15分ほど走り続け、ようやく下島との対岸までやってきた。
さすがに、ほぼ全力疾走だったこともあり、息が切れている。
加えて、長い船旅や観光の疲れもある。
コナンも聡子もハンカチを出して、額や首の汗をぬぐっていた。
一方の哀は涼しい顔である。
見た目も、汗などかかないような風貌だが、体力はかなりあるらしい。
コナンが言った。

「聡子……じゃない、聡子おねえちゃん、船は? どうやって渡るの?」
「……船は必要なさそうよ」

哀の声に、前を見たコナンは息をのんだ。
道が出来ているのだ。

「これは……」
「祭りの日はね……、海が割れるのよ、コナン君」
「海が割れる?」

まさに聡子の表現がぴったりしていた。
昼間に見た時は、満々たる海水で満ちていた──というより海でしかなかったそこに
道が出現している。
恐らく干潮でそうなっているのだろうが、30センチ弱の道幅だけ、きれいに海が
割れているようにしか見えない。
ほとんど真っ直ぐな道が、ここ上島と下島を結んでいた。

「どういう理由でそうなるのか、あたしにはわからない。干潮は毎日のことだけど、
いつもはこうはならないの。いいえ、それどころか、こうなるのは何年かに一度の
ことだから」
「何年かに一度?」
「ええ、そう。逆に言えば、海が割れる日だけが祭りの日となるのね」
「……」
「だから、祭りと言っても日が決まってるわけじゃない。毎年あるわけでもないの。
この前の祭りは4年前だったから。だからみんな必死なの。失敗したら、次の祭りが
いつになるのかわからないから」
「……で、その祭りで何があるの? 彼女たちに何をするの?」

哀が、ひどく冷静な口調でそう聞いた。
聡子は、一瞬、哀を見たが、すぐに前に立って歩き始めた。

「行けばわかる……。いいえ、わかる前に止めなくっちゃ」

────────────────

下島は平地がない。
小さな丘がいきなり海に出現したような形状である。
人を寄せ付けぬ島だが、実は鍾乳洞がある。
無数の穴が空いた洞窟なのだが、人が入れるほどの大きさなのは入り口の一カ所だけだ。
その曲がりくねった穴道を進んで30メートルほど行くと、少し開けた空間に出る。
ここは海にも通じていて、海水と海風が入り込んでいる。
そこを通り過ぎてさらに奥へと進むと、さきほどよりもずっと広い部屋のような場所に
出る。
儀式はそこで執り行われていた。

それまで咳き一つなく静まり返っていた洞窟内が、突如騒がしくなった。
黒装束の男が四人で少女を連れ込んだのである。

「ちくしょ、やめんかい、このっ! 離せって言うてるやろ!」

遠山和葉は全裸だった。
どういうわけか、赤い頭巾を被らされている。
両手足をそれぞれ男ひとりずつに抱えられ、内部に入ってきたのだ。
和弘による凌辱の後は綺麗に洗われたのだが、ここに連れてくるまでが大暴れだった
ので、肌理の細かい肌にまたうっすらと汗を浮かべている。

「やめっ! あ、こら、どさくさに紛れて触るんやないっ!」

和葉が元気一杯に騒いで抵抗していると、彼女が連れ込まれてきた穴とは反対側の穴
から、やはり女性の悲鳴が聞こえてきた。
和葉はハッとしてそちらを見た。
同じように、四人の男がひとりの少女を運んできた。

「いやっ! どこへ連れてくのよっ、やめて、離して!」

毛利蘭だった。
やはり赤頭巾姿である。

「蘭ちゃんっ、うちや!」
「え、あっ、和葉ちゃんまで!」

互いに相手を確認すると、一層に憤った顔で黒装束の男たちを見て叫んだ。

「嘘つき! あたしがおとなしくしたら、和葉ちゃんには手を出さないって言ったの
にっ!」
「あんたら、これはどういうことや! 蘭ちゃんにはもうこれ以上何もせえへんて言う
たやろが!」

同時に沸き起こった血を吐くような抗議の声は無視された。
運んできた男たちも、祭壇の前で待っていた男たちも、少女の悲痛な叫びなど耳も
貸さない。

「やめ、やめて言うてるやろ!」
「何するのよ!」

男たちは少女の抵抗を受け流し、慣れた手つきで縛り上げていく。
あちこちにいくらでも生えている鍾乳石の角に、縛ったロープを固定する。
蘭の両足はやや開かれ、両手もバンザイの状態で吊り上げられた。
肘や膝は少し曲がるくらいの余裕は持たされている。

