和葉の悲鳴が聞こえた。
同時に蘭の担当らしい白鬼ふたりがゆっくりと歩み寄ってくる。
「和葉ちゃんっ! ……い、いやっ! 近づかないで!」
「……」
鬼は黙ったまま、前後から蘭の身体をじっくり眺めている。
度重なる責めと羞恥で、桜色に染まった蘭の肌は艶やかに蝋燭の灯りを弾いている。
熟しかけている女の肉体を、若い肌で覆った素晴らしい裸身だった。
両手を左右に引き裂かれているだけに、ただでさえ豊かな胸元がいやでも反り返っ
ている。
盛り上がった乳房は固そうに張り詰めていた。
露わになった股間が恥ずかしいのか、盛んに腰を捩っている。
尻たぶは見事に成熟しており、ぷりぷりとした丸い臀部がいやいやと振られていた。
太腿といい尻といい、この下半身の肉付きの良さは特筆ものだ。
「い、いや……いやっ!」
叫ぶ蘭の前から白い鬼面を被った男が迫ってくる。
伸ばした両手が、蘭の震える乳房をつまんだ。
「んっ……!」
鬼は指先でつまむように、少女の柔らかい肉を揉んでいる。
焦ることなく、じんわりと乳輪周辺を揉み込んだ。
たちまち乳首が顔を出し、乳輪も膨らんでくる。
どうしようもなかった。
「あっ……や、しないで……んっ……っく……あっ……」
蘭は眉間を寄せてその感覚に耐えた。
身体の奥から熱いものが滲んでくるのがわかる。
それを漏らしたくないと、きゅっと膣を締めた。
しかし鬼の愛撫は終わらない。
指だけでなく、大きな手全体で乳房を揉みしだいてきた。
汗の浮いた肌が、男の指にしっとりと馴染んでいる。
吸い付くような肌が、余計に愛撫を促していた。
「あ……ああ……や……うんっ……」
乳房への愛撫が大きく、強くなるごとに、蘭の性感も高まっていく。
優しくされるより乱暴に愛撫される方が反応してしまう。
乳首がすっかり屹立し、そこを触れられると頭の芯までビンビンと響く。
その頃になると、恥ずかしいくらいに若い花弁に果汁があふれてくるのだった。
(ああ、いやあ……どうしてこんな……。レイプされてるのに、どうして身体は勝手
に……)
「ひあ!」
不意を突かれて思わず甲高い声が出てしまった。
ビクッと大きく身体が仰け反る。
後ろから股間に手を伸ばされ、剥き出しの媚肉を擦られたのである。
「感じやすいな、娘。毛利蘭とか言ったか?」
「……」
「口はだんまりだが、下の口は正直だぞ、それ、こんなによだれを垂らしおって」
「く……」
蘭は、卑猥な言葉で冷やかす鬼を悔しそうに睨みつけたが、身体はがくがくしている。
前後の鬼たちが繰り出す乳房と媚肉への愛撫にすり寄ってしまいそうなのだ。
鬼にしなだれかかりたくなるのを、意志の力で蘭は懸命に堪えた。
「我慢するのがつらそうだな」
「な、何を勝手な……! そんなこと、んんっ、な、ないわ……あっ……」
感じるところに触られると、いやでも身体が反応してしまう。
そんな状態で、口だけ抵抗してみても意味はなかった。
「これだけ濡れてればいいだろう。ぬしはどうせ処女ではなかったそうだしな」
「い、いやっ……」
「入れるぞ、娘」
「いやあああっ!!」
前にいた鬼は、暴れ跳ねる蘭の腰を左手で抱え込み、右手をペニスに添えて膣に
あてがう。
その熱さにくらくらしそうになるが、必死に男を振り払おうとする。
それでも鬼は、落ち着いて蘭の媚肉に肉棒を埋め込んでいく。
「いやっ……あ、んんっ……やああ……んううっ……」
自らの蜜で濡れそぼり、愛撫で熱く柔らかくなっていた膣は、何の抵抗もなくずぶ
ずぶとペニスを飲み込んでいく。
「やっ、は、入って……くるっ……いやあ……んんっ、ふ、太いっ……ああ……」
隆久のものより一回りは太い肉棒が、窮屈な膣を押し広げるように挿入されていった。
膣道をカリで拡げられながら、奥まで貫かれる感触に、蘭はぶるぶると顔を振りたく
った。
ずしっと根元まで押し入られると、子宮直前にまで届かされていた。
「くっ……深い……ど、どうしてこんなに奥まで入れるの……」
「そりゃあ奥の方が孕みやすいからだ」
「は、孕むって……」
「聞いてなかったか? ぬしは我らの子孫を産むためのマリアとなるのだ」
「いやよ、そんなっ!!」
マリアとは何のことかわからなかったが、犯されて妊娠させられ、しかも出産させら
れるなど死んでもイヤだった。
蘭の歳では、自分が子を産むことなど、まだ想像もしたことはない。
愛する相手──新一の子であれば、恥ずかしくも嬉しい実感が持てるだろうが、こんな
野蛮な儀式を行う鬼どもの子を孕むなど、とんでもなかった。
しかし、身体は別の反応をした。
「孕ませられる」と覚った時から、媚肉がひくついてきた。
男根を奥深くまでくわえ込んだ膣は、内部の襞を収縮させ、愛液をたっぷり含んで
ペニスに絡みついていく。
「犯される」「浣腸される」「お尻を責められる」、そして「妊娠させられる」。
そう言った屈辱的な責め、背徳的な性技、変態的なセックスを挑まれ、言葉で虐めら
れると、蘭の被虐性が反射的に感応してしまう。
蘭が「いやだ」とか「恥ずかしい」とか思うような責めをされると、余計に身体は
とろけ、男の責めを受け入れてしまう。
鬼は、なおも蘭に淫らなことを言った。
「孕むのが怖いか。そのうち、ぬしから「孕ませて欲しい」と言うようになる」
「バカっ、そんなことあるわけ、ああっ……!」
