「ああ……」

ひさしぶりに男に犯され、内部に射精されて気をやった響子は、がくりと力が抜けた。
男は響子がいったことを確認すると、素早く彼女の下から抜け出した。
そして辺りを見回して立ち上がると、簡単に身繕いを済ませると自席に戻っていった。
放り出された恰好の響子が余韻に浸っていると、いきなり毛布を引きはだけられた。

「……!!」

驚いた響子は声も出なかった。
正面には大柄な男が立っていた。
暗くて顔がよくわからないが、目だけがぎらぎらと光っていた。
明らかにさっきの男とは違う。
悲鳴を上げる間もなく、男は響子を抱き抱えた。

「な、何を……むっ」

大きな手のひらが響子の口を塞いだ。
もとより大声は出せない。
何しろ響子はまだチャイナドレスを半分脱がされたままの半裸なのだ。
ここで悲鳴を上げて客室乗務員を呼び寄せれば、たちまち状況が明かされてしまう
だろう。
男は、戸惑う響子を無視して、いわゆる「お姫様抱っこ」で抱きかかえたまま、
ズンズンと奥へと歩いていった。
さっきまで響子を犯していた男が呆気にとられて見ていると、大男は響子を抱いた
ままトイレの中へと消えていった。

男はトイレのドアを開けると、その中に響子を押し込んだ。
自分も中に入ったが、半身を外に出して周囲を確認している。
異常はない。
起き出してくる者はいなかった。
ただ、さっきまで響子をシートで犯していた日本人男性だけが、びっくりしたような
表情で男を見ていた。
大男はその日本人ににやっと笑いかけてから、ドアを閉じた。

「あっ……」

狭い室内に押し込められ、さらにそこへ大きな男も入ってきた。
室内灯のスイッチが入れられると、灯りがパッと内部を照らす。
狭いトイレといっても、そこはファーストクラスで、用足しには充分すぎるくらいの
広さがある。
当然のようにシャワートイレだし、隅にあるサニタリーボックスもセンサー対応で
自動開閉だ。
手洗い場も大きめで清潔感がある。
もちろんハンドソープも置いてあった。

光源は男も照らし出した。
偉丈夫な黒人だった。
道理でガタイがいいわけだ。
アフリカやアジア系ではなく、すっきりとした顔つきをしている。
アメリカ系なのかも知れなかった。
着ているスーツも高価そうで、いかにもエクゼクティヴという感じがする。
ステレオタイプな、「野蛮な黒人」というイメージはなかった。
黒人は何も言わず、響子を後ろ向きにさせて、壁に押しつけた。
強い力でぐいと押され、響子はそこにあった洗面台に思わず両手をついて身体を
支える。
大きな手が、突き出されたヒップを撫で回している。

「くっ……」

やはりこの黒人は、さきほどの響子と男のセックスを見ていたのだろう。
声も出さず、逐一観察していたに違いない。
そして響子の痴態に昂奮し、我慢しきれなくなったらしい。
前の男が終わると「今度は俺の番だ」と言わんばかりに響子を連れ出したのだ。
男のそうした思考に、響子は怒りを覚えた。
見ず知らずの女性客をトイレへと連れ込み、まるで用足しでもするかのように響子
を犯そうというのである。
どのみち響子は、汚れた股間を清め、衣服や下着の乱れを直すためにトイレへは
来るつもりだった。
ところが別の男が彼女を凌辱するためにトイレを使おうとしている。
生理反応で小便をトイレに排泄するのではなく、己の性欲のためだけに精液を響子の
胎内に射精しようというのだ。
これでは便器と変わりない。
屈辱と悔しさが胸の内に込み上げ、響子の美貌を歪ませていく。
目の前の鏡に映った男に怒りの表情を見せたが、男は意に介さず響子のスカートを
捲り上げた。

「あっ……」

響子の悲鳴は小さい。
やはり見つかりたくないという思いが強いからだ。
それをいいことに、黒人は響子の尻を剥き出しにする。
さっき犯されたばかりで下着を上げる暇もなかったから、パンティは膝のあたりに
引っかかったままだ。
履き替えるつもりだった下着は、響子の蜜で汚れているはずだ。
もしかすると、男の精液もかかっているかも知れない。
晒された股間の奥には、同じように媚肉が愛液と精液にまみれていた。
男は何も言わず、そこをじっと見ている
。牡の視線で、獣の目で、響子の恥ずかしい場所をじっくりと眺めていた。

「ああ……」

羞恥で響子の頬が染まっていく。
見られて恥ずかしいという理性と、見られることに快感すら覚えるという淫欲が、
響子の中でわだかまっていた。
ぷるぷると響子の大きな臀部が震えだした。
見られているだけで何もされない肉体が疼きだしたのだ。
視線を感じるのか、恥じらいで媚肉もアヌスもひくついている。

(ああ、こんな……さっきされたのに、また……)

膣からとろりと粘液が零れた。
それがさっき注がれた精液だと響子は信じているが、もしかすると自分の分泌液も
混じっているのかも知れない。
男にまた犯されるかも知れないという恐怖と期待が、新たな蜜を生みだしているのだ。
膝もガクガクしてきた。
知らず知らずのうちに、男を誘うかのように脚が開いていく。

