肛門を犯されて達してしまったショックも醒めやらないまま、響子はその後、再び犯された。
媚肉にたくましいペニスを挿入され、散々喘がされた挙げ句、気をやらされた。
必死になって口をつぐみ、その瞬間を告げることだけはなかったものの、もう誰の目にも絶頂したとわかるほどの崩れ振りだった。
響子から抜き去った頼広がコンドームを処理していると、激しくドアが叩かれた。

「……!!」

響子はたちまち我に返り、脅えたように頼広を見た。またあの覗き男ではないのか。
あるいは、響子の声があまりに激しかったせいで(この時のセックスでは、響子は声を抑える努力をほとんどしなかった)、さすがに隣近所から
苦情が来たのではないか、とも思った。
後者であれば、いたたまれないほどの羞恥であり、響子は頼広の背に隠れるようにして、身を固くしている。

「……」

頼広は響子を見てから、ゆっくりと立ち上がった。
響子は、近くに丸まっていた毛布で身体を隠し、押し入れの中に逃げ込んだ。
首輪はまだついているものの、それくらいの長さはあった。

頼広が警戒しながらドアを開けると、部屋の中へ数人の男が飛び込んできた。
響子が押し入れに飛び込み、その戸を閉める直前に頼広が悲鳴を上げた。

「ぐあっ!」

頼広は両手で顔を覆うと、そのまま数歩後じさった。
その隙に……というより、倒れかかる頼広に、ふたりの男が襲いかかった。

「ぐっ! うぐっ!」

男たちは顔を押さえる頼広の腹を殴り、脚を蹴飛ばして突き転がした。
もうひとりの男が廊下の外を警戒しながら、ドアを内側から閉めた。激しく咳き込みながら床に転がった頼広を、ふたりの男がさらに暴力を加える。
倒れ込んだ頼広の腹を蹴り、頭を守っている両手の上からもキックを食らわせている。
頼広も喧嘩馴れしているのか、転がり、逃げながらも、盛んに手足を繰り出して抵抗しているが、何しろ相手が見えないので滅多に命中しなかった。

頼広は目を攻撃され、一時的にほとんど視力がなかったのである。
三人の男たちは、倒れた頼広をめちゃくちゃに蹴りつけている。
背中と言わず、腹と言わず、頭と言わず、あらゆるところを攻撃の対象とした。
見かねた響子が思わず飛び出してくる。

「やめて! ひどいことしないで!」

この時響子は、「あの時」、五代を蹴りつける頼広に対して吐いた言葉と同じことを言っているのだが、そのことには気づかなかった。
響子を見た男たちは歓声を上げた。

「ひょお! おいおい、いきなり素っ裸だぜ!」
「おまえの言った通りじゃねえか、本当に女がいやがった」
「しかも大した美人ときたもんだ」
「っ……!」

響子は、頼広に何度も抱かれたばかりの身体そのままの全裸であることにようやく気づき、慌てて落ちている毛布を拾った。
すばやく隣部屋の男──相原が響子に取り付き、その毛布を奪った。

「きゃああっ!」

響子の悲鳴を聞きつけた頼広が、苦しい息の中で叫ぶ。

「きょ、響子……!」
「お、この野郎、まだ意識があるな」
「おとなしくそこで寝てやがれ!」
「ぐあっ!」

あとのふたり──井田と上坂が、半死半生で半身を起こした頼広へ、再度パンチとキックを叩き込んでいく。
三人は、身長こそ頼広と大差ないが、筋肉質の頼広とは比較にならぬ体格だ。
しかし不意を突いたことと、目つぶししたことで、この大男を三人がかりでKOしたのだった。

頼広は、ドアを開けるなり、その顔にコショウを浴びたのだ。
彼らは、テーブルコショウを使って頼広の目を封じたのである。
目に焼けるような猛烈な痛みを感じ、頼広はもんどり打った。
目玉が灼け爛れるような苦痛で、涙がボロボロと零れて止まらない。
もちろん視力は一時的になくなった。