「くく、身体は正直なことだ。口では嫌がっても、我の分身をうまそうにくわえ込ん
でおる」
「い、や……あっ……かはっ……いっ……!」
「教えておこう。ぬしらはな、我らの子を産むことになる。だがひとりではないぞ。
その身が続く限り、何度でも孕み、何度でも子を成してもらうこととなる。それが
出来れば長生きできよう」
鬼が強く腰を動かしてきた。
「や、はああっ……うっ、動かないで!」
あまりの深さにまだ苦しげな表情をしたまま、蘭は鬼の突き上げに耐えている。
僅かな理性と羞恥心が、肉欲に埋没することを拒否していた。
だが、それも鬼の激しい突き上げの前には蟷螂の斧だ。
「あ、ああ……やあ、こんなの……あ、あうう……」
薄ピンクで清潔感すらあった蘭の媚肉は、今はもう淫らそのものといっていいくらい
に赤く染まっている。
鬼が律動の度合いを強め、速度を上げると、悲鳴というより大きく喘いでそれに応え
ている。
「あっ、ああっ……いっ……んっ、うむっ……」
「今、「いい」と言ったのか? ぬし、犯されて感じておるのか」
「ち、違う違うっ……、そんなこと言ってないっ……あっ、ああ……」
「声が色っぽくなってきてるじゃないか。気持ち良さそうに喘ぎおって」
「喘いでなんか……ああう……」
犯され、言葉で責められることで蘭は感じている。
だが、同様に羞恥や屈辱をも感じているのだ。
その恥ずかしささえ官能へと導かれ、一層の快楽を呼び起こされる。
「やあ、ああっ……ひっ……きっついっ……深い……あうっ……」
深くまで刺し貫かれ、大きく喘いで腰を跳ね上げる美少女を見て、背後から蘭の胸を
いじっていた鬼が焦れたように言った。
「お、おい。俺も加わるぜ」
「待て、まだ俺が……」
「いいさ。取り敢えず後ろをやる」
「ま、待て。この娘、そっちの経験は……」
後ろの鬼は小さく頷いて言った。
「俺の見立てじゃ平気そうだ。いい尻穴してやがる。さっきから、ぬしに突き込まれ
るたんびにひくついてる」
「そうか……」
「それに隆久の話じゃ、可愛い顔してるが、それなりに経験はあるようだしな」
「とはいっても、ケツはわからんぞ」
「だから無理はしないさ。だめそうだと思ったら諦める」
「仕方ないな」
前の鬼が了承すると、後ろの鬼は蘭の乳房から離れ、尻に手を伸ばしてきた。
鬼の手が尻に触れると、蘭は弾けるような悲鳴を上げた。
「やっ! な、何を……」
「尻だ」
「え……?」
「ぬしの尻をやってやる。経験はあるか?」
「お、お尻って……」
蘭の顔がカッと真っ赤になった。
「ある」どころではない。
蘭を襲った男たちは、みな執拗に尻を責めてきたのだ。
「いやよ!」
膣に太いもので栓をされ、杭でも打ち込まれたように腰が自由にならない。
無理に揺すると、中に入ったペニスが胎内のあちこちに当たって悲鳴を上げてしまう。
鬼は、汗でぬめる尻たぶをぐっと掴むと、ぐいっとそこを割り開いた。
「いやあ!!」
尻の谷間がなくなるほどに開かれ、谷底に涼しい外気が当たる。
いやでもアヌスを意識してしまう。鬼の視線を感じ取り、ひくひく蠢いているのが
わかった。
浣腸責めのお陰で、アヌスはぷっくりと膨れあがり、堅く引き締まっていたのがウソ
のような柔らかさだ。
そこを、すっと指で軽く撫でる。
「ひっ!?」
浣腸と男の視線で、よほど敏感になっていたらしく、蘭は悲鳴ともつかぬ鋭い喘ぎ
声を放っていた。
いやがってぶるぶると揺さぶっていた尻の中に指を這わせ、ひくついたアヌスを擦り、
陰部から漏れている愛液をなすりつけた。
それだけも蘭はわなわなと震えるほどに反応していた。
「大したもんだな、この感じっぷりは。やっぱり尻を犯されたこともあるわけか」
「しっ、知らない……くっ、触らないで!」
「「知らない」か。「違う」とは言わないんだな」
「……」
「バカ正直なことだ」
鬼は哄笑して、その指を挿入した。
「ひっ……うくっ……」
ゆっくりと蘭のアヌスに太い指が沈んでいく。
蘭の肛門はすっかりほぐれ、蜜を塗りつけたせいもあって、実にあっさりと指を飲み
込んでいた。
指が腸内を這いずり回ると、蘭はくぐもったような呻き声を漏らす。
「んんっ……はああ……んっ……ぐうっ……む……」
「やっぱり尻が感じるようだな。遠慮せんでいい、存分によがっていいんだ」
「や、は……あう……」
指が押し込まれると、蘭のアヌスが締め付ける。
根元まで押し込むと「んんっ」と唸って身体が硬くなる。
根元の太いところでも、蘭のアヌスは無理なく収縮し、それを受け入れていた。
腰が僅かずつ、なよなよと動き始めた。
媚肉だけでなく、アヌスからも快楽を受け取っているのだ。
「もう指なんかじゃ物足りないだろう」
「……」
鬼は乳房を揉みがら、蘭を煽っていく。
膣からの愛液の漏れは、さらに多くなっていた。
「チンポを入れられたいのだな」
「い……や……」
いやと言っているのに、さっきから蘭の肛門は窄まり、鬼の指をくわえ込んでいた。
内部の粘膜も、指にしっかりとへばりついてきている。
「あ……」
指が抜かれると、蘭は後ろを振り向いた。
顔が「どうして」と言っている。
鬼がいきり立ったペニスを手で揺さぶり、それをアヌスに押しつけられても、蘭は
悲鳴を上げなかった。
「お、お願い……」
「ん? 何だ、早くして欲しいのか」
