美和子が香港国際空港に降り立つと、ターミナル1には通訳を含めて香港警察の人間がふたりで出迎えてくれた。
取り敢えず荷物を預けるためにホテルへチェックインし、それから香港警務処本部へ赴いて挨拶を済ませた。
そこでは明日以降の予定の説明を受け、スケジュール表を渡された。
早速、明日から研修とやらが始まるようだ。
明朝、ホテルへ通訳の警官が迎えに行くから待っていて欲しい、とのことだった。
対応してくれた副処長に、日本から派遣されてきている警察官と顔を合わせてはどうかそ奨められ、会うことにした。
一緒に行動することはなさそうだが、一応、挨拶くらいはして美和子がここへ来ていることを知らせておく必要はあるだろう。
その男はここ、つまり本部に席があるらしい。
日本の警視庁本庁舎も大きなビルだが、ここもかなりのものだ。
ただ警視庁庁舎が横にも広くどっしりした印象なのに比べ、こちらは高層ビルそのものだ。
土地が狭いから、どうしても上へ高くするしかないのだと言って通訳は笑った。
「こちらです」
「ありがとうございます」
通訳の刑事はそこまでで引き返していった。
今日の仕事はここまで、ということらしい。
美和子はそれを見送りながら軽くため息をつき、ドアをノックする。
すぐに「どうぞ」という日本語の返事が室内から聞こえた。
「……失礼します」
かなり大きな部屋である。
豪奢な感じではないが、スペースは贅沢に使っている。
調度品も現場のようなスチール家具などではなく荘重な作りだ。
銘の入ったブランド品かも知れない。
入って左側にはドアが二枚あるから別室かトイレもあるのだろう。
正面には大きなデスクがデンと据えられており、その真後ろには香港市内の景観が臨めた。
男は大きな椅子に深々と腰を下ろして美和子に背を向け、外を眺めているように見える。
「……」
挨拶したのに失礼な男だなと思いつつ、美和子はデスクまで歩み寄った。
武緒の話だと警察庁の出向者がいるそうだから、この男がそうらしい。
鼻持ちならぬエリート官僚だろうから、警視庁からとはいえたかが一警部補など歯牙にも掛けないというところだろうか。
「……本日より東京警視庁から出向してまいりました佐藤美和子警部補です」
「お待ちしていましたよ」
「は? ……あっ」
くるりと振り向いたその顔を見て、美和子は思わず声を上げた。
「白鳥くん?」
「ご苦労さまです、佐藤さん」
そこにいたのは間違いなく白鳥任三郎に相違なかった。
国家公務員T種試験に合格して警察庁採用になった彼は、入庁後に警視庁捜査一課に出向した。
美和子たちの同僚だったわけだ。
ただ、一般のキャリア組はお飾り的な管理職を決められた期間こなしてすぐに本庁へ戻るのだが、白鳥に限ってはどうしたことか捜査一課に居続けた。
警察庁の方からもたびたび転勤の指示があったようだが、それを拒絶していたらしい。
最初は丸の内署や麹町署で副署長をやるよう言われたようだがそれを無視、しまいにはさっさと警察庁へ戻れと内示があったにも関わらずそれすら拒否して幹部を呆れさせたらしい。
一課内の噂では、美和子に惚れていて彼女をものにするまではここから離れたくないのだろう、ということだった。
美和子自身、彼の好意には気づいたが、生憎、白鳥という男にはほとんど興味がなかったので仕方がない。
無責任に「玉の輿」だとそそのかす同僚もいたが相手にしなかった。
仕事は一緒にするし仲間内でのつき合いには応じたが、それ以上の関係はなかったのである。
白鳥がようやく重い腰を上げて本庁復帰となったのは最近のことだ。
ちょうど美和子が高木と恋人同士になり、それが課内に広まった時期と重なっていることから、口の悪い連中は「フラれて諦めたのだろう」と噂したものだ。
そのこともあって白鳥の異動には美和子も少し複雑ではあった。
自分は好きでもなんでもなかったが、それだけ思ってくれたのだという気持ちは嬉しかった。
高木とつき合ったのは必然だと思うのだが、そのせいで白鳥が異動するとなると、やはりちょっと胸が痛むところはある。
ただ白鳥の方は、美和子への最後の挨拶の時でもさっぱりと吹っ切ったような表情だったので少しだけホッとしたものだ。
同時に白鳥に対する良くない印象もなくなった。
最後は笑顔で握手できたのである。
そんな中で、風の噂で白鳥に恋人が出来たらしいという話も聞いた。
そのことについて特に感想はなかったが、何だかすっきりしたのも事実である。
互いにお似合いの人を射止めたのだから、それに越したことはないのだ。
それ以降はぱったりと会っていなかった。
現場の刑事と官僚なのだから接点はないし、美和子はもちろん白鳥からも連絡はなかった。
白鳥の後に配属された夏実の指導もあって日々忙しく、いつしか彼のことはすっかり忘れていた。
思いがけない再会だった。
白鳥はデスクに肘を突き、組んだ手の上に顎を置いて美和子を見つめていた。
顔には穏やかな笑みが浮かんでいる。
美和子は驚いたように目を大きく開けて言った。
「まさか白鳥くんがここにいるとは思わなかったわ」
「でしょうね。まあ、こちらへどうぞ」
白鳥はすっと立ち上がると、美和子を応接セットの方へ導いた。
デスクのインターホンでコーヒーを頼んでいる。
すぐにドアが開き、秘書らしい女性がトレイに乗せた煎れたてのコーヒーをふたつ持ってきた。
一礼して彼女が引き下がるのを確認してから白鳥はコーヒーを勧めた。
カップに口をつけながら白鳥が言う。
「しかしひさしぶりですね、佐藤さん。何ヶ月ぶりかな」
「本当ね……。それにしても白鳥くんがなぜ……?」
「出向ですよ、あなたと同じです。但し立場は現地派遣官ですね」
「え、じゃあ何か日本との合同捜査でもやってるの?」
「いやあ、そんなもんじゃないですよ。連絡官みたいなものでして閑職ですよ。はは、左遷されたんですかね、本庁の指示を無視ばかりしてたから」
「……」
「ははっ、それは冗談ですがね、まあ箔を付ける意味でもみんな海外へ一度は出向するんです。欧州だったり北米だったり、色々ですよ。僕はたまたま香港だったというだけでね」
「へえ」
美和子はコーヒーにミルクを注ぎながら相づちを打った。
暇は暇なのだろうが、これをこなせば帰国してまた昇進でもするのだろう。
羨ましいとは思わないが、一線の捜査員としては釈然としない。
こっちは昇進するのに何年もかかるし、実績を作った上で試験にまで合格せねばならないのだ。
それに比べれば白鳥たちはほぼエスカレータで昇進していく。
美和子がゆっくりとコーヒーを飲むのを見ながら白鳥は続けた。
「それでもね、最初は暇だと思っていたんですが、最近ちょっと立て込んでましてね」
「何かあったの、白鳥くん……って、もうこの言い方は失礼よね。何しろあなたは警視さまだもの。敬礼でもしましょうか、白鳥警視」
美和子が冗談めかしてそう言うと、白鳥は頭を掻きながら笑った。
「やめてくださいよ、佐藤さん。かつての仲間同士じゃないですか」
