「……」
美和子は魂を抜き取られたような顔でぼんやりと中空を眺めていた。
いつもは強気な瞳も生気を失い、ガラス玉のように光を反射するだけだ。
白鳥にまで浣腸という恥辱的な責めを受けてしまった。
浣腸されて羞恥と恥辱に呻く様子も、便意の苦痛でのたうち回る姿もまでつぶさに観察された。
何より、決して誰にも見られてはならない排泄という秘められた行為まで見られてしまったのが決定打だった。
あんなものまで見られてしまっては、もうどうにもならなかった。
白鳥が排泄物を始末し、ウェットティッシュと清潔なタオルで綺麗に臀部を拭き清めている間も、無抵抗のままぐったりしていた。
白鳥は仰向けに倒れて茫然自失となっている美和子を見下ろして言った。
「……さすがに捜査一課の敏腕女刑事も気力が尽きたって感じですね。ま、ここまで責められたら無理もないが」
「……」
「返事も出来ないくらいまいったってところですか。最初から素直に抱かれてればこんなことにならずに済んだものを。僕はいいものが見物できて満足ですがね」
男の笑い声も耳に入らないかのように、美和子は何も反応せず、動きもしなかった。
白鳥の方は、浣腸責めによる美和子の痴態を見ているだけで欲望を解消できなかったから、まだこれからである。
もうカウパーがぽたぽた垂れている肉棒を握り、美和子に迫っていく。
「佐藤さんのお陰で僕のも元気いっぱいですよ」
「……」
白鳥の言葉に美和子も顔を上げてそれを見つめた。
(ああ……、大きいのね、白鳥くんの……)
先日、犯された時はじっくりと見たわけではないから、目の当たりにするのは初めてだった。
あの時も、かなりきつい挿入感だったから大きかったのかも知れないとは思ったが、想像以上のサイズだった。
(どうしてこんなに……。みんな、他の男の人ってこんな大きいものなの?)
知らず知らずのうちに美和子は高木のそれと比べてしまっている。
美和子の身体を穢ししてきた過去の男にしてもそうだ。
ヤクザの牧田は女を仕込むのが仕事だったようだからそれもわかる。
トッドやミシェルは外国人なのだから日本人とはサイズが違うのは当然だろう。
シカゴの病院で輪姦された時の老人たちも外国人だった。
レスリーは外国人とはいえ同じアジア系なのに大きさはかなりのものだったが、これは彼が特別なのだと思っていた。
日本人の男なら高木くらいが標準的だと思う。
体格から考えて、それほど小さいとは思えなかったからだ。
なのに白鳥ものときたら、巨漢黒人のトッドには劣るとはいえ、レスリーに負けないほどの大きさと太さだ。
美和子がまだぼんやりとした表情で自分の股間を見ているのを見て、白鳥は笑った。
「そんなに見つめられたら僕だって恥ずかしいですよ。ふふ、そんなに気に入りましたか?」
「そんなこと……ない」
「それにしてはじぃっと見てましたよ。差し詰め高木のものを思い出して比べていたのかな?」
「高木くんのことは言わないで……」
「そうですね。あんなやつのことなんか忘れて愉しみましょうか」
「『あんなやつ』……、彼のことをそんな風に言わないで」
「……」
白鳥は、美和子が高木のことを「彼」と呼んだのを聞くと動きを止めた。
卑しい思いがむらむらとこみ上げてくる。
高木に対する嫉妬だ。
白鳥は目に冷酷な色を浮かべて美和子を突き転がした。
「あ、いや……もう……もうしないで……くたくたなのよ……す、するならまた今度……」
弱々しい抵抗を難なく抑え込み、白鳥は美和子を縛っていた包帯を解き始めた。
右足を吊っていた膝の包帯、胸を括りだし背中で両手首を縛っていた包帯もすべて外した。
手首にも乳房のの上下にも包帯の跡が薄赤くくっきりと残っている。
身体が自由になった美和子だったが、暴れたり白鳥から逃れようとする動きはなかった。
浣腸によって体力も気力も絞り取られたかのようだ。
いやいやするように身体を捩ったものの、白鳥の手でひっくり返され、ぐいっと腰を持ち上げられた。
これで手を床に突けば四つん這いだが、腕が萎えてしまって無理に立たされた両膝と顔の三点支点で身体を支える格好になっている。
白鳥は、浣腸責めで悶える美和子の妖しい尻を見るにつけ、どうしてもバックで犯したくなったのである。
美和子の白い背中に覆い被さり、胸や腹で女の肌を味わう。
すべすべしたのもいいが、こうして汗に滲んだ肌に肌を重ねるのもまた格別だった。
両手を前に回し、重そうに揺れている乳房を揉み始める。
「ああ……」
柔らかく、手の中でとろけてしまいそうな肉塊はしっとりと汗をかき、指に吸い付いてくる。
指に力を入れて食い込ませると、美和子の乳房は白鳥の手の中でたぷたぷと弾みながら、淫らに形を変えていく。
まだ硬いままの乳首を摘み、転がしてやると、美和子はへとへとになりながらも鋭く反応した。
「んっ……ああ……む、胸が痺れる……ああ……」
これだけ疲れているのに、性感帯を刺激されると反応せずにはいられない。
美和子は己の身体をうらめしく思いつつも、妖艶さを漂わせていく。
白鳥がなおも力を入れて乳房を揉み込むと、美和子は「んんっ」と呻いて背中を丸くして堪えている。
ここまで穢されても、まだ屈服したわけではないようだ。
白鳥は硬くそそり立ったものを美和子の柔らかい尻たぶに押し当て、その感触を愉しんでいた。
たちまち丸い臀部が白鳥のカウパーでぬらぬらになっていく。
乳房から手を離し、ぐいっと尻たぶを割り開くと美和子は恥ずかしそうに「ああ……」と呻き、僅かに腰を捩る。
激しく抗うだけの気力はなさそうだ。
まだ一度も犯していないというのに、もうすっかり綻んで花開いている媚肉に指を添え、押し開いてみる。
中はとろりとした蜜でどろどろであり、膣口すら小さく口開けてひくついていた。
美和子の意志はどうあれ、肉体は男を求めているのは明らかだ。
これならもう余計な前戯などいらないだろう。
白鳥はいきり立った肉棒を掴むと媚肉にあてがい、ざわめく肉襞を押しのけるようにしてずぶずぶと挿入した。
「んんっ……ああっ」
