響子は普段通りに立ち働いていた。
茶々丸での宴会後、二谷にラブホテルに連れ込まれて犯された。
酔っていたとはいえ、また、縛られていたとはいえ、ほとんど抵抗なく凌辱されたのだ。
二谷に犯されたのは二度目だ。
最初に、彼の部屋で襲われた後は、ショックのあまり翌日は寝込んでしまった。
それ以降も、なるべく部屋を出ないようにしていた。
言うまでもなく、凌辱者に会わないためである。
しかし、二度目に犯されたあとは普通に振る舞っていた。
もちろん二谷には出来るだけ接触しないようにはしていたが、他は平常通りだ。
というのも、最初の強姦のあと寝込んだ時は、裕作に散々心配されたからである。
響子はもともと、あまり風邪を引かない質だ。
裕作と知り合って7年経つが、その間、風邪を引いたのは2回くらいだ。
体力がある方ではないが、子供の頃から病気をしない子だった。
それを知っている裕作が心配するのは当然である。
確かに精神的に大きな衝撃を受けていたし、それに伴って体調も悪かったのだが、響子はウソ
をついているという負担を感じていた。
なにくれとなく面倒を見てくれる夫に申し訳なかった。
保育園を休んで響子と春香の面倒を見るとまで言い出したので、もうこの手は使いたくない。
問題は裕作だけでなく、住人もだ。
正確には一の瀬夫人だが、この人はちゃらんぽらんなようで、かなり的確にこちらの状態を見抜
いてくる。
二谷の部屋で凌辱されたあとも、響子の様子がおかしいことに最初に気づいたのが一の瀬の
おばさんなのだ。
どうも、風邪ではないらしいことまで覚られていたようだ。
変な勘ぐりを入れられて、自分や二谷をおかしな目で見られるのも困る。
ここまで考えて響子はため息をついた。
この期に及んで、まだ二谷の心配をしていた。
響子には、まだ彼を信じているところがある。
若いのだから劣情に押し流されることはあるだろう。
実際、裕作だって似たようなものだったのだ。
もし裕作に二谷ほどの「経験」があれば、まかり間違えば同じようなことをやっていたかも知れ
ないのだ。
裕作にはそれが出来るだけの度胸はなく、響子に対する敬虔とも言える畏れと憧れがない交ぜに
なった感情があったから過ちがなかったのだ。
響子が落ち込んでいる原因はもうひとつある。
言うまでもなく、裏切りといってもいい二谷の背任行為だった。
もともとは、夫の後輩であり、彼が可愛がっている子だから、という思いもあった。
そうしているうちに、響子自身も、昔の裕作を見るような微笑ましい気持ちで接していたので
ある。
何くれとなく世話をしたつもりだった。
管理人と住人の関係を越えていたろうと思う。
裕作の時と同じだった。
気が良く、親切な若者だと思っていた。
もちろんそれは響子の思い込みだったといえばその通りである。
しかし、信じていた人に裏切られたことが悔しく、悲しかった。
自分が傷ついたことよりも、彼がそんな犯罪行為に手を染めたことが残念であり、悲しかった
のだ。
そういうこともあって、響子は勇を奮って普段通りの行動をとることにしたのである。
ぎこちないところがあって、おばさんに不審に思われるかも知れないが、打ち沈んでいるより
はマシなはずだ。
不思議なもので、そうしていると気が晴れた。
最初の時は、自殺しそうなくらいに落ち込んでいたというのに、今はそうでもない。
ショックなことに変わりはないが、空元気で振る舞っているだけでも違うのである。
ただひとつ気になっていることはあった。
自分の肉体の変化であった。
二谷に対する感情は別にして、響子の身体は彼のセックスに反応してきていた。
部屋で犯された時は、二谷も無我夢中だったろうが、響子の方もショックが大きくて、感じる
とか感じないとかの問題ではなかった。
突風に巻き込まれたようなもので、あっというまに終わっていた感がある。
しかし二度目にホテルで犯された時は違った。
酔っていたのに、その酔いが一発で醒めるほどの衝撃は受けた。
また裏切られたという思いもあった。
なのにその裏で、二谷の責めを受けて肉体が感応していた。
認めたくはなかったが、感じていたのである。
思い出すだけで恥ずかしいし、また屈辱的ではあるが、あの時は喘いでいたようにすら思う。
何しろ前戯だけで気をやる寸前まで追い込まれたのだ。
一時間近くかけて全身をくまなく舐め回された。
乳房と媚肉は特に念入りにされた。
液が滲むまで舌を這わされた。
挙げ句、肛門までもが対象になった。
排泄器官をそのように責められるなど信じられなかったが、響子の身体は反応していた。
舌だけでなく指でいじくられ、ほじくられると、こみ上げてくる熱い肉悦を堪えるのに懸命
だった。
二谷が挿入する時には、もう全身が性感帯のようになっていたと思う。
そして響子には、彼が挿入してきた後の記憶がない。
気が付いたのはクルマの中で、アパートの前に停まっていた。
二谷に揺り動かされて起こされるまで、ぐったりとしていたのである。
10歳も若い男に、どんな痴態をとったのか想像するだけで恥ずかしかった。
よく憶えていないだけに、余計にその思いが募った。
響子は、如才なく振る舞っているはずが、たまにぼんやりしていることがある。
忙しい時はともかく、買い物を終えて部屋に帰ってきたり、春香を寝かしつけたり、夫を送り
出した後、ちょっとした時間が空くことがある。
