高木は美和子の手を引くようにして、会議室の隣にある小さな資料室に入った。
中はロッカーやキャビネットが所狭しと並べられている。
スチール製の安物本棚にはファイルがぎっしりと詰め込まれ、今にも雪崩を起こしそうになっている。
引き出しの中や棚には、捜査資料が乱雑に詰め込まれていた。

そんな埃っぽい部屋に入ると、高木は内側からロックしてまっすぐ窓際まで美和子を連れて行く。
少しだけ外の様子を気にしてからブラインドを下ろした。
いつもにも況して生真面目な表情を浮かべている高木を見て、美和子は少し身構えて聞いた。

「……で、なに?」

まだまともに目線を合わせられなかった。
しかし高木の方は、まっすぐ美和子を見ている。
さっきまでは美和子と同じで、どことなく彼女から視線を外していたのがウソのようだ。
美和子はちらりと高木の顔を見て、またすぐに顔を逸らした。
真摯な色を湛えた瞳でじっと見られるのがつらかった。
それでも、手を握ったままこちらを見つめる恋人を無視することも出来ず、やむなく彼を見た。

美和子と目が合ってしまうと、高木は言いたかったこと、確認したかったことが何も言えなくなってしまった。
自分はとんでもない誤解をしているのではないか。
大した根拠もないのに、最愛の女に対してあらぬ疑いをかけているに過ぎないのかも知れない。
しかも、後ろめたいというなら自分もそうなのだ。
選りに選って、美和子が可愛がっている後輩に「手を着けて」しまったのだから。
美和子からはっきりと言って欲しかったが、それが本当だったら立ち直れないかも知れない。
自分だって、とてもじゃないが夏実との関係を打ち明ける気にはなれなかった。

何やかやと頭の中を駆け巡り、まとまった言葉が出て来ない。
まだ美和子はこっちを見ている。
高木は軽く頭を振って雑念を振り払った。
そして、告げた。

「……さと……、いや、美和子さん」
「……」

高木は美和子の目から視線を外さず、スーツのポケットを漁った。

「……この前のお返事、戴けませんか?」
「この前……」
「はい……。これ、受け取って貰いたいんです」

そう言って指輪ケースを差し出した。
息を飲む美和子に、高木は男らしくはっきりと言った。

「……結婚してください」
「高木くん……」

美和子はそう呟くと、おずおずと手を伸ばして紫色の小さなケースを受け取る。パカッと小さな音をさせて蓋を開けると、美和子の誕生石であるダイヤモンドが散りばめられた美しいリングがあった。
きらきらと輝いていた宝石の光が歪み、視界がぼやける。
美和子は、自分が涙を流していることに気づいた。
美和子の目に涙の玉が出来ていることに気づき、高木の方が動揺している。

「み、美和子さん……」
「ごめんなさい……」

美和子はそう言って静かに微笑み、人差し指の先でそっと涙を拭った。
その時、目の前の恋人が酷く落胆したような顔になったので不思議に思い、尋ねてみる。

「……どうしたの?」
「あ……、いえ、すみませんでした……。やっぱ、だめですよね……」
「え……?」

美和子は眼をぱちくりしている。
ぽろり、ぽろりと涙が零れたが、やがて高木の言う意味がわかったらしく、小さく笑って顔を振った。

「違うのよ、高木くん。断ったわけじゃないの、急に泣いたりしてごめんなさいって」
「……え?」
「……お受けします」

美和子はやや顔を伏せ、恥ずかしそうに、だが嬉しそうな顔でそう口にした。
今度は高木が眼をぱちくりする番だ。
唖然としている若い恋人に、美和子はもう一度はっきりと告げた。

「こんな私で良ければ……、そのお話、お受けします」
「ほ、本当に……? 美和子さん、その……ぼ、僕でいいんですか?」
「ええ、そうよ。私、高木くんがいいの」
「美和子さんっ」

高木はそう言うと美和子を抱きしめていた。
美和子も手を伸ばし、高木の腰を抱いている。
彼の胸が頬に当たった。
知らなかった。
高木の胸ははこんなにもたくましく、そして暖かかったのだ。
また涙が零れ、高木の白いワイシャツに染みこんでいく。

しばらくの抱擁の後、どちらからともなく顔を見合わせ、そして口づけを交わした。
美和子の甘い舌を吸いながら高木は思った。
美和子は香港で本当に不貞を働いたのかも知れない。
だが、もう過去のことなどどうでもいい。
寂しさから来た一時の気の迷いかも知れないではないか。
今の美和子の言葉にウソはないと信じたかった。
彼女は本気で自分と生涯を共にしたいと思ってくれているのだ。
それだけで充分だった。
問い質すようなことはすまいと誓った。
自分にも夏実との関係がある。
そのことも、自分と夏実が墓場まで持っていけばいいだけのことだ。
夏実だって彼氏がいると言っていた。
寂しかったのだろう。

「……」

唇が離れると、ふたりは見つめ合った。
そんな雰囲気が何だか照れくさく、美和子と高木は恥ずかしそうに微笑んだ。
ふと高木が何かに気づいた表情を浮かべて美和子を見る。

「あ……、気がつかなかったけど、それ……」
「あ……」

何のことを言われたのかわからなかった美和子だが、高木が首を指差したのを見てハッとした。
慌てて首筋を手で押さえる。
白鳥から貰った黒いチョーカーだ。
何も知らない高木は微笑んで言った。