言い方に屈託がなかったので安心し、美和子もつい笑った。
「そうだったわね。で、白鳥警視、何が……」
「待った待った、その「白鳥警視」もイヤだなあ、何だか他人行儀で。前みたいに「白鳥くん」でけっこうですよ」
「そうもいかないわよ、警察は階級社会なんだから。ひとつでも上なら下の者は……」
「他に人がいる時はそれでもいいですけど、ふたりしかいない時は昔の気の置けない仲間のままでいさせてくださいよ。だから……」
「わかったわよ、じゃあ……白鳥くん」
「ん、それでよろしい佐藤警部補。で、話は何だね?」
白鳥がしかめっ面で芝居っ気たっぷりにそう言ったので美和子は思わず吹き出した。
以前よりもユーモアのセンスも向上しているようだ。
本庁に戻ったというのに、前よりも穏やかで柔らかくなった印象がある。
「忙しくなったの? 事件?」
「はあ、それが……」
白鳥は意味ありげに美和子をちらっと見てから咳払いした。
「例のパレット事件ですよ」
「……!!」
美和子は一瞬表情が動いたが、すぐに驚きを噛み殺して平静さを装った。
「……あれは日本とアメリカの話じゃ……」
「そうじゃありませんよ、パレットは国際的な犯罪組織だったんですから」
「……」
「そもそもパレット日本法人は違法性のあることは何もしていなかったんです。事件を主導していたのはヨーロッパのパレットです。そのメンバーだったのが日本で事件を起こしたんです。あの後そいつはアメリカへ逃げて……、佐藤さんがシカゴで片付けた事件ですよ」
「……ええ」
どれもこれも思い出したくない事件だった。
美和子は膝の上でぎゅっと拳を強く握りしめた。
それには気づかぬ様子で若い官僚は話し続ける。
「で、アジアでのパレットは主にこの香港で暗躍していたらしいんですね。ほら、今、警視庁でパレット専従になってる……ええと松井警部補だったかな」
美和子と同じ一課の刑事だが班が違うため、顔を合わせても挨拶程度で一緒に仕事をすることはなかった。
パレット専従になってからは余計に疎遠である。
大きなレイバー犯罪が絡んでいたシャフト事件にも関わっていたため、捜査課の美和子よりもむしろレイバー隊の武緒の方が接点があったくらいだ。
くたびれた中年男というイメージだったが、武緒によるとそれなりに切れて行動力もあるらしい。
ただアンダーグラウンドな捜査法を採ることもあって、あまり上からはよく見られていないようだ。
「松井警部補たちが追っていたパレット関係者ってのが、ここパレットHKの組織員だったんですよ。そいつはうちの外事課が日本で身柄を押さえてるはずですがね」
「……そう」
「そいつは佐藤さんたちの事件とは無関係だったらしいんですがね。で、ここにきてパレットの動きがぱったり止んだんです」
「止んだ? 活動停止?」
「情報筋によると、どうも他の大きな組織に吸収されたらしいですね。佐藤さんご存じですかね「PM」って言うんですが」
「聞いたことはあるわ」
だが、よく知っているわけではない。
美和子ら日本の末端捜査員にとっては遠い話で、ギャングだのマフィアだのと印象は変わらなかった。
「こいつがまた謎の組織でしてね。パレットに代わってここ香港の黒社会を……ああ黒社会ってのはこっちの言い方で、日本風に言えば闇社会とか裏社会とか、そんな感じです。で、とにかくその黒社会を今はPMが牛耳ってるようなんです。有名な三合会もおとなしくなっちゃってますから、もしかするとそっちも押さえてるのかも知れない」
「それが日本とどんな関係が……」
「パレットに代わってPMが日本へ進出するって噂があるんです。パレットの築いたネットワークをまるまる使えるんですから浸透すればあっという間ですよ」
「……」
「で、暇を持て余していた現地派遣警察官の僕に情報収集の命令がきた、と、そういうことです」
美和子の表情が堅くなっていくが、白鳥は気にせず話し続ける。
「おかげでてんてこ舞いですよ。毎日資料と格闘してます。香港警察が持ってる資料を閲覧させてもらったり日本から送られてくる資料もね」
美和子の美貌からすっと血の気が引いた。
まさかとは思うが、あの時に撮られた美和子や蘭の調教ビデオまで見ているのではないか。
事情が事情だから警察内でも見た人間は限られているだろうが、それにしても犯罪の証拠にもなる映像だから捜査員は見ている可能性はあるのだ。
日本からの資料の中にその映像がないとは言い切れない。
だが白鳥は美和子を見ても平然としている。
かつての彼であればそれを使って美和子に迫る……まではしないだろうが、平静ではいられないだろう。
だが美和子を見る今の彼の目には、そんな邪な感じはしない
。職務上知り得たことだから守秘義務もあり、職業意識で押さえているのかも知れない。
もしかすると本当に見ていないのかも知れない。
どちらにせよ、普通に振る舞ってくれている白鳥に感謝したくなった。
ひとつだけ質問してみた。
「白鳥くん……、その捜査……というか、仕事は私も手伝うのかしら?」
「いえいえ、けっこうですよ。佐藤さんは別の仕事で来ているんですから。研修は研修で忙しいですよ、かなり。現地視察であちこち行くことになりますし、庁舎での座学もあるでしょう。その合間を縫って語学研修もしなきゃならない。とても他のことを手伝う余裕なんかないと思いますよ。ま、手伝ってくださるなら助かりますけど」
「……」
美和子は複雑だった。
関わりたくない反面、どの程度の情報が内部に伝わっているのか知りたい面もある。
端的に言えば、あのビデオは誰が見ているのか、どのくらいの人数に見られているのか知りたくもある。
知ったところでどうにもならないのではあるが。
白鳥が言った。
「まあ、こっちのことはあまり気にしなくてけっこうですよ。それよりはむしろプライベートをお願いしたいですね」
「え……?」
美和子が顔を上げると白鳥は照れくさそうに言った。
「僕は英語も広東語もOKですけど、たまには日本語で話したくなるんですよ。仕事はもうしようがないけどプライベートくらいはね。今は他に派遣されてる日本人警官はいませんし。まあ、民間のパーティとかにも呼ばれて出かけますけど、みんな会社の偉いさんみたいな人ばかりですしね。普通の会話が出来る機会なんてそうないもんで」
「……」
「たまには食事にでも誘いますから、その時はお願いしますよ」
そんな白鳥の声を、美和子はうつむきながら聞いていた。
──────────────────
香港に来てから10日、忙しい日々が過ぎていった。
研修も想像以上に忙しかった。
何しろ狭いとは言え香港に点在している部門──東九龍、西九龍、新界北、新界南、港島の各総区に加え水警総区(水上警察)まで見て回るのだから大変だ。
言葉はすべて現地語か英語であり、通訳はいるものの説明を受けるのも質問するのもひと苦労だ。
職場を見るだけでなく捜査活動についていくことだってある。