こうなれば、いかに体力差があろうとも、どうにもならない。
しかも三対一なのだ。
頼広は呆気なく倒され、苦しみ藻掻くところを、部屋にあったロープで縛り上げられてしまった。
それまで頼広が響子を緊縛するのに使っていた麻のロープである。

「鷹小路さんっ……、いや、離して!!」

思わず駆け寄ろうとした響子の肩を、相原と井田がぐっと押さえ込んだ。

「響子! きさまら、響子から手を離せ!」
「やかましい、このくたばり損ないが!」
「ぐおっ!」

気力で響子へ這い進もうとする頼広の背中を、上坂が思いきり踏みつけた。
さらに首筋を蹴飛ばし、肩口を蹴り飛ばした。
頼広の苦鳴を聞き、響子も悲鳴を上げる。

「やめて! 鷹小路さんにひどいことしないで!」

そう叫んで井田と相原の手を振り払った響子は、裸であることも忘れて頼広に駆け寄る。

「おっと」
「きゃあっ」

響子の手が頼広に触れる直前で、相原は首輪のチェーンを掴んで引き戻してしまった。
頼広に腕を伸ばしながらも、響子はドスンと尻餅を突き、そのままずるずると引きずられて行く。

「鷹小路さんっ、し、しっかりして……!」
「おらおら、こっちへ来な」
「や、やめて、触らないで!」

相原は響子を背中から抱きしめ、相好を崩している。
響子の細い顎を掴んで、自分の方へと向かせようとするものの、響子は激しく顔を振った。

「こんな首輪なんかつけられてるところを見ると、どっかから攫われてきたのか?」
「……」

井田と上坂も響子の顔を覗き込んで言った。

「どうも相原の言った通りみたいだな。状況から察するにこの女、あの野郎に部屋で飼われてたんだろうな」
「だろ? 鷹小路なんぞに女が出来るわけがねえ。しかも……」
「いや!」

相原は響子の顎を掴んで、その顔を見つめる。

「こんな美人が、あんな野郎に惚れるはずもねえんだ。そうだろ、お嬢さんよ。それとも奥さんかな?」
「……」

響子は男たちから目を背けた。
三人は卑猥な笑みを浮かべてにやにやと響子の裸身を鑑賞している。

「首輪までつけられて、くくっ。差し詰めセックス奴隷ってところか。攫われて連れ込まれて散々犯されてたんだろ? 俺の部屋まであんたの声が届いてたぜ」
「……」
「なのに、また何だってこいつを庇おうとしたり、助けを求めたりするんだい? 助けを求めるなら俺たちにじゃないのか? ここから逃げたくはないのか」
「それは……」

思わぬ指摘をされ、響子は戸惑った。
逃げたくないはずはない。
しかし、頼広を見捨てても置けないと思い始めていたのは事実だった。
そしてはっきり言えるのは、こんな連中よりも頼広の方がよほど信頼できそうだ、ということだ。
彼らに救助を求めても、頼広にされた以上の凌辱を受けることになるのは確実だろう。
響子は持ち前の気の強さを発揮し、男たちに言い放った。

「それなら……、それならあなたたちは私を助けてくれる気があるんですか!?」
「……」
「そ、そんないやらしい目で見ないでくださいっ。どうせ、あなたたちも私を……あっ」
「随分と威勢が良いんだな。見かけによらないもんだ」

井田が響子の髪を掴んで、立ち上がらせる。

「い、痛い……」
「ま、どっちみち、今あんたが言いかけたことをしてやるつもりだがね」
「や、やめろ……、響子に手を出すな……」

頼広はグルグル巻きにされた身体を芋虫のように這いずらせて呻いた。
まだ目は閉じられているし、その周囲は真っ赤である。
涙で顔がぐちゃぐちゃになっている。
コショウの効果はまだ薄れていない。
上坂が嘲笑った。