「お似合いですよ。でも、美和子さんがそういうのをするのって初めて見たなあ」
「……」

美和子は何も言えず、首を押さえたまま顔を背けた。

──────────────────────

その夜、美和子は高木に抱かれた。
前回同衾したのはいつのことだったろう。
一ヶ月、いや、もっと前のはずだ。
香港へ行って、初めて帰国した時のことだった。
香港で白鳥に犯され、何度も官能の絶頂に押しやられてしまった忌まわしい記憶を拭い去ろうと、高木に縋ったのだ。

彼の優しさに触れ、もう二度と白鳥と関係すまいと誓った美和子だったが、白鳥は巧妙だった。
普段は気さくでさり気ない気遣いが出来、徹底したレディ・ファーストを誇示して美和子を懐柔していった。
美和子とて女だから悪い気がするはずもなく、白鳥に対する嫌悪感も警戒感も薄れていく。
そこを突かれ、またしても彼に身体を許すこととなった。

そうなってしまえば海千山千の白鳥に敵うはずもなく、苦もなく術中に嵌って性の深淵に突き落とされてしまった。
心身ともにズタボロにされ、ようやく帰国した美和子を変わりなく迎えてくれた高木の気持ちに応え、美和子は彼のプロポーズを受けた。
そしてマンションの母に電話で外泊を告げると、高木に誘われるままホテルのベッドへいざなわれたのだった。

ケジメを付けようと美和子は思っていた。
結果がどうなるかはわからないものの、高木の話を受ける前にすべてを──彼にだけはすべてを打ち明けようと思ったのだ。
かなり躊躇した。
高木に知られたくないことが原因で、さらなる凌辱を受けたこともある。
そうまでして秘密を守ろうとしたし、このままで済めば一生誰にも話したくない事柄だ。
しかし高木の誠実さ、優しさを見るにつけ、それでは済まされないことを覚った。
真実を告げることで彼が衝撃を受け、あるいは美和子が非難されて関係が終わる可能性もある。
聞いているうちに激怒して、美和子を置き去りにしてここを立ち去るかも知れない。
それはそれで仕方がないと思っていた。
全部とは言わないが、美和子自身にも責任はあるのだ。

いずれにせよ、生涯を共にしようという相手に対し、結婚前にこんな重大なことを隠すわけにはいかない。
友人に相談すれば「隠し通した方がいい」と言われるかも知れない。
だが、生真面目で不器用なのは美和子も彼と同じであり、このまま結婚しても心の引っかかりは消えないと思った。
別れを告げられることを覚悟で、そして血を吐くような思いで美和子は高木に話した。

一連の事件の発端となった日本でのパレット事件。
そこで拉致監禁され、牧田やトッド、ミシェルらに犯され、性的調教を受けていたこと。
その時、ビデオ撮影までされたこと。

パレット衰退の原因となったシカゴ事件。
警視庁から派遣された美和子は、そこでパレット事件主犯であるミシェルを発見したものの再び拉致され、彼とトッドにまたしても凄惨なレイプと激しい調教を受けた。
挙げ句、病院の特別病棟に入院されていた老人たちに輪姦までされた。

そして香港。
現地で思いもかけず白鳥に出くわし、例のビデオをネタにやんわり脅迫され、やむなく彼に身を任せたこと。
その後も何度も何度も犯され、しまいには自分から求めるようになってしまったこと。
名前こそ出さなかったものの、基本的には真実を言った。
聞いている高木の方が辛そうだったのであまり具体的なことは言わなかったが、内容は理解したようだった。

話し終わり、俯いていた美和子の手に、高木の手がそっと添えられた。
何も言わずに美和子を抱きしめた彼は、その耳元で「結婚してください」と、再度プロポーズしたのだった。
美和子は賭に勝ったと思った。
言って良かったと心底思っていた。
これでもう、このことで脅されても高木という味方がいることになる。
少なくとも「高木にばらす」という脅しは通用しなくなるのだ。
それだけでも良かったと思う。
美和子は、自分の選んだ男に間違いはなかったと喜び、その胸に顔を埋めた。

──────────────────────

「……」

ふと美和子は目を覚ました。
薄暗い照明の中、ベッドサイドの電子時計が午前1時を表示していた。
そのまま部屋を見回してみる。
普通のビジネスホテルやラブホテルとはワケが違う。
高木はこの日のために、わざわざヒルトン東京に予約を入れたのである。
美和子たちが泊まったのは30階だったから、さぞや見晴らしも良いだろう。
それにしても広い部屋だった。
多分、こんな部屋に宿泊したのは初めてだと思う。
美和子だけでなく高木にしてもそうだとは思うが。
部屋が広いだけでなくベッドもかなり大きい。
よくは知らないがクィーンサイズというよりはキングサイズかも知れない。
ふたりどころか3人でもゆっくり寝られそうであり、寝相が悪くなければ4人でもいけそうだ。

いったいいくらしたんだろうと、美和子は余計なことを考えている。
もっと良い部屋はあるのだろうが、このダブルでも恐らく一泊4万や5万はするだろう。
セレブ趣味に理解のない美和子にはまったく無駄に思えるのだが、せっかく高木が奮発してくれたのだろうから、そんなことは口にしなかった。
それに、この部屋はけばけばしさはない。
柔らかな感じのオフホワイトと木の色を基調にした配色である。
ご丁寧にも、間仕切りには襖や障子が配してあって、落ち着いた感じだ。
あまりに絢爛豪華な部屋では、かえって居心地が悪くなる美和子にとっては有り難い調度だった。

