ただ、僕は欲しかっただけ
手をのばして手にいれようと
僕はただ欲しただけ
なぜ、それだけでこんなことになるの…?
僕はただ手をのばしただけだったのに



なにかを欲するたび
たくさんを失う
たったひとつの
ほんの些細ななにかでも
僕はただその希望に
ふれてみようと
ただ、ほんのすこしだけ

なにかを…

好きの理由4

「どうしてこんなことになってしまったんだろう…」
僕はつぶやく。
ぴちゃ…
水音が響く。
手に持っている竿の先を見ると、うきが沈んでいる。
糸を引き、慎重に機会を狙う。
―――ここだっ
一気に引き上げる。
ぱちゃん
「………」
バラした。
「…残念。結構大きかったのに」
クゥは釣り掘りの上に竿を放り出して大の字に横たわる。
そしてそのまま空を見る。
―――手にいれようとするとすり抜ける
ふとそんなことが頭に浮かんで。
「逃がした魚はでかい、ってか」
自嘲気味に笑う。
…僕がこんなにも執着するなんて。
「なぁんか」
信じらんないなぁ。
だってこの僕が。
そんな。
クゥは顔の前に手をかざし、かんかんに照りつける太陽を遮った。
「あつ…」
―――最初は、すごく似てると思った。
始まり(きっかけ)が、立場が、周囲(まわり)のみんなまでも。
フリックやビクトールがいたし、フッチやビッキー、それにルック。
どんな人物かと思った。
すごく興味があった。
同じような境遇の立場の人が欲しかったのだろうか。
…同情して欲しかったのだろうか。
「なんて愚者」
僕には全然、誇れるものがない。
愚かな、愚者The Fool
……でも。
「ほんと、雲一つ無いなぁ」
トキは、違った。
「まっぶしいよ」
「暑いし明るいしうざったいし」
「心休まる時がない」
かざしていた手をそのまま顔にかぶせる。
…トキは、いつでも明るかった。
楽しそうだった。
つらいこともあっただろうに、それを悲観するでもなく。
今を必死に生きている。
そんなトキが好きだった。
そんなトキに…好かれたかった。
「トキの方がすごいのに」
「いっつも“僕なんか僕なんか”ばっか」
楽しそうにクゥさんクゥさん呼ばれて嬉しかった。
…でも。

―――ばしっ

心臓の音が、最初に止まった。
それからだんだんうるさいくらい激しくなっていって。

…やっぱり僕には人から好かれる資格なんてないのだろうか。
愛される資格なんてないのだろうか。
誇れるものがない僕はあの時逃げ出した。
―そして今度も逃げるのか
「ふっ…」
顔に置いた手はそのまま、笑いがこみあげてくる。
「ふふふふっ……」
笑いだすと止まらない。
僕はそこでずっと空に向かって嗤っていた―――――


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…ちなみに”The Fool”というのは、タロットカードの”The Fool”のことです。
わかりずらい例えで済みません(爆)

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