■□ norn □■   ルーファス×アリーシャ(ヴァルキリープロファイル2)
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 ぎし。
アリーシャは手首に生まれていた痛みに近い圧迫感と不自然な体勢から来る不自由さで目を覚ました。
宿を取り部屋に入り椅子に腰を下ろしてそれぞれに用を済ませに町へと出てゆく仲間たちを見送ったまでは覚えている。多分そのあとに椅子に座ったままで眠ってしまったのだろう――――それは寝ぼけている頭でもわかった。
しかし腕を挙げたつもりはない。そしてそれがなぜ動かない?
当たり前だけど腕を動かそうとした瞬間、手首を縛っている布の感触を感じてようやく自分の状態がまともではないことを知って、アリーシャは青い瞳を丸くし一瞬で目を覚ました。
「え? 何? どうして…っ」
 いきなりこの状況で動転するのは当然で、ぎしぎしと何度も動かしてみるけどやはり縛られている。動かさなければ痛くはないがほどけないようしっかりと縛ってあるらしい。しかもただ縛られているのではなくて何か背の高いものに、文字通り「縛り付けられて」いる、アリーシャの手の甲が先ほどから何度もほんのり冷たく硬い棒のようなものに当たって軽い痛みを感じた。
椅子に座ったまま何かに手首だけ縛られて、座ったまま眠っていた椅子から立ち上がることすらままならない。
 さらりと爪先に何かが触れた。
視線を落とすと視界に飛び込んできたのはブーツを脱いだ素足。いつ眠ったのかすら定かではないのだから、彼女自身脱いだ覚えなどない。爪先に触れたのは一番上に身につけている上着、短いスカートの中身を隠している装身具とそれからふわりと細い腰を包んでいる白い上着だった。
 間違いない、自分は拘束されている。
 でも誰に? ヴァルキリーたちがこんなことをするはずないし、第一彼女たちと不死者王ブラムスは城門の外で、町に入らず休むと別れたはず。ルーファスは武具の店、アリューゼは酒場――――アリーシャは必死で記憶の糸をたどる。
たどっても無駄かもしれないとどこかで感じてはいるけれど、それすら動転してしまうと頭の隅に隠れてしまう。
 ひた。
「きゃ!?」
 アリーシャの頬に、少し冷たい指が触れた。そして優しげに、艶かしく彼女の頬をおそらく背後から包み込む。

