アスカは、ひさしぶりにミサトのマンションを訪れていた。
ミサトは会議のため、三日間ほどニューヨークの国連軍本部へ出張していた。
その間、シンジはずっとひとりっきりになってしまうこととなり、心配した龍田がアスカを連れて泊まりに来たというわけだ。
少なくともアスカはそう説明されたが、この男のことだから、何か奸計をもってのことかも知れない。
それに、こないだシンジたちの前で感情を爆発させてしまった後ろめたさもあり、気が進まなかったが、龍田とシンジに促され、来る気になったのだ。
龍田はともかく、シンジに「来て欲しい」と言われれば悪い気はしなかった。

宿泊と言っても、学校が終わってネルフに寄ってからのことなので、夕食を摂って寝るだけである。
それでも、シンジもアスカも楽しかった。
やはりひとりぼっちよりは仲間といる方が気が晴れるのだ。
帰宅の途中でスーパーに寄り、食事の材料を買ってマンションへ行った。
もう夕方であり、アスカが「お腹が空いた」と騒いだため、すぐに食事の支度と相成った。

当然、食事当番はシンジである。
食事当番やゴミ出しはジャンケンや櫛引で交互に行なっていたが、ミサトの生活が不規則であり、本人の性格がずぼらであることもあって、シンジに偏ることが多かった。
アスカがいた時分もそうで、アスカはほとんど家事に興味を示さなかったから、結局シンジが「主夫」となるしかなかったのである。
それが、この日のアスカはテンションが高く、珍しいことに自ら率先して包丁を握っていた。
シンジは、その不慣れな包丁捌きを見てはらはらしている。

「ああ、アスカだめだよ、それじゃ」
「なんでよ!? ちゃんと切れてるでしょ」
「そうだけど……、ジャガイモもニンジンも大きさがバラバラだよ。それじゃあ均一に火が通りにくいよ」
「うるさいわねえ。あんたはさっさとタマネギ炒めてればいいのよ」
「終わってるよ、もう。ほら、飴色になってるだろ?」
「……」

そのやりとりを後ろから見て、クスクス笑いながら龍田が茶々を入れる。

「アスカの切るのが遅すぎるんじゃない?」
「うっさい!」
「……しかし、きみたちを見てると飽きないよねえ」
「見せ物じゃないわよっ」
「ははは、しかしそうやってると新婚夫婦みたいだ。アスカとシンジくんが結婚したら、絶対にシンジくんが尻に敷かれるタイプだよね」
「け、結婚て……」
「だっ、誰がバカシンジと結婚するのよっ」

シンジとアスカの反応は異なっていたが、ともに顔が真っ赤になったのは同じだ。
悔し紛れにアスカが龍田を罵った。

「大体あんたは何よ! あたしたちに作らせておいて自分はビール飲んでるなんてさ! それじゃミサトと変わらないわよ」
「あははっ、そうかもな。でも、せっかくシンジくんがやってくれるというのに、あたしもやるって出しゃばったのはアスカだぜ」
「バカシンジひとりじゃ頼りないからに決まってるでしょっ。あ、こらシンジ、包丁返してよ!」
「もういいからアスカは肉を炒めててよ、切ってあるからさ。その鍋にバターを入れて、そっちのニンニクを……」
「ふん!」

アスカがシンジからフライ返しを奪い取ると、それこそヤケクソのようにバターを炒めとかし、シンジがスライスしたニンニクを入れ、牛肉を炒めていく。
あたりに、バターとニンニクを炒める香ばしい薫りがぷうんと広がる。
油が飛ぶのか、アスカはたまに顔を顰めている。
その間にシンジはジャガイモとニンジン、タマネギを見事に切り分けていた。
炒めた肉に野菜を加え、また炒め、水を張っていく。
ぐらぐらと煮え立ってきたところに、アスカがカレールウを入れようとすると、慌てたようにシンジが止めた。

「あ、待って」
「何よ、もう入れていいんでしょ?」
「タイミングはそれでいいんだけど、ルウは火を止めてからだよ」
「何でよ」
「沸騰した時にルウを入れちゃうとね、うまく溶けてくれないんだ」
「どうして? 熱い方がよく溶けるんじゃないの?」
「詳しいことは僕もわからないよ、経験からそう言えるだけだから。ただ、沸騰してる状態でルウを入れちゃうと、どうしてもダマになっちゃって、どろっとしたところと妙にさらさらしたところが出来ちゃうんだよ。だから、入れる時には火を止めてから」