膣口と粘膜を思い切り擦ってくる硬いペニスの感覚に、美和子は大きく仰け反った。
根元まで埋め込まれてしまうと、先端は子宮口にまで届いて美和子に悲鳴を上げさせる。
白鳥は腰が美和子の尻に密着するまで押し込むと、すぐに襞が絡みつき、絞り上げるように収縮してくる。
しばらくその感触を愉しむと、白鳥は腰を振り始めた。
「あ、あっ……ああっ……ひっ……あううっ」
すぐに感じ始めた美和子に興奮し、白鳥もまた高まっていく。
欲望に任せるままに激しく責め立て、美和子の尻たぶを掴んで思い切り腰を打ち込んだ。
すっかり過敏になっている膣内を擦り上げられ、美和子はひと突きされるごとにいきそうになる。
「だめ、激しいっ……そ、そんな強くしないで……ああっ!」
激しい攻撃に悲鳴を上げつつも、美和子は白鳥の腰の動きに合わせて尻を振っていく。
深い結合で子宮口まで刺激され、溢れるように愛液が零れ出る。熱くとろけきった媚肉からはひっきりなしに溢れてきて、美和子の腿と白鳥の腰をべちゃべちゃに汚していた。
肉の打ち合う音が響き、両者の腰が離れると愛液が糸を引いている。
「お、お腹の奥まで来てるっ……あっ、あんっ……いっ……いやあっ」
美和子は何度も喉を反り返らせ、喘ぐ声も掠れてきている。
膣をこねまわされるように肉棒で抉られ、中で絡みついた襞を引き剥がすように抜かれ、また深々と突き刺される。
白鳥も必死になって責め、美和子の身体が宙に浮くほどに強く突き上げている。
激しく子宮口を抉られ、美和子は大きく痙攣し、ぐうっと背中を弓なりにした。
「あ、あ、もう……もうっ……ああああっっ!」
ガクンガクンと裸身を跳ねさせたかと思うと、また達した。
「くっ……」
美和子の強烈で、しかも甘美な締めつけに思わず出してしまいそうになったが、寸前で白鳥は踏ん張った。
今日は美和子を失神させるまで責め抜きたかった。
強い締めつけに顔を歪めて堪え忍び、収縮が一段落すると再び内部を突き上げていく。
美和子は目を剥いて悲鳴を上げる。
「やはっ……いやあっ……だ、だめ、こんなすぐっ……少し休ませ、やああっ……あ、あうっ……い、いや、また来ちゃう……いあっ」
美和子の切迫した喘ぎ声で白鳥のものも我慢できなくなってきている。
無意識だろうが、美和子も白鳥の責めに合わせて尻をうねらせているので、余計に彼も感じやすい。
淫らに尻を振る美和子の子宮へ向けて、また律動が激しくなる。
愛液でぬらぬらと濡れ光るペニスが激しく膣を出入りしている。
抜かれる時には絡みついた襞まで引き摺り出してきて、突き刺す時に捲れ込むように戻していた。
もう何度もいかされている美和子にそんな激しい攻撃が耐えられるはずもなく、またしも官能の大波が女体を襲ってくる。
「ああっ、あああっ……くっ、だめっ……も、もうだめっ……あ、あ、また……またあっ」
「くっ、そんな声聞かされたらたまりませんよっ。ぼ、僕もいきます。出しますよ!」
「だめ、中だめっ……そ、外にぃっ……ああっ」
腰の付け根から背筋にかけてびりびりとした電気が走り、堪えきれない射精感が込み上げてくる。
「だ、出しますよ、中にっ」
「いやあっ、だめっ……お願い、中は許してっ……ひっ……あ、もうだめぇぇっ!」
「さっ、佐藤さんっ!」
「いやああっ!」
美和子が絶頂し思い切り媚肉が収縮すると、その膣圧に耐えかねた肉棒はぶるぶると痙攣しながら激しく射精した。
どっ、どっびゅっ、びゅるるっ。
びゅるるっ、びゅるっ、びゅるっ。
子宮口に熱い精液を直に感じ、美和子は絶叫した。
「いやああっ、出てる、中に出てるっ……あああっ……!」
白鳥はもがき逃げようとする美和子の尻をしっかりと捕まえ、子宮口めがけて欲望の昂ぶりを一気に放出する。
びゅううっ、びゅるっ。
びゅくくっ、どぶっ。
びゅっ、びゅびゅっ。
美和子は子宮と胎内に吐き出される精液の濃さと熱さに身を震わせて悶えた。
「いやあ……あ、まだ出てる……ぬ、抜いて、早く……あう……」
美和子を何度もいかせ、自分は我慢してきただけに、白鳥の射精はなかなか止まらず、夥しい量の精液が美和子の中に放たれた。
ずっと狙ってきた女の中へしこたま射精する快感と満足感に浸りながら、白鳥は腰を振っている。
(それにして大したもんだな……。やつの言った通りだ。あの薬、ペニスを増大させるだけでなく精液の量まで増えてる感じだな……。これなら美和子を本当に堕とせるかも知れん……)
白鳥は満足するまで射精するとようやく美和子の腰から手を離した。
支えを失った女体は、重そうにどたりと絨毯に倒れ込んだ。
まだ美和子の尻は快感の名残で痙攣しており、ビクッと小さく跳ねるたびに精液が逆流している。
美和子は力なく倒れ込んだまま「はあはあ」と荒く息を吐いていた。
ボロボロに犯された美和子の無惨な肢体を見ていると、白鳥の嗜虐的な性欲にまた火が着いてくる。
今度は美和子を仰向けに転がして屈脚位で犯した。
ふらふらになりながら美和子は反応し、繰り返し絶頂させられた。
二度目も当然のように膣内射精で子宮を汚された。
連続的なエクスタシーと疲労で失神寸前になっていた美和子だったが、白鳥は三度目の行為を挑んできた。
胡座を掻いて、もう首が据わらないほどに疲れ切っている美和子を脚の上に乗せ、対面座位で腰を打ち込む。
「んあっ、ああっ、いっ……はああっ、や、や、もういや……あっ、く……だめ、またっ」
白鳥は美和子のぷりぷりしたお尻を両手でしっかり抱えると、ぐっと自分の腰まで引き寄せる。
もちろん自分の腰はガンガン打ち込んでいるから、美和子にはかなりの挿入感があるはずだ。
屈脚位といいこの対面座位といい、美和子を犯す面々は好んで奥深くへ突き込んだ。
深々と突き刺さったペニスは絶えず子宮口をなぞっている。
膣口や内部の襞はいきり立った剛直でいやということ擦りつけられ、腰同士が激しくぶつかりあうため肉芽も柔らかく潰され、擦られてしまう。
子宮も含め、感じてしまう箇所をまとめて責められてしまい、美和子はただ喘ぎ、その快感を受け止めるしかない。