「そ、そうじゃなくて……。いっぺんになんていや……」
「ほう」
「す、するなら普通にして……お尻はいや……」
「そう言うが、オマンコはもう埋まってるだろう」
「だから……お、終わってから……」
「もう待てんな。それに我はぬしのケツにしたいんだ」
「そんな……。じゃ、じゃあせめて順番に……。前が終わってから……」
「オマンコが終わったら、尻で受けるというのか」
「ああ……は、はい……」
「何を言っているのか」という思いは蘭にもある。
最悪、輪姦されてしまうにしても、アナルセックスなどというアブノーマルなこと
はイヤだった。
なのに「はい」と言ってしまった。
肉体が肛門性交で受けた過去の愉悦を覚え込んでいるのだ。
いや、お尻にされるのは甘んじて受けるとしても、同時に犯されるのなんていやだ。
そうされることに、蘭は恐怖を感じている。
しかし同時に、そうされた過去のレイプがフラッシュバックする。
そこには絶望感と恥辱、憤怒が入り交じり、その先にあった目も覚めるような凄ま
じい快感まで思い起こされる。
前後から埋め尽くされ、身体全部が男のものになってしまった実感と、とうとう
征服されてしまったという屈辱が胸を灼いた。
だから、せめて同時責めだけは避けたかった。
だが、そんな蘭の思いは当然のように無視された。
「だめだ」
「そんな……」
冷たい鬼の言葉に蘭は絶望したが、その裏から「またあの快楽が」というおぞましい
期待感が頭をよぎる。
鬼は、粘液でぬらついた蘭のアヌスを捉えると、こちこちになっている肉棒で一気に
貫いた。
「そ、そんないきなりっ!」
蘭は目を剥いた。
鬼のペニスはずぶずぶっと狭いアヌスを貫き、根元まで埋め込まれていた。
直腸がカリで押し広げられ、粘膜を削り取りながら、奥まで一気に侵入していく。
「くうあっ!!」
蘭の肢体がぐぐっと弓なりにしなった。
瞬間的に絶頂したのかも知れない。
アヌスだけでなく、膣もきつく締め付けてきた。
「ん? どうした、まさかいったのか?」
「ああ……」
「やはりな。可愛い顔をして尻も知ってるのか、ぬし」
「……」
「この分では、こうやって前と後ろを同時に犯られたこともあるようだな」
「違う……違うっ……!」
蘭は涙を散らせて顔を振りたくったが、脳裏には地獄のような光景が思い起こされ
ていた。
一連のパレット事件に巻き込まれ、この鬼の言う通りに、男を前後同時に迎え入れた
シーンだ。
前後の穴に太いものをくわえ込まされ、内臓まで男のものにされた気がした。
二本の肉棒が蘭の股間でひしめき合って、前と後ろから男に揉みつぶされたのだ。
あの時の地獄のような恐怖感と、地獄のような恐ろしい快感が蘭の記憶中枢を刺激
する。
忘れたいと言わんばかりに、髪を振り乱して顔を振る少女を、前後の鬼は本格的に
責め始めた。
「んああっ! あひっ! んうっ! あっはあっ!」
鬼たちは、とうとう喘ぎ始めた蘭を見ながら、同時に突き上げてくる。
「あ、ああっ! はうっ、あ、くあっ、んっ、んっ、むうっ、くううっ……!」
少女のふたつの狭い穴は、太すぎるペニスを精一杯にくわえ、受け入れている。
直腸と膣内を蹂躙する肉棒の動きを押さえるようにきゅっきゅっと締め付けた。
膣を犯している鬼も、肛門を凌辱している鬼も、互いのペニスの動きがよくわかる。
激しい勢いで媚肉を貫き、肛門を抉るようにして腸内をかき回す。
あまりに激しい動きに、蘭の膣とアヌスからは、滴る粘液の量が増えてきていた。
「や、は……あっ……うんっ……あ、いや……もうっ……やああっ……」
「いやなわけがない。こんな音させおって」
膣は、肉棒に抜き差しされるたびに、ずるっとかずりゅりゅっといった水音を立て
ている。
一方アヌスの方は、深々と貫かれると、膣よりもずっと濃度の高そうな音をぬちゃ
ぬちゃと響かせている。
「ふあっ……深いっ……あ、そんなに……ああう……いっ!」
「ほう、深いか。どっちが深いんだ? オマンコか、尻か?」
「ど、どっちも深い……ふ、深すぎますっ……ああ、奥にまで来る……ああっ……」
媚肉を奥まで突かれると、最奥にぶちあたる。
引き抜かれる時に、カリが膣内の襞を擦り取っていく、
肛門深くまで貫かれると、お尻のいちばん奥まで入ってくる気がする。
ぎちぎちに硬いものが、ごりごりと腸内を抉っていく感じがたまらなかった。
「深いのがいいんだろう。いいと言え」
「ああ……」
「ああ、じゃない。気持ちいい、だ」
「き……気持ち……い、い……」
「もう一度」
「き、気持ちいいっ……!」
尻に埋め込まれた肉棒の太さと硬さに、苦痛の悲鳴を上げつつも、蘭は盛んに腰を
捩っていた。
嫌がっているというよりも、苦しくない姿勢を探っている感じだ。
そうした動きでも、ペニスは腸内を擦っていく。
そして新たな快感スポットが見つかってしまう。
淫らな音を立てながら、蘭のアヌスをペニスがほじくり、腸液をかい出していた。
「やっ……は……んんっ……くうっ……」
「何を我慢している。気持ちいいと認めただろうが。よがればいい」
「が、我慢なんか、し、してな……いいっ……!」
必死にかみ殺している喘ぎが、ぽろぽろと口から零れ始めた。
男性器で尻をこねくり回される快美感に取り込まれてしまいそうになる自分が怖か
った。
そんな蘭の思いに関わらず、腰から力が抜けていく。
