「Fuck!(くそったれ!)」

深夜の市警ビルに、パーシーの呪いの声が響いていた。
場所はレストルームのすぐ外、階段の脇にある小さなスペースだ。
ここで彼はよく休憩していた。
市警の中にある数少ない喫煙場所なのだ。
古ぼけたイミテーション・レザーのソファがふたつ、それに挟まれるように小さなガラス・
テーブルがぽつんと置いてある。
その上には、コーヒーの紙コップがふたつと、すでに吸殻で雪崩を起こしている灰皿がひとつ。
パーシーは、吸いかけのシガレットを押し潰そうとしたが、もうどこにも吸殻が捨てられる
余地がない。
仕方なく彼は、もうすっかり冷めているコーヒーの紙コップの中に投げ捨てた。
不機嫌な彼の前で相手をしているのはアンダーソン刑事である。

「警部、そんなにいらついたって仕方がありませんよ」

落ち着かせようとして口にした言葉だったが、それが余計に怒りを煽った。

「バカ野郎! 仕方がねえとは、なんていい草だよ! 俺たちに協力するためにわざわざやっ
てきた美和子が、やつらに拉致されてることは間違いねえ。おまけに日本の旅行者もひとり
攫われてるじゃねえか」
「そりゃそうですけど……」
「オレたちの縄張りでだぞ! おめえ、それでものほほんとしてられるってのか!?」
「……」

もちろんディックの方にも義憤がないわけではない。
確かに証拠はないのだが、彼らの容疑は濃厚なのだ。
証拠がないのなら、証拠や証言を得るべく捜査活動をすべきだと思う。

だが、それが封じられているのだ。
局長というより市警上層部からである。
遠巻きにではあるが、市長や有力議員からも圧力があるらしい。
これがシカゴ市民に手を出したのであれば、また反応は変わるだろうし、日本から正式に捜査
要請でも来れば話は別だろう。
それがない以上、そして確証がない以上、余計な詮索は無用というわけである。
遠からず佐藤警部補と毛利蘭失踪は日本に伝えざるを得ないから、その後は要請があれば捜査
せざるを得まい。
それまでに時間稼ぎをして、彼らに証拠隠滅の時間を与えているのだろう。

いらついた警部と、項垂れた若い刑事は、自販機の陰にこっそりと潜んでいる小さな姿に気づ
いていなかった。
コナンである。
彼は、パーシーがトイレに立った隙にディックの後ろから、時計型麻酔銃を発射した。
うなじのあたりにチクリとした痛みを感じたディックは、そのままくたりとソファに倒れこ
んだ。
コナンは苦労して彼の姿勢を正し、座ったまま前屈みになってガックリと眠っているかの
ような格好にさせた。
そこにちょうど警部がハンカチで手を拭きながら戻ってきた。
コナンは急いでディックの腰掛けたソファの後ろに回りこんだ。

「……おい、ディック。なんだ、寝ちまったのか、おい」
「……」
「仕方ねえな。相変わらず使えねえガキだ。おい……」

そう言ってパーシーが、ディックの肩に手を伸ばすと、いきなり彼の声がした。

「警部」
「な、なんでい。起きてやがるのか」

ディックに成りすまして喋っているのは、蝶ネクタイ型変声機を使っているコナンであること
は言うまでもない。

「警部」
「だから何だよ。疲れたんならもう帰って……」
「例のマルタン氏の体液検査、血液型しか調べてないんですか?」
「何を今さら。血液型が違ってたんでダメですよって言ったのはおめえだろうが」

コナンはそこまでは知らない。

「僕、考えたんですけどね」
「何をだよ」

パーシーは不機嫌そうに、またタバコをくわえた。

「チカチーロって憶えてますか、警部?」
「チカチーロ? なんだい、そりゃ?」
「ロシアの殺人鬼。連続猟奇性犯罪殺人者の……」
「ん? ……ああ、思い出したぜ。アンドレイ・チカチーロか」

20世紀末にロシアを……というより全世界を震撼とさせた稀代の殺人鬼だ。
彼は、自分の性的不能や嗜虐、残虐嗜好が昂じて、数々の性犯罪および殺人事件を起こした。
さらに悲惨だったのは、チカチーロにはロリコン趣味もあったらしく、被害に遭ったほとんど
が年端も行かぬ子供たちだったことだ。
おまけに男色趣味もあったから、強姦殺人の被害者は女子に限らなかった。
パーシーは殺人より性犯罪の方が嫌いだし、対象が子供というのは虫唾が走る。
顔を歪めてベテラン警部は言った。