そんな時、彼女の頭に浮かぶのは二谷とのセックスだった。
恐ろしいし、厭でたまらないのに、終いには感応させられていた。
同級生の涼子が言った通り、響子にも隠れた性癖があったのだろう。
それが、無理矢理犯されることであり、お尻を責められることらしいとわかり、彼女は恥辱と
ともに絶望感も感じていた。
このまま二谷の暴虐を許し続ければどうなってしまうのだろう。
そう考えてハッとした。
二谷の暴行は二回あった。
一回では終わらなかったのだ。
ということは、これからもあるかも知れないではないか。
彼は特に口止めなどしなかったが、響子は裕作に言えるわけがないと踏んでいるのだろう。
事実だけに辛く、悔しかった。
夫に言っても解決にならないような気がする。
何も響子が誘ったわけではない。
真実を話せば、裕作は許してくれるに違いないと思う。
だが万が一、彼が激怒したらどうなるのだろう。
そう考えると彼女にも引け目がある。
裕作は知る由もないが、彼女は感じていたからだ。
ただ犯されただけならともかく、愛撫に身体が反応した。
自分の妻が他人の愛撫に感じていたら、夫は許さないのではないだろうか。
優しい裕作は、口では許してくれるかも知れない。
しかし、わだかまりを残さないと誰が断言できるだろうか。
そんなことは厭だった。
偽りの夫婦も厭だし、まして別れることになるなど死んでも厭だ。
もう二度とひとりにはなりたくなかった。
響子は軽くため息をつく。
暇があると、そんなことばかり考えていた。
夫に声を話し掛けられても気が付かないくらいだった。
「聞いてる?」
「え? ……ああ、ごめんなさい」
「……なんか最近、ぼーっとしてること多いよね。まだ風邪が抜けてないの?」
「ち、違うの、ごめんなさい。少し疲れてるのかも。もう歳かな」
響子はそう言って笑った。
冗談にでもしなければ、神経が焼き切れてしまいそうだ。
「まだ20代だろ」と言って、裕作も笑った。
柔和な笑みだった。
この人に、あんなことは言えない。
裕作が確認するように言う。
「でさ、真人が来るの、今晩だからね」
「え、あ、そうだっけ」
「ほら忘れてた」
裕作は笑った。
茶々丸の宴会から三日後の今日、彼は二谷を部屋に招くことにしていた。
あの日、酔った響子を送ってもらった礼ということである。
実際にはその時、響子はホテルに連れ込まれて散々犯されたのであるが、裕作はもちろん知ら
ない。
響子たちが帰ったのは1時過ぎだったが、その日はひさしぶりに裕作も痛飲し、帰宅したのは
深夜2時を回っていた。
「あの時の礼もあるけど、真人もひとりでろくなもん食ってないみたいだしね。たまにはいい
もんを……ってまあ、家庭料理だけど、食わせてやりたいから」
「そうだったわね……」
あの事件の翌朝、それは言われていたのである。
お礼ということで、どこかに飲みに連れて行くとかいうのであれば響子は遠慮したのであるが、
部屋に招待するとあってはそうもいかない。
まして手料理をご馳走したいという希望なのだから、これはどうにもならない。
響子も同席せざるを得ないのだ。
さすがに二谷も、裕作がいる前でおかしなマネはしないだろうが、響子は彼とまともに視線を
合わせるのが怖かったのだ。
* - * - * - * - * - *- * - *
楽しみを待つ時間は長いのに、厭なことが迫る時間は短い。
気が進まぬまま夕餉の支度をしていると、約束の時刻はすぐにやってきた。
「……」
響子は春香にミルクを与えていた。
母乳も出るが、二谷のいる部屋で乳房を出す気にはなれない。
背中越しにテーブルの方を見ると、裕作と二谷が機嫌良くグラスを交わしていた。
別室があるなら引っ込んでいたかったが、生憎このアパートは一部屋一間である。
裕作が呼んだ。
「響子」
「あ、はい」
「春香を寝かしつけたらおいでよ」
呼ばれてテーブルについたものの、とても彼と会話する気になれない。
酌をしたり、言われたことに相槌を打つ程度である。
それでも裕作は気にした風ではなかった。
心地よく酔いが回ってきており、細かいことにまで気づかないようだ。
二谷の方も、裕作に調子を合わせて盛り上がっていた。
それでも、響子に対してちらちらと視線を送ってきていた。
その、絡みつくような粘り気のある目線をおぞましく思ったが、夫のいる前で怒鳴りつけるわけ
にもいかない。
その夫は、二谷と肩を組まんばかりにして話している。
「他人のような気がしないんだよな、おまえは」
「僕もそうですよ、先輩」
「もっとも、おまえの方がもてそうだな」
「そんなことないっすよ」
二谷はそう言いながら、裕作のグラスにビールを注いだ。
あまりアルコールの強くない裕作はもう顔が真っ赤である。
「俺なんか、高校出てからずっと彼女なしだったけど、おまえはいくらでもいるだろ」
「いえいえ」
二谷は大仰に手を振った。
「それが全然」
「ウソつけ」
「いやホントなんですよ。実を言うと、高校時代もサッパリでした。先輩がうらやましいです
よ、こんな綺麗な奥さんと結婚出来て」
そう言って二谷は響子を眺めた。
思わず視線を外したが、そのとき目に入った彼の表情を見てゾッとした。
ねっとりと舐めるような目で響子を見ていたのだ。
そして、一瞬ではあるが、二谷の表情が卑猥に、そして響子を蔑んだような目で見ていたの
がわかった。
