ドッペルゲンガー３（ないと・めあ）

ドッペルゲンガー３－１

　ミラーステージは本当に厄介だ。自分の位置をあっさり見失う。どこへ行っても鏡張りで、自分自身が無限に映っている。ヘタな迷路よりも迷いやすく、壁にぶつかりやすい。最初のうちはだんだん気持ち悪くなってきたが、慣れてくれば壁伝いにどうにか進むことができるようにはなった…手探り状態だが。コツは、周囲を「見すぎない」こと。目に頼りすぎれば自分を見失う。記憶や感性、カン、気の流れなど、五感・六感すべてを駆使すれば、どうにか状況を見渡すことができる。

　このフロアの厄介なところはもうひとつある。時々鏡に映った自分が勝手に動き出し、鏡から飛び出してきて襲いかかることだ。僕をそのまま女にしただけの怪物、ドッペルゲンガーだ。鏡張りのフロアでは３人出てくる。自分の実力と同じ相手が３人いるのだ、勝ち目などない戦いが続いた。

　それでも相手が３人でも勝てないことはなかった。いや、相手が３人だからこそ勝機を掴むことができた、とさえいえる。人数が多いからこそ、油断や隙が生まれる。人数に任せて、１人あたりの責任感が薄れるためか。そこが狙い目で、僕は｢自分の弱点｣を突いて、ギリギリのところで勝ち進んできたのだった。射精寸前でこらえて自分と同じ実力の”自分”を３人倒すたびに、レベルは上がるが、もちろんその分相手も強くなり、それでもどこかにスキができて、同じように間抜けなドッペルゲンガーたちを倒し続ける。そしてその度に、勝ちながらも自己嫌悪に陥るのである。相手のマヌケさはそのまま僕自身の間抜けぶりなのだ。いくらレベルが上がっても変わることの内敵サイドの油断を目の当たりにして、どんどんウツになるほかはない。

　ともあれ、このステージもかなり進み、目を閉じがちで鏡の通路を手探りで進んで、そろそろゴールかなと思い始めていた。

　「…。」どうやら鏡張りの部屋はここでおしまいのようだ。目の前に真っ暗な空間が広がっている。灯りのついていない、しかし鏡の通路から漏れた光でわずかに見えるのは、周囲の壁が鏡でできている真っ暗な大部屋だった。

　多分ここが、このフロアのプチボスがいるところなのだろう。僕は精力を確認して、意を決して大きなホールに足を踏み入れた。思った以上に広く、天井もかなり高い。決戦場にふさわしい大舞台だ。

　僕が足を踏み入れたとたん、淡く青白い光がぼんやりと周囲を照らした。覗いたとおり、大ホール程度の広さがある円形の大部屋で、壁が鏡になっている。何枚も連なって構成された鏡すべてに僕の姿が映っている。拡大鏡らしく、自分の姿が遠く映っているはずなのに等身大程度の大きさだ。

　チカッ！

　「！」部屋の片隅、床と壁の境目付近が一瞬、白い点のように光った。「…。」光った場所を凝視するが、何も起こらない。…光ったのは気のせいかな。

　「…はっ！」光に気を取られ、鏡から目を離した。再び鏡を見ると、壁にびっしり並んでいる何十枚もの鏡に映っている僕のすべてが女体化していた。思わず自分の体を見るが、こっちはちゃんと男だ。つまり鏡に映っているのはすべてドッペルゲンガーというわけだ。戦慄したとたん、後ろの通路が消えて壁となり、僕は閉じ込められてしまった。もちろん真後ろの壁にも鏡があり、そこにドッペルが映し出されている。

　ドッペルゲンガーたちが一斉に出てきた。僕の真後ろからもドッペルが出てくるので、僕はホールの真ん中に避難した。３０人近くはいるだろうか。鏡の数を数えてはいないが、そのすべての鏡から出てきたのだから、鏡の数と同じ人数だろう。って、１０人バージョンのはずがいきなり３０人かよ。話が違うじゃないか！

　「う…うゎ…うわあああああっ！！！」僕は思わず恐怖の叫びを上げた。１０人どころじゃあない。鏡に映る僕はすべて女の姿で、次から次へと鏡から出てくるのだ。ドッペルゲンガーの数は数十、いや軽く百は越えていた。

　その一人一人が、すべて自分と同じ強さなのだ。いくら数に甘えて油断が生じるといっても、無限に出てくるドッペル相手では、人海戦術で僕の弱点を中心にすべての性感帯を責められ、あっという間に果ててしまうだろう。こんなの勝てるわけがない。

　ドッペルゲンガーたちがじわじわと増えながら、ゆっくり近づいてくる。絶体絶命だった。一体どうすれば打開できるのだ。恐怖に心臓が高鳴り続けていた。
　

―選択肢―
ドッペルゲンガー３－２　まとめて愛撫攻撃
 ドッペルゲンガー３－３　鏡を破壊する
 ドッペルゲンガー３－４　壁際に逃れ一人ずつ愛撫

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