「あ……」

黒人の大きな手が、ぺたっと響子の尻たぶに乗った。
ふくよかで形も良い真っ白な尻の上に黒い手のひらが乗っている。
まるで剥いたばかりのゆで卵のようにつるりとした尻肉が小刻みに震えている。
やけに熱い手のひらだった。
まるで男の性欲が汗となって滲み出ているかのようだ。
やがて男の手が、ぐっと尻の谷間を割り開く。

「やっ……!」

いよいよ犯される……そう思うだけで、響子の股間が濡れ、膣の奥が燃え上がって
くるのだった。
尻にぺちぺちと何かが当たる。
響子が振り返ると、男がペニスを自慢げに持って、尻を叩いているのだった。

「ひ……」

美しい日本女性は思わず息を飲んだ。
大きいのだ。
皮膚よりもさらに黒いペニスが隆々とそそり立っている。
日本人とはサイズがまるで違っていた。
同じ人類とはとても思えない。
おまけにその先は、ぬらりとした粘液にまみれている。
犯す準備は万端らしい。

(あ、あんなもので犯される……)

響子の背筋にゾクリと悪寒が走った。
あれで貫かれたら裂けてしまうような気がした。
同時に、あんなすごいものでいちばん奥まで犯されたらと想像すると、淫らな気持ち
が抑えきれなくなってくる。
媚肉は早くも口を開け、膣口を露わにしている。
僅かに開いたそこからは、とろりとろりと蜜が零れ出ていた。
いつしか腰まで淫らにくねらせていた。
響子も、黒人と同じく生唾を飲み下した。
割られた尻たぶの底に肉棒があてがわれた。
その熱い感触に響子は戦慄する。

「そ、そんないきなりっ……!」

前戯も愛撫もない。
いきなりの性交だ。
男の方は、すでに響子のそこが濡れそぼち、余計な手間をかけることはないと判断
したのだ。
その通りで、響子の肉体はもはや収まりのつかないところまで来てしまっている。
いつまでもこのままにしておいたら、響子の方から「犯して」と口にしてしまい
そうだ。
充分な硬度をもったペニスが、後ろからゆっくりと響子を貫いていく。

「は、いって……くる……んんっ、お、おおきい……」

あまりの太さに呻く響子とともに、犯す黒人の方も呻いていた。
こんなに濡れきっているというのに、響子の膣があまりにもきつく、まるで処女の
ようだったからである。
膣の襞が伸びきってしまい、それでもまだ太すぎるカリの部分が全部飲み込めない。
男は腰を捩りながら響子のそこを解し、充分に愛液を絞り出してそれをペニスに
まぶしていく。
そうしてようやく亀頭が中に入った。
彼にとっては狭すぎる膣道をこじ開けるようにして拡げつつ、無理をしないでゆっくり
と進めていく。
その締め付けと熱さ、絡みつく襞の心地よさに酔いながら、黒人はなおも奥へと挿入
を続ける。
強靱なペニスは熱くぬめぬめした膣粘膜を押し分けて、やがて亀頭の先がコツンと
響子の最奥に当たった。
子宮口を突かれた感触に、響子はぐぐっと背筋を反らせ、琺瑯製の洗面台をぐっと
掴んだ。

「かはっ……!」

いちばん奥まで犯された人妻は、喉が絞られて掠れたような声を上げた。
掠れてなかったら大声になっていたに違いない。

「ああ……な、中が……中がオチンチンでいっぱい……」

響子の反応が決して拒絶を示すものではないとわかった黒人は、落ち着いて腰を掴み、
ゆっくりと律動を開始した。

「ひっ……ひっ……深いっ……き、きつ……ああっ……」

響子が苦しがっていることはその悲鳴からもわかったが、男はそのまま抜き差しを
続けた。
ずぶっと貫く時は早く、先を子宮口まで届かせると、そこでしばらくじっとする。
響子の媚肉と膣圧を愉しんでいるのだ。
そうしておいて、今度はゆっくりと時間をかけて引き抜いていく。
突き込まれてずるっとめくり込まれた膣襞が、抜かれる時はゆっくりゆっくりと
めくれ上がっている。
黒人は、きつく密着するかのように絡んでくる襞を引き剥がしながら、肉棒を抜き
差しした。
媚肉の中で圧倒的な存在感を発揮する男根にくらくらしながら、響子は喘ぎ混じり
の呻き声を発した。

「あ、あうう、く、苦しい……ああ、太い……太すぎる……さ、裂けそう……あっ
……」

ペニスが最奥まで届き、そこをぐりぐりと抉るように擦ると、子宮口に感じる摩擦
感で大声が出そうになる。

「いあっ……! そ、そこはっ……おっきい……すごくおっきい……す、すごいぃ
……」

膣襞を引きずり出すようにして肉棒を引き抜き、もっとも奥まで捻り込むように深く
深く貫かれる。
黒人はその体力を活かし、ゆっくりだが力強いピストンを繰り返して、響子から喘ぎ
を絞り出した。
徐々に黒人のペニスに慣れてきたのか、あれほどきつかった膣圧がやや落ちてきて
いる。
それを察した男は、響子の細腰を掴む手に力を込め、動きを早めていった。
その威力に響子は目を剥いた。

「ひあっ! あ、強すぎるっ……いうっ……は、激しい……激しすぎるっ……」

さっきまでののんびりとした挿入と打って変わって、叩き込むような激しいストロ
ークになった。
響子の尻と黒人の腰がぶち当たり、パンッ、パンッと肉を叩く音が響く。
それに合わせて響子の頭が鏡に押しつけられている。
それほどの強烈なピストンだった。
それでいて媚肉は男のものにすっかり馴染み、抜き差しされるごとに愛液を噴き出し
泡立った蜜となって垂れていき、響子の太腿を汚した。