ごく弱いオレンジの光に覆われた室内は、情事の後とあって妙に気怠い感じがする。
横を見てみると、高木が眠り込んでいた。
心なしか穏やかな寝顔だと思う。
高木の性格からすれば、プロポーズするだけでも決死の思いだったろうから、それを美和子が受けたことで身体中から脱力するほどホッとしたのだと思う。
彼らしくて、何だか微笑ましかった。

しかし、彼の若い寝顔にもどことなくたくましさを感じる。
高木は高木なりに経験を積み、年齢を重ねてきているのだ。
人間として成長し、男らしさも相応に身に着けているのだろう。
そう言えば、ついさっきまでのセックスも人が変わったような感じがした。
それまでは、どちらかというとおどおどしたところがあった。
自分は年下で階級的にも美和子の部下だということで、遠慮したり余計な気遣いをしていたからだ。
ことあるごとに美和子は「プライベートではそんなことは関係ない」と注意するのだが、真面目な彼にはそう簡単に割り切れなかったようだ。
そこが美和子には物足りなく、頼りなく感じられていたのである。

しかし今日の彼は、まるで別人のように美和子の身体に挑んできたのだ。
ひさしぶりということもあったろうが、愛するというより貪るように美和子の肉体を味わっていた。
美和子も驚くほどの執着ぶりだった。
それに、これは気のせいかも知れないが、ペニスもたくましくなっていたように思う。
以前に感じたものよりも太く、大きくなっているのを美和子の膣が実感した。
別に高木のものが短小だったわけではないが、今まで美和子を犯してきた男たちに比較すれば、やはりサイズは小さかった。
なのにさっきの高木のものは、それ以前のものよりも一回りくらい大きかった気がした。

セックスしている時は夢中だったから、驚きはしたがあまり気には留めなかった。
確認してみようかと、高木の上にかかっているシーツをめくろうとしたものの、それはやめた。
やはり失礼だと思うし、どうしても確かめたければこれからいくらでもチャンスはあるのだ。

「ん……」

少し身体を捩って寝返りを打つ。
天井のシャンデリアが目に入った。
美和子は高木とのセックスに満足していた。
もちろん、成熟しきって開発され尽くした美和子の肉体にとっては、まだ充分に満足というレベルではないかも知れない。
しかし高木の「成長」は目覚ましいものがあったと思う。
ペニス自体のサイズが大きくなったのは不可解だが、精力は間違いなく上がった。
今日、高木は美和子に二度挑み、二回とも射精した。
「今までこんなことは皆無」というわけではなかったが、大抵の場合は一回きりだった。
なのに今日は、二度に渡るセックスでも衰えることなく、力強い動きで美和子に快楽を与えてくれた。
セックス後なのに熱く火照る身体を持て余す、ということもなくなるはずだ。
高木はまだ若く、これからさらに「強く」なる可能性だってあるのだ。

それに美和子の方とて、これから安定的かつ安心なセックスを得ることにより、少しずつ性欲が治まっていくかも知れない。
少なくとも、いくら自慰をしてももやもやが消えない、などということはなくなるだろう。
ホテルのレストランで夕食を済ませ、部屋に戻ってシャワーを浴びるなりベッドに倒れ込んだのだから、美和子が高木に身を任せたのは午後9時過ぎくらいだ。
二度の性交を終えて時計を見た時は10時半くらいだったか。
淡泊だと思っていた彼とのセックスで一時間以上になったのは今回が初めてだった。
まだ眠ってから二時間ほどしか経っていない。
もう一眠りしようと思った時だった。

「……?」

何か妙な気配を感じる。
科学捜査の昨今、カンだの気配だのは軽視される風潮にある。
しかし美和子は、経験と年齢を重ねるたびに、それは間違いだと覚った。
結局、カンというものは積み重ねた経験があることで研ぎ澄まされてくるものなのだ。
若いうちはそんなものが信じられないのは当たり前で、経験を積んだ今だからこそカンも重要だとわかる。

美和子は明らかに異質な気配を感じ取っていた。
身体の動きを止め、なるべく顔を動かさないようにして辺りを窺う。
何かある。
誰かいる。
そんな気配はあるが、視界には何も入らなかった。

意を決して上半身を起こす。
シーツで胸を覆い、周囲を見回した。
その時だった。

「っ……!」

ハッとして振り返ろうとした美和子の口を、後ろから男の手が覆ってきた。
手のひらで口を塞がれた美和子は、くぐもった声を上げてもがいた。
身を翻そうとしたものの、男は美和子の首に腕を巻き付け、口をもう片方の手で塞いでいる。
後ろへ肘打ちして反撃しようとしたその時、首にチクンと小さな痛みを感じた。
何か注射されている。
男の腕がようやく首から離れて美和子が振り返ると、そこには小さな空の注射器を手にした既知の男が微笑んでいた。

「あ、あなた……何で……」

美和子はすべての言葉を口にする前に意識を失い、静かにベッドへ突っ伏した。
男は落ち着いて注射器をアンプルに刺し、中の薬液を吸い上げた。
そして今度は、まだ眠りこけている高木の首に注射針を突き立てた。