響子は嫌悪と屈辱で胸を灼いたが、寸でのところで堪えた。
二谷は、笑い出しそうな表情を押さえ込んで響子に言った。
「ねえ奥さん、僕と五代先輩って誕生日も3日しか違わないんですよ」
「……」
「そうなんだよ、響子。俺も初めて知った。もっとも、生まれた年は8年も違うけどね」
「おまけに血液型まで同じなんですね」
「道理で気が合うわけだ」
笑い合う声が大きかったのか、春香が少しむずがった。
慌てて響子が立ち上がろうとすると、裕作がその肩を押さえて立った。
「いいよ、俺が見てくる」
「あ、でも……」
響子が縋るような目で見たが、夫は構わずベビーベッドへ向かった。
「……!」
裕作が席を立った瞬間、二谷が手を伸ばしてきた。
手を掴もうとしたその腕を、響子は押さえた。
若者は力を込めて腕を払った。
そして、正座していた響子の腿に手を這わせてきた。
人妻は小さく、だが強い調子で言った。
「やめて! 夫がいるのよ」
「へえ……」
二谷はそれを聞くと素直に腕を引いた。
だが、表情を淫らに崩しながら付け加える。
「なら、旦那がいなければ好きにさせてくれるんですか?」
「バ、バカなこと言わないで!」
「どうかした?」
「!」
裕作が帰ってくると、二谷は瞬時に姿勢を戻した。
響子にニヤニヤした笑みを浮かべながら、また裕作と話し込んだ。
裕作がすっかり出来上がったのは、それから一時間あとのことである。
「響子さん、先輩を寝かせましょう」
「……」
「響子さん」
「裕作さん! あなた起きて!」
「無理に起こさなくていいじゃないですか。もうすっかり……」
「裕作さんっ」
響子は何とかして夫を起こそうとしたが、裕作は寝入ってしまい、どうしても起きてくれない。
不安で不安で仕方がないが、どうしようもない。
「響子さん、布団を敷いてください」
「な……」
「先輩を寝かせるんですよ。……それとも、何か勘違いしたんですか?」
「……」
響子は二谷の方を見向きもせず、押入から布団を引き出し、夫のために敷いた。
裕作の足を二谷が持ち、響子が腋に手を入れて運んだ。
その間、裕作はピクリとも動かなかった。
布団にくるまって寝息を立てている裕作を見て、二谷が少し伸びをした。
「さて……」
「……」
帰ってくれるのかと思い、響子はホッとした。
さすがに二谷でも、寝ているとはいえ裕作のいる前では滅多なことは出来ないのだろう。
それが甘かったことに気づいたのは、そのすぐ後だった。
「な、何を……」
二谷は突然、後ろから抱きついてきた。
響子の胸の下に手を回し、両腕を抱え込んだ。
後ろから響子の肩に顔を乗せてきていた。
「やめ……やめてください、二谷さん!」
「騒がないで。先輩が起きますよ」
「……!!」
途端に響子の動きが止まった。
二谷は顔を響子の顔に寄せ、その首筋や髪の香りを吸い込んだ。
気が遠くなるほどの芳しさであった。
たまらず人妻の身体をまさぐっていく。
「やめて! あっ、いやあ!」
抗う響子の声が低い。
口調は強いが、大声ではない。
裕作や春香が起きてしまうことを懸念しているのである。
それをいいことに、二谷は響子にまとわりついていく。
カーディガンをはだけさせ、トレーナーをたくし上げる。
すべすべした腹部の肌を撫で、手を上に持っていくと、ブラの上から胸をまさぐる。
響子が必死になってその手を押さえつけようとすると、今度は脚を触り出す。
まさかの場合に備えて、響子はスカートではなくジーンズを履いていたが、その上から腿を
撫で回された。
むしろスカートより、ぴっちりと脚の線が浮き出るジーパンの方が、二谷の性欲をそそった。
若者の手は、人妻の柔らかい臀部や腿を盛んにさすっていた。
響子は耐えきれず、キッとした目で二谷を睨みつけて叫んだ。
「いい加減にして、二谷さんっ」
「……」
「こ、こんなこと許しません! これ以上、こんなことをするのなら……」
「どうするというんです?」
「……」
二谷は響子をまさぐる手は休めずに聞いた。
女の、綺麗な耳元に口を押しつけ、囁くように言う。
「先輩を……ご亭主を起こすんですか?」
「……」
「出来ませんよね、そんなこと」
そう言われて響子もわかった。
この男は、響子が最終的には裕作を起こせないということを知った上で、ねちねちといたぶっ
ているのだ。
女のか弱い抵抗を愉しんでいるのだろう。
カッとなった響子は、いっそ裕作を起こしてすべてを話したい欲求にとらわれたが、それだけ
は出来なかった。
今、そうするくらいなら、とっくに話している。
それが出来なかったから、またしてもこういう事態になっているのだ。
響子は、絶望的な思いで寝ている夫を見つめていた。
* - * - * - * - * - *- * - *
「隣、静かになったね」
「そうだね」
管理人室の隣にある一号室で、一の瀬は言った。
部屋にいるのはおばさんと、ひさびさに一刻館を訪れた朱美である。
例によって酒盛りをしているのだ。
朱美が壁越しに管理人室の方を見て言った。
「ご主人はまだ仕事?」
「ご主人てほどのもんじゃないけどね。残業らしいから、そうさね、帰ってくるのは10時
過ぎかね」
「賢太郎くんは?」
「部活。3年だからもう引退はしてるんだけど、手伝いをしてるみたいだね」
「勉強の方はいいの?」
「そっちはまあね。分相応のところらしいけど、合格圏内みたいで、そんなに焦ってないね」
「へえ」
