隣人からの覗き、そして中出し拒否の日の翌日から、頼広は響子を犯さなくなっていた。
その気がなくなったというのではなく、響子に「あの日」が訪れたからである。
約束通り、頼広は生理の間中、響子には手を出さなかったのだ。
響子は、生理不順とはほとんど無縁で、予定日から三日とずれることはなかった。
症状も、重くなることは滅多になく、寝込むようなことはほとんどない。
それでも今回は、さすがに身体に負担があったせいか、幸か不幸か普段より少々重かった。
そのせいもあって頼広は響子の身体を労り、無理にセックスに及ぶことはなかった。
寝込むほどではなかったものの、お腹が少し痛み、胸もむかむかしていて、部屋でおとなしくしていることが多かった。
その間、世話はすべて頼広がやってくれていた。
掃除はもちろん、食事の用意から洗濯まですべて彼がやったのだ。
もともと掃除はまめにするらしく、独りやもめの部屋にしては小綺麗で、綿埃が部屋の隅に溜まっている、ということもなかった。
洗濯は洗濯機にかけるだけだからどうということはないし、料理にしても、普段から自炊しているようで、苦もなくご飯を炊き、味噌汁を作っていた。
おかずは出来合いの総菜にすることも多かったが、野菜や肉を使って簡単な調理くらいは出来るようだった。
響子は、とても食欲の湧くような状況ではなかったものの、日が経つにつれ、そして生理の症状が和らぐにつれて、少しずつ食事を摂るようになっていった。
そうした時、響子は不思議そうに頼広を見ていることがあった。
本当に響子を気遣って、その身体に手を出さないのだ。
どうせ口だけで、我慢できずに押し倒してくるのではないかと覚悟していただけにホッとしたし、また意外にも感じていた。
本気で労っているらしかった。
こうなってくると、彼への思いがますます複雑になっていく。
本当は、ここからすぐにでも逃げたいし、帰りたいのだ。
それをやったら、また酷い責めを受けるから怖くて出来ない、ということもあるが、それだけでもなかった。
この生活が、何となく日常化してしまい、当たり前になりつつあったのである。
もし頼広がただの凌辱者であったなら、とてもそんな風には思わなかったろうから、響子の心で彼への気持ちが少しずつ変化していたのは確かだった。
生理も三日目になると、ほとんど気にならなくなっていた。
とはいえ、まだ出血はあったからナプキンを使っていたし、当然、セックスも出来なかった。
しかし、さすがに三日目ともなると頼広も我慢できなくなっていたようだった。
もし響子は目の前にいるという状況でなければそんなこともなかったろうが、手を伸ばせば触れられるところに憧れていた美女がいるのである。
耐えれば耐えるほどに、むらむらと獣欲が湧き起こってくるのを止めようがない。
性欲が強すぎるというものあるが、男性の本能として致し方ない面もあった。
頼広は、響子に手を使って抜いてもらおうかとも思ったが、別の手段にした。
「く、口ですか?」
「ああ。したことくらい、あるだろう?」
そう言えば、まだ響子の口を使ってもらっていないのだ。
攫った当初では響子の反発が激しく、とてもフェラチオを求められるような状態ではなかった。
イラマチオにしても同じである。
イラマチオの方は男の側から強制するような口淫ではあるが、それにしても女性が従ってくれなければ怖くて出来ない。
ヘタをすれば噛んでくるかも知れないからだ。
そこで頼広は、響子に同意をとってからフェラチオしてもらおうと思ったのだ。
響子は男の要求を聞いて、サッと顔を赤らめた。
経験がないわけではない。
惣一郎のものを口にしたことは何度かあったが、数も少ないし、今思えば児戯に等しいものだったろうと思う。
「それは……」
「まさか、ないのか? あんた、音無とは……」
「な、ない……わけではありません……」
惣一郎は、響子がまだ性的に幼いと思って、そうしたプレイには腰が引けていた。
逆に響子の方は、性に関心を持ち始めた時期でもあったから、むしろ積極的にそういうことをしたがったものだ。
そうなると、惣一郎の方が引いてしまう。
響子は興味津々といった表情で惣一郎のものを見たり触れたりしたものだが、女性にそう出られると、照れや羞恥を強く感じる男性も多いのだ。
だから響子は、ほんの申し訳程度にフェラしただけで、ほとんど技術的なものは習得できていない。
もちろん口に射精されたこともなかった。
「なら出来るだろう。さあ」
「あ……」
頼広のたくましい腕が響子の細い手を掴むと、そのまま股間にまで持っていく。
「……!」
指先が「それ」に触れると、響子は驚いたように手を引こうとしたが、男の手が離さない。
やむなく響子は、膝を揃えて跪き、少し腰を持ち上げる格好で奉仕し始める。
まだだらりとだらしなく萎れていた男性器は、響子の手が触れた途端にぴくりと反応した。
響子はおずおずとそれを手にしたものの、「それ」と男の顔を何度も見比べながら、困ったような表情を浮かべていた。
こんなものをまともに見たのは、それこそ惣一郎のもの以来だ。
あの時は何だか「可愛らしい」なんて思ったものが、今回はとてもそうは思えなかった。
一言で言えばグロテスクである。
太いものがだらりと力なく萎れているそれは、どう見てもナマコにしか見えない。
男が、促すように頭を掴んだので、響子はやむなく顔を近づけていく。
「っ……」
ムッとするような独特の生臭さに、思わず顔を顰める。
あまりにも不気味な見た目にたじろいでしまったものの、何とかそれを口へ持っていく。
中に入れなければと思うのだが、本能的な拒否感からか口が開かず、唇にそれが当たった。
「っ!」
気色の悪い生暖かさに、つい顔を引いてしまったが、頼広のペニスは響子の唇に触れたことでまたピクッと反応し、少し大きくなってきた。
やっとのことで響子は口を開けると、ようやくそれを口に含んだ。
「ん……、んんっ!」
少し焦れたのか、男は響子の後頭部を掴んで、顔を前後に動かし始める。
「んっ、んっ、んんっ!」
響子は「わかった、ちゃんとするからやめて」とでも言うように、軽く頭を振って見せた。
男は案外素直に力を抜き、響子に主導権を渡した。
この未亡人が、頼広の男根をどう扱いのか興味があったのだろう。
「ん、んん……んむ……む……」
柔らかく、だらしないまでに垂れていたペニスは、とても響子の胎内で暴れ回ったあの暴力的とも言えるものと同じだとはとても思えなかった。