──────────────────────

「うっ……」

ツーンとした刺激臭を感じ、美和子は顔をしかめて呻いた。
徐々に意識が戻ってきたが、まだ頭の芯がぼうっとしている。
顔をシーツに押しつけるようにして、俯せで寝ていたようだ。
美和子は比較的寝相が良く、寝ていても滅多に俯せになっていることはなかった。
よほど疲れてベッドに顔から突っ伏してしまい、そのまま眠ってしまえば別だが、昨夜はそんなことはなかった。
セックスを終え、高木の横で仰向けに寝ていたはずである。
香港滞在時の疲れが出たのかも知れない。
帰国して高木の姿を見てホッとしたということもあるだろう。
その身体で二度もセックスしたのだから、身体は疲れきっているのかも知れない。

また鼻腔の奥に刺さるような臭気が来た。
匂いは止まず、何か刺激臭のある布きれが鼻先を覆っているようだ。

「ん……、んんっ」

顔を振ると布が離れ、ほぼ同時に視界と頭の中が晴れてきた。
もぞもぞと身体を動かし、顔を上げると、正面に見覚えのある男が微笑して立っていた。

「……レスリー!」

かの白い鬼、香港人の悪徳医師だった。
美和子は慌てて起き上がろうとしたものの、脚が動かなかった。
腕は動いたから、ベッドに手を突いて身を起こそうとしたが、上半身しか起き上がれない。
驚いて脚を見てみると、両足首に黒いベルトが巻き付き、フックから伸びたチェーンがベッドの脚に繋げられていた。
身体に巻いていたはずのシーツは剥ぎ取られ、白く滑らかな背中が剥き出しになっている。
医師が穏やかな声で話しかけてきた。

「お目覚めですね。申し訳ありません、まだ朝には少し早いんですが」
「あ、あなた、なぜここに……。高木くん! 高木くんは……!?」
「大丈夫、無事ですよ。ほら、あなたの横でぐっすりと……」

確かに高木は、そこで横たわっていた。
但しロープでグルグル巻きにされていた。
しかもぴくりとも動かない。
まさか死んでいるのかと美和子は青くなったが、よく見てみると鼻が小さく動いているし、たまに口も薄く開くことがある。
呼吸音も聞こえた。
美和子は高木の無事を確認するとホッと息をついたが、同時に怒りがこみ上げてきた。

「あなた……、レスリー! これはどういうことなの!?」
「……」
「なんであなたがここにいるの!? は、早く私と高木くんのロープを解いて!」

美和子が叫んでもレスリーは表情を崩さず、ただ彼女をじっと見つめていた。

「蘭ちゃん! 蘭ちゃんに酷いことしてないでしょうね!?」
「……」
「高木くんに何をしたの!? 私たちをどうするつもりなのよ!」
「……そんなに大声で言わなくても聞こえますよ」

ようやく医師が返事をした。
相変わらず真っ白な出で立ちだ。
白いジャケットの下は白いシャツ、履いているのは白のスラックスにソックス、そして真っ白な革靴だ。

「ま、いくら大声出しても平気ですけどね。しっかりした防音壁になってるようですから。それにしても張り込んだものだ、けっこう高いんですよ、この部屋」
「……」
「高木さんですか? 平気です、寝ているだけですよ。まあ、ぐっすり休んでもらおうと思いましたんで薬を打ってあります。とは言え、身体を揺さぶったりすればその限りじゃありませんがね」
「く、薬って……」
「毒物劇薬じゃありません。単なる睡眠導入剤ですね。佐藤さんにも打ったんですけども、あなたには起きてもらいました」

手で口を覆われた時、何か首にチクンとした痛みを感じたが、あれは睡眠薬か何かを注射されたらしい。
多分、高木も同じなのだろう。
その後、美和子は脚を拘束されたようだ。
大きく開脚されていて、このままでは腰を上げることも出来なかった。
しかも全裸である。
事前にセックスしていたのだから致し方ないが、ブラジャーもショーツも身に着けていなかった。

美和子は不自由な身体をすくめるようにして身構えた。
裸でこんな恥ずかしい格好にされているということは、またレスリーに辱められるのかも知れない。
どうせまた、口にするのも憚れるような恥辱的な責めをされるのだろう。
だから拘束してあるのだ。

「い、いやよ!」
「……まだ何をするとも言ってませんが」
「あなたのすることなんか想像がつくわ。こ、この卑劣漢、変態っ……!」

レスリーは指で頭を掻きながら答えた。

「随分な言われようですが、ま、否定はしません。あなたの想像通りのことをしてあげるわけですよ。……それ以上かも知れませんが」

レスリーはそう言うとにやりと笑った。
険のある微笑に、美和子は背筋が寒くなる。

「あなた、ここへはどうやって……」

美和子はそう問い質そうとしたが、途中でやめた。
この得体の知れない男は暗黒街と繋がりがあるらしい。
高木の尾行も数度に渡ってまいたらしいから、ホテルの部屋に侵入するくらい楽なものなのだろう。
いかにセキュリティのしっかりしている高級ホテルでも、それは変わらない。
もしかしたらこの男も、どこか別の部屋をとっているかも知れなかった。

レスリーは、美和子を見下ろしながらゆっくりとベッドの周囲を歩いた。
美和子はそのレスリーから片時も視線を外さない。

「……しかし、ふたりともゆっくりとお休みでしたね。薬を使わなくても良かったかも知れないな」
「……」
「まあ無理もありません。あれだけ組んずほぐれつしてセックスしてたんですから」
「……!」

