「 あ・・・っ、はあ、ん、ああァッ!や、やぁ、んッ 」
「 ほら、もうこんなになってる・・・ふふっ、気持ちよいですか、 」
「 んんっ、やぅ、はッ、はく、げ・・・うああんッ! 」


水音と嬌声だけが響く部屋で、狂ったようにお互いを求める。
宿の一室でこんな行為をしているだなんて、周囲に知れたらどうしよう。声、出来るだけ出さないように しなきゃ・・・なんて考えていたのは最初のうちだけだ。 素肌に触れる熱が、相手に触れて更に熱を増す。次第に何も考えられなくて、今の『 私 』が在る。
ぴちゃぴちゃと水を指先で弄ぶような音に、それが自分から奏でられていることに気づいては 羞恥と快楽に嬌声を上げる。その度に、伯言だって興奮が加速しているのがわかった。


「 洪水のように愛液が溢れている。止まらない程感じてくれているのですね、嬉しい 」
「 あはァ、はう、ッ!はぁ、は・・・は・・・はく、ぅ、んんッ!! 」
「 ああ・・・っ!もっともっと、いっぱい、感じてください、 」


しゃぶりつくように秘部へと唇を寄せると、わざとじゅるじゅると音を立てて吸いついた。


「 ああああんんッ!!やぁんッ!やああ、ふぁああんッ!! 」


押し寄せた刺激に、腰が浮いた。
腿の付け根にある彼の肩を押して退こうとするが、そこまで手が届かず、むしろ頭を抱え込むような 姿勢になってしまう。伯言が喜んで更に舌を入れてきたので、たまらず達してしまった。 足の指先まで伸び、びくん、びくんと数度痙攣すると、快感と入れ変わるように倦怠感が身体を襲う。
海老反りになった腰が沈むと、伯言が舌を抜いて起き上がる。は、は・・・と上がった息を整えながら 薄目を開くと、口の周囲に付いた愛液を手の甲で拭っていた。
かっと頬を染めて瞳を逸らした私の顎を捉えて、顔を近づけてくる。


「 何故逸らすのです? 」
「 やっ・・・だって、汚い・・・! 」
「 汚い?どうしてですか?貴女が私を想って零すものです。どんな美酒より私を酔わすのに・・・ 」


額に優しく口付け、その唇は身体の線をなぞるように、下へ下へと降りていく。
今夜だけで何度達したかなんてわからない。 零す涙も、口元から溢れる唾液も、彼を感じて流れる愛液も、全部全部舐め取られて・・・ 身体も心も、伯言に侵食されていく。 彼の宣言どおり・・・虜になる。
世界も、未来も、子龍さまのことも、彼を前にしたらもう何も考えられない。


「 そろそろ・・・私の我慢も、限界です 」


と言った伯言は、思わず、といった様子で舌なめずりする。
秘部にあがわれたその熱に、息を呑んだ。 先端をあてているだけなのに脈打つのが伝わり、その鼓動に私の心臓が跳ねる。 恐る恐る伯言を見上げる。彼も私を見下ろしていたが、揺れる瞳を見て・・・やはり、駄目ですか? と小さく呟いた。


「 ・・・ううん、大丈夫 」


伯言の、全てが欲しい。彼が私の全てを受け入れるように、私も彼を抱き締めたい。
少しだけ微笑むと、彼の両肩を引き寄せて・・・導く。その手に加減が出来ないほど力が篭り、 悪いと思いつつも爪を立ててしまった。


「 ・・・う、っく・・・は・・・ッ・・・ 」


伯言から上がった声に慌てて目を開けると、苦悶の表情を浮かべている。
慌てて手を離すと、浮いた手に自分の指を絡めて寝具に押し付けられた。


「 どうして離すのですか?そのままでよいのですよ 」
「 だって・・・痛かったでしょう?く、苦しそうだったから・・・ 」
「 ・・・いいえ、嬉しくて。嬉しくて仕方なくて、私の意識も飛ばされてしまいそうだったのです 」


辛そうなのは変わらないのに、彼はゆっくりと唇を持ち上げる。


「 それに、この後辛い思いをするのはの方ですから。すみません・・・加減できそうに、ない 」


ずずっと腰を押し進める気配に、悲鳴も出ず、ただ口だけがぽっかりと開いた。
見えない其処に熱だけが侵入する。内壁を無理矢理広げられて、無意識に逃れようと身体が動く。 いやいやと首を振る私を捕まえて、伯言は自分の方へ引き寄せた。


「 ひあ、んッ!!ああ、ああああッ、ん、やあッ!! 」
「 ・・・もう少し、の、辛抱です・・・ッ!あっ!! 」


伯言自身が脈打ったかのように、震える身体を思い切り仰け反らせる。めり、と体内の軋む音が 聞こえた気がして・・・最奥まで繋がったのだとわかった。熱の篭った吐息を吐き出した伯言は、 一度固く目を瞑って、、すみません、と呟いた。


「 は・・・はぁ・・・もう、もう我慢、できま、せんッ!う、っくぅ・・・!! 」
「 んァッ、やぁッ!んあ、ああァっ、やっ、やあああぁ、は、伯、言ッ!! 」


律動が始まる。水音と嬌声しか聞こえなかった部屋に、生の肉体がぶつかり合う音が混ざった。
身体が揺れ、視界が滲み、思考が停止する。 あ、あ・・・!と開いた口から漏れる嬌声に、伯言の吐息が混じった。 今までにないくらい額に汗が浮かび、私の腹を伝う。繋がったそこから溢れる体液に合流し、 とうにびしょ濡れの寝具へと落ちていく。冷たくなっているはずなのに、そうは感じないほど 私たちの身体を満たす熱が、高みへと追い立てる。