さらに武緒や白鳥が言っていたように座学もあった。
言葉がよくわからないこともあって、思わず居眠りしそうになったことも一度や二度ではない。
ようやくこれらを終えて解放されても、それでおしまいではない。
署内に与えられた個室か、あるいはホテルに戻ってからその日のレポートを書かなければならないのである。
そんな中、僅かに気休めになったのが高木への電話と白鳥との食事だった。
高木にはほぼ毎日スカイプで連絡を取っていた。
彼の穏やかな顔と声を聞くだけで癒される気になる。
白鳥の方は当然警戒した。
他の女性と付き合い出したというのだから心配はないと思うのだが、以前の彼を知っている以上、そう簡単には心を許せない。
高木とのデートを妨害しようとしたり、執拗に美和子を誘ったりするのは日常的だったのだ。
だから初日に誘われた時は疲労を理由に断った。
その反応を見れば、彼の美和子に対する執着がある程度は判ると思ったのだ。が、予想に反して白鳥はあっさりと引いた。
「ああ、そうでしょうね。気づかなくてすみません」と笑顔で謝ってきたくらいだ。
ホッとしたが、その二日後にまた食事の誘いが来た。
さすがに何度も何度も断り続けるわけにはいかなかった。
彼とは顔を合わせねばならないのだし、仕事がやりづらくなったり気まずくなっても困る。
一度くらいはつき合わねばなるまいと覚悟して出かけてみた。
美和子は隙を見せぬよう警戒していたが、白鳥は食事を終えると美和子をホテルまで送り届けておとなしく帰って行った。
美和子は少し拍子抜けした。
あの当時の白鳥であれば食事の後は酒に誘い、あわよくばホテルへ……と狙ったに違いないのだ。
それが随分と変わったものだ。
やはり恋人が出来たというのは本当らしい。
美和子に何度も声を掛けてきたのも、彼が言った通り異国にいる寂しさから気軽に話せる相手が欲しかっただけなのかも知れなかった。
そうなら自分も同じである。
美和子は、警戒を完全に解いたわけではなかったが、都合が合えば白鳥の誘いに応じるようになっていった。
今日は互いに仕事が遅くまでかかってしまい、食事に出たのは夜の9時過ぎだった。
美和子の方が「何か軽いものを」と言ったので、白鳥は飲茶に誘った。
飲茶とは文字通り中国茶を飲みながら軽食を採ることである。
早朝から深夜まで営業している店が多く、小腹が空いた時などには便利だった。
美和子たちが入った店も盛っていて、多くの客で立て込んでいた。
あちこちのテーブルから酔客の濁声や家族連れらしい子供の歓声が響き、デーとしているらしいカップルやサラリーマン同士らしい客席からも大きな声が聞こえる。
店員たちも客に呼び止められて忙しそうに歩き回り、ワゴンを押している。
白鳥が苦笑して言った。
「騒がしくて落ち着かないでしょう? でもこのエネルギッシュさが香港の魅力なんですよ」
「でもすごいわね……、圧倒されちゃう」
「ですよね。しかも聞こえてくるのは広東語ばかり。日本人としてはイヤにもなりますよ」
白鳥はそう言いながら慎重に美和子の小さな茶碗に茶を注いだ。
周りを見てみると、茶が零れても一向に気にする様子はなく、ダスターで拭いたりはしていない。
日本では考えられない。
その大雑把というかおおらかさに美和子もつい笑ってしまう。
「お腹空いたでしょう? さあ、食べましょうか」
白鳥は脇を通ったワゴンを呼び止め、そこからいくつか点心を取ってテーブルに載せた。
側を通ったワゴンはみんな止めて次々に料理を取るものだから、あっという間にテーブルが埋まってしまう。
美和子は目を丸くした。
「こんなに食べ切れないんじゃない?」
「平気ですよ、せいろ自体が小さいんですから入ってる量も大したことありません」
それにしたって、テーブルにはそのせいろが所狭しと八つも並んでいるのだ。
早速美和子が箸を伸ばす。
「あ、これは焼売ね」
「ええ、それなんか日本のものと変わらないでしょう? 日本の焼売は広東風なんですね」
「それは?」
「包子ですね。小さい中華まんだと思えば間違いありません。具は色々でうまいですよ」
そう言いながら白鳥は包子を摘んで口に運んだ。
「それは餃子ですね。日本と違って蒸し餃子です」
「こっちは焼き餃子ってあまりないんでしょう?」
「そうですね、ほとんどは水餃子と蒸したものです。それが余ったりすると、翌日に焼いて食べることはあるそうですが、あまり店では見かけませんね」
白鳥は食欲旺盛で、次から次へと料理を口へ運んでいく。
それを見ているうちに美和子の方も空腹を意識しはじめ、同じように箸を使い始めた。
空になったせいろをワゴンに返し、次の料理を取っていく。
そのタイミングが絶妙で、テーブルから料理がなくなることはなかったし、取り過ぎて置けなくなることもなかった。
それでも隙間はいよいよなくなり、白鳥も面倒になったのかお茶を注ぐ時には平気で零すようになっている。
大きなヤカンから小さな急須に湯を移し、さらに茶碗に入れるのだが、何しろヤカンが大きくて重たいのでけっこう大変なのだ。
見かねた美和子が「自分がやる」と言ったのだが、白鳥は「重いから」と言って自分で煎れた。
なるほど、周囲が零し放題だから気にならなくなるのだろう。
可笑しくなって、美和子はクスッと笑った。
美和子は春餅を食べている。
米粉で打った皮を焼いたものに具を巻いて食べるものだ。
「これ、おいしいですね。クレープみたい……」
「ええ。中の具は店によって違うから、そこに個性が出てきます。日本のクレープみたいに甘いものを巻くものもありますよ」
「へえ。白鳥くんが食べてるのは何?」
「わかりませんか? 揚げパンですよ。こっちでは油条と呼んでますがね」
「それも甘そうね」
「砂糖をまぶしてますからね。ああ、甘いものが欲しくなったら言って下さい。月餅とか杏仁豆腐とかありますから。ああ、胡麻団子なんかおいしいですよ、揚げたては最高です」
そう言いながら白鳥は粽を頬張った。
──────────────────
ふたりは美和子の滞在するホテルの部屋に来ていた。
食事の後、初めて白鳥から酒に誘われた美和子は、少し躊躇したものの、結局つき合った。
これまでの彼の行動から、もうかつての白鳥ではないと信用したのである。
落ち着きも出て頼れそうな男性になっていた。
官僚としてのやりがいのある仕事を任されて自覚が出たこともあるだろうし、恋人が出来て精神的に落ち着いたのも一因のはずだ。
白鳥行きつけのバーに連れて行かれ、そこでカクテルを数杯飲んだ。
それなりに警戒していたが、馴れ馴れしい態度に出ることもなく、無論、美和子の身体にタッチするようなこともなかった。
これなら滅多なことはあるまいと、美和子も安心して杯を重ねた。
香港に来て以来、まともに飲んだのは初めてだった。
緊張と不慣れさもあって、あまり飲む気になれなかった。
シャワーの後に軽く缶ビールをひとつ飲むくらいだ。
