好きの理由2

「バッカじゃないの?」
開眼一番、聞いた台詞はこうだった。
「……………ルック」
いやみな風使いの姿を見て僕は顔をしかめる。
なんで目を開けたらこいつがいるんだ?
起きたてのぼやけた頭で考える。
どーせ聞くならクゥさんが良かっ……………
「あ…」
クゥさん。
一気に目が覚める。
「自分のしたことを思い出したか、この寝ぼすけ猿」
そうだ、僕クゥさんにあんなこと…
……………どうしよう!?
きっ嫌われちゃったかな!?
怒らせちゃったよね!?あれは!!
ぎゃーーーーー!!!!
あわあわし始めた僕をみてルックが変なものでも見るような目線を向けてくる。
それを気にせずガバリと起き上がろうとして、
「っっっっったぁぁぁぁーーーー!!」
頭を抑えてまた倒れ込んでしまった。
あ、あれ?
痛い。
なんで?
「やっぱりバカだ」
痛みで目を白黒させる僕にもう一度ルックが言う。
僕の頭の上の大量の?を見たのか、事情をつげる。
「クゥに棍で叩かれたんだよ、おもいっきり。すっごい音したよ?しばらくは動けないだろうね」
あ、そっか、あの衝撃はそれだったんだ。
だから…そうだ、それで………クゥさんが泣いているのを見たんだ。
……………っていうか僕、気づかれていたわけね、色々考えてたやつ。
その内容がクゥさんについてだということはバレてなかったようだけど。
ああああでもそれにしてもどうしよう!?
僕ってクゥさん、なんだか泣かしたってカンジ!?
うあああ、これじゃもぉなんだか泥沼ーー!!
嫌われた決定―――――!?
てゆか大嫌い言われたし―――――
「いたたたたたた……………」
ホント頭が痛いんだか心が痛いんだかわからなくなるよ。
ううう、もぉクゥさんに合わす顔がなーい(涙)
「ほら病人はきちんと寝ていなさい!」
ホウアン先生が事務机から振り向いて注意する。
「でっかいコブだったんですから…ちゃんと安静にしていないと治るものも治りませんよ!」
「はーい」
反射的にそう返事を返してしまう。
「ったく、丸一日も寝ておきながら起きたらどうしてこうまで元気になってんだか……………」
ホウアン先生はなにかブツブツと文句をいいながら机にむかって仕事かなにかを再開し始めた。
うう、こーゆータイプってニガテだ…
あれ、ホウアン先生がいるってことは、ここは医務室?
頭を動かさず、目だけで周りを見回す僕。
…うあ、来ることになっちゃったんだ、結局。
てゆーか一日も寝てたのか、僕。
「あれ、じゃぁクゥさんは…」
「帰っちゃったよ、トキがあまりにバカだから」
「…っ、さっきからバカバカ言いすぎだっ!なんなんだよ、僕はルックにそう言われるいわれはないよ!!」
「たったの三回さ。それでもトキには足りないくらいだろ?この学習能力皆無猿」
……………!!
むっかーーーー!!!!
一体何なんだ、ルックは!
そりゃ確かに僕がクゥさん帰さしちゃったようなモン(ていうかそうか)だけど、なんでルックにここまで言われなくっちゃなんないの!?
僕ルックに対しては何もして無いじゃん!!
それにルックははっきりいって関係ないし!
ただの傍観者してただけ!!
くぁ〜〜〜〜〜むかつくーーー!!
睨みつけて応戦したけど、冷たい顔でさらりと流されてさらにむかつく僕。
なんでだよ〜〜〜!??
「……トキは、なんであそこでクゥが泣いたと思ってるわけ?」
冷たい表情はそのままに妙に真面目なことを聞いてきたもんで、
「……………へっ?」
つい間の抜けた返事をしてしまった。
なんでって…そりゃふだんから僕がクゥさんの瞳がまぶしくて顔を見れなかったり、クゥさんのことで頭いっぱいで 話を聞いてなかったりしたから…………ってあれ?
そういえばなんでだろ?
そんな理由では普通たいして怒らないよねぇ…?
お小言ぐらいで済むのに。
シュウにはしょっちゅう集中力がないとか怒られるけど、それはシュウの話があんまりにもつまんないからで…
クゥさんの話はほんと、僕しーーっかり聞いてたのになぁ。
尊敬できる人だしスゴイ人だし。
ここんとこは考え込んだりとか一挙一動気になったりしてどうやら聞いていなかったみたいだけど…
「なんでだろ…?」
本気で考え込む僕を見て何を考えたか
「トキ…あんた気づいてないのかい?」
唐突にルックが言う。
「気づく……………って何を?」
キョトンとした僕にルックがこれまた大仰に肩をすくめた。
たはー。
ルックが額に人差し指を当ててため息をつく。
は?何!?
僕が何に気づいてないだって!?
なんなんだよ、気になるぅーーーー!!
「全くあんたらは……………」
「なっ何!?なんなんだよっ!?」
ルックは指をはずして腕を組み、後ろを向いた。
「ふたつ」
「……………?」
「ふたつだけ言っといたげる」
そのままの向きでルックがしゃべる。
そのため、僕からはルックの顔が見えなかった。
「自分の気持ちには素直になることだね」
「……………はへ?」
「それから」
「ちょ、ちょっとルック、一体なん…」
「相手の気持ちもわからないようでは、僕はあんたをあいつのそばにいさせるなんて認めないよ」
そう言ってルックはさっさと医務室を出て行ってしまった。
残された僕は、まだぶつぶつと何かを言っているホウアン先生の声を背景に
「……………気持ち……………?」
途方に暮れるしかなかった。