しかし、響子の口の中に入り、その唇と舌に触れるや否や、みるみる膨らみ、大きくなっていく。
むくむくと巨大化し、文字通り生き返ったようになる。
だらっとしたものの中に骨でも入ったかのように硬くなっていた。
その不可思議な変化を口の中で実感し、響子は驚きと恥ずかしさで頬を赤く染めた。
「ん、んんっ……」
響子の頬裏の粘膜や舌の暖かく濡れた感触を得て、頼広の肉棒はますます長大に成長していく。
今では口いっぱいに頬張っているそれは、だんだんと「肉の凶器」の様相を呈してきている。
これが、こんなものが今まで自分の中に突き通されて胎内をかき回し、子宮を突き上げるほどに暴れていたのだと思うと、響子の心に憎悪に近い感情が
込み上げてくる。
が、それと同時にまったく別の感情もあった。
これによって女は悦ばされ、ここから出てくるものによって子を孕むのだ。
そう思うと、当初感じていた穢らわしさが薄れ、ともすれば親愛さまで感じてきてしまう。
「ん……」
僅かに響子が腰を捩った。
もじもじと腿を擦り合わせるような仕草も交えている。
股間が少しぬめってきていた。
熱くもなっている。
響子は唖然とし、どう反応していいかわからず、ただ狼狽えた。
知らないうちに、膣が濡れてきてしまったのだ。
口いっぱいに熱く膨張した男根を持て余し、舌で申し訳程度に舐めている中で、響子自身の官能にも影響が出てきてしまっている。
それを頼広に知られたくないと、響子は口唇愛撫に集中し始めた。
「ん、んむ……むっ……んんんっ……ちゅっ……」
こんなもの、どうやっていいのかわからないので、響子はただひたすらに舌を絡めていった。
技術的には見るべきものはなかったが、それでも偶然に男の性感ポイントに触れることがあり、頼広は少し興奮したように響子の頭を両手で掴み、
髪を指に絡める。
まだ技巧をろくに知らぬ女に咥えさせている、しかもそれが響子なのだという満足感もあった。
亀頭の先やカリ首に、響子の熱く柔らかい舌が絡みつくと、頼広の腰に力が入り、ペニスは一層に膨れあがる。
「むううっ……!」
口の中でさらに大きくなっていく肉棒の凄さに、響子は眼をぱちくりさせて呻いた。
(す、すごい……どんどん大きくなっていくんだ……あ、また少し硬くなった……)
「……あまり上手ではないんだな。そんなに経験はないのか」
「……ん」
響子は少し恥ずかしそうに俯き、小さく頷いた。
「そうか。なら俺の言う通りにしてみてくれ。そのまま口を窄めて、唇で俺のものをしごくように顔を動かしてみるんだ。おっと、歯は立てるんじゃないぞ」
「んん……」
わかった、というように頷くと、響子は言われた通りに口を窄めようとするのだが、頼広のものが太すぎて、あまり窄める余裕もない。
普通に口を開いているだけでも、唇の端が切れそうになっているくらいだ。
響子は唇でそれを吸いながら、少しずつ顔を前後に動かしてみる。
ぎこちない動きではあったが響子なりに懸命であり、その仕草や苦悶にする美貌が男の官能に火を着けていく。
「んんっ!」
また一回り太くなった気がする。
響子は呼吸困難気味になりながらも、口いっぱいのペニスに舌を這わせ、唇でしごき続けた。
男も我慢できなくなってきたのか、自分からゆっくりと腰を使ってくる。
「んっ、んんっ!? んむ、あむ……じゅっ……むううっ」
頼広が腰を動かし始めると、それを押しとどめるように舌で亀頭を押し返す。
深くまで突かれると喉まで届いてしまい、じわっと涙が滲んでくる。
ペニスが響子の口から抜き差しされると、サオにたっぷりとまとわりついていた響子の唾液が垂れ落ち、その顎にまで伝って床にぽたぽたと垂れていく。
「んうっ! う、うんっ……んむうっ……んんっ……んぐ……じゅっ……んんっ」
頼広の腰の動きが次第に速まり、大きくなっていく。
響子の頭を掴んだ手も速度を増し、だんだんと激しくその顔を前後させていった。
その動きにつれて、形の良い乳房も重そうにゆさっ、ゆさっとたわむように揺れ動いている。
響子は頼広の股間に顔を埋め、その陰毛に頬や鼻先をくすぐられながらも、熱心に男根を愛撫していく。
その目元や頬が赤く色づいているのは、彼女自身の興奮も高まっていたからのようだ。
その証拠に、もう媚肉はかなり濡れてきていたし、乳首までもがしこり始めていたのだ。
「ん……」
頼広も小さく呻いた。腰の後ろあたりが熱く、そして重たくなってきた。
射精感が込み上げてきたのだ。
もう出そうと思って、響子の後頭部を強く押し、自分も激しく腰を打ち込んでいく。
「んんっ!?」
突如激しくなった腰の動きと、喉の奥まで届いてくるペニスの凄さに圧倒され、響子は息苦しさとある種の興奮を感じ、懸命になって頼広のものを
くわえ込んでいた。
「んっ! んんっ! んくっ、うむ、んじゅっ……ちゅぶっ……んんんっ……むううっ……むぐぐっ……!」
響子の頬が下腹部に擦れ、鼻先が沈み込んでくると、男の興奮は頂点に達した。
「くっ……、だ、出すぞ、いいな!」
「んんっ!」
響子は「いやいや」と、激しく首を振って拒絶した。
口の中に出されると思い、それだけはイヤだと強い意思表示をして見せた。
頼広はそれを見て残念そうな表情を浮かべたものの、すぐに諦めたようだ。
何度か激しく響子の顔に腰を打ち込むと、一声叫んでから響子の髪を掴み、その口からペニスを引きだした。
「ぷあっ!」
「くっ、出るっ!」
「!?」
まだペニスは顔の真ん前だ。
どうにか咥内射精だけは避けられたものの、これでは顔に浴びせられる。
響子は慌てて逃げようとしたものの、それは頼広が許さず、響子の髪を掴んだまま離さなかった。
ぐぐっと亀頭が膨らみ、もう逃げられないと思った響子は顔を背け、目を閉じた。
「いやっ……!!」
背けようとした顔は正面に固定されており、発射された精液は響子の美貌を穢した。
びゅるるっ、びゅううっ。
びゅくっ、びゅっ。
びしゃっと最初の一撃が右頬に叩きつけられると、すぐに二度目、三度目の射精が始まり、唇や眉間にまで精液を浴びせられた。
「やっ……!」
咥えた時に感じたよりもさらに強い臭気が鼻腔に入ってくる。
くらくらするような男性ホルモンの匂いと、精液の濃さ、そして量に、響子は呆然としていた。
(す……、すごい……こんなに……こんなに出るものなの?)