和葉の方も似たような格好にされているが、ちょうど良い位置に縛れる固定石が
なかったのか、「く」の字に屈むような感じになっている。
いや「く」よりは「┓」に近い。
腰にも縄が回され、ぐっと後ろに引っ張られるように縛られた。
腰を突き出た前屈みの状態だから、蘭より一層に恥ずかしいスタイルだ。
すっかり縛り上げられると、和葉は少し震えた声で聞いた。

「な、何をするつもりや。こんな……こんなことして……」
「……」

蘭は何も言わなかった。
こういう場合、女がどんな目に遭うのか、イヤと言うほどわかっている。
彼女は、過去にもこうしたことを何度か経験させられていたからだ。
自分たちを運んできたのも男。
目の前に30人くらいいると思われる連中も男だろう。
ということは、されることはただひとつ。
凌辱されるに違いない。
もしかすると輪姦かも知れない。
しかもそれを見せ物にされることも間違いないだろう。
ひょっとすると、犯されず、ただ見せ物にされるだけかも知れないが、それにしても
口には言えぬような淫らなことをされるに決まってるのだ。

万が一、この人数に犯されたらどうなってしまうのだろう。
30人からいる男たちに、入れ替わり立ち替わり犯され続けたとしたら。
過去、言語を絶するようなレイプに何度も遭ってきた蘭はともかく、恐らくさっき
処女を奪われたばかりであろう和葉がそんな目に遭ったら、精神的なダメージは計り
知れないだろう。
蘭ですら、最初のセックス調教の際は、ショックのあまり一時的な記憶障害に陥って
しまったほどだ。
だが、その蘭でも、この人数に連続レイプされたことなどなかった。
身も心もズタボロになることは確実だ。

「やめて……、何もしないで!」

そんなことは無理とわかっていても、そう叫ばずにはいられなかった。
それでも、シカゴでの時のように、友人を救う代わりに自分だけが生け贄になる、
とも言えなかった。
いかに和葉よりは耐性があるとはいえ、30人に続けざまに犯されたら、蘭とても
気が狂ってしまうだろう。

ふたりの少女が大声で喚き、抵抗しているにも関わらず、洞窟の中は誰でも言葉を
発する者はいなかった。
それどころか、祭壇にいる男たち以外、動きもせずに立ちすくみ、生け贄たる蘭たち
を見つめるのみだ。
黒装束の男たちも無言でふたりを縛り上げ、少女たちを固定すると、そのまま引き
下がっていく。

今、前に残っているのは蘭たちを除けば白い服を纏った男たちだけだ。
蘭と和葉の側に、それぞれふたりずついる。
すべての男たちは、藁で出来た蓑のようなものを身につけている。
見物している連中は、裸の上に蓑を纏っているようだ。
白と黒の装束を着けた男たちは、その服の上に藁を巻き付けていた。
顔が判らないようにするためか、あるいはこの催しのせいなのか、全員が仮面をつけ
ている。
軽そうだから、木製か紙製なのだろう。
このお面だけはバラバラで、基本形が決まっているだけで、あとは個人の手作りの
ようだ。
ただ、白い男たちだけは、頭から二本の角を生えさせた鬼面である。
それとても、般若面のような恐ろしい顔ではなく、子供が節分の時にでも作ったよう
な、どことなくユーモラスな面だ。
それでも、黒装束の男たちが袖に引っ込む時、彼らに深くお辞儀したところを見ると、
彼ら四人がこの奇祭の中心人物──司祭なのかも知れなかった。
その鬼たちがゆっくりと近づいてくる。

「な、なんや、何する気や……!」

何か得体の知れぬ威圧感を感じて、和葉の言葉の語尾が震えている。
白い鬼のひとりは、何やら竹筒を持っている。
青竹ではなく、もうほとんど灰色に枯れている。
古いものなのだろう。
それでも手入れはきちんとしてあるらしく、飴のような艶がある。
それに気を取られていると、もうひとりが音もなく近寄ってきて、和葉の顔を抱えた。

「な、何を……!」

顔を押さえた鬼は、和葉の顎を掴み、その口をこじ開けようとしていた。
見れば、迫ってくるもうひとりの鬼が持っている竹筒は、液体が滴っている。
どうも、それを飲ませようとしているようだ。
さっき和弘に犯された時も、何やら睡眠薬だかおかしなクスリを使ったようなことを
言っていた。
和葉が強く抗うから、またそれを使おうというのかも知れなかった。

そんなものを飲まされてはたまらない。
意図を察知した少女は、ぐっと歯を食いしばり、唇を閉じた。
それでも鬼は、和葉の口に竹筒をあてがい、中身を注いだ。
唇を閉じているのだから、当然中身は和葉の体内には入らず、顔を汚し、顎を伝って
零れていく。
顔を押さえている鬼は、和葉が手強いと見るや、顎を掴んだまま、鼻を摘んだ。