割と酒は強い方だったし嫌いではなかったから、その気になればホテルのバーで飲めたし、ルームサービスでも自由に飲めたはずだ。
しかし疲れもあったのだろうが、ホテルに帰ってレポートをまとめると、あとはシャワーを浴びてベッドに倒れ込む日が続いた。
たまに早く帰ることがあってもすることがない。
日本語の番組なんかないからテレビを見ても意味がない。
日本人用の日本語字幕の入った映画ビデオはあったが、わざわざ外地で見るまでもないと思ってそれも見ていない。
スカイプで高木と話すようにはしているものの、彼も日本で職務を遂行しているのであり、美和子と時間が合わないことも多々あった。
仕方ないと思うのだが、少し寂しかった。人と話さないと──日本語で話す相手がいないとクサクサしてくる。
白鳥の気持ちがわかると思った。
そのせいもあって、彼女は白鳥の誘いに応じるようになっていたのである。
ひさしぶりに本格的に飲んだせいか、少々酔った気がした。
そんなに弱くはなかったはずだが、カクテル数杯ですっかり酔いが回った感じだ。
強い酒だったのかも知れない。
店から出る時は足下が覚束なかったので、つい白鳥の肩を借りた。
今までの美和子なら、間違ってもそんなことはなかっただろう。
それでも白鳥は酔った美和子の身体に触れてくることもなかったので、彼女は安心して身を預けたのだった。
タクシーを拾い、美和子のホテルまで送ると、白鳥はいつも通りそのまま帰ろうとしたが、それを美和子が引き留めた。
このままじゃ申し訳ないと思ったのか、白鳥も酔っている風だったので少し部屋で酔いを覚ましてはどうかと言ったのである。
彼は少し迷ったようだが、そのまま一緒に美和子の部屋へ訪れることにした。
白鳥を小さなテーブルの椅子に座らせると、美和子は冷蔵庫からミネラルウォーターと小さなウィスキーの小瓶を持ってきた。
「まだ飲み足りなかったら、これどうぞ」
「こりゃどうも。佐藤さんも飲み足りませんでしたか?」
「まさか、私はもう充分。歳ね、けっこう弱くなっちゃったかな」
「何を言ってるんですか、まだ20代でしょうに」
「そうね、白鳥くんと同い年だもんね」
そう言って美和子は笑った。
彼を部屋に引き込んだのはまずかったかな、と少し反省している。
今の彼なら大丈夫だろうし、自分も間違いは犯さないが、それでもこのことを高木が知ったら面白くはないだろう。
酔っていたせいで冷静な判断力が欠けていたようだ。
その場の雰囲気に飲まれてしまっている。
高木に対する申し訳なさを心の片隅に感じながら、美和子も白鳥に誘われるままに薄めの水割りを飲んで、とりとめもない話をしていたが、いつしか酔いとベッドの弾力による心地よさでうとうとし始め、そのうち眠りこけてしまった。
「……」
白鳥は美和子が寝息を立てているのを確認すると立ち上がり、そっとベッドに腰掛けた。
そして身体を傾けて美和子の顔を覗き込む。
理知的な美貌なのだが冷たさというのはない。
職務には厳しいし性格的にも気が強いのだが、根が善人で優しいので険がある感じはまったくしない。
女だてらに捜査一課の猛者連に混じって犯罪者を追い、彼らが一目置くほどの活躍をしているというのに、その顔立ちからは優しさや暖かさすら感じられる。
浅く口を開けて小さく呼吸する唇を見ているうちにムラムラしてきてしまい、白鳥は思わず美和子の顔に顔を近づける。
「ん……」
美和子はおもむろに顔を上げた。
ハッとして室内を見ると、目の前に白鳥がいて美和子の顔を覗き込んでいた。
心配してくれているのだと思うと、さしもの女刑事も申し訳なく思ってくる。
最初はベッドに座って話をしていたが、そのうち疲れたのか寝そべってしまい、情けないことにどうやらそのまま寝てしまったようだった。
服に皺が出来てしまうと思ったが、上着は脱いでいたようでハンガーに掛けてあった。
着衣に乱れはない。
ブラウスの上の方のボタンがふたつほど外れていたが、これは暑がった美和子が自分で外したのだろう。
スカートが少しはだけていたが、これも自分が寝ていたせいだ。
ストッキングにも異常はない。
この状態の女に手を出していないのだから、もう白鳥をそういう目で見るのはよそうと美和子は思った。
「ごめん、私、寝ちゃった……?」
「……ええ。あんまり気持ち良さそうに寝ているもんだから、つい起こせなくて」
「ごめんなさい……。どれくらい?」
「えー、今は3時くらいですから、一時間くらいですよ」
「え、もうそんな時間? 本当にごめんなさい、帰ってくれてもよかったのに……」
「そうもいきませんよ、酔って眠りこけてる女性を放っておくなんてね」
「まあ、どうもありがとう。すっかり紳士になったのね、白鳥くん」
美和子はそう言って微笑んだ。
油断したのか信頼したのか、彼の目が少し開いた胸元から見える白い肌や肉の谷間、はだけたスカートから覗いているストッキングに包まれた悩ましい脚線に向けられていたことにも気づいていない。
美和子はそのまま仰向けに寝転んだ。
さすがに不用心であり、これでは誘っていると思われても仕方がない。
美和子は寝転んだまま目を閉じ、灯りを避けるかのように腕で目を覆うようにして言った。
「白鳥くん、私はもういいから帰って。迷惑かけてごめんなさい。お礼に、今度は私にご馳走させ……」
言い終わる前に、美和子の身体が軽く弾んだ。ベッドに何かがドスンと落ちたのである。
何だろうと思って目を開けると、そこに白鳥がいた。
「白鳥くん……? どうし……んんっ!?」
突如、口を塞がれた。
美和子は驚いて目を見開く。
白鳥は美和子の肩を抱き、唇を押しつけてきたのだ。
美和子は必死に顔を振りたくった。
そのせいでまた少し酔いが回る。
「ぷあっ……! し、白鳥くん、あなた何してるの! 酔ってるの!? あ、待って、だめっ、んむううっ!」
美和子の言葉を止めるかのように、また白鳥がキスで口を塞ぐ。
アルコールで火照った咥内が白鳥の冷たい舌で冷やされ、美和子は背筋がゾクリとした。
薄いウィスキーの味と微かにタバコの香りを感じる。
美和子の口と唇を散々味わってから、白鳥はようやく口を離した。
「……あなたがいけないんですよ。男を部屋に誘ったりするから……」
「それは……、でも!」
「それとその格好。まるで僕を誘惑してるかのようだ」
「やっ……!」
美和子は慌ててスカートを押さえ、脚を隠す。
白鳥は膝を美和子の両脚の間に潜り込ませ、巧み動かして拡げていく。
バタバタと暴れる両手をひとまとめにして、左手を使って頭上辺りで押さえ込んだ。
「あなたがそんな姿を見せなければ僕だって……」
「っ……」
まるでそっちに原因があるかのように白鳥が指摘すると、美和子の力がやや弱まった。
予定通りの展開に白鳥はほくそ笑んでいる。
実のところ、今日こそ酩酊させて美和子を奪うつもりだったのである。
昨日までは善人のふりをして美和子に淫らな欲望など抱いていないように見せていたのだ。