肛門の方はいっそう強く収縮を始めていた。
「うっ、ん、うっん、うむっ……ああっ……あっ、いっ……」
しっかりとペニスにへばりついた腸襞が、引き抜かれる肉棒と一緒になってずる
ずるとアヌスから引き出される。
突き込まれると、また巻き込まれるようにしてめくれ込まれていく。
あまりに強くピストンされるせいか、アヌス粘膜が赤く充血してきていた。
「あ、あっ、激しっ……激しすぎますっ……お尻、壊れちゃうっ……!」
尻を突かれるたびに、蘭の黒髪が舞い乱れる。
ペニスの先がポイントに触れると、蘭は大きく仰け反って喘いだ。
「いいっ……! そ、そこはだめっ……か、感じすぎ、あっ……いいっ……!」
肛門から入り込んだペニスが、子宮の裏側をぐっと押しこくったのだ。
前から入れられても子宮で感じるように開発されていた蘭は、後ろから刺激されても
いきそうになるほどに感じていた。
恐ろしい二匹の鬼に前後から同時に犯されているというのに、その責めに順応させら
れていく自分の肉体が信じられなかった。
堪えようとすればするほどに、前と後ろから激しく突き上げてくるものを感じ取って
しまう。
勝手に肉体が男を貪っている。
否応なく官能の炎が燃え上がってくる。
前後から肉棒が同時に突っ込まれ、胎内で薄い肉を通じて激しく擦れ合う、蘭は大きな
喘ぎ声を出して悶えてしまうのを止められない。
「いやあ……あああ……あうっ……いっ……いいいい……」
蘭は頭を大きく振り、髪を振り乱してよがり、喘ぎ、悶えた。
そんな蘭をさらに追い込むべく、鬼どもはなおもぐいぐいと突き込んでくる。
二匹の鬼の間で、蘭の腰がミシミシと軋むほどだ。
身体中の肉がどろどろに熱くとろけて、灼け爛れていく。
その炎はあっという間に脳にまで届いた。
「し、死ぬ……死んじゃうっ……!」
「くく、可愛いことを言いおるわ。死ぬほど気持ちいいのか」
脳が白く灼けるほどの快美に、もう鬼の言葉に反応することも出来ない。
めくるめくような官能の嵐に翻弄され、腰を捩らせて尻を波打たせ、乳房を揺さぶる。
抉られ続ける媚肉と肛門は、きつい収縮と妖美なほどの吸着力を持ってペニスをきり
きりと締め付けた。
爛れるような極彩色の官能に染まり、清純だった女子高生は性の深淵へと近づいて
いく。
白く張り詰めて弾力のある若い肌が、ぼうっと桜色に染まっていく。
汗が滲み、美しくも妖しい光を放っている。
前後から突かれるたびに、重そうな乳房がゆさゆさと揺れ動く。
それを、後ろからアヌスを犯している鬼がまた両手で掴む。
「あうっ……む、胸……ああ、いい……」
前後同時責め、加えて乳房への愛撫で蘭は堕ちてしまった。
恥辱も羞恥も消え失せ、理性は地平の彼方へと飛んでいった。
はちきれそうに充実した乳房は重量感があり、揉み込む鬼の手を弾き飛ばすほどの
弾力を持っていた。
成熟した女のような、とろけてしまいそうな柔らかさこそないが、しっこりと盛り
上がり、若い硬さを持った乳房だ。
張った若い乳房とはいえ、これだけサイズがあって重いと、どうしても垂れ気味に
なるのだが、蘭のものはまったくそんなことはなかった。
スポーツをやっていたせいかも知れないが、まったく崩れも緩みもなく、ピンと形
良く張り出している。
おまけに感度も素晴らしく、乳房全体を強く揉んだり、乳首をピンと弾いてやるだけ
で、零れるような喘ぎ声を上げ、肢体をくねらせてよがるのだった。
はっきりと快感に悶える表情を晒しながら、蘭は喘いでいた。
苦しがっているような顔だが、それだけ快感が大きいということらしい。
全身で責めを受け入れている肌から汗が噴き出し、飛び散っている。
豊かに育った尻の肉はぶるぶると痙攣し、今にも気をやりそうなことを伝えていた。
アヌスの収縮がいっそうに強くなり、責めていた鬼もうわずったような声を出した。
「くっ……、また締まりがよくなりおって。娘、いきそうなのか?」
「いっ、いくっ……!」
蘭は前からの突き込みに悶え、後ろからの突き上げに狂いながら、素直に認めた。
普段の蘭からは想像もつかないような喘ぎ声を上げ、蘭の最後が迫った。
「ああ、もうだめっ……い、いきそ……ホントにいきそうですっ……あああっ!」
「よし、いけ!」
「いくっ……、うああっ、い、いく……いくうっ!!」
蘭の膣と肛門が、肉棒を同時にきゅっと締め上げた。
当然、膣よりアヌスの締め付けの方がきつい。
尻を責めていた鬼はたまらず呻いた。
「くっ……、出る!」
びゅくうっっ。
どぶどぶっ。
どくどくっ。
どびゅっ。
熱い精液の感覚を直腸へもろに感じ取り、蘭はぐうっと背を仰け反らせた。
「ひぃっ、で、出てるっ……あ、あ、お尻に出すなんて……あ、あ……」
鬼は蘭の両胸をぎゅっと握りしめ、腰に力を入れて射精した。
射精が終わるまで、蘭の尻たぶを開き、腰同士が密着するほどにくっつけていた。
どくどくと射精され、お腹が「ぐぐっ」と鳴るほどに精液を注ぎ込まれた。
「あ……、はあ、はあ、はあ……」
精巣からすべての精液を吐き出し、鬼はようやくペニスを抜いた。
めちゃくちゃにピストンされ、壊れる寸前まで蹂躙されたアヌスは、まだ痺れている
かのように口が完全には閉じなかった。
そこから、さっき出された大量の精液が滴り落ちている。
