「よいせっと」

大西と中島が、運んできた玲子をベッドに放り出した。

「!」

目隠しされたままの玲子はスプリングに身体を弾ませて呻いた。
攫われたらしいことはわかったが、どこに連れて来られたのかわからない。
黒いアイマスクをされ、猿ぐつわを掛けられた。
その上でクルマのトランクに押し込められたのだ。
かなりの時間、トランクの中にいた。
そこから出されると、今度はモーターボートらしいのに乗せられ、そこからまたクルマで移動
した。
さっきとは別のクルマらしかった。

そして今度はトランクではなく、リアシートに座らされた。
目隠しはされたままだったが、トランクから出されたところを見ると、恐らく人気のない場所
なのだろうということはわかった。
クルマから降ろされると、すぐに屋内に入った。
そして両脚を抱えられ、腋に手を入れられて、ふたりがかりでここまで運ばれてきたのだ。

「ん! んんっ」

ベッドに転がされ、藻掻いたが、すぐにまた男たちが押さえ込んできた。
両手を頭上まで持ち上げられ、そこで手首を縛られた。
縄で直接ではなく、何やら革のようなベルトで固定されている。
「しまった」と思った時には、身体が引き延ばされていた。

「んむっ……むううっ」

思うように身体の自由が利かない。
無理もなかった。
トランクの中では不自然な姿勢で縛られていたし、クルマに乗ってからもロープは解かれなか
ったのだ。
手足の筋肉が痺れて言うことを聞いてくれない。

こうして玲子は、両手首をまとめるように縛られ、天井から吊されることとなった。
足がぎりぎり床に着くかどうか、という高さまで吊られている。
完全に全体重が手首だけにかかるようだと身が保たないが、こうしてあれば苦痛ではあるもの
の、何とか耐えられる。

拉致した人間がそこまで考えてやっているとすれば、単なる粗暴な犯罪者ではないのかも知れ
ない。
玲子は、ここに運ばれてくるまでの間、ただ脅えていたわけではない。
目隠しされてしまった以上、彼らの人相風体を見ることは出来なかったし、場所の確認も出来
ない。
出来ることといえば、移動にどれくらい時間がかかったのかを体感的に知るくらいのことだ。
後々、おおよその居場所を推理することも可能になるかも知れない。

あとは、犯人たちのこと、そして目的を考えていた。
自分を拉致した理由は何なのか。
玲子が東京地検の検事だと知ってのことなのか、あるいは無差別に攫っているのか。
単純な営利誘拐なのか、それとも他に要求があっての行為なのか。
そして犯人のこと。
複数らしいことはわかったが、何かの組織なのか。
少人数のグループなのか。

事件解決に向けて、考えることはいくらでもあったのだ。
だが、そうした冷静な思考もここに至って脇に追いやられた。
単なる監禁ではなく、縛ったまま吊されるということは、営利目的や要求を通すための犯罪では
ないのかも知れない。
玲子自身に対する悪意があるようにしか思えない。
そこまで考えた時、ようやく猿ぐつわとアイマスクが剥ぎ取られた。

「う……あっ……はあ……はあ……」
「苦しかったですか? ごめんなさいね、こうでもしないと大声出されるかも知れなかったから」

聞こえた声は、若い女性のものだった。
玲子は軽く頭を振って意識をしゃんとさせる。
そうしていると、ぼやける視線がどうにか視力を取り戻してきた。
彼女の目に映ったのは、アームチェアに腰掛けている少女だった。

「あ、あなたは……誰?」

まだ縛られていた跡が残って、少し痛む口から何とか声を絞り出した。
それを聞いて、玲子を運んできたひとりらしい男が、オーバーに失望したような口調で言った。

「ありゃ、この人、晶(あきら)さんのこと、ご存じないんですかね?」

声の方を見ると、こっちも若い。
男というよりは少年である。
割とがっしりした体格で、うっすらと日焼けしている。
身長は玲子と変わらないくらいありそうだが、表情がまだあどけない。

「やっぱり検事さんともなると、テレビ見たり、J−POPなんて聴かないのかも知れませ
んな」

もうひとりの少年がそう言った。
彼も玲子を運搬したひとりだ。
こっちは少し色白で、ひょろりと背が高い。
痩せてはいるが、ガリガリという印象はなかった。
指も細く、仕草もやや女性的だ。

