ディック・アンダーソン刑事は、ホテルで園子とコナンを事情聴取していた。
蘭が誘拐された経緯やその状況を確認していたわけだ。
しかし、今では立場がひっくり返っていた。
コナンたちがディックたちに協力しているはずなのだが、どう見てもコナンの方が彼から情報
を聞き出している。

「ふぅん……。じゃあ、その容疑者を拘束したの?」
「いやあ拘束なんてとんでもないよ。何しろ、相手は市長にも局長にもコネのある有力者だか
らね。捜査協力の依頼だよ」

言い訳するように若い刑事は言った。
名目上、パーシーと組まされているアンダーソン刑事だが、実際は彼に引っ張り回されている。
パーシーの方も、まだ若く能力不足の彼はアテにしておらず、もっぱら書類整理や使い走り的に
あしらっている。
ディックの方は、それがわかっているのかいないのか、良いようにベテラン警部に使われていた。
東京警視庁の猛者や、海千山千の犯罪者相手に丁々発止をしているコナンの相手にはならない
だろう。
子供にすっかり主導権を奪われていることすら気づかぬ様子で、ディックは話し続けた。

「で、そのマルタン氏がパレットの……何だっけな、そう、ミシェルか。そのミシェルじゃない
かっていう疑いが出てるんだ」

このことはシカゴ市警でも局長のオライリー他上層部の一部以外は、パーシーとその相棒の
ディックくらいしか知らないはずである。
そんな機密事項を乗せられて喋ってしまうのだから、警部に信用されないのも仕方ないだろう。
もっとも、コナンの方が聞き上手ということもある。
彼は、その推理能力ばかりが評価されがちだが、実はこっちの方が捜査に多大な影響をもたら
しているのだ。
相手にそれと気取られずに、さりげなく重要事項を聞き出す能力だ。
子供相手だからと話す方も気を許す面があるだろうが、コナン自身、情報収集能力が高いのだ。

「パレットのミシェルか……」

その話は、佐藤刑事や目暮警部からも少し聞いていた。
あの時の蘭誘拐事件での主犯らしい。

風邪を引いた蘭が、ミシェルらしい男が理事長をしている病院に担ぎ込まれたのは不幸な偶然だ。
恐らくそこでミシェルに目撃されたのだろう。
病院サイドは蘭失踪について無関係を主張していたが、トップがミシェルなのだから彼の思惑
通りに動くはずだ。
となると、やはりあの病院で誘拐されたのは間違いないだろう。

「僕も、マルタン氏が怪しいとは思うんだけどね。これと言った証拠はないし、別件でも引っ
張れないんだよ」
「……」
「おまけに、日本から来てくれてた刑事まで誘拐されちゃうし……」
「えっ!?」

ディックはうっかり口を滑らせると、あからさまに「しまった」という表情をした。
園子がすかさず突っ込む。

「日本から来てた刑事って、佐藤刑事でしょ!? 佐藤刑事も攫われちゃったんですか?」
「あ、いや、その……う〜〜ん、困ったな。言うなって言われてたのに……」
「私たち佐藤刑事とも顔見知りなんです。教えてください!」
「あ、そうなのか……。じゃあ余計に……」
「待って! ちょっと待ってアンダーソン刑事」

コナンが、園子とディックに割って入る。

「佐藤刑事が攫われた場所ってどこなの? もしかして、あの病院じゃあ……」
「……よくわかったね。そうなんだよ」
「行こう!」

勢いよく立ち上がったコナンに、園子が慌てる。

「ちょ、行くってどこ行くのよ」
「病院! 蘭ねえちゃんがいなくなった病院だよ」
「でも、私たちが行ってどうなるものじゃ……あ、コナンくん、待ちなさい!」

──────────────

美和子は早くも「仕事」を与えられていた。
場所はトッドとセックスショーを演じた「舞台」ではなく、見物していた連中の部屋であった。
つまり特別病棟である。

「やっっ……いやあ……」

トッドに引きずられるように連れて来られると、部屋にいた数人の老人たちが、待ちかまえた
ように襲いかかってきた。
上半身は裸、下も黒いガーターを着けただけの美女にすっかり昂奮し、社会的地位の高いはず
の男たちが群がってくる。
トッドに背中を押され、よろめくようにベッドへ手をつくと、たちまち男たちの手が伸びてきた。
拒む美和子を広いベッドの上へと引っ張り上げると、その白い肌を撫でさすったり、揉みほぐす。
気の早い者は、剥き出しにしたペニスを押しつけたり、握らせたりしている。

「往生際が悪いぞ、美和子。もう覚悟は決めたはずだろうが」

トッドが壁際でニヤニヤしながら見物している。
もちろん彼も美和子を犯したいだろうが、こうして大勢の男にレイプされる美和子を見るのも
悪くない。
それに、どうせこの輪姦劇が終われば、トッドが「仕上げ」をするのだ。

「ああ……いや……」

諦めたようにガックリとしている美和子に、容赦なく男たちの手が伸びる。
晒されている美乳を片方ずつ左右の男に与え、思うさま揉まれた。
足を開かされ、ストッキングの上から太腿をさすられ、尻を揉まれ、媚肉をいびられた。
その割れ目をいじっていた老人が気づく。