「縛り終わってから目を覚ますなんて、お前も間が悪いなぁ。」

「ルーファス!?」
「言っとくけど解けるような甘い縛り方はしてないからな。」
 触れた指が彼女の頬を愛でるようになぞり、アリーシャの視界に緑の雨が降る。
それは当然雨ではなく言葉の主ルーファスの長い髪で、指が触れた向きから感じたとおり彼は椅子の背越し、いや斜め後ろからまわり込むみたいな不自然な体勢で身を屈めつつアリーシャの顔を覗き込んでいた。
その言葉から察するにこの体勢は彼が施したものなのは間違いないらしいけれど、アリーシャにはその理由が、そうされるだけの理由が見当もつかない。
ルーファスはアリーシャの後ろから覆いかぶさるみたいに身を屈めて彼女の顔を覗き込んだまま、いつもの彼と同じ、皮肉を潜めた笑顔、いや唇を笑いの形に歪めて彼女の狼狽を楽しんでさえいる様子だった。
「ルーファス、これ解いて…どうしてこんなことするの?」
「…どうして、だって……?」
 彼女の問いが癪に障ったのか、ルーファスの唇から笑みが消えた。アリーシャの頬を撫でていた細い指が、丸いあごを捉え力ずくで天井を仰がせる。
そうしてやっと見えたルーファスの顔は笑っている――――というよりも、唇が笑いの形に歪んでいた。…歪んでいるのは唇だけではなさそう。
 そう、それは本来の姿を現したレザードと同じ、狂気を内包した妖艶な微笑。
その表情を見、背筋に寒いものが走ったアリーシャが言葉を失ったまま彼を見上げる。
彼は髪を解いているらしく、深い森に降る雨みたいな長い髪がアリーシャの視界という視界を奪い、見えるのは素顔の彼の表情だけ。
 彼の返答は言葉ではなく唇だった。ルーファスは微笑を消し少し怖いほど厳しい表情に変え、わずかに上を向いたアリーシャの頬に触れて彼女の表情をはっきりとさらした。そして少し荒い息遣いで覆いかぶさり、半開きの男の唇が二度目の唇に触れた。
それから先はすぐに離れて罪悪感にさいなまれた、彼しか知らない最初のそれとは違いそのままさらに深く重ね合わせる。
他の場所とは違う特別な場所を重ねる感覚はルーファスの理性をさらに上回る速さで彼らしさを侵食してゆく、言葉遣いの割に紳士的な距離感を保ち続けた男の暴挙を、その体で直に受け止めるアリーシャは動けない。
 一瞬唇を外してルーファスが浅く速い息継ぎをはさみ、そしてもう一度、さらに容赦なく乙女の唇を奪う。最初とは違い直後に罪悪感に襲われて顔を背けるなんて意気地のないことはしない、大きな手でやわらかな頬を包み込みもう何度目かわからない回数吐き出した吐息は霧散することなくそのままアリーシャの唇に、そしてその奥の舌に絡みついた。
 聞きたいことがいくつもあるのに、彼は唇を解放してくれない。
理性が強い男が理性を飛ばしてしまうとひどいことになる、彼の変貌ぶりが信じられないアリーシャだけど、今ではひとかどのものとなった彼女の剣の腕は関係ない、意志の強さがそのまま腕力になるこの場面では明らかにルーファスに分がある。
卑劣にも彼は女の手首を縛りアリーシャの両頬を大きな手で包み込みしなやかなはちみつ色の髪をかき乱し、男の唇が淫らな水音を漏らしながら無礼にも舌まで重ね絡み合わせて――――彼は初めてではなくても、アリーシャには初めてのそれがあまりにも残酷に淫蕩に与えられて、アリーシャの青い瞳に無意識のうちに涙が浮かんだ。
彼女だって特殊な境遇ながら年頃の乙女には変わりなくて、好きな男性との初めての口づけに美しい憧れはあったろう。意識するよりも前に彼に与えられたとはいえ、こんなに卑猥で生々しいそれを、いきなり、最初からなどとは…。
「………して…………?」
 表情はうっとりしながら、アリーシャがちぐはぐな問いかけをする。「どうして?」と問いたかったのに、すっかり息が上がってしまって思うように言葉がつむげない。
