4.
「……本当に頭がイカれてやがる………」
地面に口付けをするような、僅かたりとも望まない体勢を強いられて、それでもランサーは強がりのような科白をぬけぬけと吐く。その声に平時ほど力強さはないにしろ、易々と無体に屈することは彼にとっては許せなかった。
「けれど、君にしてみれば悪い話でもないだろう?」
ランサーの身体を覆うようにして四つんばいとなったアーチャーは、再びその耳元へ口唇を寄せる。そのまま軽く耳たぶに触れさせると、ランサーの抗議がくる前に、とばかりに口を開いた。
「この中にいれば現界する程度の魔力は保てるとはいえ、外に出たら君の身体はあっという間に塵となるだろう。だから―――」
私から魔力を奪うといい。
「…………………」
ごく、と唾を飲み込む音。それは獲物に襲い掛かろうとしている弓騎士の方ではなく、餌食にされようとしている槍騎士が漏らしたものだった。
「君が英雄たる所以……それは最後まで自らの意志に殉じようとするところだろう……? ならば―――私ごときに嬲られるくらいで『望み』を手放したりはすまい」
クー・フーリン、ともう一度アーチャーはその舌にランサーの真名を乗せた。
この槍の英雄の逃げ道を封じるように。
この2人のサーヴァントの身の丈はさほど変わらない。そのこともあってか、ランサーの身体の窪みにアーチャーの身体がぴったりと重なるようにして、荒野の淫事は始まろうとしていた。
「……………………」
口を噤んだままのランサー。
「……………………」
そして、アーチャーも先ほどから口を開こうとしない。その手もランサーの身体を暴こうと動くこともない。ただ身体を重ねるだけの時間が過ぎていく。
「………オイ、オレをどうにかするんだろ? さっさとすませちまえよ」
痺れを切らしたのはランサーの方だった。沈黙をかこうのを嫌ったということもあるだろうが、実際問題として大の男に圧し掛かられているのは体力の消耗が甚だしいのだ。
「ああ…いや正直どこから手をつけようか少し考えていたのだが………」
重ねていた両の手のうち、利き手であるらしい右を外すと、アーチャーはランサーの左耳に軽くかかっていた髪をかき上げるようにして耳元に口唇を寄せた。
「それにしても君はせっかちだな……」
早く済みそうだ、と要らぬことまで続けるアーチャーに、さしものランサーも聞きとがめる。
「………どういう意味だよ、そりゃ」
「いたって字面通りだが」
平然と返すアーチャーに、更に言い募ろうとしたランサーだったが、自分の耳元に寄せられた口唇がいつまでも離れないのを訝しげに見つめる。
「…………………」
そんなランサーの視線を満足そうに受けると、アーチャーは白い耳たぶを軽く啄ばんだ。
「そんなに怯えなくてもいい。別に君を犯し殺そうなどとは考えていないのだから」
―――そんなことより…………。
それ以上は何も言わず、アーチャーは空いた手に陽剣・干将を具現化すると一息にランサーの衣を切り裂いた。
首の付け根から臀部まで。付け根、といっても肩周りのランサーの装甲は厚い。その部分には手を付けず、刃は柔らな衣の部分だけを鮮やかに滑る。
「………………………っ」
皮膚には僅かな傷跡も残さず裂かれたにも関わらず、急に入り込んできた冷たい空気が肌を刺したのか、ランサーは微かな声を漏らすと軽く身体を震わせた。
「―――力を抜け」
その言葉とともに、陵辱は始まった。
>続く
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