勝敗が決すると、響子はつい尻餅をついてしまった。
ひさしぶりの本格的な運動だったし、スカッシュ自体が見た目より遥かにハードな
スポーツだったせいもある。
この球技は、一時間ほどのプレイで1000キロカロリーほども消化すると言われ
る激しい有酸素運動だ。
似たようなスポーツであるテニスの倍の消費カロリーである。
休憩を挟んだとはいえ、それを一時間半も続けたのだから響子の疲労も当然だった。
額に巻いていたバンダナは、もう汗でぐっしょりで、その役割を果たしていない。
座り込んだままふと見ると、奥村静香も同じようにぺたんと座っていた。
顔を見合わせて、思わず苦笑する美女ふたりだった。

「……しょっと」

静香が少し大儀そうに立ち上がると、響子に手を差し出した。

「あ、すみません」

響子は静香の手を借りて、慌てて立った。
若い自分の方がいつまでもバテているようでは情けない。
静香は響子に寄り添い、その腰を抱くようにしてベンチへと歩いていく。

「疲れたでしょう、響子さん」
「はい、少し。でもさすがですね、奥村さん。すっと立ち上がれるんですもの」
「あら、そんなことないわ。けっこう無理してるのよ、もうボロボロ」

そう言うと、年上の先輩夫人は艶然と微笑んだ。

「それより、さすがというならあなたの方よ、響子さん。とても初めてのプレイ
だったとは思えないわ」

初めてスカッシュの手ほどきを受けた響子は、教える静香の方が驚くほどの上達
ぶりだったのである。
最初に簡単にスカッシュのルールやコツについてレクチャーした後は、「実践が
いちばん」とばかりに、壁打ちから入り、すぐに打ち合いをやったのだ。
もともとテニスをやっていただけあってカンは良いし、何しろ反射神経も優れていた。
30分ほどラリーを交わしながら、すぐにコツを飲み込んだ。
そして「まだ無理です」と後込みしたものの、半ば強引に試合をやらされたのである。

5ゲームマッチを2セット行なって、当然のように2セットとも静香が勝った。
しかし、最初のセットこそ0−3のストレートで敗れたものの、2セット目は2−3
と接戦になった。
しかも、序盤から響子が押しまくり、静香が何とかかわしていくという展開だったのだ。
2−2のファイナルで迎えた最終ゲームは8オールのデュースとなり、最後には静香の
経験と負けん気がものをいって、辛うじて10−8で響子を下したのであった。
この分では、三ヶ月もしないうちに抜かれてしまうと静香は思ったくらいだ。

静香がベンチに置いたバッグからタオルを出したり、アイスボックスの中身を覗いたり
していたので、響子はベンチには座らず、壁にお尻を軽く当てて寄りかかっていた。
アイ・ゴーグルを外し、サンバイザーを取ると、また頭や顔に汗が滲んでくる。
熱射の屋外に比べ、室内コートにはいくらか冷房が入っているはずだが、これだけ身体
を使ったのだから、効果はほとんどない。
冷房を利かせようと思えば利かせられるのだが、あまり冷やすと発汗作用がなくなるし、
筋肉も冷えてしまう。
そのせいで、室内温度は28度くらいになっているようだ。
響子は手を伸ばし、頭の上あたりにある取付型のハンガーに掛けておいたスポーツ
タオルを取って顔の汗を拭いた。

「はい」
「あ、ありがとうございます」

奥村夫人が、クーラーボックスから取り出したらしい清涼飲料水を響子に手渡した。
見る見るうちにガラスのミニボトルに露が噴き出してくる。
キャップを回し、そのよく冷えた液体をぐっと一口飲み込んだ。
冷たい炭酸飲料の刺激が咥内と喉を刺激する。
身体の中に一陣の涼風が吹き抜けるような爽快感が心地よい。
すっと汗が引いていくような気がする。
続けて2口ほど飲むと、響子はやや首を傾げてボトルを見直した。

「これ……」
「シードルよ」
「シードル?」
「そう。サイダーとも言うわね。簡単に言うと、リンゴを発酵させたアルコール飲料」

あっさりとそう言ってのけた静香に、響子はぎょっとして聞いた。

「アルコールなんですか!? だって、今、サイダーって……」
「そうよ。もともとサイダーってそういうものだもの。日本で普通にあるサイダー
とは少し違うのね。あれはノン・アルコールサイダーって言った方がいいわね」
「で、でも、お酒は……」
「あら大丈夫よ、そんなに濃くないから。それにあなただってお酒が飲めないわけ
ではないのでしょう?」

もちろん響子は下戸ではない。
飲めることは飲めるが、飲酒するのは夜以降で昼間飲むことはなかったし、こうし
てアフター・スポーツで飲むことなどはなかった。
静香は何でもないように続けた。