それも仕方がない、無邪気に信頼していたというかほのかな感情をくれる異性を、彼女はそのプラトニックな美しく装われた感情を無邪気に慕っていただけ。
男として荒々しく生々しい感情も抱えている彼の一部分だけを無邪気に信じていた。
 しかしルーファスはその問いに答えずに、椅子をきしませアリーシャの体に触れた。何を言おうとこの状況は彼女への裏切りでしかなくて、言い訳ができるほど彼は器用にできてないし、どうやらするつもりもなさそう。
アリーシャもこういう場面どうすればいいかなんて知るはずもなくて誰も教えてくれてなくて、触れているのは互いに思いを寄せているルーファスだから感情の抵抗も鈍くて弱くて体をこわばらせるのが精一杯で、しかし王族の貞操観念として何かが根強く彼女の内側で悲鳴を挙げ続ける。
けれどそれが声になるどころか、拒否の声も喘ぎすらも喉に引っかかって出てこない。
声らしい声がすべて出てこなくなってしまった。
 固まってしまい声すら出ないアリーシャを支配しているのが「恐怖」だということぐらい、いくら彼女が関わると余裕をなくすルーファスでもわかるし読める。期待しているにしては嗚咽にも似たしゃっくりが止まらないし青い瞳は揺れてばかりいるし、何より小さな体がカタカタと小刻みにふるえている。
一歩踏み出してしまった男にできることといったら、彼女の恐怖を尊重し開放するか、激情の波に呑み溺れさせてしまうか、ふたつにひとつ。強く自分を御していたルーファスの箍は彼の手とアリーシャの無意識の誘惑で壊された、開放という選択肢は彼の中にはない。
 アリーシャの細く白い首に唇を這わせ時折舌先でなぞり痕を残しつつ吸い、ルーファスの手がささやかなふくらみにかぶさりそっと撫でた、けれど――――女の体の感触にしては固くてその下にまだ何かあるらしく、まさぐるのを切り上げた手がアリーシャの喉元に伸び服のボタンを遠慮なく外し始めた。
「っ!!」
 脱がされる恐怖にアリーシャの瞳が見開かれ体が大きく跳ね、小さな足が大きな音をたてて床を蹴った。しかし縛られている上長身な男の体でさらに拘束されて逃れられようはずもない。
縛られたままの彼女の抵抗はそこまでで、ルーファスは細い指先をもつれさせることもなく何枚も重ねられている服の胸元をあっさりとはだけさせると、乙女の柔肌を露にし早速鎖骨の線が浮かぶあたりに吸いつきそのまま舌先で柔らかい肉を味わう。肌が重なり触れ合う感触は特別なようで特別ではなく、彼女がひとりでなくなってからはいろんな人の肌、主に手に触れ、かすかに心強さは覚えたけれどそれ以上の何かを感じたことはほとんどない。
 数少ない例外が、この男。彼と自分が似たような立場にあると知ったことで生まれた親近感を感じた時から、アリーシャの中でこの男が特別になっていった。
わずかな心強さ以上の感情を覚えたのはルーファスだけ。
 素肌に絡む緑の長い髪が蠢くたびにアリーシャの体の奥で熱が生まれ高まり肌まで熱を帯びてしっとり濡れて…押さえ込んでいるルーファスの体がこんなに大きかったことを彼女は初めて知った。
その唇は熱く、女の肌を求めアリーシャの体に這いずる舌はもっと熱いことを初めて知った。
手は大きいが細そうに見えていた腕がこんなに強かったなんて今さら知った。
 頭は恐怖ばかりを訴える。けれど自分に触れているのは愛しい男の体。
アリーシャの小さな体の中でせめぎ合う感情が彼女の声を奪ってしまった。そうしている間もルーファスは椅子の背越しにまたアリーシャの唇を奪い舌を絡みつけるあの淫蕩な口づけを味わいながら、彼の手のひらに感じた固い感触、彼女のコルセットの紐に指を絡め解き始める。
「…ったくがっちりガードしやがって……これも鎧ですってか?」