「うっはあっ……お、奥まで来てるっ……奥に当たってるっ……くひぃっ……!」

長大な男根に馴染み、緩んでいた膣を締め付けながら響子は喘ぎだした。
声が洩れないか心配なくらいだが、さすがにファーストクラスのトイレで、水洗の音
が聞こえない配慮なのか、防音が利いているらしい。
恐らくドアに耳でもくっつけて聞いていない限り、くぐもったような音しか漏れて
いないのだろう。
媚肉をかき回されるように犯され、響子は屈辱と快感に苛まれ、身悶えている。

男は余裕綽々で、強いピストンだけでなく、変化をつけて響子を責めた。
腰をゆっくりと引いて、蜜まみれになった肉棒を、カリ部分が膣入り口にひっかかる
くらいまで引き抜く。
そして間髪入れずに、ぐいっと力を込めて最奥まで一気に貫いた。
子宮が口から飛び出るほどの衝撃に、響子は背を思い切り反らせて喘いだ。

「うああっ! ……う、うんっ……ふっかい……深すぎる……んんんっ……」

子宮の中まで犯されるのではないかという恐怖で、響子は逃げるようにつんのめる。
美しい人妻を好き放題に犯し、喘がせていることに淫らな悦びを感じている男は、
そんな響子の腰を掴んで逃がさない。
ペニスに絡みつき、締め付けている膣の襞を引きずり出して引き抜き、またぐぐっと
奥まで突き込んで媚肉を抉った。
深く貫いたまま響子の腰を掴んで円運動させたり、大きなストロークで何度も突き
込んでやると、美貌の日本女性は官能の荒波に飲み込まれていく。

「や……はっ……ううんっ……あうっ……ああ怖い、そんな奥まで……ひぃっ……」

ずぶりと限界まで突き込まれると思わず甲高い悲鳴を上げそうになり、必死に唇を
噛む。
引き抜かれると、内臓まで引きずり出されるような気がして、苦しそうに呻いた。
男の肉棒は恐ろしいばかりのたくましさで、響子を性の喜悦へと引きずり込む。
いっぱいまで埋め込まれているというのに、全体の1/3はまだ外に出たままだ。
しかも、まるで焼けた鉄棒をゴムでくるんだような硬さを保ち、響子の柔肉を引き
裂かんばかりに抉っていく。
それほどなのに、響子の媚肉は黒人のペニスに激しく反応し、ひくひくと収縮して
ねっとりと絡みついている。
狭い膣道をスムーズに犯せるように、自ら女蜜を分泌させ、滴らせていた。

「ああ、こんな……こんなことって……あううっ……」

ゆっくり引き抜き素早く打ち込むパターンがいちばん感じるのか、噛みしめる響子
の唇から喘ぎが零れ出た。
目は堅く閉じられ、眉間に一筋皺がよっているほどだ。
なのに、噛んだ唇が時折わずかに開き、熱く甘い吐息が洩れてくる。
それに気づくと、再び唇を噛んで、懸命に愉悦に耐えていた。
何度も強く突き込まれ、編んでまとめた髪が少し解けてきている。
それが、汗の浮いた背や首、顔にもへばりつき、凄絶な色気と美しさを醸し出して
いた。

「んうっ……深いっ……ああ、もっと優しく……奥にっ、当たって……あむっ……!」

日本語の通じないらしい相手に、響子は喘ぎながらも哀願した。
もちろん男にはわからないし、わかってもそんな願いは聞かないだろう。
奥に当たるほどに突き込むと、響子の反応が著しくなることに気づいた黒人は、
余計に奥を責めだした。
体重をかけた重くて深い挿入の連発に、響子は呼吸すらまともに出来なくなる。
突き込まれるごとに、響子の身体が浮かび上がるほどの強い打ち込みだった。

「あ、ああっ……も、やめ……ひあっ……ああっ……」

弱まるどころか、加速し強まっていくピストンに、響子の汗と蜜が飛び散っている。
硬い怒張がゴリゴリと音を立てんばかりに胎内を抉る。
奥から掻き出された愛液は、抜かれるたびに外へと噴きだした。
めくれ上がる程に責められた肉襞は、すっかり充血して熱くなっている。
ゴツゴツと何度も子宮口を殴られるように叩き込まれ、突如、響子にその瞬間が
訪れた。

「ひっ……ひあっ……あ、だめっ……も、ああっ……いっ……い、いく……いくっ
!!」

美貌の人妻は白い喉を反らせ、大きく喘いで全身をぶるるっと痙攣させた。
いってしまったのだ。
荒い息を吐き、ガクリと響子の身体から力が抜ける。
腕を垂らし、上半身は洗面台に突っ伏していた。
汗と愛液にまみれた女体からは、むっとするほどの妖艶な匂いが立ち上っている。
男はいったん動きを止め、小鼻を膨らませてその香りを存分に吸い込むと、再び
動き出した。
終わったはずの行為が再開され、響子は悲鳴を上げた。