「へへっ、婦女誘拐拉致犯が今度はヒーローに早変わりか? ふざけんじゃねえよ!」
「ぐふっ!」

また腹を蹴られ、頼広の呼吸が一瞬止まる。
男の苦鳴を聞いて、響子が叫んだ。

「やっ、やめて、鷹小路さんに乱暴しないで!」
「それがわからねえ。だから、どうして庇うんだよ」
「か、庇ってなんかいませんっ。でも……、でも、縛られて無抵抗な人を乱暴するなんて酷すぎますっ」
「そうかね? あんたはあいつに縛られて犯されてたんじゃないのか? あいつと俺たちは、結局、同じことをしてるだけだと思うんだがね」
「ち、違います、あの人は……」
「もういいよ、そんなつまらん議論は」

相原がうんざりしたように頭を掻いた。

「じゃ、こうしようぜ。あんたがおとなしく言うことを聞けば、もう鷹小路を殴ったりしねえよ」
「……」
「俺たちゃ、あの野郎と違って寛容だからな、あんたをいつまでも監禁して犯そうなんて思っちゃいない。この場だけでいいんだよ。な? だから、
そのうまそうな身体を俺たちにも提供してくれや」
「い、いやですっ」
「そうか、いやか。なら仕方ないな、鷹小路の息の根を止めて、代わりに俺たちがあんたを飼ってやるか」
「な……」

あまりの暴言に、響子は二の句が継げなくなる。
しかし、この粗暴な連中を見ていると、本当にそれをしでかすのではないかという恐れもあった。
上坂が懐柔するかのように、猫なで声で言った。

「な? どっちが得かよく考えてみようや。素直に言うことを聞けば、鷹小路はこのままにしてやる。あんたを攫ってどうにかしようとも思わねえ。
今晩だけ、あんたがその身体を提供してくれれば、それで済むんだ」
「や、めろ……、響子、そんな連中の言うことを聞くんじゃない……」
「まだ起きてやがったか。寝てろって言ってんだよ!」
「ぐあっ!」

井田にしこたま顔を蹴り飛ばされ、頼広の顔から鼻血が飛び散った。

「ざまあみろってんだ。こんないい女を独り占めしてやがるからよ」

血まみれになった頼広の顔を見て、響子の悲鳴が湧く。

「きゃあっ、鷹小路さんっ……!」
「心配すんなや、死んじゃいないよ」

井田はそう言って、ぐったりしている頼広の髪を掴んだ。
その顔は鼻血で真っ赤になっているものの、死んでいるわけではなさそうだ。
しかし意識はとうになく、たくましい身体を力なく横たえていた。
井田は、ことさら響子の恐怖感を煽ろうと、指をバキバキと鳴らし始める。

「さあ、どうするよ、奥さん。こいつを殺してあんたを攫うのがいいのか、それとも……」
「わ、わかりました……」

響子は即答した。
もう考えるまでもなかった。
単に脅しで、本当に殺す意志があるのかわからなかったし、本気で響子を連れ去って拉致するつもりなのかは不明だ。
よしんば本当にそんなことをしても捕まらないはずがないし、そうなれば情状酌量などなく、即実刑になってしまうだろう。
逆に、頼広の命をちらつかせて響子の抵抗心を奪ってから凌辱し、すべて終えてから証拠隠滅のために頼広もろとも響子まで殺す、という可能性だってあった。

しかし、もう躊躇したり葛藤している余裕はないようだ。
上坂という男はまだ比較的冷静そうだが、井田と相原の粗暴さ、乱暴さは、これまでの言動から見ても明らかだ。
取り敢えずの延命のためにも、ここは響子が犠牲になるしかなかった。
響子の返事を聞いて、三人は彼女を取り囲んで確認する。

「そうか。いいんだな、奥さん」
「……」
「返事をしろや。どうなんだよ、俺たちに抱かれる決心はついたのか?」
「は……、は、い……」

響子は死ぬ気になって、ようやくそれだけ口に出来た。
もちろん本当は、いやでいやでたまらなかった。
惣一郎にだけ捧げたつもりだったこの身体を、こんな男たちの慰み者にされる屈辱と恥辱は我慢ならない。
しかし、他に手段がなかった。