ぼんやりとした表情で顔に精液を受けながら、響子はセックスの後、頼広がペニスからコンドームを外していた時のことを思い出した。
コンドームの先がピンポン球のように膨らみ、重そうに垂れ下がっていた光景は忘れられなかった。
あれだけの量が今、自分に浴びせられているのだ。
(こ、こんなのを中に出されたら……絶対に妊娠しちゃう……。それに……、口に出されても、とても飲みきれるわけ、ない……)
たっぷりの子種を含んだ濃厚な液体は響子の頬にべったりとこびりつき、ぼたっ、ぼたっと塊となって床に落ちていく。
あまりに濃いせいか、顔のあちこちにかかった精液は、重力に逆らって垂れもせず、へばりついているのも多い。
響子は、頼広の射精の凄さに圧倒されている。
頼広がペニスを掴んで、亀頭を響子の顔に押しつけて、精液の残滓をなすりつけてきても、抗うこともせずに、ただ呆然としていた。
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響子の生理はその二日後は落ち着き、その翌日には早速以前のようなセックス三昧の生活となった。
大げさでなく、明けても暮れてもセックス、セックスであり、響子はまさにセックス漬けにされていた。
とはいえ、当初のような暴力的な無理矢理感はなく、諦めもあってか、仕方なく響子が頼広の性欲につき合う、という形であった。
しかし、そうした自暴自棄だけが原因だったということもなく、響子が頼広に対してほんの少しではあるが、心を開き始めたということも大きかった。
そして、響子は認めたくなかったのだが、だんだんと響子の身体が性的に成熟してきたということもある。
何しろ頼広のセックスは、過去の惣一郎とは段違いの濃厚さであり、女体の扱い方も比較にならぬほど巧みで、しかもペニスのサイズがまるで違っていた。
おまけに、日に5回や6回はセックスされるのが普通であり、多いときは10回ほども犯されることがある。
今さらながら、頼広の圧倒的な絶倫ぶりと、そして響子への執着心には驚かされた。
響子の膣が、その恐ろしいほどにたくましく、タフな男根に馴染み始め、それでセックスされることに強い快感を得るようになってしまっていた。
こんな「もし」はあり得ないが、もし惣一郎存命の際に頼広が今回の暴挙に出ていたとしたら、自分はどうなってしまっただろうと響子は考える。
惣一郎への募る思いと申し訳なさから、命を絶ってしまうだろうか。
それとも、愛おしい惣一郎を忘れられずにいながらも、頼広の強烈なセックスと長大な肉棒に溺れてしまうのだろうか。
そこまで考えて、響子は軽く頭を振った。
今さら考えても詮無いことだ。
テーブルの椅子に腰掛け、ぼんやりとそんなことを考えていた響子は、何となく手持ち無沙汰で立ち上がった。
頼広は、週に一度の買い物に出かけている。
30分で戻ることもあるが、スーパー一軒ではすまかなった場合、一時間以上かかることもあった。
その間、響子はまるですることもなく、テレビでも眺めているしかない。
響子が首を回して部屋を見渡すと、ガチャリと小さな金属音がした。
まだ首輪を嵌められているのである。
ただ、頼広は外出する時でも、響子を緊縛したりすることはなくなっていた。
といって、まだ完全に信頼するには至らないらしく、鍵付きの首輪を嵌めて拘束はしていた。
チェーンの長さは2メートル近くあったので、玄関や窓には届かなかったものの、トイレやキッチンなど、ほとんどの用は足せるくらいには行動できた。
「……」
ふと洗濯機の横にあった洗濯カゴが気になった。
汚れ物が溜まっている。
前回、頼広が洗濯したのは生理の時だったから、もう三日は前になる。
当然、頼広がいつも洗濯してくれていたのだが、響子は自分の下着を男性が洗うことについて、何となく抵抗があった。
若い女性なら、誰だってそうだろう。
男の下着と自分の洗濯ものを一緒にされることを嫌がる女だって少なくない。
響子はそこまでいかなかったが、それでもよく知らない男に使用した下着を扱われるのはいやである。
ちょうど良い機会なので、響子は自分で洗うことにした。
自分用の洗濯かごから汚れた下着を取り出して洗濯機に入れる。
洗剤を入れ、スイッチを入れようとして、頼広が使っているカゴにも、彼の下着やTシャツなどがあるのに目がついた。
「……」
どうしようか、とも思ったが、結局、一緒に洗濯してあげることにした。
どうせ自分のを洗うのなら同じことである。
彼の汚れ物も洗濯機に入れ、スイッチを入れた。
洗濯機が唸りだし、動き始める。
カゴを重ねて置こうと持ち上げると、スーパーのレシートが丸まって転がっていた。
それを拾ってゴミ箱に入れたが、そのゴミ箱の脇にふわっとした埃が溜まっているのが見えた。
独身男性の部屋にしては小綺麗に片付いていると思ったものだったが、やはり家事のプロでもある家庭の主婦や響子などから見れば、まだまだ甘いのだ。
きょろきょろと周囲を眺めると、壁際に掃除機が立てかけてある。
どうせ洗濯が終わるまでは暇なのだ。
ついで掃除もしておこうと思い、響子は掃除機に手を伸ばした。
コンセントが壁際でソケットを嵌めるのに苦労したが、響子は早速部屋掃除を始めた。
洗濯機や掃除機の唸りが、響子に日常を思い出させてくれる。