「こういう時は冷たいものを飲みたいけど、それだと身体を冷やしちゃうでしょう?
少しくらいアルコールがあった方がいいのよ」
「はあ……」

そんなわけはないのだが、静香はウィンクして悪戯っぽい笑顔でそう言った。
それでも、こんな時に飲んだら酔いが回ってしまいそうな気がして、響子は早々に
ボトルをベンチに置いた。
それを見ながら静香が立ち上がり、響子の目の前に立つ。
やや肉がついたものの、まだスラリとした肢体を持つ響子に比べると、肉感的な身体
つきである。
とはいえ、決して太っているわけではない。
せいぜい肉付きが良いという程度だ。
ガリガリに痩せているよりも、こういう方がよほど健康的である。
胸も腰も張っていて、いわゆる「男好き」のする身体だということだろう。
そんな肉体に釣り合わず、顔は瓜実型で、公家顔である。
いかにも育ちの良さそうな気品あふれる美貌で、同性の響子ですら、じっと見ていたら
ぼうっとしてしまいそうな美しさだ。
モデルような端正な顔立ちではないが、少々エキゾチックな感じがする。
「綺麗」というより「美しい」だし、「清純」ではなく「妖艶」だ。

「響子さん、もう飲まないの?」
「え、あ、はい……」

ぽうっと静香に見とれていた響子は、そう声を掛けられて慌てて目を逸らせた。
彼女はレズっ気は全然ないが、静香のような美貌を間近でいつまでも見ていたら、
おかしな気持ちになりそうだ。

高校時代、先輩の女子高生を慕って追いかけ回していた友人のことを思い出した。
ベルばらブームで宝塚歌劇が一躍注目を浴び、若い女性たちが同性のスターを男の子
のアイドルのように追いかけ回したことがある。
それは単に憧れであり、いきなり性的なものとは結びつかないだろうが、もやもや
したおかしな気分になってしまうことはある。

学生時代というより、今の今まで響子はそうした世界にまるで関心がなかったが、
こうして静香のような女性を目の前にすると、追っかけの彼女たちの気持ちが少し
わかるような気すらしてきた。
奥村夫人が妖しげな瞳で響子を見つめ、その耳元に口を寄せてささやく。

「まだ残ってるわ。お飲みなさい」
「私、お酒はもう……。スポーツ飲料か何か、んむっ!?」

何が何だかわからなかった。
突然、静香の顔が響子の顔に被さった。
キスされたのだ。
響子は目を白黒させて、トンと軽く静香を突き飛ばす。

「な、何をするんですか!」

静香は少しも動じず、落ち着いて響子の飲んでいたシードルを一口含んだ。
そして、有無を言わさず、またしても響子の唇を奪ったのである。

「むむ……、んんんっっ!」

静香は響子に唇を重ねると、口中のシードルを相手の咥内に流し込んだ。
同性に唇を奪われたことにも動転したが、そこに飲み物を注ぎ込まれたことには仰天
した。
静香は口の中の酒をすべて響子の口に流し入れても、その唇を離さなかった。
響子は必死になって静香の肩や腕を掴んで引き離そうとするのだが、しっかりと抱き
しめられていてビクとも動かない。
せめて飲まないようにしようと我慢するのだが、いつまで経っても口を離してくれない。
息が続かず、とうとう飲み下してしまった。

響子の白い喉がごくり、ごくりと動くのを確認して、静香はようやく唇を離した。
すっかり動転した響子は涙ながらに抗議する。

「何てことするんですか、奥村さん! 私だって怒りますよ!」
「うふふ、その怒った顔も可愛らしいわ」
「どうしてこんな、あうむっ!?」

年下の若妻の泣き声を無視して、先輩主婦は再度シードルを口に含むと、またキスを
してきた。
響子は、他人の口の中にあった液体を流し込まれる不快さに、眉間を寄せて顔を振り
たくろうとする。
が、静香もそれは先刻ご承知で、しっかりと響子の顔を両側から押さえ込んでいた。
そして口いっぱいに溜めたシードルを次々に響子の口へ注いでいく。
静香の口中ですっかり生暖かくなったシードルが気色悪い。
それでも響子は、拒みつつもごくり、ごくりと喉を動かして、静香が流し込んでくる
アルコールを飲み干した。

「あ……お、奥さん、もうこれ以上は……むむっ……」

次のシードルを口に含むために唇が離れた時、響子はそう懇願するのだが、静香は
二本目のボトルを開けて、なおも響子に飲ませていく。
こうして、あっというまに250ml入りのボトル二本分を口移しで飲まされた響子
は、見る見るうちに酔いが回ってきた。
スポーツ直後で、身体中の血液が盛んに循環している時に飲まされたものだから、
アルコールがその血液に乗って身体中に回っている感じがする。
少し空腹になっていたことも追い打ちを掛けていたのだろう。