それでも自由になった両手は白鳥の背を抱くようなことは決してなく、むしろなよなよした動きで白鳥の胸を押し返そうとしている。
まだ彼女の矜恃は何とか折れずに保たれているようだ。
しかしよく見ていると、白鳥の腰が突いてくるとしっかりと受け止め、引いていくとまるで追うような動きを見せている。
白鳥も心得たもので、美和子の腰が追ってくるところを思い切り刺し貫いていた。
そんな激しいセックスに、もう肉体がまいってしまってきているようで、美和子は脚や腕の感覚がなくなってきている。
「素晴らしい身体ですよ、佐藤さん。こんなに疲れ切ってるというのに、身体の方はまだいこうとしている。さっきから僕のペニスを痛いくらいに食い締めてますよ」
「やっ、そんなこと……んあっ、あっ……いあっ」
「僕も気持ち良いが、佐藤さんも本当に気持ち良さそうだ。あなたのマンコと僕のペニスの相性もぴったりですね」
「しっ、知らない……」
「そうですか。では、わかるまで毎日やりましょうね」
そう言うと白鳥は一層に激しく突き上げた。
膝の上に座らされた美和子の尻がポンポンとリズミカルに弾んでいる。
激しく子宮を突き上げられ、美和子は切羽詰まった悲鳴を上げた。
強い突き上げに頭がぐらぐらと大きく揺れ動き、乳房ももげそうなほどに揺さぶらせていた。
白鳥は美和子の尻を力強く抱えて腰に押しつけ、ぐいぐいと抉っていく。
ストロークは短いが深度は深く、動きも素早かった。
ペニスが美和子の膣襞に激しく擦られ、ぐうっと亀頭が一回り大きくなる。
「くっ、佐藤さん、出ますよ。三回目も中に出しますっ」
「だめっ、絶対にだめよっ……あ、こ、これ以上出さないで、あっ……中はだめえ……いっ……うぐうううっっっ!!」
美和子は背中を思い切りたわませ、頭が床に着くほどに弓なりになった。
ガクガクと背中が震え、足の指が思い切り屈まる。
今日何度目になるかわからない美和子の絶頂を確認すると、白鳥も呻いて射精した。
「んひぃぃっ……!」
白鳥の尿道を痛いくらいの勢いで駆け抜けた精液は、美和子の胎内に吐き出された。
びゅるっと射精されて胎内の壁にひっかかるたびに美和子はビクンと痙攣し、子宮口に浴びせられるごとに「ああっ」と声を放って大きく身悶えた。
三度目とは思えぬ大量の射精を受け止めさせられ、美和子はすーっと意識を失った。
──────────────────
翌朝は起きるのが辛かった。
いつもはセットして置いたタイマーが鳴り出す前に起きられるのだが、今朝はまったく目が醒めなかった。
それも無理はなく、夕べは白鳥のホテルでたっぷりと前戯に時間を掛けられた上、三度に渡って凌辱されたのだ。
最後には失神してしまったらしく、気が付いたのは美和子のホテルに連れてきてくれたらしい白鳥が帰る時だった。
時計を見たら午前4時になろうとしていた。
ホテル間の移動時間を考慮しても、4時間近くは嬲られていたことになる。
朝食は抜いて慌てて着替えて登庁し、何とか遅刻だけは免れることが出来た。
海外研修で遅刻などしたら、日本で頑張っている仲間たちに申し訳ない。
運良く今日は座学はなく、東九龍総区警察まで出向いて現地警察の実態を見学というスケジュールだったため、居眠りするような醜態を晒すことは避けられた。
そっちは午後2時過ぎには終わり、4時には警務処本部に戻ってこられた。
随分ためらったが、結局、白鳥のオフィスへ行くことにした。
わざわざ目暮警部が「無理をすることはないが、時間がある限り毎日顔を出して調査に協力するように」と国際電話で要請してきたのだ。
警部のメンツもあるからサボるわけにはいかない。
あんなことがあって、白鳥と顔を合わせたらどんな表情をすればいいのかわからなかった。
白鳥だって、平常心で美和子を見ることは出来ないだろう。
しかし、行ってみて拍子抜けした。
白鳥の様子は普段とまったく変わらなかったのである。
美和子とも顔見知りとなり「佐藤サン」「サリー」と呼び合えるようになった秘書のサリー・ルンがたまに顔を出すからかも知れないが、表面上はいつもの白鳥である。
ことさら美和子をじろじろ見たり、意味ありげに淫らな笑みを浮かべたりすることもなかった。
無論、触ってくるなどということもない。
仕事は仕事と完全に割り切っているからだろうか。
定刻は過ぎたが、午後6時には仕事が終わった。
サリーが自分のデスクを片付け終わり、挨拶にきた。
「では白鳥警視、私、帰ります」
「ああ、ご苦労様。また明日もよろしく」
「はい。佐藤さんもさよなら」
「あ、はい。また明日ね」
サリーが出て行くのを見送っていると、白鳥がわざとらしく「さて」と言ったので、美和子は思わず身構えた。
「……」
「さて、今日は何を食べますかね」
「え……?」
「お腹、空きませんか? 飲みに行くのでもいいけど、取り敢えず腹ごしらえしましょう。たまには和食にしますかね」
そう言うと、白鳥は机の資料を片付け始めた。
ビデオの件もあって断ることも出来ず、仕方なく美和子はつき合った。
連れて行かれたのは日本食の店で、それなりに高そうな感じである。
「香港でも和食はけっこう人気があるんですよ。だからけっこう日本食の店はあります。寿司屋はもちろん牛丼家とかラーメン家もね。日本式の居酒屋もありますしね」
「……」
「ただ、日本人がやってる店ならいいんですけど、地元の人とか韓国人なんかがやってるところ……いわゆる日式ですね、こっちはちょっとね。現地の人には好評なようだけど日本人の口には合いません。日本のカレーがインド人に合わないと同じなんでしょうね」
「……」
「日本人が経営したり料理人が日本人の店は、味は間違いないですけど値段がね。やっぱり高いんですよ。良心的なところでも、日本より少し高いかな」
美和子は返事どころか相槌すら打たないが、白鳥は構わず話しかけてくる。
その様子は美和子を襲う前と少しも変わらなかった。
美和子にはさっぱりわからなくなる。
(この人……どういうの? あのことを何とも思ってないのかしら?)
