※はじめに
・これは二階堂×豪炎寺前提のプロローグから円堂×風丸、吹雪×染岡、二階堂×豪炎寺の分岐話です。
・分岐はオムニバスになります。
・二階堂、円堂、吹雪以外の選手キャラクターは全員女体化です。
・雷門サッカー部は円堂以外全員女の子です。
・微性的描写があります。
女の子の世界
- プロローグ -
エイリア事件も終わったある日。雷門と木戸川清修の練習試合があった。
豪炎寺は元木戸川の生徒だけあり、監督の二階堂に会えてとても嬉しそうだと雷門の部員たちは思う。
「二階堂監督っ」
試合が終わるなり、豪炎寺は二階堂の元へ小走りで駆け寄って彼の腕を引いた。部室近くに珍しい花を植えたので見て欲しい。そんな話し声が聞こえる。
ベンチでスポーツドリンクを飲んでいた染岡は、ん?と喉を鳴らして飲み口を離す。
二階堂を引っ張る豪炎寺がらしくないと思ってしまったのだ。彼女はいつもサッカーにひたむきで、たくましい存在だった。男顔負けに強い彼女に染岡は触発され、憧れてもいた。そんな彼女が元監督の男に引っ付いて腕を引く光景は染岡の理想を壊すものだった。
今まであまり気にしていなかったが、初めて二階堂に対して不快な気持ちになる。豪炎寺を変える存在が嫌だった。
「染岡?」
傍で飲んでいた風丸が首を傾げる。
「豪炎寺が花だとよ……。あいつ、妹さんが絡まなきゃそんな話はしなかった」
「はは。まあいいじゃないか」
「………………………………」
笑う風丸に、染岡は苦い顔をした。彼女の豪炎寺へのライバル心交じりのコンプレックスは察しているので仕方がないと肩を竦める。
「あ」
ベンチに置かれた備品に気付き、拾う。
「これ、部室に戻してくる」
風丸は仲間にそう告げてから部室へと向かった。
部室に備品を戻した後、風丸の足はグラウンドへ向かわず、花壇へと向く。染岡の話がそうさせた。
サッカー部部室、そして一年校舎裏口の周りには草花が植えられている。
「二階堂監督、これです」
大木の付近で豪炎寺はしゃがみ、花を二階堂に見えるように手で添えた。
「それか。ああ、綺麗だな」
二階堂も彼女の隣に並んで腰を下ろし、花を眺める。
「なんて名前なんだ?」
「…………ええと、珍しい花だと小此木先生が言うだけで……詳しくは……」
「お前は正直だな」
二階堂は豪炎寺の頭をくしゃくしゃにさせて撫でた。豪炎寺はほんのりと頬を染めてはにかみ、二階堂に頭を寄せてもたれる。
――――こら、駄目だぞ。小声で囁き、豪炎寺をやんわりと引き離す二階堂。
「でも、かんとく」
寂しそうな目をする豪炎寺に、二階堂は立ち上がって視線をそらした。豪炎寺も立ち上がるが、不満そうにつま先で土を弄る。その表情は二階堂にしか見せた事はない、彼女なりの甘えが入った姿だった。
二人はフットボールフロンティア準決勝での再会から特別な仲になっていた。けれども二人の取り巻く事情は想うままに愛し合えず、会う事さえもままならない。障害の多い事を承知して交際を始めたが、それでも不満なものは不満であり、我慢強く同年代の子供より大人びた豪炎寺でも顔に出てしまう。
エイリア事件も解決し、入院していた夕香が退院したりと豪炎寺には嬉しい出来事ばかりだったせいか、ここ最近のテスト続きで二階堂に会えない憂鬱は些細だからこそ許容が狭い。花を見るという口実で二階堂を誘ったのも、単に二人きりになりたかっただけ。二階堂も豪炎寺の気持ちは察しているからこそ連れ出されたが、それ以上の行為は許さなかった。
「豪炎寺」
慰めようと豪炎寺の肩に手を置く二階堂。口を尖らせたままの彼女の顔を、そっと、柔らかく、手で添えて上げさせてやった。
「かんとく」
半眼だった豪炎寺の瞳が二階堂の顔を見上げてくる。
近い距離で寄り添う男女の姿を、風丸が呆然とした顔で建物の影から見ているなど気付きもせずに甘い囁きを続けた。
豪炎寺がつま先立ちになり、二階堂の衣服を掴む。これは口付けを強請る合図。こんな場所でしてくるなど、彼女の我慢の限界はとっくに過ぎているのだと二階堂は困惑する。だが、我慢はあと少しだけだと二階堂は彼女に伝えようとした。
「豪炎寺。もう少しの辛抱だ。あとは解散するだけだろう?」
「じゃあ、玄関でしてくださいね。もう待てないです」
「わかったよ。なんだ、すっかりご機嫌じゃないか」
「監督、ちゃんと掃除していますか?久しぶりに行くので気になります」
二階堂は練習試合が終わったら、豪炎寺を泊めると約束をしていたのだ。宿泊の話をすれば豪炎寺の機嫌は直り、早く戻りましょうとも言ってくる。彼女は大人びたようで、意外にも子供っぽい部分も持ち合わせている。単純に、年相応の中学生だった。
二人は談笑をしながらグラウンドへと戻っていく。出るに出られなくなった風丸は二人が通過をすると身を隠し、過ぎ去ってから姿を現す。
「ヤバいんじゃないのか……」
思わず、そう呟いていた。
豪炎寺と二階堂の仲がいいのは知っていたが、まさか恋仲だとまでは思わなかった。あの豪炎寺がまさか監督相手という禁忌に踏み入れるなど。
しかも泊まるような事を話していた。大人の男の家に行き、泊まるだなんて不埒な想像しか浮かばない。
彼女が随分と遠い存在に思えてきた。
→円堂×風丸編
→吹雪×染岡編
→二階堂×豪炎寺編
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