響子の目がとろんとしてきたのを見て、静香は妖しく笑いながら、またベンチの
バッグを漁りだした。
それでも響子の方はそのままだ。
疲れと酔いで、立っているのも難しいらしく、時々膝が笑って崩れ落ちそうになる。
ガクッと膝が砕けると、何とか腰を踏ん張って座り込まないように堪えている。
そこに静香が戻ってきて、響子の右手を取り上げた。

「奥村さんの奥さん……何を……あっ」

右手首に冷たい感触が走る。カチャリと金属音がして、ぐいと持ち上げられた。
「あっ」と見てみると、メタリックに輝く手錠である。
左手でそれを外そうとすると、その左手首にも嵌められてしまった。

「何をするんですか……」

響子の抗議も力がない。
目元や目尻には赤みが差し、首筋もほんのりピンク色に染まっている。
それほど酒に弱いわけではないが、空きっ腹と疲労した身体には、低濃度のアルコ
ール飲料もよく効いた。
奥村夫人は、手錠の鎖をハンガーを引っ掛ける金具に通してしまう。
逃れようと響子が両手を振ってみるが、ガチャガチャと金属音がするだけで外れる
はずもない。
結局、肘を「く」の字に曲がった状態で、両手をひとまとめにされてしまった。

「奥村さん、こんな悪戯はやめてください」
「うふふ、悪戯か。そうかも知れないわね」
「……」

静香はにっこりと笑みを浮かべながら、いきなり響子のポロシャツをめくりあげた。

「あっ……!」
「汗を拭いてあげるわ」
「い、いいです、そんな……。自分でやりますから……」
「遠慮しないで」
「え、遠慮なんか……あっ……」

静香は厚手のスポーツタオルで、丁寧にゆっくりと響子の肌を拭っていった。
ポンポンと軽く叩くようにしたり、くすぐるように擦っていく。
ワンピースのテニスウェアだったなら、こうは出来なかったろう。
だが響子が着てきたのは、ポロシャツとスコートのツーピースである。

「ああ、いやです……やめてください……」

小声でつぶやくように言う響子だったが、静香はやめる様子もない。
引き締まり、肋骨の形がわかるように窪んだなめらかな腹部。
肋骨がうっすらと浮いた脇腹。
そして綺麗にむだ毛処理された腋。
敏感な箇所ばかりを狙って、静香夫人のタオルが優しく、そして焦らすかのように
響子の柔肌をさすっていった。

「ああ……」

響子は、柔らかいタオルで汗を優しく拭われる心地よさ以上に、何とも言えない
官能的な感覚も得ていた。
こんな場所で自由を奪われて身体に悪戯されているという恥辱とともに、憧れて
しまいそうな年上の美しい女性に嬲られているという倒錯感。
このままでも危ないのに、夫人の行為が愛撫にまで発展してしまったら、耐えきれ
ずに恥ずかしい反応を示してしまうかも知れない。
そんな響子の葛藤がわかるのか、静香はタオルだけでなく、時折、指も交えてきた。
細く白い指がタオルから外れ、直接、響子の肌を滑っていく。

「ほうら、こんなに汗をかいてるわよ。ちゃんと拭かないと風邪ひいちゃう」
「ですから、自分でします……」
「いいのよ、全部私に任せて。ほら、さっき拭ったところから、また新しい汗が
滲んでくてる」
「あう……」

響子の恐れた通り、静香の指の動きは、明らかに愛撫となっていた。
もうタオルは床に落としている。
静香の十本の指が、若妻の初々しい肢体の上をピアニストのように滑らせていた。
柔らかい指の腹を使ったり、硬い爪の先で軽く引っ掻いたりする。
胸に浮いた肋骨を軽くぐりぐりとされたり、脇腹を撫でられたり、腋の下をくすぐ
られると、響子は敏感な反応を見せた。
特に腋が弱いようだと見抜くと、静香はそこばかり責めてくる。

「あっ……やめて、そこは……くっ……くすぐったい……」
「そう。ここがそんなに感じるのね」
「ち、違いま、ああっ……」

口では否定しても、腋を指の腹でさすられたり、爪を立ててカリカリを引っ掻かれ
ると、ついつい甘い声で呻いてしまう。
汗でぬるぬるしたそこを指でするっと擦ると、響子は両手を握りしめてその快感に
耐えていた。
どんどんと深みに嵌っていく響子を嬉しそうに見つめながら、耳元で静香がささやく。