「んんっ……!」

綺麗に鼻梁の通った鼻を摘まれ、和葉は目を白黒させた。
口を閉じている以上、呼吸は鼻でするしかないと思えるが、唇を少し開けても歯を
しっかり閉じていれば、隙間から出来る。
だが、こうして口に筒を押しつけられて中身を注がれている状態では、歯の隙間か
ら液体が咥内に入ってきてしまう。
だから唇を堅く閉じるしかないのだが、それでは鼻を摘まれた状態で呼吸が出来なく
なる。
二律背反に戸惑う余裕もなく、和葉の肺活量が限界になる。

「ん……んん……っ、ぷあっ、あっ、ぶはっ……!」

息が出来ない苦しさに耐えかねて唇を開けると、途端に白い濁液が口に流れ込んで
くる。
そのまま喉にまで届き、気道に入ってしまったのか、和葉は激しくむせた。

「がっ……! げへげへっ、がはっ……! な、なんやこれ……えらい苦い……あ!」

和葉が顔を歪めて咳き込み、その息苦しさに悶えていると、男はその顎を掴んで上へ
向かせる。
そこへ筒を持った鬼が、一気に中身を注ぎ込んだ。

「ぐっ! うぐっ……んっ、んぐっ……んうっ……」

慌てて口を閉じようとしたものの、顎を掴んだ男が頬の上から上の歯と下の歯の間に
指を挟み込み、それが出来ない。
小さく開いた和葉の口に、白鬼が竹筒で溶液を流し入れていった。
半分以上は最初の抵抗で零れていたから、1/3も飲んではいなかったが、白鬼は
大きな桶からまた液体を竹筒に掬って、それを和葉に注いだ。

「……んっ! ん、んくっ……んぐっ……ごくっ……うぐ……んくっ」

否も応もなかった。
開かされた口から、酸素と一緒に白い液体が喉の奥へと流れ込んでくる。
一本飲まされると、また新たに一本分注がれる。
それが終われば、また次の竹筒が待っている。
次から次へと流し込まれ、和葉はかれこれ竹筒で五本分ほど飲まされていた。

「ああ……ぐふっ……」

そこまで飲まされて、ようやくもうひとりの鬼は和葉の顎を解放してやった。
がくりと頭を垂らした和葉は、はしたなくもげっぷまでしていたが、それを気にする
ような精神状態ではなかった。
体力も消耗していた。
無理に口を開けさせられて、抑え込まれた頬が痛い。
口に力が入らない。
閉じることも出来ず開けっ放しの口からは、飲みきれなかった白い液体がだらだらと
滴っていた。
男たちは声もなく見守っていたが、中には淫らな妄想をしていた者もいただろう。
ぐったりとした和葉の口から、だらだらと零れ出ている白濁液は精液を連想させた
からだ。
もちろん、これはそんなものではない。

「あ……」

大量に飲まされ、胃が苦しい。
お腹が重い。
朦朧となりつつある意識に鞭打って、どうにか顔を上げると、蘭の様子が目に入った。
蘭はまだ飲まされていた。
髪がおどろに乱れている。
激しく抵抗し、頭を振りたくったのだろう。
赤い頭巾も吹っ飛んでいた。
それでも結局は飲まされたのだ。
何本目かだかの液体を飲まされると、さきほどの和葉と同じように、がくりと顔が
傾いた。
白い液体が口から零れている。
逆流するほど飲まされたのだ。

「ら、蘭……ちゃん……」

そうつぶやくと、和葉の意識が遠のいていった。

「和葉ちゃん……」

一方、蘭の方も和葉の様子に気づいていた。
和葉と同量、竹筒で五本分──1リットル近くも飲まされていたが、まだ意識は
保っている。
あまりにも異様な事態の連続で、こんなことに慣れていない和葉の精神許容量は
オーバーしてしまったのだろう。
その点蘭は、過去にもトラウマになるほどの酷い仕打ちを受けてきたことが何度か
ある。
身体というより、心が少し強靱になっているらしい。

「な……にを……飲ませ、たの……」

白濁していく意識を気合いを入れ、何とか気を奮い立たせている。
蘭の質問に答えることもなく、筒を持った鬼は少女の顎に手をやり、その顔を正面
から見据えている。
筒に新たな液体を満たしていたところを見ると、もう少し飲ませようかと思っていた
らしい。
だが、蘭が気力だけで失神しないでいるのを見抜き、もう十分だと判断したようだ。

