また聞こえる。
「待って……」
女性の声だ。
哀が止まり、コナンも止まった。
「服部!」
コナンを哀が並んで待っていると、そこに息を切らせながら女の子が走ってくる。
もしや蘭か和葉かと思ったが、何と聡子だった。
駆け戻ってきた平次が、鬼の形相になって聡子に詰め寄った。
「おまえら!」
握りしめた拳が震えている。
今にも殴りつけるか、襟首でも締め上げそうな勢いだ。
「和葉はどこや! 蘭はどないしたんや!?」
「待て、服部!」
「落ち着きなさいよ」
コナンと哀が色黒の少年を懸命に抑えている。
和葉の身を案じるのはわかるが、ここで聡子を殴っても仕方がない。
コナンたちを追ってきたのは、止めるためではないだろう。
「聡子……お姉ちゃん。聞かせてくれるよね?」
「ごめんなさい……、あたし、ひどいことを……」
「……とにかく訳を聞かせて」
むせび泣く聡子を、コナンと哀が宥めている。
しゃがんで泣いている女子高生の肩に手を掛けて慰める小学生の男の子と女の子と
いう図はかなりシュールだが、本人たちは真剣である。
平次が見下ろして聞いた。
「この島はいったいどうなっとるんや?」
顔を伏せ、しゃがんだままで島の少女は話し始めた。
「ここは……、神巫子島はね、隠れキリシタンの里なの」
「隠れ……キリシタン?」
キリスト教という異国の宗教は、14世紀には日本へも入ってきていた。
織田信長は彼らを利用しようとしたが、続く豊臣秀吉は驚異と見て排斥した。
さらに徳川時代となって以降、日本は鎖国政策を採り、キリスト教は禁教とされて
いる。
特に三代将軍家光の代になると、キリシタンへの弾圧と迫害は一層に強化された。
キリシタン禁止令である。
外国人宣教師でさえ、国外追放ならまだマシで、処刑されてしまうことも珍しく
なかった。
ましてキリシタンたちが捕らえられたら、それはイコール死を意味していた。
それでも真面目な彼らは、信仰を捨てることなど出来なかった。
戦国時代、堕落していた日本の伝統的宗教を目の当たりにしていただけに、最後に
縋るものとしての意味合いは決して小さくなかったのだ。
彼らを称して「隠れキリシタン」と呼ぶ。
厳しい幕府の取り締まりの目を逃れるため、彼らは各地へと散り、闇に潜んだ。
地方、僻地、そして離島などに逃げるより仕方がなかった。
だが、逃げ込んだ先の人間に受け入れられた訳でもない。
よそ者に対して見せる、あからさまな排他性。
彼らの正体を知ってからは偏見と侮蔑。
そして密告。
幕府は密告を奨励し、報酬すら与えた。
彼らは人里から離れ、さらに奥地へ行くしかなかった。
前人未踏の険しい土地を切り開き、やっと掴んだ安住の地。
「……それが、この神巫子なのよ」
「隠れキリシタン……」
「でも、それは江戸時代の話やろ? 徳川幕府が崩壊して明治になって、信教の
自由ってやつが……」
「もう後戻りが出来なかったのね、あたしたちは」
彼らの信ずる教えは、従来のカトリックとは似ても似つかぬ信仰へと大きな変貌を
遂げていたのである。
信教の自由が与えられた後も、カトリックへの復帰はしなかった。
またカトリックとしても、彼らの信仰はもはや別物と判断していただろう。
なぜこうした変貌を遂げていたのか。
それは土着信仰や仏教、果ては神道まで使って、幕府からの弾圧から逃れるための
カムフラージュとしたせいだろう。
「耶蘇教か」と問い詰められても、仏教だ、神道だと言って、その場を乗り切って
きたのだ。
言葉だけではごまかせないから、それに合うご神体や仏像なども作った。
そのまま長い時を過ごしてきたのだ。
従って彼らは、キリシタンではあったが、同時に檀徒であり氏子でもあったのだ。
「そうか、隠れキリシタンの島だったのか……。あ、じゃあ、あの神社も……」
「神社? あなたたち、納戸神社へ行ったのね……」
「そういう名やったんか。じゃあ、あん中にあったあれ、やっぱ十字架やったんやな」
「そう。ロザリオ」
聡子は俯いたままだったが、もう涙は止まっているようだ。
ちょうど目線になる哀が尋ねた。
「隠れキリシタンの里なのはわかったけど、それと今回の事件とどういう関係がある
の?」
小学生の女の子とは思えない理知的な口調だったが、聡子は気にも止めず素直に
答えた。
「昔は、「しのび」だとか「隠れ」だとか、あるいは「クロ」とか呼ばれていた。
自分たちもそう呼称していたそうよ。あたしや隆久は、その末裔なの」
「しかし……やな、もう聡子ちゃんたちは、隠れたり隠したりする必要はないわけ
やろ? 江戸時代やあるまいし、何を信じようと自由なはずや」
平次の言うのももっともで、カルト的な邪教展開を見せるような新興宗教でも、宗教
法人がとれてしまうのだ。
それを考えれば、聡子たちの宗教が迫害される理由はない。
「それはそうなんだけど……、もう手遅れなのよ。江戸の話は知らないけれど、有名
な島原の乱とか、いろいろあったでしょう? そう言った弾圧の歴史は、大っぴらに
抵抗できないだけに、内に籠もってしまうのよ。それに、明治に入ってからも、いい
え、大正、昭和になっても迫害はあったそうよ」
「政府がかいな」
「いいえ。もともとそこにいた住人たち。つまり普通の人たち」
「……」
地元民にとっては、彼らはよそ者に過ぎない。
加えて、彼らは迫害、弾圧の歴史があるから、迂闊に他人には近づかず、心を許さ
なかった。
密告されて手入れがあり、捕まり、拷問に掛けられ、自白をとられ、さらに手入れが
あり、挙げ句の果てに処刑されている。
そんなことが繰り返されれば、隠れキリシタンたち──神巫子の人々が、人間不信に
陥るのも無理はないだろう。
その結果、彼らはますます排他的となり、幕府の迫害が終わってからも、偽装した
神道や仏教、密教の要素は取り入れられ続け、結果として隠れキリシタン独自の信仰