何を思ったか、興奮した男は顔の鬼面を取った。
取ったといっても、少し上にずらして鼻と口を出しただけだ。
その顔が蘭に迫る。
「な、何を……あっ、あむうっ!」
唇を奪われた。人でなく、異形の鬼にキスされたような気がして、蘭は驚いて口を
振り放した。
「ぷあっ! いやっ、キスはいやよ! あむむっ」
鬼は蘭の両頬を押さえて顔を固定し、口づけを拒む少女の唇をまた吸った。
「むうっ……んんんっ……んじゅっ……んむっ……ぐっ!」
蘭の抵抗が激しいと知るや、鬼は思い切り腰を送った。
ずぶっと一番奥まで入れられ、その衝撃で蘭は顔を仰け反らせる。
アヌスでいかされたばかりで、絶頂感がまだ落ち着いていない。
そこで媚肉を責められる。敏感なクリトリスを陰毛で擦られ、膣内を硬い肉棒で
抉り回される。
たちまち胎内が反応してくる。
膣の奥から、痺れるような快感が蘭の脳内に届いた。
だんだんと蘭の抵抗が弱くなってくる。
「ん、んむ……むむ……んっ……」
口の力が抜け、鬼の舌が咥内に入り込む。
蘭の舌は脅えて奥へと逃げていたが、鬼はそれに舌を絡めて誘い出す。
蘭の柔らかい舌に、鬼の舌が絡みつき、ねっとりと唾液を交換する。
少女の首筋に鳥肌が浮いてきた。
咥内でも感じているのかも知れない。
蘭は、自分から男に舌を絡めるところまではいかないものの、もう鬼の舌を妨害
しようともしなかった。
「んう……ふっ……ぐ……うっ……」
口中を舐め回される濃厚なディープキスに、蘭はうっとりとしたような美貌を浮か
べた。
気ままに動き回る鬼の舌を、追いすがるようにして蘭の舌が動いている。
鬼の舌先が上顎の裏や歯茎をこそぐように舐めると、ぴくんと眉が寄った。
蘭の舌が追うと、今度は舌の裏の粘膜をこそいでくる。
頬の裏も削られ、口の中すべてが鬼の舌に占領された。
「ん、んぶっ……んふ……んんん……んんうっ……」
鬼の淫らな口づけに陶酔している蘭の胸に、また手が伸びてくる。
さっき蘭の肛門に射精した鬼が、後ろから乳房を揉んできた。
太い指を器用に動かし、蘭の乳首をこねている。
乳輪の膨らみをなぞるように指で擦ったり、乳房全体を鷲掴みにして絞るように
揉みしだいた。
「んんんっ……んんっ……ん、んむう……」
乳房への愛撫が、蘭をさらに高まらせ、淫らな方向へ導いていく。
屈服したかのように、とうとう自分から鬼に舌を絡めだした。
鬼はその甘い舌を存分に強く吸った。
蘭は痺れるような陶酔感を味わいながら、鬼の好きなように吸わせている。
やっと鬼の口から舌が解放されると、今度は蘭の方が鬼の厚ぼったい舌を吸ってきた。
「んっ、んじゅっ……ちゅちゅっ……んじゅうっ……」
男の汚らしい唾液を、美少女は躊躇なく飲み込んでいた。
自分からも唾液を出し、鬼に飲ませている。
鬼は興奮が頂点に達したかのように、突然蘭の顔を抱え込み、一層に強くその朱唇を
強く吸った。
「んんんっ!? んっ、んっ、うん、うんっ……んんんっっ!」
蘭のしなやかな裸体が、鬼の腕の中で弾んだ。
ビクッと一度震えたかと思うと、すぐに小さく痙攣し始めた。
どうやら、激しいキスだけでいってしまったようだ。
「ふう」
鬼はやっと口を離した。
5分以上も続いた長い口づけは息苦しかったか、それだけで蘭をいかせたことに
満足していた。
「どうした、蘭。キスだけで気をやったのか」
「……」
顔をがくりと垂らし、答える気力もない蘭の腿を抱え、鬼は本番に入っていく。
「まだまだだ。ではいくぞ」
「……」
もはや蘭の口から、拒絶の言葉は出なかった。
前後同時責めをされ、まずアナルセックスで激しい絶頂まで導かれ、もう性的な抵抗
が出来なかった。
何より、肛門でいった後も媚肉に入りっぱなしのペニスが許してくれない。
「あ、まだ動いちゃいや……」
いかされたばかりで敏感になっている膣に、強い刺激が与えられる。
ずんと深くまで強く突かれると、肛門からぴゅっと精液が飛び出した。
そんな恥ずかしいことになっているとは知らず、蘭は犯される快感に喘いでいた。
「あああっ……お、奥っ……奥まで来てる……ひっ……」
膣を深くまで貫き、蘭の腰に腰が当たると、張った乳房がゆさゆさと揺れ動く。
バックから犯していた鬼が引いたので、今度は乳房を占有できる。
鬼は、扇情的に揺れる胸肉を掴み、乳搾りでもするように揉みしだいた。
乳房と媚肉の両方から強い快感を受け、蘭はたちまち快楽の渦に飲み込まれていく。
「ひっ……、ち、乳首痛いっ……いいっ……あ、強すぎますっ……む、胸が……んんっ
……き、気持ち、いいっ……あああ……」
瑞々しい肉体を震わせ、懸命に快楽と戦っていたのがウソのように蘭は喘ぎ、悶えて
いた。
鬼の責めも、尻は終わったものの、さらに激しさを増していく。
たぷたぷと音がしそうなほどに強く揉まれているのに、蘭は乳房から快感しか感じて
いない。
今の彼女にとって己の乳房とは、子育てに使うものではなく、自分の快楽のためだけ
にあった。
子宮に届くまで突き上げられると、蘭は腰を大きくビクンと何度も跳ね上げて悶える。
すべすべしていた若い肌は汗にまみれ、流れるほどになっていた。
身体が持ち上がるほどに強く大きくぐいぐいと突き上げられ、蘭の身悶えと痙攣は
大きくなる一方だった。
「いああっ、いっ、いいっ……あ、あっ……ど、どうしよう……ま、またいきそうっ