「 んやぅッ、はっ、ああ・・・あああッ! 」
「 はッ・・・ああッ、最高です・・・何て心地良いんでしょう、貴女のナカは・・・っく! 」
「 んんッ!伯言・・・伯言、ッ、好き・・・好きっ!あ、はぁんッ!! 」
「 好きですよ、。誰よりも、誰よりも貴女を愛してる・・・! 」


左の腿を掴むとそのまま伯言が自分の肩に担ぐ。より一層深く押し進められる感覚に、 一際大きな嬌声が上がった。腰を打ち付ける音がさらに強くなり、訪れる快楽の気配を感じた。 最早抗うことが出来ないのはわかってる。だけど・・・どこかで理性が働いて、打ち破るその時を 怖いと思う。そんな私を見透かしたように、伯言がくすりと笑う気配がした。


「 貴女一人ではありませんよ。私も一緒に達してしまいそう、ですから 」
「 うん、っ・・・伯言、も・・・一緒、にっ、あ・・・あ、ああッ、んああっ 」
「 ええ、一緒に・・・はッ・・・・・・ッ、ッ!! 」
「 ふあ、熱、い、よぉ!伯言っ!も、だめ・・・ああ、ひああぁん、や、あ・・・ッ! 」
「 い、き、なさいッ!!ッ、あ・・・っくッ!! 」
「 はあッ!ひ、あ・・・やあぁ、あああぁあんんッッ!!! 」
「 ・・・・・・ッ、っく・・・あぁっ! 」


身体がしなる。寝具を握り締めて、達した私はそのまま天を仰いだ。 その腰を掴んで引き寄せ、収縮する私の中で伯言が達する。彼も眉間に深い皺を寄せて、びくりと大きく身体を 震わせた。そのまま数度腰を振って・・・やがて律動が収まる。
腰が浮いた反動で宙に舞った涙が、そのまま頬に落ちてきた。 冷たい、とは思ったけれど・・・しばらく瞳を開けることは出来なかった。 自分の中から、ずるり、と引き抜かれる感覚に、嫌でも身体が震えてようやく自分も意識を取り戻す。
荒く呼吸を繰り返す伯言の身体が、そのまま崩れ落ちるように私の上へ落ちてきた。


「 ・・・伯、言・・・? 」


私を抱き締めたままの伯言が動かない。
揺すってみようかと思った時、小さな・・・本当に小さな声で、彼が言った。


「 このまま、時が止まってしまえばいい・・・本気でそう思うほど、今、私は幸せです・・・ 」


耳元で囁かれる吐息混じりの声が、胸の中を暖かくする。
さっきまでの身を焦がす熱ではなく、そう・・・陸家の窓から差し込んでいた陽だまりのような暖かさ。
・・・ああ、そうだ。私の『 幸せ 』は、いつでもあの場所で過ごした時間に繋がってるんだ。
外は夜なのに、思い出したら陽だまりの中に戻ってきた感覚に陥り、涙が零れた。


「 ・・・うん、私も幸せだよ。伯言の隣で、こうして肌を合わせることができて、すごく幸せ 」
「 ・・・ 」
「 愛してる、伯言。これからもずっとずっと、こうして傍にいてね 」


もっと早く、こうして告げていれば、あの陽だまりから遠ざかることはなかったのに。
本当に・・・長い年月をかけてしまったけれど。けれど、過ごした時間は無駄じゃない。
伯言が私しかいない、と言い切ってくれるように、私にだって伯言しかいないんだって気づけたから。




はい、と頷いた伯言の笑顔は今まで見てきた中で一番輝いていた。




私も微笑むと、彼は甘えるように擦り寄ってきた。狭い牀榻に2人並んで抱き合う。
夜が明ければ・・・今度こそ呉へと向けて本格的に旅立たねば。 朝陽が顔出すまでに、もうしばらく時間がある。今のうちに・・・と、 忍び寄る眠気にうとうととしかけていると、焦ったような伯言の声がした。


「 ?まさか、眠る気ですか!? 」
「 ふえ・・・だめ、なの・・・? 」
「 あ、そ、その・・・せめて、もう1回は抱き合ってからじゃないと、その・・・ 」


擦っていた目が、見開いたのがわかった。
太腿でむくりと首をもたげる気配に、魚のように口をぱくぱくとさせる。
とうの本人は頬を赤らめて照れたように微笑む。が、その唇がすぐさま歪んだのを見逃さなかった。
顔を引き攣らせた私をあっという間に押し倒すと、跨った彼がふう・・・と息を吐く。


「 すみません、。旅の馬上では寝ていて結構ですので・・・もう少しだけ、付き合ってください 」
「 で、でも、あ、あの、正直・・・あと1回で、終わるの? 」
「 ふふっ・・・さあ、どうでしょうね・・・実践してみないと、何とも 」


汗で張り付いた髪をかきあげる仕草は、とんでもなく色っぽくて・・・内心、ときめいているのに。
どうして、こう・・・どこか黒いものを纏っているように見えてしまうのだろう。
一切の反論を許さず、薄く開いた瞳を光らせて、脅える獲物を襲うがごとく彼は牙を突き立てた。


私を組み敷いた伯言が『 満足 』するまでにどれくらいの時間が要ったのかは・・・神のみぞ、知る。












彼の『 予言 』通り・・・日中はほとんど眠ってばかりの私が、 夕陽の差し込む船室で何度目かの『 朝 』を迎えて大きく身体を伸ばしていると、突如船の鐘が鳴った。


呉の港へと、停泊したのだ。






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