ふたりの挟んだテーブルの上には、缶ビールの空き缶が林立している。
乾き物以外、つまみらしいものはない。
このふたりは、酒を飲むこと自体が好きなので、あまりつまみはいらないらしい。
「どうする? 五代くんでも呼んでくる?」
「よしな。もう寝たんだろ」
「そうかな。じゃああの子、なんつったかな……」
「二谷さんかい?」
「そう。たまには呼んでみる?」
一の瀬のおばさんは顔をしかめた。
朱美が探るような目で聞く。
「いや?」
「いやっていうか……。どうもあの子はよくわからないところがあるからさ」
「そう? でも五代くんなんかは可愛がってんじゃん」
「そうなんだけどねえ。管理人さんの方はどうなのかな……」
* - * - * - * - * - *- * - *
「ああ……もういや……」
部屋にはもう一組の布団が敷かれ、その上で響子は組み伏せられていた。
その周囲には、さっきまで着ていたトレーナーやジーンズがわだかまり、ブラやパンティが丸
められていた。
全裸にされた響子の上にのしかかるように、二谷が君臨していた。
響子は目にいっぱいの涙を湛えて言った。
「二谷さん、だめです……こ、こんなことはもう……」
「本当に厭なんですか、響子さん。こないだだって最初はそんなこと言ってたけど、終いには
……」
「やめて!!」
響子は目を閉じ、耳を塞いだ。
何を純情ぶっていやがると、二谷は鼻を鳴らして美貌の管理人を見下ろした。
「どうあっても、そのおいしそうな身体をいただきますよ、響子さん」
「いやよ! こ、これ以上こんなことするなら私は……」
「どうすると言うんです? 先輩を起こせますか?」
それが出来れば苦労はない。
「それとも部屋から逃げますか? 裸のままで」
「ああ……」
響子を絶望の淵に落としておいてから、おもむろに若者はのしかかった。
響子は目を剥いて若者を突き放そうともがいた。
「だめ、いや! お願いです、二谷さん……」
「もう我慢できませんよ。ほら」
「ああ……」
二谷がそう言ってトランクスを脱ぐと、もう男性器は完全に勃起していた。
亀頭部が大きく膨れ、びくびくと痙攣すらしている。
恐ろしげな肉の凶器を見て、響子の表情から血の気が引いた。
「だめっ……ああ、ホントにここではイヤなんです……」
「もう収まりがつきません。響子さんも観念してください」
「お願いです……」
「仕方がありませんね」
二谷があっさり引いたので、響子は少し驚いた。
しかしこのチャンスを逃すわけにはいかない。
若者が離れると、するするっとその下から逃れた。
その様子を見ながら、二谷が言った。
「でも、このままじゃ僕も困ります。ほら」
そう言って、誇らしげにペニスを揺すって見せた。
響子は穢らわしそうに顔を逸らした。
「どうしても抱かせてくれないのなら、責任とってくださいよ」
「責任て……」
「口でしてください」
「くち……」
「フェラチオですよ。したことあるでしょう?」
「!!」
響子は唖然として若者を見上げた。
この男は、夫の寝ている部屋で他人のペニスをしゃぶれと言っているのだ。
信じられなかった。
しかし、そうでもしないとこのまま引いてくれないだろう。
このまま犯されるわけにはいかない。
響子に選択肢はなかった。
「……」
響子が諦めたように起き上がり、布団の上に据わった。
二谷は立ち上がって、響子の美顔の前にペニスを突きつけてやった。
「いや……」
目を閉じていても、ムッとする若い性臭が響子の顔を叩く。
もともと響子は、あまり口腔愛撫が好きではなかった。
裕作が望んだので何度かしたことはあるが、積極的にやりたいとは思わなかった。
夫が喜ぶので我慢していたというのが正しい。
なのに、愛してもいない男のものをくわえなければならない。
屈辱で胸が灼けた。
「さあ」
「……」
二谷が声を掛け、響子は諦めて目を開けた。
「……!」
改めて二谷の性器を間近に見て震えが来た。
これまで二度犯されているが、こうしてまじまじとペニスを見るのは初めてである。
夫のものよりひと回りは太いように思える。
長さもあるし、色も褐色だ。
過去にも散々女を泣かせてきたのだろう。
響子は目をつむって、反り返ったペニスを口に含んだ。
「ふ、ふぐぅ、んちゅっ……んむ、んむ、んむむっ……はっ、むむ……んんっ」
口をすぼめてペニスをちゅるるっと吸い込み、ぬるついた頬裏の粘膜で敏感な亀頭部を覆う。
もごもごと口を動かして、唇と舌、咥内粘膜を総動員して若い男の性器をしゃぶった。
舌先を使ってカリをなぞるように擦ったり、舌を柔らかく拡げて全体を包み込むように愛撫
する。
口を前後させて唇によってサオの部分を扱きあげる。
響子がもともと持っていたテクニックではない。
すべて二谷に指示されて覚え込んだものだ。
裕作などは、響子にくわえてもらっただけで感動し、それだけで満足してしまったので、どう
しろこうしろと言われたことはなかった。
響子もそういうものだと思い込んでいたが、二谷に教わり、命令されて実行するうちに、様々
な技術があることを知らされた。
10歳も年が離れた青年に仕込まれる屈辱も、そのあとに与えられる気が遠くなるほどの快楽
の前には無力だった。
「は、はむっ……じゅじゅっ……ちゅくっ……んじゅじゅっ……む、むうっ……」
口いっぱいに大きなものを突っ込まれ、鼻でしか呼吸のできない響子の鼻腔から洩れる呼気が