狭い部屋だから、あっという間に掃除機はかけ終わった。
このまま終えるのも中途半端な気がして、雑巾を手にすると水道で濯ぎ、雑巾がけまで始めてしまった。
こうして身体を動かして何かしていた方が気も晴れるというものだ。
まして響子は「趣味は家事」と言っているくらいだから、掃除や洗濯、料理などはちっとも苦にならないのだ。
響子の動きも、心持ち軽くなっている。
雑巾がけを終えても、まだ頼広は戻って来なかった。
いつ帰ってくるかは知らされていない。
響子の家事欲がうずうずしてくる。
もう、ついでだ。
食事の用意もしておこうと思った。
この期に及んで、響子が自殺することもあるまいと思ったのか、包丁も手の届く範囲にあった。
ロープならともかくチェーンをそれで切断は出来ないし、革ベルトもほとんど首に密着しているので、これを切るのはケガ覚悟でないと無理だろう。
買い物に出たくらいだから、どうせ冷蔵庫にはあまり食材は残っていないはずだ。
在庫整理の意味で、冷蔵庫の中にあるもので簡単なものを作ればいい。
響子は、ジャーに残っていたご飯でチャーハンを作ることにした。
具は、冷蔵庫にあった使いかけのハムと半分に切られていたタマネギと卵である。
あとは、これも半分になっていたキャベツとニンジン、パックに少し残っていた豚バラ肉で野菜炒めを作ってみた。
味噌汁も作ろうと思ったが、ダシを味噌は見つかったものの、具らしい具はなかった。
辛うじて乾燥わかめがあったので、それを使うことにした。
その間に洗濯機も止まり、響子用と頼広のカゴに洗い物を分け入れた。
何だか少し楽しくなってきた。
響子は「日常」が帰って来た気がした。
調理が終わり、野菜炒めとチャーハンを盛りつけている時に、頼広が帰って来た。
「あ……、お帰りなさい……」
「……なんだ?」
頼広はきょとんとしていた。
響子が立ち働いているのにも驚いたが、「お帰りなさい」と言われたことにも驚いた。
当たり前だが、今までそんなことを言われたことはなかったのだ。
何だか良い匂いがしてくる。
頼広は鼻をヒクヒクさせていた。
「……何か作ったのか」
「あ、はい……」
響子は少し恥ずかしそうにはにかんだ。
「余り物を整理するつもりで……、あ、簡単なものですから。それと……」
「まだあるのか」
「はい……。お洗濯もしておきました。私、ベランダに出られませんので、カゴの中に畳んであります。すみませんけど、あとで干していただけますか……?」
「……」
「あ、ついでにお部屋のお掃除もしちゃいました……。あの、すみません、勝手なことをして……」
頼広は黙って部屋に上がり、テーブルの下に買ってきたものを無造作に置いた。
「ありがとう」
「……え?」
「ありがとう。俺も男なんでな、掃除なんかはまめにやる方だが、料理だの洗濯だのはあまり好きじゃないんだ。やってくれて感謝してる」
「……」
「それに、まさかあんたがこんなことをしてくれるとは思いもしなかったよ」
「……そうですか」
頼広はそう言ってテーブルの自分の椅子に腰を下ろした。
野菜炒めにチャーハン、味噌汁と、確かに手の掛かったものではないが、やはり男の自分が作ったものよりも洗練されているように思う。
盛りつけも綺麗で、ただドサッと器に入れただけの自分とはえらい違いである。
何にもまして、響子が頼広のために作ってくれたのが嬉しかった。
照れ隠しなのか、頼広はぶっきらぼうに言った。
「何を突っ立ってんだ。あんたも座れよ、食べるんだろ?」
「あ、はい」
「それと、悪いんだが、これな、後で整理して冷蔵庫に収納しておいてくれ」
頼広はそう言って、レジ袋に入った食料品を響子に渡した。
「何しろ、俺は適当に突っ込んでおくだけだからな、冷蔵庫を開けると雪崩になることがあるんだ」
「まあ」
響子はクスリと笑った。
──────────────────────
響子にとっても、そして頼広にとっても、ひさしぶりの充実した食事となった。
食べた料理の内容ではない。
その雰囲気が、であった。
まだぎくしゃくしてはいたが、それなりに会話のある食事となったのは初めてのことだった。
食事を終え、響子が後片付けをやると宣言したので、頼広は響子が洗濯してくれた洗い物をベランダに干した。
何となく視線を感じて隣を見ると、あの不愉快な男が薄笑いを浮かべてこちらを見ていた。
とことん癪に障る男だ。
ぶちのめしてやろうかとも思ったが、どうせ覘きや盗み聞きくらいしか出来ぬ、つまらない男だ。
放って置けばいい。
あれ以来、頼広も注意しており、壁の物音には敏感になったし、サッシを廊下側のサッシを開けることはなくなった。
干し終えて部屋に戻ると、響子が食器を洗っていた。
「あ、もう少し待って下さい。すぐに終わりますから……」
向こうを向いたまま響子はそう言った。
響子はショーツとブラの下着だけである。
スタイル抜群の美女が、そんな格好で台所仕事をしているのを見ると、頼広の劣情がむらむらと込み上げてきた。
ぷりんとしたヒップが小さな白い生地に隠れているのが、何とも生々しい。
さっきまでのほのぼのとした時間の記憶が薄れ、響子に対する愛情がそのまま肉欲となって頼広のペニスにたぎっていく。
無言のまま頼広は響子の背中に貼り付いた。
「あっ」