要素のひとつとなっていた。
それらは各地に散ったグループ毎に異なっていて、同じ隠れキリシタン同士でも、
まったく色合いの異なるものも多数見受けられた。
キリストでもゼウスでもなく、自分たちだけの異神を崇拝する傾向がある。
「例えば十字架があるでしょう?」
「拝殿にあった黒いやつやな」
「そう。黒い十字架なんてカトリックにもプロテスタントにもないでしょう。そんな
もの、彼らが知ったら「邪教」だとか「冒涜的」だとか言うでしょうね。でも、あたし
たちの祖先が弾圧から逃れるために、これは十字架じゃないと言い張った。そのせい
なのよ、ああなったのは」
「……」
「さっき、あたしたちのことを「クロ」と呼ぶって言ったでしょ? あの意味って
十字架、つまりクロスから来ているのね。黒い十字架だからだって説もあるけど」
いずれにせよ、聡子たちのキリスト教はすっかり様相を変えてしまった。
十字架にせよ、聖水にせよ、元の意味は失われてしまっている。
敬う対象も、ゼウスやイエス、マリアではなく、いつしか歴代の司祭に変わって
しまっている。
「あたし……、御蔵の学校に行って、その歴史を学んだの。確かに隆久が言うことも
わかる。あたしたちは本土の人間たちに弾圧され、差別され続けてきた」
「……」
「でも、あたしたちの教えも、決して正しいものじゃないってこともわかったのよ。
だから……、だからあたしは反対だった。やめようって何度も隆久に言った」
黙って聞いていたコナンが聞いた。
「それで蘭たち……、蘭ねえちゃんたちはどこ?」
「あっ」
それを聞いて、聡子は思い出したように立ち上がった。
ケータイを見て顔が青ざめている。
「もうこんな時間……! 儀式が始まってるわ」
「儀式やと? その、例のお祭りちゅうやつか?」
「ええ、そう。でも御神輿担ぐようなお祭りじゃないのよ。おぞましい……、ええ、
とてもおぞましいサバトみたいなものよ」
「それに蘭や和葉が連れて行かれたのね?」
哀は蘭たちを呼び捨てにしていたが、事情を知っているコナンはもとより、聡子も
気には止めなかった。
聡子は、しゃべっているのが灰原哀ではなく、シェリーの外見だった方が納得した
かも知れない。
小学生とは思えなかったのだ。
「生け贄にされちゃう……! 急がないと」
「生け贄やと!? どういうこっちゃ!」
「急ぎましょう! 蘭ちゃん、和葉ちゃん、無事でいて!」
「どこや!? ふたりはどこに……」
「下島よ!」
平次の問いに答えるよりも早く、聡子は駆け出した。
急ぎ救出したいということもあるだろうが、とても彼女の口からは説明が出来ない
ということあったろう。
平次は聡子を抜き去って先頭を走っている。
「おっと」
正面に大きな障害物がある。
木で組み上げた櫓である。
遠見台だ。
昼間は遠くから見ただけで、間近で見るのは初めてだ。
平次はそれに手を掛けて一息ついた。
さすがにコナンも肩で息をしている。
聡子と哀が追いついてくるのを待って、平次がまた走ろうとする。
「よし、もう少しやで」
「待って、あれ……」
「何だ?」
哀が遠見台をペンライトで照らした。
正確には上にある櫓だ。
「何や? 急ぐで」
「ここって携帯電話が通じないんでしょ? あれってアンテナじゃないの?」
「……」
近くで見ると、確かにそう見える。
月明かりのお陰でよく見えた。
遠くからでは枝に見えたそれが、人工的なものだとわかる。
昼間、コナンが指摘したことは正しかったようだ。
平次は自分のケータイを取り出して首をかしげた。
「ほな、何で通じんのや。アンテナの電源、切れとんのとちゃうか?」
「電波妨害……してるの」
聡子がぼそっとつぶやいた。
「電波妨害? あ、あれか!? 「圏外くん」とかいう……」
正確には「携帯電話等の通信機能抑止装置」という。
携帯電話が使用する周波数帯と同じ電波を発信することで、携帯電話を使えなくする
装置だ。
これが使われると、その圏内にある通信機──携帯電話はすべて「圏外」状態となり、
発信、着信ともに使用不能となる。
個人用の「圏外くん」が有名だが、業務用──劇場や病院などで使用するものもある。
当然、電波範囲も個人用に比べて比較にならないほど広い。
要するに、携帯電話に対するジャミング攻撃のようなものだ。
当然、こういった通信装置を使用する場合は免許も許可も必要となる。
「くそっ、そういうことかいな」
「ね、聡子おねえちゃん。それは解除できるの?」
コナンが尋ねると、聡子は「うん」と頷いた。
「櫓に登ってどうにかすれば出来るはず……。あたしはよくわからないけど、隆久は
10分くらいでやってたから」
「服部、任せたぜ」
「な、俺か? 俺は早う下島へ行って和葉のやつを……」
「おまえしかいないんだよ。今の俺じゃ、ここを登るだけでも一苦労だ。登れたと
しても、装置に手が届くかどうかわからないしな。灰原だってそうだ」
「そ、そりゃそうやろけど……」
「聡子には島まで案内してもらう。おまえはその装置を解除して、すぐに警察に連絡
を取るんだ。それから追いかけて来い」
コナンも懸命なのだろう。
聡子に「おねえちゃん」をつけず呼び捨てで言っているが、そんなことを気にして
いる場合ではない。
哀も賛成のようで、平次を見つめている、
僅かの逡巡の後、平次は大きく頷いた。
どうも、それしかなさそうだ。
コナンからペンライトを受け取ると、力強く言った。
「よっしゃ、わかった。ほな、俺があの装置を何とかしたる。すぐ済ませて追い
かけるさかい、そっちで待っとれや!」
「頼んだぜ。じゃ、行こう!」
コナンはそう叫ぶと、聡子を促すようにして先を急いだ。
────────────────
和葉が無惨に犯されていた小屋と小道を挟んで同じような小屋があった。
作りはほとんど同じで、合掌造りのワンルームである。