男たちは嬉しそうに手を伸ばし、響子の白い肌に触れてくる。
響子は、その嫌悪感に鳥肌が立った。
相原が満足げに言った。

「それでいいんだよ。あんたは今夜だけ俺たちのものになって、恥知らずになってくれればいい。俺たちの言いなりになってくれりゃ、それでいいんだ」
「簡単なこったろ? 今までだってあんたは、そこに転がってるでくの坊にその身体を抱かせてきたんだからな。あんたは……、って、そう言えば、
あんた人妻……どっかの奥さんなのか? それともまだ未婚か?」
「年齢的にはそのどれにも該当しそうだな。未亡人って可能性もあるか」
「……」

上坂が偶然に正解を言ったものの、響子は口をつぐんで何も言わなかった。

「だんまり、か。ま、いい。あとはそのお口からは、色っぽいよがり声を出してくれればいいさ。そうだな、取り敢えず「奥さん」と呼ばせてもらうか。おい」
「よし、やるか」
「へへ、覚悟しろよ、奥さん」
「ひっ……!」

男たちは瞬く間に下着を脱ぎ捨て、全裸となった。
その股間でぶらつく醜い男性器を目にした途端、響子の喉が恐怖で鳴る。
一端は男どもの玩具になる覚悟はしたというものの、相手は三人もいる。
ただ犯されるのではない。
輪姦なのだ。
頼広に襲われる以前は、まったくノーマルだった響子には当然未経験である。
今さらながら恐ろしさが込み上げ、脚の震えが止まらなかった。
男どもがじわりと近寄ってくると、悲鳴を上げて後じさった。

「よ、寄らないで! こっちに来ないで!」
「おいおい、奥さんよ、そんな態度でいいのか? 言いなりにならなきゃ、また鷹小路が……」
「や、やめて……!」
「なら、おとなしくしろ。じっとしてるんだ」
「ああ……、い、いや……」
「くく、動くなって」

響子を取り囲むように座り込んだ相原たちは、先を争うようにして手を伸ばし、その豊満な乳房を揉みたて、むちっと張った太腿を撫でまわし、青いほどに
白い首筋に舌を這わせた。
熱く不快な手が肌を擦る感覚や、ナメクジのような舌が唾液をなすりつけてくるおぞましい触感に、響子は悲鳴を噛み殺して耐えていた。

「あ! やあっ……」

井田がガバッと響子の両脚を開かせると、すかさず上坂の指が媚肉の割れ目に食い込み、そこをこじ開けようとする。
その間にも乳房は揉まれ、耳や腋まで舐められて、響子はその屈辱に泣き出しそうだった。

「ああっ」

辛抱たまらなくなったのか、とうとう相原が響子を押し倒した。
首輪のチェーンがジャランと哀しい音を立てる。

「入れるぜ、奥さん。おい、俺が先でいいな?」
「ああ。だが、すぐに代われよ」
「なに、待ちきれなきゃ、もう他の穴に入れりゃいいさ」

男たちは淫らなことを言って笑い合った。
井田が仰向けになった響子の上から肩を、上坂が腿を押さえ込んで動きを止めると、両脚の間に入り込んだ相原がのしかかっていく。

「ひっ、いや! 鷹小路さんっ、助けてっ! あ、いやっ……んっ、ああっ、いやあっ、は、入って……くるっ……くううっ」
「おおっ、こいつは……なかなか具合がいいぜ」
「えい、くそ。俺も参加するからな」

媚肉を貫かれて仰け反る響子の美貌を見て我慢できなくなったのか、井田が相原の背中を叩いて促した。
相原は軽く頷くと、響子の尻を両手で抱えてその身体を起こしにかかる。