響子が驚く間もなく、頼広の手が伸び、ブラを捲り上げてその乳房を揉みしだいてくる。
強く揉みしだかれ、乳首を指でこねくられると、響子も「んっ」と軽く声を上げて、顎を反らせた。
その顎を後ろから掴むと、頼広は綺麗に伸びた白い首筋に、ねっとりと舌を這わせた。
「ああ……」
「いいだろ?」
「で、でも……、あっ……、ま、まだ洗い物が……ああ……」
「そんなのは後でもいい。来い」
「あっ」
全身性感帯と呼んでもいい響子だが、その中でも特に鋭敏な乳首を責められ、心ならずも甘い声で喘いでしまう。
この男に心を許したつもりはない、無理に犯されるのはもう仕方がないが、流されるように抱かれるのはイヤだ。
そう思うのだが、胸を揉みしだかれ、首やうなじを舐められていると、ジーンとした熱い痺れが子宮にまで到達してくる。
膝ががくがくと震えて立っていられなくなり、ガクンと膝を折ってしまう。
頼広は響子の両の乳房を左右の手で掴み、そこで身体を持ち上げてから、引き摺るようにして布団まで女体を運んでいく。
ごろりと布団に転がされると、そこに染みこんだ男の匂いと精臭が、イヤでも鼻腔に入ってくる。
男性ホルモンを粘膜に感じてしまうと、女体はそれに反応し、乳首はしこり、膣は潤んでくる。
否応もなく、響子の肉体は性交の準備に入っていった。
「ちょっと待ってろ」
「……」
男はそう言って、いったん響子から離れた。
また犯される。
さっきまでの、仮初めだが微笑ましかった時間がウソみたいに思えた。
頼広はすぐに戻ってきたが、その手には緑色のビンが握られている。
磨りガラス製のビンに入った飲み切りサイズの日本酒だった。
300ccほどの内容量である。
「お酒……?」
「ああ。だが、俺が飲むわけじゃない」
「え……、あ、何を……んんっ!」
頼広は、酒を垂らすと手のひらでそれを受け、その手で響子の乳房を揉んできたのだ。
酒を擦り込むようにして、ぎゅっと乳房を握りしめる。
「ちょ、ちょっと、ああっ……」
度数は15くらいだとはいえ、アルコールには違いない。
肌に塗り込められると、すーっとそれが染みこんでいくのがわかる。
特に乳首は、酒を擦り込まれることによりジンジンと疼き、たちまちコリコリになっていく。
乳房全体に酒を塗るように、鷲掴みでたぷたぷと揉み込み、尖ってきた乳首をつまみ上げて、その根元を強くこねる。
「や、やっ……そんな、なんでこんなこと……うっ……」
「けっこう、いいだろう? ローションみたいにぬるぬるした気持ち良さじゃないが、アルコールが染みこんで身体が燃えてくるぜ」
「そんな……ううっ……」
乳房に直接酒を垂らし、それを舐め取るように舌を這わせると、響子は「くっ!」と呻いて胸乳を反り返らせた。
乳房の輪郭になぞるように、大きく優しく舌先を使うと、響子は呻きながらもうっとりとした顔になってくる。
乳輪ごと乳首を口に含み、思い切り強く吸われる。
「んんっ!」
ちゅううっと強く吸われてから口を離すと、ちゅぽんっと音をさせて乳首が跳ねる。
「あうっ!」
唾液と酒でぬらぬらになった乳首を舌先で潰すように押されると、むず痒いような強い痺れとともに名状し難い快感が鋭く突き抜ける。
「ああ……」
胸の快感にばかり気を取られていると、頼広はいつの間にか股間まで責めてきた。
太い指で媚肉をなぞると、その割れ目を押し広げて中をさらけ出した。
響子はハッとしてもがいたが、頼広の膂力には敵わず、腰が押さえつけられてしまう。
「ま、待って、待ってくださいっ……、まさか、そんなところに……」
「その通り」
「ひっ……、いやっ!」
清酒の冷たい感触が、艶やかに繁った響子の恥毛に広がっていく。
そのまま小さな流れを作り、割り拡げられた媚肉の内部に侵入すると、膣にまで到達した。
「うっ……ああ……くっ……」
ズキンときた刺激に、響子はクッと顎を反らせた。
膣内にまで染みこんでいく酒が、内部の粘膜をピリピリと痺れるように刺激する。
カッとするようなものではなかったか、じわじわと浸透するように気怠く、熱が膣内に広がっていった。
「や、やあ……あう……ひうっ!」
響子は腰を揺すり立てて叫んだ。
頼広は、酒で濡らした指でクリトリスを摘んで軽く擦ったのだ。
酒が染みこみ、擦り上げられる敏感な肉芽はたちまち熱く灼ける。
クリトリスと膣の内壁にアルコールが浸透し、そこを愛撫されると、膣の奥にある子宮までがジンジンと痺れてきた。
それどころか腰全体がカッカと燃えるように熱くなっている。
腹の底──子宮の奥からズキズキと妖しい疼きが込み上げてきた。
だいぶそこが練り上がってきたのを見計らって、頼広は舌を大きく使って媚肉全体をべろり、べろりと舐め上げてくる。
そろりと舐めてくる男の舌のぬめぬめした、あるいはざらざらした感触が、響子の性の中枢へ直接刺激していく。
頼広の舌が蠢くたびに、その刺激の強烈さで響子はつんざくような悲鳴を上げる。
「ひぃっ! あ、だめっ……ううっ……いっ……きゃあっ……や、やめ……くううっ!」
「ここがそんなにいいのかい。なら、もっと舐めてやろう」
「だめっ! うひぃっ……ひあっ!」
頼広は、暴れる響子の両脚の根元をぐっと押さえつけ、大きく開脚させてから、その中心を盛んにクンニしていった。
いっぱいに伸ばした大きな舌で、べろり、べろりと響子の割れ目の奥やクリトリスを舐め、ねぶりあげる。