「だんだん気持ちよくなってきたでしょう、響子さん」
「そんな……そんなこと、ありま、せん……あ……」
「あら我慢してるのね、可愛いわ。じゃあ、こっちもマッサージしてあげる」
「きゃあ!」

静香は、捲り上げられたポロシャツの下で、響子の肌を最後まで守っていたブラジ
ャーを外してしまった。
さすがに乱暴な男のように破り取るなどということはしたくなかったので、その
まま上へとずり上げたのだ。
ぷるんと健康的かつ官能的な乳房が顔を出した。
静香はうっとりしたような美貌で言った。

「まあ、素敵なおっぱいね。こんなに大きいのにちっとも垂れてないし。若いのね」
「は、恥ずかしい……見ないでください……」
「あらあら、こんなことくらいで恥ずかしがってちゃ身が保たないわよ」

よく動く指が、響子の乳房を捉えていた。
張り詰めたというよりも、ふっくらと盛り上がった柔らかそうな胸肉の丸みに合わ
せて指を這わせていく。
乳房の形を確かめるように、そっとなぞりあげると、うぶな若妻は懸命に声を殺し
て呻いている。
指を立てるようにして強く掴んで揉み込むと、たちまち乳首がぷくんと立ち上がる。
勃起した乳首はグミのような感触で、それを指の腹でハサミ、ころころと転がすよう
に擦っていくと、たまらず響子は喘ぎ出す。

「あうっ……」

じぃんとした甘い痺れが、乳首から胎内にまで届いていく。
乳輪の裾野から円を描くように麓まで指でさすられ、頂点の乳首を上から押し潰さ
れると、思わず甲高い声が出た。

「むううっ! あ、いや……だめっ……あっ……」

響子の声色が、呻き声から堪え忍ぶ喘ぎ声に変化してくると、静香はすっとその身体
から手を離した。
淫らな指が遠ざかると、響子はホッとしたように「ああ……」と呻き、ガクガクと
膝を震わせている。
もちろん、静香夫人はこれで終わらせるつもりはなかった。
むしろ、これからが本番である。

「……あっ!」

安心した響子が目を閉じて力を抜いていると、今度は夫人の手が下半身に伸びてきた。
短いスコートからにょっきりと伸びている美脚に指が触れると、電気が流れたみたい
にビクッと反応する。
暴れ出す響子の右足を、自分の両脚の膝で挟み込んで抵抗を奪った。
なおも左足をバタバタさせるが、単に夫人の右足に当たるだけで、大した抵抗になっ
ていない。

奥村夫人は、挟んだ右脚の腿を愛撫していく。
触れるか触れないかくらいの微妙なタッチを、太腿の外や内腿に加えていった。
汗のせいか、指に吸い付くような肌触りが、静香には心地よい。
この三鷹響子という女は、一度追い込んでやると、どこを触れても感じるほどの、
鋭敏な性感を持っているらしい。
夫人にとっては絶好の生贄だった。
腿を摘むように愛撫するだけで、鳥肌が立ち、細かく痙攣するほどに感じている。
特に内腿を優しくなぞってやると、唇を噛みしめて呻くのがたまらなかった。

「ホントに可愛いわ、響子さん……。もっともっと可愛がってあげたくなっちゃう」
「い、いやです……ああ……。し、静香さん……こ、こんなこと……女同士でこん
なこと……」
「あら、じゃあ男になら喜んでさせるのかしら?」
「そ、そうじゃありません……で、でも……ああ!」

静香の指が、アンダースコートの上から股間の中心部に触れると、響子はギクンと
身体を震わせ、驚いたように呻いた。
すでにしっとりと布地は濡れており、そのことは響子にもわかっていた。
汗だと思いたかったが、汗を吸収する素材なのにここまで濡れているのは、自分の
体液も混じっていることは否定できそうもなかった。
思わず響子が腰を引いて逃げると、静香はそれ以上追わなかった。
だが、その指はウェストに軽く食い込んでいたアンダースコートのゴムにかかって
いる。
響子が「あっ」と思うまもなく、一気にずり下ろされていた。

「いやあ!」

急に下半身……というより股間が涼しくなる。
奥村夫人は、アンダースコートだけでなく、その下に履いていたパンティもまとめて
下ろしてしまったのだ。
響子は、スパッツタイプのアンダーを履いてくればよかったと後悔した。
スパッツなら、こうも簡単に脱がされずに済んだだろう。