バタピーをつまみにビールを煽りながら、龍田が感心したように言った。

「へえ、シンジくん詳しいねえ」
「いえ、そんなことは……。素人料理ですし、ひとりで作ることも多かったですから。それに、ミサトさんと暮らしだしてもその点は変わらないんで……」
「きついな」

龍田はそう言って大笑いした。
ルウが溶けるのをじっと睨んでいたアスカが、おもむろにヨーグルトの容器を空け、それをルウの中に入れようとした。
予期していたかのようにシンジがまた止める。

「ああ、それ入れない方が……」
「何で! 隠し味じゃないの」
「アスカがそれ買ってるのを見た時、そうするんじゃないかと思ってたけどね。そっちのチョコレートもそうなんだろ?」
「……いいでしょ。これ入れるとコクが出るって……」
「コクなら、最初に入れたバターで充分なんだよ。あんまりゴテゴテ入れちゃうと、かえって味のバランスが崩れちゃう。それに手間がかかるじゃないか。マニュアル通りに作ればそれなりの味になるんだよ」
「……」

彼女なりに考えてのことを否定されたことで、アスカの機嫌が見る見る悪くなっていく。
ここでキレて出て行ってしまっては、今日の催しの意味がなくなる。
龍田は取りなすように言った。

「まあまあ、アスカ。カレーはもうシンジくんに任せようよ。それより僕、ひさしぶりにアスカのサラダが食べたいな」
「サラダ……?」
「材料、買ってたでしょ? ボイルしたエビにチシャ、紫たまねぎ、セロリにアスパラ」
「……」
「アスカのドレッシング、ドイツにいた頃、一度だけご馳走になったけどけっこうおいしいんだよ」
「へえ」

アスカの機嫌を損ねてしまったと知り、どうしようかと困っていたシンジも「助かった」とばかりに龍田の尻馬に乗った。

「そうなんだ。じゃあアスカ、サラダ作ってよ。僕もサラダは作るけど、いっつもマヨネーズや市販のドレッシングばかりで……」
「ふ、ふん。わかったわよ、作ってあげるから」

龍田とシンジに懇願され、多少なりとも矜恃を取り戻したアスカは、吊り上がった目が下がってくる。
本当は嬉しいのだが、それを何とか隠そうとして表情が硬くなっているのが丸わかりで、龍田もシンジも吹き出しそうになっている。

アスカは、ガラス製のボールに千切ったレタスといびつに刻んだタマネギとセロリ、茹でたアスパラを入れる。
そこにボイルした芝エビを加え、適当に手でかき混ぜた。

「よし」

今度はドレッシングを作る。
今度は金属製の小さなボールにオリーブ油をどろどろと垂らしていく。
塩、コショウにほんの僅かな砂糖を加え、アルミ製の袋を振って、何やら荒い粉末を入れている。
初めて見るらしく、シンジが尋ねた。

「アスカ、何それ」
「知らないの? ハーブよ、ドライハーブ。バジルにイタリアンパセリ、ローリエ、ローズマリー、ミント、タイム、セージとかが入ってんの。香辛料ね」
「へー」
「これがいい香りになるのよ。で、ここに……」

そう言って、今度は半分に切ったレモンをぎゅっと絞り入れる。
すかさずシンジが突っ込む。

「レモン? お酢でいいんじゃないの?」
「これだから日本人てさ」

アスカが蔑むように言った。

「日本のお酢って、どうせ穀物酢でしょ? あたし、あれ嫌いなんだ。匂いがきつくてすぐツーンとくるから。りんご酢とかバルサミコならまだいいけど……。それにこっちの方がずっと香りが良いし、さっぱりしてるんだから。ほらバカシンジ、カレーが焦げるわよ、ちゃんとかき回しててよ」
「あ、はいはい」

些か得意そうにアスカが仕上げに入る。

「最後に……、これ」
「は? わさび?」
「うん。日本の香辛料ってあんまりピンと来ないんだけど、これはおいしいわよ。すっと鼻に抜ける感じがいいの。隠し味程度にほんのちょっぴりこれを加えて……」