ログハウスのようながっちりした作りではなく、厚めの板を適当に打ち合わせて建てた
ような雑な建築だった。
雨露は凌げそうだが、台風でも来たらたちまちつぶれてしまいそうだ。
それでも、この小道の切り通しのようになっていて、両側には崖があるから、うまく
風雨を避けるようになっているようだ。
毛利蘭と神出隆久はそこにいた。
蘭は小さな樽の上に腰のやや上をちょんと乗せる格好で寝かされていた。
蘭の肌を傷つけない配慮からか、樽の上には毛布がかかっている。
もちろん、それだけでは狭い樽の上に蘭の全身を安定して乗せることは出来ない。
四肢が四方に引っ張られているのだ。
手首と足首に巻き付けられたロープが、小屋の四隅に吊ってある棚の脚に縛り付けら
れているのだ。
けっこう頑丈そうな棚で、大の男が両手で力一杯引っ張れば崩壊するだろうが、片手
で引っ張った程度ではどうにもなりそうにない。
そこに白い裸身を長々と引き延ばされていたのである。
隆久は、酒を飲まなかった蘭に少し多めにクスリを盛ったので、このまま全然目が
覚めない、あるいは副作用が出てしまうことを心配していた。
このまま犯したのでは屍姦のようなものだ。
隆久にその趣味はなかった。
彼は、米花で聡子に見抜かれていた通り、蘭に惚れていた。
儀式で差し出すのは致し方ないにしても、せっかくのこの機会、存分の嬲るつもり
だった。
場合によっては、儀式が終了する約一年後に蘭を貰い受け、嫁にしたいとすら思っ
ていた。
掟でそんなことが許されるはずもなかったが、来年は隆久も御巫主(おみぬし)だ。
多少の無理も利くかも知れない。
そんなことを思いながら、震える手で蘭の衣服を剥いでいった。
聡子の顔が浮かんだが、蘭を素っ裸にする頃には、欲望がそれを駆逐していた。
部屋の中心に、毛利蘭の見事に美しい、光り輝くようなX字型の裸身があった。
「光り輝くような」というのも決して比喩ではなく、月の光を受けて、蘭の白い素肌が
浮き上がるように輝いていたのだ。
手首と足首に巻かれた綿のロープ以外は、身体につけているものは何ひとつない。
全裸の白い肌に赤いロープが、何とも言えずエロティックな雰囲気を醸し出している。
黒いロングヘアは床に届き、大きく広げられた股間も妖しい茂みを恥丘に惜しみなく
さらけ出していた。
媚肉の割れ目は、まだすっと筋が入っているだけだ。
固く閉じ合わされた花弁が、いかにも処女らしい初々しさを漂わせている。
いつまでも見ていたい感慨に囚われていた隆久だったが、軽く頭を振ってその思いを
振り切った。
そう時間はないのだ。
儀式は今夜半に執り行われる。
そうなれば蘭も和葉も神聖な存在となり、まだ御水中(おみずなか)である彼らに
は、とうてい手が届かない。
やるなら今しかないのだ。
これからすることは、彼らに認められている「権利」ではあるが、時間に遅れるような
ことはあってはならない。
隆久は蘭の顔を軽くぽんと叩いた。
「ん……」
少し顔を歪めて蘭がむずかった。
隆久はホッとした。
この分ならすぐに意識は戻るだろう。
なおも手の甲を使って、少女の頬を優しく叩く。
「ん……あ……。あ、神出君……。あ!?」
蘭は身体が動かないことに気づき、続けて万歳の格好になっていることにも気がついた。
腕も脚も引っ張られていて動かない。
まだ靄のかかる意識を呼び覚まし、慌てて辺りを見回した。
裸にされ、手足を固定されていることはすぐにわかった。
かつて、こうした目に何度か遭っているからだ。
「か、神出君っ、これはどういう……」
そこまで言って、聡明な少女は絶望した。
この青年も同じなのだ。
過去の事件の犯人どものように、蘭の瑞々しい肉体に淫らな興味と良からぬ欲望を
抱き、自分のものにしようとしているに違いない。
その様子を見て、隆久は頷いた。
「……ふうん、状況は正確に把握してるみたいだね。なかなか頭が良い。初めて見た
時もそう思ったけどね。あの和葉って子よりは賢そうだ」
「そうだ、和葉ちゃん! 和葉ちゃんは……」
「心配しなくても、今頃あんたと同じ目に遭ってると思うよ」
やはりそうだった。
もしかするとこの連中は、最初から蘭と和葉を狙っていたのではないだろうか。
だが、そうだとすると聡子の存在がわからない。
彼らがこの島の住人あるいは関係者であることは間違いなさそうだが、黒の組織や
パレットのような秘密結社や犯罪組織の一員にはとても見えなかった。
とはいえ、単に蘭たちの身体目的であれば、何もこんな大がかりにすることないだろう
し、そもそも聡子がメンバーに混じっている理由もない。
想像がつかなかった。
「ひゃっ……!」
ゾクッと寒気が走った。
唐突に男の手が伸びてきたのだ。
すらりとした蘭の素足を撫でている。
悪寒で鳥肌が立った。
「やめてよ、触らないで!」
嫌がる蘭を無視して、隆久は肌を撫でていた。
その表情はほとんど恍惚としている。
どうしたらこんなに白くふっくらとした肌になるのだろうか。
透き通るほどに白く、陶器のようにすべすべした肌理の細かい肌だった。
化粧っ気がほとんどなく、軽く化粧水を塗ったくらいだろう。
なのに、顔と言わず腕と言わず、どこもかしこもファンデーションを使ったかのように
白かった。
白いだけでなく皮膚自体が薄いのか、血色の良さが淡いピンク色となって浮き出ていた。
もちろんスタイルも見事なほどに均整がとれている。
美しく張りのある若い乳房が目に入る。
ブラウスの上から想像していたのより、はるかに立派なサイズである。
むっちりと重量感があり、それでいてとろけるほどに柔らかそうだ。
横たわっているのにあまり扁平になっていないところを見ると、肌の張りはもちろん
肉もたっぷり詰まっていそうだ。
細くて長い手足と、きゅっとくびれたウェストや足首と対照的に、腰も胸も豊満に
張り詰めている。
いくら見ても見飽きない素晴らしいヌードだった。
