響子は、ぼうっとしていることが多くなった。
そのことは夫の裕作だけでなく、アパートの住人たちにも気づかれていた。
元来、響子はまめまめしく立ち働くタイプで、自分の部屋はもちろんのこと、暇があれば廊下
の拭き掃除をしたり、玄関や庭を掃いたりしていた。
響子がエプロン姿で竹箒で庭を履いている場面は、一刻館のシンボルでもあった。
それが、ここ一ヶ月ほどほとんどなくなっている。
何もする気が起きなかった。
いつも自失している感じだった。
昼間、ミルクを欲しがる春香の泣き声にも気づかず、虚ろな瞳をして呆然としているところを、
一の瀬のおばさんに呼び掛けられて我に返ったこともある。
夜、夫へ夕食後のお茶の支度をしている最中にぼうっとしてしまい、夫に声を掛けられてハッ
としたこともある。

一の瀬も四谷も、そして裕作も響子の変化を訝しみ、心配はしたが、積極的な手立ては打たな
かった。
それは当然で、思い当たる原因がなかったからである。
朱美だけは真相に近いものを知っていたが、それを他言することはなかった。

夫や住人たちは、結局、響子のそれは家事や子育て、アパート管理の仕事が重なったことに
よる疲労蓄積ではないかとして、あまり触れないことにしたのである。
彼らがやったことといえば、裕作は出来るだけ家事を手伝い、春香の面倒も見るようにした。
一の瀬のおばさんも、可能な限り響子に代わって、庭や建物の掃除などを負担することになった。

それでも響子は、みんなに対して申し訳ないという気持ちよりも、他のことに心が行っていた。
セックスである。
ふと気がつくと、百瀬とのセックスのことばかり考えているのだ。
四六時中とまでは言わないが、ぼうっとしている時は、あの淫らで激しい責めのことばかりに
頭が行った。

自慰が習慣のように行われるようになったのも最近である。
響子は、高校生の時、悪友に教えられてオナニーというものがあるのを知った。
恥ずかしかったし、汚らしいとも思ったので、することはほとんどなかった。
今考えれば信じがたいことだが、惣一郎と死別し、裕作と結婚するまでの「独身」時代にも、
まったくしなかったのである。
それが、百瀬に定期的に犯され、身体の隅々にまで男の愛撫を受け続けるようになると、
どうしたわけかオナニーするようになっていった。

百瀬は、どうかすると週に2,3度は響子を呼び出し、痴虐の限りを尽くすのだが、そのイン
ターバルの日に自慰するようになっていた。
アパートや部屋に誰もいないことを確認してからする、というのではない。
頭がぼうっとし、脳裏に百瀬のいやらしい責めときついセックスのことが思い浮かんでくると、
勝手に手指が動いている感じなのだ。
Tシャツの上から乳房を揉みしだき、Gパンの裾から手を入れて、パンティの上から性器を擦
り、クリトリスをいじっている自分に気づくのだ。

百瀬のセックスは、まるでけだもののようだった。
肉食獣が、獲物を捕らえて食い漁っているかのような勢いであった。
実際、響子は自分が草食動物で、肉食獣の百瀬にはらわたを貪り食われているような錯覚すら
受けていた。

それにしても、と、響子は思う。
あのペニスの凄さは何なのだろう。
とても惣一郎や裕作についているものと同じものだとは思えなかった。
人間の身体の一部とは思えない。
カチカチに硬くなっているくせに、妙な弾力がある。
その肉の凶器で無秩序に膣内を突かれまくると、膣口は爛れ、内部は痛くなるほどだった。

硬いだけでなく、なにしろ大きかった。
その長さや太さには身震いがするほどだった。
初めて見せられた時は、その巨大さに恐怖して悲鳴を上げてしまったほどだ。
あれを挿入された時のきつさ、息苦しさ。
圧倒的な重量感。
同時にわき起こる充実感。
みっしりと奥まで埋め込まれ、膣内に隙間もないくらいに占領されると、もう何も出来ない。
胎内は百瀬のものなのだとイヤでも実感させられる。
これほど、自分が女なのだと実感させられることはなかった。
そして、みちみちに詰め込まれた太くて硬いもので散々かき回されるのだ。

それでいて、胎内を中心に駆け抜ける、甘美というにはあまりにも強烈な愉悦が忘れられない。
さらに恐ろしかったのは百瀬の性癖だ。
あの男は、響子のお尻にまで興味を示し、嫌がる人妻を押さえつけてアヌスをいびりまくった
のだ。
たまらなかった。
何しろ、夫にも触れさせたことのない処女地だ。
そこを面白がって嬲ってくる。
しまいには、肛門を犯すとまで言ったのだ。
とんでもなかった。
排泄器官を使って性交するなど、響子の理解の超えている。