空腹なのは確かだったから、美和子も食事には手を付けた。
一緒に頼んだビールや日本酒は、喉を潤す程度しか飲んでいない。
食べ終えると、案の定、白鳥は美和子を誘ってきた。
また白鳥のホテルへ行こうと言ってきたのだ。
思い切り断ってやりたいが、あのビデオのことがある。
先日の白鳥は、半ば脅迫するようにして美和子を犯したのだ。
今日も同じだろう。
美和子は死んだ気になって白鳥についていった。
こんなことが毎日続くのかと思うと死にたくなってくる。
「……」
白鳥と美和子はソファに隣り合って座っている。
今までの美和子なら、警戒して対面に座っただろう。
今日は美和子が先に座ると、白鳥は酒の用意をして、そのまま彼女の隣に座った。
美和子は白鳥を見たが、席を変えることまではしなかった。
白鳥は美和子の肩を抱くでもなく、迫ってくるでもなく、老酒を静かに飲んでいる。
細身のタバコをくわえ、ライターで火を着けている。
今度は美和子も飲んでいた。
ややもすると白鳥よりもペースが速い。
白鳥よりも酒が強いということもあるが、どうせ犯されることが避けられないのであれば、酔っぱらって人事不省になってしまえ、という捨て鉢な気分になっている。
表情はなく、凛とした美和子らしさは感じられない。
食事の時は饒舌だった白鳥も、部屋で飲み始めると口数が急に減った。
ともに黙って酒を飲み続けている。
おかしな光景だった。
つまみにチーズとハムが切ってあったが、それを食べているのは白鳥だけだ。
美和子は酒を飲むだけで、これでは酔いが早く回るだろう。
老酒のビンがふたつほど空くと、白鳥はおもむろに立ち上がりガウンに着替えだした。
時間は午後10時を過ぎている。
美和子としてはそろそろ帰りたいところだが、このまま帰してくれるとは思えなかった。
着替えても白鳥は何もせず、ミネラルウォーターをあおっている。
あまり帰りが遅くなるとまた朝起きられないかも知れない。
美和子はぼんやりした声で言った。
「……どうしたの? 抱かないの?」
「……」
「この前みたいに強引に犯せばいいじゃないの」
「……そうして欲しいならそうしますけど」
「……私がいやだと言っても、どうせ抱くんでしょ?」
「……」
「するなら早く済ませて欲しいの。帰りたいから……」
白鳥は、ようやく美和子に身体を寄せ、肩を抱いた。
「随分と投げ遣りなんですね」
「……」
「佐藤さんが無理に犯されるようなセックスが好きならそうしてもいいですが、僕は普通に抱いてみたいんですよ」
「普通にって……?」
「普通に、ですよ。愛し合った男女のように……」
「バカなこと言わないでよ、愛し合ってなんかないわ。少なくとも私はね」
美和子は低い声でそう言った。
白鳥は美和子の両肩に手を置き、自分と正対させた。
「僕はもうレイプするようなことはしないつもりです。プレイの一環ならともかく」
「……」
同じことだ、と美和子は思った。
口に出して直接脅迫はしないのかも知れないが、あれを見ているというだけで美和子に対して強みを持っている、ということだ。
それを匂わして何かを要求するなら脅迫と変わらない。
形が強姦であろうが和姦に見えようが、美和子にとっては同じなのだ。
美和子が黙ったので白鳥は服を脱がせ始めた。
抵抗はなかった。
酔っているせいもあって、美和子は「どうにでもなれ」と思っている。
服に皺を付けられたり破かれたりしたらイヤだなと思っていたが、案外器用に脱がせてくる。
高木と違って、女遊び──と言って悪ければ女性経験はかなりあるのだろう。
酔いで頬を火照らせた美和子がボーッとしているうちに、もう下着だけにされている。
「っ……」
白鳥は美和子を抱き上げると自分の膝の上に乗せた。
少し驚いたが、美和子は悲鳴も上げず、抵抗もしなかった。
表情にも態度にも「さっさと済ませて」と書いてある。
「くっ……」
舌がうなじに這う感触に悪寒が走り、美和子は身を固くする。
白鳥はうなじや首筋に唇を当て、強く吸ったり舌で舐め上げてくる。
美和子は少し困ったような顔をして言った。
「あんまり……強く吸わないでよ。跡が残ったりしたら困るから……、あっ」
美和子がピクンと反応し、クッと顎を反らせた。
白鳥の手がブラジャーの上から豊かな乳房を掴んで、円を描くようにゆっくりと揉みしだいてきたのだ。
石のように無反応でいようとした美和子だったが、性感帯を巧みに刺激されてはそれも叶わない。
僅かに身を捩り、その腕から逃れようとしたが、白鳥はぐっと力強く抱きしめてきた。
男の堅い筋肉が女の柔らかい乳房を潰している。
そんな場合ではないと思いつつも、美和子は白鳥のたくましさを身体で実感した。
白鳥の手はやわやわと乳房を揉み込んでその柔らかさと重量感を確かめると、そのまま肢体のラインをなぞるように下へ降りていく。
「こ、こんな、あっ……ことしないでいいから、んっ……早く終わらせて……ひゃっ!?」
ふるふると頭を振る美和子の耳をそっと舐めると、彼女らしからぬ驚きの声が上がった。
「ど、どこを、あっ……そんなとこ……やはっ」
耳を責められたのは初めてだったのか、美和子は明らかに狼狽している。
白鳥の唇が耳朶を挟み、耳穴に尖らせた舌先を差し込むと、ガクガクと身体を揺さぶって呻いた。
「あ、もう……やっ、それ……お願い……くっ……いやいや……あっ……くうっ」
乳房を揉む手を押さえにかかると、唇と舌が執拗に耳や首筋、うなじを責めてくる。
そっちに気を取られると、また乳房に指が食い込んで甘美な感覚を送ってきた。
どう堪えても、さざ波のように官能の愉悦が湧き起こり、美和子は必死になって唇を噛む。
(だめ、ホントに上手……。こ、こんなに丁寧にされたら私……)
「きゃうっ!」
ブラの上から硬くなってきた乳首をこねられ、美和子は引き攣るような喘ぎを上げた。
コリコリと転がされると、たちまち硬く充血し、ブラジャーの上からでもわかるほどに尖っていく。
腕を押さえる美和子の手の力が少し緩むと、白鳥の手がすっと下着の中に潜り込んできた。
もう汗ばんできている乳房の肌は、しっとりと男の指を吸い付いていく。白鳥はとろけそうな乳肉を揉み、対象的に硬く尖った乳首を擦る。
クッと美和子の首が反り、白鳥の肩の上に後頭部が乗った。
「ふあっ! んんっ……あ、あ……やっ……いやよ、んんっ……うんっ……」
美和子の身体が熱く、そして柔らかくなっていく。
肢体は力を失い、白鳥の胸に背中を凭れかけてくる。
手は乳を責める右手と脇腹や太腿を撫でまわす左手を押さえようとしているが、もうほとんど力が入っておらず、ただ添えている感じだ。
白鳥の手が素早く美和子の脚の間に滑り込んでくる。
「やっ、だめ!」
腕の動きに気づいた美和子は慌てて両脚を閉じたものの、肉の乗った太腿で男の手を締めつけただけだった。
内腿を這い上がった手のひらが、ショーツ越しに媚肉を愛撫していく。
中指を曲げて肉のスリットをなぞってやると、美和子はなよなよと腰を振り始める。
「だ、だめっ……んんっ!」
抱かれることを諦めているのに、いざとなるとやはり抗ってしまう。
嫌がる仕草は男の興奮を煽るだけだと頭でわかっていても、反射的に手を遮ってしまうのだ。
美和子の耳を甘噛みしながら白鳥が囁く。
「……佐藤さん、愛してます」
「っ……! な、何を言って……」
「本当だ。好きなんだ、佐藤さん」
「わ、私には高木くんが……あっ……、そ、それに、あっ……あなただってこ、恋人がいるんじゃ……だめっ……うっ……」
