「いっそ気の毒になるな。臥して死ぬことを拒んだ英雄が、簡単に地べたに這いずるのは」
「……それで支えてやるのか? お前の酔狂さにも笑いが止まらん」
 そう言うな、と言峰はギルガメッシュの嘲笑をものともせず、後ろから支えるように抱くランサーの身体のラインをなぞる。聖餐の皿を乗せる大きいその手が、十字を切るその指が、今度はランサーという供物を捧げるための準備を始めるように蠢く。
「あ………あ………っ…………」
 腰から大腿を辿り内股を流れる手。腋から入り込み、引っ掻くようにして乳首を摘む指。どくんどくんと痛いくらいに高鳴る心臓が叫ぶものは悲鳴なのか、或いは歓喜なのか。考えても仕方のないことをあえて考えることで、ランサーは自らの身体を支配しようとする衝動を打ち払おうとした。けれど、
「んあっ!」
 内股を辿っていた手が、服の上からとはいえダイレクトに敏感な箇所を握りこんできたその瞬間、ランサーの意識は全て刈り取られた。
「ふ……力のない身体とて、ここは感じるのだろう? いや、もうここしか分からないのか?」
「っ……んっ……っ……!」
 五指がバラバラに動く。柔らかい部分を揉みしだくように、しなってきた茎の裏筋に線を引くように、先走りの液を促すように。そして、根元を押さえるように。
「お前の手は拷問器具としても価値があるな、言峰」
「褒め言葉として受け取っておこうか」
 フ、と言峰は鼻で笑う。しかもランサーの耳元に息が触れるほど間近で。
「ひっ……!」
「ああ、すまんな。感じすぎてしまったか…?」
 右手に訴えてくるランサーの快感をさらに高めるように、言峰は普段よりは幾分優しい声音で―――それでも罪人を裁く地獄の判官のような―――囁きかける。
「ひあ……っ……」
 反射的に言峰の唇から逃れようと、ランサーは刮目して顔を上げる。苦し紛れの彼の視界に入ったのは、金色の髪の男。


 そんなはずはない……!


 自分の口に毒を含ませたかつての主の姿を想像していたランサーだったが、そこにいたのは主を同じくするサーヴァントであるギルガメッシュだけだった。
「我が居るのが不思議か?」
 ランサーの表情から察せられるだろうに、わざと口に出して問う黄金のサーヴァント。その表情には出来の悪い生徒を嬉々として叱る教師のようなものが浮かんでいた。
「何、宝具で姿形を変えただけのことよ。貴様の望む『主』の形にな」
 もっとも人間の姿を取るなど我としては不本意だが、と締めくくるあたりが彼らしい。
「私としてはそのままの姿でいた方が興に乗ったのだがな。かつての主に見られていた方が、ランサーとて悦いだろうよ」
「テメ……んあっ…! あ…っん……!」
 趣味の悪さを通り越した言峰の発言に激昂したランサーだったが、何をしようとも…それどころか言葉で反抗しようにも、性感を支配されたままではどうしようもない。逆に、感情が昂ぶりが身体の昂ぶりを促進していく。
 がくり、と耐え切れなくなったかのようにランサーの腰の位置が下がると、頃合いか、と呟いた言峰は衣そのものに指をめり込ませた。
「ひいっ……!」
 息を飲むような、喘ぎを喉の奥で押し殺したようなランサーの声に続くようにして彼の敏感な部分が外気に晒される。青い護りの衣を引き裂いた言峰は、一瞬だけ離してしまった手を、ランサーの身体の中心を支配するようにして再び動かし始めた。
「もう限界か? ん?」
 先走りの液体は既に言峰の手を濡らしている。既にランサーはそんな声に答える余裕すら失ってしまっていた。ただ喘ぎをムリヤリ飲み込んだ、一種奇声じみた声を絞り出すようにして発することしかできない。


「………………」
 何も言わず、ただ一際強く言峰の手がしなりに合わせて扱き上げた時、
「っ……んっ……っ……!!」
 身体全体で打ち震えるようにしてランサーは達した。
 その大きな手に熱い迸りを吐き出しながら。





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