「確かありゃあ、50件以上の殺人容疑で95年だかに銃殺になったんじゃなかったか?」

詳細な犯罪件数は結局不明だったのである。
彼があることないこと自慢話のように自供したこともあるし、彼自身忘れてしまったものもある
らしい。

「ええ、そうです。でもチカチーロがこの件で逮捕されるまでには時間がかなりかかってます」
「当時のソ連の官僚主義じゃな」
「それも確かにあるでしょう。でも、何度も疑われながらも、まぬがれてきたのはなぜだと
思いますか?」
「さあな」

パーシーは管轄外の事件にはあまり関心がない。
第一、チカチーロ事件はソ連である。
守備範囲内どころか、スタンドに飛び込んだファールだ。

「チカチーロ逮捕のきっかけになったのは、彼が被害者を惨殺した際の返り血を浴びたまま
ウロウロしていたからなんですが、それ以前にも犯人は、被害者の身体や服に体液を何度も
残しています。彼は何度か容疑をかけられたものの、結局釈放されている」
「だから、それが何だってんだよ」

警部の恫喝も、若い刑事には利かなかった。
普通なら、パーシーが怒鳴れば、すぐに自説など引っ込めてしまう男である。
パーシーも普段と違う部下のように気づいた。

「嫌疑濃厚でありながらも、チカチーロが逮捕をまぬがれていた理由は血液型です」
「血液型?」
「警察の捜査やチカチーロの前科、あるいは状況証拠などから鑑みても、彼が犯人である可能
性は極めて高かったんですが、被害者から採取された体液の血液型がチカチーロと一致しなか
ったんですよ」
「そりゃまたどういうことだ? 血液型と精液が違うことなんかあるのか?」
「あった……ようですね」
「……」

パーシーは再びソファにドッカと腰を下ろした。
火の点いていないタバコをくわえたまま、部下に先を促す。

「非分泌型というやつらしいですね」
「なんだ、そりゃあ」
「僕も医者や学者じゃありませんから、詳しいことはわかりません。ただ、チカチーロの場合、
採血して調べた血液型と、精液から調べた血液型が違っていたんです。稀にこういう人間が
いるようで、まさかロシアの捜査当局もチカチーロがそうだとは思いもしなかったんでしょう」
「……」
「そもそも、そんな奇妙な体質の人間がいるなんてことは、当時の……いや、現代の警察だっ
て、そうは考えつかないでしょう」
「かも知れねえな。指紋や血液型の検査なんてのは、もう当たり前のルーチンワークになっち
まってて、それが違えば犯人じゃねえって、そう思い込んでるところは確かにあるな」

パーシーも腕を組んで考え込んでいる。

「でしょう。だから警部、マルタン氏も……」
「わかってる、ディック。やつもそうかも知れねえってんだろ? ……確かに否定は出来ない。
調べてみる価値はあるかも知れないな」
「ぜひ調べるべきだと思いますね。どうせ鑑識じゃあ、単純なABO式の血液型検査しかやって
ないんでしょう?」
「……」

手詰まりだった捜査に意外なところからヒントが与えられた。
パーシーは、俯いたままの若い刑事を無言で見やると、懐から携帯電話を取り出した。

──────────────

「んっ、ああっ……ああうう〜〜っ……」
「ふふ、もうすっかりアナルセックスで感じるようになったな、蘭」

蘭の若い肉体は、昨日の調教で肛門の性感に目覚めてしまっていた。
今回の凌辱劇でも、責められていかされたのは何度もあるが、「いく」と言わされたのはアヌ
スを犯された時が初めてだったのだ。
別にこれは、蘭が膣より肛門の方が感じるという意味合いではないだろう。
とりわけアヌスの性感が発達しているらしいことは確かのようだが、ミシェルの巧妙な誘導に
よって、アナルを犯されている時に最大の絶頂を迎えさせられ、精神的にも追い詰められて
いたということが大きい。
だが、そのせいで蘭自身「自分は恥ずかしいアナルで感じてしまう、気をやってしまう」と
いうことを自覚させられていた。
そのことが余計にアナル性感を高めてしまっている。

ミシェルの側も、蘭のアナルにすっかり魅せられていた。
きつきつに狭いのに中はぬるぬるしている。
締め付けの心地よさは味わえるが、ピストンしにくいということはない。
おまけに、蘭は明らかに尻で感じてしまっている。
責める方としては堪えられないシチュエーションだ。

プライベートなら、このままアナル中心に責め上げるのもいいが、蘭は商品だ。
一時、自分用に飼おうかとも思ったミシェルだが、責め続けるにつれ、「これはいい商品に
なる」という確信に近いものを得ていた。
この娘を仕込んで出品すれば高価になるのは目に見えているし、そうなれば組織での彼の立場
も幾分かは回復できるというものだ。
日本で惨めな失敗をした意趣返しという意味もある。

