8. 「力を抜いていろ……と言ったところで無駄であったか?」 幾度か繰り返した行為だというのに、慣れないのか…あるいは慣れることを自らの意思で拒否しているのか、ランサーは楔の侵入の度に身体を強張らせ、口唇を強く噛み締める。 「………………っ……」 今回もそれはかわらない。それどころかいつにも増して……快楽に流されることを拒むかのように口唇に強く歯を立てている。またギルガメッシュの視界に入らない―――縋りついた時のまま拘束された―――両の手首は、爪が掌に食い込むほど強く握られていた。 「……所詮、貴様は快楽を得なければ生き延びられぬのだ……早々に観念して、腰を使うくらいの真似をして見せろ」 「……っ…………っっ!!」 双丘を裂くようにして手荒に秘部を晒され、思わずランサーはうめく。先走りの液で多少は湿されたとは言えほとんど固いままの蕾は、じゃらり、という耳障りな金属音の後に手折られるようにしてこじ開けられていった。 「っ……んっ…っ……ぐっ………」 狭い空洞を抉っていく感触は、いかに数を経ていようとも苦痛だけしか与えない。けれどランサーにとってその痛みはむしろ必要だった。欺瞞だということはわかっていたが、男の生理として快感に変じてしまうその行為に抱く罪悪感から逃れるために。誤魔化すために。 「んあ……っん………んんっ……!!」 ぐりと押し込まれる圧迫感がランサーを支配する。特に、宙に浮かされたようなこの体勢での挿入は、まるで臓物を口から吐き出してしまいそうになるくらい激しいものだった。 「そら、もう貴様は我をすべて呑みこんでいるぞ……どうした? 貴様が動かなければ、貴様が望むモノは手に入らんのだがな」 ギルガメッシュの頭を胸に抱き込むようにして痛みをやり過ごそうとしているランサーは、気の遠くなるような痛みと、最奥を突かれて唐突にやって来た快感に意識を奪われそうになりながらも、その耳でしっかと英雄王の言を捕らえていた。 「………る、せっ……! 黙、って……待ち、やがれ……っっ………っ!!」 「……王を待たせるか、たわけが」 そう言いつつも、ギルガメッシュは愉しげにランサーの身体に触れる。言葉で責めるのも興に乗ったが、脇の肋を撫でてやるだけで跳ねる身体を責めるのは、同時に精神を責めているのも同義だった。 「うあ…っん……!」 びくん、と跳ねて上擦った蕾は再び根元を呑みこんでいく。それを数度繰り返してやると、既に硬さを帯びていたランサーのモノは確と頭をもたげていた。 頃合いか、そう思ったギルガメッシュは音もなくエンキドゥを引き、僅かではあったがランサーの身体を自由にさせる。もっとも、絶頂近くまで無理強いされている身体と精神はそんなことには気付かないだろう。むしろ、身体の自由を得たのをいいことに、悦楽に浸された体躯は一層それを求めて動くに違いない。 「こうされる方が悦いか?」 両の手で双つの丘を開く。案の定、抜けそうになる楔を内部に留めようと、ランサーの身体は彼自身の自尊心をズタズタに切り裂くことをものともせず、腰を最大限まで沈めようとする。腰を深くするために身体をずらす。ギルガメッシュの頭を胸元に抱き込んでいた腕は最大限まで伸ばされ、かろうじて首根にすがりついているような有様だった。 「い……っ……嫌、だ…っ………!」 「ほう…この痴態がか? それとも我が精を受け得ぬことがか?」 そんなランサーの姿を見遣りながら、それでもギルガメッシュは責苦を緩めようとしない。その身に合わぬ僭越な―――王の身体だけでなく精神をも虜にしようとした―――行為はこれくらいで赦されるものではないのだから。 「我が欲しくば動け。我に肉の悦楽を教えてみろ……貴様のその肉でな」 ランサーの平時とは違った熱と赤みを帯びた身体から手を放すと、ギルガメッシュは昏い炎を紅い瞳に宿して言い放った。 「…………………ん……っ……」 いつも高みから人を見下す瞳。その瞳の中に醜態を晒してきたランサーだった。だから、この時のギルガメッシュの瞳に宿るものがいつもと違うことくらいは気付いていた。けれど、 ―――そんなことは、関係ない――― ランサーが欲しているのは、精液を媒介としたギルガメッシュの魔力のみ。だから、それを得るために動く、だけだった。 根元まで飲み込んだ部分が外れぬよう、そろりと身体を起こす。ギルガメッシュの腰に跨るような体勢のまま、再びその柔らかな金髪を自分の胸元に寄せるようにして抱き込むと、甘く痺れるような感覚に覆われた腰をほんの少し持ち上げた。 途端、 「んあ……んんっ……!」 肉の擦れる音と体液のぬめる音が自分の中から発せられて、身動きがとれなくなった。けれど急かす言葉も詰る言葉も聞こえない。だからそのままもう一度腰を落とした。 「はぁ……ぁ……っ……」 その拍子に、中では先端が敏感な箇所を捉えていく。 それを数度繰り返せば充分だった。 互いにもう見えていたのだ。 一見終わりの見えない、遊戯じみた交わりの果てが。 >続く >戻る >裏・小説部屋へ戻る >小説部屋へ戻る |