「ほほ、もうこの日本人は濡らしておるぞ」

美和子はハッとしたが、もうどうにもならない。
知らず知らずのうちに、こうした環境でも感じる肉体にさせられている。
愛液を分泌させているだけでなく、呼気も熱いものになっていた。

「ああっ」

舌や指が美和子の全身を愛撫していく。
早くも汗が浮き、蜜が滴る女体を見て、男たちも遠慮しなかった。

「ほれ、ここへ来い」
「はい……」

美和子とは思えぬ従順さで老人に従う。
座り込んだ男の上に、顔を背けたまま腰を下ろした。
目は閉じていたが、男が美和子の腰を掴んで、場所をコントロールしている。
屹立した肉棒に股間が触れると、一瞬ビクリとしたが、すぐに腰を沈めていった。

「んっ……ああ……は、いる……入って、くる……」

長さはさほどではないが、太さだけならトッドに負けぬほどの逸物をもった老人は、嬉しそう
に美和子の腰を抱える。
ぐいと引かれてペタンと座り込むと、熱いペニスがズンと奥まで貫いてきた。

「あ、あ……大きい……」
「ふたりだけで愉しむな。わしも入れてくれ」

もうひとりの老人が、繋がっている男と美和子を押し倒した。
男は仰向けに、対面座位だった美和子はうつぶせに倒れ込んだ。
そのショックで、膣内のペニスが暴れ、襞を擦る。

「あう!」

女の呻き声にも構わず、倒した老人は美和子の尻たぶを開き、そこに男根を押し当てる。
美和子は慌てて振り返った。

「だっ、だめっ……そっちは……」
「だめってことはないじゃろう。あの黒人とだって、たっぷりとアナルセックスしてたくせに」
「それは……で、でも、同時になんて……」

焦る美和子にトッドが突っ込む。

「可愛い子ぶるなよ、美和子。サンドイッチファックだって、日本で散々やったじゃねえか」
「言うな!」
「なんじゃ、そうなのか。なら遠慮はいらんな」

遠慮など最初からする気のない老人はそう言うと、肛門にあてがったペニスをぐっと押し込
んだ。
窄まった清楚な穴とは思えぬほどに、あっさりと飲み込んでいく。

「ふっ……といっ……あああ……お尻のも、大きい……ああっ……」

美和子の前後の穴を占領した老人たちは、ガシガシと腰を突き上げ始めた。
余った老人たちも、美和子の乳房を揉み込み、手に己のペニスを握らせてしごかせている。

「んむうっ……んんっ……あ、はあああっっ……」
「くうっ……よくしまるオマンコじゃ。こりゃたまらんわい」
「尻も抜群ですな。この女、アヌスも絶品ですぞ」

それを聞いて、美和子の双乳を揉みしだいていた老人がうらやましそうに言った。

「そうなら早う替わってくれい。しかし日本の女ってのは、こんなに華奢そうなのにわしらの
デカマラをしっかり受け止めるとは大したもんだ」

トッドは哄笑して言った。

「美和子は特別製なんですよ。こんないい女は滅多にいやしない。ケツでもマンコでも感じ
まくりで、どんなでかいペニスでも受け入れる。身体も良いが、ま、本人も相当好き者らしい
ですがね」
「きさまっ……!」

美和子がキッとトッドを睨みつける。
その視線を難なく弾き飛ばすと、黒人は、美和子が抵抗できぬよう釘を差した。

「……美和子で物足りなかったら言ってくださいや。美和子に負けず劣らず、いい肉をした
日本女もキープしてありますからね」
「ほう、それは聞き捨てならんな。まだ他にもいるのかね」
「いますとも。ハイスクールの女学生だが、身体はもう一人前だ。これがまたいい女ですぜ。
美和子のようにしっとりした肌じゃねえが、そっちの方はピチピチした弾力のある肌だ。
もちろん、尻も乳も、マンコもアナルも充分に満足できるシロモノですぜ」
「きさま! まさか蘭ちゃんにまでこんなことを……」
「させたくなければ……わかってんだろ?」
「く……」

蘭も、もう犯されていることは間違いないだろう。
それだけでも充分すぎるほどにショックなのに、この上、老人たちの薄汚い性欲を吐き出さ
せるわけにはいかない。
無事に助けられなかったが、せめてそれだけは阻止したかった。

「く……ああ……」

美和子が男たちに合わせて腰を振り始めた。
トッドに命令されたからだろうが、すぐにそのことは頭から消えていく。
快楽への耐性が著しく落とされている美和子は、実に呆気なく肉欲へと溺れていった。

「い、ああ……んううっ……」

前後の穴と両手で四本のペニスの相手をさせられていたが、右の一本から手が離れる。
右手は自分の乳房を揉み始めているのだった。
それを見た老人たちが哄笑する。

「ほれほれ、何をやっとるんだ、ジョーンズ。おっぱいを揉んで欲しいそうじゃぞ」
「おっと、それは失礼したな」
「ああっ!」

後ろから禿げ上がった老人が美和子の胸に手を回す。
大きな手からはみ出し、指の間から乳房がこぼれている。
揉みくちゃにされると、しこった乳首が波間の小舟のように激しく動き回った。