熱く、早くなってくる。
強要されているとはいえ、否応なく口から入り込んでくる牡のフェロモンに、響子の牝の部分
が興奮してきているのだ。
頬が赤くなり、瞳も潤んできている。
二谷は響子の舌技に追い込まれながらも言葉で嬲ることは忘れない。
「くっ……今日はまた随分と気合が入ってますね。先輩の……ご主人の前で他の男のチンポを
くわえるのが、そんなにいいんですか」
「んんんっ……」
響子が固く目を閉じ、首を振る。
「違う」と言っているのだろうが、頭を二谷に押さえ込まれているため、口のペニスを吐き出す
ことが出来ない。
閉じた目からつうっと一筋の涙が伝う。
それすらも若者には高揚するタネになった。
響子は振り切ったように口と舌を激しく使い始めた。
さっさと射精させようと思っているのだろう。
響子の唇でしごかれ、二谷のペニスもギンギンと硬く熱くなる。
前後運動を繰り返す人妻の口に合わせ、若者も腰を振り始めた。
「んん! んぐうっ、んん、んんんっ、んぐ、んむむ、んくっ……」
喉の奥にまでペニスが届き、響子は苦しそうに顔をしかめるが、もちろん二谷は緩めない。
それどころか、一層激しく腰を使ってくる。
ぐぐっと亀頭が膨れた気がして、響子は慌てて舌先でそれを抑えた。
咥内射精されるのは仕方ないが、出来るだけ飲みたくはない。
舌の裏のねとっとした粘膜に包まれ、二谷の性器は限界点を越えた。
「くっ……出る!」
「んんん!? ん、んむ……ぐっ……」
響子は頭を振りたくって嫌がり、口を離そうとしたものの、二谷はがっちりと頭を押さえてそれ
を許さなかった。
尿道口を押さえ込んでいた舌を弾き飛ばすほどの勢いで射精され、響子の咥内はまたしても二谷
の精液にまみれた。
「んん……んんんっ! ……ん、んぐ……くんっ……んぐっ……んくっ……」
結局、飲まされた。
いつのもことだが、二谷は咥内射精した精液をすべて飲み尽くすまで、決して響子を離さなかった。
二谷は言いようのない満足感を得ていた。
年上の女性、それも人妻に口唇奉仕させ、その精液を飲み下させる征服感は格別であった。
「う……うう……」
ようやく解放され、響子は布団に突っ伏して忍び泣いた。
またしても夫以外の汁を飲んでしまった。
しかも、寝ているとは言え夫の前でである。
夫に対する背徳行為でむせび泣いている人妻の姿に、二谷はむらむらと獣欲がわき起こる。
他人のものを奪う快感というものは確かにあるのだ。
身体を細かく震わせて泣いている響子に近づくと、隠していたロープで手首だけ縛った。
頭の上で両手首を縛り上げたのだ。
そうして抵抗を奪っておいて、その背中にかぶさった。
「ああっ」
「これくらいで終わったと思わないでくださいよ、響子さん。本番がまだですよ」
「そんな……もう許してください……」
「ここで放っておかれたら、響子さんの身体だって満足できないでしょう?」
「そんな、ひどい……ああっ」
うつぶせになった響子の裸身に、二谷の淫らな手が伸びてくる。
布団と胸の間に潜り込んで、つぶれた乳房をこねこねと揉み込んだ。
響子の耳元に口を近づけ、耳を舐めながら淫らな口調で話し掛け、言葉で責める。
尻の間にも手を入れ、指でねちっこくアヌスをいびる。
ひくつき、しっとりと湿ってくるまで嬲った。
響子は嫌がるが、明らかにアヌスにも強い性感を得ていることを見抜き、二谷は毎回そこを責
めていた。
綺麗に伸びた背中の窪みや、腋の下を中心に舌を這わせていく。
響子の肉体を知り尽くした手口だった。
特に腋が響子は弱かった。
ぬるぬると唾液にまみれた熱い舌が舐め上げるごとに、「くぅっ……ひっ……」と悲鳴とも喘ぎ
ともつかぬ、艶っぽい声を洩らしていた。
いやいやするようにもがく尻たぶの間にペニスを挟んでしごくと、すぐに充血してくる。
尻の谷間でムクムクと大きくなっていく感触に、響子は「ひっ」と喉を鳴らした。
「やめてっ!」
犯されると思った響子は、激しく身体をゆさぶって二谷を落とそうとした。
若者は落ち着き払って女の耳元でつぶやいた。
「そんなに暴れたら先輩が目を覚ましますよ」
「!!」
ピタリと響子の動きが止まる。
もし、こんな状況で裕作が目を覚ましたら、どんな言い訳をしても通じない。
二谷も響子も裸で、しかも身体を重ねているのだ。
いかに人の好い裕作でも信じてはくれないだろう。
二谷もすべてを夫に打ち明けるかも知れないのだ。
「先輩に……旦那に知られてもいいんなら勝手にしてくださいよ、僕はそれでも構わない」
「……」
「僕は響子さんに誘われたと言うしね」
「そんな! 夫はそんなこと、きっと信じません……」
「別にそれでもいいんですよ。もし響子さんの方を信じても、僕はここから出ていけば済むん
ですから。警察に訴え出ることもないでしょうしね。まさか自分の女房が男に寝取られた、
なんて言うバカはいませんから」
「……」
「いずれにしたって、あなたは今まで通りの結婚生活を営むことなんか出来ません」
「ひどい……」
「だから」
二谷は後ろから響子の顎に手を回し、自分の方に向かせて言い聞かせるように言った。
「あなたは僕の言うことを聞けばいいんです。僕だってバカじゃない、何もこっちから先輩に
このことを言うつもりはない」
「でも……」
「わかりますね? この関係をこのまま続けていけばいいだけですよ。問題ないでしょう?