リーダー格の白鬼──御巫主は手にした竹筒の水筒を手桶に入れた。
そのまま手を後ろに回すと、控えていた黒鬼が直ちにまた何かを差し出した。
御巫主が手にしたそれは、また竹製の何かだった。
さっきの水筒と同じような竹筒に見えるが、それよりはだいぶ細い。
水筒は直径で5〜6センチはあったように見えたが、今度のそれは1センチあるか
ないかという若い竹のようだ。
それでもやはり古いようで、飴色に鈍く光っている。
白鬼がその竹を両手に持ち、正面の神棚らしいところに捧げるように頭を下げている。
蘭はそっちを見てみて、初めて気がついた。
そこは横穴が浅く掘られた床の間のようになっていた。
両側に二本ずつの蝋燭が灯っている。
その奥、中央には、黒く光る邪な「十」の字のようなものが納めてあった。

「……十字架?」

確かにそのようにも見えたが、それは蘭の知っている十字架とはだいぶ異なっていた。
そもそも黒い十字架など聞いたこともない。
それに、キリスト教のクロスであれば、そこに磔になったキリストがいるはずだが
それもなかった。
形が似ているだけである。
しかしそれは彼らにとって、キリスト教の十字架のように神聖であり尊いもののよう
だった。
彼らは一言も発することなく、両手を胸の前で組み、頭を垂れている。

洞内が張り詰めた空気で満たされていく。
神事は佳境に入りつつあるのだ。
その雰囲気に圧されるように、蘭も口を閉じた。
ややもすると薄れそうになる意識を懸命に保ちながら、男たちの仕草を見つめていた。

黒い鬼が、今し方蘭たちが飲まされた液体が入ったものとは別の手桶を持ってきた。
中身を覗くと、やはり白い液体だ。
ただ、飲まされたものは白いとはいえ白濁して透けた液体で、見た目は薄いカルピス
のような印象だった。
ところが今度のは、とろりとした水面である。
濃厚なミルク──というより練乳のような感じがする。
乳臭くもないし、甘ったるい匂いがしないから、練乳ではないのだろう。

「……」

司祭の白鬼は、面の下でも緊張した面持ちであることがわかる。
竹を持った手が若干震えているのだ。
そして桶に右手を突っ込んでいる。

「きゃあっ!」
「ひゃっ!?」

蘭と和葉は、同時に鋭く叫んだ。下半身のもっとも恥ずかしい箇所──お尻の穴に
ねっとりとした感触があったのだ。
蘭担当の白鬼と和葉担当の白鬼は、ほぼ同時にふたりの少女のアヌスに触れてきた。
しかも、例のどろっとした乳液を指にまぶして、だ。
そのおかげで、指のざらざらした感覚はないが、ぬるりとした気色悪い感じがする。
鬼たちは、指を器用に使って、美少女たちの肛門をマッサージしていた。

「こ、こらっ、どこに触ってるんや! ひゃああっ! さ、触るんやないっ!」

和葉は喉が裂けるほどに絶叫した。
当たり前である。
そんなところを触れられたことなど、生まれて一度も経験したことがないのだ。
いや、今後将来も経験せずに終わるかも知れなかった場所だ。
そんなシークレットゾーンを嬲られ、活発な大阪少女は気が狂いそうなほどの恥辱を
感じていた。

「いっ、いやや! いやあっ!」

丸く形の良い臀部が、くりっ、くりっとよじられ、それがまた健康な色気を感じさせた。
隣で蘭も大騒ぎして抵抗しているのだが、和葉にはもう他人を気にする暇も、心配する
余裕もなかった。
お尻の穴をいぶられるなど、ある意味、犯されるよりも屈辱的なことだった。
洞内で響いているのは嬲られている少女たちの悲鳴だけで、男たちは静まり返っている。
男たちは、司祭が蘭と和葉のアヌスをいびるのを、じっくりと見守っていたのだ。

「い……や……、あ……し、しないで……もう、それはいやや……」

盛んに振りたくられていた和葉の腰があまり動かなくなっている。
それまで、がっしりと助手の白鬼が腰を抱えていたのだが、アヌス嬲りが続くにつれ、
和葉の動きが鈍くなってきたのだ。
肛門がびりびりと痺れてきた。
括約筋の力は入るが、アヌス自体はもろくなっている感じがする。
そこを、なおも司祭がもみほぐすようにマッサージを続けていくと、和葉は吊られた
裸身をゆらゆらと揺さぶりながら呻いた。

「い、いや……ああ……何か変や……お尻が……変や……さ、触らんといて……あ……」

白鬼は、一心不乱に和葉のアヌスをもみほぐしている。
堅く引き締まっていたそこは、今ではもうふっくらと膨らみ、緩んできていた。
蘭の方の声もなくなってきた。
ただただ呻き、触られ続ける尻をなよなよと揺するだけだった。