「ほれ、一本足りないじゃろうが。儂のをくわえい」
「ああ……」

突きつけられた男根をうっとりしたような目線で捉えると、美和子はためらいを見せずに口に
くわえ込んだ。
顎が外れそうほどの肉棒を口にさせられ、唇の端が切れそうだ。
恐らく膣も肛門もそうなのだろう。
ピストンされるごとにめくれ込み、めくれ上がる媚肉の襞や、盛り上がっているアヌスの内部
まで、美和子には想像できた。

「んぐうっっ……ぐううっ……ん、んむむっ……」
(だ、だめえ……あ、おっきい……脈打ってる……ああ、お、奥まで来てる……)

左手で握ったペニスもすごい。
ピクピクしているのがわかる。
すべすべした美和子の手が擦るたびに大きく膨れていくかのようだ。
口にしたペニスも暴発寸前のようだ。
時折、唇から零れ出るそれは、美和子の唾液でぬらぬらと妖しげに輝いていた。
美和子の喉が小さく何度も動くのは、あとからあとから溢れ出る己の唾液と、亀頭から滲み出
るカウパーを飲み込んでいるからだろう。

「んおお……ん、あう……」

美和子は全身から妖艶な色気を発散させていた。
輪姦されていることに加え、それをトッドに見物されていることが大きい。
それらに屈辱と羞恥に覚えているのだが、それが次なる愉悦へと変貌している。
彼女の被虐はここに来て完全に開花し、恥辱がストレートに性の悦びへと進化していた。

絶世の異国美女が、もうたまらないとばかりに喘いでいる。
その光景を見て、老人たちの性欲は一層意地汚くなっていく。
この美女をよがらせているのは自分たちなのだ、というオスの征服感もあった。
そんな美和子の悩乱する美貌を見せられて、まずフェラさせていた老人が呻いた。

「くおっ…で、出るぞっ!」

そう叫ぶと、美和子の黒髪をしっかりと両手で掴み、ズンズンと何度か口へ激しくピストンする
と、ぐいっと腰を突きだした。
亀頭部が喉に届いたところで、老人は呻いて射精した。

びゅるるっ。
びゅるっ。
びゅくくっ。

「んんん!? ……んん、んん、んんっ……んっ、んくっ、んっ……」

出された直後こそ、驚いて顔を離そうとしたが、男がそれを許すはずもなかった。
両手で美和子の顔を自分の腰に押しつけ、射精が終わるまで離さなかった。
口中に溢れかえる猛烈な男臭に、美和子は頭がくらくらする。
気が付いた時には、喉を鳴らして精液を飲み下していた。
続けて左手でしごいていた肉棒が限界いっぱいまで膨れあがった。
老人は射精することを告げる暇もなく放出した。

「あっ……」

熱い粘液が美女を汚した。
顎のあたりと乳房は、べっとりとした臭い粘液で覆われていた。
精の熱さと匂いに毒され、美和子の脳裏が混濁する。
身に掛けられた精液を見て、本当に穢されたと思った。

仲間の射精を見て、美和子の下半身を責めていた老人たちも勢いづいた。
股間に並ぶふたつの女穴への攻撃は激しさを増すばかりだ。
しかも美和子の方も、それに応えるかのごとく、大きく腰をうねらせていく。
老人たちの腰が美和子の腰にぶちあたるごとに、大きな尻と骨張った腰が衝突するぺたん、
ばちんという音が響いていた。
その間も、先に射精した老人たちが、美和子の精液まみれになった乳房を揉み続けている。

「よし、こっちも出すぞい」
「や、待って!」

媚肉を責める老人がそう言うと、美和子は反射的に嫌がった。
顔を振りたくって拒絶する美和子を見て、老人たちはにやついてトッドに尋ねる。

「なあ、あんた。女はこんなこと言っとるが、いいんじゃろう、中に出しても」
「無論ですよ。いくらでも中出ししてやってくださいや」
「いやっ! それだけはいやよ!」
「もう散々オレにぶちまけられたじゃねえかよ。それとも、そんなにオレの子が欲しいのか?」
「バッ、バカなこと言わないで!」

黒人と美女のやりとりを面白そうに聞いていた老人たちは、あからさまに失望するようなふりで
言った。

「なんじゃ、もうそっちの黒人に出されとるのか」
「いやっ」
「なら、今さらかまわんじゃろうが。わしらの子を孕めば、黒人が産まれることはないぞ」

そう言うと老人たちはゲラゲラと笑った。
トッドも笑いながら言った。

「だとよ、美和子。ニグロを産むのがいやなら、そのじいさんたちの種を孕みな。もっとも、
おまえのオマンコがニグロと白人の精液を選別できればの話だがな」

笑うトッドに、老人が聞いた。

「のう、あんた。真面目な話、この女を妊娠させたら、その子はどうするんじゃ?」
「さあ、どうしますかねえ。蘭とかいうもうひとりのジャップの女の場合は、孕んで女の子
だったら育てて、親子二代のセックス・スレイブにするってことらしいですがね」
「そうか。なら、こっちの女が孕んだら、わしらにくれんかね?」