それを聞いて美和子の顔が引き攣った。

「……見てたの?」
「ええ、まあ。しかし邪魔はしなかったつもりですがね」

美和子の顔がかあっと赤くなった。
警戒していなかった自分も悪いが、こんな男に恋人とのセックスを観察されていたと思うと、羞恥以上に怒りが湧いてくる。

「セックスは見ていても愉しいものですよ」
「何て下品なの! ……高木くん! 高木くん、起きて!」
「無駄ですよ。さっきも言いましたけど、怒鳴ったくらいじゃ目を覚ましません」
「こ、この……」

身体が動けばすぐにでも高木を揺り動かすつもりだったが、下半身が動かない。
それに、レスリーがやったのだろうが、高木はベッドの際ぎりぎりまで移動させられていて、美和子の位置から手を伸ばしても、とても届かなかった。
4人くらい寝られそうなベッドだけあって、横幅だけでも2メートルくらいありそうだ。

「それに、彼を起こしてしまっていいんですか?」
「……え?」
「僕はこれから、あなたが想像したようなことをしようとしてるんですよ。それを見られてもいいと?」
「……」
「どうせなら起こしましょうか? 身動き出来ない状態の彼に、あなたが僕に嬲られる様子を見せてあげましょうか」
「な……」
「そう言えば、あなたにはそういう趣味もあったんでしたっけね。嫌いな男に犯されたり、恥ずかしいシーンを見られると身体が燃えて仕方がないんでしょう? まして、それを恋人に見られたりしたら……」
「やめて……!」

美和子は耳を塞いで顔を振りたくった。
その様子を見ながら、レスリーは油断なく美和子の側に寄った。

「高木さんに見られたくないなら、おとなしくすることです」
「あっ……、何を!」

足首を掴まれると、美和子は反射的にその手を払った。
レスリーは少しも慌てず、自分の手を押さえる。
そして

「抵抗しますか。なら……」

と言いながら高木の方へ行くと、軽く頬を叩いた。
高木はむずかるように顔を動かした。
高木が小さく呻くと、美和子は息を飲んだ

「ひっ……!」
「ね? 彼に見られたくないでしょう? なら言うことを聞くんです」
「ひ、卑怯よ……!」
「卑怯じゃないと、こんな稼業やってられませんでね」

美和子はゴクリと息を飲んだ。

「稼業って、あなた……、いったい何者なの? 医者じゃなくて……」
「いやいや、ちゃんと医師資格を持って開業してますよ」
「じゃ……、じゃあいったい……」
「医院だけでなく副業もやってると、そう思っていただければ間違いありませんよ。その中身についてはまだ教えません。そうですね……、そのうちイヤでも知ることになるかも」

美和子は思わず身を引いた。
人の良い善良な医師だと思っていた男が、今では魔物に見える。
白い服を着ているのに、彼から出ているオーラは真っ黒に思えた。
男としては小柄なのに、言い知れぬ迫力もあった。
度胸の据わった犯罪者という雰囲気がある。
もしかすると、意外に大物なのかも知れなかった。
レスリーは高木の頬を軽く撫でてから、また美和子の方へ回っていく。

「……わかりましたか? では、おとなしくしてください」
「……」

レスリーは、美和子の足首に巻かれている黒革の拘束具を調整しているようだった。
チェーンの長さを伸ばして、美和子の脚が動くようにしているらしい。
チェーンが弛んだのを見て反撃に出ようとした美和子だったが、雁字搦めになっている高木を見て諦めた。
ここでレスリーを蹴り飛ばすことは可能だが、それでどうなるものではない。
彼にケガを負わせたり、運が良ければ一時的に失神させることくらい出来るかも知れないが確実ではない。
失敗すれば、彼は躊躇なく高木を覚醒させ、その上で美和子に淫らな行為をしてくるだろう。
その凄惨な光景を思い浮かべるだけで、美和子の気力が萎えていく。
レスリーは美和子の尻を軽く叩いて命じた。

「もう脚は動くでしょう? 膝を立てて四つん這いになりなさい」
「……」
「聞こえませんでしたか?」

やはり淫らなことをするつもりらしい。
わかっていても、高木を人質に取られている以上、美和子に選択肢はない。
悔しそうな表情を浮かべながらも、美和子はおずおずと膝を立て、手を突いて犬這いとなる。
両膝をくっつけて脚を密着させていたが、そんなことをレスリーが許すはずもない。
大きく開脚するよう医師に叱責されて、仕方なく膝を開いていく。
レスリーは美和子の後ろへ回り込み、じっくりと股間を眺めている。

「そう、それでいい。ん? はは、何か垂れ落ちてきましたよ。そうか、さっきの高木さんとのセックスでたっぷりと中に出して貰ったんですね。そう言えばあなたは中に出されるのが好きでしたしね」

薄笑いを浮かべて医師はそう言った。
美和子は反論を噛み殺し、屈辱に顔を染めて身を固くしている。
一刻も早く、この恥辱の時間が過ぎ去ることを願うばかりだ。
なのにレスリーはさらに美和子を辱めていく。