響子がアヌスへの責めに対し、一層の屈辱と羞恥を感じていると知ると、百瀬はかさにかかっ
て責めてきた。
さすがにペニスを挿入することだけはやめてくれたが、この先、どうエスカレートするかわか
ったものではなかった。

だが、響子はわかっていた。
そんな恥ずかしいことをされているのに、身体の片隅──いや、膣の奥の方──は不自然に熱
くなっていたのだ。
お尻なんかで感じるはずがない、恥ずかしいだけ、と思っているのに、責められ続けていると、
いつしかとろけてきてしまう自分がいる。
責められているのは肛門なのに、なぜか女肉が濡れてきてしまう。

美しい人妻は戸惑いを隠せない。
アヌスに性感帯がないとすれば、お尻を虐められるという被虐感で快感を得ていることになっ
てしまうではないか。
いやでいやでたまらなかったはずなのに、そのことを夢想していると、知らず知らずのうちに
腰の奥が熱を持ち、いつしか下着を濡らしてしまうのだった。

夕べは、いつもより明るく振舞っていた。
夫や住人たちが、自分の異変に気づいてきているような気がしたからだ。
余計な心配を掛けたくない──このことを表沙汰にしたくはないと思ったからだ。
百瀬がいかに自分の肉体に執着しているとはいえ、響子は夫のある身である。
そう無茶なことは出来ないはずだ。
あまりに過激な行為や無茶な要求があれば、いかに響子が我慢強いとはいえ、打ち明けざるを
得ない。
そうなれば百瀬だってタダでは済まない。
警察沙汰にはしたくないはずだ。

それに、彼のような男なら、女はよりどりみどりなのではないだろうか。
今は確かに響子に執心しているが、そのうち飽きるのではないか。
他の女へ興味が移るのではないか。
そうなるまでの辛抱だ。
響子はそう考えていた。

それには、今の百瀬との禁断の関係がばれることがあってはならない。
だからこそ彼女は、家族や知人たちになんでもないように対応していた。
だが、そうした生活は精神的にも無理がかかる。
響子は、朝、夫を送り出すとドッと疲れが出るようになっていた。
気忙しく細々とした家事をこなしていると、ふと疲労感を覚えた。

「ふう」

軽く一息つき、壁掛け時計を見てみると、もう正午を回っていた。
春香に乳をやり、寝かしつけると軽く昼食を摂った。
そこで彼女は、夕べ入浴しなかったことに気がついた。
そう思って頬に手を当ててみると、少しべたついている。
疲れていることもあり、脂が浮いてきているのだ。
思い起こせば一昨日も入っていない。

ここ一刻館には風呂はない。
なにせトイレも共同なのだ。
部屋風呂など、望むべくもなかった。
入浴するには、ここから徒歩で10分ほどのところにある銭湯へ行くしかない。
午後一時を少し過ぎている。
風呂を浴びるには適当な時間ではないが、ちょうど春香も寝付いたことだし、さっと入って
くることにした。
着替えと入浴道具を持ち、部屋にいた一の瀬夫人に春香の世話をお願いして、響子は五色湯へ
向かった。
今や家風呂、部屋風呂が当たり前の時代で、その風呂屋も経営が大変らしい。
万が一、廃業とでもいうことになれば、このアパートの住人たちはどうなるのだろう、などと
考えたていると、すぐに到着した。
番台には、主が暇そうに雑誌を読んでいた。

「こんにちわ」
「おや五代さんの奥さん、いらっしゃい」

響子が挨拶すると、主人は相好を崩した。
響子たち一刻館の住人たちは、貴重なお得意様である。

「こんな時間に珍しいね。どうしたい?」
「ええ、昨日、一昨日といろいろあって、お風呂に入りそびれちゃったもので」

愛想の良い笑みを浮かべて、響子は代金を前払いした。
主人は「ごゆっくり」と声を掛けて、また雑誌に目を落とした。

脱衣所には誰もいなかった。
半端な時間だけに、まだ入浴客はいないのだろう。
響子は服を脱ぐと、浴室へ入っていった。

─────────

ちょうどその頃、五色湯の前に黒塗りの大型乗用車が止まった。
中から出てきたのは、百瀬と五十嵐であった。
この日は五十嵐を交えて、またアパートで犯してやろうと思っていたのに、響子は珍しく外出
してしまった。
舌打ちしながら百瀬は後をつけた来たのだ。
響子が風呂屋に入っていくのを見ると、若い五十嵐は失望したようにぼやいた。