「何をされるか、わかってるだろうね」
「……」
レイプされるに決まっている。
もう蘭は処女ではない。
一連のパレット事件で何度となく嬲られ、その女体は若いに似ず、ほとんど開発され
てしまっていた。
挙げ句「治療」と称して、心療医師のレスリーに犯され続けている。
蘭は今、そのレスリーの治療のことを考えていた。
最後に治療を受けてから、もう二週間ほど経っている。
彼女は、少なくとも二週間に一度、多いときは週に二度ほど通院している。
実はレスリーがレイプしているなどとは夢にも思っていない蘭だったが、医師の行為
のお陰で、疼く肉体を何とか押さえ込んでいる。
それがもう二週間ないのだ。
島から帰ってから行く予定ではあったが、この場で耐えきれるか不安になっていた。
無論、隆久に犯されることを望んでいるわけではない。
だがそれは理性や羞恥心といった上での話で、彼女の本能や肉体が堪えられるかどうか
は別の問題だ。
蘭はそれを危惧していた。
またこの身体を穢される、蝕まれるのは耐え難かった。
その上で、男の責めに屈服してしまう屈辱と恥辱は二度と味わいたくない。
そのたびに蘭の「女」の部分が踏みにじられる気がするのだ。
治療を受けて以来、耐えうる自信がついてきた。
その自信が今、揺らいでいる。
「ま、あんたの想像した通りのことをされるってわけだ。せいぜい覚悟して……」
「どうして……」
「ん?」
「どうしてこんなことを……。聡子ちゃんがいるのに」
「黙れ!」
「……」
一瞬、激昂した隆久が叫んだ。
「聡子のことは言うな。どうせ親同士が決めた話だ」
「じゃあ聡子ちゃんのことは何とも思ってないというの?」
「……黙れと言ったはずだ」
隆久は出来るだけ冷酷な表情と声でそう言った。
その様子に圧されたのか、黙り込んだ蘭を見て、隆久は頷いた。
「それでいい。あまり余計なことは言うな。そうすればあんたも和葉の方も、怪我
しないで済む」
そう言われて蘭はハッとした。
そうだ和葉もいるのだ。
同じ目に遭っているはずだと隆久は言っていた。
「そうだ和葉ちゃん! 和葉ちゃんはどこ!? コナン君たちは……」
「だから言ったろう、和葉の方は近くにはいるよ。あの平次ってやつとガキどもは
まだ上島だ」
「上島? 他の島って……、じゃあここはどこなの!?」
「余計な詮索はするなと言ったはずだ。その方が長生きできるぜ。まあ、あんたと
和葉は事情があって、少なくとも一年くらいは生かされるだろうけど、平次やガキ
は……」
隆久は意味ありげに言葉を濁した。
その裏では、蘭がおとなしくしなければ彼らの命は保証できないと言っているのが
わかる。
どうせ何度も穢された身である。
蘭が犠牲になれば済むのであれば、それもよかった。
だが和葉は別だ。
蘭と違ってヴァージンかも知れない。
平次との関係は極めてプラトニックだったから、恐らくはそうだろう。
蘭もそうだが、和葉も行動的ではあるが男遊びをするタイプなどでない。
蘭は青くなって言った。
「和葉ちゃんはやめて! 何もしないで!」
「ん? んなこといっても無理だけど……。何でだ? 自分はよくでも和葉はダメ
なのかい?」
「あ、あたしだって嫌よ! 嫌だけど……、でも、和葉ちゃんにはしないで」
隆久は腕を組んで首をひねった。
「それがわからん。他人はどうでもいいから自分だけは助けてっていうのが普通だろ?
偽善か? それとも和葉とそんなに仲がいいのか?」
それもある。
もともと正義感の強い少女だから、友達の和葉が毒牙にかかるのは防ぎたい。
「それともあれか? あっちは処女だが、あんたはもう……」
「!」
図星だった。
それが顔色に出たのか、隆久は失望を隠さずに言った。
「何だよ、そうなのか? 俺、和葉じゃなくてあんたの方が処女だと思ってたのによ」
処女性重視、女性蔑視の発言に怒りを覚えた蘭だったが、それ以上に和葉の身の上が
心配だった。
「そ、そんなことどうでもいいでしょ。いいから和葉ちゃんは解放して」
「だから言ったろう、そうはいかんて。あっちはあっちで、今頃は和弘のやつが……」
「やめて!」
蘭は両手で耳をふさぎたくなる。
自分の身が可愛くないとは言わないが、何としても和葉だけは守りたいと思った。
自分の身に起きた不幸な事件を思い起こすと、彼女にあんな目には遭ってもらいたく
ない。
穢れた自分の身を差し出すことでそれが防げるのであれば、そうしてもいい。
「あ、あたしはもう……ど、どうなってもいいから……、和葉ちゃんは……」
「ダメ」
隆久は冷たくあっさりとそう言ってのけた。
「処女じゃなかったのは残念だけど、まあいいや。俺はあんたみたいなのが好みの
タイプなんだよ」
「ふざけないでよ! 誰があんたなんかに!」
「勇ましいけど、そんな格好じゃ迫力ないぜ」
「だったら早く解いてよ!」
「そうはいかんさ。確か空手少女なんだろ? 自由にしたらたちまち俺なんか伸され
ちゃうよ」
「当たり前よ! ぶっ飛ばしてやるから、さっさと解きなさいって、あ、いやあっ!」
蘭の言葉を聞き流しながら、隆久は彼女の首筋をひと舐めした。
白い肌を見ているうちに、どうしても舐めたくなってきたのである。
「きっ、気持ち悪い! やめて、汚いわね!」
男はなおも肌に舌を這わせている。
一心不乱といってもよかった。
喉、首筋を、それこそ犬のようにペロペロと舐めている。
「あっ、く……、やめてって、あっ……きっ、もち悪いって言って、きゃっ!」
懸命に身体を揺さぶる蘭だが、縛られていてどうにもならない。
肘や膝は少し曲がるくらいの余裕はある。
雁字搦めというほどにかっちり縛られているわけではないが、自在に動ける状況とは
ほど遠い。
それをいいことに、隆久の舌は傍若無人に蘭の肌を犯していく。
「い、やっ……くっ、くく……」
くすぐったさと気味悪いさが一緒になって襲ってくる。