「今度は自分でお尻を開きなさい」
「……」

そんな恥知らずなことが出来るはずもない。
美和子は怒りに身を震わせながら、それでも姿勢は崩さすに耐えていたが、医師はまた高木の方へ寄っていった。
そしてその頬を軽く指で突きながら脅迫する。

「……起こされたいんですか?」
「ひっ……、わ、わかったからやめて!」

高木がむずかるように顔を顰めたのを見て、美和子は慌てて尻に手をやった。
自分の尻たぶに手を掛けると、柔らかい肉に指がめり込む。
ちらりとレスリーを振り返ったが、にやにや見ているだけで許してくれそうにない。
仕方なく美和子は指に力を入れた。

「く……」

身体をやや前傾にして、両手でじわじわと尻たぶを開いていく。
すうっと涼しい空気が尻肉の内側や谷間の底に流れ込んでくるのがたまらなかった。
羞恥で震える指が尻の谷間を割っている。

「いや……」

脅迫されているとはいえ、自ら排泄器官を晒してみせるという恥辱に、美和子は今にも泣きそうになる。
尻が大きく割られていくと、レスリーの視線が突き刺さってくる。
美和子の手が止まると、医師がすかさず叱責した。

「なぜやめるんです。早くしなさい」
「や、もう……、もう見えるでしょう、ああ……こ、これ以上いや……」
「いやなんですか?」
「ああ……」

いやとは言えない。
美和子は弱々しく頭を振りながら、さらに尻肉を開いていく。
もう谷間はすっかりなくなり、割れ目が痛くなるほどに開かれていた。
凝視していたレスリーが感心したような声を出す。

「相変わらず綺麗なアヌスですね。あれだけ責められたというのが信じられない。ふふ、香港ではそこを嬲られなかったんですか?」
「え……?」

なぜこの男が香港行きを知っていたのだろう。
美和子が不審に思う間もなく、男の指が肛門へ伸びる。

「い、いや! 触らないで!」
「……大声は出さない方がいいですよ。防音は完璧でしょうから外には漏れないだろうが、ヘタをすると高木さんが……」
「っ……!」

美和子の裸身がビクリと反応し、動きが止まる。
抵抗出来ないし、声も出せない状況だ。
それを見越したように、医師の指が美和子の肛門をまさぐってくる。

「ひっ、いやよ! お尻、しないでっ……!」

美和子は無音声で叫んだが、逃げはしなかった。
暴れて体勢を崩そうものなら、この男は容赦なく高木を叩き起こすだろう。
じっとしているしかない美和子のアヌスは堅く引き窄められ、男の指を拒絶している。
その反面、レスリーの指に粘膜が吸い付き、しっかりと愛撫を受け止めていた。

レスリーがじわじわと揉みほぐし始めると、美和子は声にならぬ悲鳴を上げて腰をわななかせた。
レスリーの巧みな愛撫によって、美和子のそこはたちまち緩み、とろけてくる。
美和子自身の鋭敏さもあって、ふっくらと盛り上がり、ウソのように柔らかくなってきた。

「や……、あっ……ゆ、指、いや……しないで……あっ……くうっ……」

ねちねちと指がアヌスをこね回し、撫で擦るたびに、美和子は悲鳴を噛み殺して呻いた。
中指と親指で揉み込み、指の腹で擦ってやると、背中が小さく震え、「あっ」と小さな声が漏れる。
美和子の口から漏れるのが、からあえやかな喘ぎに変わりつつあった。
それを見計らって、レスリーはおもむろに道具を取り出した。
美和子の顔の前にそれを突き出し、わざと見せつけている。

「な、なに……?」

美和子は唇をわななかせつつ、異物を凝視している。
白い棒状のものだ。長さは20センチくらいだろうか。
先端が細く、レスリーが手に持っている部分は太さ5センチ以上はある円錐形である。
おぞましいのは、それが渦を巻くようにスクリューになっていることだ。
レスリーが右手で根元を持ち、左手で先端を曲げているのを見ると、
ある程度の弾力性のあるもので作られているらしい。
ゴムか柔らかい樹脂のようだ。
何だかわからないが、どうせ淫らな責めに使うに決まっていた。
レスリーは散々見せつけてから、先端で美和子の身体をなぞっていく。
美和子は脅えを見せまいと、強気の表情で言った。

「な、何をする気なの? そ、そんなもので……」
「すぐわかりますよ。おっと、手は離さないで。しっかりとお尻を開いていなさい」
「く……、いや、こんな……」

そう言いながらも力を抜けず、美和子はレスリーに従っていた。
蔑むような笑みを浮かべながら、レスリーはその先端を美和子の肛門にあてがった。
やはりアヌスだ。
美和子が引き攣ったような悲鳴を上げた時には、ググッとめり込んできた。

「い、いやっ、お尻はいや! あ、ひっ!?」

美和子の背中がぐうっとたわまる。
足首が持ち上がり、足の指が屈まった。
必死に窄められた肛門を強引にこじ開けようと、レスリーは捻りを利用してねじ込むように挿入していく。
一気に入れようとはせず、回転させながら挿入する。
窄められているだけに、そこをスクリューに擦られていく感覚がたまらなかった。

「やっ、やめて! やっ、いやあっ、あ、んむっ……むうっ!」

尻を振って逃れようとしても、アヌスドリルは楽に入っていく。
肛門の襞や粘膜を内側からじわっとこじ開けて確実に奥へと進んでいる。
回転しながら捻り込まれ、アヌスが巻きこまれて拡張されていった。