最初は酒なしも店に誘ったのも油断させるためだったし、二軒目でしきりに強い酒を勧めたのも一気に酔わせるためだ。
それでも念には念を入れ、美和子がトイレで席を外した時に微量の睡眠薬を仕込んでおいた。
眠らせるというよりも早く酔わせようとしたのだ。
さすがにふらふらになったようだが、案外しっかりしていたので焦ったが、美和子の方から部屋に誘ってきたのが幸運だった。
この時も美和子のグラスに少しだけ睡眠薬を溶かし込んだ。
美和子が眠りこけたのはそのせいである。
眠っているうちに抱いてしまうという発想はあまりなかった。
意識がある中で抱いてみたかったのである。
「っ!」
白鳥の指がブラウスのボタンを外していく。
彼が本気だと覚ると、美和子はまたもがきはじめる。
「やめて! 白鳥くんっ、やめて!」
「おとなしくして。もうこなったら抑えられませんよ、美和子さんも愉しんで下さい」
「た、愉しむって……あっ、脱がさないで、だめよ!」
そう言っている間にも小さなボタンがひとつずつ外されていく。
さすがに着衣を破いて暴力的に凌辱するというわけではないようだ。
気取った白鳥らしいといえば白鳥らしい。
ボタンを全部外し終わり、前を大きくはだけられると、陶器のような美しい肌が露わとなる。
「あっ……!」
白鳥の手が美和子の乳房をブラジャーの上から鷲掴みにする。
美和子は不意に乳房を掴まれ、身体をビクンと震わせた
「冗談はやめて、白鳥くんっ! あっ!」
「冗談なんかじゃありませんよ、僕は本気だ」
「余計に悪いわよっ! い、いやっ!」
白鳥はもがく美和子の腕を左手一本で押さえ込みながら、じっくりと大きな乳房をまさぐっている。
どちらかというと女性的な細い指が、ブラの上からでも量感たっぷりの肉塊に沈み込んでいる。
「んっ……! や、やめて、ホントにやめてよ白鳥くん……あっ……」
美和子はすっと朱が入り始めた顔を反らせて身悶える。
男の手の動きに応じて反応してしまい、身体をうねらせていた。
「お、お願い……お願いよ、白鳥くん……あ……こ、こんなの……こんなことされたら私、あなたのこと嫌いになってしまう……」
「……」
その言葉を聞いて一瞬動きが止まった白鳥だったが、ぎゅっと目を閉じてまた愛撫を再開していく。
白鳥の手が美和子の乳房を荒々しく揉み込んでいく。
手の動きは激しく大胆になり、乳房は自在に形を変え、歪められていた。
男の欲望が伝染するのか、美和子は少しずつ反応していき、息が荒くなってくる。
「くっ」と悔しそうに唇を噛んだかと思うと、耐えきれずに小さく口を開け「ああ……」と小さな呻き声を漏らしていた。
「い、いけないわ、こんなこと……だめよ、白鳥くん……んっ……」
「好きなんだ。好きなんですよ、佐藤さん」
「だめよ……ああ、わかって白鳥くん……私にも、ああ……あなたにも大切な人が……いるのに……うっ……」
「わかってる。わかってますけど、もうどうしようもないんだ。佐藤さん、好きです」
「そんな……あ、いやあっ!」
嫌がりながらも徐々に反応してきている美和子に興奮したのか、白鳥は鼻息も荒くブラジャーを引き千切った、
ストラップが根元から切れ、中からぶるんっと柔らかそうな胸肉がまろび出た。
「……!」
白鳥はその造形の美しさに圧倒されていた。
見事な膨らみであった。
知的な美貌に釣り合わないほどの豊かさだ。
非の打ち所がないような盛り上がりとまろやかさで、乳房の大きさの割りに乳輪の色が淡く、乳首が小さい。
白鳥の視線が針のように美和子の神経に突き刺さる。
「み、見ないで、そんなに見ないで」
「綺麗ですよ、佐藤さん。まさか、こんなにいい身体だとは思わなかった……」
美和子とはプライベートで顔を合わせることはほとんどなかったが、警視庁時代は毎日職場で会っていた。
薄青のスーツと褐色のタイトスカートが良く似合っていた。
スカートの裾から伸びる綺麗な脚線美は警視庁内でも評判だったし、たまに履いてくるロングパンツはぴったりと腰に吸い付いていて、スカートの時よりも豊満な臀部が主張されていて目のやり場に困るほどだった。
そしてブラウスを盛り上げている胸の膨らみは、その中に隠れている乳房のサイズを容易に想像させるものだったが、現実に今見ているそれは白鳥の想像を超越した美しさだった。
「あ、あうっ」
思わず白鳥は白い乳房に吸い付いた。
一層に美和子がもがくが、両手を頭上で固定されているだけでなく、白鳥がのしかかってきているだめ、ろくに動けない。
白鳥は口で右の乳首を吸い上げ、舌で舐め、左の乳房に指を食い込ませた。
美和子は、官能に押し流されてすりつぶされそうになる理性を叱咤して、必死に白鳥を説得するが、ついつい声がとろけてしまう。
「だめっ、ああっ……んっ、す、吸わないで、ああっ」
彼の唇が乳首をつまみ上げ、舌が押し潰すたびに、美和子はぶるっと震え、豊かな腰を蠢かせて悶えた。
抗う言葉も甘く熱くなり、途切れがちになる。
(だめ、このままじゃ……抑えきれなくなるっ……!)
「……硬く尖ってきましたね、美和子さん。ほら、ここが」
「んはっ! だめえ!」
敏感になった硬い乳首を強く吸われ、軽く歯で甘噛みされると、美和子は思わず胸を突き出すようしにて喘ぐ。
白鳥の顔に柔らかい肉塊が押し当てられ、美和子の肉と汗の甘い香りが鼻腔を擽る。
「ああっ、だめ、そんなっ……つ、強く揉んだら私……くうっ……」
一転して白鳥の愛撫が激しくなる。
右手は左の乳房をたぷたぷと音がするほどに強く揉み込み、右の乳首が歯で噛まれて引っ張り上げられている。
その乳首の根元を硬く尖らせた舌先で擦られると、堪えきれない大きな声で喘いでしまう。
「感じてきましたね、佐藤さん」
「だ、誰がそんな……やっ……はああっ」
「声が甘ったるくなってきましたよ。嬉しいですよ、僕の愛撫で感じてくれて」
「ち、違う、私は……」
「だってこんなに乳首が硬くなってますよ。これじゃ下の方も……」
「やっ、だめっ!」
思わず両脚を閉じようとしたものの、股間には白鳥が割り込んでいる。
白鳥ははだけたスカートに手を入れ、美和子の股間に指で触れた。
「やああっ、触らないで!」
「……」
案の定、濡れていた。
恥ずかしい蜜がショーツとストッキングを透過して白鳥の指を濡らしている。
「やっぱり濡れてますよ。ふふ、僕もそうだがあなたも欲求不満が溜まっていたんじゃありませんか?」
「そ、そんなことないわ!」
「これが証拠ですよ。強引に抱かれて……しかもまだ少し愛撫しただけなのにこんなに濡れるなんてそれ以外に考えられませんよ。それとも佐藤さん、誰に抱かれてもこんなになるんですか?」
「失礼なこと言わないで! あ、そこだめっ……あうっ」
恥ずかしい指摘をされながら、美和子は絶望感に囚われていた。
白鳥の言う通りかも知れない。
そう言えばもう10日以上セックスしていないのだ。
レスリーに散々嬲られた後、出発前には高木に抱かれている。
しかしそれっきりなのだ。
香港に来ているのだからその相手がいないのである。