「ねえ、あなた本当に晶さんに見覚えないの?」

そう言ったのは、晶と呼ばれている少女の後ろに控えていた少年だ。
割とどこにでもいる中学生といった風情で、縁なしの眼鏡をかけていた。
切れる秀才というイメージだが、その分、冷たそうな印象も受ける。

「晶……?」

言われて、玲子は改めて少女を観察した。
やや青みがかった黒髪が長かった。
その髪を頭の左右で分けて長く垂らしている。
いわゆるツインテールというやつだろう。
髪をまとめているのが黄色いリボンだった。
つぶらな瞳は黒目がちでぱっちりしている。
すっと通った鼻梁や小さめの口、細面の美貌が育ちの良さを窺わせた。
薄いブルーのワンピースは、名の知れたブランド物ではなさそうだが、この少女が着るだけで
格が上がるように見える。
スカートから覗くふくらはぎや足首も細く、少女らしい青さを主張していた。
そこまで確認して、やっと玲子は思い出した。

「確か……松木、晶……?」
「あ、知ってた。よかったあ、がっかりしちゃうとこだったわよ」

玲子が言い当てて、美少女はニッコリと微笑んだ。

松木晶。
今をときめく、J−POPの歌姫である。
日本を代表するシンガーとして、アジアはもちろん欧米でも話題になりつつある歌唱力を持っ
ていた。
出すCDは軒並みミリオンセラーとなり、最新アルバムは日本だけでなく、香港、台湾、韓国、
そしてアメリカで同時発売になった話題作だ。

まだ15歳なのだが頭の回転が良く、テレビのバラエティ番組などに出演しても、司会者や他の
ゲストたちとのトークでも気の利いた会話が出来るので、お茶の間でも人気があった。
といって、毒舌や脳天気なキャラではなく、きちんと礼儀やマナーを心得た対応をするので、
若者だけでなく年輩のファンをも多数抱えている。
宇多田の後を継ぐと言われているが、彼女と違って晶はテレビにも積極的に出ているので、人気
という点ではすでに上回っていた。

そして、玲子の記憶が正しければ、確か政権与党の大物政治家の娘だったはずである。
その松木晶がなぜこんなことを……。

「でもさ、あたしのこと思い出すのに時間がかかるくらいだから、あんたたちのことなんか知
らないんじゃないの?」

晶はそう言って少年たちをからかった。

「一応、教えてあげるとね、あなたを運んできたふたり。そっちの黒い方が大西保(たもつ)。
スポーツニュースとか見てれば知ってるんじゃないかな。ホラ、こないだプロデビューを果た
した中学生のテニスプレイヤー。14歳」

紹介されると、保は唇を歪めて鼻で笑った。

「で、そっちのなまっ白いの。彼のことはさすがに知らないわよね。中島修一っての。ご両親
はアメリカで開業してるお医者さん。修一も医者になるつもりで、アメリカの医大に通ってる
の。修一も14だけど、飛び級だよね?」

修一は軽くうなずいた。

「最後はこいつ」

晶は親指で後ろを指すように言った。

「彼は知ってるかもね。桑田憲彦っての。ほら、天才少年棋士って言われてるんだけど、知ら
ない? 将棋のさ、奨励会っての? それに入ってる子。こないだ関東のリーグ戦で優勝して
四段になったんだよね、14歳でさ」

「ええ、まあ」

憲彦は、満更でもない顔でうなずく。

「……」

紹介は受けたものの、玲子には訳が分からなかった。
彼らの言い分を信じるならば、この少年少女たちは、いずれも犯罪や組織とは無縁の恵まれた
環境にあるはずだ。
その彼らが、どうしてこんな大それたことをしでかしたのか。
そこまで考えたところで、晶が言った。

「いいわよ、あんたたち」
「へへ……」

晶の合図とともに、少年たちが玲子に近寄ってきた。
目つきが尋常ではない。
血走っている。
獲物を目の前にした獣のようだ。

玲子は天井から一直線になったような格好で吊られている。
そのため、腕は動かない。
脚もまだ痺れが取れていない。
腕が引き延ばされているため、着ているブラウスを胸が押し出すように張っていた。
そこから目を離さず、修一が白いブラウスに手を掛けた。

