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「……………っ」
ギリ、と歯噛みする音は微かなものだった。それでも間近にいたギルガメッシュの耳にはしっかりと届いていた。
「……ふむ、この方が貴様には相応しかろう」
「なっ………」
その細腕からは想像もつかないほどの強力でランサーの腰を持ち上げると、ギルガメッシュは手早くその身体を裏返しにして床に押し付けるようにして倒した。
「ん…ぐ……」
「これも邪魔だ」
それでもまだ足りないのか、ギルガメッシュはうつ伏せにさせたランサーの身体をかろうじて覆っていた衣を容赦なく引き裂いていく。
「ほう、お前は膚の露出にこだわるのか?」
その英雄王の仕草を興味深そうに見ていた言峰は戯れに問う。すると、
「そうだな……悪くない。この膚は……」
「ふ…あっ……!」
ギルガメッシュは背骨の形を確かめるように掌で撫でる。
「………騎士王か………?」
「フン、貴様のそれは下衆の勘繰りというものだ」
掌全体でランサーの背を愛撫するように触れると、精巧な細工物めいたギルガメッシュの手は腰から臀部へと下りていく。
「北方の膚の色はよく似ているからな」
「……これはこれで悪くないと言っているだけだ」
ランサーの引き締まった腰の、臀部の感触を楽しむように這う手は相変わらず冷たいまま。反対にその動きに合わせるかのようにして、白い膚は愛らしい色合いを帯びてくる。
「…ん、…に………」
「ん? どうした?」
切れ切れに、押し殺した喘ぎの隙間からようやく吐き出したようなランサーの声に、ギルガメッシュは珍しく訊いてやる。もちろん、ただ訊くような真似はしない。大腿から腰を、腋まで撫で上げた上でわざと耳元で訊いてやる。ぴったりと身体を重ねるようにして。
「そ…んなに………っん……!」
「どうした…? まだ触れられ足りぬか?」
密接することで直に感じるランサーの震えを楽しみつつ、耳たぶを軽く食む。ピアスの繋ぎ目に舌を絡め、鼻の頭で耳に触れてやる。その度に、言葉になりかけるランサーの声はただの喘ぎに逆戻りしてしまう。
「ん、ぁ……っ……ひ…ゃ……あん……」
「何を言っているかわからぬぞ。王に奏上する時は明確に要点だけを述べよ」
自分の下で懸命に身じろぐ身体が反応するのは、ギルガメッシュの支配欲を充分に満たす。
「……ん……っっ………」
何回目のことだろうか、耳元に執拗なまでの愛撫を施していた口唇が離れていくと、ようやくのことでランサーは首を巡らす。僅かばかり視界に入った金色の髪に潤みきった目を向けると、
「挿れ、たきゃ……さっさと……挿れ………んあっっ!」
「……王に命令するか、狗」
冷たい言葉とは裏腹に、ギルガメッシュの手は完全に屹立したランサーのソレを握り締めていた。
「やめ…っ……や……いや、ぁ………」
身を捩って冷たい手から逃れようとするランサーだったが、彼が抵抗することなくその手は離れていった。けれど、
「望みどおり与えてやろう」
絶対零度の声音で宣言したギルガメッシュの手は、ランサーの腰にしっかりと掛かっていた。
「んぁ―――――っっっ……!!」
弓なりに背を反らし、熱く滾った赤火を受け入れたランサーはずぶり、と自分の中に入ってきたモノを反射的に逃すまいと締め付ける。
「ッ……そんなに、欲っしておったのか…っ……」
内側からじわじわと纏わりつく肉壁の熱さに、ギルガメッシュはその端整な造作の顔を顰める。けれど一度奥まで収めると、一呼吸置いていつもの余裕を取り戻す。
「ふあ……んっ……っ……あ……っっ…!」
「まだ…達するのは早いぞ、狗」
ランサーの腰を掴んだままのギルガメッシュは繋がっている箇所を支点にすると、どこにそんな力があるのかというくらい軽々と、その白い体躯を持ち上げた。
「っひ…いっ……っっ……!」
そのまま胡座をかく姿勢になったギルガメッシュは、自分の大腿にランサーの身体を降ろす。自分の体重がその敏感な箇所に全てかかることで、ランサーの身体は半ば硬直するようにして快感を身体の中に閉じ込める結果となってしまった。
「ふむ……稀景、と言うべきか?」
感情も何もない声でただ感想を述べる言峰に気付いて、ランサーは快感の波に耐えようと閉じていた双眸を開いた。すると、彼の視界に真っ先に飛び込んできたのは、長い足を組んでサーヴァント二人の情交を肴としていた言峰の姿だった。
「なっ……み、見るなっっ……!」
快感の結果からか、それとも羞恥からか―――全身に朱色を撒き散らしたランサーは、再びその紅の瞳を閉じた。言峰の視界に自分を映されるのを止められないのであれば、せめて自分の痴態を眺める冷酷な目を見ていたくなかった。
だから気付かなかった。
足音一つ立てず忍び寄ってきた言峰がどういう行動にでるかということに。
>続く
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