しかもレスリーの本性が知れて以来、薬を受け取っていない。
どうあれ、あの薬を飲めば少しは収まったし、彼の「治療」によって淫らな肉欲がだいぶ鎮められてきたのは事実だ。
それがもう二週間近くなくなっている。
当初は忙しくてそんなことを考える暇もなかったが、生活のリズムに慣れてくると、どうしても身体がもやもやしてくる。
身体が疼く。
意識していないのに、股間が熱くなっていることもあった。
随分と躊躇ってから、美和子がホテルで自慰したのは7日目のことである。
その日も白鳥と出かける予定だったが、そんな気持ちになっていてはまずいと思ったのだ。
以来、日に一度はするようになってしまった。
オナニー癖などなかった美和子はかなり罪悪感を持ったものの、そうでもしないと身体の火照りが取れないのだった。
まずいと思い始めたのは昨日あたりからだ。
もはや自分で慰める程度ではどうにもならなくなってきたのだ。
男の強い力で揉みくちゃにされたいと思い、指なんかではなくもっと太いもので貫かれたい、中で暴れてもらいたい。
そんな淫猥な願望に囚われるようになってしまった。
今までならそこでレスリーの医院へ行って「治療」を受け、投薬されれば治まったし、レスリーを見限って以降でも高木に抱かれれば何とかなった。
だが、ここにはそのどちらもないのである。
自分が誰にでも身体を許すような女だったらこれほど悩まず、苦しまなかったろうと思うのだが、美和子にはとてもそんな気にはなれなかった。
そんな肉体はもう限界に来ていたのかも知れない。
だから白鳥の指摘通り、望まぬ愛撫なのに身体は反応し、感じてしまったのだろう。
美和子が葛藤している感にも白鳥の巧みな愛撫は続いている。
乳房は口と唇が担当し、右手は股間を擦り続けた。濡れたストッキングをそっと破き、ショーツのクロッチ部分を擦ると、濡れた薄い布地にはっきりとした溝が刻まれていく。
一層に強い女臭が辺りを漂ってきた。
「あ、あうう……だめ、そんな……いっ……し……らと、り、くん……ああ……」
どうにもならないほどに美和子の官能に火が着いてきた。
はっきりと喘ぐようになり、少しずつ声が大きくなってきていく。
もぞもぞと尻を震わせ、体内に溜まっていく快感を必死に逃がしているようだ。
美和子の両腕にはほとんど力が入っておらず、手首を押さえる白鳥の手も楽になった。
美和子の美貌も赤く火照り、顔を左右に振りたくって小さく喘ぎ声を放っている。
そのことに力を得た白鳥はストッキングの股間を大きく引き裂き、ショーツに指をかけたかと思うと、一気に引き下ろした。
腰と股間に冷気が当たり、美和子は引き攣ったような悲鳴を上げた。
「あっ! いやあっ、白鳥くん、見ないで! 見ちゃだめよ!」
我に返ったように美和子は暴れ、もがき出したが、白鳥は意に介さず女体を押さえ込んだ。
白鳥の前に美和子の秘密がさらけ出された。
陰毛は思ったりも淡く、柔らかそうだ。
それが吸い取り切れないほどの愛液が膣から漏れ出ている。
割れ目は綺麗に合わさっており、とても28歳のそれとは思えなかった。
白鳥は生唾を何度も飲み込みながら、そっとそこに触れていく。
美和子は狂ったように頭を振り、大声で叫んで懸命に白鳥の暴挙を止めようとする。
「やめて! ……ああ、やめて白鳥くん……ま、まだ間に合うから……これ以上しなければ、私、黙ってるから……もうやめて……」
「そうですか? でも、ここでやめてしまったら、美和子さんたまらないんじゃないですか?」
「……」
「図星ですか。まあ言わなくてもわかりますよ、ここがこんなですからね。よほど欲しかったんでしょう」
「私はそんな女じゃ……ひっ、触らないで!」
男の指が女のスリットを左右に押し広げると、むわっと甘ったるい匂いが広がる。
薄いピンク色の肉襞がはっきりと見え、蜜でねっとりと濡れているのがわかる。
幾重にもなっている襞を拡げていくと、美和子は腰を震わせながらとぷとぷと愛液を零していく。
恥丘の裾野にあるクリトリスも包皮が剥けて赤く充血し、蜜にまみれていた。
美人のそんなものを見せつけられては、とても我慢できるものではない。
白鳥はたっぷりと愛撫して鳴かせてからと思っていたが、そんな余裕はなくなっていた。
「……これだけ濡れていればOKですよね」
「お、OKって……あなた、まさか本当にっ」
「無論です。いきますよ」
「あっ、だめ、いやああっ……!」
膣口に熱いペニスがあてがうと、白鳥は美和子の両脚を抱えて腰を突きだした。
亀頭が膣口に割り入り、膣内に潜り込む感触に美和子は仰け反って悲鳴を上げた。
「ひぃああっ、だめえっ……くっ、いやああっ!」
たっぷりの愛液で濡れそぼっているのに、思ったよりきつかった。
それだけ美和子の膣内が狭く、締まりが良いということだろう。
「くっ、佐藤さん、少し力を抜いてください。でないと痛いですよ」
「だ、だったら抜いて、早く! いやよ、やめて白鳥くんっ……ああっ!」
美和子は必死に腰を捩り、身体をうねらせて、何とかペニスから逃れようとするのだが、その動きがかえって挿入を助けることになり、白鳥が膣内に侵入してくる。
亀頭が膣口をいっぱいに押し広げ、中に入り込むと、美和子はひときわ大きな声で叫んだ。
「いやああっ!」
太いもので強引に貫かれる感覚に、美和子はガクンガクンと仰け反った。
しかし亀頭部さえ通ってしまえば、あとは楽なものだ。
白鳥はそのまま奥まで深々と貫いていく。
膣内をカリで擦られると、美和子の身体がビクビクと震えた。
奥まで突き通されると、美和子の身体から力が抜けた。
美和子の両手首をまとめて握っていた左手を離してみたが、その腕はもうぐったりとして動かなかった。
「ああ……」
もう、どうにもならない。
ここまで深く挿入されてしまっては、もはや自分で抜くことは出来ないだろう。
それに白鳥も、これで終わらせてくれるとは思えなかった。
数々の男たちに犯されて、美和子が思い知らされた教訓である。
美和子は顔を横に伏せてつぶやいた。
「……わかったわ」
「何がです?」
「今だけ……今夜だけつき合ってあげるから……」
「ほう、僕とセックスする気になったってことですか」
露骨な質問には答えず、顔を伏せたまま美和子は言った。
「だから、これっきりにして……。もう、二度とこんなことはしないと約束して」
「そうですね……、考えておきましょうか。それよりも今は愉しみましょう。あなたもその気になったのでしょう?」
「……そんなんじゃないわ。早く終わらせたいだけ……」
美和子は出来るだけ気のない感じでそう言ったのだが、白鳥に言われたことは否定できなかった。
心では「とんでもないことだ」と判っているし、高木に対する申し訳なさも痛いほど感じている。
だが身体の方が許してくれそうになかった。
もしここで白鳥が美和子の説得を聞き入れて中断してしまったら、ホッとする反面、失望してしまったのではないだろうか。