スパッツタイプは、ヒップラインを綺麗に保て、ずり上がりや食い込み防止にもなる
のだが、少し窮屈で響子はあまり好みでなかった。
ヒップラインを無理に形作らずとも、響子のそこは丸く美しい形状だったし、ぴっ
たりと肌に密着するため蒸しやすくなってしまう面もあったからだ。
ノーマルタイプでは如何ともし難く、あっさりと脱がされてしまった。

そこで静香もポロシャツを脱ぎ去った。
響子が呆気にとられていると、ブラジャーまで外して乳房を露わにしている。
それを見て、響子は顔を真っ赤にして背けてしまう。
静香は、響子の肉体を見ているだけで昂奮してきた。
ウェアの上からでもスタイルの良さはわかったが、こうして乳房も下腹部も剥き出し
になっているのを見ると、そのバランスの妙がより強調されているようだ。

一方、響子の方も、さっき見てしまった静香の半裸姿が瞼の裏に残像として残っている。
優美とも典雅とも言いようのない気品や気高さを持った静香に、響子は内心憧れていた。
自分も35歳くらいになった時、ああいう女性になれたら、とすら思っていた。
着衣の状態でもそうだったが、こうして半裸となっても、少しも気品を損なっていない。
胸は響子ほどではないが程良いサイズだったし、年齢の割りには型くずれしていない。
さすがに20代のような張りはなかったが、その分よく熟れて豊麗になり、妖美さを
増していた。
そんな姿を思い出すと、じわっと胎内が熱くなってくるのがわかる。
それを静香に覚られてはならないと気を引き締めるのだが、彼女の舌がいきなり秘所を
舐めてきて、それも叶わない。

「おっ、奥さんっ……何をっ……ああ、やめてぇっ!」
「何よ、もう濡れてるじゃないの」

激しく揺れ動く響子の腰を抱えるようにして抑えると、静香夫人は赤い舌をちろりと
伸ばして、剥き出しにされている響子の割れ目に這わせていく。

「ああっ!」

響子が腰を思い切り引いて逃げようとするものの、すぐに後ろの壁に臀部が当たって
しまう。
がちゃがちゃと鳴る手錠の音が虚しかった。
静香の熱い舌がゆっくりと動き始めると、響子は悲鳴を上げた。
それでも静香が響子の秘裂を指で押し開き、その上でひくついているクリトリスを
吸われると、

「うっ!」

と小さく呻いて、抵抗が止んだ。
ちゅうちゅうと淫猥な音を立てられて、性感の中心を吸われると、両脚を踏ん張る
ようにしてその快感を堪えた。

(あっ……ああ、濡れていく……こんな、恥ずかしい……。まさか静香さんが、
こんなことを……)

頭が少しぼうっとするのは酔いのせいかも知れない。
そのため抵抗しようにも集中力が途切れがちになり、羞恥心や恥辱感も薄れ気味だ。
逆にアルコールによる相乗効果なのか、性感がいつもよりも高まり、敏感さが増して
いるような気がした。
夫人の舌と指が巧みに響子の性器を嬲るたびに彼女の肉体は燃え上がり、けだるい
ような痺れと恍惚感が同時に襲いかかってくる。
舌全体を使ってねっとりと舐めていくと、響子の腰が悶えるように蠢く。
舌先を尖らせて、クリトリスをツンツンと突っついてやると、響子は大きく喘いだ。

「ああっ……!」

そこを舌でなぞりあげられると、身体が芯からとろけてしまいそうになる。
強い官能が背筋を走り抜け、全身をぶるぶるっと震わせた。

(いやあ……こ、腰から力が抜けていく……ううんっ!)

徐々に尖りだした肉芽を唇で軽く摘み、舌でころころと転がしてやると、あっという
まにそこが硬く膨れあがってくる。
その上ピクピクと蠢いてきたのが生々しかった。
その快感に我慢できず、響子は静香を跳ね飛ばすよう腰をぐっと前に突きだした。
危うく転がされそうになるところを堪えて、なおも静香が口淫を続ける。
恥丘を覆った淡い陰毛が、静香の鼻を快くくすぐる。
そして大きく舌を伸ばしてぺろりと媚肉全体を舐め上げると、響子の白い裸身が大
きく仰け反る。
さらに舌を硬くして割れ目の中に侵入し、舌先を膣に挿入すると、響子が絶息する
ように喘いだ。

「ああっっ! ……いっ、ああ……」

呻くように嬌声を発すると、ガクガクッと身体を震わせて全身から力が抜けた。
頭が垂れ、長い黒髪がばさりと顔を覆った。

「あらあ、響子さん。もしかして、いっちゃったのかしら?」
「あ……ああ……」
「その時はちゃんと教えてくださらないと困りますわ。旦那さまとなさる時だって
ちゃんと教えていらっしゃるのでしょう?」