「なっ、なにを……やめなさい!」

修一は上から、憲彦は下から順番にブラウスのボタンを外していった。
昂奮するのか、指がもつれてうまく外せないようだ。
全部外すと、スカートから一気に裾を引き上げた。
だが、両手首がベルトで固定されているだけに、ブラウスどころか上着のスーツも脱がせること
は出来そうにない。

「あ、そうか」

晶はそうつぶやくと、ハサミを探しだして玲子の側に寄った。
刃物を見て、さすがに冷静な検事も慌てる。

「何をするの! やめなさい、そんなことは」
「ちょっとおとなしくしててね。暴れると綺麗なお肌に傷がついちゃうかもよ」

そう言いながら、少女は器用に玲子の着衣を切り裂いていく。
ジョキン、ジョキンと大きな音を立てながら、ステンレスのハサミが玲子の身体を這うように
進んでいった。
スーツは背中の部分を下から首のところまでハサミを入れられて、左右真っ二つにされた。
ブラウスも同じだ。
憲彦は、切られた服を玲子の手首まで持っていき、そこにグルグルと巻き付けた。

「いや!」

少年たちが目にしたのは、真っ白なスリップだった。
それだけでも充分にセクシーである。
ブラとスリップに守られた乳房が、薄い布の下で大きく波打っていた。
保が感嘆したように言った。

「すげえ……。すげえ綺麗な肌だぜ……」

透き通るように白く、ふっくらとした二の腕や肩の盛り上がりを見ているだけで、もう勃起して
くる。
我慢しきれず、憲彦が玲子の肌に触れた。
肩も腕もすべすべだった。

「すべすべの艶々だよ……」
「おい、早く脱がそうぜ」

惚れ惚れしたような憲彦の声に、修一ががっつくように言った。
それを聞いて晶が甲高く笑った。

「あはははは、そんなに慌てなくてもいいわよ、時間はたっぷりあるわ。せっかくの初ヌード
じゃないの、さっさと剥ぎ取るよりじっくり脱がした方が盛り上がるわよ」
「……だ、そうだ。じゃあ次はスカートね」
「だめ!」

玲子の叫びも虚しく、ホックがあっさりと外され、スカートはするりと足元に落ちて蟠った。
白く半透明なスリップの下には、もうブラとショーツが着いているだけである。
下着はスリップから浮いてはいなかった。
同色なのだろう。

「あらあ、あなた案外地味な下着なのね。もういい歳なんだから、もっと刺激的なのを履いてる
のかと思ってた」
「……」

椅子に戻った晶が挑発するように言ったが、玲子は敢えて反応しなかった。
恥辱や屈辱は感じているが、それこそ年甲斐もなく言い返したりはしたくない。
無視されても少年たちはさして気にする様子も見せず、玲子を裸に剥いていく。
晶から渡されたハサミを使って、憲彦がスリップの紐を切断した。
両肩のストラップを切られた薄い布きれは、無抵抗のまま床に落ちた。

ここでまた少年たちの手が止まった。
ゴクリと生唾を飲み込む音と、「ほう」という感嘆した声が洩れる。
スリップが外されてわかったのだが、玲子はストッキングではなくガーターを着けていたのだ。
色が地味な白だったのは残念だが、腰に巻き付けたガーターベルトが悩ましかった。
少年たちは、それは外さなかった。
着けたままの方が色っぽいと判断したらしい。

「いやあ、綺麗な身体ですねえ……」

保が感極まった声を上げた。
三人の少年の中で、もっとも女遊びをしているのが彼だったが、その保にして、初めて見る
ような見事な肢体だったのだ。
すっと素直に伸びた白い脚。
むっちりと肉の乗った太腿。
締まった膝とすべらかそうな膝小僧。
そしてまたふっくらとしたふくらはぎへとつながり、最後に引き締まった足首まで続く。
メリハリのついた美しい脚線美だった。

見られて恥ずかしいのか、玲子はぴったりと脚を閉じている。
その隙間がなかった。
膝も足首も閉じているのに、両腿や両ふくらはぎの間に空間がない。
O脚とは無縁の素晴らしい脚だった。