「ああ……」

唐突に指が離れ、蘭はホッとしたように力が抜けた。
その間、鬼はさきほどの太い竹筒を拾い上げ、左手に持った。
右手には細い筒だ。
左手の筒で濃い乳液を掬った。
鬼は意外な行動に出た。
自分で飲み始めたのだ。
よく見ると、鬼面の口の辺りは長さ5センチ、幅3センチほどの隙間があった。
そこから口が見えるのだ。
その口に筒を当て、中身を煽るように飲んでいる。

と思うと、今度は細い方を口にくわえた。
蘭の尻にまた指が伸びてきて、今度は揉むというよりは、白い粘液をなすりつける
ようにすり込んできた。
それが終わったと思うと、また新たな刺激が来る。
一瞬、刺すような痛みがあった。

「な、何っ!?」

思わず振り向いた蘭の美貌が凍った。
司祭は、蘭の肛門に竹籤のようなものを突き刺していたのだった。
よく見るとそれは籤などではなく、さっき持っていた細い竹筒だった。
1センチほどの太さだから、揉みほぐされ、粘液を粘膜に塗りたくられたアヌスは
簡単に飲み込んでいた。

「い、たいっ! やめて、そんな酷いことっ……抜いてぇ……」

美少女のアヌスに竹が差し込まれている。
変態的な行為だが妖しい雰囲気が漂っている。
興奮する男も多いと思われるのに、よほど神聖な儀式なのか、私語はまったくなかった。
面の下から食い入るように見つめている者もいたが、多くは両手を組み、祈るような
仕草である。
中には、司祭や蘭、和葉たちに対して大仰に頭を下げ、土下座している者たちもいた。
次の瞬間、蘭はまたつんざくような悲鳴を上げた。

「ひぃぃっ!?」

アヌスから怪しげな液体を注入されたのだ。
見れば司祭は、細い竹筒を口にくわえて力んでいるではないか。
彼は口に溜めた液体を、竹筒を使って蘭の体内に注ぎ込んでいたのである。
どうやら先ほど飲んだように見えたのは、口中に溜め込んでいただけのようだ。
コップ代わりに使われた竹筒は底があったが、この細いやつは節を全部抜いてある
らしい。
それで一種のストローというか、パイプ状にしてあったのだ。
つまり浣腸しているのである。
どうやら生け贄は腹の中まで清められるようだ。
蘭たちの全身を聖水で清めたのと同じ意味なのだろう。

「ひっ……う、うぐうっ……い、入れない、で……くううっ……!」

蘭は、日本でバレット一味に捕らえらて性調教をされた時、浣腸責めの洗礼を受けて
いる。
但しこの時は医療用でも使うグリセリン水溶液だった。
もちろん初めての行為だったから、そのきつさ、つらさは骨身に堪えたが、今度のは
それとは比較にならなかった。
グリセリンをストレートに使った時以上の強烈な刺激が、蘭の腸内を襲っていた。
どろりとした粘液だったから、その重さは想像がついた。
グリセリンのストレート浣腸を受けた時よりも、それはずっと凄かった。
いったいどんな薬液なのかわからないが、あっというまに腸内が焼け付くような苦痛
が沸き起こる。

「うっ、ぐぐう……、き、きつ……きつい……いやあっ……!」

司祭が吹き込んでくる薬液のすごさに、蘭はしなやかな肢体を大きく仰け反らせて
呻いた。
これが普通の浣腸液なら、蘭は男に薬液を口から注ぎ込まれるという恥辱と羞恥に
苦悶するところだろうが、この溶液のきつさはそれどころではなかった。
一口吹き込んだけで終わったわけではなかった。
口中の溶液を注ぎ終わると、蘭のアヌスに竹筒浣腸器を突き刺したまま、新たな溶液
を口に蓄える。
そしてまた注ぎ込むのだ。
浣腸されるごとに、蘭は全身を突っ張らせ、呻き、悶え、悲鳴を上げ続けた。
とてもじっとしてはいられない。
叫ばずにはいられない刺激だった。
それを三度ほど繰り返すと、司祭はようやく筒を蘭の肛門から抜き去った。

声もなくぐったりとしている美少女は、それでも細かく痙攣していた。
蘭の美貌から血の気が失せている。滲んでいるのは冷や汗か脂汗だろう。
悪魔の薬液を注入された直腸が苦悶を訴えているのだ。
猛々しいほどの便意が襲いかかってきていた。

