好きの理由3
僕は……クゥさんは元解放軍の英雄で、ほんとうは今ごろ王様になって国を治めてるはず
だったけど、ならずに旅にでるなんてカッコイイことしちゃって、でもでも今は僕が軍主の
同盟軍に手を貸しててくれてて。
僕なんかと違って尊敬に値する人だし、スゴイ人だと思う…それが僕のクゥさんに対する気持ち。
でも最近はクゥさんの一挙一動ぜんぶが気になって仕方なくて、そういうことを考えだ出すともうどうにもならなくて。
別にそんななにかクゥさんに特別なものでもあるわけでもなくて、ただただ自然にそのすべてが気になってしまう。
どうしてだろう。
尊敬できる人でスゴイ人。
それだけのハズなのに、これ以上何を素直になれというんだ……………?
「クゥさん…」
クゥさんは一体何を考えているんだろう。
なんで泣いたりなんてしたんだろう。
…らしくもない。
わからない……………
ここは屋上。
僕はさっきからずっとここにいて考え込んでいる。
ここには、別の患者が来たためそちらにかかりきりになってしまったホウアン先生の目を盗んでこっそりと来た。
頭の痛みはもうずいぶん引いていたし、元々僕は頑丈だしね。
誰かいるかとも思ったけど、誰もいなかった。
ひとりきりになりたかったからちょうどいいやと思ってそのままとりとめもない考えを思いつくままに考えている。
縁に寄りかかって一つ大きくため息をつく。
今日はクゥさんは来てなかったらしい。
屋上に行く途中でたまたま会ったフッチから聞いた。
そうしたらこんなこともフッチは話した。
「そういえば昨日やけに急いで城から出て行こうとしていたから、どうしたのって聞いたんだけど…なんでもないって言って
すぐ行っちゃったんだよね〜」
どうかしたの?と純粋に聞いてくるフッチにわからない、と答えている間にも、僕は焦っていた。
なんでだろう、焦っていた。
今日来なかったクゥさん。
まぁあんなことがあった以上、ふつうに来ないだろうと思うけどね。
明日も来ないのかな…
そう考えた途端、僕はずき、と胸に痛みを感じた。
……………うわぁ、なんだか僕とってもヤバい?
え、だってふつう胸に痛みだなんて、女の子の特権でしょ?
僕が感じるなんて……うわぁ、やっぱり僕は最近おかしいや。
どんどん傾いていく思考に自分でつっこんでうわうわ言ってると、急にそこで違和感を感じた。
そろそろ夕焼けが見えようかという空に、それはあった。
「………風?」
嫌な予感がした。
僕の目の前で風がいきなり出現して吹き荒れたと思うと、
「……………うわぁ、当たった」
そこにいたのはやっぱりルックだった。
ルックは僕の姿を認めると、嫌な顔をしてすぐに別の場所に行こうと紋章をかかげた。
「ちょ、ちょっと待ってよ!!」
「……………何か用?」
僕はいますぐにも別の場所に行きたいと顔に書いてあるルックを反射的に呼び止めて、ふと自分が何を言おうとしたか考えて
いなかったことに気づいた。
「え〜っと…なんでここに来たの?」
とりあえずあたりさわりのないことを聞く。
「……………別に僕がどこに行こうがあんたには関係ないだろ?」
「う゛っ…まぁそれもそうだけど…………」
「なに、そんなに僕のことが好きなの?やめてよね、僕そのケはないんだから」
「だれがっっっっっ!!」
「じゃいいね、僕は行くよ」
あっさりとまた別の場所へ行こうとするルックをまた僕は止めた。
「ちょちょちょまーーーっ!!」
「………だから何の用なのさ?」
こんどは少し考えて、きちんと答えを返した。
また変なこと言われたくないし(怒)
「なんで昼間、あんなこと言ったの………?」
素直になれとか、認めないとか。
一体なんで僕がそんなこと言われなくちゃいけないんだ???
ルックは眉を寄せてなんだかいかにも渋いものでも食べたような顔をする。
「………クゥは…」
えっ、いきなりソコですか!?
目に見えて反応した僕を見て、
「…………………………………………やっぱやめようかな…」
おもいっきり目をそらしてそう言う。
「なんですかソレーーーーーー!!!」
いきなりクゥさんの名出しときながら、言うに事欠いてソレですか!!
いくら性格極悪魔法最強笑顔極冷のルックでも、それはないだろ!?
でもなんだか今日のルックはどこかおかしい。
だってあのルックが僕に「ふたつ…」とか言って説教(?)するなんて、まじありえない。
で、今のこの台詞。
いつもきっぱり、はっきりすぎるくらいえらそうに言葉を放つのに、今のルックはなんだか自信なさげで、まじありえない。
ありえなさすぎるよっ!!
なんで!?
「…僕はさっき、そのケはないと言った」
イマイチ歯切れの悪い口調で話し出す。
またいきなり妙なことを…ι
いったい今日はどうなってるんだ?
「な、なんなんだよ…?」
あまりのありえなさに動揺しながら答える。
「でもそれは真実ではない」
「……………は?」
「僕には、いる」
なにが?
と聞けずにルックの顔を凝視する。
そんな僕にやっぱり目線をそらしながら、でもきっぱりと言う。
「…クゥだ」
……………え?
それって…
ええ!?
「へ…え?あのそれはやはり……………」
「好きだ、ってことだよ」
今度は一度言って居直ったのか、目をきっちり合わせて言う。
思わず僕がたじろぐぐらいの強い目。
「僕はクゥが好きだ。この世にいる誰よりも」
態度より言葉よりも、その目がルックの気持ちを深く伝えてくる。
……………ぇえええええ!!??
っていうことは…恋人同士っ!?
ルックと…クゥさんが!?
それは……………
そう思った途端、またも襲い掛かる胸のイタミ。
今度はさっきの非じゃない。
苦しくて苦しくて
「……………う…そだ…」
耐え切れなくなるほどの―――――
「嘘じゃない。真実だ」
追い討ちをかけられるかのように重く、ルックの声が追随してくる。
「だから……あっ」
ふらふらと、僕は胸元を押さえて言葉を発せずに屋上から出て行く。
ルックの後ろから発せられた言葉には気づかないで。
「……………勘違いかい?」
一人残されたルックがひとりごちる。
ふ、と笑うと、ルックはまた言葉を放つ。
「ま、ここまで気づかせてあげたんだから、これくらいの悪戯は当然だろ」
クゥがあまりにかわいそうだったから、ついトキを後押しするようなことをしたけど…
「僕だってあいつをずっと好きだったんだ。そう簡単には渡さないさ」
だからトキの態度にすぐにわかったんだけど。
トキより早く、トキのあいつに対する気持ちに。
……………でも
「僕がここまでするなんてねぇ―――――」
すっかり暗くなった夜空を背景に、湖をわたる風に髪をなびかせる。
意外と大物になるかも、あの軍主。
そんなことを考えながら。