ミシェルは、このまま尻奴隷にしたいという思いを噛み殺し、媚肉も調教して、高級娼婦あるい
は専属性奴として仕立てようと思った。
さほど難しいとは思わなかった。
焦らしくすぐり責めで改めて確認した通り、蘭は文字通り「全身性感帯」と言ってもいい肉体だ。
脚の指から髪の毛に至るまで、どこを愛撫してやっても官能を得ている。
見た目の肢体の素晴らしさは誰にでもわかるだろうし、膣や肛門の挿入感は数値でもわかって
いる。
初々しい感じっぷりも、マニアには受けるだろう。

ただ、それはそれでいいが、中には「もっと、もっと」とせがむような美女を、という需要も
ある。
毛利蘭は、そのどちらでもいけるよう仕立てるつもりだった。
責め方によって(主に言葉責めになるだろうが)、「恥ずかしげに感じる少女」にも、込み上
げる快楽に我慢できず「欲しがる女」にも、どちらにでもなれるような理想的な美女にするのだ。

「んあっ……はああっ……うくっ……いっ……あう!」

蘭を四つん這いにさせ、尻を突き出させる後背位の姿勢を取らせている。
そしてそのくびれた腰を掴むと、ずん、ずんと思い切り深くまで貫いていた。
一回一回が重く深く、もうこれ以上無理というところまで突き上げた。
蘭は、ずぶっと奥まで突き抜かれるごとに呻き、ぬるっと抜かれるごとに喘いだ。
もう、肛門を犯される妖美な快感を隠そうともしない。
アヌス周辺だけではなく、直腸のあちこちにも感じるポイントがあることを覚えさせられた。
硬いペニスの先端が腸内を抉り回し、腸壁を突き破らんばかりに犯されると、胴震いがするほど
の肉悦が襲い来る。

「ああっ……ああっ、いいっ……」
「恥ずかしいやつだな、尻を犯されてそんなによがるとは」
「だ、だって……ああっ……んぐっ、ふ、深いっ……」

ピストンを加え、蘭の華奢な肢体が揺さぶられると、露を溜めた媚肉からも、ぼとぼとと蜜が
零れてくる。
律動を繰り返していると、突如、蘭の腰が細かく震えてきた。
掴んだ尻たぶが固くしこってくる。
絶頂が近くなり、それを我慢しているのだろう。
そこをガスガスと突き込むと、絶頂を見られたくないという健気な思いはたちまち消し飛び、
蘭は上り詰めていく。

「ああっ……ああっ、もっ、だめっ……はううっ……」
「なんだ、もういくのか」
「いっ、いくっ……いっちゃ……ああっ……」

否応なくそのことを認め、蘭は恥をかく覚悟をした。
アヌスを犯されて気をやるなど羞恥の極みだが、もう肉体は燃え上がってしまい、どうにも
制御できなかった。
もう一突きでいきそうだと、蘭が身体を固くして待っていると、突然、刺激が遠のいた。

「ああっ!?」

肛門と直腸を目一杯拡げていた異物が抜き取られ、物足りなさそうにアヌスがほころびたまま
になった。
蘭が首だけ振り向くと、ミシェルはいやにやしてその様子を見ていた。
少女の視線は、彼の股間に行ってしまう。
男性を象徴するその肉茎は猛々しいたくましさを保ち、ぬらぬらと濡れていた。
早くあれで抉ってもらいたい。
いかせてもらいたい。
蘭は生唾を飲み込んだ。
ミシェルはそんな美少女をごろんと転がした。

「あっ」

さっきまで与えられていた快楽で力の入らない蘭は、無抵抗に仰向けになった。
そこにのしかかるようにミシェルが聞く。

「なんだ、そんなに物欲しそうな顔をして。そんなにいきたいのか?」
「……」

その通りなのだが、それを平気で口にするほど堕ちてはいないつもりだった。
行為の最中、無我夢中で言ってしまうことはあるにしても、恥ずかしげもなく「欲しい」と
言うまで落ちぶれてはいない。
悔しそうに顔を背けた蘭を、ミシェルは嬉しそうに見ていた。
こうでなくてはいけない。気の強い少女を最後に屈服させることこそ、最大の男にとって喜悦
なのだ。
また、調教と同時に、もうひとつの目的がミシェルにはあった。
そのためにも、簡単にいかせるつもりはなかった。

「ああ……な、なにを……」

蘭は虚ろな目でミシェルを追っていた。男は蘭の細い手首を掴むとバンザイをさせ、腋下を
晒させた。
その状態で、また手枷をしてしまったのだ。

「また、そんな……そんなことしなくても……」

抵抗はしない、と言いたいのだろう。
普通の状態ならともかく、ここまで肉体を快感で炙ってしまわれては、ミシェルを叩きのめし
て逃げようなどとは思いもしなかった。
それより、一刻も早くこのもどかしさを何とかして欲しい。
いきそうでいけない状態を、切ない思いを鎮めて欲しかった。