「やっ、あ……しないで、あっ……そんなことっ……!」

浣腸し終わっても、司祭たちは手を休めることはなかった。
竹筒をいったん手桶に入れると、今度は蘭の身体をさすり始めた。
なだらかだった下腹部が少し膨らんでいるのがわかる。
かなりの量を入れられたらしい。
そこをゆっくりと揉みほぐし始めたのだ。
それだけではない。
必死に便意を堪えているアヌスをも、揉み込んでいた。
途端に蘭のお腹が苦しそうに鳴き始めた。
グルルッ、グキュウと恥ずかしい音が腸から響き、蘭は顔をぶるぶると振りたくった。

「やっ……、く、苦しい……あ、あ……お腹、痛い、苦しい……あっ……」

司祭は何やら唱えながら、なおも少女の恥ずかしい箇所を揉んでいる。
蘭は、揉まれている腹部を弱々しくよじったが、何の抵抗にもなっていない。
浮いた汗で光っている尻たぶがくりくりと蠢いている。
アヌスをいびる指を弾き飛ばそうとしているのだろうだろうが、快感のあまり尻を振っ
ているようも見えた。
腸内が灼けるように熱い。
ぎりぎりと締め付けるような苦痛と、頭が虚ろになるほどの便意が責め苛んできている。

「あ、あ、あ……、も、だめ……きっつい……あ、おトイレ……は、早くっ……!」

蘭はあの時の浣腸責めを思い出していた。
浣腸は、されている時も恥ずかしいしつらいが、何よりも排泄を見られることが死
にも勝る恥辱だった。
気の強い蘭は、余計にそれを感じていた。
だが、あの時も男たちはトイレを懇願する蘭を嘲笑い、その場で排泄させ、羞恥と
屈辱に泣く美少女を見て愉しんでいた。

ここでもトイレに連れて行ってくれるとはとても思えなかった。
司祭を始め、見物している男たちも、淫らな意味で見ている者はあまりいないだろう
が、見られる蘭にとっては同じことだった。
あの時の屈辱を思い起こし、死んでも耐えようと決意した蘭だったが、その思いは
すぐに打ち破られた。
そんな甘い苦悶ではなかったのだ。
地獄の苦しみは容赦なく蘭を責め、その限界を伝えてきた。

「あ、あ、さ、さすっちゃだめえっ……触らないで! あ……、もうだめ……あ、
で、出る……出ちゃう……」

美しい少女の懸命な懇願も、男たちは無視した。
司祭はともかく、見ている信者たちにはそんな権利はないのだ。
その白鬼司祭も、苦しむ蘭を見つめているだけだ。
いや、それだけならともかく、まるで早く排泄させようとしているかのように、下腹
部をマッサージし続け、アヌスを揉み続けていた。
少女の決意と努力は報われなかった。

「だ、だめ……あ、あ、出る……で、出ちゃいますっ……!」

蘭は甲高く叫び、豊かに張った安産型の臀部をぶるるっと生々しく震わせると、痺れ
たアヌスが決壊した。
ドッと迸り出たものは、黒鬼が大きなタライで受け止めていた。
排泄の瞬間、見ていた男たちから初めて声が上がった。
「おおっ」と、どよめいたのだ。

「いやあ……、み、見ないで……!」

淫らな思いはないにしろ、恥ずかしい排泄を見られていることには違いない。
死ぬほどの恥ずかしさで、蘭は泣き叫んだ。
いったん発作が終わり、続けて起こった二度目の発作を耐えようとしたものの、
もろくも肛門は崩壊する。
三度、四度と発作を繰り返し、腸内のものを吐きだしていた。

「ああ……」

また見られてしまった。
死にたくなるほどの屈辱に、蘭はしくしくと泣いていた。
和葉の方も終わったのか、ぐったりとしている。
泣き叫ぶことなかった。泣き叫べばそれだけ惨めになる。
男たちに屈服したことになる。
そう思っているのか、和葉も声を殺して泣いていた。
しかし、それで終わったわけではなかった。

「ああっ!? あ、ああ……」

苦痛の元を吐き出し、まだ完全に閉じていないアヌスに、またしても竹筒が差し込ま
れたのだ。
激しい排泄のせいで盛り上がるようにふっくらした肛門は、さっきより楽に筒を受け
入れていく。
見ればさっきのものよりも太い。
前のは1センチくらいだったが、今度のは2センチくらいはある。
それでも柔らかくとろけてきていた蘭のアヌスは、それを楽に飲み込んでいた。

「あ……、も、いや……、あむむ……い、入れないで……ああ……」

蘭はまた仰け反って呻いた。
辛そうになよなよと首を振っているが、やめてくれるわけもない。
司祭は、委細かまわず竹筒から口づてに溶液を蘭の腹の中へと注いでいった。
ゆっくりと筒を回転させながら、次々に吹き込んでいく。