「銭湯にいっちまいましたよ。待ちますか? それとも今日は……」
「……いや、ここでやっちまおう」
「ええっ!?」

兄貴分の返答に、五十嵐は仰天した。

「こ、ここでって……、他の客や風呂屋の親爺だっているでしょうに」
「それを調べて来い。客がいたら諦めるが、いなかったらやるぜ」

それを聞くと、舎弟はニヤニヤしながら中に入り、3分もしないうちに顔を出した。
そして、笑いながら百瀬に指でOKサインを出してきた。
百瀬が乗り込むと、五色湯の主は、いっそう引きつった顔になった。
よりによってヤクザ者がふたりも来た。
いったい何をされるのか。
中年親爺の顔に、あからさまな脅えが浮かんでいた。
用心棒代だのみかじめ料でも請求されるのかと思いきや、ヤクザは別のことを言った。

「親爺、今からここは貸切だ」
「は……?」
「今から……そうだな、3時か4時くらいまでは俺たちがここを使う」
「つ、使うと言われましても、他のお客さんが……」
「だからよ」

五十嵐が低い声でドスを利かせながら言った。

「表にゃ『準備中』だか、『臨時休業』だかの札でも下げておけよ」
「そんな……」

風呂屋の抗議は、口から出てくる前に百瀬のひと睨みで消え去ってしまった。
それでも、何とか勇を奮って親爺は言った。

「で、でも、今、お客さんが入ってるんですよ」
「それよ。その客に俺たちゃ用があるんだよ」
「え……、五代さんの奥さんに……?」
「ほう、知ってるのか。なら話は早えや。これから俺たちは、あの奥さんとしっぽり愉しもう
って寸法よ」
「……」

強姦するというのか。
あの綺麗で優しい五代さんの奥さんを凌辱するのか。
主人が息を飲んでいると、百瀬がその肩を抱えるようにして言った。

「なに、心配いらねえ。警察沙汰にはならねえよ。あの奥さんとは知り合いなんだ」
「知り合い……」
「そうよ。納得ずくのプレイってわけだな」
「……」
「あの奥さんはよ、清楚な顔した美人だが、あれでなかなか好きもんでな。いつも亭主以外の
男をくわえこんでやがるのさ。だから、たまに俺たちも可愛がってやってんだよ」

そんなことがあるだろうか。
あのアパートの管理人さんは、確かにこの時計坂でも美人で有名だった女性だ。
だが身持ちは堅く、今の旦那と再婚するまで男の噂はほとんどなかった。
テニスのコーチといい仲らしいという噂はあったが、それは男の側の片思いだったらしい。
あれだけの美貌だから、言い寄ってくる男はいくらでもいたろうが、そういう噂は終ぞ聞か
なかった。
男関係には筋を通す女性なのだ。
風呂屋の主人が、戸惑ったような、半信半疑な表情でいると、百瀬が小声で囁いた。

「信じられねえってツラだな。何だったら見ててくれてもいいぜ」
「は……?」
「だからよ、俺たちとあの奥さんがどう愉しんでいるのか、見ても構わねえってことよ。そう
すりゃおめえも納得できるだろうしな」
「……」

百瀬は親爺の顔を覗き込むように言った。

「おめえだって、あの奥さんは美人でいい身体だと思うだろ? 奥さんが脱衣所で着替えてる
のを覗き見たことだってあるんだろうが」
「……」

さすがにそれはなかった。
職業意識というか、プロ根性として、番台で覗くというのは許されないと思っていたからだ。
しかし反面、確かに響子のような美人を見ると、見てみたいという男としての欲求があったこと
は否定できない。

「な? 今度はヌードだけじゃねえ、あの奥さんのセックスシーンが見られるんだぜ。おめえ
だって見たくないわけがねえだろうが」
「……」
「これからここで起こることを黙っててくれりゃ、その駄賃代わりに見てもかまわねえと言っ
てるんだ。あんな美人妻のセックス、それも裏ビデオ顔負けのすげえのが見られるんだぜ。
2,3時間貸切にしてくれたって安いもんだと思うがな」
「……」