「あ……ああっ」

蘭が平静でいられなくなったのは、下半身を持ち上げられたからだ。
足枷についたチェーンが上へ上へと引っ張り上げられ、最後には頭の方にまで引っ張られたのだ。
横から見ると、ちょうど平仮名の「つ」の姿勢になっていると思えばいい。
いわゆる「まんぐり返し」である。
脚が引っ張られ、腰が寝台から持ち上がっている。
おまけに肩幅にまで開かされていたから、股間の秘裂や菊座まで丸見えである。

「ああ……見ないで……やあ……」

ミシェルにそこを覗き込まれ、蘭は消え入りそうな声で言った。
男はいちいちその状態を描写していったが、そんなことされなくても彼女にはよくわかる。
散々犯されたアヌスはほころびており、今でも僅かに口を開けているはずだ。
中からとろみのついた粘液が滲んでいるのだってわかる。
媚肉もアヌスに負けないほど恥ずかしい状態になっている。
凌辱されているのはアヌスばかりで、まだロクにいじられてもいないのに、じっとりと恥毛が
濡れそぼっている。
女肉の裂け目は生々しく花開き、その奥にある膣口からは熱い蜜が出てきていた。
いきかけていたのだから無理もないだろう。

「……」

蘭は見られているだけでも感じ始めている。
透き通るような白い肌に血色が乗り始める。
唇が半開きになり、熱い吐息を洩らしていた。
何もしなくとも、吐息が喘ぎに変わるのは間違いないだろう。
視姦などのいわゆる放置プレイでも、充分に燃える体質のようだ。
被虐嗜好があるらしいことはわかっていたが、思ったよりM気質が多いのかも知れぬ。
格闘技で鍛え、男顔負けのところがあるだけに、その裏ではこうした欲望が燻っていたのだろう。

このままじっくりと仕込むなら視姦も面白いと思ったが、そうもしていられない。
徐々に色濃くなっていく女の香りを愉しみながら、男は少女の腿に手を伸ばした。

「あっ……ああ……」

ちょんと触れられただけなのに、蘭には飛び上がりそうなほどの刺激になっている。
若々しく筋肉の詰まった、それでいてしなやかな美しい脚を確かめるかのように、指と手の
ひらで撫で上げていく。指でさするだけでなく、爪の裏や先を使って軽く引っ掻いたり撫で
たりすると、蘭はギクンギクンと身体を硬直させる。
恥ずかしい姿勢と相まって、蘭の身体はもう全部が性感帯になっているようだ。
優しく撫でていた指先が突如、きゅっと柔肌を抓ってくる。
ピリッとした痛みが、蘭の官能中枢を刺激した。
よく動く手は、媚肉へも伸びた。
開きかけた割れ目を閉じさせるかのように親指と人差し指でこねると、蘭は思わずこぼれそう
になる喘ぎ声を噛み殺した。

「この期に及んでまだ恥ずかしいのか、感じてしまうのが」
「……」
「まあいい。それがきみのいいところだ」
「あ……ふあっ……」

堪えきれずに声が出た。
ミシェルの手が乳房を責め出したからだ。
10代とは思えぬほどたわわに実った胸を、男はぐっ、ぐっとリズムをつけて揉みしだいた。
ピンク色の乳輪から恥ずかしげに覗いている乳首をこねくってやると、そこはもう硬くしこっ
ている。
乳首を責め、同時に膣へ第一関節まで指を入れてやると、少女はもう我慢できないという風に
腰をうねらせてきた。

(ああ、この男は……また、あたしを虐める気なんだ……。もういっちゃいそうなのに……
いきたいのに、いかせてくれないんだ……)

蘭は、悔しさと切なさを混在させた苦悶の色を、その美貌に浮かばせていた。

「いきたいだろう?」
「……」
「これでもか?」
「ああ!」

ミシェルの太い指が二本になって蘭の媚肉を犯していた。
人差し指と中指を絡めて、太く歪な形にし、それで少女の秘所をゆっくりとかき回す。

「我慢することはない、正直に言うことだ。いきたいのだね?」
「……」

蘭は目をつむり、顔を伏せてカクンとうなずいた。
それを確認すると、ミシェルは残忍そうな笑みを浮かべて蘭に要求した。

「いいだろう。だが、ひとつきみに頼みがある。それを聞いてくれれば、きみを満足させてや
ろう」
「た、頼みって……」

蘭の瞳はもう虚ろだった。
ちろちろと揺れるように燃えていた小さな性の火は、燃料をくべるだけくべられて燻っている。
一気に燃え上がらせてもらわないとおかしくなりそうだ。
そうさせてもらえるなら何でもしようとすら思った。
自分から繋がれと言われればミシェルの腹の上に乗るし、アナルセックスだと言われれば、それ
でもいいとまで思っていた。
だが、彼の要求はとんでもないものだった。