「んあっ……」

挿入されたまま上半身を起こされ、膣内に入り込んだ肉棒が襞を擦り、響子に悲鳴を上げさせた。
相原は響子の尻を腿に乗せる形で抱き取り、そのまま抱え込んで深々とペニスを埋め込んだ。
ペニスの先が子宮口に当たる感覚に響子が呻くと、井田がその大きな尻を少し持ち上げるようにして潜り込んでくる。
そして尻が割り開かれ、肛門に亀頭の先が押しつけられると、響子は驚きで舌をもつれさせながら叫んだ。

「そっ、そこはっ……!」
「ん? なんだ奥さん、尻は初めてか? あそこでくたばってるでくの坊にやられなかったのか?」
「やっ、そこ……そこ、いやです、ああ、いやあっ!」

膣から漏れ出ている愛液を少し亀頭になすりつけ、そのままアヌスを貫いてくる。
むりむりっと肛門を強引に押し開かれ、裂けるかと思うような苦痛と圧迫感で響子は目を剥いた。

「ぐううっ、だめえっ……お、お尻はだめなんです……うああっ!」
「んんっ、さすがにケツは狭くてきついな。だが、このきつさがいい。しっかし、思ったよりスムーズに入っていったな。やっぱりあんた、あの野郎に尻も犯されてたのか」
「しっ、知らない……もうやめてえっ……」

対面になっている相原が響子の腰を掴んで上げ下げさせ、律動していく。
後ろから責める井田は自分で腰を上下させて肛門を犯していった。
井田は響子の背中から抱きつき、その滑らかな肌の感覚を胸板で愉しみながら、両手で乳房を握りしめている。

「悲鳴ばかりじゃなく、ちっとは気持ち良さそうな声を出してみろよ」
「そうさ。俺が隣から盗み聞きしてる時は、あんたもっと悩ましい声を喘いでたろうがよ」
「わ、私は喘いでなんかいませんっ……あっ、う、動かないで!」
「んなことねえさ。俺はあれでオナニーしてたくらいだからな」
「い、いやらしいこと言わないでっ……あ、ううんっ……いあっ……」

響子が前後から揺さぶられ、突き通され、ひぃひぃと掠れた声で苦鳴を漏らしている。
その間にも、哀しいことに響子の身体が男たちの行為に少しずつ順応していってしまう。
頼広によって調教され、開発されてしまった肉体は、突き上げてくるペニスと身体中を這いずり回る男の手の愛撫に耐えきれない。
徐々に膣奥から蜜が分泌され、媚肉が濡れていくのがわかる。

「へへへ、奥さんのその苦しそうな顔もいいな。けど、だんだんマンコも濡れてこなれてきたみたいだぜ」
「そんなこと……」
「でも濡れてるもんな。おい、鷹小路!」

相原は腰を使いながら、気絶しているらしい鷹小路に声を掛けた。

「見てるか、おい! おまえの大事なペットが俺のチンポに貫かれて「ひぃひぃ」喘いでるぜ」
「いやっ!」
「ほらほら、奥さん。鷹小路が悔しそうに奥さんを見てるぜ」
「いやあっ、鷹小路さん、見ないで!」

響子はそう叫んで何度も首を振りたくった。
肝心の鷹小路は失神していて、部屋の隅で転がったままぴくりとも動かない。
前後の穴を同時に犯され、苦しそうに呻いている響子の美貌を見て、ひとり仲間はずれだった上坂も我慢しきれなくなったらしい。
響子の白い手を掴むと、自分の膨れあがった肉棒を握らせる。

「おっ、気持ち良いぜ、奥さんっ。白いだけじゃなくて、すべすべしてて具合の良い手だな。ほら、こういう風にしごくんだよ」
「い、いやっ、こんなもの握らせないで!」
「何が「いや」だよ。こんなでかいのを持たせて貰えるんだ、感謝しろっての」
「くっ、いや……あ、ああ……」

(ああ……、す、すごい、こんなビクビクして……そ、それに……ああ、なんて硬いの……)