結局、親爺は折れた。
百瀬たちが怖かったからだ。
だが、それは言い訳だということが自分でもよくわかっていた。
百瀬がそう言わなくても、親爺は覗いていたかも知れない。
あの奥さんが夫以外の男に抱かれてどう悶えるのか、見たくなっていたのだ。
男性として止むを得ないところがあっただろう。
五色湯の主人は、銭湯としての職業意識をヤクザの脅しで押し殺し、通報しなければいけない
という社会人としての義務を、美しい人妻の凌辱場面を見物できるという俗物的な欲求で噛み
殺していた。

─────────

「な……」

乱暴に開いた入り口サッシを見て、響子は咄嗟に声も出なかった。
なぜだ。
なぜ百瀬がここにいるのだ。
どうして自分が銭湯に来ていることを知っているのだ。
いや、それよりも、なんで男の百瀬が女風呂に入っているのだろう。
それに、百瀬の隣にいる若い男は誰だ?
湯船に入ろうとした姿勢のまま、立ちすくんでいた響子を見て、その若者が百瀬に聞いた。

「この女ですか、兄貴」
「ああ、そうだ。奥さん、来い」
「いっ、いやっ!!」

百瀬は響子の手首を掴むと、そのまま頭の上で纏め上げた。
響子は、その裸身を惜しげもなく男たちに晒すことになる。
両手を掴み上げられ、腋の下を晒した宙ぶらりんの状態でいやいやするように身体をうねら
せた。
その、哀れな熟女のむっちりした肢体を眺めていた若いのが奇声を上げた。

「ひょーーっ、こりゃあ確かにすげえ身体ですね、兄貴」
「そうだろう」
「なるほど兄貴が執心するのもわからあ。これじゃ10代のスケなんざガキにしか見えねえ
や」

見ていると、どうも百瀬の弟分か何かのようだ。響子はがたがた震えていた。

「ど、どうして……どうしてここにあなたがいるんですかっ!」
「そんなこたどうだっていいだろう。俺は奥さんとやるためになら、どこにだって出向くぜ」
「そんな……、そ、そっちの人は……」
「ああ、こいつは五十嵐と言ってな、俺の舎弟だ。こいつにもいい目を見せてやろうと思っ
てな」
「いい目って……」
「わかっててすっ惚けんなよ。もちろん奥さんに相手してもらうに決まってるだろうが」
「そ、そんな……ひどい……」

やはりそうなのか。
百瀬だけでなく、他の男にもこの身体を捧げなくてはならないのだ。

一方、その五十嵐の方は人妻の身体に感心していた。
この、どこもかしこもねっとりと肉が乗った身体のいやらしさは何だろう。
おっぱいも豊かだし、尻にも腿にもたっぷりと脂が乗っている。
それでいて、足首やウェストなどはきゅっと締まったスタイルの良さは格別だ。
二の腕あたりは、さすがに肉がついているが、それすらも年齢相応の妖艶さを醸し出している。

両腕を上げさせられているから、乳房はまるで無防備だ。
男の目に晒されることを恥じて盛んに身をよじっているが、そのせいで豊満なバストが余計に
ゆさゆさと扇情的に揺れている。
それでも、何とか女の秘処だけは見せまいと、右足の膝を曲げて必死に股間を隠そうとして
いる姿がいじらしかった。

女を蜜柑に例えるなら、五十嵐はまだ青い方が好みだった。
熟れる前で青臭く、まだ固く締まっている状態だ。
まだ皮が剥きにくいのを強引に剥き、ようやく口にした果肉はまだ酸っぱい。
それがいいのだ。

響子は、蜜柑で言えば完熟している。
すっかり色づき、甘みも充分で、果肉も皮も柔らかい。
まさに食べ頃だ。

五十嵐は、青い果実の新鮮さが好きだったが、響子の美貌と美しい肢体を見ているうちに、
ねっとりと甘い果実も味わいたくなってきていた。
何よりこの人妻は、29歳だというのに、年齢にそぐわぬ初々しさを保っていた。
いわゆる痴女には興味がないという点で、百瀬と趣味が一致しているこの若者は、それだけ
でもこの美女を抱く意味があると思った。
五代響子という人妻は、完熟した甘味だけでなく、熟れる前の酸味も併せ持った稀有な女なの
だろう。

響子が事態を覚ったと見るや、百瀬は彼女の手首を離した。
握られていた手首を痛そうにさすりながら、人妻は改めて男たちを見た。

「ひ……」

響子は、正面に立ちふさがっているふたりのヤクザを見て、小さく悲鳴を洩らした。
男たちは素っ裸だった。
当然、性器も露出している。
恐ろしげにペニスがいきり立っている。
初めて見る五十嵐のそれは凄かった。
大きさだけで言えば百瀬の方が大きい。
だが五十嵐のものは、若さのせいか、何しろ元気が良さそうだった。
太い静脈を浮き立たせて、早くもビクビクと脈打っている。
見るからに硬そうなそれは、先からもう透明な汁がポタポタと零れていた。
思わず後ずさりしようとする響子に百瀬が言った。