「き、きつい……、こ、この浣腸きつすぎる……あ、お腹が壊れる……苦し……あう
う……」

どう我慢しても、そのつらさが癒えることはなかった。
浣腸される尻は硬直し、痙攣している。頭からつま先まで力を入れて、必死に耐える。
力の入った二の腕やふくらはぎが小刻みに震えていた。
またすぐに強烈な便意がこみ上げてきた。
今度は浣腸液で腸内が刺激されると同時に沸き起こってきた。
とても我慢が出来ない。
司祭が三度繰り返して溶液を注ぎ込み、筒を抜くと同時に蘭はぶるっと大きく痙攣した。

「ああ、だめ、出るっ……も、もう我慢できないっ……出てしまう、出るっ……!」

はしたなく臀部を振りたくりながらも、蘭は排泄した。
さっき出したものの中に、新たな排泄物が噴出されていった。
排泄物といっても、一回目でほとんど出てしまったので、今度はあまり出ていない。
薬液ばかりだ。
なのに司祭たちは、三度目の浣腸に取りかかっていた。
三度目は、また一回り太くなっている。
直径3センチはありそうな竹筒が、蘭のアヌスをこじ開けていく。
さすがにこれは激痛が走った。

「ぐ、ぐっ……そんな、入らない……、ふ、太い……太すぎますっ……あ、もう浣腸
はいや……いやです……ああっ……」

やはり三度ほど吹き込みが繰り返され、腸内にたっぷりと入れられた。
もう蘭には、恥だの屈辱だのはなかった。
ただただ、腸の苦痛を解消したい、吐き出したいという排泄良くだけである。

「く、苦しいっ……お腹がおかしくなるっ……あ、あううっ……も、漏れちゃうっ!」

腸は死にそうな悲鳴を上げている。
ゴロゴロ、グルグルと音がするだけでなく、お腹の中で腸が蠢くのが、蘭にもはっ
きりとわかるほどだ。
もう空っぽになっている直腸に容赦なく注入された溶液が、腸壁をヒリヒリと灼け
爛れさせていく。
蘭はもう一時も我慢出来なかった。
筒が抜かれるや否や、粘液にまみれたアヌスをぶるぶると震わせると、そのまま排泄
した。

「いやああっっ! やあ、だめっ……み、見ないでぇ……あ、あ、出てるっ……!」

本来排泄すべきものは、もう一片もなく、注入された粘液がそのまま排泄されてきた。
その刺激が肛門粘膜をびりびりと痺れさせる。
ようやく全部だし終えると、蘭は全身を縄目に預け、完全に脱力していた。

最後の排泄が終わると、見ていた信者たちは再びどよめき、司祭と蘭にひれ伏していた。
体内の清めが終わると、それで一段落なのか、信者たちの間に声を潜めた私語が交わさ
れている。
その間に、白い司祭たちは、蘭と和葉の身体を拭き清めた。
まだ浣腸液をたらたらと滴らせている肛門を綺麗に拭き取り、汗をかいた肌を、固く
絞った手拭いで丁寧にぬぐっていく。
蘭も和葉もまったくの無抵抗で、ぐったりとしたままだった。
意識はあるようだが、抵抗する気にもならないらしい。
特に和葉はそうだろうと蘭は思った。
浣腸という変態行為を生まれて初めて受けたのだ。
しかも恥ずかしい排泄まで見られている。
見ている側は神妙な面持ちだったとはいえ、身も知らぬ男に秘密の行為を見られた
ことは変わらないのだ。
蘭は何度か経験があるとはいえ、こんなことは慣れるようなものではない。
されるたび、見られるたびに、死にたくなるような羞恥心にまみれ、気も狂うような
屈辱感に苛まれるのは同じである。

顔を上げて和葉を見ると、顔が細かく痙攣していた。
泣いているのだろう。
大声で泣き喚かないのは、彼女一流の気丈さ故だ。
ここであられもなく泣き叫んでは、この連中に屈することになってしまうと思って
いるのだ。
蘭は和葉の心情を思い、涙した。
どうにも出来ない無力感が押し寄せてくる。

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距離は大したことなかったが、何しろ歩きにくかった。
コナンなど、蘭を思うあまり走り出したかったのだが、そうも行かなかった。
足場が悪いのだ。
何しろ幅は30センチあるかないかだし、そこから外れたら海なのだ。
足を濡らす程度ならいいが、けっこう深いらしい。
溺れることはなかろうが、よじ登ってくるのに時間がかかる。
もちろんずぶ濡れになる。
結局、慎重に道を外さないように歩くしかないのだ。

