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元気にしているでしょうか。
美味しいものを次から次へと平らげた挙句、お腹を壊した・・・なんてことにはなっていないでしょうね?
飯店で働いていたことも関係しているのでしょうが、美味しいものには目がない貴女だから、心配です。
そんな姿は愛らしいけれど、見ている方が気が気でないでないのですよ。
なんて・・・気がつけば、お説教ばかりになってしまうのは、私の悪い癖ですね。
本当は、こんなことばかり・・・貴女に伝えたいわけじゃないのに・・・。
・・・・・・逢いたい。
、貴女に逢いたい、です。
どんな時も、どこにいても、誰といても、気がつけば貴女のことを考えています。
そしてそんな自分に腹を立てている・・・こんなに想うのなら、どうして貴女を手放したのでしょう。
そうしたら貴女を永遠に抱き締めて、腕の中に閉じ込めて・・・もう二度と離さないのに。
貴女に逢うまで、私の全ては『 陸家 』でした。
一族の長として、呉という国に認められるため、奔走することが生きがいでした。
だけど、貴女に出逢って変わったのです。
天真爛漫で、それでいて毅然としていて・・・誰の束縛も受けずに自分の足で立つに出逢って。
国を追い出されても、陸家から弾かれても、仕方ないと思えるくらい・・・愛してしまったのです。
趙雲殿は・・・どんな『 男 』ですか?
が彼に抱かれているのだろうと思うだけで、胸の奥が酷く痛みます。
とんでもなくどす黒い感情が、自分の中の理性を飲み込もうとしているのが、よく、解る・・・。
すぐにでも国境を越え駆けつけて、無理矢理にでも攫ってしまいたい。
けれど・・・それが叶わないことは、私が一番よく知っているから。
妓女を手当たり次第に抱いてみるけれど、貴女の熱はどこにもないのです。
あの一夜の出来事が『 夢まぼろし 』ならば・・・。
私は一生・・・貴女だけを求め続けて、生きていくのでしょうか・・・。
別れ際、最後に聞いた・・・が、私を泣きながら呼ぶ声。
あの悲痛な叫びが、もし今も続いているのだとしたら・・・私は、趙雲殿を赦しません。
貴女のおかげで、呉は平和です。
ですが昨日受けた報告によれば、魏が動き出したようです。
蜀も呉も、絶対的に安全じゃなくなりました。貴女の身の上だけが心配です。
いつか・・・私の理性が飲み込まれて、貴女を攫いに行ってしまったら・・・。
そこまで書いて、ふと手が止まる。
筆を硯の上に置いて、書いていた竹簡を誰にも知られないよう、火にくべた。
ぱき・・・と芯の割れる音が、静かな部屋に響いた。墨になったのを見て、溜め息を吐く。
・・・最近、いつもだ。
こんな風に・・・『 どうしたらよいか 』わからなくなる。
のことが気になるので便りのひとつでも送ろうと思うが、書き出してみれば
予想外のことばかり書いている。従妹として、当たり障りのない文章で安心させたいのに書いているのは愛の言葉ばかり。
当然かもしれません・・・だって私は、のことを『 従妹 』だなんて思っていないのだから。
「 ( それに・・・は、本当に趙雲殿を愛してしまっているかもしれない・・・ ) 」
自分のように『 一族 』に縛られることなく、自ら志願して君主に仕える姿は、
男の自分から見ても理想的だ。知力、武力、志・・・どれをとっても、自分とは違う人生。
己の野心のために、愛する人を差し出した自分と天秤にかけずともその差は歴然だ。
が彼を慕っていたとしても、何も言う権利などないのだ・・・。
部屋の中央にある机に戻る。
後ろにある窓の外を見上げれば、大きな月が顔を覗かせていた。
手元は差し込む月の光のおかげで明るい。これなら仕事にも支障はないだろう。
深夜の執務室には人の出入りもなく、女官たちもいないから仕事が捗る。
残りの竹簡を片付けてしまおうと硯を動かす。黒光りする墨を見ながら・・・
こうして執務室の真ん中で眠っていた彼女の黒髪の、なんと豊かだったことか・・・と、
またもやのことが頭を過ぎる。
するとすぐ・・・手が止まるのだった。もう・・・今じゃ驚かない、苦笑するだけだった。
「 ( ・・・もう、これは病気の一種ですね ) 」
どこにいても、彼女の面影を感じる。そして一度感じてしまえば・・・しばらく消えはしない。
仕事にならないことを悟った私は、硯を片付け、仮眠室へと入る。
横になってしまえば、思っている以上に随分と衰弱していることに気づいた。
せめて残り香があればよいのに・・・と寝具に包まれば、夢も見ないくらいの深い眠りに落ちていく。
いつか・・・私の理性が飲み込まれて、貴女を攫いに行ってしまったら・・・。
、その時はどうか・・・今度こそ、受け入れてください。
・・・私を愛していると、言ってください。
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