……!」
「いけばいい。何度いってもいいんだ」
「ああ、いく……、くっ、来るっ……すごいの来ちゃうっ……」
わなわなと唇を震わせ、蘭は身体の奥からせり上がってくる巨大な快感を押し戻そう
としていた。
我慢しようというのではない。
ただ、この勢いでいかされたらどうなってしまうか自分の身体がわからなかったのだ。
それでも強制的に送り込まれる強力な快感は、少女の意志を彼方まで放り投げる。
「い、いく、いくっ……だめ……もうだめっ……い、いくう……ひっ、いくっ……
いっ、いっくうううっっ!!」
ずんと強烈な一撃を子宮に食らい、蘭は全身を大きく震わせて絶頂を迎えた。
膣は、責めてきた肉棒を噛みきるほどの強さで締め付ける。
さすがにそれには耐えきれず、とうとうふたりめの鬼も白濁を放った。
どっぴゅっっ。
びゅるるっ。
びゅくっ。
どぶぶっ。
「あああっ!? な、中に……! 中に出てる……、ひ、ひどい……あ、また……
またいくう……」
熱く濃厚な粘液を子宮へ強かに浴びせかけられ、蘭は続けざまにいかされた。あまり
の締め付けのきつさに、鬼の方は思うように射精できない。
結局、蘭の締めるタイミングに射精の発作を合わせた。
緩むとびゅくっと精液を発射し、きゅっと締まる時は耐える。
きゅっ、びゅるるっ。
きゅうっ、びしゅっ。
きゅっ、びゅくんっ。
きゅっ、ぴゅるっ。
最後の一滴まで注ぎ込むと、鬼面の上からも満足そうな様子が見てとれた。
名残惜しいというより、蘭の締めがきつくて抜くのに苦労したが、ようやく肉棒を
抜いた。
「あう……」
半勃の状態で、カリが膣口に引っかかる感覚に、蘭はまた喘いだ。
ぬぷりと抜かれると、膣からもぼたぼたと精液が漏れている。
前後の穴から男のエキスを逆流させ、美少女はぐったりと縄目にしなだれていた。
「どうだ、娘。何度いったか憶えているのか?」
「ああ……」
「どこで気をやったか言ってみろ。正直に言えば、また愉しませてやろう」
極めて無抵抗に蘭は答えた。
「ああ……、お、お尻と……前で……」
「「前」だと? 気取るな、ちゃんとオマンコと言え。尻も、尻の穴だ」
「あ……。お、お尻の、穴と……お、お……オマ、ンコで、何回も……いき、まし
た……ああ……」
鬼は大きく頷いて、蘭の黒髪を撫でて言った。
「よし、よく言えたな。そうして素直でいる限り、ぬしは長生きできるし、崇めら
れるだろう」
そう言ってちらりともうひとりの白鬼の方に目をやると、さっきまで蘭の尻を犯して
いたそいつは、早くも二度目の勃起をしていた。
肉棒をしごきながら、今度は媚肉を犯そうと、蘭に近づいてきていた。
────────────────
少女たちは意識が朦朧としていた。
度重なる激しい凌辱に加え、儀式の最中にもたびたび飲まされた怪しげなクスリの
せいもあるだろう。
現実と非現実の境界があやふやとなり、自ら愛撫を望むこともあれば、泣き叫んで
拒むこともあった。
それでも、何度となく胎内に射精されるうち、あきらめのような気持ちも滲んできて
いた。
ここで一生飼い殺し、家畜のように飼われ、好きなようにセックスされ、しまいには
妊娠させられ、出産までさせられる。
しかも、それを繰り返すとまで言われた。
死んでもいやだという気持ちと、もうどうでもいいという捨て鉢な感情が入り乱れ
ていた。
そんな時だった。
「?」
少数の信者が物音に気づいた。
装束を着ずに、藁蓑だけをまとった見物の連中である。
「おい、今、何か聞こえなかったか?」
「うるせえな、黙って見てろよ」
声を掛けられた方は、男を見もせずに不機嫌そうに答えた。
見れば、蓑の隙間から男性器を出してしごいている有様だ。
しかし、手を伸ばせば届きそうな場所で、ふたりの類い希な美少女が犯されている
風景が展開されているのだ。
自分で手が出せないのであれば、オナニーのひとつもしたくなるというものだろう。
だが、そんな男でも、いやが上にも現実に引き戻される音が響いた。
「警察だ! 全員そこを動くな!」
そこで初めて、びっくりしたように男たちが辺りを見回した。
いつの間にか、出入り口に屈強な私服の男たちと、制服警官たちが固めている。
歩哨はどうしたのだと思ったが、この分では早々に取り押さえられたに違いない。
それにしても、見張りに声すら出させずに包囲されるとは思わなかった。
また声がした。
今度は凛とした女性の声だ。
「警視庁捜査一課です。未成年者誘拐監禁、婦女暴行の現行犯で、あなたたちを逮捕
します!」
────────────────
蘭たちは、神が宿るための憑代(よりしろ)とされたのである。
江戸の昔から迫害され、弾圧され続け、その結果ひとびとから逃れるように隠れ住ん
でいた彼らには、狭い世界しかない。
自分たちの住んでいる里が、事象のすべてだったのである。
僻地の農村とて、人の出入りはある。僅かずつ少しずつではあるが、住人の入れ替わり
はあるのだ。
ところがこの里にはそれがない。
離れ小島だったこともあるが、彼らの特殊な事情により、行商人や役人たちも寄せ付け
なかった。
経緯を考えればやむを得ないことではあるが、当然、里の中は澱んでしまう。
新陳代謝のない人里にとって、最大の問題は何か。
子孫である。
