バンパイア・ブライド1−1


 しばらく古城ステージをさまよう。このステージは他とやや違って、階段がそこかしこにある。もちろん、いわゆる”上り階段”ではなく、階段を含めてひとつのフロアなのだ。螺旋階段を数階分上がらなければならなかったり、はたまた地下室をさまよったりと、通路はものすごく複雑だ。上に下に移動しながらステージをさまようので、注意しないとあっという間に自分の位置を見失ってしまう。

 しかし、相当歩いたおかげか、少しは慣れてきた気もする。はじめのうちは古城外延を大きく回らされているのに対して、心なしか次の階段に行き着く距離が縮まっているように思える。つまり、城全体が大雑把に言ってらせん状または同心円状になっていて、先に進めば進むほど中心に近づいていくしくみなんだ。もちろん、地下室や屋上はこの例にあてはまらないし、階が違えば中心を通ることはある。完全な渦巻きではないんだ。

 エンカウントする敵はすべてアンデッド。はるか昔に若くして死に、しかしその肉体は朽ちることなく永遠に生き続ける化け物だ。そのあまりに長い生涯で培った経験と、魔族ならではの甘美な魅力やテクニックの数々が、僕を何度もピンチに追いつめてきた。アンデッドのオンナは例外なく自動蠕動・バイブつきで、挿入するだけで妖しく蠢きながら自動的に高速でしごきたてる。そこへアンデッドならではの怪力が大きく腰を振り、僕を徹底的な快楽にさらすのである。

 これまでに出会ってきたのは、血の代わりに精を吸って生きながらえるヴァンパイア、そしてバンパイアよりも強力な東洋の魔人キョンシーだ。吸精鬼のほうは何とか耐性もつき、単体相手なら普通に倒せるレベルにはなった。しかし、明るくノリノリな巨乳キョンシーにはいまだに苦戦を強いられている。しなやかな体術と乳房攻撃、アクロバット体位はどれも絶品である。

 映画などでよく目にするキョンシー装束を身にまとう敵はまれであり、せいぜい「ワタシ、キョンシーっぽいでしょ」と振る舞いたいがためにおしゃれで身につけている程度だ。その衣装の下には、必ずといっていいほどチャイナドレスが控えている。歩くたびにチラチラ見える生足がいやらしい。ドレスはロングの時もあればミニスカのときもあった。どっちにしても脱げやすく、そしてキョンシーは例外なくいやらしい体をしている。中には体術が得意で、カンフー服の娘もいた。生前に格闘技をやっていたのだろう。

 キョンシーがすべて美少女とはかぎらない。レディも混じっている。混じっているのだが、なぜか登場する多くはオレンジの髪に青い目の小娘(ただし巨乳)だった、気がする。あるいはキョンシーたちの持ち前の明るさと勢いが、みんな同じキャラに思えてしまうのか。そんな中でたまにおねえさんタイプが出てくると、僕としたことがエンカウント時に弱体化してしまう。

 語尾は全員が「アル」とはかぎらない。てかホンモノはアルとか言わないアルよ。絶対キャラ作りしてるネ。普通に話す相手もいれば無言の敵ももちろんいる。性格によるのだろう。もっとも、性格のいいキョンシーは皆無だが。いつだったか「他人の幸せを見る位ならいっそ壊してしまった方がマシよ」とか言ってたのもいたからな。病気だな。

 とにかく、もっとレベルを上げてキョンシーを簡単に倒せるようにならなければ、この先無事ではすまないだろう。どうしたものか…。

 そんなことを考えながら階段を下りると、見慣れた地下室が見えてきた。「あれ…また元に戻ってしまったか。」引き返すかな。

 …いや、奥に通路が見える。奥行きではロウソクが両側に一直線で並んでいる。さっきの地下室ではこんな道はなかったから、一度通ったというのは気のせいで、似たような風景なのだろう。