顔や喉は気持ち悪いだけでどうということはなかったが、首筋や肩などを舐められる
と、蘭の全身にぞわりとするような悪寒──戦慄が走った。
生暖かくて柔らかい、まるで得体の知れぬ軟体生物のような感触が気持ち悪い。
隆久は大きな舌をいっぱいに使って舐め込んできている。
蘭の様子を見ながら、蘭が反応するところばかり集中して舌を使っていた。
男がべろりとひと舐めするごとに、蘭は微かな呻き声を漏らし、身体をぐっと踏ん
張った。
「くっ! ……あっ……くく……くううっ!」
身体に鳥肌を立て、ギクッと反応するのが面白いのか、隆久はいっそうにしつこく
舌を使った。
そうすることで蘭の性感帯を探ろうとしているかのようだ。
感じるたびにぶるっと震えている乳房に目が行ったが、その前に責めたいところが
あった。
腋である。
両手を万歳で引き延ばされているために、そこはすっかり剥き出しになっていたのだ。
きちんとむだ毛処理してあり、青いほどに白いその窪みに、何とも言えぬ色気を感じ
たのである。
「どっ、どこを、きゃあっ……そこいや、く、くすぐった、ひぃっ!」
手でくすぐるのとはまったく異なるこそばゆさと妖しい感覚が突き抜ける。
そこを繰り返し舐めるうちに、蘭の反応が微妙に変化してきていた。
「あ、ああっ……やっ……どうしてそこばっか……ひっ……あああっ……!」
くすぐったいのは確かだが、それだけではなかった。
微かに、だが確実に官能的な感覚がある。
若いのに熟女並の経験をさせられている蘭には、それが紛れもない快感であることが
理解できた。
「やっ、はっ……くくく……いやあっ……くううっ!」
忘れていた快感を掘り起こされ、明らかに官能の悦びがわき起こっている。
その証拠に、股間の奥、胎内深いところからジンジンと痺れるような流れが上って
きているのだ。
くすぐったさが性的快感につながっていくことは、日本でミシェルに誘拐され、身体
を使われた淫らな実験で、蘭も知っていた。
だからこそ、腋への責めを嫌がっていたのだが、嫌がることが余計に男の欲望を昂じ
させていくことを、蘭は失念していた。
「んむっ! ひっ……うっ、く……むむっ……ああ!」
くすぐったさに悶える状態は過ぎ去っていたようだ。
蘭は、隆久の舌が腋の窪みを舐めあげるたびに、はっきりとした快感を得ていたの
である。
唾液をたっぷり乗せた舌が、ぺろりとなめらかに腋を這うと、身体の芯にずーんと
痺れるような電流が走る。
子宮までがきゅんと痺れるような感じがする。
ようやく隆久が顔を上げた。
「ふう。その悦びようだと、よっぽど腋を舐められるのが好きみたいだな」
「そ、そんなことあるわけないでしょ! 不潔なだけよ、もうやめて」
感じていることを覚られまいと、蘭は強い口調で言い放った。
隆久は肩をすくめて言い返した。
「とてもそうは見えなかったけどな。ま、いい。じゃあ今度はこっちだ」
顔が胸を覆うと、すぐに乳首が吸われた。
腋責めで感じ始めていた蘭のそこは、柔らかく遠慮がちに膨らんでいたのはウソの
ように、ぷくりと硬そうに勃起していた。
そこを吸われると、腋を責められた時に酷似した快感が蘭を襲った。
舌で舐められ、唇のしゃぶられ、歯で軽く囓られると、膣奥にビンビンと響いて
くる。
否定のしようもない甘美な快感だった。
「あはっ……やっ……し、しないで、ああっ……あうっ……」
動かない全身を動かそうと、両手両足を引き絞るように力を込める。
かと思うと、全身を突っ張らせるようにして身悶えた。
例えようもないほどの鮮烈な快感に抗う術もなく、美少女は呻き続けた。
「やっは……も、もうやめて……ああ……あっ……くうあっ……!」
蘭はもう汗びっしょりだった。
感じているのを必死に我慢して、体力をかなり消耗しているらしい。
感じているなら素直に体現した方が疲労度は少ない。
無理に我慢する方がずっとくたびれるのである。
白い肌が全身にわたって仄かな桃色に染まってきた頃、隆久の舌は乳房から脇腹、
ヘソへまで進出していた。
蘭はもう息絶え絶えで官能に耐えていた。
隆久はふと思いついて腕時計を見た。
思いの外、時間を食ってしまった。
蘭の魅力的な肢体を見て、それに溺れかけていたのだ。
軽く舌打ちをしていったん離れた。
本当はこのまま太腿からふくらはぎ、足の裏、足の指まで舐めたかったほどだ。
上半身だけでこの状態なのだ。
下半身まで責めたら、蘭はもうそれだけで屈服するのではないかと思っていた。
だが、もうその時間はないようだ。
下半身や媚肉、背中は後の楽しみにとっておいて、取り敢えずメインディッシュを
片付ける必要がある。
「だいぶまいったようだね、蘭」
「はあ……はあ……はあ……。じょ、冗談じゃないわ……。気色悪かっただけよ……」
「それじゃあもっとしてやろうか。オマンコも足の裏もたっぷりと……」
「いや! もう、しないで……。くたくたなんだから……」
「へえ、そうかい。感じすぎて疲れたってか?」
「だ、だから違うって言ってるでしょ」
否定する蘭の言葉にも力はなかった。
あからさまに喘いだりよがったりはしていないと思うが、感じてしまったことはバレ
ているに違いないのだ。
それに、快感を堪えすぎて疲れているのは事実なのだ。
「そうか。そんなに疲れてるなら、これはもうやめようか」
「……」
ホッとした蘭の表情を見ながら、隆久はにやりと笑った。
「いよいよ本番ってわけだ」
「ほ、本番って……」
セックスされる、犯されるということのようだ。
覚悟はしていたが、もしかしたらさっきまでの舐め責めだけで終わるのではないかと
ちらりと思ってもいた。
甘かった予測は最悪の形で裏切られることとなった。
「いや! それだけはいやよ!」
「じゃあ舐めるぜ」
「そ、それもいや!」
隆久は面白がって、困ったように両手を広げた。