腰を使いながら老人が言った。
トッドも、なるほどとうなずいた。

「それもいいかも知れませんな。美和子が孕んで、もしその子が欲しいなら、DNA検査して
あんた方と一致したら、譲り渡してもいいですぜ。タダってわけにゃいきませんがね」
「そりゃいい。それなら、是非ともこの美人を妊娠させんとな」
「ひ、ひどい……」

美和子は泣いて抗った。
しかし、それが果たして本気だったのかは、美和子自身にもわからなかった。
犯されて妊娠させられる。
そう思った途端、また身体の奥がズクンと疼いたのも確かなのだ。
薄々彼女にもわかっていた。
拒んでいるのは表向きで、その裏、欲しくて欲しくてしかたがないのだ。
そうでなければ、男たちに合わせてうねり続けている腰の説明ができない。
どんなに心で嫌がっても、子宮は男の精を望んでいる。
それは責める彼らにもわかっているのだ。

「よしよし、中で出してやるぞい」
「だ、だめっ……どんなことでもするから、それだけは……」
「どんなことでもするなら、おとなしく射精させい。それに、嫌がってる割には、ほれ、そう
してオマンコをわしに押しつけとるじゃないかね」
「ちっ、違うっ……これは、違う、のぉっ!」
「何でもいいわい」

美和子を上にして下から突き上げていた老人は、美和子の尻に手を回して思い切り自分の腰に
引き寄せた。
そしてペニスの先が子宮口に達したのがわかると、「ううっ」と呻いて射精した。

「あひっ……いくっ!」

子宮口めがけて、ドバッと精液が噴射された。
老人とは思えぬ量の粘液が、美和子の膣を満たしていく。

「あ……あ……あ……ひ、ひどい……な、中に出すなんて……ああ、まだ出てる……いい……」

老人は満足したように、美和子の膣から逸物を抜いた。

「酷いとか言いながら、「いい」なんて言いよる。好き者じゃな」
「あ……ああ……」
「よし、たっぷり出してやったわい。はよ孕めよ」

老人がそう言いながら美和子の下腹部を撫でていると、手淫で射精した老人が押しのけてきた。

「今度はわしじゃ」
「おまえ、さっき出したばかりじゃろうが」
「ふん、おまえほど老いぼれてはおらんわい。こんな美人相手なら何度でも出来るぞい。若い
頃を思い出すわい」
「ああ!」

老人が美和子を転がすと、肛門に痛みが走る。
まだアヌスには他の老人のペニスが入りっぱなしなのだ。
尻に入れたままの老人をからかう声がする。

「おまえ、まだ出んのか? この遅漏めが」
「そうじゃないわい。おまえの方こそ童貞の若造じゃあるまいし、さっさと出してしまいお
って。わしゃな、前と同時に出してやって、この女をいかせたいんじゃ」
「よし、それならわしがやるわい」

そう言うと、フェラさせていた老人は自分のペニスをいごきだした。
尻肉を抉られる美和子の痴態に、みるみる硬度が甦っていく。
とはいえ、出したばかりだし、完全復活には程遠い。
見かねたトッドが、ポンと何かを投げ渡した。
受け取った老人はニンマリする。

美和子は仰向けにされていた。
男を下に入れ、下からアヌスを犯されている格好だ。
そこに別の老人がのしかかってくる。

「ああ、もう……」
「いやじゃなかろう。それに物足りないじゃろう、ジジイのペニスじゃ」
「な、なにを……そ、それ……」

美和子は驚いて目を見開いた。
老人のペニスに装着されていたのは、トッドが使って美和子をよがり狂わせた、あのイボサック
だったのだ。
トッドが使ったものとは違い、少々肉厚のようだ。
恐らく、老人の勃起力を助けているのだろう。
萎えかかった老人の男根を補強するかのように、やや固めのゴムで覆われているのだ。
あのイボで泣き狂わされたことを思い出し、美和子は叫んだ。

「いっ、いやあっっ……そ、それだけはっ……それだけはいやあっ」
「やれやれ、我が侭なことじゃのう。あれはいや、これもいや、ばかりじゃないか」
「気にせんでいいですよ。美和子の「いや」は「もっとして」って意味ですから」

トッドが混ぜっ返すと、老人たちは大笑いして行為にかかった。

「いやあっ……あ、あむ……あむむ……」

逃げようとしても、肛門をペニスで杭打ちされていては動けない。
しかも下の男が、がっしりと美和子の腰を支えていた。
そこにイボサックを纏った肉棒が押し入ってくる。
亀頭部の太さに圧倒され、それが過ぎると今度はサオのイボイボに狂わされる。
奥まで貫かれた時には、彼女は妊娠の恐怖すら忘れていた。