「は、早くブラもパンティも剥いじまえよ」

修一が昂奮してどもっている。
保もすぐに頷いて、ブラに手を掛けた。

「いい加減にして! そんなことしたら、ああっ!!」

全部言い終わらないうちに、ブラジャーをむしり取られた。
ぶるんと震えながら飛び出た乳房は、着衣の上から予想したよりも遥かに豊かでまろやかで柔ら
かそうだった。

「いやあ!」

初めて羞恥の声を上げた玲子だったが、次の瞬間にはショーツも引きちぎられた。
思い切り引っ張られ、腰の細い部分にハサミを入れられたのだ。
しっかりと脚を閉じていたから落ちはしなかったが、修一に後ろから引き抜かれてしまった。
ずるるっと引き抜いた元ショーツの布きれを顔に当てて、その香りを愉しんでいた少年が言った。

「いい匂いだよ、玲子さん。おや、毛がついてますよ、無理に引っ張ったから抜けちゃったかな」
「……」

とうとう全裸にされてしまった。
正確にはガーターだけは身につけているが、胸や股間といった隠しておきたい恥ずかしい箇所は
晒されているのだ。
彼女にとっては全裸より恥辱的なスタイルだった。

だが彼女は九条玲子だった。
ただの女とは違った。
普通の女性なら、ここまでされたらひたすらに許しを乞うて泣き喚くか、無益な抵抗を試みる
ところだろう。
玲子はまだ冷静でいられた。

(私を裸にしたということや、この子たちの様子を見ている限り、目的は……)

玲子の身体だということだろう。
つまりレイプするつもりなのだ。
ということは、単に通り魔的な犯罪なのだろうか。
だが、それにしては拉致方法があまりにも手際よかった。
慣れているのか、あるいは計画的という可能性もある。

(そういえば、この子たち私の名前を知っていた……?)

さっき中島修一が確かに「玲子」と呼んでいた。

「……待ちなさい、あなたたち」
「……」

凛とした声に、少年たちの行為も止まった。
玲子は法廷で恫喝したことなどなかったが、それでも被告や弁護団と激しくやりあった経験は、
その態度や声色に気迫を生んでいる。

「目的は何なの? あなたたち、私が誰だか知っているの?」

検事だと知れば恐れるのではないだろうかと思ったのだ。
少年たちには、刑事と検事の区別もついていないかも知れないが、いずれにしても司法関係者に
手を掛ければ、その追求も断罪もより厳しくなるくらいは知っているだろう。
しかし、その玲子の思いは裏切られた。

「九条玲子さん、33歳よね?」

答えたのは晶だった。
カタログ封筒から書類を取り出して、それを見ながら言っている。

「東京地方検察庁に所属している検事さん。『検察のマドンナという異名をとる、極めて有能な
検察官』だって。へー、マドンナね。うん、綺麗だもんね」
「……」
「頭がいいってこともあるけど、法廷戦術が巧みで公判では負け知らず。ええと、そのせいで
玲子さんが担当する事案では、弁護士が後込みしちゃって、なかなか弁護人が決まらないことも
あるって。すごーい、優秀なのねえ」

玲子は敢えて口を挟まなかったが、その噂には誇張がある。
玲子が公判で連勝し続けているのは事実なのだが、それは何も彼女だけではない。
実のところ、検察側が立件した事件は、そのほとんどが有罪──つまり検察側勝利に終わって
いる。
検察は、絶対に負けない確証がない限り訴訟まで踏み切らないのである。

逆に言えば、一端訴訟したら、何が何でも勝ち取ろうとするのだ。
例え、その起訴に疑問を抱く検察官がいようとも、いったん立件したならば、検察庁全体が
訴訟を支持し、サポートし抜くのである。
『検察庁一体の法則』というやつだ。
従って、検察側の公判に於ける勝率は軽く90%を越えている。

近年、冤罪として再審請求があった過去の事件などで無罪判決が出て、検察が負けることはある。
あるいは警察とのしがらみで無理な立件を行なった挙げ句、証拠不十分や取り調べの違法性を
突かれて無罪になることもあった。
そういった事情もあって、最近は勝率が下がっているが、それでも9割を切ることはない。
以前の勝率は95〜99%と言われていたこともあったくらいだ。

もっとも、それでも玲子の勝率10割は見事と言わざるを得ず、彼女が受け持つ事件で弁護士が
つきにくいというのはある程度本当だ。
ただそれは、玲子が強引に有罪にしているというよりも、玲子が立件するような案件は弁護
するのが難しい、というのが正しいだろう。
玲子はとことん下調べをした上で起訴するし、それでも納得行かなければ自分で単独捜査もする。
その上で「間違いない」と踏んで、初めて訴訟するのだ。
証拠調べも怠りないから、やはり並みの弁護士ではとても手に負えないのである。