「……その話は終わったらしますよ。でも……」
「ああ!」
白鳥の愛撫に一層熱が籠もっていく。
乳房を揉みしだき、盛んにショーツの上から媚肉を撫で上げた。
「そこは……あ、あう……うんっ……はああっ……」
「あなたを愛しているのは本当だ」
「ま、またそんなことばっかり、あっ……」
「ウソじゃない」
「くうっ……!」
濡れた薄い布地は、下の肉をはっきりと浮き立たせている。
割れ目がくっきりと刻まれ、クリトリスまで下着越しに確認できるほどになっていた。
そこを指で押し、ころころと転がすと、たまらず美和子の口から喘ぎ声が漏れる。
「んっ、ああっ……いやもう……きょ、今日はもうやめて……あう……」
「今日は? なぜです?」
「そ、それは……」
美和子は目を堅く閉じたまま顔を伏せた。
白鳥から「好きだ」と告白された瞬間、背中にピリッと甘い電気が流れたのだ。
「好き」だとか「愛してる」と言われるたびに美和子の身体が反応し、熱くなり、とろけていく。
否応なく官能が高まり、感じやすくなってきていた。
(な……なんで私……白鳥くんなんか好きじゃないのに……)
美和子は自分の身体の変化に狼狽えていた。
白鳥に男性としての興味はないし、先日のレイプ以来、むしろ嫌いになっていたのだ。
なのにどうしてこうなるのかわからない。
高木に「好きです」「愛してます」と言われて抱かれると、異様に燃え上がることはあった。
しかしそれは相手が高木だったからであり、相思相愛だからなのだと思っていた。
が、どうやら違うらしい。
毛嫌いしている相手ならともかく、美和子は異性に好意を示されると肉体的に反応してしまうようだった。
それがウソだとわかっていても、耳の奥に響いてくる愛の囁きは官能を刺激するのだ。
まして白鳥は以前から美和子に恋慕していたことは彼女も知っていたから余計にそうなのかも知れなかった。
これはウソだ、まやかしだと思っても、愛撫される肉体はどんどんと感じていった。
白鳥は手に余るほどの乳房に指を立て、強く揉み込む。
程よい弾力と調和した柔らかさが心地よい。
彼の指に従って美和子の乳房は淫らに歪み、柔らかく潰れて形を変えていく。
「あ、あう……だめ、んっ……はあっ……あ、ああ……はっ……うんっ……いっ」
乳首を絞るようにこねられると、美和子の肢体がびっくりしたように跳ね、ぐぐっと顔を仰け反らせる。
乳首はさらに硬くしこり、その身体が性的に感じてしまっているのを証明していた。
「ひっ……やあ……ち、乳首はもう……んんっ……は、はうっ……」
好きでもない男に嬲られて悔しいのか、それとも感じるあまりなのか、美和子は目尻に涙すら浮かべている。
指がいつしかショーツの隙間から内部へ入り込み、直接肌を愛撫していた。
もうクロッチも陰毛も溢れ出る愛液を吸い取り切れず、布越しに蜜が垂れ始めていた。
熱く濡れた指で肉芽の根元を擦るように愛撫すると、美和子は大きく喘いで身体を震わせた。
もう覚悟したのか、美和子は完全に白鳥に身を預けている。
乳房を荒々しく愛撫され、荒々しい息を吐きながらも恥ずかしい声を何とか堪えようとしていた。
しかし、乳首をいびられながらクリトリスを撫でられ、さらに指が膣へ一本挿入されると、狂ったように身悶え、押さえきれない声が飛び出る。
「んひぃっっ……! だめ、そんなっ……やっ、もうだめ、あっ……あくっ……いっ……ああ!」
白鳥は肩に頭を乗せて喘ぐ美和子の顔を除き込み、その美貌が官能に歪む様子を眺めて愉しんでいる。
顔には美和子の熱い吐息が吹きかかり、甘い匂いが白鳥の鼻腔を擽った。
「気持ち良いでしょう、美和子さん」
「やっ、く……し、知らな……ああっ!」
「僕に抱かれるために来たんでしょう。正直によがればいい」
「だ、だってそんな……恥ずかしい……ああっ」
美和子の返事は、白鳥の愛撫が気持ち良いと認めているようなものだが、美和子自身はそのことに気づいていない。
「んう!」
膣へ挿入された白鳥の指が二本になると、美和子は呻いて腰を震わせた。
臀部がくねくねと動き、大きく柔らかい尻肉が真後ろにある白鳥の股間を刺激している。
指が二本挿入されると、その体積分だけとぷっと新たな愛液が零れ出た。
指で感じる膣内は狭隘だが充分に濡れ、そして熱かった。もういつでも男性器を受け入れられる状態だ。
白鳥は指を強く食い締めてくる美和子の妖しい媚肉の感触を存分に味わった。
「やっ……く……し、らとり、くんっ……だめ、私っ……やあっ……」
指は根元まで沈み、膣内でぐるぐると回転している。
指を曲げ膣壁をなぞり上げると、美和子は唇を噛みしめて激しく頭を振りたくった。
性感がどんどん上昇し、喘ぎ声が引き攣ってきている。
腰がうねり、白鳥の腕を掴む指にも力が籠もった。
「いきそうですね。一度すっきりさせてあげましょうか」
「くっ……」
美和子は精一杯虚勢を張って、頭を何度も横に振った。
身体は今にもいきそうだが、それを求めてしまっては身も蓋もない。
それでも乳房への愛撫と膣で激しく抜き差しされる指が、美和子の意志に反して官能の絶頂まで押しやろうしている。
もうだめだ。
いかされることを覚悟した美和子は、綺麗な眉を寄せ、唇を噛みしめ、その時に備えた。
「あっ……」
その時、胸と股間の刺激が一斉に遠のいた。
離れて行こうとする白鳥の腕を美和子の手は反射的に掴んでいた。
思わず振り返り「どうして……」と言わんばかりの表情で白鳥を見つめる。
「何です、その顔は。いきたかったですか?」
「……」
「いきたいならそう言えばいいんですよ。愛する佐藤さんのためだ、尽くさせてもらいますよ」
「い……らない……」
「……ふん、強情ですね。ま、そこがいいんですがね。ではもう一押ししますか」
「あっ……」
左腕を掴まれて頭上に持ち上げられ、仰向けに転がされた美和子は「いよいよ犯される」と覚悟し身を固くしたものの、反面、期待からか媚肉がじわっと潤ってくるのを感じた。
だが白鳥は早急に貫くことはせず、予想外の責めに出た。
思い切り腕を引き延ばされて剥き出しになっている窪みに目を付けた。
そこに顔を近づけるや、舌を伸ばしてぺろりと舐め上げてみた。
すると美和子は、白鳥がびっくりするほどの反応を見せたのである。
「あーーっ!? ひゃっ……んひっ!」
腋を舐められると、そこと直結しているかのように子宮がジンジンと痺れる。
ぺろっとやられるたびにギクンと身体が跳ね、肛門と媚肉がきゅっと締まり、膣口からぴゅっと愛液が噴き出す有様だった。
「くっ! むうっ! や、やめ……くあっ!」
「ここがそんなに感じるんですか。それでは……」
「ひっ、や、やめて、ああっ!」
思いも寄らぬ反応に気を良くした白鳥は丹念にそこを責めてみた。
美和子の反応は大きく、のしかかっている白鳥を跳ね上げるほどに大きく肢体が弾み、悶え、顔を仰け反らせる。
さっきまでの控え目な声とは比較にならぬほどに大きな声で悲鳴を上げ、喘いだ。
不埒な行為をやめさせようと脚をばたつかせ、自由な右手で白鳥を押し返そうとしたり、拳を作って背中を叩いたりしている。
しかし白鳥が執拗に腋窩を舐めていくと、次第におとなしくなってきた。
顔を反らせたまま唇から熱い息を吐き続けている。
その声は悲鳴から喘ぎへ完全に変わっている。
「あっ……ああ……やめて、そこは……ああう……いっ……ああああ……」
今の美和子にとって、白鳥の舌がそこを舐め上げてくる快感はクリトリスへの愛撫とさほど変わらない。