「この期に及んで逃げようなんて思うなよ。第一、裸のまんまどこへ逃げるってんだ」
「……」
「観念しな。どうあっても奥さんは、俺たちの相手をするしかねえんだ」

絶望感に囚われた響子は、へなへなとその場に座り込んでしまった。

─────────

「は……あああ……あうう……あっ……」

五色湯の女湯で、三つの人影が蠢いている。
三人とも泡にまみれている。
風呂屋の洗い場にいるのだから石鹸まみれになっているのは当たり前だが、ふたりは腕や手を
中心に泡がついているのに対し、ただひとりの女は全身が泡に覆われていた。

「ひっ……あ、そこっ……や……うんっ……あっ……ああ……」

仰向けに寝転がされた響子に、百瀬たちがボディソープを塗りたくっているのだ。
バスマットなどはなかったので、タイルの上には何枚ものバスタオルを布いて、その上に響子
を寝かせている。
縛られていなかったが、その裸身を男たちの愛撫に任せるがままにしていた。

響子にしてみれば、どのみち犯されることは確実なのだし、この場から逃げ出すことも出来
ない。
「夫にバラすぞ」と脅されていることもあるが、裸のまま逃げるわけにもいかない。
百瀬としては、ここで緊縛するのは容易だし、響子を諦めさせる上でも有効なのだが、それは
しなかった。
自由を奪われることなく、諾々として百瀬たちに身を任せたと響子に思わせる意味もある。

それと、恐らくどこからかこの光景を覗いているはずの風呂屋の親爺に見せるためだ。
縛って犯したのでは「響子も承知済した上での合意セックス」という百瀬の言い分に説得力が
欠けるからだ。
百瀬が「今日は縛らない」というと、案外、響子は素直に言うことを聞き、抗わなかった。
抵抗は無駄だとわかっているだろうし、さっさと終わらせたいとも思っているのだろう。
その上で響子を泡まみれにした。
ソーププレイの一環だが、そんなことはこの人妻は知るまい。

「あっ……くっ……んんっ……ふあっ……」
「どうだ奥さん、なかなかいいもんだろう」
「身体中ぬるぬるして、いつもと違うだろうが」

男たちの四本の腕が、響子の裸身のあちこちを愛撫する。
泡でぬめって、どうにも抗うことが出来ない。
股間を責められまいとして膝や腿を力いっぱい閉めていても、腿の間から男の手が易々と侵入
してくる。
そして何より、その独特の感触に響子は戸惑った。いつもの愛撫と違う。
乳房を揉まれても、内腿をさすられていても、以前、百瀬に犯された時と感覚が異なるのだ。
ぎゅうっと強く乳房を掴まれても、それがぬるっと滑っていく。
ただ強く握りつぶされても痛いだけだが、この場合、痛いと思う寸前あたりで手が勝手に滑っ
ていくのだ。
結果、強く揉まれた時の快感だけが残る。
乳首も同じだ。
指で思い切り捻り潰されても、その指がするっと逃げていく。
痛いような、それでいて強い快感が走り抜けていく。
まるで全身を舐め回され、その唾液まみれになっているかのようだ。

「やっ、ああ……いっ……うっ……あ、あは……」

大きな湯船から漂う湯煙で、浴室内はぼんやりとけぶっている。
その中で響子のむっちりした肢体が蠢いていた。
なめらかでぬめぬめした泡の感触も手伝い、全身を揉み抜かれる人妻はいつも以上に高ぶって
いた。
夢中になって響子の身体を揉み上げ、こねくりまわしていた五十嵐が百瀬に言った。

「へへ、だいぶ感じてるようですぜ、この人妻」
「そのようだな。もともと感じやすい女だが、その上、泡踊りだからな」
「へっ、泡踊りですか。ありゃあ女が男にしてくれるもんでしょうが。男がサービスする泡踊
りなんて聞いたことありませんぜ」
「そう言うな、相手は素人の人妻なんだからな。まあそのうち響子にもそっちのプレイを覚え
てもらうさ。そうしたら今度はおめえがしてもらえばいい」
「そりゃいいや、頼んますぜ。けど、この女、さすがに兄貴が自慢するだけありますね。見て
下さいよ、このおっぱい」