がっくりと響子は項垂れ、はっきりそれとわかるほどに胸が激しく上下し、荒い
呼吸をしていた。
とても質問に答えられる状態ではなかった。
じっくりと響子の媚肉を観察していた静香が、わざと感嘆するように言って羞恥心
をほじくり出す。

「まあまあ、濡れるだけじゃなくて、もうすっかりほころんてますわよ、響子さん
の花弁は」
「ああ、いやです……み、見ないでください……」

そう言われて自分のそこの変化に気づかされた響子は、消え入りそうな声で言った。
口ではいやがっていながらも、媚肉が静香の強引な愛撫に応えてしまっていること
を知られたくはなかった。
それまではきっと響子本人と同様に、清楚に慎ましやかに閉じていたであろう秘裂
が、静香の愛撫によって見事に開花していた。
クリトリスも充血し、包皮から顔を出して小さく膨れている。
新鮮なサーモンのような色の肉襞が、厚みと大きさを増して、弾けたように反り返
っている。
よく覗けば、中の内臓まで見て取れそうだ。
それでも決してグロテスクではなく、むしろ可憐さを漂わせているのは、響子なら
ではだろう。
愛液は何もしなくとも滴り、割れ目を濡れ光らせている。
静香はまるで男のように生唾を飲み込んだ。

「……響子さんのここ、もう充分に準備OKですわね。こんなに濡れて……若いっ
ていいわね」
「も、もうこれ以上……しないでください……ああっ!」
「恥ずかしいの? でも恥ずかしがる必要はないわ。あるがままに、すべてを受け
入れるのよ。身体ではなく心で感じるの」
「こ、心で……?」
「そう。羞恥心も倫理観もお忘れなさい。そんなものは邪魔なだけ。あなたはもっと
自由になるべきなの。私がそれをお手伝いするわ」

響子の白い喉が仰け反った。
それまで屈んでいた夫人が立ち上がり、またしても指でそこをまさぐり出したのだ。
憧れの美しい人に恥ずかしい股間を愛撫され、身体がジーンと燃えてくるのを抑え
ようがなくなった。
静香の指が媚肉を這うごとに、止めどもないほどに蜜が溢れてくる。
その羞恥を堪え、呻いたその口を静香の口が覆っていく。

「むっ……う、うむ……」

夫人の柔らかく麗しい唇が自分の唇に重なる。
舌が響子の口を割ると、静香の香しい吐息を直接感じることができた。
拒否の呻きではなく、恍惚としたくぐもった呻き声を上げた響子は、全身を痙攣させ
ていた。
もちろんその間も、夫人の指が響子の媚肉を愛撫している。
だが、愛撫されるのは入り口付近やクリトリスに限られ、決して中へは入ってこな
かった。
響子にとってはホッとするような安堵感と、逆にもどかしいような焦れったさを煽
っていく。

「あ、あうむ……んんっ……ちゅっ……」

優しく口を重ね、ねっとりと舌を絡ませていると響子の裸身がビクビクと震えるの
がわかる。
膣を責める指には、途切れることなく淫液が絡みついていた。
もう顔を振って静香の唇を抗おうとはしていない。
無抵抗に彼女の舌を受け入れていた。
あまりの快感に響子がぐっと胸を張るようにして堪えると、静香は自分の乳房を
そこに押しつけていく。
自分の胸が静香夫人の豊潤な胸で潰される感触に、響子はぞくぞくする感覚を覚える。
互いの硬い乳首同士が擦れ合わされると、身体を反り返らせて呻いてしまう。
濡れた熱い指先が、クリトリスを集中的に責めてくるととうとう耐えきれなくなり、
小さく悲鳴を上げてから喘ぎ始めた。

「あっ……そ、そこは許して!」
「可愛い声ね、響子さん。もっと聞かせて、あなたのいやらしい喘ぎ声を」
「ああ、もうやめて……お、お願いです、静香さん……」
「うふふ、私のことは「お姉さま」って呼びなさい。私も「響子」って呼ぶから」
「は、はい……お姉さま、もう許して……」
「だめ。許してあげない」
「ああ……」

絶望したような声を聞きながら、静香の指が媚肉からそろそろと後ろへ伸びていく。
濡れそぼった細い指が、響子のもっとも恥ずかしい場所──アヌスに伸びてきたの
を知覚し、響子は仰天したような悲鳴を上げた。

「ひっ!? ど、どこを触ってるんです!」
「どこって言われても、お尻よ。響子のお尻の穴」
「いっ、いやっ! そんなところ、いやあ!」
「あら、ここは初めて?」
「あ、当たり前ですっ……」
「ふうん、そうなんだ」