 進むとまた下り階段があった。えっと、たしかここが地下二階だから、これを下りるということは地下三階になるわけか。「…。」地下はもう何度ももぐったが、通るだけですぐに上り階段になる。地下も二階までだった。その下に降りるのは初めてだな。初めて足を踏み入れる領域はいつも緊張するな。もしかしたらトラップがあるかもしれないし、新手の敵が潜んでいるのかもしれない。警戒にこしたことはないだろう。

 僕は自分の精力を確かめ、万全の体勢を整えてから、恐る恐る薄暗い階段を下りていった。

 「うっ…」降りはじめてみると、とたんに甘い香りに包まれた。この淫靡な芳香はまずい…極端に強調された女の色香、魔性の淫気だ。トラップなのか、はたまた新手の敵なのか。

 僕は身構える。息を止めていても自動的に体内にしみこんでくる甘い香りは、霧というよりは魔力の結晶に近い。これはトラップではない。今までに会ったこともないような強力な敵がこの先にいるぞ。

 初めて降りた地下三階は意外に狭い場所だった。4…いや、3畳くらいの広さしかない。突き当りにははしごがあって、上に登れるようになっている。そしてその間に…つまり僕の目の前に、真っ白い女性が立っていた。いや、白いウエディングドレスを身にまとい白い光を放っている美女がそこにいた。淫気の正体はこの敵のようだ。彼女の光るドレスだけで、ろうそくの明かりは要らなかった。

 彼女の姿を見ただけで身がすくんでしまった。その肉体から放出される淫気だけではない、ウエディングドレスの清楚な雰囲気自体が、僕の体を虜にし始めている。甘ったるい香りは嗅覚のみを刺激するのではなく、まさに全身をとろけさせる魔性の魅力だった。さっき戦った強化キョンシーよりもやばい感じがする。清楚な雰囲気と、その奥に秘められた魔性の空気が、心の奥で警鐘を鳴らす。引き帰したほうがよいのは分かっていたが、足は勝手に彼女のほうへと吸い寄せられてしまう。

 「くすくす…」赤いブーケを手にした花嫁は、真っ赤な瞳で僕を好色に見つめる。あまりに凄艶な色気に脳天がしびれてくる。永遠のバージニティに汚い汁を吹きつけてやりたい衝動に駆られる。相手が清純だからこそ、こちらがいやがうえにも下品になってしまいそうだ。その気持ちを必死で抑えた。

 凄みを秘めたやわらかい笑みが彼女からこぼれる。まずい、絶対にまずいッ! 僕は本能的に魔力を放出し、自分の周りにシールドをはりめぐらせた。「ねえ…もっとこっちにきて…結婚しましょう…ひとつになりましょう…くすくす…」静かに話す柔らかな声が耳をくすぐる。その優しい唇からは長い牙が見え隠れした。真っ白い肌は、まだ二十歳前のハリときめの細かさを誇っていたし、それでいて、おねえさんというとあまりに安っぽくなるような、筆舌に尽くせぬレディの雰囲気に包まれていた。それでいて全体的に清らかで、かつ体の奥に秘めた禁断の香りもたっぷり漂わせている。

 こいつはバンパイアなのか。それにしては…通常バンパイアとは雰囲気もレベルも格がまるで違う。こんな危険な予感を感じさせる強敵は久しぶりだ。とっさに魔法の障壁を張ったから、どうにか彼女に飛びついて抱きしめた瞬間射精という恥ずかしい結末だけは避けることができたが…。男を狂わせる雰囲気を自動的に大量に放出してやがる。

 これはバンパイアの魅了に近いな。あっちは目を合わせると男を言いなりにできる単純な装置で、強めの魔法障壁で回避できる。しかしこの新手の敵は…魔法障壁をすり抜けて僕を魅惑し続けている。魅惑の効果を半減させることはできるものの、やはり体は動かず、どんどん吸い寄せられてしまっている。理性を保つので手一杯だ。

 彼女は吸精鬼なんかよりもはるかに強力な敵だ。バンパイアで、しかも花嫁ということだから、「バンパイア・ブライド」とでも呼ぶべき相手か。奥に秘めた魔力は巨乳キョンシーをもしのいでいるし、そのあまりにも凄絶な色香は他の追随を許さない。ヴァンパイアの中でも特に選りすぐりの女ということになるのだろうか、それともまったく違うルーツなのか。そこは分からないが、少なくとも目の前の敵が相当強力なのは分かった。彼女と対等に渡り合うにはまだまだこちらのレベルが足りないということも。