五十嵐は惚れ惚れしたような表情で、響子の泡まみれの乳を揉んでいた。
こんな見事な乳房は初めてだった。
大きさもそうだが、何しろ形がいい。
しかも29歳だというのに、こうして寝かせていても綺麗な形状を保っている。
さすがに、まったく型くずれしていない、なんてことはなくて、少々広がるように潰れている
が、それはそれで風情があった。
脂肪が詰まっているのだろう。
それは揉み心地からもわかる。
若い女のように、指を弾き返すような弾力感はないが、その分、揉んでいるうちにとろけて
しまうのではないか、という柔らかさがあった。
女子高生のバストのように張り詰めた乳房ではないものの、揉んでいる男の手にしっとりと
馴染んでくる。

腿や尻も同じだ。ぷりぷりというよりは、むちむちというイメージだ。
筋肉を感じさせる若い女の腿や尻もいいが、響子のようにねっとりとした太腿も素晴らしか
った。
つきたての餅のような、という表現があるが、この人妻の尻や腿はまさにそれだった。
舎弟の褒め言葉を聞いて、百瀬も満足そうにうなずいた。

「そうだろう。おっぱいだけじゃねえ、オマンコの味もグンバツだぜ」
「そりゃあ楽しみだ」

五十嵐は嬉しそうに乳房を揉み、太腿を舐めた。

「あひゃああっっ!?」

人妻は奇声を上げた。
若いヤクザの手が、響子の媚肉に触れたのだ。
それまでふたりの男は、響子の裸体にあらゆる愛撫を加えてはいたが、媚肉には触れなかった。
股間を責めることはあっても、内腿を撫でたり舐めたりするだけで、肝心の膣やクリトリスに
は手を出さなかったのだ。
全身を揉み抜かれ、ソープの泡も手伝って、もどかしいような焦れったい快感が断続的に続て
いた。
なのに、乳房は揉んでくれるのに秘肉には触らず、肉の疼きは高まる一方だったのだ。

男たちは、響子の身体が練れてくるのを待っていたわけだが、息詰まるほどの身悶えを見せ
始めた響子を見て、もう充分と判断していよいよそこを責めたのだ。
不意打ちで響子の媚肉を撫で、その指を見て五十嵐は嗤った。

「けけ、響子奥様、濡れてますよ」
「そ、そんなことありませんっ」
「だって、ほら」
「やあっ」

五十嵐が響子の蜜をまぶしつけた指をぬるぬると擦り合わせる。
響子は顔を伏せて目を閉じたが、ぬちゃぬちゃという粘い水音はイヤでも耳に入ってきた。
すると、さらに美女の膣からとろとろと愛液が漏れ出てくるではないか。
自分が出した恥ずかしい淫蜜を見られ、羞恥とともに得も知れぬ官能を覚えていたのだ。
それを見た百瀬がすかさず言った。

「なんだなんだ、もう濡れ濡れじゃねえか。五十嵐の指を見てみろ、奥さんの出したスケベ汁
でベトベトだぜ」
「い、言っちゃいやあ……」

響子は今にも泣き出しそうな顔で頭を振った。
しかし彼女も実感していた。
ぶすぶすと燻っていた性感が、五十嵐や百瀬に淫らにからかわれたことで、さらに腰の奥が
熱くなってきたのだ。
じっとしていられない。
もぞもぞと腰や腿が蠢いてしまう。
徐々に淫らになっていくのを実感しているのか、響子は「はあっ……」と熱い吐息を洩らし
唇を噛みしめた。

五十嵐が百瀬を見ると、兄貴分はニヤリとしてうなずいた。
百瀬の許可を取った弟分は嬉々として響子の股間に入り込んだ。
そして股の付け根を手で押さえ、グッと大きく拡げた。
思い切り開脚された股間が絶景だった。
ひきつるように痙攣している鼠頸部、こんもりと盛り上がっている土手が何とも淫らだ。
そして女穴はふたつともひくついている。

「よく見えるぜ、奥さん。オマンコが物欲しそうに涎垂らしてらあ」
「見ぃ……ないで……ああ……」
「そうだな、見るのはもう充分だ。奥さんが欲しがってるのをくれてやるぜ」

五十嵐はそう言うと、膣にペニスを押し当て、その亀頭部を沈めていった。

「いっ……やあっ……あああ……」

強引に肉槍を突き刺される感覚に響子は呻いた。
それでも女の潤滑油のお陰で、さして肉体的苦痛はなかった。
しかし精神的なダメージは計り知れない。
またしても夫以外の男を受け入れてしまったのだ。

