荒戸は、表向き医大の薬学部准教授である。
自分の研究室はまだないため、指導教授の研究室や自分のマンションとは別の場所で組織の仕事をやっている。
売れ残った建て売りの小さな一戸建てを安く賃貸していた。
土地柄が悪いのか、同じような住宅が周囲にいくつもあるが、あまり入居者はいないようだ。
近所づきあいもなく、薬品研究での異臭がしても文句を言われることもなかった。

「これじゃ少し強すぎるか……」

荒戸は試験管の中身をじっくり見ながら、少し匂いを嗅いでみる。
そんなことをしても効果などわかるわけはないのだが、彼はそういう実感を大事にしていた。
蘭たちに使っているせん妄剤では弱すぎるのだ。
使った相手の意識を混乱させ、せん妄状態にすることは出来るが、思い通りに操るところまではいかない。
アルカロイド系だけでは無理があるのかも知れぬ。
今、失敗したと思った試薬品は逆に強すぎて、これを使ったら恐らく相手は失神してしまうだろう。
誘拐するならともかく、とてもゾンビ状にすることは出来なかった。

ドッと椅子に腰を落とし、無造作にデスクの顕微鏡やプリント用紙を除けて、その下からミニボトルのウィスキーを取り出して、一口飲んだ。
その時、不意に携帯が鳴った。

「……」

阿武からのようだ。
荒戸は少し顔を歪めてからフックを押した。

「俺だ。どうした?」

−小川のところに警察が行ったそうだ。

彼らしくなく、阿武は少し上擦った声を出していた。
片や荒戸は椅子の背もたれをギシギシ鳴らしながら、脱力して電話を受けている。

「……だからどうしたい。ビデオの捜査ってわけじゃあるまい」

−いや、それがそうなんだよ。

「あ?」

−俺たちがやってるビデオの捜査で警察が来たんだよ。

「んなバカな。なんで小川に手入れが入るんだ? あいつ、他に何かやってたのか?」

−手入れってわけじゃないらしい。ちょっと話を聞かせてくれってやつだ。任意出頭の要請だな。

「それで?」

−小川は応じて出頭したらしい。

「バカめ」

荒戸は眉間に皺を寄せた。

「任意なんだろ? バカ正直にサツへ行くバカがあるもんか」

−小川本人は、まさかそのことだとは思ってなかったんだろうよ。逆に言えば、他に疚しいことは何もしてないってことだろうさ。だから応じたんだよ。

「関係ねえよ。だったら余計に拒否すりゃいいじゃねえか」

−そう思わないでもなかったらしいけど、ヘタに拒否すりゃかえって疑われるんじゃないかって……。

「けっ、どこまで弱気なんだかな」

荒戸はそう吐き捨てて、おもむろに煙草をくわえた。
火をつけるでもなく、ジッポを弄んでいる。
阿武は声を少し低くして続けた。

−やつの話だと、明らかに例のビデオ……、それもな、蘭のやつのことを聞かれたそうだ。

「……」

−おまえも憶えてるだろ? ちょっと前に監督やってる児玉んとこに警察が行ったって話。

「ああ……、でもなあ、サツも行き当たりばったりで適当に業界関係者をあたってるんじゃないか?」

−かも知れないがな、ふたり続けてというのが気に入らん。

「児玉は、前はAVの制作会社だったが、今はフリーでビデオだけじゃなくてピンク映画の監督もやってるだろ? フリーの関係者を虱潰しに当たって
るんじゃないか? それでたまたま小川と児玉が行き当たったと……」

−でもなあ。

阿武が少し口ごもった。

−来たのは生安だったらしいが、出頭したら取調室には生安の他に捜査課のデカがいたらしいんだ。

「捜査課だあ?」

−おかしいだろ。

「おかしいに決まってるさ。捜査一課なら殺人課だろうに、なんで風俗に絡んでくるんだよ」

−知らないよ、俺が知りたいくらいだ。……ん?

相棒の声が止まってしまったので、荒戸は少し苛ついて電話口に言った。

「なんだ、どうしたんだよ。なんで黙ってんだ」

−あのさ……。

阿武の声が少し沈んでいた。

−確か、蘭の親父ってのは探偵だったよな。

「らしいな。有名なようだぜ。ついでに言えば母ちゃんも凄腕弁護士だそうだ」

−その探偵やってる親父は、警視庁のデカだったって知ってるか?

「……そうなのか?」

−らしいんだよ。俺も少し調べてみたがな、今でも一課と付き合いはあるらしいぜ。捜査協力もしてるようだし、蘭の彼氏の高校生探偵な、あれも
同じようにサツに協力してる。

「……それがどうした。今回の件と関係してるのか?」

−だからさ、その親父はもちろんだが、彼氏や蘭本人にも捜査一課のデカに知り合いがいるらしいんだよ。あのビデオをサツに抑えられたのはまずかったな。
それを知り合いのデカが見ちまったんじゃないか?

「そうか、それで……」

−じゃなければ捜査課が出張る理由がないからな。

「誰だ、それは。わかるか?」

−詳しくは知らん。調べては見るがな。何でも女のデカらしいが」

「女?」

−他にもいるようだがな。小川や児玉の時に出てきた捜査課のデカは、女と若い男だったそうだ。

「わかった。何とか考えよう。それと他のスタッフ連中によく注意しとけよ。呼び出しは出来るだけ突っぱねろ、出頭しても「知らぬ存ぜぬ」で通せとな」

−わかってる。

そこで電話は切れた。
荒戸は小さなボトルを凝視してから、ヤケクソのように一気に飲み干した。

「くそ……、あっちこっちで厄介なことが起こりだしたな」

阿武には言わなかったが、荒戸の方にも不安の種はあった。
違法薬物製造の件である。
医大からくすねてきた薬品や、ドラッグストアに忍び込んで失敬した薬物の線で、警察が捜査に入ったようなのだ。
まだ荒戸を疑っているわけではなさそうだったが、いずれ事情聴取される可能性はあるだろう。
そっちは何とか誤魔化すとしても、ビデオの方の火種は絶っておく必要があった。
荒戸は、さっきの失敗作のデータをもう一度見直していた。

