7.
かつん、という音に金色の頭が反応する。
入ってきたのは2人とは言え、音の出るような靴を履いているのは1人だけということもあって、本当に微かな響き。
わずかに小首を傾けたその男は無礼な闖入者を咎める事もしない。ただ興味なさげに視線を元に戻すと、組み敷いている男の肌を軽く撫でる。
愛撫とは到底言えないだろうそんな感触にも、触れられた男はびくん、と身体を震わせた。
「いい反応だ。が、その割には我の魔力を受け付けておらぬようだな」
「………生憎と、不味いモノは嫌いでね……んぁ、っっ……」
減らず口を、とそれでも楽しげに呟く金髪の男は再び腰を使い始める。自らの雄を白い双丘の狭間に穿ち、ぐい、と捻じ込むようにして動かす。
「……ぅ………あ、ん……っ………」
じゃらん。
うつ伏せにされた男の手首には、それぞれ鎖がかかっている。
どこから垂れ下がっているのか分からないその2本の鎖は、それでも決して拘束する力を緩めようとはしない。まるで意思ある獣のように、男の白い腕を……そして身体をも縛り付けている。
「…………ぁ…………ぁあ、っ…………!!」
逃れることなどできないと解っているのか、自分を捕らえて放さないその鎖にも縋る勢いで、男は身体を仰け反らす。
髪を振り乱し、あられもない声をあげて。
じゃらん。
男の声と鎖の音が、まるで愛の言葉を囁きあう恋人同士のような楽を奏でる。途切れ途切れに、それでも絶えることなく続くその音色に、いつの間にか士郎の思考は凍りついたようになってしまっていた。
音と声と。
白い肌と青い髪が揺れるさまと。
汗と精が混じりあった、饐えた様な匂いと。
目を逸らそうと思ってもできない。別に首が固定されているとかいうわけでもないのに。それどころか、食い入るようにしてただ見つめている。
実際、恐怖を感じると人間は目を逸らす事ができない。
怖いもの見たさ、という言葉があるがそれは事実だ。恐ろしい思いをすることがわかっていてもあえてそれを見てしまう矛盾した思考回路が人間には存在する。
自分は恐怖のあまり、目が離せないのか……?
自らの胸の内に問いかけた士郎だったが、思わぬところから答えは返ってきた。
「あの淫らさの前に、雄の本能は屈服する」
え、と聞き返そうとする士郎だったが、後ろを向いて、顔を上げようとする彼に猶予を与えず、声は続く。まるで託宣を読み上げる巫術師のように。
「―――たとえ、それがいかなる者であろうとも。
―――そう……『正義の味方』だろうとも、逃れる術なぞない。雄の本能を持ちうる限り」
ちりちりちり。
軽い金属音がする。
ズボンのジッパーを下げる音だ、と気づいたときには既に、
「っっ……!!」
布越しに刺激を与えられていた。そして、
「ほう……?」
その手の主は、楽しげに聞こえるようでその実、何の感慨もなく士郎の反応に対する感想らしきものを口にした。
「ふむ、既にここまでとはな」
「な………っ、っ!!」
淡々としたその口調に、いや、だからこそ士郎の身体には瞬時に羞恥がひた走る。そんな士郎の様子を分かっているとばかりに、節くれ立った言峰の手は宥めるような手つきに変わった。
「……………く、っ…………」
そう、別に本当の意味で宥めたわけではない。手淫に抵抗しようという士郎の気概を打ち砕くために、わざと緩急をつけただけの話だ。
事実、厚い布地の下から解放されただけで、士郎の雄は歓喜の声を上げるかのように頭を擡げたのだ。そうなってしまえば最後。触れられるだけでその若い雄は脈々と力を湛え、先端は自らを制しようとする薄い布地を突き破るかのような勢いで屹立する。
「苦しいのか……ならば、」
楽にしてやろう、と本職に相応しい慈悲深い声音で、言峰は空いている手を器用に使い士郎の着衣を外していく。
「何す……、や、やめ……!」
ズボンのボタンを外され、下着ごと足下に落とされる。急激にやってきた外気に身を震わせるも、それすら新たな刺激と受け止めた士郎の雄は士郎の意思に反して、その威容を露にした。
「……………………」
「あ…………………」
何がもう、どうなっているのかすらわからない。
「……………………」
「っっ……………!!」
再び芯に着火するかのように、背後の手はまた士郎を捉える。
竿の部分を扱かれるだけに留まらず、先端の窪みに親指を引っ掛けながら裏筋を擦られ、次第に士郎の頭の中は色も形も失っていく。
けれど、
「あ……ぅ、ん……っ…………!!」
別のところから聞こえる鋭い喘ぎは、一瞬にして士郎の思考を呼び戻した。
だが、
「は………あ…………」
「………………………」
思考が呼び戻されると同時に、快感は再び士郎を支配しにかかる。それが証拠に、先端からはもう耐え切れないとばかりに先走りの液が溢れ出し始めていた。
「う……………………」
「………………………」
ぬる、と垂れる蜜は零れ落ちることはない。それどころか士郎自身を濡らし、その性感をより高めさせていった。
「さあ、懺悔の時間だ、衛宮士郎」
背後から神父の声が響く。
彼の声は、この場においても荘厳な響きを湛えていた。
>続く
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