「あれもいや、これもいや、じゃねえ。困った我が儘娘だな」
「当たり前じゃないのよ! どうしてあんたなんかに、その、されなきゃならない
の!」
「かわい子ぶるなよ。どうせもうヴァージンじゃないくせに。もしかしてヤリマン
だったりしてな」
「何ですって……!」
そうでなくとも憤激していた蘭の怒りがさらにこみ上げてくる。
「そうなんだろ? だって、そんだけ可愛い顔してスタイルも良くってよ、それで
男がいないなんて考えられるか、普通? 男漁りする方がよくって、特定の男作ら
ないんだろが」
この男そのものの下品な思考に、少女は呆れるより前に激怒した。
「失礼なこと言わないでよ! バカにするものいい加減に……」
「うるせ」
「……」
男はゆらりと歩き出し、蘭の股間に目を向けた。
欲情している顔を隠そうともせず、少女の慎ましやかな秘所を見ている。
「どうでもいいよ、そんなことは。要は、俺はおまえを犯れればいいんだ」
「ふざけないで! いやよ!」
「ふざけちゃいないさ。だが、まだそんな口を利くなら……」
「やっ……きゃああ!」
隆久は蘭の股間を舐め始めた。
それまでの舐め責めで、肉体は快楽に沈みつつあった。
そこに、敏感なクリトリスを中心に媚肉をクンニしてきたのだから、たまらなかった。
「ああ……もう……いや……あっ……」
素っ裸に剥いた時は、まだ慎ましやかに閉じていた花弁は、今や熟れきった年増女の
ようにすっかり弾けていた。
割れ目が見事に赤く裂け、薄鮭色の肉襞と膣穴を大きくさらけ出していた。
当然のように、そこはしっとりと濡れ──いや、そんな生やさしいものではなく、
ねっとりと粘液にまみれていた。
隆久の唾液よりも、蘭の愛液の方が圧倒的に多かった。
「へへへ、すげえじゃねえか、え、蘭ちゃんよ。この音が聞こえるか?」
「いや、いやっ……ひっ……」
隆久は蘭の膣に指を突っ込んでいたが、わざと淫らな水音を立てるようにかき回して
いる。
ぴちぴち、ねちょねちょと、聞くに堪えない肉と粘液のまみれる音を聞かされ、蘭は
半泣きとなっていた。
気丈夫なだけに、自分の情けない状態を見られるのが、何よりも悔しく、堪える。
「やっ、やめて! 恥ずかしい……」
「恥ずかしいかい? この分じゃ、マジで男好きのセックスマニアだったのかな、
蘭ちゃんは。人は見かけによらないねえ」
「違う……違うっ……!」
隆久は、唇を蘭の媚肉にあてがうと蜜を啜り、熱くとろけていた割れ目の内側にまで
舌を侵入させていく。
「ひいっ! あううっ……やはっ……やめてぇっ……!」
衝撃的なまでの快感だった。
舌でクリトリスを舐めあげられると、官能が脳天にまで突き上げてくる。
思わず背筋をびーんと反り返らせて、裸身を弓なりにする。
そんな蘭の反応に気をよくして、隆久はなおも少女の膣を貪るように舐めていく。
「やっ、やはあっ……し、しないで、ああっ……は、恥ずかし、いいっ……!」
男の舌がもたらす快感も強かったが、それ以上に、隆久などにそんなところを舐め
られるという羞恥と屈辱が先に立つ。
しかし、蘭のマゾ体質が、それすらも快楽として受け取っていく。
羞恥心と恥辱感よりも、背筋を貫く快感が圧倒してくる。
いつしかそれが逆転し、情欲が聡明な少女の脳裏を占めていく。
そこでようやく隆久は口を離した。
そして己の分身を手で持ち、誇らしげに揺すってみせた。
「どうだい、蘭ちゃん。そろそろ、こいつが欲しいだろう?」
「……!」
隆久のペニスを目にした蘭は、慌てて目を逸らせた。
「だ、誰が、そんなもの……」
そう言いながらも、蘭はそれが見たくてたまらなくなっていた。
逸らせていた顔が徐々に隆久の方へ向き、閉じていた目が薄く開かれる。
その目に映った隆久の性器は、例えようもなくたくましく思えてきてしまう。
もの自体は大したことはなかった。
以前、蘭の身体を蹂躙した牧田やミシェルたちに比べるべくもないし、レスリーの
ものよりもまだサイズは小さいだろう。
しかし今は、それとは関係なかった。
その硬そうなもので、燃え盛っている肉体を鎮めて欲しかった。抉って欲しかった。
(そ、そんなこと……、いけないわ。ああ、あたし……、し、新一、あたし、どう
すれば……)
「覚悟が決まったようだな。それとも、もう欲しくて仕方がないのかな?」
「……」
「いいな?」
「あ……」
隆久は、細かく震えている蘭の膣に肉棒を押し当てると、完全に受け入れ体勢になって
いたそこに沈め込んでいく。
「んんっ……あ……だ、だめっ……」
硬いペニスがほころびた肉襞を押し開き、肉壺をいっぱいに拡げていく。
徐々に奥へと侵入してくるたびに、突き抜けるような官能の悦楽が胎内いっぱいに
広がり、子宮にまで届いてくる。
「あ、いや……」
「いや、じゃないだろう。いいんだろう?」
危なくうなずきそうになるところを、持ち前の強気と理性で何とか堪えた。
それでも、隆久に犯される屈辱と怒り、そして羞恥と快感がない交ぜとなった妖し
い感覚に飲み込まれていくのを、どうすることも出来ない。
(やっ……は、入って……くる……ああ、いや……また、こんな……)
蘭の脳裏に、過去の凌辱劇がフラッシュバックする。
欲しくて欲しくて濡れ切った媚肉に、隆々としたたくましい男根を挿入されるその
充実感。
どの男も喜々として蘭に跨ってきた。
そして蘭はそれを受け入れた。
どうしてこうなのだろう。
なぜ自分は、愛する人と結ばれず、暴力的に身体を奪われてばかりいるのだろう。
そして、その結果、肉体的に満足してしまうのはなぜだろう。
セックスとは精神的なものではない、肉体的なものだ。
そう言っていたのはミシェルだったか。
犯されるたびに蘭は、その言葉を思い出していた。
「あ……あああっ……!」
潤み、濡れそぼっていた蘭の膣は、待ちかねていたかのように隆久の肉棒を飲み込んだ。