────────────────

もうこれで新一とは何度肌を合わせることになったのだろうか。
シャムロックの一室で、蘭はそんなことをぼんやりと考えていた。
好き合った者同士、精神的にも肉体的にも結ばれるのは自然な流れだと思う。
真面目な蘭には、まだ自分たちが未成年の高校生であることへの些かの背徳感はあったし、新一に愛されるということに悦びと若干の気恥ずかしさも感じていた。

相対的には嬉しかったのだが、どうも最近違和感もある。
というのも、あの新一がこうまで蘭の肉体を貪るようになるとは思いもしなかったのだ。
事実、最初の行為の際には、蘭の方が苦笑してしまうほどに新一は気遣ってくれた。
それだけ大事に思われていることが嬉しかったし、新一らしいとも思っていた。

しかし、以後の行為についてはそれががらりと変わった。
蘭の身体への関心を隠そうともせず、その若い肉体を蹂躙した。
それだけならまだしも、蘭にとっては変態的な行為にすら及ぶようになっていたのだ。
それもこれも、自分のことを愛しているからだと蘭は理解していたのだが、その思いが最近は揺れ動いている。
そして、蘭にとって不可解だったのは、毎回新一に抱かれるたびに、新一が入れ替わっているかのように思えてきたことだ。

最初の時のように、蘭の身体や気持ちを考えながら優しく愛してくれる新一。
それとは逆に、わざと虐めるように蘭を嬲り、執拗に羞恥や恥辱を与えて、犯すように責めてくる新一。
そして「今日の新一」のように、膣にはさほど興味を示さず、蘭の肛門に執着し、責め抜く新一。
言うまでもなく、「二番目の新一」は阿武であり、「三番目の新一」は荒戸である。
残りの新一こそ、本物の工藤新一なのであった。
但し、阿武の後催眠と荒戸のガスに冒されている蘭にはその区別がつかなくなっている。彼女にとって、荒戸だろうが阿武であろうが、はたまた本物の新一であろうが、すべて恋人の工藤新一に身を任せていると信じているのである。

だからこそ、本気になっての抵抗はしなかった。
それでも「三番目の新一」こと荒戸に犯される時だけは、身体を縛られるのが普通だった。
そうでもしなければ、アヌス責めされる恥辱と羞恥に蘭が耐えきれないからだ。
いかに愛する男に抱かれているとはいえ、まだ若い乙女に肛門責めは、肉体的にも精神的にもハード過ぎるのだ。
それでも、荒戸に三度、四度と犯されていくうちに、蘭の肛門は彼の思うように成長していった。
調教の成果もあったが、それ以上に蘭の身体が性的に極めて鋭敏で柔軟であり、感受性に富んでいたと言えるだろう。

今日の蘭も縛られている。
つまり「今日の新一」は荒戸なのだ。
蘭はベッドの上で四つん這いにされ、両脚を開かされて足首を縛られてベッドの脚に固定されている。
荒戸に責められる時の定番スタイルだが、いつもは両手も背中で縛り合わされ、上半身は顎や顔で支えることとなり、尻を高く掲げるというこれ以上ない恥ずかしい格好になる。

だが、今日は手が自由なのだ。
お陰で尻を高々と掲げることはないものの、それでも股間がぱかっと開かされて、媚肉もアヌスも男の目に晒されているのは変わらない。
荒戸が、そのぷりぷりした尻たぶを撫でながら、惚れ惚れしたように言った。

「相変わらずいい尻してるな、蘭。肌も艶々だし、よく肉が詰まった最高の尻だぜ」
「やっ……、そ、そんなこと言わないで……。あ、恥ずかしいからあんまり見ないで」
「何を今さら。俺はもう、蘭の尻の穴もはらわたの中まで見てるんだ」
「ああ……」

蘭は恥ずかしそうに、少し哀しそうに顔を歪め、小さく呻いた。
確かに、もう「この新一」から受ける屈辱のアヌス責めにも、身体が少し馴れてしまっていた。
感情も、最初に責められた時のような、狂ってしまいそうな恥辱感はない。
しかし、そんなところを見られて羞恥を感じないわけがないのだ。
例え愛する新一であっても、それは同じである。
いや、新一だからこそ感じている羞恥心もあるだろう。
レイプでもされて、その犯人に見られても、それは恥ずかしくていやだろうが、最愛の相手に自分のもっとも隠しておきたい汚れた箇所を覗かれる
羞恥はまったく別物だ。
これだけは一向に馴れることはなかった。

その反面、肛門というもっとも恥ずかしい場所を嬲られる、責められることに関しては、おぞましいことに身体と肉欲が受け入れてしまっていた。
そのことを蘭は認めたくないのだが、膣を犯され、責められる時とはまた異質の快感があることは否定できなかった。
それは、性器という言ってみれば正当な場所を愛撫され、貫かれることで得られる順当な快楽とは違い、不浄な場所であり、本来セックスの対象と
なるべきでない場所を犯されるという背徳と被虐がマゾヒスティックな愉悦となり、肉体的な快感を増進させていたに違いない。
特に蘭のように気が強く、それでいてロマンチストでもある少女には取り分けその効果があったようだ。

荒戸は、恥辱と羞恥で打ち震える蘭を見てにやついている。
あの薬と催眠術のせいで、特に工藤新一を演じる必要はない。
地のままの荒戸であっても、蘭の方が勝手に新一だと勘違いしてくれるのだ。

「は、恥ずかしい……もう、いや……」

蘭は消え入りそうな声でそう言いながら、僅かに身を捩る。
しかし固定されている足首のロープはビクともしなかったし、上半身を起こして抗おうともしない。
もう架空の新一に身も心も委ねきっており、こんな目に遭わされることへの諦めが精神を支配している。
そして、今日もまたあの恥辱的な背徳行為をされて快感を得てしまうことへの期待が、ごく僅かながらこの聡明な少女の心にこびりついていた。