30分ほど時間をかけて、どうにか全員渡って来られた。
狭い砂浜を突っ切ると、正面に断崖絶壁が立っている。
夜と言うこともあり、真っ黒な壁となって侵入者を拒んでいるかのようだ。
聡子は先頭に立ち、コナンと哀に身体を低くして来るよう合図を送っている。
見張りを警戒しているらしい。
島の神事は知らなくとも、海が割れた状態だから、よそ者が上陸して来ないとも限ら
ないのだろう。

だが、聡子の心配をよそに、歩哨はいないようだ。
足音を立てないようにそこまで駆け寄ると、重なるようにいくつもの黒い岩がそびえ
立っていた。
そこに、実に不自然なことに一枚の筵がかかっている。
よく観察すると、筵の隙間から僅かに薄い灯りが漏れている。
誰かが中にいるのだ。
聡子はそっと筵をめくり、中を覗き込んだ。
コナンが小声で聞いた。

「見張りは?」
「誰もいない……」
「いない?」

哀が眉をひそめた。
重大な神事で、よそ者には知られたくない秘祭なのに、見張りがいないというのはおかしい。
平次やコナンたちが、まだ上島にいることは知っているはずなのに。

「おかしいわね。私たちを誘き寄せようとしてる……ってこともないでしょうしね」
「ああ。多分、その神事とやらに熱中してるんだろう。今が佳境なのかも知れないな」
「だとしたら急がなくちゃ。急いでコナン君、哀ちゃん!」
「気をつけてね。慎重に」
「わかってる」

聡子は笑顔で答えた。
この時点で、聡子はコナンたちを子供扱いしていない。
哀は大人びていたし、コナンも小学生とは思えぬ物腰だった。
信頼するに足ると思っている。
そうでなくとも、今ここには彼らしかいないのだ。

中に入ると、大人の身長ほどの通路が10メートルほど続き、そこを抜けると広い空間
に出た。
海風が頬に当たる。
どこか海に向かって吹き抜けになっているようだ。
そこに入る時も、一応周囲を警戒したが、やはり誰もいなかった。
コナンは何度も躓いた。
歩きにくい。
岩がごろごろしている。
あの神社といい、どうもここはわざとそうているとしか思えない。

「足場が悪いから気をつけてね」
「うわっと!」

言われたそばから足ががくんとなった。
バリンと割れた感覚がする。
躓いた感じではない。

「大丈夫? 岩に躓いた?」
「い、いや……。何か踏み抜いたみたいな……」
「工藤君、これ……!」

哀が呆気にとられていた。
彼女のペンライトで光に区切られたそれは、見紛うこともない髑髏だった。

「な……! ず、頭蓋骨!? 人骨か!?」
「そう……みたいね。ほら、あちこちに転がってるわ」

哀の指摘通り、そこここに骨が落ちている。
髑髏や肋骨、太い大腿骨など、明らかに人間のものだとわかるものも多い。

「どういうことなの、聡子さん。この骨は……」
「ここは……、昼間にも話したけど、島の墓地なの」
「墓地……」
「火葬も出来なかったって言ったでしょう? 今は御蔵でするけど、昔はここで風葬
にしたらしいの。でも、骨だけになっても埋葬することはしなかったそうよ。なぜか
はわからない。そういう因習らしくて。もしかしたら、ここにこうやって晒すのは
「海に帰る」って意味があるのかも知れない」
「……」

聡子の話を聞きながら、哀はライトで照らして洞窟の中を調べていた。
しゃがんでいつくつか遺骨を拾っている。
どうもこの少女には、遺体や遺骨に対する嫌悪感はあまりないらしい。
彼女の経歴がそうさせるのかも知れなかった。

「昔って、どれくらい昔の話なのかしら」
「え? そうね、もう30年以上前のことだと思うわ」
「でも、この骨、新しいわよ」
「え?」

照らされた骨をコナンが見ると、確かにまだ白い。
辺りには茶褐色に染まり、もうぼろぼろになった遺骨が多いのだが、少ないが白い
骨が散見している。
昨日今日骨になったものとは思えないが、5年10年経過したものとも思えなかった。
聡子ははっきりと動揺した。

「そ、それは……」

哀とコナンが強い眼差しで見つめてくる。
ウソやごまかしは通用しそうにない。

「多分……、4年前のマリア様だと思う……」
「4年前? マリア?」
「今の蘭ちゃんや……、和葉ちゃん……」

コナンは慌てた。

「お、おい! じゃあ蘭たちは殺されるのか!?」
「違う! それは違うの、信じて」
「でもな」
「その子は……、身投げして……」

自殺したらしい。
殺されなかったにせよ、自殺したくなるようなことをされたのであれば同じことだ。
コナンは叫んだ。

「行こう、灰原! 聡子、案内してくれ!」


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