「くあっ……いっ……ううっ……いあっ……ひっ……」
またあの男が聞いているかも知れない。
そう思って、必死になって声を押さえ込もうとするのが、堪えても堪えてもその口から漏れ出てしまう。
もはや手で口を塞ぐことすら思いつかないようで、その手は鋭すぎる快感を我慢するためにシーツをぎゅっと握りしめるばかりだ。
はしたない声を上げまいと我慢しても、どうにもならない。
剥き出しになった官能の神経へ直接与えられる感覚に、響子を白い裸身を仄かに染め、全身に汗を滲ませてのたうち回っている。
その汗に濡れた匂うような熟れた女体に、男の舌や手が這い回り、くぐもった喘ぎ声を上げさせていた。
武骨な指が、汗でぬらつく柔らかい乳房に食い込み、乳首をこね上げている。
同時に、頼広が鼻先でクリトリスを潰しながら、尖らせた舌先で膣口へ挿入し、膣内部を舐め回すと、響子はたまらず絶頂した。
「ひっ、ひっ……んむむうううっっ……!」
その瞬間、響子はガクンガクンと大きく肢体を跳ねさせた。
頼広の顔を乗せたまま、ぐうっと腰が反り上がった。
そして、全身が萎えたように力が抜け落ち、響子はドッと布団に腰を落とした。
時折、四肢をぶるっと小さく痙攣させ、気をやった余韻に酔っている。
「……いったな、あんた」
「あ……」
恥ずかしい事実を指摘され、響子は羞じらいで小さく身を縮めた。
(い、いっちゃった……。こんなの、ひさしぶり……、ううん、もしかしたら初めてだったかも……。この人にいかされちゃったんだ、私……)
最初のレイプでは快感を得るどころではなかった。
目の前で裕作に見られていることを知って、背徳感と連動して快楽が疼いたのは確かだったが、それにしても、とても「いく」ところまではいかなかった。
ここに連れ込まれても同じだった。
いくら犯されても苦痛なだけで、男に対する怒りと、どうにもならない諦めで、ただその身体を奪われたというだけのことだ。
しかし、頼広のことを知っていくにつれ、少しずつ状況は変化した。
親近感が湧くほどではないが、彼の人間性に触れていくと、次第に身体が打ち解けてくるのを感じていた。
加えて頼広のセックステクニックや、響子自身の感じやすさも手伝って、この頃でははっきりと快楽を感じていたのだ。
それでも、響子の貞操感の強さもあって、どうにか絶頂してしまうことだけは耐えていた。
だが、その努力も虚しく、とうとういかされてしまったのだ。
しかもセックスまで至らず、愛撫されている段階でだ。
響子は、自分の身体のへの情けなさと、惣一郎や裕作に対する申し訳なさ、背徳感で押しつぶされそうになる。
(ご、ごめんなさい、惣一郎さん……私、そんなつもりじゃなかったのに……。五代さんも……許して……)
思いもかけぬ絶頂と、そうなってしまったことで亡夫を裏切ってしまったという衝撃もあり、響子はぐったりしていた。
それでも、まだ身体はオルガスムスの余韻が残っているようで、時折、手や足がピクッと痙攣している。
頼広は、気をやった響子の悩ましい美貌を眺めながら乳房を軽く揉んでいた。
「なあ」
「……」
「あんた、俺を呼ぶ時には名前で呼んでくれないか」
「名前……ですか?」
「ああ。俺もあんたを……」
男は柄にもなく少し照れたように視線を逸らせていった。
「俺もあんたを「響子」と呼ぶ。だからあんたも俺の名を呼んで欲しい」
「……」
響子は、だんだんと頼広との関係が深まっていくように感じていた。
名前を呼ぶことで親しみが湧き、彼に感じてた憤りや恨みが薄まっていく。
「俺の名は知ってるな?」
「鷹小路……さん」
「そうだ。だが、出来れば下の名前で呼んでもらいたいな。頼広、と」
「……」
「まあ、すぐには無理か。最初は名字でもいい。いいな、響子」
「……」
頼広は返事の出来ぬ響子の肩口を掴むと、ごろりと反転させた。
それまで布団に潰されていた響子の臀部がむちっと露わとなった。
殻を剥いたゆで卵のように艶々と白く、シミなどどこにもない見事な尻だ。
大きいだけでなく、ちっとも垂れていないだけあって、谷間の切れ込みも神秘的なほどに深かった。
男がそこを撫で回すと、響子は僅かにびくっと反応しただけで、されるがままになっている。
しかし、その谷間をぐいっと大きく割られると、さすがに慌てて半身を起こす。
「やっ……! そ、そんなとこ見ないで!」
「よく見えるぞ。響子のいったばかりのマンコも尻の穴もな」
「そっ、そんなこと言わないで……」
「ここも俺は好きなんだ。響子の全身を愛してるからな」
「こ、ここって……ああっ!」
頼広はアナルに鼻がつきそうなほどに顔を寄せてから、手にした酒をまた垂らした。
ぴっっちりと引き締まった肛門に、清酒が小さな滝となって注がれていく。
「やっ、やあっ! くっ……、し、沁みる……ああっ!」
日本酒のアルコール分が粘膜に染みこみ、響子の肛門はさらにきゅっと引き窄まった。
粘膜へ直接アルコールが浸透し、途端にカッと熱くなってくる。お尻はいやと藻掻く響子の尻を押さえ、頼広は口に酒を含むと、直接そこに口を押しつけてきた。
「ひっ!?」
そして唇を窄ませるように尖らせると、ぴゅっと腸内に酒を噴出させた。
まるで清酒で浣腸されているような感覚に、響子は思わず尻を捩って男を振り払おうとした。