静香は思わせぶりに言った。
言いながらも、まだ指はアヌス周辺を撫でている。

「旦那さまも……瞬さんも、ここは好きなはずよ。だからあなたも慣れないと」
「でっ、でもっ……お尻なんて恥ずかし過ぎますっ……!」

細い指を前の穴から止めどなく溢れてくる蜜にまぶし、それを肛門にすり込むよう
になすりつけていく。

「や、やめてお姉さま……ああ……」

円を描くようにしてアヌス周辺をなぞっていくと、ぞくぞくするような悪寒とも
痺れともつかぬ感覚が響子の背筋を走り抜けていく。
焦れったいようなやるせないような不思議な感覚だった。
女の身体を知り尽くした静香の指は、まるで焦らすように周辺だけをなぞり、小さな
蕾には触れていない。
いつしか響子は、そんな静香の焦らしがもどかしく感じてくるようになったのだった。
そのタイミングで、静香の指がアヌスの中にめり込んでくると、響子は失神しそうな
ほどに動転した。

「ああっ、な、何をっ……やめて、しないで!」

腰を乱暴に振りたくって抵抗するものの、ぷすりと深くまで侵入した静香の指は抜け
そうにない。
響子の反応が愉しいのか、静香は執拗にそこを責め続けた。

「可愛いわ……可愛いのよ、響子。瞬さんに嫉妬しちゃうくらい」
「あ、ああ……あうう……」

内部で指を曲げ、直腸に直接触れると、響子は踏ん張るようにして呻く。
静香はさらに奥へと責めたくなり、指を長い中指に交代させ、それを根元まで埋め
込んだ。
響子が踏ん張ると、指の付け根がぎゅっと締め付けられる。
ぬめりと帯びた腸壁の粘膜の感触が、まるで内臓を犯しているかのようで静香の
欲情を煽り立てていく。
指先が粘膜にちょんと触れると、ビクンと背が跳ね上がる。
指は僅かに動いただけなのに、響子の脳髄には強烈な刺激となって響いてきた。

「あ、あはっ……あああ……うっ……むむ……いっ……ふあっ……」

静香の指が繊細な動きを示すたびに、響子の五感は痺れ、前を責められるのとは
まるで違った新たな快感の戦慄に酔っていく。

「気持ちよさそうな声ね。初めてのお尻なのに、いきたいのかしら?」
「や……やです、そんな……あうむ……うっ……」
「いや? それにしては色っぽい声よ、響子」
「お……願い……そ、そこはもういや……許して……ああ……」
「そう。響子がそこまで頼むならやめてあげてもいいわ。その代わり、前の穴では
ちゃんといくのよ。いい?」

そう言うと、静香はようやく響子のアヌスから指を引いた。

「ああ……」

肛門の上をなぞっていた指の腹が離れていくと、響子は心底ホッとした。
そんな場所を嬲られるくらいなら、他に何をされてもいい。
虚ろな表情の響子に、静香の唇がまた迫っていく。
キスに弱いと見抜いた上での行動である。

「ん、んむ……」

目を開けると、そこに静香の美貌がある。
それを見るだけで、じぃんとさっきまでの恍惚感が甦ってきた。
繊細な舌が咥内に侵入し、響子の舌を捉え、絡みついてくる。
それと同時に、よく動く細い指が媚肉に届き、響子の花弁を優しく撫で回し、その
中に入ってきた。
響子の頬がぽおっと薄紅色に染まっていく。
ぴったりと押しつけてくる乳房に快感が込み上げてくる。
硬くなっているのはクリクリと擦れ合う乳首だけでなく、乳房全体もしこしこと
充実した弾力を持ってきていた。

唇が離れると、響子は思わずその後を追ってしまう。
それを焦らすかのように、静香夫人の舌は響子の首筋を這い、耳を舐め、耳孔に
その先を入れる。
思わぬところの快感に、響子はまたひとつ新たな性感帯を覚え込まされた。
響子の恍惚とした美貌をうっとりと見つめていた静香が、耳たぶを甘咬みしながら
囁いた。

「いいわね、響子。いくわよ」
「あ……だめ……。やめてください、お姉さま……こ、これ以上は……」
「だめ。たっぷり愛してあげるわ」
「いやあ! 入れないで!」

ゆっくりと静香夫人の人差し指が響子の膣内に潜り込んでいく。
それと同時に、残り四本の指がクリトリスを擦るように愛撫する。

「ううっ! あっ……だっ、め……いっ……」

夫人の指が突き刺されるたびに、クリトリスがねぶられるたびに、響子の肢体を
官能の炎がバーナーのように噴き上がっていく。
響子は背中を壁に貼り付けたまま、首を何度も仰け反らせた。
ずっ……ずっ……と、比較的ゆっくりと響子の胎内で静香の指が抜き差しされていく。
女同士で穢らわしい、感じてはいけないと思いつつも、芯から燃えるように肉体が
疼いてくるのを止めようがなかった。
響子の腰が、知らず知らずのうちに、小さく上下運動していた。奥村夫人の律動に
合わせているのだ。
それに気づいた静香は、わざと指を浅く抜きそうにすると、響子は「あ……」と
つぶやいて、静香の指を追い掛けるように腰を落とそうともがいた。
夫人はほくそ笑んだ言った。