 聞き慣れた声が、アリーシャの唇に響く近さで、唇から聞こえるみたい。
自分が今どんな格好をさせられているか、唇で拘束されて見えないけれど胸元がやけに涼しいから…暢気なアリーシャもこの先にあるだろう得体の知れない恐怖に耐え切れなくなって身をよじり抵抗を試みるけれど、すべて手首で封じ込められて効果は望めない。
そして大きな手が滑らかなふたつのふくらみを包み込むみたいに直に触れる。
「コルセットで締めてるわけじゃなかったのか。」
 素肌に感じた汗ばんだ男の大きな手のひらの感触に、アリーシャの体が恐怖以外の理由で大きく跳ねた。彼女を一瞬だけ襲った感覚は小さな体を駆け巡り、それは如実に反応として現れる。ルーファスの手は掌の中の変化を当然察知して、わざとそれを刺激し煽るかのようにアリーシャの幼げですらあるふくらみをやわやわと揉みしだいた。
アリーシャのそれはなだらかで一見幼げですらあるが、普段は何枚も重ねている厚い服の奥に隠れていて正体など図りようもない。ルーファスも男、それを盗み見て目算したこともあるが、
「俺の手ででかくするからいいか。」
 アリーシャは小柄で華奢で、高貴なご身分の女性らしく補正下着で体の線を整えていて、その胸は想像以上に小さかった。しかし彼は言いながら笑いながら小さなふくらみを撫で揉みしだき程なく存在を主張し始めた赤い蕾を今度は指先に捕らえてじんわりと愛で始めた。当然小さな体は彼の手のひらに翻弄されるたびにビクリとはねて、恐怖とは違う理由から小刻みにふるえて、アリーシャの頬は酔っているよりも紅く染まってしまっている。
アリーシャは自分が今から何をされるか知らずとも、彼女の人格のさらに奥底、女としての本能は何をされるか知っている。
この男は牡としてアリーシャの女を欲している。
救いは誰でもよくて、たまたまアリーシャが目の前にいたことではなく、アリーシャの無意識の誘惑に陥落したことだろうが、それもこれも彼女の与り知らぬこと。
ルーファスの手の、指の感触に恐怖を感じながらも、アリーシャは別の理由で強張ったままのひざから下、つま先のふるえを止められない。
それはふるえではなくて
「ん? 胸揉まれただけで感じたってか?」
アリーシャの体のことなのに、なぜかルーファスの方が理由をわかっているから、彼女の恐怖はまた膨れ上がって彼女の体からあふれかえってしまいそう。
違う、と言いたくても声が出なくて唇が動くだけで、彼女の唇が苦しげに動くとそれをさらに追い詰めるみたいにルーファスが何度も奪う。最初はついばむみたいに軽く、一回ごとの触れている時間が長くなりそして離れずに顎の角度を何度も変えて、アリーシャの小さな舌はもう何度犯されたかすらわからないほど弄ばれていた。
 アリーシャの指先にさわさわとしなやかな長い髪が絡みついて、さらに彼女を縛りつける。白い指に緑の髪が絡んで、つかむものを求めるアリーシャがそれを鷲掴むけれど、長い髪はまるで手繰り寄せても限がないみたい。
すぐにアリーシャの指をすり抜けて彼の意思のまま彼女に絡んで感情ごと縛りあげる。
 小さな手が、体中を駆け巡り侵食し支配する快楽から逃げたいのかそれを手繰りたいのか、縛りつけられている何か――――上着掛けごと動かそうとアリーシャが暴れるみたいに身をよじるけど、ルーファスは威嚇、恫喝のかわりかそれの台座を片足で音が立つほど踏みつけた。
「甘いよお前、俺を男だと思ってなかったろ。
 今からしっかりその体に教えてやるからな…覚悟決めとけ。」
 そのような毒を吐かれても、アリーシャの覚悟は定まろうはずもない。
けれど逃げられないことだけは諦めにも似た事実としてアリーシャに突きつけられる。
ルーファスのそれは暴力のはずなのに、彼女の体に甘く響いて波紋を広げた。


