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レッドイグアナ

 赤いイグアナ。ガラパゴスの海イグアナを父に、陸イグアナを母に持つ、突然変異のハイブリッドイグアナである。 雑種イグアナの中でも唯一赤い体色を持ち(※)、そのため脱皮の皮が一匹だけ赤いのが悩み。
 儀式の際は大鐘を担当し、幸猫と共に収穫した人間を獣に変える。
 イグアナ茶(海・陸)やイグアナ油、イグアナウロコのお守りなどを制作する。
 里では自分のハーブ畑&サボテン園を抱える他、毛のない種族である特性を生かして、パソコン操作の仕事に従事している。
※‥‥サイト開設時は知られていませんでしたが、 近年南米出身のグリーンイグアナには赤色素変異が確認され「グリーンイグアナ・エリスリスティックス」と呼ばれています。 それ風にいうとレッドは「ガラパゴス海陸ハイブリッドイグアナ・エリスリスティックス」ですね。
◆09/02/16付記‥‥09年1月、ガラパゴスで見つかったピンクイグアナが新種であると発表され、人里の話題を攫いました。 もしかしてレッドの遠い親戚の種族かも?‥‥
参考url  「新種のピンクイグアナ発見(ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト)」

◇ レッドイグアナ物語 ◇

(作・榊 祐介)
 海イグアナの父と、陸イグアナの母は、ガラパゴスの海岸近くの岩場にある、太ったサボテンの下で出会った。

 エルニーニョの影響で、海水温が上昇し、海イグアナの主食である海草が壊滅状態に陥ったのは、1980年代のこと。
 海イグアナの父は、餓死と種族絶滅の危機に瀕して、
「環境の変化に強い子孫を残さねば‥‥」
 と考えたらしく、余力を振り絞って陸に上がった。

 海中の環境破壊とは裏腹に、普段は到底降らない量の豊富な雨のおかげで、陸上の植物は大量に繁茂し、それを餌とする陸イグアナは、みな丸々と太っていた。
 雨を吸いすぎて割れた、大きなウチワサボテンの下に、ひときわよく太った陸イグアナのメスがいた。
 のちにレッドイグアナの母になる彼女は、とても健康で丈夫そうだったので、父はそれで彼女を選んだらしい。

 普段陸には上がってこない、痩せて小柄な海イグアナの父が、母に近づいてくるのを見て、彼女を取り巻く陸イグアナのオス達は一斉に鼻を鳴らして威嚇したとか。
 しかし絶滅がかかっている父は諦めなかった。

『ヘイ、そこのドライな彼女。俺の女にならないか?』

 という、開口一番の父のセリフは、今でも陸イグアナたちの語り草だ。
 声を掛けられた母は、しばし茫然として父を眺めたそうだ。
 海イグアナは、危機的状況のおかげで特殊なホルモン分泌が働き、成体にもかかわらず、全体的に身体がより小さくなってしまっていたし、泳ぐ際に吸った海水を、鼻から排出するという生体機能のため、頭には乾燥した塩が白く冠を作っている。
 陸イグアナの基準からすると、謎の海イグアナは繁殖相手としては問題外だったと思うのだが、何故か母は、この時父の卵を産んだのだった。

『いや、何か必死そうだったし、それじゃ断るのも悪いかと思って』
 と、後で母は語ったが、本当のところは解らない。
 母が単に守備範囲の広い、変わった陸イグアナだったのかも知れないし、父が種族の壁を越えさせるほどの、男前の海イグアナだったのかも知れない。

 ともかく、父はその後母に看取られて息を引き取り、残された母は、父の血を引いた子供のことを考えて、陸イグアナの産卵場所ではなく、森の泉で20個ほどの卵を産んだ。
 もっとも、そのうちの10個ほどは、孵らぬままに割れたり腐ったり、人間が持ち込んだ、野蛮な渡来動物に食べられたりしてしまった。
 後の10個は何とか孵化したものの、生後間もないうちに7匹が死に、生き残って成長したのはわずかに3匹ほどだった。やはり、最初の雑種だけあって、色々と不具合があったのだろう。

生後間もない頃
↑生後間もない頃。
 そしてその、生き延びた3匹のうちの一匹が、何故か赤い体色をしていた。
 陸イグアナは、茶と黄色の中間のような色だし、海イグアナは、緑と茶の中間っぽい色だ。
 出身の島によっては、主食の海藻の関係で、赤い模様がまだらに入っている海イグアナの一族もいるが、その一匹だけは、何故か最初から全身が赤かったのだ。
 ただでさえ、ガラパゴス初の雑種イグアナである。海でも陸でもまだまだ居所が確立されていなかったし、その上、特殊な赤い色をしていては、ますます身の置き所がなかった。
将来の夢
↑将来、怪獣に進化する
場合の希望図。

 そこで母は、その子供を伝説の『獣の里』に行かせることに決めた。
 森の泉の一角に、里へ通じる秘密の異空間通路があったのは、ガラパゴスの動物たちの皆知るところであったのだが、いかんせん、里はここに比べたらかなり寒冷な気候である。寒さに弱いガラパゴス生まれの獣達の中で、里に行く者は今まで誰もなかったのだ。

『でも、お前はちょっと変わってるからね。多分大丈夫だろう』
 そう言って、母はレッドイグアナを送り出してくれた。

 赤いイグアナは、こうして獣の里の住人になったのだった。
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