責める男どもに乳房を与え、尻を与え、媚肉を与えた。
全身を使って、老人たちの欲望に懸命に仕えていた。
肛門にはさっきからずっと太い肉棒が入りっぱなしだし、媚肉にはイボサックで補強された
凶悪なものがねじ込まれている。
ともに美和子を突き殺す勢いで「これでもか、これでもか」と犯していた。
精液のこびりついた唇には別のペニスをくわえこまされ、両の乳房も根元から揉み絞られていた。
まともな女なら発狂しかねない激しい責めに、美和子ははっきりとした肉悦を感じ取っていた。

「あ、あむっ……ひっ、いいっ……」
「そんなに気持ちいいかね」
「ああ、いいっ……ま、前も後ろも、ああ……太いのでいっぱい……す、すごっ……」
「そうか、そうか。なら、これはどうじゃ?」

そう言うと、美和子の上に乗った老人が大きく腰を回転させてきた。
膣を拡げるようにペニスを回されるだけでもどうにかなりそうなのに、そのペニスはイボで武装
しているのだ。
樹脂製のイボイボが美和子の媚肉の襞と膣内部を赤く爛れてしまうほどに激しく引っかき回した。

美和子を乗せている男も、腰を突き上げて尻穴を責める。
媚肉を責める男と連動して、膣が奥深くまで貫かれればアヌスは引き、媚肉の方が引かれれば、
肛門は直腸深くまで責め込む。
美和子は身をよじらせ、背中をたわませてよがり、絶叫した。

「だめえ、それはっっ……ひっ、ひっ……た、たまんない!」
「おうおう、良い声で泣くわい。もっと聞かせておくれ」

前が押せば後ろは引いていた責めを変え、今度は両方いっぺんに深くまで貫いてきた。
ずぶずぶっと音を立てて、アヌスと媚肉の粘膜が悲鳴を上げる。
両者が思い切り深くまで突き込むと、直腸と膣内の薄い粘膜を隔てて、前後を責める二本の
肉棒が擦れ合う。

「んおおっっ……す、すごいっ……な、中で当たって……こ、擦れてるっ……い、いっちゃ
うっ!」

二本のペニスが身体の奥で衝突すると、美和子は身を震わせて激しく気をやった。
だが、男たちは許す気配もない。
美和子がいった瞬間の激しい収縮に耐えきると、またしても腰を突き上げ始める。
美和子は、絶頂の頂点から下ろしてもらえないまま、連続して気をやるしかなかった。

「ああっ! ま、まだいやあっ……い、いったばかりなのにっ……そ、そんな一度にっ……
ひぃっ……あ、あ、中で、またっ…ゴリゴリしてるぅっ」
「何がゴリゴリしてるのかね」
「オ、オチンポ! チンポが……すごい大きいのが二本も、ああっ……中でゴリュゴリュって
……いくうっ!」

老人たちは、いいように美和子をいかせまくり、その胎内から女汁を絞り出させている。
美和子の粘膜は爛れ、赤く充血しているにも関わらず、大量に分泌される愛液が男たちのピス
トンをサポートしていた。
後ろから美和子のアヌスを犯していた老人が、その乳房をたぷたぷと揉みほぐしながら言う。

「お、おい。そっちはどうじゃ。わしはもう……」
「出すか? まあいいか、あんたはまだ一度も出してなかったしな」

上下から激しく突き込まれ、激しくのたうちまわる美和子はもう何度目の絶頂なのか数もわか
らない。
老人たちに胎内や直腸を犯されて悦んでいる。
肉のよく乗った臀部を犯され、やや肉の厚い媚肉を貫かれた。
恐怖も屈辱もなかった。
際限なく込み上げてくる肉の愉悦を貪り続けていた。

「じゃあ出してやるぜ、美人ちゃん。しっかり妊娠してくれよ」
「にっ、妊娠はいやっ」

老人たちに輪姦され、その種を孕まされる恐怖に美和子は身を縮ませたが、その恐怖すらすぐに
快楽と取って代わってしまう。
抗う声はよがり声に変わり、泣き叫ぶ悲鳴は熱い喘ぎに変化する。
脅えによる身体の震えすら、官能の悦楽に酔う身悶えになってしまった。

「覚悟しろよ、同時に出してやるからな」
「ああっ……お、おっきいっ……な、中でおっきくなってる……」
「そうかね。どっちがだね?」
「ど、どっちもっ……お尻に入ってるのも……オ、オマンコに入ってるのもっ……」
「その大きいのでたっぷり出してやる」

互いにリズムをとって抜き差ししていた老人たちは、突如それを崩して力一杯の律動に変えた。
美和子をよがらせるというよりは、自分たちが射精したいからだ。
だが、悲しいかな、美和子はそんな刺激すら自分の快楽として受け取っていた。

「はっ、はげしっ……激しすぎるっ……おおっ……い、いく……またいくっっ!」

前後に抉り込まれた亀頭部がぐっと膨れあがり、射精が近いと知った美和子は、また胎内を汚さ
れると思っただけで絶頂に達してしまった。
今度の収縮は一層強く、さすがに男たちも耐えきれなかった。
媚肉の締め付けに耐えかねた老人が、美和子の腰をしっかり固定すると、押し潰す勢いで突き刺
してくる。
三度ほど深くまで突き上げると、そこで我慢できなくなったのか、腰を密着させて美和子の子宮
を押し上げた。
亀頭部の先が子宮口に触れた瞬間、老人は呻いた。