先輩にはこのことを知らせず、あなたは僕の要求する時にその身体を提供してくれればいい。
それに……」
若者の目が淫猥に歪んだ。
「響子さんだって、満更でもなかったんでしょう? けっこう喘いでいたじゃないですか」
「やめて、言わないで!」
「ふふ……」
響子の身体から力が抜けたのを見計らい、二谷は響子の尻をぐっと割った。
ハッとして響子は振り返った。
「ひっ、いやっ! ここではいや!!」
「……ん」
「……!!」
響子は、犯される気配に、思わず叫んでしまい、大慌てで口を押さえた。
それに気づいたかのように、裕作がゴロリとこちらを向いて寝返りを打ってきたのだ。
二谷がペニスを尻に挟んだまま、乳を揉みながら響子に言った。
「ほらほら、そんな大声で叫んだら起きちゃいますよ」
「……」
響子は全身が凍り付いたように固まったが、裕作はそのまま寝入っている。
こちらを向いたまま横向きになったが、眠ってはいるようだ。
もともと寝付きがよく、一端熟睡すると滅多なことでは起きなかったが、響子が喘いだり、
二谷と組んずほぐれつを演じたら、さすがに目が覚めるだろう。
響子は気が気ではなかった。
一方の二谷は落ち着いている。
起きたら起きたで構わないと思っているのだろうと響子は想像したが、そうではなかった。
裕作は、まず絶対に起きないだろうと思っているからだ。
二谷が、彼のグラスに睡眠薬を入れたのだ。
初めて響子を自室でレイプした時に使ったあの薬である。
ビールに混ぜて飲ませており、まず5時間くらいは熟睡するはずなのだ。
だから激しいセックスを演じてもまず大丈夫だとは思うが、隣室には一の瀬がいるはずだから
大事を見るに越したことはない。
何より響子に「夫に知られたくない」と思わせたかった。
その背徳感で彼女を追い込み、仕込むのだ。
胸を揉んでいた手が離れ、再び尻たぶを割り裂かれると、響子は二谷を振り返って必死に懇願
した。
「お、お願い、二谷さんっ」
「……」
「こ、ここではいや、ここでは堪忍してください……。ほ、他でして……」
響子は声を殺し、泣くような口調で言った。
二谷は響子の尻を開いたまま聞いた。
「他で、というのはどこでです? どこでなら抱かれるというんですか? 僕の部屋ですか?」
「いやっ……あ、ああ……ホ、ホテルでなら……ああ……」
「ラブホテルでなら抱かれるというんですか。それもいいですが、取り敢えず僕はここでした
いんでね」
「そんな、ああっ」
大きく横に張り出した骨盤についた見事な肉。
きめ細やかな肌に覆われた官能的な臀部に二谷は囚われた。
二谷は、はちきれそうなその尻を割り開いて、ペニスを中心にあてがった。
「ああっ!?」
響子は狼狽し、低い声で叫んだ。
今までも男が興味を示し、盛んにいじっていたところではあるが、まさかそこを犯されるとは
思わなかった。
驚いて腰をよじり、せり上がろうとする響子を押さえ込んで、ぐっと腰を沈めた。
「あ、いや、そこ違う!」
「いいや違わない。ここでいいんです」
「で、でも、そこはお尻……」
「そうです、僕は響子さんのお尻を犯すんですよ」
「そんな……」
振り向いた響子の顔から血の気が引いていた。
アヌスが感じてしまうということに悩んでいたのに、そこでセックスまでされるなんて信じら
れなかった。
「もしかして響子さん、ここは初めてですか?」
「いや、いやあっ!」
「先輩にここを可愛がってもらったことはないんですか?」
「あ、当たり前ですっ……あの人はそんな変態じゃありませんっ」
響子の悲鳴が低い。
まだ周囲を気にする余裕がある、というより、気にしながらも感じているということなのだろう。
二谷にとっては願ったり叶ったりのシチュエーションである。
「ということは、響子さんのここは処女なんですね」
「しょ、処女って……」
そう言えば、裕作も昔、一度響子のそこに興味を示したことがある。
笑いながらだったので、冗談だろうと思い、まともに相手にしなかった記憶があった。
もしかしたら本当はしたかったのだろうか。
響子に激しく拒絶されることを恐れ、冗談に紛らわせたということかも知れない。
とすると、二谷が特別なのではなく、男はみんな関心があるのだろうか。
涼子もそんなことを言っていたし、自分もそこが感じてしまう。
ならば夫に捧げたかった。
しかしそんな響子の思いを打ち砕くように、二谷の肉棒が押し入ってきた。
「いっ、いやあっ……やめて、痛いっ……」
二谷が腰を押していくと、ぐぐぐっと太いものが響子のアヌスを突き破っていく。
白い尻たぶの間に埋め込まれていく自分のペニスを見ながら、言い知れない優越感に二谷は囚
われていた。
夫さえも触れたことのない人妻の処女地帯を犯しているのだ。
これほど興奮することはなかった。
二谷は、括約筋にきつく締め上げられるペニスに征服感を感じていた。
全身に悦びで震えが来そうなくらいだ。
諦めたのか、響子は顔を布団に埋めて呻いている。
両手はシーツを固く握りしめていた。
「む……んん、い、痛い……んんっ……」
前戯で、愛液をなすりつけるように指で愛撫し、腸液が洩れてくるまで揉み込んだだけあって
思ったより痛みはないようだった。
響子が痛がっているのは、裂かれる激痛というよりは、排泄器官を犯される苦悶や羞恥、夫以外
の男に貫かれるという苦痛を感じているからだろう。
その苦悩した悩ましい美貌に圧倒され、二谷はたまらなくなって奥まで押し込んだ。
「むむっ……あ、あう……」
ぐいっと一気に押し込むと、響子の喉が呻いた。
痛いから当然だろうと思ったのだが、何度も何度も突き通していると、そうではないことに二谷
は気づいた。
「んんっ……はうっ……んっ、はあ……んむっ……」
感じているのだ。
響子は苦痛のためではなく、身体の奥からこみ上げてくる妖しい快感のために呻いていたので
ある。