「他にもいろいろ調べたのよ。検察庁のあなたの部屋から官舎まで。家族構成にお気に入りの
お店、通勤のルートまでね」
「……」
「おまけになに? えーー……、ああ、そうなの。どっかで聞いたことある名字だと思ってた
けど、あなたもと公……」
「よく調べてあるのね」
「まあね。お金払って興信所に調査依頼したし」

つまりこの拉致は、計画的な誘拐であり、あくまで玲子を標的としたものだということだ。

「計画的犯罪ってことね」
「う〜〜ん、計画的っちゃ計画的なんだけどね。行き当たりバッタリと言えば行き当たりバッ
タリだしぃ」
「……目的は何なの?」
「目的? あるわよ、ふたつ」
「ふたつ?」
「そ。ひとつは……まあ、これは後で教えるから。もうひとつの目的の方で、もう男の子たち
我慢出来そうにないから」
「!」

玲子はハッとして周囲を見た。
晶と話していて、少年たちから目を離していたのだ。
彼らはもうすっかり臨戦態勢だった。素っ裸だったのである。
それなりにたくましい保、ひょろりとした色白の修一、眼鏡の学級委員長という雰囲気の憲彦。
三人とも、今にも玲子に飛びかかりそうだったのだ。
その様子を面白そうに眺めながら晶が言った。

「ね? わかるでしょ? この子たち、あなたを抱きたくて……いいえ、犯したくてしようが
ないのよ。だからその綺麗な身体を捧げてあげてね」
「へへ、じゃ遠慮なく」
「お待ちなさい」

玲子の一言で、挑み掛かろうとしていた少年たちの足が止まる。

「あなたたち、わかってるの? 強姦ならともかく輪姦──集団強姦の場合は親告罪ではなくて
強制逮捕なのよ」

婦女暴行のうち、加害者がひとりであった場合は強姦となり、これは被害者側からの告訴が
ないと犯罪にならない。
親告罪とはそういう意味である。
言うまでもなく、被害者が公判で証言することが、被害者本人にとっての不利益になることも
多いからだ。
一方、輪姦の場合は、より悪質であるとの観点から、無条件で罪が成立する。

「集団強姦および集団準強姦なら、刑法178条で4年以上の実刑になるわ。それがわかって
るんでしょうね」
「……」
「あなたたちが未成年でも関係ないのよ。ここまで計画的で悪質なら、成人と同様の刑事処分
が相当とされるに決まってるわ」

少なくとも玲子ならそうする。
「子供だから」で済まされるような犯罪ではないのだ。
ぱちぱちぱちと気の抜けたような拍手がした。
晶である。

「さすが検事さん、ご立派な論告だわね」
「……」
「でもね、それはあたしたちが「捕まったら」の話でしょ?」
「……捕まらないとでも思ってるのかしら?」
「そうね、少なくとも捕まるつもりはないもの。簡単に捕まるとも思ってないしね。それに
……」
「それに?」
「……別に。捕まるなら捕まるでもいいもの」

ポツリと言った晶の声に、保が反応した。

「俺は捕まる気はないっすよ、晶さん。ところで、もういいでしょ? 俺もう我慢の限界っ
すよ」
「あら、ごめんなさいね。じゃ、あとは任せるから。終わったら呼んでね、あたしシャワー
浴びてくるから」
「わかりました」

パタンとドアの閉じる音がすると、三人の少年たちは玲子に向き直る。
獲物を目の前にした彼らの表情には、もう冷静さは消え失せていた。
ここまで来て、初めて玲子は諦めた。
諦めたというより諦観した。
もう犯されるのは避けようがないだろう。
ヘタに抵抗しても無駄に体力を消費するだけだし、負傷する危険もある。
逃亡するには、体力温存とともに怪我だけは避けておきたいところだ。

それに、いくら何でも玲子を殺すことまではしないだろう。
いかに子供とはいえ、殺人がどれほどのリスクを伴うものなのかは知っているはずだ。
誘拐に集団強姦、おまけに傷害致死あるいは殺人では、どう転んでも死刑は免れない──
いや、少年法では死刑はないから、無期懲役は確実なところだ。
そこまでバカではないだろう。