「ああっ!? ああ、もういや……もういったのにっ……あ、そんな激しくっ……!」

いかされたばかりの敏感になった膣襞をまたしても抉られ、響子の全身に痺れる
ような快感が甦ってくる。
響子の絶品の締め付けをものともしなかった黒人のペニスが、ゴリゴリと子宮口を
擦り上げた。
絶頂の余韻に浸ることも許されず、絶え間なく送り込まれる快感に、響子は喘ぎ
よがるしかなかった。

「やっ、ああっ……いっ……いいっ……あ、またいきそうっ……あああっ……」

男は深く長いストロークから一転し、浅いが素早い突き込みで責め上げた。
ひくついている膣の内壁を、硬い肉棒のカリで削るように腰を使った。響子は泣き
ながら喘いだ。
和姦に等しいものの、見知らぬ黒人に凌辱されて反応している我が身がおぞまし
かった。
黒人の太いもので犯されて性の愉悦に狂い、浅ましくも絶頂してしまったという
事実が響子の心を白く灼いた。
屈辱もあったが、また一歩、彼女の被虐感が進んだ。

「こっ、われるっ……壊れちゃうっ……激しすぎるぅっ……ああっ……」

勢いを増す一方の突き込みに、響子は汗と涙を流しながら喘ぎ、悲鳴を上げた。
剥き出しになった臀部や腿などは汗が滴っている。
もう身体に思うように力が入らないのか、上半身は洗面台に預けきっていた。

「深いっ……ふ、深すぎるっ……お、奥が……苦しいっ……」

苦悶する響子の美貌に昂奮するのか、犯す黒人はなおもぐいぐいと深く響子を責め
たてた。
重くて激しい律動を繰り返し、男の腰に叩かれる臀部はパンパンと肉を打つ音を
響かせる。
響子の悲鳴混じりの喘ぎ声も、熱く甘くなっていく。

「あおおっ……も、だめっ……い、いく……いくうっ!」

いった瞬間、響子の膣が強く締まった。その締め付けに耐えるためなのか、黒人の
動きが止まった。
だが、まだ射精はしていない。
それでも響子には充分な快楽だったのか、がっくりと力が抜け、荒い息を吐いて
いる。
もちろん男は許さなかった。

「ひっ……ひぃっ……!」

黒人は笑いながら、硬直した怒張で響子のとろけた媚肉を突き上げていく。

「やはあっ……もうっ……もうやめてぇっ……ああっ……んああうううっ……」

体力を活かした大きなグラインドをしてやると、激しく深い突き込みが響子の膣内
を抉っていく。
絶え間なく快感の律動を送り込まれ、美しい日本女性は喘ぎ、身悶えた。
かと思うと、突然我に返って歯を食いしばる。
顔を振りたくって苦鳴を漏らす。
あまり大声でよがっては、さすがに異変に気づかれるかも知れないという恐怖が
あった。
襲い来る快感を何とか振り払おうとしているのだが、とろけきった肉体と靄がかか
った理性が抵抗しきれない。
精を搾り取ろうと収縮する膣襞の攻撃に耐え、たくましい黒人はなおも自慢のペニス
で奥を抉った。
長すぎる肉棒は、楽々と響子の子宮口を捉え、グリグリと擦り上げてくる。
抑えきれない快感に、響子はわななきながらよがっていた。

「うああっ……お、奥っ……だ、だめ、奥、しないでぇっ……あうっ、いっ、いいっ
……」

響子の半裸の身体は、男の繰り出すピストンの前にぐらぐらと大きく揺さぶられて
いる。
快楽と愛液でとろけきったような膣は大きく開かれ、奥まで貫かれていた。
未経験の子宮責めに、響子は愉悦に浸りきっている。
響子は、膣に突然、内圧を感じた。

「な、中で……大きくなってる……あっ……」

男の肉棒がぐぐっと膣内で膨らんだ気がする。
特に亀頭部が一回り大きくなった感じだ。
思わず響子は後ろを振り向いた。
黒人は、歯を噛みしめて響子の腰を掴み、最後の突き込みをしている。

(ああ……こ、この人も……)

中に出す気なのだ。
黒人の精を胎内に受ける。
最悪の場合、黒人の子を孕むことにもなりかねない。
言いようのない恐怖とともに、ぞくぞくするような被虐感が込み上げてきた。
穢されてしまうという実感が、美しい人妻に背徳の悦楽と官能をもたらした。

いよいよなのか、男は出来るだけ深くまでペニスを埋め込み、響子の子宮を上へ
と押し上げた。
その力強い突き上げに、響子はまたいかされた。

「うっ、ううんっっ!!」

ぶるぶるっと大きく震え、尻えくぼが出来るほどに腰に力が入った。
膣も思い切り締め上げている。
さすがに男も耐えきれなかった。
ただでさえ小柄な日本女性を大柄な黒人が犯しているのだ。
加えて響子のそこは狭く、かつ締め付けが抜群である。
よほどの遅漏でもない限り、我慢のしようがない。
最大の収縮が襲ってくると、男は呻いて射精した。