「きみはこの街に連れがいるね」
「え……?」

いる。
江戸川コナンと鈴木園子だ。
そもそもは園子の誘いで渡米してきたのだ。
でも、それとこれにどんな関係があるのだろう。
ミシェルは噛んで含めるように言う。

「彼らを呼びだして欲しいのだ。私の指定する場所へね」
「呼び出すって……、コナン君と園子を?」
「そうだ。そうしてくれれば、きみの悩みは解消するよ。何度も何度も気をやって、すっきり
することが出来るんだ」
「で、でも……」
「ん?」
「園子やコナン君をどうする気なの……?」

蘭にここまで非道なことをやってのける男だ。
園子に対しても同様に酷いことをするに違いない。
でもコナンはどうするのだろう。
彼は子供だし、第一男の子である。

「余計なことは気にしないでいい」と言おうとして、ミシェルは考えを変えた。
一層、悪辣なことを考えたのである。
彼らにひどいことをする、と、本当のことを言ったらどうだろう。
蘭の性格からして、何としてでも阻止しようとするだろう。
つまりミシェルの要求には応じないはずだ。
そこでさらに蘭を性の快楽地獄へ追い込む。
絶頂を求め、気も狂うような焦燥感の中で、それでも園子やコナンのことを思えるだろうか。
彼女の正義感はそこまで強いだろうか。
是非とも確かめたくなったのである。

「知りたければ教えてやろう。鈴木園子というきみの友人は、鈴木財閥の会長令嬢だそうだね」
「!」

営利誘拐。
身代金搾取。
そんな単語が蘭の脳裏に浮かぶ。
しかし、ミシェルの言葉は蘭の想像を絶していた。

「彼女もね、セックス調教をして売り飛ばそうと思うのだがね」
「な……」

蘭は大きな瞳がこぼれそうなほどに目を見開いた。

「美人度で言えば、きみの方が上だ。スタイルも恐らくそうだろう。だが、それは毛利蘭、きみ
の美貌と肢体が群を抜いているからであって、個々に見れば鈴木園子とて、そう悪い素材ではない」

あまりのことに口も利けない蘭を置き去りにして、ミシェルは言葉を続ける。

「17歳の美少女。しかも大企業CEOの令嬢だ。こういう、普段は手の届かないセレブの女
を嬲りたいという変態はけっこう多いのだよ」

すっかり王政が廃れてしまった今、金持ちの令嬢というのは、ある意味で現代お姫様とも言え
るのだ。
王妃、姫君を犯すという歪んだ欲望に一脈通じているのである。

「もうひとりの少年。これはきみとどんなつながりがあるのか知らんがね。彼みたいなタイプ
にも需要はある。少年愛という言葉くらいは知っているだろう?」

コナンも性奴に仕立てるつもりらしい。
蘭は、わなわなと唇を震わせていた。
絶対に阻止しなければならない。

「彼らの滞在しているホテルはわかっているんだがね、一日中警官や刑事がそばをうろうろして
るんでね、迂闊に近寄れんのだ。きみに呼び出してもらえば……」
「やめて!!」

蘭は絶叫した。

「そんなこと絶対やめて! あたしは……あたしはもう……どうなってもいいから……。園子や
コナン君には手を出さないで!」
「そうもいかんのさ。さ、素直に言うことを聞きたまえ」
「絶対いや!」
「そうか。なら仕方がない」

ミシェルは道具を取り出した。
蘭は、それを恐ろしいものでも見るような目で見ていた。
何か淫らな責め具だと思ったのだ。
日本で、牧田にバイブで責め嬲られた記憶が甦る。
そんな視線を感じ取ったのか、ミシェルが笑って言った。

「そう脅えることはない。これはハンディマッサージャーだ」
「……マッサージ?」

40センチくらいのアイボリー色をした機械だった。
棒状だが、まっすぐではない。
やや屈まっている感じだ。
下──根元からはコードが生えているが、恐らくアダプターだろう。
上──先端はぐっと一回りくらい太くなっていて、そこには丸いロールがついている。

「知らないかね? 肩凝りの時なんかに使うあんま機だよ。こいつを肩に当ててスイッチを入
れると、揉みほぐされるような刺激や、バイブレーションがかかる、というわけだ。ちなみに
日本製だよ」
「あんま機……?」

そんなものを何に使うのだ。
自分は肩など凝っていない。
ミシェルが使うのだろうかと思っていると、彼はスイッチを入れて見せた。

ヴィィィィィ。

ぶるるるる、と、細かい振動をしている。
それを見ると、蘭の美貌が引きつってきた。
間違いなくそれを蘭の身体に使うのだろう。
何をされるのか本能的にわかった気がした。