当時から、里全体で50人もいなかったこの島は、その限られた人間の間で子孫を
作らねばならなかったのである。
何代もしないうちに、里人すべてが血縁者となってしまうことは明白だ。
それによって起こる悲劇的な末路。
近親交配であった。
両親の血縁が近ければ近いほどに、生まれた子には劣性遺伝する可能性が高い。
どういうことかというと、両親が同じ血縁ということは同じ劣性遺伝子を持っている
確率が極めて高いということだ。
つまり、両親ともに同じ劣性遺伝子を持っていたとすれば、父親から遺伝子を受け
継ごうが、母親から受け継ごうが、同じ劣性遺伝子を受け取ってしまうことになる。
世代を渡って近親交配を重ねていった場合、劣性遺伝子も重なっていく。先天的な
障害があったり、場合によっては致死性のある遺伝子になってしまうこともある。
近交退化と呼ばれるこの異常は、骨格異常や内臓異常のようなものも多い。
種としてのポテンシャルが落ち、生命力が低下する。
聡子たちの祖先がそのことを知ったのは、明治以降だったらしい。
ことの重大さにおののいた彼らは対策を協議した。
外から嫁を取る、婿を迎える。
そう言ったまともな意見もないことはなかったらしいが、今さら対外的に開くこと
には反対する意見が主流で、加えて信教を捨てることも出来なかった。
彼らに加えられた弾圧を思えば、それも致し方なかった。
そこで提案されたのが、外部から強引に女を拐かすという策だった。
それまで外の人間たちは、里の者を人間扱いしてこなかった。
それだけに、里にとっても、外部の人間は人間ではなかった。
人間であれば、同じ人間に対してあのような非道な行為が出来るわけはないのだ。
ならば遠慮することはない。
初めて行われたのは、大正に近かったという。
最初は隣の御蔵島から若い娘を攫ってきていた。
しかし神巫子よりは大きいとはいえ、御蔵も同じ孤島である。
人口は少ないし、あまりに行方不明が出ては、外部に漏れる恐れもある。
新島や神津島などからも攫ったらしいが、同じ理由で早々に止められた。
本土──東京へまで遠征して女を調達するようになったのは戦後になってかららしい。
今回の蘭たちのように、言葉巧みに島へ誘い出すこともあったし、夜陰に紛れて強引
に誘拐することもあったようだ。
一回につきふたりずつ。
毎年というわけにもいかないから、ある程度のインターバルは置く。下島への渡り道
が出来る数年に一度の祖神祭の時と定められた。
祖神祭は、正式には祖神聖誕祭と呼ばれていたらしい。
摘発逃れの度重なる改変や偏狭な環境により、淫祠邪教じみた姿に生まれ変わって
しまっていた。
攫われてきた女はアカニンと呼ばれた。
儀式の際、赤い頭巾を被せられたのはそういう意味のようだ。
それをシロニンと呼ばれる御巫主が性交して種をつける。
隆久たちはクロニンで、これは御水中と呼ばれる補佐役で、輪番制の役柄である。
次期御巫主候補だ。
女をアカニンと呼ぶのは、恐らく経血のイメージ──「赤」だろうと思われる。
シロニンは白装束の鬼姿だが、この「白」は精液の意味だろう。
クロニンはそのままずばりの黒子ということのようだ。
「祭りってのは、このことやったんやな……」
踏み込んだ警察の大部隊によって、祭殿内は大変な騒ぎになっていた。
警察に連絡を取り、出動を要請した後、平次はここに駆けつけたのだが、当然、乱入
は出来ない。
多勢に無勢もいいところである。
連絡を受け、異常事態に仰天した御蔵の駐在所は、所轄をすっ飛ばしていきなり本庁
と連絡を取った。
連絡を受けた捜査一課は、目暮警部以下、強行犯係総動員で島に突入した。
それもヘリを使っての強行上陸で、前代未聞の大捕物となった。
未成年の女性ふたりが人質であることを考慮し、電撃戦で臨むことを警部が判断した
のだ。
結果的にそれが功を奏した。
所轄所がランチで駆けつけたのは、もう朝方だったのである。
それまでには儀式は終わり、蘭たちは島内に隠され、島民も何もなかったような顔を
していたことだろう。
儀式の最中に突入したことで、証拠隠滅どころではなかったのである。
平次はもちろん、コナンも一緒に祭殿内に突入するつもりだったのだが、そうはいか
なかった。
鍾乳洞の出入り口には番兵の警察官が立っていたし、一般人はとても入れるものでは
なかった。
知人の高木刑事や佐藤刑事たちでもいれば何とかなったかも知れないが、あまり大勢
の刑事が踏み込んできて区別がつかなかった。
それにしても捕り物の最中なら、やはり入れてはもらえないだろう。
その洞内からは騒然とした物音がなくなっている。
どうやら捕り物は終わったようである。
神巫子の人々は拐かした女──マリアから産まれ出ずる新たな生命を「神」と称して
いたのだ。
実際、産まれた子は「小神」と呼ばれ、3歳までの間は極めて大切に育てられる。
幼児の致死率が高かったせいもあるだろう。
そこまで育てば、あとは普通の里人としての生活が待っている。
養親はシロニンとなる。
ちなみに、儀式で懐妊した女は「マリア」と呼ばれて崇められることとなった。
その後、シロニンだけでなく、他の里人とも交わり、子を成すことを要求される。
この時点で、たいていの女は諦めて里での生活を受け入れていくという。
それが出来なかった者は──自らの命を絶つのだそうだ。