どぶぶっ。
どびゅううっ。
びゅるっ。

「ああっ、出てるっ! 熱いのがぁっ……ひっ……い、いく!」

老人は獣のように呻いて、腰を揺すった。
しなびた精嚢から次々と精子が送り込まれ、美和子の胎内に撒き散らされた。
若い男のような粘りはなかったが、それでも美和子を「二度イキ」させるには充分な量だった。

美和子が、膣に浸透してくる精液の熱さにうっとりとしていると、尻を責めている老人が本格的
に動き出す。
同時に出せなかったが、さっき美和子が媚肉で絶頂した時の、肛門締め付けは充分に甘美だった。
いくたびに、抜き差ししている肉棒を締め付けており、ペニスは「早く出させろ」怒り狂うかの
ように赤く硬くなっている。

「うああっ……も、もう許して! こ、これ以上いったら、私……」
「おかしくなるってか? おかしくなれよ、そんなあんたの顔が見たいんだ」
「そ、そんなにお尻突き上げないでっ……すっ、すごいっ……お尻、すごいっっ」

たっぷりと美和子のよがり声を引き出すと、尻穴を責めていた男は、前に回して手で乳房を握り
しめながら、何度か強く深く突き上げた。
そして、美和子の尻肉に自分の腰が埋まるほどに押しつけると、そこで一気に解放する。

どぴゅぴゅっ。
どぶどぶっ。
びゅくんっ。

射精の勢いをしっかりと直腸で受け止めると、美和子は全身をふさぶって絶頂した。

「お、奥で! お尻の奥で……出てるぅ……お尻、灼けちゃう……あ、あううっ、ま、また、
いく!」

老人が射精するたびに、ぶるぶると震えながら腰を尻に押しつけると、その震えが伝染したかの
ように、美和子も肢体を快感で痙攣させた。
前と後ろからドッと汚濁の精液を注がれ、肉体の隅々まで穢されていく感覚を、美和子は薄れ
行く意識の中で感じ取っていた。

──────────────

「まずいよ、コナン君……」

ディックは気弱そうな表情を浮かべて小声で言った。
周囲をきょろきょろ見回している。
コナンに言われて病院へ来たのはいいが、捜査活動ではない。
パーシーならともかく、令状もなくそんなことは出来ない。

それでもいいというコナンの請願を受けて来たわけだが、少年の行動は捜査そのものだ。
蘭の消えたらしい診療室、美和子が入っていた病室などを見て回り、警備していた警察官にも
事情を聞いた。
時折、病院の警備員に胡散臭い目で見られるのだが、ディックがシカゴ市警の刑事とわかると、
不承不承ながら黙認した。
この病院で行方不明者がふたりも出たのは事実だから、病院側も邪険には出来ないらしい。
とはいえ令状はないから、あまりに高圧的な捜査も出来ない。
当たり障りのない部屋を見て回るのが関の山で、病院関係者に証言を聞くことも拒否されて
しまった。
とはいえ、院内を歩き回ることは容認された。
コナンと園子だけでは、こうはいかないだろう。

蘭が診療を受けたという部屋は、診察の休憩時間内に見せてもらった。
看護婦監視の中ではあるが、特に怪しい箇所は見あたらなかった。
部屋に隠し扉などの仕掛けがあって攫われたということではないようだ。
美和子が入っていた病室は、さすがに彼女が消えた状態のまま確保されていた。
今でも警官が張っている。
鑑識作業は一応終わったようで、中には入れた。
美和子の持ち物や服も残っていたし、ベッドには彼女がさっきまで横たわっていたかのような
窪みや、まくれたシーツが残っており、生々しかった。

表の警官の話では、パーシー警部が去った後、医師らしい男が美和子を「検査」と称して連れ
出したらしい。
すぐに事務長が呼ばれて事情聴取されたが、該当するような医師はいないと証言したらしい。
当病院に、そんな怪しげな連中が入り込むような余地はないとしながら、本当にその女刑事が
攫われたのなら、それは外部の犯行だと病院側は主張した。
前後の証言が相反しているのは明らかだが、呆れたことに市警はあっさりとその証言を受け入
れた。
無論、上層部の判断である。

「……」

コナンは考えていた。
何かカラクリがあるはずだ。
病院が関わっているのは明らかだが、蘭や美和子が外部へ連れ去られた様子がない。
出入りするクルマはすべて守衛所でガードマンがチェックしており、その記録は警察にも提示
された。
ノーチェックで入るのは救急車両くらいのものである。
防犯ビデオに映ったそれらの車輌には、なんら不審なところはなかった。
では、まだ院内にいるということだろうか。