「やっ、やあっ……やっ、裂けるわっ、お尻、裂けちゃうっ」
「裂けはしないと思いますよ。さほど痛くはないでしょう?」

確かに思ったよりは痛くない。しかしそのおぞましさと異物感はただ事ではなかった。
加えて、排泄器官を拡張されるという恐怖も追い打ちを掛けてくる。
力んでお尻を締めようとするとかえってねじ込まれる感覚が強調される。
かと言って緩めてしまうと、深くどこまでも入ってきそうだ。

「や、めて……ああ……し、しないで……ああ……」

美和子は顎を反らせたまま苦しげに呻いた。
とてもじっとしておられず、身体を震わせると乳房も連動してぶるんっと大きく揺れ動く。
肛門だけでなく腸管までが捻りに巻き込まれ、美和子の両脚が突っ張って痙攣した。
アナルドリルはもう半分以上が埋め込まれ、太さ3センチほどに肛門が拡張されている。
肛門へびっしりと埋め込まれ、美和子は苦しげに喘ぐ。

「あ、あう……もう許して、ああ……お尻はいや……もういやよ……あ……」
「本当にいやなんですかね。それにしちゃ声がとろけてきましたよ」

レスリーの嘲笑うような声も耳に入らず、美和子は肛門のきつさに呻いていた。
医師の手がゆっくりと動き、責め具を抉り込ませていく。

「やあっ……!」

思い切り肛門粘膜を擦られる感覚に、美和子は仰け反り、身体を跳ねさせる。
長い棒が美和子の豊満な臀部に埋め込まれ、ぬぷっ、ぬぷっと出し入れされていた。
挿入されると背中を丸めて「ひぃっ」と悲鳴を上げ、引き抜かれると逆にたわめて「ああっ」と喘いだ。
何度かそれを繰り返して美和子を翻弄すると、医師は呆気ないほどあっさりとそれを抜き取ってしまった。

「あっ……!」

引き抜かれると、美和子のは小さく声を漏らし、臀部がぶるっと震えた。
抜かれても、アヌスはまだ小さく口を開いており、白い尻は続きをせがむようにゆらゆらと揺れている。

「ふふ、はしたないですね、そんなに尻を振って。欲しいんですか?」
「だ……、誰がそんな……い、いやらしい!」
「あなたはそんないやらしい責めが大好きじゃないですか。いくら嫌がってもそのおいしそうな身体は、すっかり快楽を覚え込んでいるはずだ。拒否できないでしょう?」
「そんなこと……ないわ……」
「責めに抗って強がるのもあなたのいいところだが、その物欲しそうな顔は何です?」

美和子が悔しげに顔を背けると、レスリーはその黒髪を掴んで顔を上げさせる。
その顔へ、次に使う責め具を突き出して見せた。
美和子の美貌がさぁっと青ざめる。

「さあ、次はこれです。今度はお望み通りいかせてあげましょう」
「そ、そんなもので……」

美和子はそのおぞましい責め具に脅えたが、白い喉がゴクリと動いた。
今度のはさっきよりも細いのだが、ずっと長い。
握りの部分を除いても30センチはありそうだ。
しかも黒い棒状部分の周囲には無数の突起が生えている。
やはりゴム製のようで、レスリーが手を軽く振るだけで揺れ動いていた。
あんなものをお尻に入れられたら、と思うとゾクリと背筋が震える。

「や……い、いやっ……ああっ!!」

指で揉みほぐされ、ドリルで抉られ、すっかり柔らかくほぐれていた美和子の肛門は、実にあっさりと張型を飲み込まされていく。

「ううんっ……!」

一気に根元まで埋め込まれ、美和子はその深さに目が眩んだ。
ずぶずぶっと入り込んでくると、無数のイボが腸管やアヌスを思い切り擦り上げてくる。
たまらず美和子は腰を揺すり立てて悲鳴を上げた。

「あうんっ! やっ、深すぎるっ……あ、あ、動かさないで……あううっ」

レスリーは美和子の反応を見ながら肛門責め具を操り、同時に乳房に手を這わせる。
たぷたぷと揉み込むと、たちまち乳首がしこって硬くなった。
真っ黒な責め具が埋め込まれた真っ白い尻が、何とも言えず妖美だった。
張型が深々と突き刺さるとびくりと大きく震え、こねくられるとうねり出す尻肉を見ていると、レスリーの股間もがちがちに硬くなっていく。

「あああ、いや……やめて、もう……あうっ、深いっ……あ、ぐりぐりしないで……あ、あ……」

肛門へ淫らな責めを加えられていくうちに、美和子の声が甘くとろけてくる。
恥辱で噛みしめた唇が開いて艶を帯びた声で喘ぎ出す。
黒い棒の突起がアヌス粘膜と腸壁を擦ってくる。
その動きに合わせて乳房や乳首までこねくられた。

どんなに堪えても、過去の調教で覚え込まされた肛虐の快感が身体に染み渡っていく。
背筋が細かく震えだし、身体の奥が熱く痺れてきた。
ずぶっと貫かれ、ぬるっと引き抜かれて、イボが腸管や襞を抉るたびに、鋭い快感がツーンとこみ上げてくる。
肛門から発生した官能の火は腰の奥に刺さり、そこから媚肉にまで届いた。
膣奥から蜜が滲み出す頃になると、全身に火が回ったように燃え上がってきた。