「おうっ……おうっっ!」

どびゅるるっ。
どぶっ。
どぷどぷどぷっ。
びゅるるうっ。
びゅるんっ。
びゅくっ。

熱いマグマのような奔流が、塊のようになって胎内に放たれると、響子は背を思い
切り反り返らせて大きく喘いだ。

「ひぃあああっ……いっ、いくっ……いっちゃううっっ……!」

膣内に何度もひっかけられ、子宮口まで精液で汚された響子は、その熱くて濃い感触
に打ち震えていた。

「いくっ……ああ、な、中で出された……あ、まだ出てる……すごい……うむっ……」

断続的に噴き上げてくる精液を、すべて膣内で受け止めた響子は、あまりの愉悦と
快楽に意識を失ってしまった。
男は、名残惜しむかのように、いつまでも響子の尻に腰を押しつけている。
そうやって最後の一滴まで注ぎ込むと、ようやく息を付いて満足げに肉棒を響子から
抜いた。
湯気が立ちそうなそのペニスは、自分の精液と響子の蜜にまみれ、ぬらぬらと光り
輝いている。
男はトイレットペーパーでそれを拭い取ると、身支度を整えた。
そして響子の股間も、丁寧にペーパーで拭ってやる。
その間も響子は失神したままだ。
そして下着を上げ、チャイナドレスのボタンを嵌めて着衣の乱れを直すと、再び響子
を抱きかかえた。
そのまま響子の席まで運び、何事もなかったかのように自席へと戻っていった。


───────────────

そのまま響子は、スチュワーデスに着陸を知らされ、シートベルトを締めるよう
注意されるまで眠っていた。
タイ人の客室乗務員が申し訳なさそうに揺り起こす様子を見て、初めてあのまま
眠ってしまったのだと気づいた。
どうやってトイレからコンパートメントに戻ったのか不明だが、スチュワーデスや
他の乗客の様子を見ていると、あのことを知っている素振りはなかった。

ちらりと隣に座っている日本人男性を見た。
最初に響子を犯した男だが、何事もなかったかのように新聞を折り畳み、ベルトを
締めている。
特に響子に思わせぶりの視線を送ってくることもなかった。
少し首を曲げて、トイレで犯した黒人男性の方を見てみたが、こちらもやはり悠然
としている。
ベルトを締め、両手を腹のあたりで組んで目を閉じている。
どちらもパリッとした高そうなスーツに身を固めているから、身分のある人物なの
だろう。
あのことも、ひとときのアバンチュールだと割り切っているに違いない。
後腐れはなさそうである。

響子は少しホッとして、着陸に備えた。
肉体的な満足感とともに、少しばかりの罪悪感と気まずさが心に残った。

───────────────

ファーストクラスの乗客は、搭乗するのも降りるのも最優先である。
手荷物チェックも最低限で、申告しなければフリーパスだ。
入国審査も税関も最優先。
エコノミーから吐き出される大勢の乗客が行列を作っているのを見ると、何だか申し
訳ない気持ちになってくる響子だった。
初めて来た時よりは余裕があるが、それでもまだ不慣れだ。

何だか空港内の雰囲気がおかしかった。ざわついている。
空港職員の周辺や航空会社のカウンターには、いくつもの人だかりがあった。
不安になった異国の人妻は、これも不安げに何事が話している日本の航空会社の
スチュワーデスたちに話し掛けた。
彼女たちもフライトを終えたばかりらしい。

「あの、すみません……」
「はい」

それまで深刻そうな表情で話していた客室乗務員は、素早く営業用の笑顔を作った。

「私、今、到着したばかりでわからないんですが……、何かあったんですか?」

響子がそう問うと、三人のスチュワーデスは困ったように顔を見合わせ、小声で言った。

「私たちも今着いたばかりでよく知らないんですけど……」
「何か、テロか何かあったみたいですよ」
「え?」

小柄な客室乗務員が、響子に顔を寄せるように言った。

「さっき聞いたところだと、なんかバンコクの郊外で爆破テロがあったとか何とか
……」
「まあ……」
「それで、たくさんけが人が出たそうなんです……。亡くなった方もいるとか……」
「そうだったんですか……」

表情を暗くした響子に、やや肉付きのよいスチュワーデスが解説してくれた。

「タイって、あたしたち日本人は観光地しかよく知らないですよね。バンコクとか、
チェンマイやアユタヤとかの遺跡や古都、あとはプーケット。仏教国だし、タイの人
たちはみんな穏やかですし。でも、けっこう政情不安なところがあって、昔から軍隊
のクーデターとか、反政府テロだとかがよくあるんだそうです。あたしも詳しいこと
は知らないんですけど……」

軍による政治介入が頻発しており、現に今の政権も警察と軍が結びついたクーデター
によって成立したものらしい。
この時は無血だったものの、軍事力を背景にした政権奪取には変わりなかった。

「じゃあ今回も、そのクーデター……ですか?」
「いいえ。この騒ぎはテロみたいです。反政府テロなのか、それとも宗教絡みか、
その辺はよくわかりません」

ならば、戒厳令だとか大げさなことにはならないかも知れない。
せいぜい被害地域の閉鎖とか立入禁止くらいだろう。
小柄な童顔のスチュワーデスが言う。

「でもお客様、すぐに空港を出られた方がいいかも知れませんよ」
「なぜですか?」
「ええ。警察か……ヘタすると軍警察が来ちゃいます。テロリストの国外逃亡を防ぐ
って名目で、私たちも拘束されちゃうかも知れません」
「ええ……?」
「もちろん私たちは無罪ですし、テロとも何の関係もないんですから、すぐに自由に
なるとは思いますけど。大使館の人たちも何とかしてくれるでしょうし……。でも
面倒ごとに巻き込まれたくなければ、出た方がいいです」