「なあに、その動きは響子」
「い……」
「はっきりお言いなさい」
「い……かない、で……」
「そう」

指を第一関節まで埋めて、そのまま軽く円運動させたまま、静香は言った。

「もっと欲しいのね、響子は」
「は、い……」
「いい子ね。それじゃご褒美」
「あう!」

静香の指が、深く根元まで響子の身体を貫いた。
新たに噴き出た脂汗でじっとりと全身を濡らしながら、響子は肢体をうねらせて喘ぐ。

「あ……っ……」

膣に新たな指が追加された。
静香は人差し指と中指を絡めて、響子の中で埋没させた。
まだ満足するほどの太さではないものの、その指がざわざわと交互に蠢いてくる。
思わず腰をよじると、膣は二本の侵入物を押しだそうとでもするように締めてきた。

「よく締まる素敵なオマンコね、響子。そんなに気持ちいいの?」
「ああ、はい、お姉さま……」
「こんな細い指じゃ物足りなそうね。もっと太いのがいいんでしょう?」
「そ、そんなことは……」

響子は恥ずかしげに顔を伏せた。
その顎を左手で摘んで、静香は正面から見つめる。

「でも残念ながら、私にはペニスがないから。そうね、瞬さんくらいのたくましい
もので犯してあげたいのだけど……」
「そ、それはどういうことですか……」

なぜ静香がそんなことを知っているのかと、伏せていた顔を響子が上げると、その
口を塞ぐように唇を重ねた。

「むっ……むむう……んん……」

熱いキスに響子の全身が震えた。
舌が入り込み、響子の舌を貪るように吸い上げる強烈な口づけだった。
静香は響子の唇を吸い、咥内に入り込ませた舌で相手の舌にねっとりと絡ませていく。
アヌスからは撤退した指が、再度媚肉に愛撫を加え始めた。
キス同様、指の動きも激しくなっていき、ずぶずぶと何度も響子の膣を突き上げる。
残りの四本の指はクリトリスやアヌス周辺を擦り、なぞり、突っつき回した。

「んむうっ! むっ……」

唇、膣、アヌス、クリトリスと四箇所の性感帯を同時に責められ、響子は身体中が
あっというまに官能の猛火に包まれていくのを知った。
そして五箇所目は乳房だった。静香のすっかり硬くなった乳首が、響子のこれも硬く
なっていた乳首をツンツンと突っつき、くすぐるように蠢くと、じわっと汗が滲み
だし、肉の愉悦が子宮まで届いてくる。

(くっ……いっ……いいっ……ああ、もっと……)

口が塞がれていなかったら、きっとよがってしまっていたに違いない。
響子は腰をうねらせ、よじり、突き上げてくる静香の指の動きに連動させていた。
そうした響子の媚態に、静香もうっとりとして言った。

「可愛いわ、響子。気持ちいいのね? 私の指が気持ちいいのね?」

ようやく離された口は喘ぐばかりだったが、首がガクガクと縦に振られた。
胸を自ら突きだし、静香の胸に押し当てる。
静香もまた乳房を響子の乳房に押しつけて潰していく。

「いくの、響子? いくの?」
「ああ、はい……」
「ちゃんとお言いなさい!」
「は、はいお姉さま……。い、いきそうです……響子はいってしまいそうです……
あっ……」
「いい子ね。じゃあいかせてあげる。ほら」
「ああっ!」

静香は壁に磔状態になった響子に覆い被さっていく。
右手の指が膣を抜き差しする速度が速まり、左手はぎゅうぎゅうと乳房を揉み込んだ。
舌で首筋を舐め、耳を舐め、また唇を塞いだ。

「ああっ……も、もうっ……い、いく……い、いきますっ……!」

人差し指と中指を絡めた二本の指が、深々と響子の膣を突き上げると、響子は思う
さまよがって絶頂に達した。
その瞬間、静香の手指に響子の膣から熱い愛液が噴きかけられた。
響子の肉体がビクビクビクッと大きく三度ほど揺さぶされ、全身から力が抜けた。
がくりと伸びた肢体から汗が噴き出し、ムッとするような女の性臭が香り始めた。




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