舌がねっとりと舐めてくると身体の芯にズーンと大きな衝撃が痺れとなって湧き起こり、子宮と膣口がきゅんっと痺れてしまう。
白鳥は大きく舌全体を使って舐め上げるだけでなく、舌先を尖らせて腋窩を抉ったり、唇を押しつけて強く吸い上げてくる。
「あーーっ! だめだめ、そんな……いっ……いやあっ……ひっ……ああっ、うあああっっ!!」
美和子の肢体が大きく反り返り、ガクンガクンと何度も跳ねた。
反り返ったまま身体を硬直させ、ぶるぶると痙攣している。
そして脱力し、どさっとソファの上に身体を沈めた。
大きく反らせた胸が顔にぶつかり、乳房を頬に押しつけられた白鳥は呆れたように言った。
「……すごいな、佐藤さん。腋を責めただけで気をやったんですか」
「あ……はあ、はあ、はあ……ああ……」
美和子はまだ息が荒く、とても白鳥の問いに答える状態になかった。
また恥ずかしい生理を晒してしまった羞恥と恥辱で胸を灼きながらも、こんなことで絶頂してしまった自分の身体に驚きを隠せない。
(ああ……、どうして私、こんな……。いやなのに……こんなのも白鳥くんに抱かれるのもいやなのに、どうして……)
美和子の目尻からつうっと涙が伝う。
かつてトッドに「おまえは嫌いな男に犯されるのが好きなんだ」と嘲笑されたが、本当にそうなのかも知れなかった。
白鳥は力の入らない美和子を抱き上げると、そのままベッドルームへ運んでいく。
そしてガウンを脱ぎ捨てると、仰向けにした美和子にのしかかってきた。
気がつけば、美和子はいつの間にか下着まで脱がされ、全裸になっている。
「やっぱりやめて……、わ、私……むうっ」
白鳥は美和子の唇を塞ぎ、言葉を吸い取った。
美和子は首を激しく振って拒絶した。
「キ、キスはいや……! あ、むむっ」
両手で顔を固定され、唇と舌を強く吸われる。
「んむ……ちゅっ……ぷあっ、いや!」
あまりにも抵抗が強かったので、白鳥はキスから解放した。
美和子は彼の口から感じ取れたタバコの匂いで吐きそうになる。
微かにメンソールの香りがしたが、ほとんどはニコチンのイヤな匂いだ。
口を離すと、白鳥はペニスを掴んで美和子に迫った。
「いきますよ」
「や……、待って。せめて……せめて避妊して」
「……」
「おとなしく相手するから避妊を……」
「だめです」
白鳥の回答は冷酷だった。
「コンドームって好きじゃないんですよ。セックスとしては不自然だと思います。あなたを感じるのもあなたが僕を感じるのもゴム越しになる」
「お願い……」
今にも手を合わせそうな哀願をしている美和子を見下ろし、白鳥はそのままペニスを媚肉に押し当てた。
「やっ……、んんっ!」
愛液を絡ませるようにしながら、白鳥はゆっくりと肉棒を美和子の中に埋め込んでいく。
一度いかされ、濡れそぼっていたそこは待ちかねていたかのように白鳥のものを受け入れ、飲み込んでいった。
「あ……あっ……んんっ……あ、あっ……あう!」
奥まで刺し貫かれた美和子は、先が子宮にぶつかるとぐぐっと身を反らせた。
白鳥はそのままじっとしていると、美和子の膣内は妖しげに蠢き始め、濡れた襞がまとわりついてくる。
そして絞るように収縮していくのだ。
美和子は自分の奥に収まっているもののたくましさに目眩がする思いだった。
(あ、大きい……ふ、太くてきついくらい……それにこんな硬くて……白鳥くんのすごい……)
白鳥は根元まで埋め込むと、今度はゆっくりと引き出し、そしてまた奥まで押し込んでいく。
動きはあくまでゆっくりだが、美和子に与える快感は充分に大きい。
「んっ……くうっ……あ、あくっ……いっ……むむっ……いうっ……」
ズンと奥まで突かれ、引き抜かれて膣内をカリが擦っていくと、美和子は腰を震わせて反応した。
膣道は太い肉棒でみっちりと埋まっているのだが、その僅かな隙間から濃い蜜がじくじくと漏れ出ている。
きつい締めつけに白鳥は顔を歪めている。
「佐藤さん、もっと力を抜いて……、それじゃあなたも痛いでしょう」
「そ、そんなこと言ったって……ああ、動かないで、あうっ」
いったんセックスに没頭してしまえばこの上ない味わいとなる美和子の媚肉だが、緊張と羞恥が強い最初のうちはきつすぎるくらいだ。
それをほぐすように白鳥はゆっくりと腰を使っていく。
埋め込んだペニスを時間をかけて引き抜き、カリが膣口に引っかかるまで持って行ってから、またずぶずぶと奥まで押し入れて子宮口を亀頭でなぞる。
その深さに美和子は目を剥いた。
「んああっ、ふっ、深いっ……だめよ、そんな深くまで……いっ……あ、あはあっ」
埋め込み、引き抜くたびにじゅぶっ、ぶじゅっと粘っこい愛液が溢れ出し、少しずつ女体と媚肉の堅さが取れていく。
また感じ始めたのか、それとも白鳥を拒絶するのを諦めたのか、媚肉は易々と太いペニスを飲み込み、奥まで迎え入れるようになった。
「深いのがいいんですか? 高木はここまで入れてくれないのかな?」
「やっ、どうしてこんな時に高木くんのことっ……ふあっ……ああっ」
高木のことを口にされると、美和子の膣がきゅっと締まった。
明らかに困惑している。もう諦めてセックスに集中しようと思っていた矢先に恋人のことを言われたからかも知れない。
しかしそれ以上に、高木のことを思い出して今の白鳥と無意識のうちに比較してしまっているせいだろう。
比べるなんてあさましい、申し訳ないと思いつつも、美和子の媚肉は蜜をいっぱいに滾らせて白鳥の怒張を受け止めている。
狭い膣口をいっぱいに拡げられ、抜き差しされるたびに襞がめくれ上がる有様だ。
白鳥はペースを崩さず、余裕を持って責め立てている。
何度か子宮口を小突いてやると、絶えられないとばかりに腰を揺すって大きく喘いだ。
「やっ……うんっ……ああっ……いっ……うくっ……あっ……ああっ……あふっ……んんっ……はああっ」
美和子の中は火が着きそうなほどに熱くなっていた。
その熱が放出されるのか、全身が火照って体温が急上昇している感じだ。
「あっ……ああっ!」
快感度数が急激に高まり、美和子はぐぐっと全身に力を入れた。
膣が引き締まり、思い切りペニスを食い締める。
そのため白鳥のペニスの太さと硬さがイヤと言うほど実感できてしまう。
美和子が頂上へ向かっていることに気づいた白鳥は、急に激しく腰を打ち込み始めた。
「いきそうなんですね? では一度いかせてあげますよ」
ようやく白鳥の巨根に慣れた美和子は、突如激しい突き込みに襲われて愉悦を示す喘ぎ声を大きくした。
「あ、あっ! ああっ、だめ、そんな激しくっ……いやあっ、そ、そんなにされたら……あっ、あっ、あああっ!」
美和子が喘ぎ、身悶えると、肉棒をくわえ込まされている膣がきゅっ、きゅっと引き窄められ、白鳥に甘美な痛みと至上の快楽を与えてくる。
その快感に突き動かされるままにし亜rと理は美和子の脚を大きく拡げ、できるだけ深くまで貫いて激しく律動した。
「うああっ、お、奥っ……奥まで来てる、当たってるっ……だめ、ひぃぃっ……!」
痛いほどに子宮を突かれているはずなのに、美和子の官能は収まるところを知らず、媚肉はうねるように肉棒に絡みついて奥へと誘導している。
両脚を抱え、腰を押しつけるようにしてガンガンと突き込んでいくと、美和子は切迫した声を放って激しく昇り詰めようとしていた。
(だめだめっ、あ、いきそうっ……白鳥くんに抱かれていっちゃうっ……だめなのに、こんなのだめなのにぃっ……あ、でも、もうだめ、いきそうっ……!)