 体の奥が蕩けてなくなりそうな熱がアリーシャを苛み続ける。
椅子に座ったまま縛られ、好きな男の手とは言え欲望にまみれた手で弄ばれ貪られ、恐怖心が砕けず残ったまま理性がつなぎとめられている現実が彼女に残酷すぎる。
「…っと強情だな、声ひとつ挙げないなんて。」
 憎まれ口のような台詞を口にしながら、ルーファスはまた一枚紅い花びらを瑞々しい乙女の肌に散らし刻みつけた。彼は乱れた髪をかき上げて自ら隠されていた視界を開き、アリーシャの肌を味わうように舌先でなぞる。
「何か言うまで、って思ってたけど…もういいか。」
「っ!」
 アリーシャの体の中心に、別の体温が触れた。
「すごいことになってるじゃないか。こんなにとろとろにして…お前は強情でも体は正直みたいだぞ?」
 感情を吐き出せずにいたアリーシャが吐き出してたのは初めての雫で、ルーファスは下着の上から彼女の中心、熱く潤む谷間の奥を指先で探りつつ彼女の肉付きのよい太ももを抱え片足だけ己の肩に乗せさせる。また不自然な体勢を強要されたアリーシャは、最後の抵抗の手段、彼の望む声を出すまいと唇を噛み突き上げて来る衝動をすべてのどの奥で殺そうと試みるが、それが却ってえもいわれぬ嬌声となって男の聴覚を刺激するから逆効果でしかない。
ふたつに折り曲げられるみたいなつらい体勢で、しかしルーファスの責めの手は一向に弱まる気配などなくて、身を強張らせ必死でこらえているつもりのアリーシャだけどその様子はまるで軟体動物のようだった。ルーファスが肉付きのよい女らしい太ももにいくつもいくつも所有の印を紅く刻みつけさらにそれを舌先でなぞり確かめて湿ったため息をついて――――そしてまた印を刻む。
さっきからそれの繰り返し。印が増えるたびに、いや太ももを愛でられるたびにアリーシャの奥から滴る蜜はとどまるところを知らぬ泉のように彼女のくぼみを潤し続ける。
「さて、と………」
 もう何度目だろう? ルーファスの指がアリーシャの下着の上から彼女の中心を探る。そのたびに白い脚は跳ねてふるえて強張って…アリーシャはもう限界だった。
体中が痛くて仕方がない。
 けれど今回は違い、女のもっともやわらかく繊細な場所に男の指が初めて直に触れた。
彼の指はアリーシャの下着の中へと滑り込み淡い茂みをかき分けてやわらかく潤う谷間を割り、ひとしきり彼女の花の形を確かめると迷うことなくその奥、彼女の入り口を探し始めた。すぐに指先が見つけた固い入り口を、ルーファスはわざと音をたてながらまさぐり指先を沈めてゆく。
弱い痛みを感じるほどに理性も感覚も残っているアリーシャは当然、今度は痛みで身を跳ねさせた。そこは男を知らぬ生娘らしく固くてぎこちなくて強情だけど、ルーファスは何が満足なのか、彼女の肉体に抗われているのに、拒否されているのに笑っていた。
「ずいぶん小っちゃいな…ま、どうせ最初は血が出るもんだし。
 ほらどうだアリーシャ、指入ってるぜ?」
 唇と舌と言葉と声は彼女の耳朶を嬲り、細い男の指は男を受け入れるそこをいたぶる。
狭い場所に指を差し込まれただけで彼女のそこはわずかな痛みを感じ異物を吐き出そうと試みるけれど、ルーファスはその肉体的な抵抗を簡単に力でねじ伏せ指を軽く曲げ小刻みに動かし始めた。どうやら彼の指先が捉えた場所は特別らしく、初めてのはずのアリーシャの体なのに、彼の指遣いだけでたちまち脚がふるえ腰が振れて彼女はその痴態を見せまいとしのぐためにさらに体を強張らせる。
彼女に襲い掛かってきたのは弱い痛みの余韻ではなく快楽で、最初は小さく動かしていただけの指を、ルーファスが次第に激しく抜き差ししそこをかき回して――――