「そうやって恥ずかしがる蘭はたまらなく可愛いよ。どれ、じっくりとオマンコと尻の穴を見せてもらおうか」
「やっ! やだ、だめ、新一っ、見ないで……!」

蘭は必死に両脚を閉じ合わせようとするが、どうにもならない。
荒戸は開脚した蘭の股間に顔を近づけ、言葉通りに観察する。
蘭の秘密の花園があられもなく目に晒される。
これほどに「女」を象徴する器官はなく、もう何度も見ているとはいえ、その生々しさに荒戸は生唾を飲み込んだ。

「綺麗な色だ。ふふ、確かについこないだまで処女だったって感じだな」
「やああ……、ひどい、見ないで……」

あまりの羞恥に、蘭の緊縛された裸身が震える。
荒戸の言う通り、もう何度も見られてはいるが、決して馴れることはなかった。

「今度は肛門だ」
「ひっ……!」

やや上擦った声で荒戸が宣言すると、蘭は喉を鳴らした。
荒戸の指が震える蘭の尻を捉え、片手で器用に尻たぶを割った。
わざと感心したように荒戸が唸る。

「綺麗なもんだ。散々悪戯されて、俺に何度も犯されたってのに色素も沈殿してないし、型崩れもしてない。見事なもんだよ、蘭」
「は、恥ずかしいこと言わないで! だめ、見ないで、新一っ、そんなに顔、近づけないで……あ、新一の息がかかる……やあっ、恥ずかしいっ……!」
「見るだけだと思うか?」

その羞恥を煽るように、荒戸が匂いを嗅ぐように鼻をひくつかせると、蘭は小さく悲鳴を上げて、一層に身を縮込ませようとするのだった。
そして、その部分に指が押し当てられると、蘭はビクッと反応する。
途端に、釣り上げられた魚が跳ねるように暴れ出した。

「ああっ! そこ、だめ! だ、だめだったらあっ……やめ、やめて新一っ!」

荒戸は、羞恥と緊張で堅く窄まったアヌスを、ゆっくりと指で揉みほぐしていく。
蘭のつんざくような悲鳴を聞きながら、なおも指での愛撫を続ける。

「やめてえっ……しないで新一っ……あっ、そこはいやっ……ひあっ!」
「ふふふ、ちょっといじっただけでこの反応か。そんなに尻の穴が気持ち良くなってきたのかな?」
「……!」

荒戸の問いかけに、蘭は肢体をぴくりとさせてその動きを止めた。

「そ、そんなこと……あるわけが……」

蘭は震える声でそう言ったが、荒戸の言葉が胸に突き刺さっていた。
そこから快楽を感じるようになっていたのは事実だったからだ。
ただそれを認めたくなかっただけだ。
それを見抜かれ、あからさまに指摘されては身の置き所がない。
荒戸は「愉しくてたまらぬ」と言った表情で嬉しそうに言った。

「図星のようだな、蘭。それなら話は早い、俺がここを念入りにいじってやる」
「や、だめだめだめっ……そんなとこ障らないで! い、いや、お尻はいやなのよ、新一……お願いだからもう……あ、ああっ!」

蘭の悲鳴と哀願を心地よく聞きながら、荒戸は肛門をじっくりと責めていった。
中年のしつこさで執拗にアヌスを責め続けていると、蘭のそこは徐々に反応していく。
尻たぶはまだ堅く強張らせたままだが、同じように堅く引き窄めていたはずの肛門は、いつしか柔らかく盛り上がり、ひくひくと妖しい反応を見せてきていた。
荒戸が意地悪く言った。

「やっぱりここがいいんだな、蘭。もうこんなに柔らかいし、感度も良さそうだ」
「ち、違う……そんなことない……そんなこと、あ、あう……」
「隠さなくていいさ。蘭はお尻の反応が格別に良いんだ。俺にはそれがわかる」
「やっ、そんな……言わないで、そんなこと……ああ、もういやあ……」

荒戸に意地悪く言葉で虐められると、蘭は涙声になって腰を振り、嫌がってみせる。
それでも蘭は起き上がって荒戸を突き放そうとはしなかったし、あくまで気丈な心とは裏腹に、アヌスどころか膣まで蕩け始めている。
荒戸もすぐにそれに気づいた。

「嫌がることはない、蘭がそれだけ素晴らしいアヌスをしているということじゃないか。ほら、こんなにオマンコ濡らして……、感じてるんだろ?」

荒戸は媚肉から垂れてきていた蜜を指で掬い取って、それを蘭のアヌスに塗りたくった。

「やっ、しないで! か、感じてなんか……ない……新一、それしないで、ああっ!」
「ほらほら、お尻の穴がこんなに柔らかい。こうして指で虐められるのが好きなんだろ?」
「違う……違うわ……お尻、いやなのよ、新一……あああ……」

恥ずかしい事実が、いやでも肛門で感じられてしまう。
堅く目を閉じて「いやいや」と顔を振る蘭のアヌスに、とうとう指が潜り込む。

「ああっ!」

実にあっさりと荒戸の指が蘭のアヌスに飲み込まれた。
簡単に指の根元まで入り込んでしまい、蘭はその事実に顔を真っ赤にして呻いた。

「やああ……ゆ、指、しないで……取って……お願い、新一……お願いだから、もうこんな恥ずかしいことは……」
「指でしなかったら何をしてもいいのかな、蘭は」
「ああ……、な、何でもしていいから、もうお尻だけは……」
「そうか」
「ああっ!」

荒戸はわざと指を捻りながら肛門から引き抜いた。
指に絡みついた粘膜も一緒に引き出され、蘭は腸管ごと持って行かれるような錯覚を受けた。
その痛いほどに痺れる刺激に、腰が勝手にわなないてしまう。

「なら、これだ」

蘭の返事にほくそ笑んだ荒戸が大きな浣腸器を持っているのを見ると、蘭はその美貌を一気に青ざめさせた。
これこそ蘭にとって最悪の責めだった。
何度されても決して馴れないあのおぞましさと恥辱感はトラウマになっている。
蘭はガタガタと震えながら叫んだ。