「い、いや……」

後ずさろうにも動けない。
股間に近づいてくるマッサージ機を見て、蘭は喚いた。

「やめてっ! そんなことやめて、お願い!」

脅える少女を薄笑いさえ浮かべて見つめながら、ミシェルは機械の先端を蘭の媚肉に押し当てた。

「あっ!? うああああああああああああっっ!」

ビリビリビリと、細かい激しい刺激が少女の股間を襲った。
思ったよりバイブレーションは強くなかったが、何しろそんなことをされたのは初めてだから、
その刺激に仰天した。

蘭がまず驚いたのはそのバイブ感覚だ。
まるで激しく痙攣している手で媚肉の襞をつままれているかのようだ。
もちろん人間の手では、こんなに細かく素早く激しく動かすことなど出来まい。
その未体験の刺激は、指による自慰など児戯に思えるほどの強烈な快感を膣へ送り込んでくる。
まさに強制的な快感だった。

あてがわれているのは秘裂だが、そのビビビビという振動がクリトリスにまで響いてくる。
機器を当てられている割れ目の部分が、急激に熱を持ってくる。
快楽によって内部から熱が込み上げるのではなく、まるでマッサージ機から直接熱伝導して
くるかのようだ。
身体を突っ張らせ、ぐぐっと全身に力を込めて仰け反っていた蘭は、急に股間から刺激が離れ、
ガクッと脱力した。

「蘭、どうだね、マッサージ機の味は? その反応じゃあきみは初めてだったんだろうが、
オナニーの手法としては男女ともにポピュラーなものだよ」
「やめて……もう、やめて……」

早くも蘭は息も絶え絶えの状態だ。
指を使った愛撫とは桁違いの凄まじさだ。

「やめて? ウソを言うな、いきたかったんだろうに」
「そ、それは……」
「これでいけるかも知れんぞ? 女性の中には、これのオナニーが病みつきになってしまうのも
いるそうだ。きみも気に入ったんじゃないかね」
「いや……。あがっ!? あ、あ、あ、あはあああああっっ!」

ミシェルはまたしても蘭の媚肉を刺激した。
細かくビビビッと振動すると、押し当てられていた媚肉から汁が飛び散る。
そうでなくとも滲んでいた愛液が、これによってさらに分泌量を増やし、振動によって撒き散ら
されているのだ。

媚肉をバイブレーション責めしたかと思うと、いきなり矛先が肉芽に向かった。
そこに先端部をくっつけられた時、蘭はそれこそ喉が張り裂けそうなほどに絶叫した。

「あひゃあっっ、やあっ、そこはあああああああっっ、あっ、ああああ〜〜〜っ」

蘭の状況を見て、ミシェルは巧みに膣とクリトリスを交代で責めた。
蘭はもう半狂乱のようになって叫んだ。
恥も外聞もなかった。

「あっっ、はあああっっ!! ……も、だめえっ……いっ、いっく……いっちゃう!……あっ」

今にもいくかと思ったその時、すべての刺激が遠のいた。責めるミシェルが、すっと機械を
離したのだ。
ミシェルがにやにやしながら言った。

「いく寸前だったようだな。どうだ、いきたいだろう?」
「く……」

口惜しさに歯ぎしりしながらも、少女は戦慄していた。
自慰やセックスとは根本的に違う気がする。
犯されて絶頂させられるのも屈辱ではあるが、これはそれとも異なる。
まさに強制的にいかされるのだ。
それも機械によってだ。
男が身体を愛撫するわけではない。
機械的に振動や刺激を与えられ、強引に快楽を送り込まれ、恥ずかしいと思う間もなく頭が真っ
白になる。
我慢とか抵抗とか、そんなものはまるで通用しない恐ろしさ。
顔を伏せる蘭を見て、男はまたその股間にマッサージ機を当てた。

ヴヴヴヴヴヴッ。

細かい振動が蘭の媚肉に押し当てられる。

「ひぃぃっ!? あああああっ、やああああっ、やっ、やめっ……てぇぇっ!」

少女らしく閉じられ、慎ましやかな形状をしていた蘭の膣は、今では見る影もない。
割れ目は大きく開き、生々しい女の肉をさらけ出している。
膣口から尿道まではっきりと姿を現し、愛液は留まることを知らない。
それだけでなく、上の穴からも僅かに尿が漏れ出していた。
あまりの快感に、締まりがなくなってきているのだ。

「おっ、お願い〜〜〜っっ、そっ、それやめてえっ……あああっ、だめ、いいっ……と、飛ん
じゃうっっ」

そこでまたミシェルが引いた。
途端に蘭の燃え盛るような肉欲が失せていく。

「あっ……」

燃え立つ淫靡な欲求は完全には消えない。
燃え残った火のように、ブスブスと煙を上げるように燻っている。

「いきたいか? いかせて欲しければそう言え。蘭をいかせてくださいとな」
「だっ……」
「ん?」
「誰がそんなこと……!」
「ほう、まだ抵抗できるか。では」
「きゃあああっ!」

