16.
いつもからは想像もつかないアーチャーのそんな様子に、ランサーは頭の奥まで痺れそうな快楽に支配されつつもかわいい、と思ってしまった。まるで色事初めの少年を導いているようにも感じて。
この身体に幾度となく達かされ続けたというのに。
「………ぅん………っ…………!」
そんな風に思考を飛ばしてしまっていたランサーを現実に戻すかのように、白い身体の内では質量を増した楔が更なる快感を与えようと動く。内壁だけではなく、最奥を突き上げられ、その度に何も考えられなくさせられる。数度繰り返されれば、そんな自分が無様だということすら綺麗さっぱり忘れさせられた。
「…………ぁぁ…………っっ………」
一際高い声。
内側だけでなく外側……反り返るほど昂ぶった自らの分身もまた鋼の筋肉に擦り上げられ、ランサーの声は止むことなく、誰もいない錬鉄の荒野に響き渡った。
「…………っん…………っっ………」
ぎゅうと容赦なく締め付けてくるランサーの内側に、アーチャーもまた自分の中が侵食されているような感覚に囚われていた。
確実に主導権を握っているのは自分のはずなのに、それすらも相手に与えられているだけのような気がしてならない。だから、余計に無理強いしたくなってしまう。
根元までしっかりと埋め込んだ自らを、それ以上入るはずもないのに進めようとする。と、漏れる声にまた絞られる。
そういえば、とまだ残る理性の部分が自分に訴えてくる。
相手を散々啼かせて無理やり絶頂まで昇らせたのに、自らは中で果てたことはなかったではないか。それどころか、白い身体が乱れる様に性感だけを闇雲に高めさせられていた。
ならば―――もう十分だろう。
しがらみの鎖から解き放たれたのだ。身体の中からも放って何が悪い。
そう思ったとき、アーチャーは絶頂に達した。
自らを縛る様々なものから解放されたように。
「んぁ………っ――――――!」
どくんどくんどくんどくん。
突如として自らの中に流れ込んでくる奔流に、ランサーは半ば意識を手放した。ただでさえ、快感を共有したことによって太いラインができあがってしまっているのだ。そこに眩暈がするほど大量に注ぎ込まれ気が狂う寸前、その熱い衝撃に引きずられるように、ランサーもまた自らの腹を汚していた。
「は、ぁ……ん……………………」
注ぎこまれる熱と放出する熱をコントロールする術なぞない。ただ荒い呼吸を繰り返し、ランサーは自分の身体を覆う人肌のぬくもりに身を任せていた。が、突如として身体を繋ぐ楔が引き抜かれた。途端にランサーの内に収まりきらなかった白濁がつぷり、と溢れ出る。
「ん………………?」
もう少し……しっかりと魔力を体内に安定させるためにというだけでなく、人肌の温みの心地よさに身を任せていたいと正直な気持ちを抱いていたランサーは、とろりとした視線で影のようになっているアーチャーを見上げた。
と、
「…………………!?」
自分の足の間で膝をついていた男は、何やら次の行動に入っている。
こめかみから顎を伝って流れ落ちる汗がきらりと光って、この男もまた疲労の極地にあるだろうことが予想された。けれど、
「テメ……な……何、して…………!?」
アーチャーはランサーの片足を肩に担ぎ上げるようにして、自らの身体を…放出したにも関わらず些かも衰える気配のない昂ぶりを再び、赤く爛れた秘部へと押し当てていた。
「な…………!!」
やめろ、と制止の言葉を吐こうとしたランサーの機先を制するようにアーチャーは静かに、けれど確信を持った口調で、
「だから…すまない、と」
それだけを言うと、後は問答無用とばかりに容赦なくランサーの身体に自身を突き入れた。
息を切るような悲鳴に近い喘ぎを発しながら、それでもランサーの身体はアーチャーを受け入れた。
再び繋がれる秘部と、魔力のライン。
双方の快感は一度落ち着いたはずのランサーを煽り立てていく。けれど、先ほどの身体が折り重なるような格好ではなく、見下ろされているようなこの体位にどうしようもない羞恥を感じてしまう。ただ羞恥ならばまだいい。見られていることが興奮に昇華され、余計に感じてしまう。
こんな自分を―――官能に浸りきっている目を、だらしなく開いている口元を見られたくない、と空いた腕で顔を隠しながら、ランサーはただ他には喘ぐことしかできなかった。
そんな姿をされてはどうしようもない。加減なんてできるわけもない。
恥ずかしいのか、腕で視界を覆うランサーの仕草を見ながらむしろアーチャーは急速に掻きたてられていった。
確かに熱く潤む瞳は見えない。
けれど、喘ぎを吐き出す口元と時折膨らませる小鼻の様子がダイレクトに感じていると訴えてくる。
激しく上下する胸も、何かに縋るように地面を掻くもう片方の手も余すことなく感じていると告げてくる。
ならば―――、とアーチャーは浅く抜き差しを繰り返したかと思えば一気に挿入するなど、緩急をつけてその白い身体を征服しにかかる。漏れ出る喘ぎや息遣いが確実に激しく鋭くなっていくのを聞きながら、とどめとばかりに屹立しているランサーの身体の中心に手を添えた。
「……………………!!」
すると、反射的にランサーの秘部はアーチャーを激しく締め付ける。思わず放ってしまいそうになったが、まだだ、と自分で自分を戒めると更に責め苦にも似た快楽をその身体に教え込んでいった。
「は……ぁ………っっ……も、もう……っ…………!」
甘い痛み。
甘い責め苦。
身体を快感と苦悶が同時に責め立てる。内も外もこの男でいっぱいにされる。
ランサーは自分の身体が作り変えられるような感覚すらおぼえはじめていた。
最初の頃に抱いていた優位なぞどこか置き忘れてしまった。今はただもう発狂しそうなこの身体をどうにか鎮めたかった。
「んんっ……んっ………っっ………!」
身体の中心に触れる手が一際力強く扱くその瞬間、
―――声もなくランサーは達した。
ぎり、と絞られる感覚が素直に気持ちよいとすら思えた。
屹立の裏筋に指を軽く立てるように扱いた瞬間、アーチャーを包んでいた肉もまた瞬時に狭まった。
「……………………っん………!」
長い射精に、体中の精液を全て吐き出したかのような……心地よい倦怠感が一気にやってくる。大量に注ぎ込んだ身体の方はというと、軽い痙攣を繰り返しながら、それでもアーチャーが放った全てを拒むことなく受け入れている。そんなランサーの身体を見下ろしながら、ふと頭に過ぎることがあった。
―――もし…この身体が女であったならば、きっと孕んでいるだろう―――
それは流し込んだ精の量でなく、全ての感情が……憧憬とか嫉妬とかその他諸々の、この男に抱いていた気持ちがカタチ作らせるものが子以外にないような気がしたのだ。
そんな益体もないことを思いながら、アーチャーは自らを引き抜いた。と、軽く揺れたランサーの身体は目元を覆っていた腕も揺らすとはたりと落とした。どうやら、放心状態の槍騎士は腕を上げる気力すらないらしい。
露になった目元……瞼が半ば落ちた瞳、露を含んで濡れた睫……何れも触れたら壊れそうなほど儚げだった。おそらく、この瞳は自分を映していないだろうと、親の目を盗んで悪戯を仕出かす子供のような心境でアーチャーはランサーの睫に口付けた。
涙で濡れたそれは、人間と同じ―――微かな塩の味がした。
>続く
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