「いやああっっ! 新一、それだけは……それだけはいやあっ!」
「何を言ってる。さっき、指でいじるのをやめてくれたら何でもされるって言ったじゃないか」
「そ、それは……! それはお尻を責められるのをやめてくれたらって意味よ……、そ、そんな、浣腸なんてもっといや!」
「蘭は言い訳ばっかりだ。でも俺はするよ。いいじゃないか、愛する俺にされるんだから」
「そんな……、そんな酷い……ああ、お願いよ、新一
……か、浣腸は……浣腸だけは許して……」
「だめだ、許さない。絶対に浣腸するからな、蘭」
「ああ……」

どうしてこの新一は、こうもお尻にばかり興味を示すのか、蘭にはさっぱりわからなかった。
他の新一はそんなことはしないのに、この新一は前は放っておいてお尻ばかり虐めてくる。
今の蘭の状態は、新一が複数いることへの疑問すら湧かなくなっているのだ。

「お願いよ、やめて新一……、どうして……どうしてこんな恥ずかしいことばっかり……ほ、本当に新一なの!?」
「!」

蘭の問いかけに一瞬どきりとした荒戸だったが、ばれたわけではないだろう。
仮に本物の新一が同じことをしても、蘭はきっとそう言ったはずである。
まだむずかって必死に揺さぶっている腰を左腕で抱えて固定させると、右手だけで重たい浣腸器を持って、そのまま蘭のアヌスに突き通した。

「んあっ!」

蘭が背中を反らせて悲鳴を上げた。
同時に、ぴたりと動きが止まる。
荒戸は蘭の腰から腕を離し、改めて浣腸器を両手で扱い始めた。
肛門に挿入した嘴管をぐりぐりと抉るように回転させ、蘭に苦鳴を上げさせている。

「んっ……ひっ、やめて! ああ、もうお尻に悪戯しないで……くっ、痛いっ……やあっ、そんなに乱暴しないで……くっ!」
「抵抗した罰だ。それに、蘭はどちらかというと乱暴に責められたり、虐められる方が好きなんだろう」
「ち、違う……あたしはもっと優しく、あっ、して欲しい……新一……ああ……」
「そうかい? でも俺は虐める方が好きなんだよ、諦めな」

荒戸はそう言ってシリンダーをぐぐっと押し込んだ。
途端にずずっと大量の浣腸液が蘭の腸管に注ぎ込まれていく。

「ひぃぃっ! やああっ、入れないで……お、お腹があっ……!」

冷たい薬液が一気に流し込まれてきて、腸が感じる浣腸液の感覚に蘭は顔を激しく振りたくって呻いた。
荒戸はちびちびと焦らすように注入することもあるが、今日は荒々しく一気に浣腸していく。

「や、やんっ……うむう……あっ、き、きつ……お尻が……お尻が壊れちゃう……ああ……」

蘭は、どくどくと注入されてくる浣腸液の重たい感覚に、これはグリセリンをまったく水で薄めていないことを知った。
最初は水で薄めたものを使ってくれたが、浣腸に馴れてしまった今は、こうしてグリセリンをストレートで浣腸されることも珍しくなかった。
水溶液とはまったく異なり、その重さときつさは比較にならない。

「んっ……ああっ……や、だめ……ああ、入ってくる……お、お薬がどんどん入って来ちゃう……いやああっ……」

蘭の透き通るような肌には、じっとりした気持ち悪い汗が浮き上がり、今にも湯気が立ちそうなほどに熱くなってきている。
いくら踏ん張って堪えようとしても、浣腸液は容赦なく流れ込んできた。
アヌスをきゅっと引き締めてもノズルを締めつけるだけで効果はない。
尻たぶも浣腸の刺激に耐えようと、堅く強張ってぶるぶると震えていた。

「んんっ……あ、そんないっぺんに入れないで……あああ……」

500ccものグリセリンが、びゅっ、びゅっと勢いよく腸内に噴出させられてくる。
そうやって、何度も腸壁に浣腸液が浴びせられていくと、次第に蘭の様子に変化が現れてきた。
頬は染まり、ベッドについていた腕がわななく。
シーツを掴んだ手がきゅっと力強く握られている。
逆に臀部の強張りは徐々に取れてきていた。
びゅうっと腸管に注ぎ込まれるたびに、蘭の裸身がぶるっと痙攣している。

「あ、あ、いや……あむう……お、お尻が……お尻が熱い……お尻、いっぱいになる……むむう……」

蘭の様子を確認しながら、荒戸はなおも浣腸を仕掛けていく。
激しく注入すると、蘭は尻を震わせて反応しつつ、浣腸液を受け入れていった。

「あ、あう……だめ、もう……ああ、お腹が……うんっ、き、きつい……あああ……」
「声が甘くなってきたぜ、蘭。もう浣腸が気持ち良くなってきたのか」
「ち、違……ああ……お腹が……お腹が変になっちゃう……うん、うんっ……」

シリンダーが押し込まれ、薬液が注入されると、蘭は「うんうん」唸ってその刺激に耐えている。

「き、きつ……苦しい……ああ、もう入らない……入らないから……新一、やめて……んんっ……」

もうほとんど薬液は入れ終わり、荒戸はシリンダーに残った100ccあまりをまとめて蘭の尻の中に注ぎ込んだ。

「んはっ!」

最後のひと押しで残量を一気に注入すると、蘭はぶるるっと前身を震わせて唸った。
もうアヌスがひくついている。出てしまいそうなのかも知れない。
荒戸はすかさず蘭のアヌスを指で揉み始めた。
蘭がつんざくような悲鳴を上げる。

「だめえっ、新一、揉んだりしちゃだめえっ……あっ、あっ……新一、ああっ、ゆ、指が……熱いっ……!」

アヌスを充分に揉みほぐすと、そこはもう今にも破裂しそうなほどに赤くなり、膨れあがって痙攣している。
荒戸は指をそこに突っ込んで栓をした。ぬぷりと指が埋め込まれる感覚に、蘭は腰を振って身悶えた。