 アリーシャの意識が破裂した。そして頭の中のすべてが飛んで真っ白になる。

「…なんて顔しやがる……処女のクセ先にいかされるなんて、ホントやらしい王女様だなお前。
 これならいきっぱなしでわけわからなくしちまうのもそう難しい話じゃなさそうだ。」
 それまでは涙をこぼし歯を食いしばり必死で堪え抗い続けたアリーシャだったが、執拗にいたぶられ責めたてられて、彼の望むまま、先に終わらせられてしまった。
それでも彼は満足しないらしい、羞恥心を残しながら望まぬ絶頂を与えられたアリーシャの脚を大きく開かせて、ぎこちないながらもひくついている女の窄まりをしつこく指で責め続けそしてようやく指を抜いた。
彼の手でも支えられていた小さな体は支えをなくすと椅子と彼女の手を縛る上着掛けと布にすべてを預けるしかなくて、木だけで作られている簡素な椅子にアリーシャがすべてを預けたことで、いたぶられ絞られた濃い蜜が椅子に滴る様を、そして己の指にべっとりと絡みついた同じそれにルーファスは妖艶に笑うと指についた蜜を舌先で掬い取り味わった。
 ようやくアリーシャの両腕が解き放たれた。手首に跡がくっきりと残るほど彼女の抵抗などは激しくて、そんな彼女を縛っていたのはルーファスがいつも頭に巻いている大きなバンダナだった。臙脂のバンダナは音もなく床に落ち、解放されたアリーシャの手がすがるものを求めてすがりついたのは、椅子の肘掛に今置かれたルーファスの手。
そのままそれをたどって彼の腕を掴み爪を立てた彼女を、男の腕が軽々と抱え上げる。
その後は、当然……。
 狭いベッドが大きくきしみ、その上でアリーシャが声にならない悲鳴を、一瞬だけ挙げた。
アリーシャの体が抉じ開けられた。ルーファスは力の入らない彼女の両脚を抱えて谷間の奥まで露にすると、己の怒張を束縛の楔とし余韻の残る小さな蜜壷に、半ば力ずくで捻じ込んだ。執拗で底意地の悪い責めもすべてこの瞬間のための準備でしかなく、それでも処女の肉の抵抗は大きく、体格差のある男の体で無理に体を開かされた乙女の純潔の証が痛々しくも真白い床布に滴って深紅の薔薇を咲かせる。
「やっぱキツいな…でもしっかり咥えこんじゃって。
 じゃあしっかりと味わえよ、意地張ってると張り通すより先に壊れちまうぞ。」
 アリーシャを貫いたルーファスにももちろん彼女の血が滴っているはずなのだけど、その気になった男の容赦のなさは残虐ですらあり、彼は両肩にアリーシャの脚を乗せさらに深い場所を求め律動を繰り返す。穢れ知らぬ身体を力ずくで抉じ開けられ貫かれ揺らされるなど、女には屈辱と痛みしかないはずなのに――――
「そう悪くはなさそうだな。
 アリーシャ、お前のここは俺を気に入ってくれたみたいだぜ? いい具合に締めつけてきやがる。」
 ひどいことを言われアリーシャは首を横に振ろうとするが、覆いかぶさり激しく貪るルーファスのそれは憎いことに彼の下衆な物言いを裏付けるかのように、痛く、けれど抗えない甘さを孕んでいた。抉られるたび、突き立てられるたび、何度も抜き差しされるたびに女の芯が疼き、かき混ぜられる痛みと快楽と言う対極の感覚にアリーシャが抗うこともままならぬまま呑まれ溺れてゆく。
 アリーシャの髪よりずっと長い緑の髪が、白いシーツの上で艶かしく蠢いて揺れて乱れて彼女がそれを掴もうとする。しかし彼女の指に絡みついたのは男の指。
ルーファスは右手を、掴むものを求める彼女の左手に重ね指を絡めた。彼を守り続けた赤い石の指輪が、今は彼女の左の薬指で彼女を守っている。
 そうしてまで守り続けた存在を壊すほどの激情。
…おそらく、その指に大きさの合わない己の指輪をはめたあの瞬間に、いやそれよりずっと前に彼はこうすることを望み始めていた。臆病な彼が今までそれを許さなかっただけで、理性の箍を壊してしまえばこんなにも荒々しくそして激しい。
アリーシャは激しさと熱を己の体で受け止めながら、自分の体の内側で暴れる熱を感じながら、まだ何かこらえたいのか脱がされなかった服の袖口を強く噛んだ。その代わりとばかりに雄弁に語るのは彼女の白い脚、ルーファスの肩に乗せられ抱えられて素足が何度も大きくふるえる。
拒む顔を見せながら膨れ上がる甘さに逆らえなくなる、淫らな中身を暴かれてしまいそう。アリーシャが感じている突き上げられる衝撃の先にある内臓だけでなく別のものまで引きずり出しそうな律動の中に潜む甘いそれはやはり快楽で、大きすぎる痛みとまだ小さな快楽が、どういうことか形のないものを量る天秤に載せればいつまでもいつまでも揺れ続ける。
ただ痛いだけではないからアリーシャもすべてをもって彼を拒むことができずにいる。
アリーシャの中ですべてが揺れ続ける。
今まで感じた痛みすべてとは明らかに異質の痛みが彼女を蝕む。
これだけの情交に溺れさせられているのに、いまだに、自分がどうなっているのか彼女はわからずにいる。


