いたげな様子だったけれど。彼は『 言葉 』を、自分で飲み込んだみたい、だった・・・。 ちゃんと聞いてあげたかったけれど、無理強いして、自己満足で彼を傷つけたくないとも思った。 だから、今まで武田道場のみんながしていてくれたように、私もここは『 知らないフリ 』を決め込むことに した。

幸村くんに、精一杯の想いを込めて、微笑む。



「 いってきます! 」



扉を閉める時に見えた彼の顔は、いつもの表情に戻っていた。
うん・・・冬休みは、少し幸村くんと話す時間を作ろうかな・・・。

『 恋愛 』とは別に『 家族 』としての幸村くんが・・・気になって仕方ないのだから。