「コナン君」

ディックは園子とコナンを引っ張って、警備員の目を避けるようにエレベータに乗った。

──────────────

着いたところは最上階のレストランだ。
まだ昼前ということもあり、空席の目立つ室内の窓際に席を取った。
ディックはようやく息を付いた。

「ふう、緊張した。コナン君、困るよ、こういうのは」
「でもさアンダーソン刑事、なんで警察は強制捜査しないの? 佐藤刑事も蘭ねえちゃんも
ここで消えてるのは確かなんでしょ?」
「そうよ。ふたりも続けて同じ場所からいなくなるなんて不自然じゃないの」
「だから、さっきも言ったけど、この病院の理事長が……」
「実力者だってんでしょ?」

園子は目を吊り上げて言った。

「実力者だか何だか知らないけど、なんで警察の捜査に口を挟めんのよ。何か後ろ暗いところ
でもあるわけ? 市警はさ」
「そう言わないでよ、園子ちゃん。大人の事情ってやつで……」
「そんなこと知らないわよ!」

園子は、ダン!とテーブルを叩いた。
そして斜に構えて腕を組み、細めた横目で若い刑事を威嚇する。

「……いいわよ、協力してくれなくても。あたしのパパを通じてお話通してもらうから」
「ちょ、待ってよ! それだけは困る!」

ディックは慌てふためいた。
実際のところ、彼らシカゴ市警に、園子やコナンをここまでサービスしてやる義理はないのだ。
確かに今回の誘拐事件被害者の関係者ではある。
だが、それだけなのだ。
捜査員でもないものを、捜査活動のようなことをさせるための手伝いをすることなど、金輪際
ないはずなのだ。

だが、彼らには突っ慳貪に出来ない理由があった。
言うまでもなく鈴木財閥の影響である。
シカゴという街にとって、ミシェル──マルタン氏の存在も大きいが、それに匹敵あるいは
それ以上に大きかったのがかの財閥だったのだ。
来年にも、市の郊外に関連会社の半導体工場建設の計画があった。
まさか娘の機嫌を損ねたからといって、親のビジネスの話が無効になるとは思わないが、少な
からず影響があるだろう。
市や警察当局はそれを恐れたのだ。
なに、所詮ハイスクールの女学生と小学生の男の子だ。
どれほどのこともあるまい、として「探偵ごっこ」につき合うことにしたわけだ。
お目付け役に選ばれたのが、毒にも薬にもならぬアンダーソン刑事である。

コナンが、園子とアンダーソン刑事の間に割って入った。
割って入るというよりも、園子を抑えたという方が正確だ。

「まあまあ、園子おねえちゃん。アンダーソン刑事を責めたって仕方がないよ」

どうも彼は上司たちにも信頼を得てはいないようだし、根掘り葉掘り聞き出したところで、
核心の部分は本当に知らないだろう。
ならば「吐け吐け」と責め上げるよりは、こちらの味方にして、動かしやすいよう懐柔した方
が得策だ。
園子は憤懣やるかたないといった風情だが、若い刑事の方はホッとしている。
ハンカチで額の汗を拭くディックに、コナンが言った。

「あと、他に行ってないのは……」

コナンはエレベータの階数表示を見ながら確認した。
一階と二階が外来の診療室と待合室だ。
三階から六階までが病室となる。
それらの階には、それぞれナース控え室と手術室もある。
そして最上階の七階が展望レストランというわけだ。

「このエレベータで行けるところは、もうみんな行ったよ。もういいだろう?」

眼鏡の若い刑事は、幾分ウンザリしながらそう言った。
目の前のソーダ水には見向きもせず、コナンが聞いた。

「ねえアンダーソン刑事、「このエレベータでは」ってどういうこと?」
「え? 何だって?」

コーヒーを啜って外の風景を眺めていたディックが、視線を窓から少年に戻した。

「さっき言ってたよね、「このエレベータで行けるところは、みんな行った」って」
「ああ、あれは一般用のエレベータだから」
「だからそれどういう意味?」
「この他に職員用とか、特別用のエレベータがあるんだよ」

それを聞いて、園子が眉を顰めた。

「職員用はわかるけど……特別のエレベータってなに?」
「うん。それは……ああ、園子ちゃん、あれ」
「ん?」

ディックが指差した先に、老人たちの一団があった。
いや、よく見ると老人だけではないようだ。
若い者はいないみたいだが、総じて壮年以上のようである。
歩いている者もいるが、ほとんどは車椅子だ。
全部で15,6人というところか。
食事を終えたところなのか、その連中がぞろぞろと奥へと向かっていく。

「あれ……なに?」

園子の不思議そうな顔を見て、ディックは苦笑した。

「入院患者だよ。特別のね」
「特別?」
「そう。特別病棟にいる病人たちだよ。といっても、本当に入院加療が必要なのは、さてどれ
だけいるかな」
「どういうこと?」

ディックはカップを置き、椅子にもたれかかった。

「早い話、金持ちの我が侭患者ってところかな。何でも、もう加療する必要はないのに、居心
地がいいからいつまで経っても退院しないってのも多いらしいよ。病院サイドも、治療しないで
いい上にカネは落としてくれるから上客扱いなんだろうな」
「ははあ」