「や……だめ、指、しないで……抜いて……ああ、もう……」
「もう、なんだ? 出そうなのか?」
「ああ、言えない……そんなこと言えっこないわ……あ、ひっ、お腹さすらないで!」

荒戸は粘る蘭のお腹まで揉み始めた。
直接の出口であるアヌスと、噴き出そうな内容物の詰まった腸を同時に揉まれ、蘭は狂乱寸前となる。
荒戸の指と手のひらは、蘭のアヌスがひくひくと収縮し、お腹がゴロゴロと鳴っているのがはっきりとわかった。

「ああ、もうだめ……た、助けて……お、お腹がもう……苦しいっ……」
「苦しいだけか、蘭。気持ち良くないのか」
「き、気持ち良くなんか……ああ、きつい……お腹、きつくて……苦しくて……お腹の中もお尻も……熱い……あああ……」

蘭は息を荒げて呻いている。呻きというよりは喘ぎに近くなっていた。
蘭はこの時、浣腸されて排泄を我慢することに対して快感を感じ始めている。
初めての快楽をどうしていいかわからず、ただ尻を振り、呻き、身悶えていた。
媚肉はもう陰毛がぐっしょりするくらいに濡れている。
蘭の膣は、肛門に加えられる愛撫と腸内の苦痛、そしてそこを責められる被虐に快楽にしっかりと反応し、愛液を滲ませ続けるのだった。

「だ、だめ! お腹、触っちゃだめよ、新一ぃっ! で、出ちゃうわ!」

荒戸が、グルグル鳴っている蘭の腹部を擦り、軽く揉んでやると、蘭はつんざくような悲鳴を上げて身を捩った。
そしてすぐに硬直したように身を固める。少しでも動くと出てしまいそうなのだ。
しかし、お腹のマッサージがきつくてまた身を震わし、思い出したように身体を強張らせる。
蘭の声が引き攣ってきた。

「あ、だめ、もうだめ……お、お願い新一、意地悪しないで! ああ、本当にもうだめ、出る、出てしまう……お腹、苦しい……あっ……」
「ふふ、お尻の穴が苦しそうにひくひくしてるぞ、蘭。恥ずかしいやつだ」
「いやああ……」
「もう限界なんだな。いいだろう、出ないように栓をしてやるからな」
「い、いや、何を……ひっ!?」

アヌスから指が離れると、指よりも熱く、そしてずっと太いものが押し当てられた。
慌てて振り返った蘭の目に信じられない光景が映る。
股間の勃起も露わにした荒戸が、蘭のアヌスを犯そうとしているのだ。
蘭が悲鳴を上げる前に、荒戸の肉棒がぐぐっと肛門にめり込んでいく。
蘭は鋭く悲鳴を上げて前へずり逃げようとした。

荒戸には、初回以来、抱かれるたびに肛門性交されてきた。
嫌悪と恥辱にまみれながら何度となくアナルを貫かれ、しまいにはそれで快感を得るまでに成長させられていた。
しかし、浣腸されたまま排泄すら許されない状態で犯されたのは初めてである。

「やああっ、何するの新一っ!! だめ、今そんなことされたら、お、お尻が、お尻があっ……」

必死になって前へ逃げようとする蘭の腰をしっかりと抱え持ち、荒戸はアヌスに押し込んだペニスをぐぐっと埋め込んでいく。

「んはあああっっ、だめえっっ! ぐっ、ぐうううっ、やあっ、は、入る……お、お尻に入って来ちゃうっ!」

亀頭の先細ったところはあっさりと肛門にめり込み、さらにカリの太い部分がそこをこじ開けていく。
蘭は背中を思い切り仰け反らせ、シーツを引き裂かんばかりに掴んでその衝撃に耐えていた。

「きゃああっ、さ、裂ける、裂けちゃうっ……新一、だめ、そんな太いの……ぐううっ、は、入らないわ、そんな……やっ、入ってくるぅっ……お、大きいっ!」
「大げさに騒ぐなよ、蘭。もう何度かお尻でセックスしたろうが」
「で、でも今は……ぐぐぐ……苦しいっ……!」

今にも放出してしまいそうな便意を、たくましい男根が押しとどめ、中に入り込もうとしている。
挿入されることでアヌスが広がるものの、それを押し戻すように太い肉棒が入っていった。
そうでなくとも薬液でいっぱいになっている蘭の腸内が、太いものが入ることで余計に膨張し、便意が猛威を振るう。
挿入しようとすると押し返そうという肉体の抵抗が大きい。
それをさらに押し止め、中へと進む。苦悶の中、ようやくカリの太い部分を通してしまうと、今度は長大なサオの部分がアヌスを巻き込むようにして奥へと入っていった。
蘭は身体をぴくぴくさせて呻いている。

「お、お腹が……あ、あうう……で、出そうなのに……出したいのに、ああ、出ない……お、お腹、きつい……」

蘭の苦悶する美貌をうっとりと眺めながら、荒戸はペニスを根元まで挿入した。
蘭のぷりっとした臀部に腰が当たり、その温かさと柔らかさが何とも言えない心地よさを男に与えている。
直腸が苦しげに荒戸の男根をひくひくと締めつけてくる。
暴発しそうな便意を強引に押し戻され、蘭は苦しげに口を何度も大きく開閉させた。

「く、苦しい……ああ……お尻、きつい……お腹、苦しい……あああ……」

さっきまでの殺されるかのような悲鳴はなくなった。
その声は熱くとろけてきている。
精神的に辱められるだけでなく、肉体的にも便意を我慢させ、アヌスに太いものを受け入れさせられるという恥辱を受ける美少女は、一気に被虐の官能を燃え立たせていく。

「あ、あうう……ああ……」
「声が色っぽくなってきたな、蘭。いいぞ、その調子だ」
「あ、あぐう……あ、あ……もう……た、たまんない……」
「何がたまらないんだ。正直に言ってみろ。気持ち良いのか?」
「わ、わからない……ああ……で、でも……お腹がすごくて……お尻も、あああ……」