「こ、こんな……ああ、あなたあ……ゆ、許して……」

人妻が夫に詫びる声を心地よく聞きながら、その裸体に若者は覆い被さっていく。
その背中には、これも見事な刺青が施されていた。
彫られているのは龍だった。
玉を持った龍が、恐ろしげな表情で睨みつけている図だ。
五十嵐がぐいぐいと腰を使うごとに、背中の龍が踊る。
ズブズブと挿入された肉茎は、響子の膣襞をこそげとるかのように奥まで進んでいった。

「ううっ……ううむ……んんん……あ、あ……」

その太さは百瀬に匹敵した。
息苦しいほどの圧迫感で、響子の膣はグイグイと拡げられていった。
ズンと、五十嵐のペニスは最奥まで届いた。
百瀬のよりは長さがないようだが、それにしても子宮にまで届かされていることには変わり
ない。
響子はその深さに目を剥いた。

「むむう……あ、あうう、深い……深すぎるぅ……あっ……」
「深すぎるってことたあねえだろう、奥さん。俺とやった時だっていちばん奥まで届いただ
ろうが」
「で、でも、ああ……」

呻く響子の腰を掴み、五十嵐は顔を真っ赤にして腰を押しつけた。
根元までぶちこんでやると、ちょうど女の子宮に当たるようだ。
膣の味は上々だった。
濡れているから動きにくいことはないが、それでも随分ときつい。
かなり狭い膣道である。
なるほど百瀬が言った通りで、この女は肉は熟れているが媚肉は若い頃のままだ。
若い女と熟女のいいとこ取りというわけだ。
若いヤクザも、その快感に呻いていた。

「あ、兄貴、こいつ、ホントにすげえっ。中できゅーきゅー締めつけやがって……」
「ふふ、そうだろうよ。ヘタするとおまえでも負けちまうぜ」
「バ、バカにしねえでくださいよ。俺だって早々……おおっ……」

強がりを言いながらも、五十嵐はますます快感が高まるのを感じていた。
そこらの女をやってる時とは比較にならない。
いつもの数倍にも感じられる快感と昂奮を得ていた。
負けてたまるかという負けん気と、その素晴らしい快楽をもっと味わおうという性欲が混濁
して、若者の腰を激しく突き動かしていた。

「ああっ……あっ、あ、あ、ああ、うあ、あ、あ、ああ、ああ、あ、あっ、あああっ……」

響子も後から後から膣に送り込まれてくる快感に喘いでいた。
自分より5歳も6歳も年下の男の犯されているという屈辱と、その若者に感じさせられている
という羞恥は吹き飛んでしまった。
五十嵐の怒濤のようなピストンに、腰がとろけるような肉悦を感じ、喘ぐばかりだった。

突き込まれるごとに声が出る。
熱い喘ぎが止められなかった。
脚がわなわなと痙攣している。
腕も震え、手はきつく握りしめられていた。
ややもすると、犯している五十嵐に抱きつきそうになる自分を必死に叱咤し、堪えていたのだ。

百瀬は、弟分の単調な責めに苦笑していた。
それでも響子は感じさせられてよがっているからいいが、女を仕込むのなら、もっと念入りに
責めるべきだ。
だが、無理もなかった。
普段の五十嵐ならこんなことはないのだが、響子の名器の前に翻弄され、ただの若造になって
しまっているのだ。
五十嵐が必死の形相になって響子を犯しているのを見て、少し援護射撃してやることにした。
喘ぐ人妻の耳元に小声で囁いた。

「どうだい奥さん。五十嵐はまだ若えけど、なかなかいいもの持ってるだろう」
「あ、いやあっ……ひっ……ああっ……いっ……ううんっ……」
「オマンコが五十嵐の太いのをくわえこんで嬉しそうだぜ。いやらしい涎を垂らしまくって
やがる」
「いっ、言わな、ああっ……言わないでぇっ……は、恥ずかしいっ……ああっ……」
「オマンコの奥までぶち込まれて、引っかき回されて気持ちいいんだろうが、ええ?」
「やああっ」
「言えよ、奥さん。気持ちいいなら、いいと言うんだ」

響子は「ひぃっ」と悲鳴を上げて、唇を噛んだ。
頭の中はもう、ぼうっと淫らな薄膜がかかり、理性がぼやけてきている。
男の責めが気持ちよくてたまらない。
百瀬の淫らな言葉も、直接響子の脳髄に響いている。
美しい人妻の媚肉はドロドロにとろけ、たくましいペニスをしっかりとくわえ込んでいた。
熱いほどの熱気を持ち、ぬるぬるになった蜜にまみれ、それでいて襞が絡んでくる見事な女肉
の感触に、五十嵐は獣のように呻いて突き上げ続けている。
泡でぬるぬるになった乳房をぬめぬめと揉みしだきながら百瀬がさらに強要した。