「やっ、だめ! そんな……き、汚いです、そこ……やめて!」
「響子の身体に汚いところなんてないさ。それに、俺に何か言う時は名前を呼べと言ったろう。呼んでくれなきゃやめないぞ」
頼広は、悲鳴を上げて逃げようとする響子を押さえつけ、なおも腸内で口移しで酒を注ぎ込んだ。
それだけでなく舌先まで挿入し、腸壁に酒を擦りつけるように舌で舐め回した。
男の大きな舌が入り込んだだけでなく、そこをかき回されるような動きによって、響子のアヌスは少しずつほぐされ、柔らかくとろけていく。
「あ、あ……やめて、そんな……お願い、お尻は……お尻はいやよ……あむむ……」
男の舌と唇で、身体の中でもっとも恥ずかしい箇所を責められる。
響子は、その羞恥と恥辱で快感どころではなく、背筋に悪寒すら走った。
「あ、ああ……やめて……」
「頼む時はどうするんだっけ?」
「……た、鷹小路、さん……お願いです、お尻は許してください……ああ……」
響子は掠れる声で悲鳴を上げながら、もぞもぞと尻を振って嫌がっている。
しかし肝心のアヌスは頼広の丹念な愛撫とアルコールのせいで、もうすっかりほぐされてしまい、徐々に身そこの熱が全身にわたって広がっていった。
身体の芯が爛れてくる。
どうしたわけか膣が濡れ始め、子宮までがジンジンと疼き出すのだった。
「あ、あう……」
執拗なまでに舌で愛撫され、腸内まで舐め回され、響子の肛門はふっくらと盛り上がるようにほぐれていた。
辛そうにひくひくと蠢き、呼吸でもするかのように小さく開いたり、また閉じたりを繰り返している。
「んんん……あは……もういや……た、たまんない……あああ……」
響子はシーツに顔を埋めて呻いた。
額の汗をシーツが吸い取り、手は何かを掴もうとするかの如く、ぎゅっと強く握りしめられている。
「うう……あ、ああ……も、もう……もういやよ……」
呻き声が甘くなり、いつしか喘ぎとなっていた。
響子は自然と腰を持ち上げ、頼広の顔に突きつけるようにしている。
響子自身、そうしている自覚はなかったが、その妖しい感覚を、響子の官能が「快楽」と捉えだしたのである。
「やめて……もうやめて……あう……」
もはや完全に喘いでいる響子を見ながら、頼広はそっと指を挿入してみる。
人差し指は実にあっさりと飲み込まれてしまい、根元まで埋まった。
一度アヌスを犯しているとはいえ、ここまで簡単に挿入できたのは、やはり清酒を使った事前の愛撫のせいだろう。
その指を二本にすると、さすがに響子は顔を顰め、苦痛を訴えた。
「あうっ、痛い……もうしないで……お尻は、ああ……んむ……」
最初だけは引き裂かれるかのような痛みが走ったが、響子のアヌスは驚くべき柔軟さで日本の指を受け入れていた。
頼広は人差し指と中指を絡ませ、その中を抉る。
響子の肛門はにゅううっと広がり、皺の伸縮性と柔軟性を存分に見せつけていた。
といって緩いわけではなく、指の根元をきゅっと食い締めているのだ。
「やめて、お尻がきつい……た、鷹小路さん、お願いです……ああ……お尻は……お尻だけはしないで……あは……」
「これだけ反応してれば立派なもんだよ、響子。ほれ、これはどうだ?」
「んんっ……い、いや、お尻がねじれちゃいます……た、たまらない、気が狂いそうなんです……あああ……」
「声はもう蕩けてるがな。よし、じゃあ次はもっと太いのを入れるからな」
「あう……」
ぬぷっと指を抜かれると、響子はぶるっと震えた。
尻はまだわなないており、時々、背中がびくっと弾むように痙攣する。
その尻たぶがまた大きく開かれると、肛門にぴたりと亀頭が押しつけられた。
それがペニスだとすぐに覚った響子は、慌てたように頼広に振り返った。
「ま、待って、鷹小路さんっ……ま、まさか、またお尻を……」
「そうさ、響子の尻を犯すんだよ」
「いや、いやです、そこはっ……! お願い、やめて! す、するなら前で……」
「前? もちろんマンコも犯してやるさ。だが、今はここだ」
「やあっ……、ど、どうしてそこを……」
「言ったろう。音無でされ、いや、あの時にいた若造でさえ、まだ響子のここは手つかずだったんだろ? そこを俺のもの……、いや、俺だけのものにするのさ」
「そんな……」
「ここであんたの身体を作り替えちまうのさ。俺専用にな」
「つ、作り替えるって、そんなこと……」
(私の身体を作り替えるって……、あの人……惣一郎さんだけのものだった私の身体が、この人に作り替えられる……)
響子はゴクッと生唾を飲み込んだ。
(そうなったら……、本当にそうなってしまったら……、私……私、本当にこの人のものになってしまう……)
頼広は、ぐっ、ぐっと亀頭でアヌスをマッサージして響子に悲鳴を上げさせながら言った。
「そのうち、響子のここが俺のものを覚えてくるかも知れないな。尻の穴も腸の中も、俺のチンポの形になるまで犯してやろうか」
「そっ、そんなこと言わないで、恥ずかしいっ……あ、だめだめ、そこだめっ……あ、あ……あはああっ!」
有無を言わさずねじ込まれ、響子は激しく動揺し、大声で喚いた。
挿入した頼広は驚いていた。
中の暑さは想像以上で、粘膜と腸壁も、ペニスを迎え入れるかのように絡みついてくる。
太すぎるものを突き込まれ、響子は唇をわななかせながら呻いた。