その通りだろう。
響子は彼女たちに礼を言って、足早に歩み去った。
キャリーバッグのハンドルを引きながらコンコースの出口に向かうと、ひとりの男が
駆け込んできた。
何だろうと思ったら、どうも自分に向かってきているらしい。
よく見ると奥村だった。

「奥村さん?」
「奥さんっ! 三鷹の奥さんっ……!」

響子が驚いていると、奥村は息を切らせながら到着した。
肩で息をする奥村をいたわりながら、響子は首を傾げた。

「あの、今日は夫が迎えに来ると聞いてたんですけど……」
「そ、それなんですが……」

呼吸を整え、奥村が腕で額の汗を拭いた。
よく見れば、首も揉み上げのところも、汗が滴っている。
外が暑いこともあるのだろうが、よほど慌てて来たのだろう。
もしかすると、外のテロ騒ぎがあったので、心配になって来てくれたのかも知れない。
そうなら町中も大混乱しているだろうし、そんな中わざわざ駆け付けてくれて申し訳
ない。
そう思っていると、奥村は沈痛な顔をして響子の顔を見た。

「奥さん、瞬のやつが……」
「夫が? 夫がどうかしたんですか?」

響子の胸に、不安の暗雲が広がっていく。

「奥さん、気をしっかり持ってください。瞬は……瞬は、爆破テロに巻き込まれて
……」
「え……?」
「仕事で郊外に出ていたらしいんですが、そこでテロに遭ったらしくて……。かなり
の重傷で、今、救急車でバンコク病院に運ばれて手術中です」

響子は奥村の言葉を全部聞くことができなかった。
ぐるぐると様々な思いが頭の中を巡っていく。
瞬が大怪我?
重症?
何をすればいいのか。
どうすればいいのか。
混乱してしまって訳が分からない。
ふうっと意識が遠のき、ふらりとよろめいた響子は、危なく奥村に抱きかかえられた。

「奥さん! 奥さん、大丈夫ですか!」


───────────────

全治三ヶ月と診断された瞬だったが、スポーツで鍛えた頑健な身体がものをいったのか
二ヶ月ほどでバンコク病院を退院できた。
完全に傷が癒えるまでゆっくりした方がいいという病院の医師や友人たちの助言も
あったが、瞬は帰国しようとを思っていた。
病院はタイとしては最高級の設備や医師団を誇っていたし、日本語も通じる。
もちろん、それなりの費用はかかるが、保険が下りるから、その点は問題なかった。

ただ、仕事はまだまだ出来そうにない。
そうであればタイにいても仕方がないと思ったのである。
実際、継続入院を勧められたところで、あとは治療というよりもリハビリが主なのだ。
そうなら日本の方が進んでいるだろうという判断だ。
加えて、瞬の実家も帰国を望んでいた。
手術直後から三度ほど見舞いに来たくらいで、ただ見舞いのためだけにわざわざ外国
旅行させるのも気が引けたのだ。
来なくていいと言っても、父親も母親も来てしまう。
子を思う親の気持ちとしては当然だろう。
それなら、いつでも見舞いに来られる日本国内の方がいいと思ったのである。

もちろん響子の両親もそれを望んでいた。
夫の大怪我に加え、タイへの国情不安も募り、もしかしたら響子も何か被害を受ける
のでは、という心配もあった。
響子からすれば、取り越し苦労だろうとは思うのだが、実際に瞬がこうなってしまう
と何も言えない。
それに、夫が入院しているせいか、心寂しく思っていたことも事実なのだ。
瞬が日本帰国を口にすると、一も二もなく賛成した。

響子は、医師から瞬の症状を聞いていた。
脊髄にかなりダメージを受けており、そのせいで下半身不随になっていたのである。
ショックが大きいだろうから、瞬には、背中に衝撃を受けたことによる一時的な運動
麻痺とだけ伝えられていた。
医師から「下半身は恐らく生涯動かないだろう」と告げられた時は、響子もショック
で涙が止まらなかったほどだ。
咽び泣く響子を気の毒そうに見ながら、医師は「気長にリハビリをすることによって
症状が改善することもある」と言って慰めた。
かなり長くかかるだろうから、このままタイに永住するのでなければ、日本でやった
方がいい。
医師もそう奨め、響子もそれに従ったのである。

しばらくは三鷹家、つまり夫の実家に住んだ。
瞬が住んでいたマンションは、タイ移住の際に売り払っていた。
新築するのか、適当な中古住宅を買うのか、決めかねていたが、いずれにせよ、すぐ
に住めるわけではない。
そこで取り敢えず実家に帰ったのである。
広い邸宅だったし、瞬たち夫婦が住むスペースも部屋も充分以上あった。

しかし夫の瞬が、この歳になって親元で暮らすことに難色を示した。
親は何くれとなく世話を焼き、気を使ってはくれるものの、それがかえって鬱陶し
かった。
そう思うことは申し訳ないし、失礼ではあったのだが、響子と水入らずの生活が
まだ短い瞬としては、何だか邪魔されたような気になってくる。
それに妻の響子とて、夫の親元で暮らすというのは、何かと気疲れしてしまうだろう。
瞬の父はフランクな性格でさほど問題はないだろうし、母も意地悪姑というイメージ
からは程遠い。
とは言うものの、それまで家事をひとりでこなしていた響子のプライドというものも
あるだろうし、彼女自身、どこまで家のことをやっていいのかわからないだろう。
嫁姑ともに気遣い合うのは悪いことではないものの、それが過ぎれば息が詰まるし、
疎ましくもなってくる。
今のところ、響子と義父、義母の関係は良好なのだから、夫の瞬としてもそれを維持
したかった。