貞操を守れて心は安堵するだろうが、肉体は収まるはずがなかった。
とてもじゃないがオナニーではどうにもならないだろう。
だったら──諦めたフリをして──仕方なく許しているのだと思わせておいて──このまま白鳥に抱かれるしか選択肢はないのだ。
ただ、そのことを白鳥に見透かされているような気がする。
たまらなかった。
美和子は強い羞恥と、そこはかとない屈辱で胸が痛くなった。
白鳥は喉でククッと笑いながら言った。
「わかりましたよ。じゃあ、遠慮なく……」
「や……、あうっ!」
ずぶりと貫かれ、美和子はたまらず声を上げた。
白鳥は美和子の素晴らしい感覚に酔っている。
これだけきつくて狭隘なのに中はあつい蜜でぬるぬるだ。
肉襞がざわめいて、白鳥の肉棒にヒクヒクと絡みついてくる。
見た目だけでなく中まで一級品の女だと思った。
「やあ……、だめ、抜いて……あああ……」
「していいって言ったじゃありませんか。終わるまで抜きませんよ」
「そんな……あうう……」
白鳥は美和子の脚を大きく開かせ、いきり立ったペニスを思い切り挿入していく。
奥まで突き通すと美和子の脚が揺れ、右の足首に引っかかっているショーツがひらひらと揺れ動いた。
白鳥はまだ動かず、美和子の内部をじっくりと味わっている。
徐々に慣れてきたのか、美和子の胎内が少し緩くなった。
しかしきつくて狭いのは相変わらずで、抜き差しが多少しやすくなった程度だ。
それどころか締め付けがきつくて襞が絡んでくるから、油断するとすぐに出てしまいそうになる快感が襲ってくる。
白鳥はゾクゾクするような快感を味わいながら呻いた。
「すごいですね、佐藤さん……。こんないい身体をしていたなんて思わなかった……。あの男とつき合うまで放って置いたなんてもったいないことをしたもんだ」
「い、いや……あああ、もういやあ……あ、あう……あああ……」
白鳥に言われて高木のことを思い出しているかも知れない。
それでいて身体の方は白鳥の肉棒にしっかりと反応し、敏感すぎるほどに感じているようだ。
美和子の膣は太いものをくわえ込み、ピクッ、ピクッと食い締めている。
少なくとも身体の方は白鳥を受け入れたようだ。
「動いていいですね、佐藤さん」
「ああ、だめ……い、今、動かれたら……」
「もういっちゃうんですか?」
「そ、そうじゃない、けど……んあっ!」
白鳥は美和子の肉感的な腿を両手で抱え込むと、ゆっくりとして動きで突き上げていった。
ぬるっと抜かれ、ずぶっと突き刺されると、美和子はぐうっと仰け反り甲高い声で喘いだ。
数度抜き差ししただけで美和子の身体が柔軟になってきた。
犯されることを拒んで強張っていたのがウソのようだ。
いかに調教を受けた身体とはいえ随分と反応が速いものだが、これは、諦めたからとはいえ美和子自身が白鳥を受け入れてしまったことも大きい。
身体だけでなく心までが「仕方がない」と思ってしまったからだ。
「や、もう……もういや……いああっ!」
白鳥はもがく美和子の腰を押さえつつ、その胎内をじっくりと犯していった。
ずぶりと奥まで貫くと、堪えきれないように美和子の身体がうねる。
抜く時は「ああ……」と小さな声が漏れ、襞や肉壁がペニスを逃がすまいと絡みついてくる。
律動を繰り返していくと、どんどんと締め付けがきつくなり、収縮していく。
美和子は口では抗い、身体も暴れて見せてはいるものの、ペニスからもたらされる快感をしっかりと受け止めている。
白鳥に犯されて感じている自分を嫌悪しているようだが、反比例するように肉体的快感は強まる一方だった。
カリが膣内を思い切り擦る感覚に媚肉が震えている。
美和子は自由になった手で口を押さえ、声を出すまいと必死になっている。
「佐藤さん、我慢することはない。思い切り喘いでいいんですよ」
「こ、こんなことされて……んむっ……か、感じてなんか、くっ……い、いないわ……くうっ」
「どうしてです? 今は……今夜だけはもう諦めて僕に抱かれると言ったじゃないですか」
「……」
「だったら取り繕うことなんかありません。気持ち良かったら素直にそう言えばいいんです」
「わ、私は……むうっ」
白鳥の言葉に押し流されそうになり、美和子はつい声を出してしまいそうになったが、慌てて手のひらで口を塞いだ。
白鳥は不満だったが、まだ焦ることはないと思い直した。
これだけ感じやすい身体なら、いずれは彼の思い通りになるだろう。
少しずつ堕としていくのも犯す醍醐味だ。
「くっ、いや……は、早く終わって……もう許して……じゃないと私、あはあっ!」
美和子の言葉を遮るように、白鳥は肉棒で奥まで抉った。
根元まで埋まって腰がぶつかると、びちゃっと蜜が弾け飛んだ。
目一杯拡げられた膣襞は、肉棒が抜き差しされるたびにずるずると引き出され、また押し込まれていく。
「すごい濡れてますよ、佐藤さん。シーツがもうびしょびしょだ」
「いや、言わないで、そんな……ひっ……んぐうっ」
太腿を抱きかかえたまま突き上げる速度を上げていくと、美和子の肉襞の締め付けはますますきつくなる。
それを引き剥がすようにしてなおも強く突き込んでいくと、美和子は甲高い声を放って大きく仰け反った。
「んひぃぃっっ……! くううっっっ!」
何度もビクンビクンと身体が跳ね上がり、ガクガクと痙攣している。
どうやら絶頂したらしかった。白鳥はわざと呆れたように言った。
「なんだ佐藤さん、いやだいやだと言っておきながら、いっちゃったんですか?」
「ち、違う……変なこと言わないで……ああ……」
「そうかなあ、佐藤さんのオマンコがピクピク痙攣してるんだけど」
「……」
白鳥は手を伸ばし、そっと美和子の髪を撫でた。
「……いいじゃないですか、気をやったって。その覚悟で今日は僕に抱かれる気になったのでしょう?」
「……やめて」
美和子は頭を振って白鳥の手を振り払った。
気丈な表情が「気安く触らないで」と言っている。
それでも気をやらされたせいか言葉にも身体にも力がなかった。
「……もう満足したんでしょう? さっさと抜いてくれる?」
「満足したのは佐藤さんだけですよ。僕のはほらまだ」
「あっ」
まだ硬いままのペニスが膣内でピクピク動いて、美和子はゾクッと震えた。
「では続きを」
「いや、しないで……あ、ああうっ」
再び突き上げが始まると、しばらく美和子は声を我慢していたが、また男の動きに合わせて呻き始めた。
口を手で押さえ、唇を噛んでいる。
これだけ感じているのによく我慢できるものだと白鳥は半ば呆れたが、これはこれで面白かった。
大声でよがり泣くばかりのビッチよりも、感じているがそれを知られたくない、声を上げたくないと必死に堪えている女の方がずっと良いと思う。
突き上げと一緒に、ゆさっ、ゆさっと揺れ動く乳房を掴み、揉みしだくと、美和子は慌ててその腕を押さえる。
しかし白鳥の突き上げは止まず、どうしても声が漏れてしまう。
仕方なくまた手で口を押さえると、男の手が両の乳房を激しく揉み込んでくる。