「こ、こんな……だめよ、ああ……お、お尻でなんて……だめえ……」

美和子は熱い声で呻き、喘ぎ、尻を振っていた。
こんなことで感じてはいけない、浅ましいと思いつつも、巧みな責めで嬲られる肛門は敏感すぎるほどに反応してしまう。
開かされた股間からは、高木の精液だけでなく美和子の愛液まで滴ってきている。

「いやっ……あ、あう……た、たまんない……」

汚辱の責めをされるのが「たまらない」のか、それともこの快楽を堪えることはもう「たまらない」のか、美和子にもよくわからなかった。
ゴム棒の突起がアヌス深くまで抉り込まれるたびに、身体がかあっと白く灼けて気が狂いそうになる。
側で最愛の男が寝ていることすら忘れかけ、いやでも意識は責められる肛門へ集中してしまう。
イボが肛門を擦って粘膜を巻き込むように腸管深くまで潜り込む。
そして引き抜かれると腸襞がめくれ上がり、また埋め込まれてめくれ込んでいく。
同時に、硬くなった乳首をコリコリと転がされ根元を強く摘まれて快美感が増大し、美和子は甲高い喘ぎ声を放った。

「あ、あひっ! お、お尻っ……いっ、いい……あ、あ……たまんないっ」

とうとう美和子がよがり出した。
美和子はまだ自分で尻を割っている姿勢を崩していない。
むしろ責められ始めると、指が食い込むほどに力を込めて思い切り自分から割り開いている感じすらしてきた。

淫らに動いている黒い張型に責められ、うねうねと蠢いている豊満な臀部を見ているうちに、レスリーの肉棒は今にもファスナーを突き破りそうなほどに勃起してきた。
興奮してきたレスリーは、ここで美和子をいかせようと思い、乳房から手を離してアヌスへの責めに集中していく。

「あ、お尻、もういや……ああ、いいっ……くっ、いいっ!」

支離滅裂なことを口にしながら、美和子も燃え上がっていく。
細い指が食い込んだ白い尻肉は、指の跡がくっきりと浮かび上がっていた。
抽挿される速度が上がり、アヌスや腸管が擦られる感覚も強く鋭くなっていく。
女体はいっそうに灼け、狂おしいほどにうねり、ビクビクと跳ねた。

「あうう、いいっ……お尻がたまらないっ……ひぃっ……」

美和子は顔を仰け反らせ、汗の浮いた肢体をうねらせた。
グイグイと抉り込んでくる張型の動きが鋭敏なまで感じ取られ、官能に飲み込まれてしまう。
尻肉が強張り、責め込んでくるゴム棒を離すまいと襞を絡みつかせてくる。
暴れる尻が顔に当たるのも構わず、レスリーはうねる美和子の腰を抱え込み、さらに激しく責め具を操った。
汗まみれの白い肉が激しく反応し、ぶるぶると震えだした。

「ああっ……ああっ、も、もうっ……ひっ、ひっ……」
「お尻でいくと言いなさい」
「ああっ」

切羽詰まった喘ぎ声が噴き出し、美和子は背中を弓なりにして思い切り尻を突きだした。

「ああっ、もうだめっ……い、いく……」

美和子はぎりぎりと歯を食いしばり、凄絶かつ妖美な美貌を晒して大きく反り返った。

「いく、お尻で……お尻で、ああっ、お尻でいくっ……いやああっ!!」

美和子の裸身がぐぐっと引き攣った瞬間、レスリーは握りの部分まで思い切り突き刺した。

「ひぃっ!」

その衝撃に頭の芯まで白く灼き尽くされ、美和子は何度も大きく痙攣した。
痙攣したまま姿勢を強張らせていた美和子だったが、数秒後、がっくりと脱力してベッドに突っ伏した。
はあはあと荒く呼吸を繰り返し、倒れ込んだ身体はまだわなないている。
時々、思い出したように大きくぶるるっと震える女体が悩ましかった。
レスリーは勝ち誇ったように美和子の尻を撫でた。

「なんだかんだ言っても、結局はこうなるんですね」
「……」
「そんな顔で睨まなくてもいいですよ。僕は褒めてるんですから」
「うるさい……。こ、こんなこと……」
「ん?」
「こんなことして……、何のつもりなの……」

美和子はそう呟くと、どうにか身体を起こした。
まだ脚は拘束されたままだが、そのままぺたんと女座りになった。

「私に恥をかかせて……、こんなことが楽しいの?」
「そういうつもりではないんですがね。もう一度思い知らせてあげようと思いまして」
「思い知らせるって……」
「あなたが……、いいえ、この身体が誰のものかってことをね」
「……何ですって?」
「高木さんとしっぽり愉しんで忘れてしまったんじゃないかと思いましてね。この素晴らしい女体は誰のものなのか」

レスリーはそう言いながら尻を撫で、乳房を掴んだ。
美和子は反射的に身を捩ってその手を振り払う。

「誰のものでもないわ、私の身体は私のものよ。高木くんは……」

美和子は、まだ眠りこけている恋人の方をちらりと見る。

「高木くんは私を自由にしてもいい。でも私の身体は私の……」
「違いますね」
「……」
「あなたの身体は僕の……、いいえ僕たちのものだ」
「僕……たち、ですって?」

驚いたような美和子の声にかぶって別の男の声が響いた。



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