ウソのようにすんなりと挿入されていく。
二週間ぶりに味わうペニスに、蘭は身体を突っ張らせてその快感に耐えていた。
隆久はわざと失望したかのように言った。
「なんだ、やっぱり処女じゃなかったのかよ」
「……」
「あーあ、失敗した。和葉の方はどうだったのかな、処女だったのかなあ」
「か、和葉ちゃん! 和葉ちゃんは……」
「さっき言ったろが。和弘がやってるよ、今頃。和葉は、あの平次ってのが「男」なん
だろ? どうせ処女じゃないと思ってたのになあ」
「やめて! 和葉ちゃんは……和葉ちゃんはまだ……」
「あ、やっぱ処女だったのか」
「……」
蘭にも確信はなかった。
が、少なくとも平次とはまだ結ばれていないはずだ。
自分たちも他人のことは言えないが、あのカップルは奥手で意地っ張り同士だから、
まだ打ち明けあってもいないだろう。
周囲がそれを好意的に解釈し、半ば公認の仲としているだけのことなのだ。
だから和葉は恐らく処女だ。
自分のように、凌辱でもされてさえいなければ。
だが、それも今日までのようだ。
蘭は和葉のために涙を流した。
「まだ泣くのは早いよ。これから泣いてよがるんだからな」
「く……」
下衆の台詞はいつも一緒だ。
こんな男に堕とされるのはいやだ。
そう決意する蘭の思いもいつも一緒だが、最後まで保ったことはなかった。
開発され、女にされた自分の身体が恨めしかった。
「あうっ!」
全部埋め込まれ、蘭は思わず呻いた。
隆久の腰が密着すると、押し込まれた肉棒がゆっくりと引き戻され、また押し込まれ
ていく。
エラの張ったカリが膣内を抉る感覚がたまらなかった。
(な、中で硬いのが反り返ってるっ……だ、だめっ、感じちゃ……だめ……)
隆久が感極まったようにつぶやいた。
「いい具合じゃないの、あんたのオマンコ。使い込んでるようには見えないくらい
綺麗だったけど、中は最高だよ。襞が俺のものに絡んで、奥まで余裕で飲み込んでるぜ」
「いっ、いやらしいこと、言わないでっ……やあっ……ぬ、抜いてっ……くっ、抜き
なさいよっ……ああっ……」
「やめて」「抜いて」と言いながらも、蘭の媚肉は、たっぷりと蜜を滴らせ、男の
肉棒にねっとりと絡みつき、ピストンをサポートしている。
軽く腰を使って蘭の内部を突き込むと、粘液にまみれた肉棒と媚肉が擦れあっていた。
その時たてる水音は、いやでも蘭の耳にまで届いた。
レイプされているのがウソのように、美少女のそこは滴るほどの蜜を滾らせている。
ペニスで拡げられた膣は、抜き差しされるごとに襞がめくれあがっていた。
「すげえ濡れ方だな、蘭ちゃんよ。やっぱ好きなんだな、犯されるのが」
「ば、ばかっ、そんなわけ、あっ……ないっ……もうしないで、ああっ……」
「気持ちいいくせに」
「違うっ……あ、動いちゃだめえっ……ひっ……」
隆久がたくましい腿をしっかり抱えたまま、ぐいぐいと突き上げてやると、蘭の膣に
締め付けが際立ってくる。
なおも何回も突き続けると、男女の性器の結合部から、粘った愛液がしぶき飛んだ。
「こりゃ驚きだ。可愛い顔して潮まで吹くのか、あんた」
「ちっ、違う、それは……あ、あうっ……」
「喘ぎながら否定すんなよ、説得力ゼロだぜ」
口だけが隆久を否定し、犯されることを拒んでいるのが不思議なほどに、蘭の肉体は
男のものに順応していた。
媚肉を貫かれ、奥深くまで犯されると、脳の芯がビリビリと痺れる。
その痺れは、膣や子宮で感じるものと同類であることに蘭は気づいていた。
(ああ、こんな……。だめ……か、感じちゃだめっ……!)
歯を食いしばって感応するのを堪えている蘭の苦悶する美貌を見て、隆久はますます
昂ぶっていく。
いやなのに感じてしまう、それを表に出さずに我慢しようとする。
そういう表情こそ、男を燃え立たせていくのだ。
隆久は腰の動きを激しくしていく。
蜜で潤いきっている膣は、隆久が動くごとにぬちゃぬちゃという音を大きくしていった。
「オマンコが汁まみれだよ。そんなにいいのかな?」
「だ、誰が気持ちよくなんかっ……か、勝手に身体が反応してるのよっ……あ、あたし
はあんかなんか……ああっ……」
「そうか? それにしたって身体が勝手に反応するってのもすごいな。好きでもない男
に犯されたって感じちゃう身体ってことか」
「くっ……」
実際その通りなのだが、まさか肯定するわけにもいかない。
蘭は持ち前の気丈さで、何とか怒りの表情を顔に出すことが出来た。
隆久は肩をすくめたが、これはこれで悪くない。
さっさと堕ちてしまうよりは、僅かな理性で抵抗してくれた方が楽しい。
その上で堕として、その屈辱にまみれた美貌を見るのもまた一興だ。
「や、あっ……あっ……あう……んくっ……」
突き上げられるたびに、蘭は呻いて唇を噛みしめる。
もはや感じて感じて仕方がないのを、何とか押さえている状態なのだろう。
抱えている太腿、時折さわっている臀部が小刻みに震えている。
屈辱に耐えているのか、憤激しているのか、それとも快感に耐えているのか。
いずれにしても、隆久が凌辱している結果として、蘭は身悶えているのだ。
この頃から、蘭は呻くだけでなく、微かに喘いだり、「あっ」と可愛い悲鳴を上げる
ようになってきている。
それをさらに導き出すように、隆久は腰の動きを小さく素早くしていった。
彼の目には、もう蘭は陥落寸前に見える。
試しに彼は、奥まで突っ込んだまま腰を止めてみた。
「……」
しばらくはそのままだったが、すぐに蘭の身体に変化が出てきた。
膣の内部が、動かなくなったペニスを促すように襞を蠢動させてきたのだ。
こんなことは意志で出来るはずもないので、蘭の言う通り「身体が勝手に」やって
いることだろう。
加えて、腰までもぞもぞと蠢いてきた。
隆久のペニスを刺激するかのように、奥へと引きずり込むかのように。
蘭の表情も、何とも言えず切なさそうで、ホッとしたような、物足りないような