そう言ってアスカが小さな泡立てでシャカシャカとボールをシェイクし、お手製ドレッシングが出来上がった。
それから、買ってきたソーセージをボイルし、それにマスタードを添えて一品仕上げた。カレーも仕上がり、ご飯も炊けたようで、早速盛りつけて夕飯となった。

「いただきまーす」

シンジは両手を合わせてそう言うと、龍田も慌てたようにそれに従う。
アスカだけはそうした日本の風習に従う気はないのか、さっさと食べ始めた。

「……うん。おいしいよ、アスカ、これ」

シンジはカレーよりも先に、まずアスカのサラダに手を着けた。
多少おいしくなくても褒める気だったのだが、予想に反してこれがけっこういけている。
シンジは内心驚いていたが、アスカとてこれくらいのことは出来るのだろう。
そう言えばレイは料理なんかするのだろうか。
とてもそうは思えないが、彼女が作ったものも食べてみたいものだ。
しかし、レイが慣れぬ仕草でキッチンに立つ姿を想像すると、それだけで苦笑が込み上げてくる。
シンジが素直に褒めたことで、アスカは自慢そうに言った。

「でしょ? 妙な保存料とか合成香料とか一切ないからね。自然の味よ」
「セロリって苦手だったけど、これなら食べられるよ」
「そうなの? セロリが食べられないなんてシンジもまだ子供ねえ」
「それはアスカがませてるだけだよ。香り野菜はだんだんと覚えていくもんだ。アスカもシンジくんのカレー食べてみなよ。うまいぞ」
「ふん」

アスカは鼻を鳴らして、スプーンで一口食べてみる。

「わ、悪くないわね」
「素直じゃないな、おいしいって言ってあげなよ」
「いいですよ、アスカらしくって」
「何よ、それ。……にしても、これ何よ」

と言って、アスカは皿の脇に数個置いてあったラッキョウをスプーンでつついた。

「薬味のラッキョウじゃないか。福神漬けも……」
「あたし、こういう酢漬けってイヤなのよ。ザワークラウトならいいけど……」
「食べてみれば、アスカ」

龍田が唆すと、何となくバカにされたような気がして、アスカは思い切って食べてみる。
と言っても、先っちょをほんの小さく前歯で囓った程度である。
妙な表情をして小さくかみ砕いていたアスカは、途端に顔を歪ませた。

「げーー、やっぱ、いや、これ! 変な甘酸っぱいっ」
「それがいいんじゃない」

シンジはそう言って、コリコリとラッキョウを囓っている。
その様子を呆れるような表情で見ながらアスカが言う。

「信じらんない。どーしてこれがカレーライスに合うって思うのかしら、日本人て」
「そのうちアスカにもわかるようになるよ」
「なにそれ。あたしの味覚がまた子供だっての?」
「そうじゃないよ。慣れてくるうちにわかる味もあるってことだよ」
「なによ、知ったかぶりして」

若いふたりのやりとりを笑いながら眺めていた龍田の顔が、僅かに歪む。
まただ。
また頭の芯がズキッと痛む。
目の奥が熱くなってくる。
そこに鏡があれば、龍田は自分の目が青みがかってきたことがわかっただろう。

龍田は後ろを振り向き、冷蔵庫から出したミネラルウォーターを三つのグラスに注いだ。
アスカとシンジの会話を背中で聞きながら、コップのひとつに小さな白い錠剤を落とす。
顆粒を固めたものだったのか、薬はさっと水に溶けた。
そのグラスをシンジに差し出し、残ったふたつは自分とアスカの前に置く。
シンジは、会釈してからコップを受け取り、冷えた水をうまそうに煽った。

────────────────────

「ちょっ……! あっ!」

楽しい夕飯を終え、龍田が煎れた食後のコーヒーを飲みながら、しばらく三人は談笑した。
アスカにとっても、こんな時間を持てるのはひさしぶりだったから、意地を張りつつも充分に楽しんだようだった。
順番に入浴し、パジャマに着替えてからも、名残惜しむように会話を楽しんだが、夜10時を過ぎると、明日も学校があるということで、就寝することになった。
シンジは自分の部屋へ、アスカも元いた部屋で床に就いた。
龍田はミサトの許可を得たようで、ミサトの部屋に布団を敷いて寝るらしい。