そういう話は日本でも聞いたことがある。
自宅で家族とうまくいかなくなったりした金持ちがホテル住まいするようなものらしい。
愛人宅に住むのでは世間体が悪いし、病院の方がホテルよりも待遇がいいらしい。
専属のナースがあれこれ世話をしてくれるし、それこそ身体の調子が悪くなればいつでも診療
できる。
そう思って見てみれば、なるほど車椅子を押している看護婦たちも美女揃いのようである。

「なーるほど。確かにナースも美人ばっかりね。手を出しちゃう人もいるんじゃない?」
「そう考えがちだけどね、さすがにそれはないらしいよ。彼らのナースたちは一流の技術者だ
し、おかしなことをすればたちまち告訴されるから。それに、わざわざナースに手を出さなく
ても、彼らならいくらでも高級コールガールを呼べるよ」
「それもそうか」
「そのエレベータってどうなってるの?」

コナンの問いに刑事は首を傾げた。

「さあ。まあ中が広くなってるとか、床が絨毯張りだとか、そういうことなんじゃないかな」
「それだけ?」
「そりゃエレベータだもの、昇降する以外は出来ないよ。あ、もちろん彼らの病室には行ける
けど。あの人たちの病室はこの上だから」
「上? ここ最上階じゃないの?」
「いや違うよ。まあ庭から見上げてもわかりにくいんだけど、レストランの真上に特別病棟が
あるんだよ。見晴らしはいいだろうね」

病院ビルは一階から最上階まで真っ直ぐ同じ広さで建っているわけではないのだそうだ。
七階──つまり、今コナンたちがいるレストランまでは同じ広さだが、その上にある八階は
二廻りほど小さいらしい。
それで下から見上げても見えないらしいのだ。

「ふぅん……。そこは病室しかないの?」
「いや、診療室や手術室、特別病棟専属の医師やナースたちの控え室もあるよ。あとは……」
「あとは?」

ディックは腕を組んで答えた。

「確か、その上にも何かあるらしいけどね。ペントハウスじゃないの?」
「……そこへは……もちろん行けないよね?」

コナンが目を光らせて聞いたが、若い刑事は即座に断言した。

「もちろん。僕らじゃそこどころか特別病棟にだって入れないよ。あそこには専用のガードマン
もいるし、捜査令状でもなけりゃ……いや、あったとしてもお抱え弁護士どもに止められるだろ
うな」
「……」

コナンは、そこを見通すかのように天井を見つめていた。
そして、おもむろに若い刑事に問うた。

「ねえ、アンダーソン刑事。そのマルタンだかって人が犯人だって、佐藤刑事は言ってたんで
しょ?」
「しぃっ」

ディックは慌てて周囲を見回し、あたりには誰もいないことを確認して息をつく。

「コナンくん、滅多なことを言っちゃダメだよ。ここはそのマルタン氏の病院なんだから。
それに、そのことは部外者に話しちゃいけないことに……」
「佐藤刑事は何て言ってたの?」

確実に警察の内部情報、しかも部外者極秘のはずのネタだが、ディックは素直に答えた。
コナンが警戒を受けないタイプだということもあるが、さっき彼に助け舟を出してもらった
せいで印象が良くなっているということもあるだろう。
もっとも、ここまで口が軽いのは、やはり警察官──というより公務員として問題ではある。
ディックは、まだあたりを気にするような素振りをし、小声で言った。

「……確かにそう言ってたよ、あの人は。そして、これが証拠だって言って、警部にハンカチ
を渡したんだ」
「ハンカチ?」
「そう。そのハンカチは佐藤警部補の持ち物だったらしいけど、そこにね、彼女がマルタン氏
の精……、おっと」
「?」
「い、いや、体液を染み込ませてきたって言ったんだ」

彼が言いよどんで体液と言い直したのは、恐らく精液のことだろうとコナンは思った。
ということは、佐藤刑事は自分の身を犠牲にして、犯人の精液を採取したということなのだろう。
コナンは佐藤刑事を思い、少年らしからぬ沈痛な面持ちになった。
彼女も、自分の恨みということもあるだろうが、蘭が拉致されていることを懸念して、敢えて
無茶な策を執ったのだろう。

警察内部も信用できない。
外地というよりは、四面楚歌の敵地に近い。
協力を得られぬ以上、そうするしかなかったに違いない。
実際はパーシーと言う協力者がいたのだが、コナンはそこまでは知らない。

「……じゃあ、その体液はマルタン氏とは一致しなかったの?」
「しなかった。詳しく調べるまでもなく、血液型が違ったんだよ。それじゃどうしようもない」

慎重な佐藤刑事であれば、取り違えるということはないだろう。
極限状態であったには違いないだろうが、それを目的に行った以上、証拠のハンカチを紛失する
ことも考えにくい。
よしんば一度敵手に渡って、それを取り戻したというのであれば、差し替えられた疑いは残るが
そうなら佐藤刑事もそのことを留意するようパーシーたちに言うだろう。
であれば、そのハンカチに染み込んでいたのは、やはりマルタンのものだと思うしかない。
しかし、血液型が合わないとはどういうことだろう。

「……そう言えば、そんなのをどこかで聞いたな」
「え? 何か言ったかい、コナンくん」

コナンは記憶の層を辿りながら、若い刑事の言葉を聞き流した。




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