膣だけでなく乳房からも押し寄せてくる快感で、手で押さえた口からもはっきりとした喘ぎ声が漏れてきた。
「くっ……ううっ……うんっ……ああっ……だめっ……うんっ……あううっ」
美和子の美貌が恥辱と羞恥で入り交じり、苦悶する。
ずぶっと突き込むと大きく「ああっ」と喘ぎ、抜き去ると「ああ……」とホッとしたような声になる。
それを何度も繰り返していくと、腰や尻まで細かく痙攣し始めた。
本当に感じやすいのだ。
快楽に溺れてしまいそうになる寸前で堪え忍び、必死になって快感に抵抗している表情が悩ましい。
顔を赤らめているのは、そんな表情を白鳥に見られているという屈辱と恥ずかしさのせいだろう。
「や……ああ……あはっ……いっ……くあっ……ああっ……あっ……あっ……あっ……ああ……んうっ……いあ……ああっ!」
どうやら少しずつでも声を出していけば、身体に溜まっていく快感が解放できるとわかったようで、美和子は口から手をずらしていく。
そして胸を愛撫してくる白鳥の腕を掴んだが、行為を止めるためというよりは腕に添えているだけという風に見える。
もう声は押さえようがないらしく、突き上げるたびに喘ぎが漏れ始めた。
「あ、ああ……いっ……んんっ……ふっ……うあっ……あああ……あう……あ……」
「感じ始めるのが早いね。ほら、どんどんいっていいですよ」
「い、いやよ、あっ……いあ、そ、それっ……!」
美和子を一度いかせたことで白鳥は余裕を持って責め始めた。
膣全体を味わうかのように腰を回転させたり突き込む角度を変えたりして、美和子に悲鳴と喘ぎ声をひっきりなしに上げさせている。
ペニスで襞を絡め取るように腰を回すと、美和子はガクガクと何度も仰け反った。
「いっ……! も、もうやめて、いい加減にしてよっ……いううっ……あっ」
「素直じゃないですね。気持ち良いならそう言えばいいのに。色っぽい声を聞かせてくださいよ」
「いやよ、そんな……か、感じてなんか……あっ、あああっ……!」
懸命に肉の快楽と戦っているようだが、抗えば抗うほどに媚肉は濡れ、滑りは良くなってくる。
どうやら美和子は言葉で辱めても感じてしまうようだ。
過去に彼女を犯してきた男たちも皆それを見抜いて、羞恥を煽ったり恥辱を感じさせるような言葉で責め、美和子は激しく達しさせたものだった。
乳房への責めも優しい愛撫よりは乱暴なくらいの方がいいようだ。
ぎゅっと強く握りしめると苦痛で顔を歪めるのだが、すぐに熱い息を吐いて喘いでいく。
乳首をコリコリとこねくり回すだけでなく、強く引っ張ったり抓ったりするとびっくりするくらい反応することもあった。
そんな美和子の痴態を見ているうちに、白鳥にあったはずの余裕がなくなってくる。
ペニスを締めつける媚肉の収縮も、さっきから強くなる一方で限界が近づいてきた。
白鳥は美和子の腰をしっかりと両手で掴むと、腰を素早く動かして肉棒の抜き差しする間隔を速く短くしていった。
深い突き込みこそなくなったが、膣入り口周辺の粘膜がサオで思い切り激しく擦られ、膣道も太い亀頭でぐりぐりと抉られて、美和子は顔が仰け反りっぱなしになる。
細かく突かれるたびに声が出るのを止められない。
「あ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あああっ!」
美和子が再び絶頂に近づいているのが声や表情でもわかる。
そして何より、白鳥のペニスを激しく締めつけ、収縮の短く周期的になってきている膣が雄弁に語っていた。
蜜でどろどろの膣をひっかき回している白鳥の分身は、もうこれ以上無理というくらいに熱く硬く太く膨れあがっていた。
「佐藤さん、すごいですよっ! ぼ、僕ももう……」
「い、いやだめっ! 外に出して! 中はだめよっ、あ、ああっ……いああっ!」
中に出されることを恐れているのか、美和子の媚肉が驚いたようにきゅううっと絞まってきた。
肉棒がぐぐっと力強く膨らんできたのを感じ取り、美和子が青ざめる。
「うっ、うああっ、だめっ……ほ、ホントにだめよ、白鳥くんっ、それだけはっ……!」
「もう間に合いませんよ、覚悟してください。いきますよっ」
「やめてだめ、絶対にだめえっ……だめだめだめええっ……やっ、いやああっ!」
「だめだ、出るっ!」
嫌がる美和子のいちばん深いところまでペニスを差し込み、子宮口を亀頭の先で感じると、白鳥は一気に射精した。
「いやあああっっっ……!!」
美和子が絶叫した。
熱い精液が子宮口に直撃しているのがわかる。
「ああっ……ああっ!」
びゅるるっ、びゅるっと射精されるごとに、美和子の裸身がぐうっと伸び上がって痙攣する。
それは白鳥の射精が終わるまで続いた。
白鳥は美和子の腰をがっちりと掴んで自分の腰に引き寄せて密着させ、何度も何度もしゃくり上げるように腰を使った。
びゅくびゅくと放たれる精液を受け止めた美和子の膣襞は、子種を子宮へ送るように蠢動している。
美和子の腰が持ち上がり、尻たぶが強張って尻えくぼが出来ていた。
それだけ膣の括約筋が絞まっているということなのだろう。
白鳥は、美和子の膣内に思い切り射精するという念願がようやく叶い、万感の思いで精液を注ぎ込んでいる。
やっと射精の発作が終わると、太い息を吐いて肉棒を抜き去った。
「ああ……」
美和子の全身から力が抜け、ごろりとベッドに転がった。
絶頂の名残なのか、膣やアヌスがひくついている。
尻や腿の痙攣も収まっていなかった。
しどけなく開かれた股間の奥から、多すぎる精液がどろりと逆流してくる。
その流れ出る気色悪い感覚で、ようやく美和子が身を持ち上げた。
すかさず白鳥がその肩を押し返してまた寝かせてしまう。
美和子はむずかるようにもがいた。
「どこへ行くんです?」
「決まってるじゃないの! 洗浄しなくちゃ……、ま、まだ間に合うかも……」
「洗浄? せっかくたっぷり出してあげたのに洗っちゃもったいない」
「何を言ってるの!? あ、あんなにいやだっていったのに中で出すなんて……! あ、何するの!」
またのしかかってきた白鳥に驚き、美和子は睨みつけた。
「言うまでもありません。まだやりますよ」
「ま、待ってよ! 約束でしょう!? こ、これっきりにするって……」
「佐藤さんがそう言っただけで僕は受けるとは言ってませんよ。それに「今夜だけ」って言ったじゃないですか。「一回だけ」なんて言ってないですよ」
「そんな……、ひどい!」
「ふふ……、この身体だ。佐藤さんだって一回くらいじゃ満足できないんじゃないですか?」
「失礼なこと言わないで! あ、やめてよ……いやああっ!」
あっという間に勃起したペニスが、まだ精液の残滓で汚れている美和子の媚肉に再び挿入されていく。
しばらく抵抗したものの、美和子はすぐ流されるように喘ぎ始め、白鳥との行為を受け入れていった。
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