この状況でどうケリをつけるつもりなのか。
玲子には、それを確認してやりたい余裕がまだあった。
あまり長引くようなら、もちろん逃亡だ。

「よしっ、ベッドに転がせ。いいか、逃がすなよ」

憲彦が保に言った。
保は、天井に吊ったロープを外すと、そのまま玲子を仰向けに寝ころがした。

「くっ……!」

一瞬、逃げられるかと思ったが、さすがに少年たちにもぬかりはなかった。
保が、しっかりと縛られた両手首を押さえる形で、玲子を上から押さえ込んでいる。
脚をバタつかせようとしたが、すぐに股間に割って入られ、腿を抱えられてしまうと、もう
ほとんど抵抗できない。

「いやっ……触らないで!」

股間に入り込んだ憲彦が一番乗りするらしい。
玲子の股ぐらに手を伸ばすと、指を使って盛んに媚肉を愛撫してくる。
いや、愛撫というよりは膣口を探しているようだ。
焦っているのだ。

「は、早くしろや、憲彦」
「おまえこそしっかり抑えてろよ、保。修一、おまえもだ。この検事さんの腰をちゃんと抑え
ろ。暴れられたら入れられないよ」
「わかったから、さっさと済ませろ。取り敢えず一発くらい抜いとかねえと身体に悪い」

少年たちのやりとりを見て、玲子はまた少し落ち着きを取り戻していた。
やはりまだ子供なのだ。
ここまで大胆なことをやる以上、年齢にそぐわぬ女性経験はあるのだろうが、それでも少年
である。
いざ女体を目の前にすれば、やはり昂奮と焦燥が出てくるのだろう。
しかも和姦ではなく強姦である。
女の抵抗も考えれば、落ち着いてセックス出来るような状況にはないのだ。

「……」

憲彦の指が何度も玲子の媚肉をさすり、膣やクリトリスもいじっている。
が、玲子はちっとも感じていない。
もちろん濡れてもこなかった。
当たり前である。
強姦で感じるなど、男の下らぬ妄想が生みだした三流官能フィクションの世界だ。

濡れない玲子に業を煮やしたのか、憲彦はツバを自分のペニスの周囲に塗り込め始めた。
玲子はそんな少年の様子を見つめていた。
怖くはない。
こうなったら、思い切り冷めた目で蔑んでやる。
彼らのやる気を殺ぐとともに、罪悪感を与えてやるのだ。
どうせもう処女というわけでもない。
ヴァージンの女子中学生が犯されるのとは訳が違うのだ。

「んっ!」

それでも、膣に肉棒があてがわれると、さすがに玲子も声が出た。
悲鳴とも嫌悪ともつかぬ呻き声だった。
熱くて硬いものが、媚肉を割るようにぐいぐいと分け入ってくる。

「んんっ……」

ピクリと玲子の裸身が仰け反る。
ぐぐっとペニスが押し込まれる間、玲子は身を固くして堪え忍んでいた。
いかに冷静でも、いやそれだけに彼女の肉体は、とても男を受け入れられるような状態には
ないのだ。
濡れていない媚肉に、ツバを塗っただけのペニスを押し込まれている。
膣口も、異物侵入を拒むように固く口を閉じていた。
そこへ少年のペニスが強引に捻り込まれていく。

「おおっ……き、きついな……」

思わず憲彦は呻いたが、きついのは玲子が名器というよりも、女体が甚だ準備不足ということ
が原因だ。

「んっ……く……くっ……」

少年のものが根元まで沈むと、玲子の身体からがくりと力が抜けた。
とうとう犯された。
覚悟していたとはいえ、やはりショックである。
何しろ、セックス自体が数年ぶりなのだ。

あとは彼女に出来ることは、さっさと終わらせることくらいだ。
やっと念願を叶えた少年は、もう腰を使い出す。

「へへ、いい歳してるのにいいマンコしてるじゃない。いい具合だよ、おねえさん」

憲彦は、欲情した顔を隠そうともせずそう言った。
四人でつるんで、これまでも何人もの女を凌辱してきた。
だが、このくらいの熟女で、ここまで締まりのいい膣は今までなかった。