「ぐっ、ぐううううっっ……!!」
美和子は汗にまみれた裸身を震わせ、背中をブリッジのように弓なりにして全身に痙攣を走らせた。
いった瞬間、ぐぐもった声しか出さなかったのは、美和子に残った最後の矜恃だろう。
美和子は籠もった声を喉から絞り出し、肉奥をきつく締めつけた。
「くっ……!」
白鳥はすんでのところで射精を堪えた。
気をやる瞬間の美和子の妖艶な美貌とその激しい反応、そして膣の収縮。
普段の美和子を知っている白鳥としては、そのギャップも合わさって、たまらない快感だった。
普通の男ならたまらず射精して、美和子の身体にしがみついていたことだろう。
だがそこを何とか我慢し、射精寸前でビクビクしている亀頭を叱咤しながら、なおも美和子を責め立てていった。
無理矢理に絶頂まで押し上げられた身体を連続的に容赦なく責められ、美和子は悲鳴を上げた。
いきなり深く強く突き入れられたせいか、美和子は驚いたように腰を何度も跳ね上げた。
「ひぁぁっ、やっ、そんなあっ……ま、待って、ちょっと待ってぇっ……こんなすぐ、だめえっ……やあっ……あはっ、深いぃぃっ……!」
それでいて膣は肉棒を離さずしっかりとくわえ込んでいる。
男女の体液が弾け飛び、室内はムッとした甘ったるい匂いで覆われていく。
美和子のそこからは無尽蔵のように愛液が溢れ、零れ出る。
シーツでは吸い切れず、マットレスの芯まで蜜が染みこんでいるようだ。
これだけ体液を出しているにも関わらず、美和子の膣奥からはなおもコンコンと甘蜜を分泌してきていた。
白鳥の腰が美和子の腰にぶつかるたびに愛液が飛び散り、肌がくっつき、そして離れる時に粘った液体の音を立てている。
「だ、だめ……くっ……ぐううっ」
短く呻いて美和子はまた達した。身体を仰け反らせ、大きく胸を突き出す感じでピクピク痙攣している。
浮き出たあばらがナマの女体を感じさせ、悩ましかった。
ペニスをぐうっと根元まで押し込むと美和子は苦しげな声を上げ、苦悶で美貌を歪ませた。
「んあああ……、も、もういい……もうたくさん……あ、あ……」
「この身体だ、まだいけるでしょう」
「も、もう許し……ああっ!」
また腰が打ち込まれ、子宮口まで突き上げられ、亀頭がそこを何度も擦っていく。
女の聖域まで責められ、美和子は「ひぃひぃ」と呻き、喘いでいる。
美和子の締め付けはきつくなる一方で、収縮の間隔も短くなってきていた。
胎内の襞を総動員して、奥深くまで入り込んでいる肉棒を締めつけて射精を促している。
数度に渡り連続絶頂させられ、疲れ切ったような美和子の美貌や、ペニス全体を締め上げる膣圧とその柔らかさに、白鳥も射精の感覚を押さえ込むのが困難になってきた。
膣がビクビク震え、ペニスを刺激して止まない。
「よし……、出しますよ」
「やっ……だめ、あっ……中、だめ……外に……くああっ……」
「だめだ、中に出します! くっ、もう我慢できんっ……佐藤さんっ!」
「いやああっ……!」
思い切り腰を押し込んで子宮口に亀頭をくっつけると得も知れぬ快美感に囚われ、白鳥は呻いて射精した。
「くうっ!」
どっびゅるるっ、どぴゅううっ。
びゅるるっ、びゅるっ、びゅるっ。
びゅくくっ、どびゅるっ。
膣圧と肉襞に引き絞られた男根は、膣内最深部で亀頭を震わせながら精液を発射した。
精液の熱さと濃さを胎内で実感した美和子は、ぐぐっと全身に力入れたまま硬直している。
子宮口に射精を受けて、またいったようだ。
「んんっ、いや、出てる……奥に、ああ……だめよ、抜いて……ああ……」
抜いて、と言いながらも、美和子の膣はペニスをくわえ込んで離さない。
白鳥も美和子の腰を抱え上げ、自分に引き寄せるようにして射精を続けている。
ドクドクと流し込まれる精液の量に美和子は身体を震わせて呻いた。
ようやく射精が終わっても、まだ美和子の媚肉はペニスを離さす、執拗に締めつけていた。
「あうんっ……!」
白鳥が強引に肉棒を引き抜くと、美和子は首を仰け反らせて痙攣した。
まだ硬いカリが膣口を抉って引き抜かれた感触でまた気をやったのかも知れない。
ペニスを抜き放たれても膣口はまだ閉まり切らず、小さく口を開けて精液をごぼっと逆流させていた。
「ふう……」
白鳥も一息ついて、美和子の横にごろりと横たわった。
隣の美和子は仰向けになったままで、股間はしどけなく開きっぱなしだ。
無防備なままの美和子に手を伸ばし、そっと乳房を愛撫するもののほとんど反応はなく、荒い呼吸を繰り返すだけでされるがままになっている。
「佐藤さん」
「……」
「佐藤さん」
「……何よ」
まだ呼吸で胸を揺らしながら美和子は気怠げに返事をした。
白鳥は肘を突き、上半身を起こして美和子を見つめている。
「何か勘違いしてませんか」
「勘違い……?」」
「佐藤さん、誤解しているのであれば言っておきます。僕は例のビデオであなたを脅迫するつもりはありません」
「……え?」
美和子は少し驚いて顔を上げた。
視線の先には白鳥の真面目な顔が見える。
「……この前は少しそれを匂わせてしまって申し訳ないと思ってます。でも、そうでもしないとつき合ってくれそうになかったので」
「「つき合って」? そうじゃなくて、抱かせてくれそうになかった、でしょう」
「そうかも知れません。でも、これは本当です。あのビデオを何回か見ているのは事実ですが、その件は誰にも言っていません。これからもそうするつもりです。何があっても、そのことであなたを脅すことはしませんから」
「……どうだか」
信じられない。
一度はやっているのだ。
それに、もう美和子を凌辱しているのだから、ことさらそれを持ち出さなくてもレイプしたこと自体を脅しの種にするかも知れない。
「私にはもうつき合っている人がいるのよ、知ってるでしょう。彼に……高木くんに悪いと思わないの?」
「……」
「それに白鳥くんだって恋人がいるっていうじゃない。その人にも申し訳ないでしょう」
一瞬沈黙したものの、白鳥は誠実そうに言った。
「それですが……、いつか言おうと思っていたんですが」
「何よ」
「僕は……、佐藤さんの言う通り、あの後、ある女性とつき合っていました」
「……」
「つき合っている」ではなく「つき合っていた」と過去形で言ったことが気になった。