瞬が両親に別居を申し出ると、母親は特に失望したらしい。
いずれそうなるとは思っていたようだが、いざなってみると寂しいようだ。
何歳になっても息子は息子、母は母なのだ。
と言っても、すぐに住める物件を探すのも大変だろうと思っていると、瞬は別荘を
使わせて欲しいと言ってきた。
瞬の父が、たまたま那須に別荘を持っていたのである。

瞬が子供の頃は、毎夏そこで過ごしたものだが、成長した後はほとんど使っていない。
瞬がたまに友人たちを連れて過ごすことがあったくらいで、今では未使用である。
別荘地で、そこには管理人がいるから定期的に見回ってもらっているだけだ。それを
使わない手はない。
仕事は、取り敢えずネットと電話でこなしていくことにした。
通院してのリハビリだけは仕方がないが、それ以外は家で過ごせる。

両親は、下半身不随の瞬と、それを支える響子だけでは大変ではないかと言って、
家政婦を雇うことを奨めたのだが、これは妻が断った。
響子は家事が苦にならぬ性質だったし、夫の世話をするのは妻の義務だと信じていた
からだ。
加えて、いくら瞬が高給取りで実家も金持ちだとはいえ、安くはない治療費を考えれば
節約した方がいいに決まっているのだ。
夫も奨めたのだが、響子は頑として受け付けなかった。

───────────────

響子は書斎に呼び出され、そこで夫から衝撃的なことを告げられた。
一瞬、何を言われたのかわからなかったほどだ。
思わず聞き返した響子に瞬は言った。

「……子供を作って欲しい」

そうは言っても、どう頑張ったところで響子ひとりでは子供など出来ようはずもない。
当惑する響子に、夫は冷静さを装いながら続けた。

「三鷹の家の跡継ぎを作らなければならない」
「……」
「君も知っての通り、三鷹家の子は僕だけだ。だけど、僕はご覧の有り様だ」
「そんな、諦めないでください。ちゃんとリハビリすれば……」
「気休めはいい!」

瞬は怒気を表して叫んだ。
そして、すぐにバツが悪くなったのか、顔を逸らせて謝った。

「……すまない。怒鳴るつもりはなかった」
「いえ……」

瞬は車椅子を動かして、響子に背を向けて大きなフランス窓から外を眺めた。

「聞いているんだ、医師から。僕はもう、子供を作れない身体だ、と」
「……」

それは響子も聞いていた。
夫も知っているとは思わなかっただけだ。
瞬は、爆破テロの際、建物の破片らしいコンクリート片で背中を強打し、脊髄を損傷
してしまっていた。
そのせいで下半身不随になっているのだが、他にも破片が身体に食い込んでいたらしい。
鉄製のビスが彼の身体を貫き、腹部にめり込んでいたのだ。
それは、瞬の精巣を破壊してしまい、精子を作ることが不可能になってしまった。
下半身不随で男性器もまったく機能しなくなってしまっていたが、僅かでも微かでも
精子が出来るのであれば、それを採取して人工授精できないこともない。
しかし検査の結果は非情だった。
完全に精巣が死んでしまっており、回復は見込めないと宣言されてしまったのである。
そこで瞬が提案した方策に、響子は唖然とした。

「……恋人を作りたまえ」
「は……?」
「下世話に言えば、男を作れ、ということだ」

夫は、やや投げやりな口調で言った。
二の句が継げない妻に、畳みかけるように加える。

「それで子供を作ってくれ」
「そんな……、ちょっと待ってください!」

たまらず妻は抗議した。

「そんなこと……、そんなことしなくたっていいじゃないですか。どうしても跡継ぎ
が必要なら、養子を貰ったっていいんですから」
「それじゃだめだ」
「……」
「僕の遺伝子を持った子を作ることはもはや不可能だ。だがね、妻である君はまだ
健康体なんだ」
「……」
「だから、僕の子ではないかも知れないが、君の子は出来るわけだ」
「いやですっ……!」

響子は目の端に涙を溜めながら言った。

「わ、私はあなたの妻です! あなた以外の子を身籠もるつもりなんか……」
「わかっている」
「わかってません! わかっていたら……」
「だから、わかっているといると言ってるだろう!」
「……」

沈黙した妻の方に向きを変え、夫は言った。

「君の気持ちはわかっている。だから君もわかってくれ」
「……あなた以外の子を持つことをわかれというのですか……」
「……そうだ」

響子は力が抜け、へなへなと絨毯の上へへたり込んでしまった。
その様子を見ながら、車椅子の夫は言った。

「君はタイで、僕の望むような女に……妻に成長してくれた」
「……」

つまり、グループセックスの悦びを知り、性の深淵に触れたということだろう。
しかし、だからと言って、誰にでも抱かれるほどに響子は恥知らずではない。
確かに、夫に会えなかった三ヶ月間はつらかった。
以前の響子であればともかく、瞬たちによって開発された肉体は、男なしでは耐え
難くなっていた。
だからこそ、タイへ飛ぶ時に、飛行機の中での行きずりのセックスという変態的な
行動にも出てしまった。
火照る肉欲が抑えがたかったことに加え、こんな身体にしたのは夫たちである、と
いう反発もあったかも知れない。
これが夫に知れても、少なくとも夫には文句を言う権利はないのだ。
抱かれた響子は、肉体的な満足感と幾ばくかの後悔を感じていた。
痴女になってしまったわけではなかったのだ。
それこそが瞬の望む女であったわけだが。