「う、動いちゃだめ、ああ……き、きつい……お尻がきつい……ん、あ、あ……んんっ!」
響子の懇願とは裏腹に、頼広は腰の動きを強めていく。
腸液も充分なようで、抜き差しされるたびに、ぬぷっ、ぬぷっと粘ったいやらしい水音をさせている。
「や、やめ……あは……はあ、はあ……うんっ……あ、あう……」
「声が変わってきたぞ、響子。もうアナルセックスを覚えたのか」
「ち、違……、あああ……」
「気持ち良いなら我慢することはない。それが、俺のものになったってことなんだからな」
「が、我慢なんか、ああ……し、してません……うあっ……ふ、太い……んんっ……」
響子は唇を噛みしめて声を抑えていたが、その唇が少しずつ緩み、小さく喘ぎ始める。
熱い腸内をかき回す、太くて硬い肉棒を思うと、響子は頭がくらくらしてくる。
口にくわえさせられた時、唇の端が切れるかと思うほどの太いものが、よりにもよって肛門に入っているのだ。
そんな恐ろしい、そして恥ずかしいことをされているというのに、響子の声が熱く甘くなり、もう押しとどめられなかった。
「あ、だめ……ううん……あ、はあ、はあ……んっ……んあ……うんっ……」
ピストンに合わせて声を上げ始めている。
反応しているのは明らかだった。
強張っていた尻たぶが緩み、代わりに肛門がきゅうきゅうと収縮していく。
ペニスが引き抜かれると、ずるずると腸内粘膜まで引き摺り出され、押し込まれると、巻き込まれるようにしてまた腸内に戻っていく。
精一杯に押し広げられて太い肉棒をくわえ込んだアヌスは今にも引き裂けそうに見えるが、爛れたように膨らみ、切れて出血している様子もなかった。
「んっ、んあ……んあ……はあ、はあ……うんっ……んくっ……あはっ……あううっ」
尻を突かれると、響子の豊かな黒髪がふわっと宙を舞う。
きつくて苦しいながらも少しずつ快楽を得てきたようで、呼吸するタイミングもわかってきたらしい。
ずぶっと深くまで入れられると息を吸って「んんっ」と息を詰め、抜かれると「はあっ」と熱い息を吐いた。
「や、こんな……こんなの、ウソ……あああ……」
「なんだ、やっぱり気持ち良くなってきたのか」
「……」
響子は弱々しく首を振って否定したものの、その口からは拒絶の言葉が出なかった。
噛みしめられていた唇が開き、熱気を帯びた甘い吐息が漏れ出てくる。
響子が馴染んだと知ると、頼広はその尻たぶをいっぱいまで押し広げ、腰が密着するほどに響子の尻に押しつけた。
あまりの深さに、響子は目を剥いて呻く。
「んんんっ! だめっ、ああっ……ふ、深い、深すぎます……あ、そんな奥まで……あ、あううっ、激しいっ……!」
突如、尻を潰すかのようにパンパンと激しく腰を打ち付けられ、響子は何度も首を左右に振りたくった。
大きく首を反り返らせ、黒髪が左右に分かれて白いうなじがはっきりと見える。
すらっと伸びた綺麗な背筋には汗が浮き、妖艶さを醸し出していた。
豊満そのものの臀部は男のたくましい腰に潰され、柔らかそうにひしゃげているが、男が腰を引くと元通りの形状になる。
見事なほどの弾力だった。
そして激しく突かれるたびに、重たげにたぷたぷと揺れる乳房からは、未亡人の色香が強く匂ってくる。
そのすべてが、後ろから犯す頼広から見て取れた。響子の性反応と、一層に強く締めつけてくるアヌスの収縮に堪えきれず、頼広は思い切り腰を打ち込んだ。
「くっ、響子、もう出すぞ!」
「い、いやだめ、あ、あはっ、うんっ、うんっ、うんっ、ひあっ、激しっ、激し過ぎますっ、ひぃっ!」
「響子っ!」
「うはああっっ!!」
頼広の腰が響子の柔らかい臀部を押しつぶし、めり込んだように見えるまで突き込まれた。
その肉棒が直腸の深いところで腸壁にぶち当たり、そこで射精された。びゅるるっと勢いよく精液が腸壁に当たる感覚に、響子は背骨が折れたかと思うほどに仰け反った。
「んぐううううっ!!」
ガクン、ガクンと大きく二度ほど仰け反り、頼広のペニスを食い千切らんばかりに締めつけた。
射精が止まるほどに尿道が締めつけられ、頼広も思わず苦鳴を上げたほどだった。
しかし、強烈な締め付けが緩むと、今度は、きゅうっ、きゅうっと断続的な収縮となり、まるで男の射精を促すかのようなリズムに変わっていく。
頼広の濃い精液が、びゅくびゅくと腸内に吐き出されていく。
その熱さと濃さを腸管で感じ取り、響子は小さく痙攣しながら呻いた。
「あ、あは……で、出てる……た、鷹小路さんのが私の……私のお尻の中に……んんっ……」
たっぷりと射精し終えると、頼広がペニスを引き抜いた。
散々内部を抉られ、かき回されたアヌスが口を閉じる前に、響子は腰砕けとなって、がっくりと布団に突っ伏した。
小さく口を開けたままの肛門はひくひくとわななき、とろりと精液を逆流させている。
しかし、締まりの良いアヌスらしく、まるで形状記憶しているかのように、元通りの引き窄まった清楚な形となっていた。
それを見ているだけで、ついさっき射精したばかりの男根が、見る見るうちに力を得て、硬くそそり立っていく。
頼広は、よく張った響子の腰骨に手を掛けると、今度はまた仰向けに寝かせると、その上へ覆い被さっていった。
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