食事を終え、眠る段になると、アスカはだんだんと不安が募ってきた。
あの龍田が、何も考えなしでこんなイベントをやるとは思えなかったのだ。
絶対に何かしてくるはずだ。
食事の団欒中にしてくるとは思わなかったが、終わった今となれば話は別だ。
他人であるシンジがいる中で、そんなふしだらな真似はしてこないだろうということに、唯一の期待を持っていた。

そのアスカの儚い希望をあっさりと打ち砕かれた。
シンジが「おやすみなさい」と言って寝室に消え、アスカも逃げるように部屋へ戻ろうとした時に、その腕を掴まれたのだ。
アスカは、強い力で手首を握られ、苦痛に顔を歪ませながら口早に言った。

「痛いわよ、ちょっとっ……!」
「……」
「い、痛いって言って……あっ」

襖をガラリと開けると、龍田はアスカを突き転がした。
敷いてあった自分の布団の上に、少女の華奢な身体が転がる。

「何すんのよ! 痛いじゃない!」
「大声出すなよ、アスカ。シンジくんに聞こえるぜ」
「おかしなことしたら大声出すわよ。シンジを呼ぶから!」
「呼べばどうだ? 何ならシンジくんに見せつけてやろうか」
「あ、あんたバカぁ!? 本気でそんなこと言ってんの!?」
「僕は構わんがね。そうしたくないなら、声を出すのは控えた方がいいと思うよ」
「ま、待ちなさいよ……!」

珍しくアスカが狼狽えていた。
ぺたんと座ったまま、両手を突き出すようにして龍田を拒んでいる。

「ほ、他の場所ならともかく、ここじゃダメよ!」
「何がダメなんだ? 何をされると思ってた?」
「っ……」

アスカの顔が見る見る赤くなっていく。
その様子を面白そうに見ながら龍田が言った。

「ま、今アスカが思った通りのことをしようというわけだ」
「やっぱりっ……! この変態っ」

アスカは声を潜めて怒鳴り、罵った。
ほとんど無音声で喋っているから、廊下を隔てたシンジの部屋までは届いていないはずだ。
龍田の目つきで、この男が本気だと覚ったアスカは脅えて後ずさりした。

「待ってよ、ね、ねえったら!」
「……」
「す、するなら他で……他の場所でしてよ、ここじゃいや!」
「ふふん、ネルフのおまえの部屋か僕の部屋でなら抱かれる、犯されるってことか? セックスしていい、オマンコしてってわけか」
「そ、そういうこと言わないでよ、このっ……」

されたいわけではなく、ここでされるのが嫌なだけだ。
結局、どうあってもこの男の魔手から逃れられないのであれば、せめて場所は変えて欲しい。

しかし、本当にそれだけだろうか。
もう自分はこの男に飼い慣らされてしまったのではないか。
そんな気すらしてくる。
淫らな言葉を言われるたびに、身体の奥がズクン、ズクンと反応しているように感じていた。

「本当にやめて! お願いだからっ……」

驚いたことに、アスカは涙ぐんでいた。
初めて犯した時にも涙を流していたが、それは悔し涙であり、心身への苦痛のための涙だった。
だが今アスカの頬に伝うそれは、シンジのすぐ側で辱められることへの恐怖と恥辱のためだ。
思った以上に彼女の心は、シンジの方を向いているらしかった。
龍田は動きを止め、少し考えてから言った。

「わかったよ、アスカ」
「え……、許してくれるの?」

意外な反応に、アスカは表情に喜色を浮かばせている。
淫猥で卑劣なこの男に、感謝の気持ちすら湧いた。
しかしそれがとんだ早とちりであり、甘かったことがすぐにわからされる。
龍田は唐突にスウェットを脱ぎ始めたのだ。

唖然とするアスカの前でトランクス一丁となり、その前開きから勃起しかけたペニスがぽろんと顔を出している。
アスカは顔を真っ赤にしたかと思うと途端に青ざめ、小さく頭を振りつつ腰で捩り逃げる。

「し、しないって言ったじゃない!」
「だから、しないで僕が満足すればそれでいいってことだよ」
「ど……、どういうことよ! そ、その前にそれしまってってばあっ、見たくないのよ、そんなものっ」
「おいおい、見るだけでそれじゃ困るな。これからアスカは……」