恥辱的な責めと便意の苦痛が蘭の心と肉体を白く灼き、それが快楽に変化してきている。
もう精神的にも肉体的にも限界だと判断した彼女の脳髄が、脳内麻薬を多量に分泌し始めたようだ。

蘭は堕ちた。

荒戸はそう見た。
少なくとも荒戸の尻責めには屈服したのである。
その証拠に、荒戸がゆっくりと腰を動かして抜き差しし始めると、驚いたことに蘭の方も腰を使い、尻を回転させてきていた。
荒戸が蘭の挿入したまま「∞」を書くように腰を回転させると、アヌスはにちゃにちゃと淫靡な音をさせている。
蘭は譫言のように喘いだ。

「お尻が熱い……灼けちゃう……いや、助けて、こんなのいやあ……お尻……あああ……」

荒戸は蘭の細腰を持ち直すと、ピストンのペースを上げていく。
蘭の柔らかい尻たぶをたたきつぶすように腰を打ち当てて腸を犯していった。

「んあっ、は、激しいっ……だめ、そんな強くしちゃあっ……お腹が、お尻が壊れるっ……ああっ……」

荒戸の腰がパンッ、パンッと尻を打つたびに、蘭は仰け反り、上擦ったようによがり始めた。
激しい抜き差しに耐えかねるように、蘭のお腹がゴロゴロと大きく唸って直腸が蠢動している。
その状態で荒戸の太いものがかき回してくるのだから、これはたまらないだろう。

「い、いや、激しい新一っ……! だめよ、そんな強く……ぐううっ……いやあっ、お尻、広がっちゃうぅぅっ、ゆ、許して!」
「だめだ、許さない。本当のこと言うまではな」
「な、何を言えばいいの……言って新一っ、ああっ、お尻ぃっ……!」

荒戸は大きく腰を使い、長いストロークで蘭のアヌスを犯していく。
便意を堪えているからか、それとも肉棒を逃がさぬようにしているのか、蘭の肛門がきゅっときつくペニスを締めつけてくる。
直腸の苦悶も肛門の苦痛も極限に達しているはずだが、今の蘭にはそれすらも官能と強烈な快美感となって跳ね返ってきていた。

「気持ちが良いんだろ? お尻がいい、お尻が気持ち良いと言うんだよ、蘭」
「やっ、そんな……ひっ、ひぐっ、つ、強すぎるっ、新一、そんなに激しくしちゃいやあ! お尻、どうにかなっちゃうわっ……!」

荒戸のペニスは、美少女の内臓まで蹂躙し、制圧した満足感でギンギンと熱く硬くなり、なおもその柔らかい腸内を抉っている。
興奮はいや増し、蘭の丸く白い尻へ腰を何度となく叩き込んだ。
深くまで打ち込んで腸壁を擦り、削り、ずるっと引きだしてへばりつく粘膜ごと肛門の外へ引っ張り出した。
狂いだした蘭の官能に煽られるかのように、荒戸の興奮も極に達する。
たまらず蘭の顎を掴むと、ぐいと後ろに向けさせる。

「あう、な、何を……ん、んむ! んちゅうっ!」

あうあうと喘ぐ蘭の口に唇を押しつけた。
驚く蘭の唇を舌で器用に割ってから、その内部に舌を潜り込ませる。

「ん、ん、んんっ……!」

いやいやするように蘭は顔を振ろうとしたが、荒戸がその頬を両手で押さえて固定してしまう。
諦めた蘭の動きが止まると、荒戸は顔を傾けて蘭の口を強く吸った。
蘭の眉間に皺が寄り、それがすぐに緩んだ。

「ん、んむうう……んん……んっ、じゅ……じゅちゅっ……むっ……」

閉じ合わされた上下の前歯とその歯茎を舐められ、ぞくりとするような戦慄が蘭の背に走った。
頬の上から指をあてがわれ、上顎と下顎を開かされると、開いた咥内に荒戸の舌が乱入してきた。
蘭の目がとろんとしてきた。

「あ、む……むむう……ちゅっ……んんんん……ん、ん、んじゅうっ……」

すっかり観念したかのように、蘭は荒戸に舌を許した。
相手が新一だと信じているのだから仕方がないだろう。
阿武によってすっかり開発された咥内は、荒戸の舌を悦んで受け入れ、頬裏や歯茎の粘膜をこそげとられるように愛撫され、蘭の快感中枢を上昇させていく。
舌が抜き取られるほどに強く吸われ、口中の唾液を吸い上げられてから、今度は逆の男の唾液がどろりと流し込まれた。
蘭はためらうことなく、喉を動かしてそれを飲み下した。

ようやく荒戸の口が離れると、蘭は「ああ……」と熱い息を吐いた。
舌の裏まで舐められた蘭は、頬を赤く染めてうっとりとした美貌を男に見せつけている。
荒戸はその顎を指で摘むと、言い聞かせるように囁いた。
もちろん、その間も腰は振り続け、蘭のアヌスを抉るのは続行している。

「どうだ、蘭。もう素直に言えるだろう?」
「あ、あ……」
「言うんだ。楽になるぜ」

蘭は一度顔を逸らし、何度か痙攣するような顔を振った。
そして改めて、新一だと思い込んでいる荒戸の顔を哀しげに見ながら、ようやくそのことを告げた。

「き……もち、いい……わ……」
「どこがだ?」
「お……尻……」
「よし。じゃあ、ちゃんと言え。お尻が気持ち良いってな」
「あああ、いい……お、お腹が熱くて……いい……お尻、気持ち良いわ、新一……」

蘭はやっとそこまで言うと、自らせがむように尻を荒戸の腰に押しつけてきた。
本人は気づいていまいが、媚肉も妖しく割れ目を開き、ぽたぽたと蜜を零していた。
積極的にすらなり始めた蘭に、荒戸は大喜びで激しく責めていく。
尻たぶがなくなるまで大きく割り開くと、そこに腰を密着させるようにして、出来るだけ腸管奥深くまで肉棒を突き通した。
深々と突き刺されたペニスに打ち震えながら、蘭の腸壁は一層に熱を持ち、じわじわと男のものを締め上げていった。

