ドッペルゲンガー３（ないと・めあ）

ドッペルゲンガー３－４
　

　僕はドッペルたちを掻き分け、舞空術でジャンプしながら壁際に逃れた。余裕のある大勢のドッペルたちはムリヤリ僕をつかまえるようなことはせず、あくまでやさしくゆっくり近づいてくるのだった。手を伸ばしては僕に振り払われ、体をこすりつけては僕に突き飛ばされる。それでも彼女たちは文句一つ言わず、弱いものをちょっとずつ集団でいたぶることを楽しんでいるみたいだった。自分にこんな残虐性があるとは認めたくなかった。

　どうやら僕が抵抗を続けても、数に任せて疲弊させ、あきらめたところで一斉に襲い掛かるつもりだろう。もし僕がこの集団の一員なら、周囲に同調しながら同じように考える。絶対勝てると分かっていれば、なんらの制約もないのであるなら、僕だって人間なのだからいくらでも残虐になれるのだ。

　思わず壁際に逃れたが、当然真後ろの鏡からもドッペルが飛び出してきており、僕は背中からも愛される。とにかく一人ずついたぶるように近づいているのだから、脱出方法を考えながら近づいたドッペルを愛撫で跳ね除けるしかない。

　チカッ！　光の点が僕の足もとで一回点滅すると、すべての鏡からドッペルが出てくる。あと数分もせずに、このホールはドッペルゲンガーで埋め尽くされるであろう。チカッ！　まただ。同じ場所が光るとドッペルたちが増える。

　間違いない。この光がこの大広間の秘密なんだ。光がなんらかの合図になって鏡の奥の魔力を発動させ、ドッペルゲンガーを増殖させている。部屋が青く暗めにしてあり、彼女たちの肢体を青く染めているのは、この小さな点滅を有効にするためだった。光がドッペルを生み出しているのなら、彼女たちを消す方法も光しかない。

　僕は思念して強烈閃光弾とサングラスを用意した。ばしゅっ！　ロケット状の弾が銃から放出されると、サングラスをかけた。次の瞬間、強烈な光がホールに充満する。百万ワットの輝きだ。大勢の敵を目くらまししたり敵を驚かせ逃げていくよう仕向けたりする道具である。

　しかしこの強い光は、ここでは直接ドッペルゲンガーたちに作用する。強すぎる光で鏡が機能を失い、鏡から出てきたドッペルたちの幻影を消滅させる。彼女たちは鏡から具現した影のようなもので、鏡から生み出された魔力の幻影だ。だから強烈な光で影を消してしまえば、ドッペルたちも消えてしまうというわけだ。

　閃光が終わると、ドッペルたちは消えてしまった。足元の小さな光も威力を失ったらしく、点滅しなくなった。つまりドッペルゲンガーたちはこれ以上出現できない。鏡は真っ黒くなり、僕の姿をさえ映さなくなった。…勝ったのかな？

　奥に扉があらわれた。いよいよ上り階段かな。僕は奥に進んだ。

　「あっ！」進んだ先は上り階段ではなかった。カードキーを入れる扉もないし、そもそもキーを手に入れていない。キーが手に入るまでは、このフロアのプチボスを倒したことにはならない。安心するには少し早かったようだ。

　後ろのドアが消える。僕は二畳分くらいの小さな鏡張りの部屋に閉じ込められてしまった。「…くっくっく…よくドッペルゲンガーの秘密を暴けたな。」「…だれだ！」「ドッペルゲンガーを克服したお前に褒美をやろう。この私がじきじきに抜いてやるぞ…永遠の天国に落としてやる。」

　…なるほど、この声の主が、このフロアのボスなんだな。威厳のある女の声が狭い部屋に響く。明るい鏡張りの密室だが、姿は見えない。「くくく、予告しよう…お前は私に指一本触れることができずに射精する。ドッペルゲンガーは暴けても、”ミラー”の秘密は暴けまい。その恐怖をすべて快感に変えてやるよ。」

　僕は周りを見回す。周囲の自分の姿が変わることはない。どこから攻撃してきやがるんだ？

　「はっ！！」鏡に映った僕の後ろに人影があらわれた。彼女はゆっくりと僕に近づいてくる。赤い長髪がサラサラでスレンダーな美女だった。不敵な笑みを浮かべる瞳まで真っ赤な鬼だった。こいつがこのフロアのボス、ミラーという魔性の化け物だ。

　僕は素早く翻し、赤髪のナイスバディをつかまえようと思った。「なっ…」しかし振り返った僕の目の前には鏡。誰もいなかった。僕は再び右の鏡に目をやる。すると美女はたしかに鏡に映っている。

　女は｢鏡の中だけ｣にいるのだ！　手を伸ばしてもその肉体に触れることはできない。女が手を伸ばし、鏡に映った僕の首筋をなまめかしくさする。「うっ…」ゾクゾクする快感が全身に走った。もちろん目の前には誰もいないままだ。鏡を見ると女の姿が僕の体を撫でさすっている。

　鏡の中の自分が愛撫されると、その感触が実体の僕に送り込まれ、ダメージになる。こちらからは触れることもできない。もちろん狭い部屋の鏡張りで逃げることはできなかった。「フフフフフ…言っただろう。指一本触れることなくお前は果てるのだ。」

　美女の姿が消えた。次の瞬間、背中に乳房の感触が刻みつけられた。次いでペニスに心地よい感触。左側の鏡を見てみると、ミラーが僕の背中に貼りついてペニスを両手でしごき上げていた。もちろん振り向いても誰もいない。あくまで敵は鏡のなかにだけ潜んでいて、こちらからは手も足も出せない状態なのだ。

　ペニスが勝手に蠕動している。ミラーの細い魔性の指にしごかれて蠢いているのだ。その素早い動きは、鏡を見て初めて認識することができた。「お前は女の手が大好きだったな。この手で一秒間に４.５回しごき続けてやるよ。」「うああ…」「この体に一切触れることができないまま、わたしの手でイッてしまえ。ふははははッ！」

　一体どうすればいいんだ。柔らかい女の手の絶妙な攻撃で、精力がぐんぐん減ってしまっている。本当にこのまま手も足も出せずに果ててしまうのか。いや…なにか必ず打開策があるはずなんだ。あきらめちゃいけない。この非情な化け物を何とか倒さなければ。

―選択肢―
ドッペルゲンガー３－５　鏡のなかで愛撫してみる
 ドッペルゲンガー３－６　鏡を責めてみる
 ドッペルゲンガー３－７　うつぶせになって身を守る

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