視線で隆久を見つめていた。
「なんだい、その顔は。動いて欲しいのかい?」
「……ち、がうわ……」
「じゃあ抜いてやろうか」
「……」
かなりの部分を肉欲に支配されてしまったらしく、蘭は「抜いて」とは言えなかった。
辛うじて顔を背けるのが精一杯だった。
隆久はにやりと笑って、律動を再開した。
途端に蘭は喘ぎだした。
「ああっ……あああっ……」
この少女は、もう肉体的には完成されているのかも知れない。
犯した感じ──媚肉の美しさや膣の窮屈さは、とてもそうは思えないが、セックス
に対する反応はもう立派な女だ。
よほど感じやすいのか、経験が豊富なのかも知れない。
膣にも乳首にも色素はほとんど沈殿していないし、型も崩れていない。
若さ故だろうが、いくらやっても美しい状態を保っている肉体は素晴らしい。
隆久がピストンを再開し始めてから、蘭の膣はいっそう滑りが良くなってきていた。
突き込んでやると、身体が悦ぶようにきゅっ、きゅっと締め付けてくる。
蘭の性感がどんどんと上昇しているのは間違いないが、隆久の方も同じだった。
少女の胎内を好き放題に引っかき回す肉棒は、蘭の膣に締め上げられ、蜜を塗り込ま
れ、襞に優しく絡みとられていくうちに、一層に熱く硬く膨張していく。
「くっ……しかし、マジで具合いいぜ、あんた。俺ももう我慢できそうにないや」
「あっ、ああっ……」
「感じちゃって答える余裕もねえってか。おい蘭ちゃん、中に出していいのかい?」
男の突き込みに、うっとりとした表情を浮かべるようになっていた蘭は、その言葉を
聞くや、途端に表情を強ばらせた。
「だ、だめっ……だめ、絶対だめよ、そんなっ……な、中は、あはあっ……!」
「おおっ!? 何だ何だ、中に出すって聞かされた途端に、締め付けがさっきより
強くなってきたぜ」
「ウソっ……そんなのウソよ!」
「ウソじゃないさ。そうか、中に出されるのが好きなんだな」
「ばっ、バカ、バカ、バカっ! そんなわけないでしょ、あっ……もうやめて!」
中出しされそうだとわかった途端にこの反応だ。
今までも、脅されて結局中に出される、ということを散々されたに違いない。
その屈辱と快感に、女体が反応してしまっている。
本当は中に出して欲しい。
でも、この聡明な美少女は理性で抑え込んでいる、ということらしい。
隆久は、ますます中に出してやりたくなった。
だが、儀式前にそれだけは出来ない。
そんなことをしてバレでもしたら、隆久が吊るし上げられてしまう。
それだけならいいが、将来の御巫主候補から外されてしまっては目も当てられない。
ここは我慢するしかなかった。
それに、中には出せないものの、これだけの美少女を好きに出来たのだから、それ
だけでもお釣りが来るというものだ。
「いや、いやっ……中は、中だけはやめてえっ!」
蘭は必死に顔を振りたくって抗っていた。
黒い髪がばさばさと大きく宙を舞う。
「そんなにいやかい?」
「い、いやに決まってるわ! も、もし……もし妊娠してしまったら……」
「恋人がいるのに、知らない男の子なんか身籠もれない、と」
「……」
「ふん」
隆久は、まだ見ぬ蘭の恋人に嫉妬した。
確か工藤新一と言ったか。
こんな美少女を放っておく方が悪いのだ。
蘭が犯されるのは新一のせいだ。
それに、いくら妊娠を拒んだとて無駄なことだ。
隆久は無理としても、どっちみち孕まされるのだ。
そして、二度目の妊娠は是非隆久がさせたいと思っていた。
「じゃあ、中じゃなければいいんだな」
隆久は腰を揺すりながら言った。
蘭は嫌がりながらも、腰は隆久に合わせて動かしている。
「ああ、中は……中だけはやめて……」
「じゃ、顔に出すぜ、いいな?」
「そんな……」
「いやか? なら、このまま中に……」
「だめっ!」
「じゃあいいな? その綺麗な顔に出すぜ」
蘭は目を堅く瞑り、必死に顔を逸らせて小さく頷いた。
それを確認した隆久は、がすがすと腰を思い切り使って、射精感を煽っていく。
「やはあっ……あっ、ああっ……も、ああっ……だめえっ……!」
「いけ、蘭っ! お、俺も……!」
足の裏から駆け上がってきた熱い感覚が、腰の後ろに到達する。
ペニスがぐぐっと膨れた感覚になった瞬間、隆久は蘭の膣から抜き去った。
今にも出そうなところを、カリのくびれをぐっと指で締め付けて我慢し、そのまま
大急ぎで蘭の顔まで持って行く。
びゅくくっ。
「あっ!」
びしゃっと濃い精液が、蘭の右頬にヒットした。
思わず悲鳴を上げた蘭だったが、その声が甘く聞こえた。
嫌がっている風には聞こえなかった。
びゅぶっ。
びゅぶぶっ。
びゅるるっ。
びゅるっ。
なおも精液が蘭の顔にぶちまけられる。
一発目は頬で、次はまぶた、そして鼻の上へと続けざまに引っかけられていく。
びゅくっ。
びゅびゅっ。
びゅっ、びゅっ。
隆久は懸命に肉棒をしごいて射精した。
鈴口から白濁した粘液が勢いよく飛んで、少女の美貌を穢していく。
それだけでも興奮ものだった。
ましてその精液は自分のものなのだ。
精液を全部出し終えても、射精の発作は続いていた。
出ないのに、ペニスから精液を絞り出すように括約筋が動いて止まらない。
ようやく全部出たことを覚ると、隆久はまだ硬いままの肉棒を指でつまみ、蘭の顔
に精液をなすりつけた。
亀頭にこびりついた精液と蘭の顔にかかった精液を伸ばすように、顔にこすりつけて
いく。
蘭の頬の熱さと柔らかさにペニスが反応し、また少し「ぴゅるっ」と射精した。
「ああ……」
蘭はとろんとした目で隆久と、彼の男根を見つめていた。
どろどろになった顔から、精液が伝って粘り落ちていく。
濃すぎて、固まりになったままの精子が、少女の顎からぼたぼたと床に垂れていった。
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