ちなみに、儀式で懐妊できずとも、3年は猶予され、交配を重ねていく。
3年経っても身籠もれなかった場合は「石女」(うまずめ)と判断され、殺害されて
しまう。自殺したり殺された女の遺骨が、コナンたちの見た洞窟の骨だったのだろう。
「けったくそ悪い!」
平次はそう吐き捨てると、足下の石を蹴飛ばした。
「服部……」
「俺な、聡子ちゃんに聞いた戦闘機のタンクの話が忘れられへんのや」
平次はそう言って、朝焼けに染まりつつある海を見つめた。
「この島の人たち、あんなもん使わんと水も飲めんかったんやろ? 水道の蛇口ひね
れば当たり前のように水が出るような生活しとった俺らには想像も出来ん話や」
「……」
「そんな質素な暮らししとった人たちが何でや? 何でこんなひどいことせんと
いかんかったんや?」
色黒の高校生は、ぐっと拳を握りしめている。
「聡子ちゃんかて、ええ子やったやないか。どこでこんなに歯車が狂ってしまい
よったんや」
青臭い話だと思いながらも、哀はつき合った。
「そうね。ここの人たちをここまで追い込んでしまった原因があるんでしょうね」
「……俺たちのせいか?」
「別に工藤君たちのせいじゃないわ。でも、彼らが孤立し、いえ、孤立し続けた
遠因を作ったのは、間違いなく島の外の人たちだわ」
「神巫子の人たちが排他的になっていたせいもある……」
「そうだけど、その理由は……」
「もうやめや」
コナンと哀の議論を平次が止めた。
答えの出せない議論や虚しい意見交換は、彼の好むところではない。
「コナン君! みんな!」
そこに聞き慣れた声が洞内に響いた。逆光で表情は確認できなかったが、女性の
シルエットだ。
「佐藤刑事……! 佐藤刑事が来たんですか?」
「あらあらご挨拶ね。私じゃ役不足かしら?」
美和子がからかうように言うと、コナンは慌てて手を振った。
「いや、そうじゃなくて、どうして本庁の刑事が来たんだろうって……」
「そりゃあこれだけの大事件だもの。もちろん所轄も動いているけど、本庁との合同
捜査よ」
「そうだったんですか……」
足場の悪い岩場を苦労して歩み寄って、美和子が小声で言った。
目を伏せている。
現場の惨状を見れば、ふたりの美少女が何をされていたのか一目瞭然だったろう。
「蘭ちゃんと和葉ちゃんは収容したわ」
「そ、そや。和葉は……」
「大丈夫、心配しないで」
美和子は優しく微笑んだ。
「外傷は擦り傷くらいで大したことはなかったわ」
「でもやな、和葉のやつは、その……」
「服部くん」
美和子は大きな目でじっと平次を見た。
美しい瞳に、限りない優しさと意志の強さが秘められているようで、平次は棒立ちに
なってその顔を見返していた。
高校生探偵あたりでは太刀打ち出来そうにない迫力、そして思いやり溢れる笑顔
だった。
「いいこと? 医師たちが治せるのは身体の傷だけ。心の方は精神科任せになんか
せずに、あなたが何とかなさい。それがあなたのつとめなの。わかった?」
「は、はい」
「よろしい」
慌てるように平次が返事をすると、美和子はにっこりと微笑んだ。
「何も言わないでいいわ。何も聞かないでいいのよ。ただ、和葉ちゃんの側にいて
あげなさい。それだけでいいわ」
敏腕の女性刑事は、うつむく平次の肩に手を置いて言い聞かせると、今度はしゃがみ
込んでコナンと目線を合わせた。
「コナン君」
「……」
「……わかってると思うけど、蘭ちゃんは……」
「わかってるよ、佐藤刑事。だから何も言わないで」
「そう。ならいいの」
「……」
「あなたに蘭ちゃんの恋人の役割を押しつけるのは肩が重いかも知れないけれど、
今はあなたしかない」
こんな時に、工藤新一はどこで何をやっているのか。
人ごとながら、美和子も少し腹が立ってくる。
彼がいない今、蘭のことは、この少年に頼む以外にない。
本来なら、こんなことを小学生に任せるというのは、無謀と言うより無茶だ。
強姦だの輪姦だのという言葉の意味すら、よくわかっていまい。
意味がわかればわかったで困ることになる。
だが、彼女はコナンに対して小学生扱いしていない。
信用し、信頼していた。
コナンに任せるのは最適だと信じている。
「何かあったら、すぐ私に連絡するのよ?」
「うん……」
「あ、そうそう、蘭ちゃんと私が、今、通院しているの、知ってる?」
「うん。蘭ねえちゃんから少し聞いた……」
「そう。帰ったらすぐにまた連れて行くわ。こういうことにも、そこのお医者さんは
適任だと思うから」
「……」
美和子の言葉を聞きながら、コナンは一度一緒にそこへ行ってみようと思っていた。
その時、高木刑事の声がした。
「佐藤さん! ここでしたか」
「あ、高木くん。どうなった?」
「はい、洞窟内にいた連中は全員逮捕しました。総勢で38名ですよ、とてもヘリじゃ
乗せきれないし、ランチ一隻じゃ無理です」
「応援は?」
「さっき警部が頼んでました。容疑者収容のためのランチを5,6隻出してくるそう
です。あ、コナン君」
高木はコナンと哀、そして平次を見て近寄ってきた。
「君たちも一緒に行ってくれないかな? 蘭ちゃんや、あの和葉ちゃんたちを収容した
ヘリが出るんだ。大至急警察病院に運ぶって」
「お行きなさい」
美和子に促され、コナンたちは魔の島を離れて行った。
戻る 作品トップへ 第六話へ バッドエンド1話へ