 僕は気持ちを静め、魔法障壁を強化した。彼女の赤い目を見ないようにし、鎮静魔法で精神を落ち着かせた。この魔法は本来、錯乱した人に使うもので、多用すると心が崩壊してしまう危険なものだが、この強敵の前にはいくらかけてもかけすぎにはならない。何とか体の自由が利き、相手の魅力に心奪われなくなったが、そのころにはもう彼女から離れられない位置にいた。逃げることはできない。戦って勝つ以外に活路はなさそうだ。

 「さあ…私を抱いて…契りましょう…」それでも耳から脳天をくすぐる痺れるような甘い声には抗えない。僕は吸い寄せられるように彼女にゆっくり抱きついていった。

 彼女の唇は女の魅力を完全に備えていて、少しでも気を抜くとそのまま射精してしまいかねない勢いだった。キスだけでイッてしまうほど敵は強力。どうにか心を保ち、精力の消費は免れたが、ほんとうに気を抜けない戦いになりそうだ。

 キスをしたとたん、甘い液体が口の中に流し込まれる。これは…彼女から放出される淫気と同じ香り、味だ。やばいな…唾液を含めて、彼女の体液はすべて強力な淫気になっているのか。しかも霧状ではなく液体だから、そこに凝縮された魅了魔力は半端な量ではない。頭がくらくらする。魔法障壁などあっさり突き破られてしまった。すぐそばにいるだけで強力な誘惑が心を犯し続けている。

 バンパイア・ブライドがキスついでにゆっくりと優しく頬擦りすると、吸い付くような白い肌が、僕の顔を名残惜しそうに滑っていく。僕の皮膚細胞に食い込みながらもっちりと撫でさすっていく体は、心地よさを通り越してゾクゾク震えてしまう。こんな状態で全裸で抱き合ったらひとたまりもなさそうだ。

 少なくとも正攻法で実力勝負をすれば負けるだろう。もっともっと経験を積んで、レベルを上げてからでないと、まともに戦うことはできない。…かといって、何か有効な作戦があるわけでもないな。いずれにしても、このままでいたら妖しい雰囲気の中であっという間に射精まで追い込まれてしまう。やはり戦って活路を開かなければいけない以上、この強敵に果敢にチャレンジするしかあるまい。

 彼女の強烈な色香は、いつ僕の心の壁を突き破ってもおかしくない状態だった。まずはこれを避けるべく、魔法の力を駆使するのがいいだろうか。障壁は完全に相手の魅惑を遮断することはできないが、一定の軽減はできる。つまりこちらの魔法は相手にちゃんと通用するということだ。正攻法では難しい相手だけに、魔力というからめ手で行くのも手かもしれない。

 あるいはまた、正攻法で愛撫攻撃で戦うか。いきなりの挿入は避けて、じっくり精力を削ってから一気に畳み掛ける方法がいいだろうか。とにかく魔性の肉体への接触をできるだけ避けつつ魅了から逃れていれば、いくら強敵でも徐々に精力を削ることができる。長期戦は覚悟の上だが、ダメージを最小限に抑えられそうだ。

 さもなくば、自分の股間を信じて挿入戦に持ち込もうか。案外、放出魅了は得意で、入れてしまえば普通に戦えるかもしれない。直接オンナに攻撃を加えるのだから、相手に与えられるダメージも最大で、うまくすれば短期決戦も可能だ。こういう新手は早めに倒し、長期戦を避けるのが鉄則。もたもたしていればしっぺ返しのチャンスを敵に与えることになるからね。

 勝利のチャンスは少ない。慎重に次の行動を選ばなければ。

−選択肢−
バンパイア・ブライド1−2 魔法中心で戦う
バンパイア・ブライド1−3 愛撫中心で戦う
バンパイア・ブライド1−4 挿入中心で戦う


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