「あ、あっ……うんっ、うんっ、うんっ……や、すごいっ……お尻、ああっ……やああっ、いいっ……!」
「くっ、すげえ締めつけだよ、蘭! その調子で俺のものを絞りあげてみろ」
「んくっ、お尻、こうすれば……ああっ、か、硬いっ、新一のが太いぃっ……」
「よし、いい感じだ。そのうち高給取りの娼婦にでもなれるぜ、蘭」
「やあっ、お尻っ……うんっ、ううんっ……お腹の中が……お腹がかき混ぜられるっ……いやああっ、いっ、いくう!」

豊かな尻肉がぶるるっと大きく痙攣し、蘭はアナルセックスで絶頂させられていた。
きゅんきゅんと肛門が窄まり、早く精を出せとばかりに収縮している。
全身を突っ張らせ、アヌスが何度も引き締められた。
ガクンと蘭が突っ伏した。

「んあ……はあ、はあ、はあ……ああ……」
「お尻で行ったんだな、蘭」
「い、いったわ……凄かった……お尻が凄い……ああ、でも新一のが……あたしの中でまだおっきいの……」
「そうだ、俺はまだいってない。だからまだつき合って貰うぜ」
「あっ……」

肛門性交による膣セックスとは異なる絶頂感で、息も絶え絶えになっていた蘭は腰が抜けたようにがくりと脱力した。
荒戸は、腰砕けになった蘭の尻をまた持ち直し、再び突き上げていく。
蘭は目を見開いて悲鳴を上げる。

「ひっ、ひぃっ、新一っ! だ、だめ、あたし、いったばっかりなのにっ……やっ、いいっ……お、お尻が狂うっ、またお尻に……!」

蘭は喘ぎ、よがりながらも、時折顔を顰めて苦悶の呻き声を上げた。
まだ排泄できないままなのだから、当然苦しいだろう。
腸も、男根で犯されるだけでなく、渦巻くような排泄良くと便意の苦痛でのたうち回っている。

「い、いいっ……お尻がまたいいっ……あああ、来る……またお尻に何か来ちゃうっ……!」

蘭は便意にも責め苛まれ、荒戸に指示されるまでもなく肛門を引き締める。
そうすると余計に便意が刺激されるのか、腸はさっきからグルグルと唸り続けていた。
もう排泄欲求も限界に来ているらしい。
それを覚った荒戸も、いよいよ自分もいこうとして勢いよく蘭を突きまくった。
ストロークが小さくが、強く激しく抜き差しされていく。
少し抜かれるだけでも、蘭のアヌスからぴゅっと腸液まじりの浣腸液が逆流してきていた。
荒戸の声も切羽詰まってきた。

「蘭っ、いいか、いくぞっ! 出すからな!」
「あああっ、は、早くして! もう、あたしだめえっ……やっ、またお尻でいきそうっ……ううん、うんっ、うんっ……!」
「蘭っ!」
「くひぃっ! いっ、いくっ!!」

荒戸のペニスが、浣腸液でいっぱいの蘭の腸管でぐぐっと大きく膨れあがった。
アヌスを引き裂かんばかりの圧迫感で、蘭も二度目の頂点に駆け上がった。
荒戸は蘭の尻肉に指を食い込まれるほどに強く掴んで、いちばん奥までペニスを挿入した瞬間、一気に射精してのけた。

びゅるううっ、どびゅっ、びゅるるっ、びゅくっ。
びゅく、びゅくびゅくくっ。

「んひぃっ、いくっ! あ、あ、新一の精液が、ああっ、あたしの……あたしのお尻の中で出てるっ……やあっ、精液でお尻がいっぱいになるっ……はああっ……」

荒戸は角度を変えてやや斜めに蘭のアヌスを突いていた。
そうすることで腸壁に亀頭が直接当たるようにしてから射精したのである。
もとより腸内は浣腸液でいっぱいになっており、そこに射精してもその感覚は得られない。
しかし、鈴口を腸管に密着させる状態で射精すれば、精液の熱さやその勢いを直接感じさせられることが出来る。

蘭は、荒戸の射精の勢いをモロに腸へ受け、その強烈な刺激と快感で激しく達した。
発射される精液が腸管にぶつかるたびに、蘭の腰がビクッと震え、手がぐっと握りしめられている。
荒戸は、痙攣する蘭の尻たぶを掴み、肉棒を奥深くまで挿入したまま、じっと動かなかった。

「あ、あう……」

やっと射精を終えて荒戸が男根を引き抜くと、蘭はドッとベッドに倒れ込んだ。
全身で荒く呼吸する蘭のたくましい腰と細い背中が美しかった。
しかし、ぐったりしていたのはほんの僅かだった。

「あ……あっ!」

蘭の裸身がぶるっと震えた。
荒戸は慌ててポリバケツをその丸く白い尻にあてがった。

「いいぞ、蘭。してもいいんだ」
「あ、でも……恥ずかし……やあ、出る……」

蘭の蠱惑的なアヌスがぶるるっと震えると、勢いよく噴出させた。
もう蘭の混濁した意識には、部屋で排泄しているという恥辱や、それを見られているという羞恥もなかった。
暗く途切れ掛かった蘭の意識は、荒戸によって強引に呼び覚まされる。

「あ……何を……」

いつの間にかすっかり排泄させられ、綺麗に後始末されていた蘭の尻に、再び荒戸の肉棒がめり込んできていた。
蘭の背中がまた仰け反り、悲鳴が響く。
浣腸と排泄、そして肛門性交で腫れぼったく爛れてきていたアヌスに太いものが挿入される感覚に蘭がわななく。
そして、すぐにその麻薬的な快感に浸り始め、二度目のアナルセックスに没入させられていった。