龍田は、いかにも意地の悪そうな顔でこう言った。

「こいつをしゃぶるんだからな」
「え……?」

アスカはしばらくきょとんとしていたが、顔の前に突き出された男根を見せつけられ、ようやく龍田の言ったことが理解できた。
目を大きく見開き、唇をわななかせて息を飲んだ。
驚愕の表情を浮かべている14歳の少女に、龍田が低く冷たい声で命じた

「フェラチオだよ、フェラチオ。知ってるんだろ?」
「し、知ってるけど……」

知識だけの話である。
無論、実践したことなどなかったし、することを想像したこともなかった。
そう言うと、龍田はとうとうトランクスを脱ぎ去り、下半身を丸出しにして迫ってきた。

「ほら」
「い、いやよ、そんなっ。く、口でなんて……!」

龍田の手がアスカの右腕を掴み、引き摺るように近くに寄せる。
股間の前に顔を持って来させると、アスカの頭を掴んでそれを引き寄せるようにして、肉棒を近づけた。
たちまちアスカは顔中を真っ赤にして首を曲げた。

「バ、バカっ、何すんのよ、見たくないって言ってるのにっ」
「見るだけじゃなくて口に入れろと言ってるんだよ。いやならおまえを押し倒してこのまま犯すぞ、俺はそれだっていいんだ」
「……」
「徹底的に嬲って、いやでも声を出させてやるからな。何事かと思ったシンジくんがここへ来るまでアスカを……」
「わ、わかったわよ! やる、やるからっ……」

背けていた顔をイヤイヤ正面に向け、おずおずと男の生殖器を眺める。
思わず綺麗な顔を顰め、呻いた。

「ううっ……、何度見てもグロテスクったらないわね。こんなものをしゃぶれっての?」
「ぐずぐずするな」
「わかってるって言ったでしょ! く、臭いわね、これ。あんた、ちゃんとシャワー浴びてんの?」
「いい加減にしろ、この」
「あ、ちょっと……、むううっ!」

龍田が腰を突きだし、同時にアスカの後頭部を押さえた手に力を入れると、少女の可憐な唇にその醜い肉塊が押しつけられた。
アスカは嫌悪で顔を歪め、顔を盛んに打ち振った。
唇が亀頭に押しつぶされ、そこから漏れた粘液がムッと鼻腔に飛び込んでくる。
その生臭さと気色悪さで、アスカはもどしそうになる。
我慢出来ずに龍田の腰を押しこくり、顔を離すと吐き出すように言った。

「き、汚いっ……、げーーーっ、吐きそうよ、ホントにっ!」
「アスカ」
「ああ、もうどうしてこんなことしなきゃならないのよっ」

ここでだらだらと引き延ばしても仕方がなかった。
業を煮やした龍田が何をしでかすか、わかったものではない。
この卑劣な男は、本当にシンジを呼んでその前でアスカを犯すような真似をしかねないのだ。
それだけは避けたかったアスカは従うよりないし、それに口で終わらせたらレイプされずに済むかも知れないという微かな期待もあった。
いずれにせよ、目の前のペニスで口の中を穢されるのは覚悟しなければならなかった。
アスカは、苦い薬を飲むつもりでペニスを口にした。

「お……おっ……」

アスカの生暖かく、柔らかい咥内の感触が、龍田の男根を一気に勃起させていく。
あの小生意気なアスカに口唇愛撫させているという満足感が、あっという間に龍田の肉棒に芯を入れ、膨張させていった。
たちまち小さな口いっぱいに大きくなり、ペニスの急激な変化にアスカは目を白黒させて呻く。

「んんっ!? ん、んむ……むむうっ」

その不快感からか、それとも想像以上に大きくなった恐怖からか、アスカが口から離そうとするが、その頭を龍田がしっかりと押さえつけている。
離れようとするアスカの口へ、逆に押し込んでいく。
男根で咥内の粘膜を擦られ、その先端は喉もとまで差し込まれていった。
その息苦しさでアスカは軽く噎せ返り、涙が滲む。
苦しげな少女を労ることもせず、龍田は冷酷に命令する。

「なんだ、そのザマは。それじゃいつまで経っても終わらんぞ」
「ん……、ぷわっ、苦しいっ……し、仕方ないでしょっ、こ、こんなこと初めてなんだからっ、あ、もういや、んむううっ!」

