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ずるり。びちゃり。
肉の擦れる音に付随するように水音も響く。
「……………………」
周囲に立ち込める汗の臭いと雄の臭い。それが自分の身体から抜かれる感触を、ランサーはどこか他人のものであるかのように感じていた。
「……………………」
声もなく、ただ失った酸素を取り戻そうと心臓が動くのに合わせて、鍛えられた胸板も上下する。規則正しい動きを繰り返すそれは、ランサーの口の中に残っている英雄王の精が喉の奥に流れていこうとする時に小さく動きを乱す。
「どうだ、我の魔力の味は?」
焦点の合わないランサーの瞳に自らの姿を映そうとするギルガメッシュ。けれど、ランサーは何一つ反応しない。まだ荒い呼吸をどうにか整えるのが精一杯で、いつもの強がりすら出てこない。ち、と口の中で小さく舌を鳴らしたギルガメッシュだったが、彼を宥めるように言峰が声をかける。
「こちらは使わぬのか、ギルガメッシュ?」
「……王たる身が貴様の使い古しなど必要とすると思ったか」
眼光鋭く主である言峰を睨みつけると、顎をしゃくりあげるギルガメッシュ。彼が示した先には、ランサーの身体に収まりきれずに溢れた白濁が流れていた。
「ああ……それは失礼をした」
真面目くさってサーヴァントに詫びの言葉だけを吐くと、言峰は、
「ならばこうしておけばよいか……?」
遠慮なく指を伸ばした。まだひくひくと何かを締め付けるように震えるランサーの秘部に。
「ひあ―――――っ……!!」
乱暴というわけではなかったが、前触れもなく大きな刺激を与えられたランサーにとってはたまったものではない。しかもそれは一度だけではなかったのだ。繰り返し繰り返し、中の白濁を掻き出される上、ご丁寧にも言峰の指は特に敏感な内部のポイントを引っ掻いていく。何しろようやく与えられた魔力を取り上げられるだけでなく、自分の性感まで闇雲に弄られるのだ。思わず、
「や、やめ………っ……」
引き攣れたような制止の声を上げるのも仕方のないことだろう。
「い、嫌だ……あう、ん……っ……!」
言峰の指が中をまさぐる度に、ランサーは腰が跳ねるのを止めることができない。
「………ん……ふ、う………」
「どうだ、これくらいでよかろう? 一から慣らすのも面倒であろうしな」
少しずつ整っていたはずのランサーの吐息は、再びタチの悪い熱病に冒されているように熱くなっていった。そんなランサーの様子など気にもとめず、ギルガメッシュに向き直った言峰は膳立てを整えたとばかりにわざとらしくランサーの足を開いてみせる。そんな言峰に対して、
「テメエ……飼い犬にエサをやるのは、飼い主の役割じゃねえのかよ…っ!」
新たな刺激のせいで意識にかかっていた霧のようなものが晴れたのか、ランサーは普段の―――戦いに臨むときのように―――不敵な態度で反抗してみせた。
「……………………」
沈黙で答える言峰。それに対して、
「――――言峰、気が変わった」
と、主を押しのけるようにしてギルガメッシュはランサーの身体に挑みかかった。
「どういう風の吹き回しだ、ギルガメッシュ」
押しのけられたことに対して何の感慨も抱かなかったのか、早々と着衣を整えた言峰はランサーの足の間に自らの身体を割り込ませるようにして挑みかかるギルガメッシュに淡々とした声音で尋ねた。
「なに、理性を取り戻した心が瞬時に犯された時のこやつの反応が見たくなった」
「…………っ!」
破れたままになっているランサーの衣を更に剥ぐようにして、その膚を露出させてくギルガメッシュ。
「ほう……いっそ心が死ぬまで責めつづけるか?」
伊達に10年も長きに渡って共に過ごしたわけではなかった。ギルガメッシュの意図を察した言峰は珍しく愉しげな笑みの形に口唇を歪めると、先ほどまで英雄王の御座となっていたソファーへ身を引いた。
「それも愉快だがな…そんなことは有りえぬだろう、クーフーリン?」
真名をあえて口にしてランサーの反応を楽しむ。頬の肉が、瞼が痙攣するランサーを見下ろしつつ、
「ああ、その表情(かお)だ」
満足したようにギルガメッシュは露わになったランサーの膚に手を置く。筋肉の線をなぞることもなければ、性感帯に手を伸ばすこともない。氷のように冷たいその手をただ置いている。けれど、触れられるだけで反応してしまう現在のランサーにとっては、それだけでも充分だった。それどころか膚の熱さと対照的なその手から呼び起こされる快感に、否応なしに反応してしまう。ぴくん、と僅かばかりとはいえざわめく身体にまたもや満足そうに頷くギルガメッシュは、鈴を振るような軽やかな声で宣託を下した。
「どうせ屈することのない心。なれば精々抗って見せよ」
と。
>続く
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