ミシェルは飽くことなく蘭の股間を責めた。
媚肉から刺激を遠のけている時でも、マッサージ機は腿や乳房に当てて、蘭の快感が途切れな
いようにしている。
こうまでされては、いかに毛利蘭でも耐えきれない。
鍛えた心身も、本能には逆らえない。
何度も何度も繰り返され、蘭は息も絶え絶えになる。

「……がい……」
「なんだ?」
「お……願い……」
「……」
「し……して……」
「だから何をだ」
「い……かせて……ください……。蘭をいかせて……ください……。本当に……本当にもう…
…このままじゃおかしくなる……」
「ふふ」

フランス人は冷酷な笑みを浮かべ、少女の期待に応えるべく機械をそこに持っていく。
当てられたのは恥毛が覆うヴィーナスの丘だ。
薄い毛にまぶされた蜜が振動で弾かれ、恥丘が細かく震える。
蘭はぐうっと背筋を反らせた。

「あ、ああっ……くっ……そ、そこじゃ……なくって……あああっ」
「ここじゃだめかね。どこならいいんだ?」
「……んこ……」
「言いたまえ」
「お……まんこ! ちゃんとオマンコに当てて!」

蘭は一度も口にしたことのないようなセリフを吐いた。
もう膣というより腰全体が燃えるかのようだ。
一瞬でも我慢したくない。
早くすっきりさせて欲しい。
性に溺れた格闘少女の頭には、それしかなかった。
なのにミシェルはまたしても機械を少女の身体から離してしまう。

「ああっ!? ど、どうして……」

マッサージ機の先端は、ねっとりとした蜜で覆われている。
少女の膣との間に愛液の糸が引いている。
もう少し、今少しでいけるところだったのに。
蘭は喚くように抗議した。

「なんでよ! あ、あたし、ちゃんと言ったのにぃっ」
「そうだったな。じゃもうひとつ言うことを聞いてくれるかね」

蘭はガクガクと頭を振りたくった。

「なんでもするわ! なんでもするから言って!」
「それでいいんだ。ではよく聞きたまえ。いいかね、鈴木園子とあの少年を呼び出すんだ」
「そ、それは!」
「何でもするんじゃなかったのかね? あのふたりをここへ呼ぶんだ。そうすれば……」
「いやっ!!」

蘭は大きく顔を横に振った。

「絶対そんなことしない! 出来るわけないでしょ! 園子も……コナンくんも関係ないわ!」

ミシェルは呆れたように肩をすくめた。
やれやれ、ここまで強情で気丈だとは思わなかった。
この責めをされれば、普通は耐えられない。
女はもう気をやることしか考えていないはずだ。
事実、蘭も耐えきれず、恥ずかしい言葉を口にした。
にも関わらず、蘭はミシェルの要求を拒絶したのである。

「そう意固地になるもんじゃない。彼らを呼びだしさえすれば、きみは思いっ切りいけるの
だよ」
「……」
「きみが望むなら、何度もでもいかせてやろう。だが、拒否すればこのまま気が狂うまで寸止
めをするぞ。それでも……」
「いや!」
「では仕方がない」
「いやああっっ!」

蘭はまた寸止め地獄に追い込まれる。
ハンディ・マッサージャーを媚肉に押しつけられ、いきそうになるとはぐらかされる。
蘭の性感が落ち着いてくると、胸を揉みしだかれ、マッサージ機を腿や脇腹に押し当てられて、
徐々にたかぶらせていく。
そしてまた膣を責められる。
この繰り返しだった。
いきそうになるとまた刺激が止まる。

「なんで!? いきそうになってるにどうしてやめるのよ!?」

もはや蘭は半狂乱状態で、白目すら剥いて全身を痙攣させていた。
機械をつっくけられると、まるで感電したかのように爪先から頭まで電流が走り、背や首が折
れるかと思うほどに仰け反った。
汗まみれの肢体をひきつらせながら、美少女は呻き、喘ぎ、泣き喚いていた。
もう声も涸れたのか、蘭の口からは「ひー……ひー……」というか細い呼吸音しか出てこない。
こうまで責めても、かの少女は断固としてミシェルの要求を拒んでいた。

「……いや……絶対に園子と……コナンくんは……」
「呆れたもんだ」

ミシェルはぼやいた。
口では呆れたと言ったが、実はかなり驚いていたのである。
ここまで精神力の強い女は──いや男も含めてだが──ミシェルにも憶えがない。
このまま責め続ければ、本当に狂ってしまうだろう。
それは彼の本意ではない。

