6.

「……んっ…………は……はあ……っ……」
 幾度となく繰り返された不毛な行為。
 一度として自らの内部に導き挿れることのできないまま、肩で息をしながらランサーはがくりと腰を落としそうになる。
「………もう終いか? 貴様この程度でよくもまあ我を見下ろす如き真似ができたものだな」
 タイミングよく身体を起こしたギルガメッシュが、その腕を伸ばしてランサーの腰を支える。女のような細腰ではないにしろ、形よくくびれたその腰は捩るような線を作って英雄王の手を招いているように見える。
「ヘッ……オレはテメエみたいな変態じゃねえからよ……見られて興奮しねえんだよ…っ……!」
「………その割には、いい声で鳴いていたがな」
 ランサーの虚勢を嘲笑うかのように、ギルガメッシュは腰に回した手を少しずつずらしながら、的確にランサーの性感帯を探っていく。
「………触れ、んな……っ!」
 腰から大腿へ。大腿の外側から内側へ。身体の中心を囲い込むように冷たい手が愛撫を施していくと、それは確実にランサーの身体に浸透していく。下半身をなぞる円が段段と小さくなるに従って、ランサーの身体には少しずつ少しずつ、快感で作られた波が大きくなっていった。
「テメ…ェ……やめ……っっ……!! 」
「どうした? 感じているのか…? こんなに震えて……」
 びくんびくんと、支える膝までもが戦慄に打ち震えている。我慢しきれなくなったのか、拳をぎゅっと固めて耐えていたランサーの手は、ついに縋りつく場所を求めてギルガメッシュの首根を引き寄せるようにしてその腕を伸ばした。
「……珍しく素直なことだ……。まあ、時にはよかろう」
 自らの首に縋りつき、額づくようにして肩口に顔を寄せてくるランサーの腰をぐっと引き寄せると、その拍子に大きくわなないた身体を宥めるようにして大腿の上に跨らせた。
「うあ……んっ……」
 互いに擦り合わされる熱い肉の塊に、そんな感触を急激に与えられたランサーは嬌声ともつかぬ声を上げると、手に触れていた絹の金糸のような髪を指にからませた。
 縋るだけでは官能を逃がせない。身体を冒していく淫靡な毒に耐えようと、ランサーはギルガメッシュの髪に絡めた指に力を込める。そのまま引き千切るかのような勢いで。
「……っ………!」
 ギルガメッシュの方でも、そんな強く掴まれれば痛みを感じずにはいられない。口の中で小さく舌打ちすると、その指を外させようと頭を一振りする。が、小刻みに震えるランサーの身体にそんな合図が届くはずも無かった。それどころか、一際強く髪を掴まれたその瞬間、
 びくん、
 と、英雄王の身体にも轟く稲妻にも似た何かが走りすぎた。


「………………」


 それが何であったのか。
 知る必要はない、とばかりにギルガメッシュはランサーの背に回した手を動かす。
「っん…っ………」
 臍のちょうど反対側だろうか、そこを一撫ですると如実に反応を示したランサーの身体は引き締まった下腹部を突き出すようにして、再び肉の快感を呼び起こす。
「悦い声で啼く……もう達したいのであろう?」
 僅かとはいえ見上げられているのに、ギルガメッシュの声は玉座から見下ろすかのようだった。もっとも、その冷めた声音は快感の高波に攫われたままのランサーを正気へ誘う力を持っていた。

 けれど、
 ランサーは知ることはない。

 
 ギルガメッシュがあえて冷たい…殊更人を見下すかのような色でその玉音を発したことを。


>続く
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