ハインケル He219 「ウーフー」
ハインケル He219 「ウーフー」
ヨーロッパで第2次世界大戦が勃発して間もない1941年10月、ドイツ空軍少将であった「ヨーゼフ・カムフーバー」はドイツ全土の夜間防空の指揮官に任命されました。彼の夜間防空戦略においての手腕は敵国イギリスが恐れた程で、戦後にはなんとかつての敵国アメリカからの依頼によりドイツの防空戦についてまとめた書物を著しています。
今回ご紹介するHe219は先ほど紹介したカムフーバーがいなければ、この世に誕生しなかったかもしれない夜間戦闘機とも言われています。
イギリスが夜間爆撃を実行し始めた1941年夏頃、ドイツはまだ本格的な夜間戦闘機が開発されておらず、
Ju88や
Bf110といった昼間の任務を外された爆撃機の改造機が応急的に運用されているのが現状でした。日増しに性能向上する大型爆撃機が夜間爆撃で大挙すれば、対抗できなくなると考えたカムフーバーはハインケル社に開発停止していた試作機の再設計を指示し、本格的な夜間戦闘機誕生の運びとなりました。
試作機はこれまでの戦闘機に採用されなかったいくつかの新機構が取り入れられました。エンジンは当時の主力戦闘機であったBf109や
Fw190よりもさらに高出力のエンジンを2基搭載。コクピットは世界初の射出座席を標準装備し、機体構造もこれまでの最新技術を投入した空力特性を考慮されました。
さらに夜間戦闘機に不可欠なレーダーが機首に標準装備され、武装も30mm機関砲をメインとし、重爆撃機の分厚い装甲を撃ち抜く強力なものが選ばれました。
1942年、初飛行に成功し最大速度は時速615キロを記録しました。これはこれまでの改造型の夜間戦闘機とは段違いの高性能を示すもので、翌年1943年3月に行われた模擬空戦でも圧倒的な強さを見せ、航空省から主力夜間戦闘機としての期待を担いました。
1943年6月、イギリス空軍の夜間爆撃機隊との対決の場がHe219の初陣となりました。この時のドイツの夜間戦闘機隊を指揮していたのは「サン・トロンの幽霊」と恐れられたハインツ=ヴォルフガング・シュナウファー少佐と並ぶエース、ヴェルナー・シュトライプ少佐でした。わずか30分の空中戦で5機のイギリス重爆撃機「ランカスター」を葬り去り、輝かしい初陣を飾りました。
活躍はそれに留まらず、当時ドイツ夜間戦闘機の天敵とまで言われた
「モスキート」を多数返り討ちにしてしまうなど、連合国空軍に衝撃を与えました。
これだけの高性能を見せつけたHe219も複雑な事情を抱えており、生産は遅々として進みませんでした。
その原因として挙げられるのは高高度での戦闘機に必要な高性能のエンジンが開発に失敗したり、エンジンそのものが優先順位の都合で入手できなかったためです。設計スタッフが望まなかったエンジンを使用したにも関わらず、これだけの戦闘力を発揮できたHe219は今なお、戦闘機ファンの間で傑作機と評価されています。
性能諸元
全長; 15.54m
全幅; 18.50m
全高; 4.40m
正規全備重量; 12550kg
エンジン; ダイムラーベンツDB603A 出力 1750馬力×2基
最大速度; 605km/h
武装; 30mm機関砲×2または4、20mm機関砲×2〜6
TOPページへGO!
航空機講座過去ログ1 航空機講座過去ログ2 航空機講座過去ログ3 航空機講座過去ログ4