初体験であるのにスムーズに二谷の巨根を受け入れたことからもわかるように、響子のそこは
かなり伸縮性に富んでいた。
それでいて、犯される前にも念入りに愛撫されていたし、響子自身そこに性感があったらしい。
それを知ると二谷は、自分の幸運に酔いしれながら腰を打ち込んでいった。
響子も戸惑っていた。
恐れていたほどの痛みはなかった。
その代わり、奇妙な快感があったのである。
最初のうちは、お腹が埋め尽くされるような不快な圧迫感ばかりで苦しかった。
なのに、二谷の腰が何度もそこを突き刺してくるうちに、想像もしなかったような妖しい愉悦が
訪れてきたのである。
お尻というよりお腹の奥がこそばゆいような、何だか切なくてもっとして欲しいような不可思議
な感覚だった。
そして男の肉棒が深いところまで幾度も突入してくると、快感指数がどんどんと上昇してきて
しまう。
変態的なセックスに感じてきている自分に嫌悪し、それを表に出すまいとしているのだが、二谷
の攻撃につい呻いてしまった。
突き込まれるごとに悦楽が深まっていき、油断すると高い声を放ってしまいそうになる。
二谷がそれを見透かしたように言った。
「どうやら感じてきたようですね、響子さん。いや奥さん」
「いやっ……あ、あああ、こんな……あううっ……」
「奥さん」と呼んだら、響子のアヌスがきゅっと締まった感じがした。
人妻だということを意識させてやると、より以上に恥辱や背徳を感じるのだろう。
響子は、次々と襲い来る初めての感覚に戸惑い、喘ぐ。
不思議な充実感が肛門と直腸に広がっていった。
男の肉棒がぐぐっとめり込んでくると、響子は「うっ」と腹の奥から呻き声が出た。
初めて不浄の門を犯されているのに、二谷のペニスが思った以上にフィットしている。
あまり激しく抜き差しされたら、繊細な腸の襞が傷つくのではないかと思ったのに、息苦しさの
他には違和感がほとんどないことに響子は驚いていた。
ぐっ、ぐっと二谷が律動を起こしていくと、アヌス周辺がもぞもぞビリビリと痺れ、切なさが
こみ上げてくる。
二谷の動きが徐々に大きく激しくなっていくと、否応なく響子の快感の度合いも高まってきた。
肉棒から肛門に染み渡り直腸まで広がった快感が、子宮にまで到達してこの美女を喘がせるのだ。
「ああ……ああっ……」
たまりかねたように上体を反り返らせて喘ぐ響子に愛おしさを感じ、二谷は両手を背中から拡
げてその胸を揉んだ。
ピンピンに屹立していた乳首をひねるように愛撫し、腰の打ち込みを深めていくと、響子は
はっきりとよがり出した。
「あ、あむっ……ああっ……」
「奥さん、そんなによがると旦那に聞こえるよ」
「!!」
ハッとした響子が裕作に目をやると、夫はスヤスヤと寝息すら立てていた。
ホッとしたのもつかの間、二谷はかさにかかって責めてくる。
二谷が抉り込むごとに、響子のアヌスは痙攣しているかのように窄まり、緩みを繰り返していた。
二谷は腰を使いながら、媚肉にも手を伸ばしてニヤリとした。
案の定、感じている。
濡れてきているのだ。
敷いている布団に蜜がしみ通っている。
最初はほどほどにと思っていた二谷だが、響子の予想外のよがりように興奮し、このまま犯す
ことにした。
「はう、はううっ……あ、ああ……だめ……だめ、もう……あっ……」
響子の身悶えが一段と露わになり、しなやかな肢体をのたうち回らせている。
アヌスが壊れるかと思うほどの太いものを、今ではすんなりと飲み込み、襞を絡みつかせていた。
人妻のアナルを犯して気をやらせる。
その興奮にすっかり酔いしれ、二谷は響子の尻がつぶれるほどに激しく打ち込んだ。
「ゆ、許して、ああっ……ああっ……あっ……あむむっ!?」
響子は一気に上り詰めた。
頭に夫のことはなかった。
二谷は一瞬早く響子の口を塞いで絶頂の声が洩れるのを押さえた。
裕作は起きないだろうが、隣室で一の瀬が聞いている恐れがある。
響子はぶるぶる震えて身体をのけぞらせ、一瞬のちにがくりと脱力した。
二谷はその締めつけに、思わず漏らすところだった。
余裕を装いながら響子の耳元で言った。
「そんなによかったのかい、響子さん」
「……」
「初めてお尻を犯されていくなんてな」
「言わないで……」
「ふふ……」
まだ痙攣が収まらず、ピクピクしている人妻の尻をひとつ叩くと、ゆっくりとペニスを引き出
していく。
まだ発射していないそれはいかにも硬そうで、柔らかい響子の肉はひとたまりもないだろう。
今度は響子を仰向けにひっくり返した。
響子は「ああ……」と軽く呻いただけで、まるで抵抗できなかった。
痺れきった腰に呆然としながら目を開けると、若者がこれ見よがしにペニスをぶるんぶるんと
振っていた。
そのたくましさに響子は悲鳴を上げた。
「ひっ……」
「まだまだだよ、奥さん。僕は未だ出してないんだからね」
「そんな……もう充分でしょう……」
「射精させてもらいますよ。奥さんの中でね」
「そんな、いや……」
響子は官能の疼きも飛び去り、青くなった。
まさか夫の前で媚肉を犯されるわけにはいかない。
それこそ、本当に裏切ることになってしまう。
凌辱の憂き目を逃れようと、人妻は必死になって懇願した。
「お願いよ、二谷さん。これ以上はだめ、だめよ……」
「今さら何です、響子さん。この期に及んでまだそんなこと言ってるんですか」
二谷は響子の腿を割り、熱い肉棒を内腿に押しつけた。
「だめだめっ、それだけは……」
「もうどうにもならないよ」
「お願いっ! ……ああ、お願いです、二谷さん。な、何でもしますから、それだけは……」
「何でも?」
若者の動きがピタリと止まった。
響子は救われた思いで何度も頷いた。
「は、はい……。他でなら抱かれますから、ここでだけは……」
「何でもするんですね」
「は、はい……」
「じゃあもっとお尻にひどいことをして、何度も犯していいんですね?」
「……」
「膣の中に射精しても怒りませんね?」