「そら言え、奥さん。いいって言うんだよ!」
「いっ……いいっ……」

響子はグンと首を反らせて喘いだ。
とうとう口にしてしまった。
百瀬だけでなく、五十嵐に犯されても「いい」と言ってしまったのだ。
またしても夫を裏切ってしまった。

だが響子には、もはや夫にすまないなどという感情は起こらず、ひたすらセックスのもたらす
底知れぬ快美感に酔っていた。
凄かった。
こんなに気持ちいいものだと思ったことはなかった。
もっともっと欲しくなる。
一度口にしてしまうと、枷が外れたように響子は淫語を発し始めた。

「だ、だめっ……だめ、いいっ……き、気持ち、いいっ……あああっ……」
「そ、そんなにいいのか、奥さん」

五十嵐は、ともすれば発射してしまいそうになるのを必死に堪え、響子の顔を見た。

「いいっ……いいのっ……ああっ、すごいっ……ふ、深い……ん、んんっ……すごい硬いの
が、ああ……お、奥までっ……」
「ち、ちくしょうっ、奥さん、いけっ、いくんだっ」
「だめだめぇっ……あ、ああっ……もっ、もう、いく……いっくうっっ……!!」
「うおおっ……」

五十嵐は獣のような叫び声を上げ、出来るだけ深いところまで貫くと、子宮に亀頭部が激突
した瞬間に己の欲望を解放した。

どぷどぷっ。
どぴゅるるっ。
どぷっ。
どぷぷっ。
ぴゅるるっ。
ぴゅっ。

胎内に熱い粘液を感じ取った響子も、続けざまにいった。

「はあああああっ……な、中に出てるっ……ううむ、いくっ……」

絶頂の瞬間、ビクンビクンと釣った鮎のように肢体を弾ませていた響子は、ガクリと脱力した。
龍に巻き付かれて凌辱された天女の白い肌は、朱に染まって断末魔の痙攣を見せている。

その上にのしかかった五十嵐は、まだ腰を振っている。
とにかく精液の出ているうちは響子の子宮に送り込もうとしているのだ。
汗と泡でぬめった男女の裸身がもつれ合い、ひとつに溶け合っていた。
恐らくこの時に響子の唇を奪えば、何の抵抗もなく舌を許しただろうが、若い五十嵐にはその
余裕までなかった。
百瀬は、美女が気をやる様子をじっくり観察してから、舎弟に小言を言った。

「バカ野郎、女に圧倒されててどうすんだよ」

コツンと五十嵐の頭を軽く拳で殴る。顔は笑っていた。

「へ、へえ……すんません、兄貴。情けねえです。で、でも、この女、本当に……」
「響子がいいマンコ持ってるのはわかってる。それでも男は、何度か女をいかせてからいく
もんだ」
「すんません……」
「おまえ、何が悪かったかわかってるか?」
「へえ……。この奥さんのオマンコが良すぎて……」
「そうじゃねえ。ま、それもあるがな、おまえ、自分がヤバくなった時、どうしたか憶えて
るか?」
「はあ……」

全然、憶えていない。
あの時は響子を犯すというより、自分が射精したくてどうしようもなかったのだ。

「おまえ、あの時、その奥さんの顔を見ただろうが」
「はあ」
「だからダメなんだ。この奥さんみたいな美人が、今にも気をやりそうな表情を見てみろ、
男だったらまず我慢できねえ」

確かにそうだ。
響子ほどの美女が喘ぎよがっているだけでも、男の側は昂奮の極に達しそうなのに、いきそ
うになっている寸前の美貌を見せられたら、それは射精したくなるというものだろう。

「ああ……」
「な? こっちの余裕がある場合ならいい。だがな、こっちが危なかったら、なるべく女の
顔や身体を見ねえ方がいいんだ。よく畳の目を数えろ、なんて言うがな、それでもいいんだ。
特に響子みてえな上玉をやる時はそうだ」
「……」
「まあ、ただやるならそれでもいい。だがな、仕込む場合はこっちが愉しんでちゃダメなん
だ。愉しむのは仕込み終わってからだ」
「すんません、兄貴……」
「まあいい。響子ほどの上玉はそうそういるもんじゃねえからな。まだ若いおまえじゃ無理
もねえさ。よし、じゃ手伝え」
「何するんで?」




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