「でも、僕が香港に渡る前に……別れました」
「え……」
さすがに美和子も驚いて白鳥を見た。
白鳥は少し微笑んでいる。
「何で……」
「……あなたのせいです」
「私の……?」
「ええ、そうです。どうしても……佐藤さん、あなたが忘れられなかった」
「そんな……」
白鳥はそこで腹這いとなり、ナイトテーブルに手を伸ばした。
タバコの箱に手を伸ばし、一本抜き取って口にくわえた。
「正直に言います。実は彼女……小林澄子さんと言うんですが、あなたにそっくりなんですよ」
「え……?」
「誤解しないでください。だからと言って、あなたの代わりとして見ていたわけじゃないんです」
それはそうだろう。
もしそうなら美和子は激怒するところだ。
自分がその立場であってもそうだし、逆であってもいたたまれない。
白鳥はタバコに火を着けて深々と吸うと、ため息のように紫煙を吐き出した。
「恥ずかしい話ですけど、彼女、初恋の人だったんですよ。初恋ったって小学生の頃の話ですからママゴトみたいなものですが」
「そう……」
「以来、会っていなかったんです。同窓会とかにも出ませんでしたから。だからきっと、警視庁で初めて佐藤さんを見た時、僕の頭に残っていた彼女の記憶を刺激したんじゃないかと思います」
「……」
「でも彼女を思い出すことはなく、佐藤さんに惹かれていた。だから高木たちと競ってあなたを落とそうとしていたのは、決して彼女の影響ではないと思うんです」
美和子は何も言わなかった。
口を挟めるような話ではないのだ。
「でも、あなたは僕ではなく高木を選んだ。そこで僕はすっぱりと諦めた……つもりだった。だから本庁復帰にも応じたし、彼女ともつきあい始めたんです。でもね……」
白鳥は神経質そうにタバコの灰を落としている。
「どうしてもあなたが忘れられなかった。彼女とのことは、好きだったとはいえ小学校時代の話ですからね。それ以降、まったく会ってなかったわけだから……」
「でも……」
「そう、でもつきあい始めた。さっき言ったように、あなたを諦めるために彼女とつきあったのかも知れません」
「そんな、それは……」
「わかってます、酷いことだったと今は思います。でも、かつて好きだった子なんですから、またその時の思いを取り戻せるかも知れない、とも思ったんです。でも……だめでした」
「……」
「結局、あなたのことを思い出してしまうんです。僕だって悩みましたよ。こんなつき合い方、彼女にだって申し訳ない。だから結論を出したんです」
「結論って……」
そこで白鳥はタバコを押し消して美和子へ振り返った。
「あなたをものにしようと」
「……!!」
「でもあなたは高木なんかとつき合ってる。それはわかってます。だけど僕も諦めきれない。だから……」
「だ、だから……?」
美和子はその先を聞くのが怖かった。
その目をじっと見ながら白鳥は力強く言った。
「だから高木と比べて欲しい」
「く、比べるって……」
「僕と高木を比べて、その上で判断して欲しいんです。何度も言いましたが、もう無理にあなたを犯すようなことはしません。だから……、そう、セックスも含め、色々な面で比較して欲しいんです。選択の対象に僕も入れて欲しい」
「な、何を言ってるの!? 私はもう高木くんと……」
「だからそれはいいです。だけど、その判断は不変のものとは思えない。恋人としてだけじゃなく、将来は結婚して共に暮らすということも含めて考えてください。僕はあなたを絶対に幸せにしてみせる。セックスの面でもね」
「っ……」
あまりのことに美和子は絶句した。
これはプロポーズではないのか。
今つき合っている彼氏がいてプロポーズも時間の問題なのに、横からしゃしゃり出て自分も候補に入れろと言っているのである。
「僕は高木にリードされている。だからここから挽回するつもりです」
「……」
「これから毎日しましょうね、佐藤さん。そうすれば、あなたのその欲求も解消できるでしょうし」
白鳥は美和子の身体に起こっている異変に気づいているような口ぶりだったが、動揺している彼女にはそれを見抜く洞察力が欠け落ちていた。
「ま、毎日ってそんな……」
そうでなくとも高木による愛のある慈しみ合いのセックスよりも、少し乱暴に犯されたり、恥ずかしい言葉で虐められたり、恥辱的な責めを受けることで燃え上がり、より強く反応してしまう身体にされてしまっている。
毎日毎日あんなに激しいセックスをされたら、心はともかく身体が白鳥に慕い寄ってしまいかねない。
美和子が拒絶する前に白鳥が意外な提案をしてきた。
「本庁への報告も兼ねて一度帰国したらいかがです? 持参していただきたい資料もありますし。それで高木にも会って、抱かれてください」
「……」
つまりセックスでも高木と比較してくれと言っているのだろう。
自分の精力とテクニックなら高木などに負けるはずがないという自信があるのだ。
美和子は悔しかったが、白鳥の言は間違っていない。
そのことは美和子自身が──美和子の身体がいちばんよくわかっている。
そこで白鳥は愛撫していた胸から手を離した。
「……今日はここまでにしましょう。お送りしますよ」
「……」
一度犯されるだけでは済まないと思っていた美和子は少し肩すかしを食った気するが、ホッとしたように起き上がった。
「……シャワー借りていい?」
「どうぞ。タクシーを呼んでおきます。あ、それと……」
「?」
白鳥はナイトテーブルの引き出しから小さな箱を取り出した。
プレゼント用なのか赤いリボンで結ばれている。
しかし美和子に直接渡すことはせず、無造作にリボンを解き、包み紙を破いて白い箱を開けた。
「何、それ……」
白鳥が取り出したのは黒いリボンのようだった。
よく見ると蝶を形取った装飾がされている。
どうもチョークらしい。
白鳥はそれを指で弄びながら言った。
「あなたの細くて白い首にはきっと似合いますよ。差し上げますから、つけてみてください」
「……けっこうよ」
白鳥の言葉を背中で聞いて、美和子はシャワールームへ入っていった。
シャワー室から水音が聞こえだしてから、白鳥は美和子のハンドバッグを開け、その中にチョーカーをしまい込んだ。
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