タイでの体験は、どれも鮮烈で衝撃的なものばかりだったが、現地人に集団レイプ
されたことだけは悪印象になっていた。
もちろん、それで感じてしまい、何度もいかされたのは事実である。
しかし、見も知らぬ男たちに輪姦されるという恐怖と屈辱だけは馴染めなかった。
日本で浮気のひとつもしなかったのも、それが主な理由である。

「でも……、でも私、誰にでも抱かれるような……」
「わかってるよ」

瞬の表情がやや緩んだ。

「それは考えている。僕だって、正直言って、どこの誰とも知れないそこらの馬の骨
の種で孕んだような子供ではいやだからね」
「それじゃあ……」
「……奥村ならどうだ?」
「奥村さん……、ですか?」

タイ在住時には、響子もいろいろ世話になった瞬の親友である。
奥村の妻の静香には、レズを仕込まれている。
もちろん奥村自身にも肌を許した。
それを瞬が望んだからである。

響子と関係した男たちは、その後も執拗に交際を求めてきた。
もちろん身体目当てであろう。
響子はそれがいやだった。
身体中心にしか女性を見られないような男は嫌いだ。
ベッド以外でも、響子の身体を舐めるような目で見てくるのがたまらなかった。

その点、奥村は違っていた。
一緒にテニスもしたし、食事や酒も共にした。
それでも必要以上に迫ってくることはなかったから、響子も安心してつき合えた関係
なのだ。
もちろん奥村と寝たこともある。
瞬たちと一緒にパーティに出て抱かれたこともあるし、静香を交えての4Pに発展
したこともあった。
まったく予想外に、突発的に関係したこともある。
いずれも悪印象はなかった相手だったのは確かだ。

「ああ。奥村だったら僕も安心だ。血筋もいい。遺伝子的にも問題ないだろう」

響子はよく知らなかったが、家柄もいいらしい、若くして商社のタイ支社長を務めて
いるくらいだから、やり手ではあるのだろう。
人間的にも夫に似ていて、親しみやすかった。

「奥村さん……」
「そうだ。僕としては、奥村を恋人にして欲しい」
「でも、静香さんが……」
「公認だよ。もちろん君と奥村が結婚する、なんてことになれば静香さんだって黙っ
ちゃいないだろう。僕だってそうさ」

そう言って瞬は微笑んだ。

「だから、互いに割り切った関係だということだ。双方のパートナー公認の関係だ。
君や奥村のやつが、ともに離婚して結婚するということでもない限りね」
「……」
「なに、それも君が妊娠したとわかるまでの間だよ」
「でも……」

俯いた響子の瞳から、つうっと涙が一筋流れた。

「奥村さんの子を……私が……」

信じられない展開だった。
夫が妻に浮気を勧め、しかも子供を作れというのである。
瞬の趣味は知っている。
こういうことにはこだわらない男なのだろう。
しかし、それにしたって、自分の妻が他の男に孕まされる、もっと下世話に言えば
「寝取られる」ことについて何も思わないのだろうか。
彼に嫉妬はないのだろうか。
あることはあるらしい。
奥村が言っていたが、そういった妬心をも互いの刺激にすることで、さらなる快楽
に昇華させるのだそうだ。

だが、今回はただ他の男に抱かれる、犯されるだけではないのだ。
不貞の証である胎児を作られるのである。
もし響子であれば、夫が他の女を妊娠させたと知れば、激怒し、嘆き悲しむだろう。
それは夫だって同じではないのか。

響子はそう信じていたが、それを壊したのが下半身不随による性的不能なのであろう。
瞬だってつらいのだ。
少なくとも響子はそう思い、それを拠り所にしたいと思った。
三鷹の両親も、養子であれ何であれ、孫──跡継ぎを欲しがっていることは事実で
ある。
響子の両親だって孫の顔を見たがっている。
それでいて、瞬にはもうその能力がないことも知っている。

でも、どちらの親も、瞬の精でない、他の男の子種を妻の響子が孕んだとなれば、
心穏やかではないはずだ。
三鷹家は何となく察するだろうが、しっかりした身元の男であれば、跡継ぎを望む
気持ちの方が強いだろう。
しかし千草家は別だ。
夫以外の種を孕んだとなれば、特に父親がどんな反応を示すか解ったものではない。
まして、それを夫が勧めたとあっては、離婚騒動に発展するだろう。
極秘裏に行うしかなかった。
それには響子が納得ずくでする、ということしかない。

「それとも……」

夫は言いにくそうに聞いた。

「それとも、もしかして君は他に誰か……」
「いません!」
「そうか……。だが、もしいるなら正直に言って欲しい。その男でも構わないんだよ。
僕は君の目を信じている。君なら、おかしな男に引っかかるようなことはないだろうし」
「ですから、そんな人いません」

瞬は、絨毯に座り込んでいる妻に、車椅子に座ったまま頭を下げた。

「……そうか。疑ってすまなかった」
「……」
「頼む、響子。この通りだ」
「あなた……」

響子はふらふらと立ち上がり、瞬のもとへ来ると、そこで夫の胸に崩折れた。



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