龍田の手が緩んだ一瞬の隙でアスカは口から肉棒を吐き出したが、またすぐに咥えさせられる。

「やり方を教えてやるから、その通りにやってみろ。いいな?」
「んっ……」

アスカは「わかった」と言うように、小さく頷いて見せた。

「付け根の方を手で握れ。しごいてみるんだ。そうしながら顔を前後に動かして、唇でもしごけよ」
「ん……」

アスカは細い指で太いものの根元を握ってみる。
小さな手がいっぱいになるほどに太さだった。
かなり熱く、しかも硬かった。
それを言われた通りにしごいてみると、その動きに反応してびくびくと痙攣するのが気持ち悪い。
顔も動かし、ペニスを出し入れしてみる。
太くて唇いっぱいに拡げられていたから、窄める必要もない。
熱く硬いもので唇が擦られ、ペニスをしごいているというよりもペニスで唇がしごかれているような気がしてくる。

「よぅし、それでいい。慣れたらだんだんと速度を上げるんだ。それから舌も使えよ。どうやればいいかくらい、わかるだろう?」
「ふっ……んんっ……ん、んむ……んむ……んく……んっ……じゅっ……じゅぶっ……ん、ん、んむ……んんっ……んふっ……ちゅっ……」

アスカは咥内に広がる肉棒の感触にくらくらしてきた。
生臭い匂いは口から鼻に抜け、少し酸味のあるしょっぱい味に舌まで汚染されてくる。
それにも増して、咥える前はしなだれ気味で頼りなかったものが、今では凶器と呼びたいくらいのたくましさに成長した男根の凄さに圧倒される。
咥内にはほとんど舌の動く余地がなかったが、それでもちろちろとサオを舌先で舐めると、ペニスがびくびくと反応するのがわかった。

龍田の方は、愛撫は拙いものの、アスカが必死になって苦しそうにしゃぶっている様子を見るだけでますます興奮が高まる。
それでもアスカは、まだそうすればいいのか自分ではわからないらしく、言われた通りのことしかしてこない。

「学習能力のあるのはわかったがな、アスカ。おまえなりに工夫して色々やってみるんだ。賢いアスカのことだから、それくらい出来るだろう」
「ぐっ……」

褒められたのかバカにされたのかわからず、アスカは悔しそうに龍田を見上げた。
それでも口から出さず、早く終わらせようと唇、舌で愛撫を続ける。

「もっと舌を使うんだよ。そのまま喉の奥まで使ってみろ。頬の裏で亀頭を擦るのも効果的だぞ」

そんなこと簡単にできるわけがないと思いつつも、アスカなりに努力をしていく。
硬いだけでなく、反り返るようにそそり立っている肉棒へ恐る恐る舌が這い回る。
サオ部分よりも、ぶくりと膨れあがった亀頭やカリ首のあたりを舌先で擦ってやると、龍田の腰がビクッと動き、ペニスも嬉しそうにびくつくのを知って、アスカは少しずつ男性の性感帯を覚え込んでいった。

「よしよし、さすがにアスカだ、物覚えがいいぞ。応用力もある。ふふ、それとも、もともといやらしい女の子だったってことかな。おっ……!」

薄く可憐な唇で擦られ、舌でねっとりと舐められて、龍田のペニスはいっぱいまで膨れあがってくる。
さすがにその快感には堪えきれず、龍田はアスカの髪に手を突っ込み、軽くくしゃりとかき回す。
アスカの、腰の弱い髪が少し乱れ、頭からふわっと少女らしい甘い香りが漂った。

「ん、んむ……んむう……んっ、ちゅ……じゅっ……ん、んむ……むうう……むっ」

アスカの頬が紅潮してくる。ペニスをしゃぶる行為にも熱が籠もってきた。
嫌なことはさっさと終わらせたいという気持ちもあったろうが、それ以上にアスカの肉体自身が反応し始めていたのである。
無論、フェラチオは女性からの一方的な奉仕であり、女性本人には肉体的快感などないだろう。
しかし、その淫らな行為をしている自分に興奮し、あるいは恥辱的、屈辱的なことを強要されている自分に被虐的な快感を得ているのかも知れなかった。

その証拠に、アスカは微妙に瞳を潤ませ、腰を捩り、腿をすり合わせるようにしてもじもじしている。
恐らく、もう股間が熱いのだ。
膣が反応してしまい、濡れている可能性もあった。