「そ、それは……。中でなんてダメです……」
「やれやれ」
二谷は肩をすくめた。
「あれもダメ。これもダメ。そんなんじゃ交渉にもなりませんよ」
「……」
「決裂ですね。じゃあ……」
「いっ、いや! ああ、な、中でもいいですから、ここでは……」
「もう遅いですよ。おとなしく僕のものになってください」
「あ、いやあ!」
二谷は、嫌がって左右に振りたくる響子の美貌を見下ろしながら、その柔肉を割っていった。
その太さ、熱さに響子は呻いた。
「だ、だめ……あう、あむむ……」
ぐいぐいと埋め込まれていくペニスが、響子の芯を貫いていく。
やはり夫のものとはまるで違う。
入れられただけなのに、その大きさからくるきつさで頭が虚ろになっていく。
震える手で二谷の胸を押していた響子だが、最奥まで埋め込まれるとガクリと力が抜けた。
深くまで押し込み、子宮を押し上げるように突いてやると、響子は面白いように仰け反った。
「あっ、あうっ……いや、ああっ……」
二谷が長い肉棒をいっぱいに使い、ゆっくりと出し入れしていくと、犯される人妻は喘ぎ、
腰を震わせた。
知らず知らずのうちに身体に力が入り、足の指までよじれていく。
「あ、ああ……あう……」
「そんなにいいんですか? でも、あんまり喘ぐと亭主に聞かれますよ」
「ああ……」
響子は唇を噛んで喘ぎ声を噛み殺そうとするが、二谷が突き込むほどに喉の奥から熱い声が
漏れ出ていく。
身体の芯が収縮するかのように引きつれている。
もはや抵抗しているのは精神だけで、肉の方は二谷のペニスと責めを悦んで受け入れていた。
このまま責め続けられれば、官能の海に引きずり込まれるのは必至だった。
「あ、あう、やめて……あっ……ね、お願い、これ以上は、ああっ!」
その時、裕作がごろりと寝返りを打ち、何事か寝言を言った。
響子は心臓が止まるかと思うほど緊張した。
肉の快楽も忘れ、夫の動きが止まるまで身体が硬直してしまった。
二谷が小さく囁いた。
「ほら。だからそんなによがると起きちゃうって言ったでしょ」
「そ、そんなこと……あっ……」
喘ぐな、よがるなと注意する素振りをしながらも、二谷は腰の動きを止めない。
響子の媚肉を深くまで抉り、こねくった。
膣を抉られ、性の悦楽に飲み込まれそうになりながらも、響子は二谷に言った。
「だめっ……あ、ああ、お願い……」
「お願いが多いな。今度は何です、早く気をやりたいんですか」
「ち、違う、ああ……。こ、声が出てしまう……」
乳を揉まれ、腰を突き込まれていると、その快感で喘いでしまうから何とかしろと言うのだろう。
そうは言われても、男はその喘ぎやよがり声を聞きたくてやっているのだから、よせと言われ
ても無理である。
そう言うと、響子は美顔に悲壮な色を浮かべて頼んだ。
「声が、ああっ、出ちゃう……お願い、ああ……お願い、何か口にくわえさせて……」
「ほう」
そう言われて二谷は思い出した。
確か江戸時代の花魁を扱ったビデオ作品か何かで、感じた時のよがり声を抑えるために、女郎
は桜紙か何かを口にくわえていた憶えがある。
確かにそうしていれば声は出ないだろう。
相変わらず突き込みを繰り返され、次第に陶然となっていく響子は、それでも噴き上がる声を
押さえ込んでいる。
「はっ、早く、ああっ……お願い、口をふさいで……ああっ……」
つまり響子は、もう二谷にこの場で抱かれることに関しては諦めたということだろう。
その人妻は、迫り来る快楽に腰をうねらせ、熱い喘ぎと呻き声を洩らしていた。
声のことはともかく、ここで止めたらさぞかし失望するだろう。
二谷は乳房をぎゅうぎゅうと揉み絞りながら激しく腰を打ち込んだ。
奥まで入れ込んで、子宮口をなぞるように擦ってやると、腰を絞ってよがった。
散々胎内を抉り回すと、その裸身に痙攣が走ってきた。
響子の顔を覗くと、盛んに唇を噛んでいるが、すぐにゆるんで喘いでしまっている。
響子がわなわなと震えてきた。
ペニスを押し包む肉襞が熱く、締め付けが不規則になっている。
「ああっ、あ、もう……あっ」
「いきそうなんですか、奥さん」
二谷が聞くと、響子はためらうことなく頷いた。
もうどうにもならないのだ。
「だ、だから早くっ……く、口をふさいでっ」
さすがに、絶頂の瞬間の声を出したくはなかった。
他人に犯され、気をやる声を夫に聞かせるわけにはいかない。
夫が寝ている、寝ていないは関係なかった。
それでも二谷の腰は、機械的な正確さで響子を責めてくる。
彼のひと突きごとに、彼女は頂点に近づかされていった。
「ああっ……あ、もうだめっ……あ、ああああ……あうう!?」
響子が切羽詰まった時、二谷はその唇に吸い付いた。
それまで響子は、キスだけは拒否してきていた。
しかし、もうどうしようもなかった。
いくか、いかないかの瀬戸際に二谷が人妻の唇を奪っていた。
響子は唇を割られ、前歯の間に舌の侵入を許した。脅えて、奥の方に引きこもっていた舌を
引きずり出され、思い切り吸われた。
二谷は鼻息が洩れるほどに激しく響子の口を吸った。
彼は執拗なまでに響子の唇と舌を貪り、とことん吸い上げ、彼女の薄甘い唾液を存分に味わっ
ていた。
響子の、絶頂時のよがり声は、二谷の口に吸い込まれていった。
「ん、んむっ……ふむうぅぅっっ……!!」
(い、いくっ……いくうぅぅっっ……!!)
二谷は、響子の喘ぎ声と官能を、その口で受け止めていた。
その呻きを聞きながら、二谷は思い切り射精した。
若い精子が響子の女の部分を凌辱していた。
響子はその粘った液の感触を子宮に感じながら、再び裸身を引きつらせて気をやった。
* - * - * - * - * - *- * - *
事が終わり、布団に突っ伏してすすり泣いている人妻に、若者は冷たく言った。
「奥さん、明日にでも旦那に抱かれろ」
「……」
「そして中に出してもらうんだ。いいな」
戻る 作品トップへ 第二話へ 第四話へ