「やむを得ん。方針転換と行くか」

ミシェルはそう言うと、上着だけでなくワイシャツも脱ぎ去った。
黄金色の胸毛は密生した胸部は、それなりにたくましい。
ミシェルは荒い息を吐いて横たわっている少女に手を伸ばした。
激しい呼吸で上下している乳房を掴んで言う。

「きみの耐性は大したものだ。これほど我慢強い女性は私も初めてだよ」
「……」
「蘭、きみが我慢強いのはよくわかった。だから今度は趣向を変えてみようと思うんだ」
「な、にを……」

するつもりなの、と聞こうする前に、蘭の意識は吹っ飛んだ。
ミシェルはマッサージャーをいきなりクリトリスに押しつけたのだ。
ビビビビッと凄まじいバイブレーションが敏感な肉芽を襲い、蘭は何を考える暇もなく頂点に
押し上げられた。

「んひぃぃぃっ!!」

がくん、がくんと大きく仰け反り、少女は絶頂に達した。

「どうだね、蘭。待ちかねたオルガスムスは?」
「あ……ああ……」
「あれだけいきたがってたんだ、満足だろう」

クリトリスはもう真っ赤だ。
薄い包皮が剥けて、恥ずかしそうに覗かせたところへ直にバイブされたのだ。
ひとたまりもなかったのだろう。
やっといけて満足したのか、脱力していた蘭だったが、平穏の時間はなかった。
いったばかりの少女の肉体へ、ミシェルは続けざまに責めを繰り出したのだ。

「ああああっ!? やめっ、やめてっ……ひっ、ああっ!」

マッサージャーの先端は、クリトリスだけでなく膣にも侵入してくる。
細身の先端が秘裂に割り入っていく。
そこはもう蜜でしとどに濡れ、ほころびるように花開いていた。
小さく口を開けていた膣口に挿入され、そこで振動させられたからたまらない。

「あひぃぃぃっっ!」

あられもないよがり声──というよりは悲鳴が蘭の口を割る。
もう拒むとか耐えるなんて余裕はひとかけらもなく、めくるめく官能の嵐に飲み込まれていく。
人工の細身ペニスが膣に入り込むと、襞が絡みつこうとするのだが、それすら拒むようにマッ
サージャーは振動を続けた。
声を上げても身を捩っても、どれだけ身悶えしても快感から逃げられない。
肉の愉悦は爆発的にわき起こり、とてもじっとなどしていられない。

「だめだめだめぇっ、いっ……く……いくうっっ!」

蘭の膣がきゅううっと締め上がり、挿入されたマッサージャーをくわえ込んだ。
きつい収縮が先端をキリキリと締め付けているのが、ミシェルの手にも伝わってくる。
だが、そのきつい食い締めを振りほどくように、マッサージャーは激しい振動を蘭に加える。
ここが機械の恐ろしいところで、男のように射精しておしまいということがない。
電源のある限り、いくらでも蠢き、蘭を快楽地獄へと送り込んでいく。

「いあああああ……だ、だめ! ああっ、ああ、またいくっ!」

何度も何度も強制的にいかされ、一度達した絶頂感が覚めやらないうちに、立て続けに責めら
れる。
バイブで責め抜かれる媚肉だけでなく、アヌスや乳房にもミシェルの手が伸びている。
媚肉の蜜が伝ってきてぐしょぐしょの尻穴には指が突っ込まれてかき回され、汗でぬめった
乳房はたぷたぷと揉み込まれていた。
連続的複合的に責められて、蘭は気死しそうになる。
もう蘭には責めるミシェルの姿も見えず、ただひたすら肉悦に悶えていた。
全身から汗を噴き出させて身を揉み絞り、悶絶寸前だ。
また断末魔のような悲鳴を上げて両脚を突っ張らせ、ぐうっと背中を仰け反らせた。

「いぐうっっ!!」

そこで蘭は糸が切れたマリオネットのようにガクリと全身の力が抜けた。
もう十回以上連続していかされているのだ。
体力的にも限界なのだろう。
汗にまみれ、湯気すら立ち上りそうな蘭の肢体を撫でながらミシェルは言った。

「満足したかね」
「も、もう……」
「ん?」
「もう、いや……これ以上は許して……」
「いいや許さん」

白人の大男は出来るだけ酷薄そうに言った。

「蘭が私の言うことを聞いて鈴木園子を呼び出すまではな」
「そんな……そんなこと出来ないわ……」
「それなら、またいかせてやる。気が狂ってもいかせてやろう」
「いやあ……も、もうこれ以上されたら……本当に死んでしまう……」
「女が快楽責めで本当に死ぬかどうか実験するのも一興だ。試してみるかね?」
「ああ……いやよ……」
「いやなら呼び出せ」
「……」

蘭はミシェルから顔を背けた。あくまで拒否し続ける美少女を、男は冷たく眺めていた。




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