 あまりにも生々しい感覚だけが「これは現実なのだ」と彼女に理解させていた。



「…頼むからさぁ、もうちょっと、こう……警戒してくれよ。
 俺だって我慢するにも限界ってもんがあるんだから……。」
 事が終わると、ルーファスは一転していつもの「口は悪いが押しは弱い」彼に戻ってしまった。あんなに残酷なまでに容赦がなく、支配欲と独占欲丸出しで、なのに背筋が凍りそうなほど妖艶ですらあった彼は別人のように姿を消してしまった。
それを言えば気が弱くぼんやりしているほど暢気で鷹揚なアリーシャも、最中は声を堪えきってしまうほど強情で可愛げはないくせ、体だけは立派に18の女。
瑞々しい肢体と女として熟れ始めた性は、簡単に男を誘い寄せ味を覚えてしまった。
アリーシャは彼の腕に抱かれているのに不機嫌な顔を崩そうともしないくせ、実のところ無理に抉じ開けられたはずの彼女の女は、その意思に反しまだ熱く蕩けて余韻を楽しんでいた。
 いかにもばつが悪そうにもごもごと歯切れの悪い台詞を吐く男の暴挙を、いくら温厚通り越して鷹揚なアリーシャでもそう許せるものではなくて、強い腕に抱かれながらも彼女の中にあったありったけの憎悪をこめて愛しい男をにらみつけてみたけれど
「……ごめん。堪え切れなかった時点で俺が悪いんだよな。
 もうちょっと我慢できるつもりでいたんだけど……。」
 あまりにもいつもの彼で、しかも弱気で拍子抜けで頭なんて掻いている様子は子供のようですらある。もちろんあんなことをする以上子供じゃないのはアリーシャだってわかっているつもりだけど、彼女も彼女で言われたことでぎくりとしたのもまた事実。
 かつて慕っていたレオーネも、忠実な護衛役も兼ねていたディランも、そして誰よりシルメリアがアリーシャののんびりしすぎる性格を心配していた。
中でもアリーシャの中にいたシルメリアはルーファスをずっと警戒していた、思い返せば彼女の懸念が、彼女がいなくなったことで現実になっただけ…と気づいてしまったら、ルーファスばかり責められなくなる。
彼も情交の後であちこちはだけ汗ばむ素肌を覗かせながらも「もう手を出しません」の意思表示の代わりか、上着以外は脱がずに、脱いだ上着はアリーシャの小さな肩を包んでいる。
あまりにも激しい交渉に体中痛くて動けないほど疲れた彼女の複雑な下着をまた元のように着せるような器用さは彼にはないから、ルーファスは自分が満足したあとは上着で彼女を包んで隠し、仰向けに横たわるついでに彼女を胸板に乗せた。
暴挙に及び刺されそうな眼差しでにらまれようと、感触を知ったからこそ離れたくないわがままな男。
…もう怒ることすらなんだかバカバカしいみたいで、アリーシャは諦めて彼の胸にもたれかかった。
「…痛かったか?」
「血が出たのに痛くなかったと思うの?」
「…だよな。ごめん。」
 臆病な問いかけにアリーシャは顔すら上げず彼の胸に直に冷たく言い放つ。投げ出された脚はそれぞれ絡み合うのに、どこか空気は寒々しい。
「…ねえ、ルーファス」
「ん?」

「私、生まれて初めてよ。どうしてくれるつもり?」

 呼びかけと同時に身を起こしたアリーシャの追求への返答は「再戦」、ふたりの体勢はルーファスが簡単に入れ替えて、彼はまたアリーシャを仰向けに横たえると覆いかぶさった。そしてまた口づけから仕切り直す。

「じゃあ嫌なこと全部忘れっちまうぐらい楽しもうぜ。
 …そのくらい、たまにはいいだろうよ。」
「たまに?」
「お前に誘われたらどうなるかわかんねえけどな。
 ま、結局人間とかハーフエルフじゃなくなってもたいした変わりはないってことだ。」
「あ、なにをっ」
「もう一回。」

 「嫌なこと全部忘れるぐらい楽しもう」の言葉に、アリーシャが抗えずに欲しがられるまままた情欲に溺れる。押し潰されそうだった不安の中、確かに彼に抱かれている真っ最中は別のことに支配されてすっかり忘れてしまっていた。
重なった唇と絡みつけられた男の舌の感触で、彼女の中に残る熱が小さな火に姿を変えてたちまちその身を焦がすほどに燃え上がる。それだけで、たとえつかの間だろうと消えることのなかった尽きぬ恐怖がなりを潜めるから――――痛みと純潔と引き換えに情欲に溺れる理由は、たとえ感情がなくてもそれで充分だった。
不安をぬぐえるほど強い快楽と歪んだ充足感でもないよりはまし。

 今度はアリーシャの白い指がルーファスの緑の髪をしっかりと絡め取った。
ベッドの軋む音は途切れない。

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