────────────────

紀尾井町、ホテル・ニューオータニ。若いドアマンが、口を開けっ放しで今入ってきた客を見送っている。
もうひとりの先輩格のドアマンも、同じように唖然とした表情で女性客を見ていた。
外国人らしいその女性は、虚仮威しのような豪奢なホテルの内装にもさほど関心を示さず、まっすぐフロントへ歩んでいった。
その後を、彼女のトランクを引いたベルボーイがついていく。

もともと、昭和39年の東京五輪開催時に来日が予想される大量の外国人客受け入れのために開設されたホテルだから、外国人客は伝統的に多い。
当然、国賓レベルのVIPや各国のセレブ女性たちも訪れるわけだから、彼らドアマンやボーイたちもそうした美しい女性たちは見慣れている。
しかし、あの女性はその彼らをしてなお惹きつける魅力と雰囲気があったのだ。

年齢は25歳よりは上、30歳よりは下、と言ったところだろう。
見事なプラチナブロンドでスタイルも抜群だ。
やや勝ち気そうな鋭い目つきが気になるが、それがまた一層に美女ぶりを強調している。
着ているのは黒のワンピースと純白のカバーオールというさりげないファッションだが、センスが良い。
ワンピースは喪服と見紛うばかりの目に染みるようなブラックである。大きなパールのネックレスがとても映えている。
しかもワイドネックでノースリーブ、おまけに下はミニだから、若い男にとっては目の保養……いや目の毒だ。
ジャケットもふわっと柔らかそうな生地で、どう見てもシルクだろう。
見たところ、どちらもディオールらしい。
ふたりがポカンと口を開けたままなので、見かねたクロークの女性従業員が早歩きで近づいてくる。

「島田くん! 大谷くん!」

小声ながら強い口調でふたりを呼んだ。
ハッとした島田たちは、慌てて先輩に頭を下げた。

「すっ、すみません、高島さん」
「何をぼけっとしてるのよ。ドアマンは「ホテルの顔」なのにそんなことじゃ困るわ」
「すみません……」

シュンとしている若いドアマンを見ながら、高島がため息をつく。

「あの方に見とれてたわけ?」
「はあ……まあ……」
「確かにお綺麗なお客様だけど、だからと言って……」
「い、いや、それもそうなんですけどね。僕、あの人どっかで見たことあるんすよ」

大谷がそう言うと、高島は意外そうな顔で聞いた。

「あら、あなた外国に知り合いがいるの?」
「いえ、そんなことないす。でもなあ……な、島田」
「あ、はい。あの人、映画か何かに出てなかったかなあ」
「ハリウッドの女優さん?」
「あんまし自信ないですけど」
「いや、それはないだろ、島田」

大谷が言った。

「だってよ、あの人が乗ってきたクルマ見ただろ?」
「リムジンだったの?」
「あ、そうじゃなくて……」

大谷が高島の耳に顔を近づけ、小声で言った。

「外交官ナンバーのクルマだったんですよ」
「え? そうなの?」
「はい。赤坂方面から来たクルマだったし、どうもアメリカ大使館の関係者みたいですね……」
「そうか……。女優さんなら、いくらセレブでも、親善大使か何かじゃなければ大使館経由ってことはないか」

注意しに来たはずの高島までが、例の女性客詮索に加わってしまっている。
そっちを見てみると、ベルボーイが先導してエレベータに入ったところだった。

「お部屋はどこっすか」
「ガーデンタワーのクイーンスイート……」
島田と大谷は顔を見合わせて「ひゅう」と口笛を鳴らした。

「女優かどうかは知らないけど、セレブには違いないってとこか」
「大使かアメリカ政府関係者の奥方かしらね」
「そんなとこでしょうね」

大谷と高島が彼女の身元についてそういう推理をしていた時、突然、島田が小さく叫んだ。

「あ!」
「なんだよ」
「思い出しました! やっぱ女優っすよ、僕、映画で見たことある!」
「何ていうの?」
「何だったかなあ……、クリス……クリスなんとかって言ったと思います」
「でも、それって変だろう」

大谷が首を捻った。

「だって大使館のクルマで来たんだろ? てことはお忍びとかプライベートじゃないってことにならないか?」
「そう言えばそうね……。結婚してたっけ、彼女。もしかして外交官の奥さんになってたとか……」
「んなことないと思うんですがね」

島田が額に手を当てて宙を見ながら思い出していると、大谷と高島が直立不動になっていた。
目の前に、別の客が怪訝な顔をして突っ立っていたのだ。
すぐに営業用の笑顔になった三人は慌ててお辞儀をし、中に招き入れた。

────────────────

クリスことシャロン・ヴィンヤード──別名・ベルモットは、予約した部屋に通されると、ベルボーイにチップを渡し、彼が深々と頭を下げてから
ドアを閉めるのを見送ってから、広い窓際に立った。
ジャケットを無造作にベッドに放り投げて階下を見下ろしている。
地上40階から見る赤坂の夜景が煌びやかだった。
おもむろにスマートフォンを取り出すと、着信していたメールを確認する。

「……」

「あの方」からの連絡である。
あの方からの指示で急遽来日したものの、任務の内容は知らされなかった。
現地に着いたら詳細を知らせるとのことだったのだ。

メールにはサイトアドレスのみが打ち込まれてあった。
ベルモットは無言でトランクからノードパソコンを取り出すと、備え付けの回線でインターネットに接続した。
使い捨てのサイトだから、いちいち登録はしていない。
このサイトは携帯端末では接続すら出来ず、パソコンで接続しても指定時間内にキーワードを打ち込まないと強制的に遮断されてしまう。

細い指がキーボードで踊ると、すぐに目的のサイトに到達する。
55字にも渡るパスワードをブラインドタッチで打ち込むと、白地に黒の英文テキストのみが表示されている画面が出てきた。
それに目を通すと、ベルモットはすぐにマシンを切った。
白い美貌の眉間に、僅かに皺が寄っていた。
ノートを少し乱暴に畳むと、足早にシャワールームへ向かっていった。


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