「予想通りってとこか。オレたちの審美眼に間違いはねえぜ」

玲子と憲彦の結合部を、彼女の頭の上から覗き込むようにしながら保が言った。

「どうでもいいから、早くしろって」

もう我慢しきれないのか、腰を押さえている修一が、玲子のなめらかな腹部を舐め始めている。
憲彦の腰が動き出し、それが次第に激しくなっていくと、玲子は頭を左右に振って呻いた。
それでも悲鳴だけは出さないよう、唇を噛みしめている。
少年の力任せの突き込みに、玲子の腰骨がギシギシと軋んでいる。

動きに慣れてくると、顔を伏せ、目と唇を固く閉じて、時の過ぎ去るのを待っていた。
それでも、たまに「ぐっ」とか「むっ」と言った呻きが洩れる。
硬いものが膣内の柔らかい箇所を抉ると、どうしても反応してしまうのだ。
とはいえ、感じて反応するのではない。
感じるというより痛いのだ。

まだ14歳ということもあって、硬いことは硬いが、ペニスのサイズはまだ10センチか
そこらだ。
もっとも大きそうな保のものでも15センチあるかないかだろう。
男らしい太さもない。
これなら充分に耐え切れそうである。

「もっと何か言ってよ、おねえさん。悲鳴でもよがり声でもいいからさ」
「……」

玲子は無視した。
凌辱劇の終わるのをひたすら待っている。
その間にも、他の少年たちから抗議が出る。

「おい憲彦、まだかよ」
「わかってるって。でも、これじゃつまんないな」
「いいから、さっさと出せって」

憲彦の腰の動きが一層激しくなった。
それに伴って、膣の内部も擦り切れるような疼痛が走ったが、玲子は我慢した。
痛いのは濡れていない証拠だ。
感じてなんかいないのだ。
それを思い知らせてやろうと思った。

「それっ、それっ……」
「くっ……」

遮二無二突き込んでくる。
女のことなどちっとも考えておらず、ただ己の欲望を吐き出すことのみに集中していた。
玲子の苦痛など、まったく考慮にない。

「よしっ、よしっ……出るぞっ、出るっ……!」

ガクンガクンと何度か大きく腰を揺すると、少年は呻きながら放出した。
玲子の胎内に、熱い粘液が迸る。

「くうっ……」

その熱さと屈辱で、玲子は思わず呻いた。
潤滑液のないまま入れられ、擦られて、内襞が擦り切れたかのように痛い。
そこに精液が染みた痛みも加わる。
少年に犯される恥辱と、身体を汚された屈辱で、つい涙が零れそうになる。
だが、何とかそれも耐えた。
ひとり終わったのだ。
あとふたりだ。

「ほれ、どけよ。今度は俺だ」

保は待ちかねたようにそう言うと、憲彦を突き飛ばした。
憲彦は、射精を終えてもその余韻を愉しむように、玲子の上に覆い被さったままだったのだ。
よく日焼けした少年は、玲子の腰を掴むと、そのまま裏返した。
スポーツをやっているだけあって、三人の中ではもっともたくましい体つきである。
筋肉質で贅肉もほとんどない。
ペニスもいちばん大きいようだ。
とはいえ、どうにか大人の標準サイズというくらいだろう。

「バックからやるぜ。いいな?」
「あっ……」

玲子は腰を持ち上げられ、四つん這いにされた。
正確には「三つん這い」だろうか。両手は縛られて、引き延ばされている。
身体を支えているのは、両ひざと顔だった。
今度は修一が上へ行き、玲子の頭に顔を突っ込んで、髪の匂いを嗅いでいた。
終わった憲彦は、まだ未練があるのか、玲子の背中に手を這わせてその肌触りを愉しみ、
すっと伸びた背筋を舐め回している。

「ああっ、うっ、うむっ……」

保は背中から腰を抱え込むと、犯されたばかりの膣へいきなり挿入した。
さっきよりは少し太いものが媚肉にずぶずぶっと埋め込まれると、その分だけ先ほど注入された
憲彦の精液が溢れてきた。
愛液は出ていないが、少年の放った精液のおかげで、保の逸物はスムースに動ける。
玲子の抵抗はほとんどない。
少年たちにされるがままだった。

「……く……むっ……」

無抵抗で声も出さない玲子の態度は、少年たちの性欲を少しは鎮めた。
しかし彼女の肢体は極上であり、少年たちの青い性を刺激するには充分であった。
後ろから突き上げる保が果てると、それを押しのけて、最後に修一が玲子の尻にのしかかった。




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