龍田は、アスカのフェラに追い込まれ、今にも自失してしまいそうになったが、懸命に堪え忍んだ。
14歳の少女による初めてのフェラで、呆気なく射精してしまっては男の名折れだと思った。
龍田は、小さく痙攣する脚を押さえ込み、腰に力を込めて何とか射精感を堪えた。
そして、口調と表情だけは余裕を装い、アスカを見下すように言うと、乱暴に突き倒した。

「……もういい」
「あっ……」

腰がよろめき、アスカはぺたんと布団に座り込んだ。
口が疲労して麻痺しているのか、唇が閉じきらず、その端から唾液がたらりと一筋垂れ落ちた。

「ダメだな、アスカ。そんなもんじゃ、とても僕は満足できない」
「そんなこと言ったって……」

アスカは、悔しいというよりも悲しくなって俯いた。
あまりにも淫らな行為に加え、産まれて初めてやったのだ。
そうそう巧く出来るはずもない。
なのに、それを罵る龍田に怒りは感じず、むしろ自分へのもどかしさを感じていた。
龍田はパジャマを脱ぎながらアスカに宣告する。

「仕方ないな。では……」
「あ、ちょっと待ってよ」

アスカは慌てて顔を上げて手を振った。

「だ、だめよ絶対に。シンジが……、シンジがいるのよっ」
「そんなこと関係ないさ、約束を守れなかったアスカが悪い。アスカのフェラで僕が満足できなければ……」
「あ、やる! 今度はちゃんとやるから……」
「だーめ。もう少し勉強するなり練習するなりしておいてくれ。今日はもういい」
「だ、だけど……あっ!」

膝立ちになった龍田は、アスカを軽く突き倒した。
腰が痺れかけていたアスカはあっさりと転び、仰向けになってしまう。
起き上がろうとしたものの、龍田がのしかかってきた。

「遅かれ早かれこうなるんだ、諦めろよ」
「だっ、だからここではいやよ! ちょっと、いやっ、んむっ!」

大声で悲鳴を上げそうになったアスカの口を、龍田が手のひらでパッと押さえる。
アスカの耳元に顔を近づけ、声を殺してさりげなく脅迫した。

「静かにしろよ、シンジくんに知られないのかい?」
「っ……」

もがいていたアスカの動きがピタリと止まる。
龍田は喉の奥で「くっくっ」と笑いながら、なおも少女を追い詰めた。

「無駄に騒ぐな。アスカがどんなに抵抗しても僕は犯すぜ」

アスカは激しく首を振って、ようやく龍田の手を振り払った。

「でも、ここじゃ……」
「おまえが声を抑えれば平気だよ。このままじゃ僕も満足できてないし、アスカだってもう濡れてるんだろ?」
「っ!」
「わかってるんだよ。男のチンポをくわえ込んでるうちにもやもやしてきたんだな? 脚をもじもじさせてたじゃないか。アソコが熱くなってるんだろうに」
「ち……違う……。あっ!」
「何が「違う」だよ。ほれ、もうこんなになってるぞ」

龍田は素早くパジャマのズボンの中に手を入れ、ショーツの隙間から指を入れて確かめた。
慌てたアスカが脚を閉じ合わせたものの、男の手を挟んだだけで意味はなかった。
龍田が手を抜き、体液で汚れた指をアスカの顔の前へ持っていく。
「見たくない」とばかりに、アスカは顔を振った。

「い、いや……」
「おまえだって、もうしたくなってるはずだ。抱かれたいだろ? それともオナニーでもするのか?」
「……」

事実だった。
フェラしているうちにおかしな気分になってきたのも本当だが、それ以前に、ここへ来る前からもう身体が火照り気味だったのだ。
だんだんとあの薬の効果が長続きしなくなってきていることはアスカにもわかっていた。
最初のうちは10日なり一週間保ったのに、今では二日も保たなくなってきている。
逆に、だんだんと性欲も性感も強くなってきてしまっているように感じられた。

それでいて本来のシンクロ率上昇の効果だけはあった。
もはやアスカは薬の副作用というよりも、度重なる性行為によって肉体が快感を覚え込んでいた。
そして、龍田の体液によって官能が高まってしまっている。
龍田に抱かれるのが悔しくて自慰だけで済ませることもあったが、その際にも指を挿入するなど行為が激しくなっており、もっと何か太いものを入れたいと思うようにすらなっていた。



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