響子は思わず頼広のペニスの硬さを思い出し、一層に媚肉を反応させていく。
頼広によって最初にレイプされた時も、裕作の目の前で犯されたことが響子の官能に大きな影響をもたらしていた。
身体も心も、とても感じるような状況ではなかったのだが、裕作のことを意識した途端にスイッチが入った感覚となり、「犯されている姿を彼に
見られている」と思うだけで、響子のそこが著しく反応してしまった。

今も同じだった。
相原が頼広のことを口にし、その姿を見ただけで、頼広の前で犯されてしまったという事実に、響子の背徳感が燃え上がりつつあったのだ。

「ああ……、もういやあ……」

そう言いながらも、響子は自ら上坂のペニスをしごきはじめていた。
響子は泣きながらも、自分から腰を使い出している。
媚肉を抜き差しする相原のペニスにはべっとりと愛液がまぶされ、井田に貫かれたアヌスは、出し入れされる肉棒に合わせて粘膜がめくれ上がり、めくれ込まれていった。
響子の大きな尻がうねり、二本の肉棒をくわえ込んでいる。

「あ、あ……、いや……こ、こんな……こんなことって……あああ……」
「その気になってきたな、奥さん。俺たちのものが良くなってきたんだろ?」
「くっ、よ、良くなんか、ああ……あ、ありません、あうう……」
「喘ぎながら言ったって説得力ねえよ。ほら、これはどうだ」
「ああっ……」

今度こそ響子ははっきりと喘ぎ、身を震わせた。
込み上げてくる禁断の快楽を懸命に押さえ込み、気力を奮い立たせて呻く。

「ああ、もういやです……、は、早く……早く済ませて……ああ……」
「終わらせたいなら、奥さんも協力することだ。出さなきゃ男は終わらないんだぜ」
「ああ……」

響子は、諦めたように腰を振り始めた。
仕方ないのだ、
早く終わらせるにはこうするしかない。

そう思っていたのだが、響子はいつしか積極的に肉欲を貪るようになっている。
上坂のものをしごく手の速度を上げ、指を使って亀頭を擦るような愛撫までして見せた。
よがり始めたように見える響子に、男たちは狂喜してなおも激しく責めていく。

「いいなあ、そのよがり顔。奥さんの感じ方は最高だぜ」
「ああ、鷹小路のバカに見せてやりてえもんだ」
「あ、だめ……、鷹小路さんに見せたらだめです……み、見られたら、ああ……」
「お、なんだ? 見られることを意識したら、ぎゅっとマンコが絞まってきたぞ。そうか、あんた見られるのが好きなのか」
「ちっ、違う、違います、あっ……わ、私はそんな……み、見ちゃだめえ……鷹小路さん、見ないで……あううっ」
「おほっ、尻の穴まで絞まってきやがった。どうやらこの美人さん、本当にマゾらしいぞ」
「そ、そんな……あううっ……」

前後の穴への攻撃は一層に激しさを増していき、それに応えるように響子も腰を振り、臀部を激しくうねらせていく。
相原の腰が響子の腰にぶつかり、井田の腰が響子の臀部にぶつかる肉の音がパンパンと部屋に響いていた。
媚肉を深々と貫きながら、相原は響子の唇を求めてその顔に迫るが、響子は断固拒否して顔を背けている。
その横を向いた頬に舌を這わせ、耳を舐めると、響子は背筋に悪寒が走った。
後ろでは、井田がさっきからずっと両手で乳房を揉み、こねくり回している。
間歇的に収縮を繰り返してくる響子の膣の心地よさに、早くも相原が音を上げた。

「くそっ、あんたのここ、最高だ。もう出ちまいそうだぜ」
「あ、だめっ……あ、ああ、中はだめです、絶対に……んああっ」
「何だい、今さら。どうせ鷹小路にもたっぷり出されたんだろ?」
「あ、あの人は……ちゃんと避妊して……ああっ」
「はあ? そうなのか?」

相原と井田は顔を見合わせて「ワケがわからねえ」と笑った。
性奴隷とするために攫った女を気遣って避妊するなんて、行動に一貫性がなさすぎると思ったのだ。
頼広の、些か歪んだ、それでも純粋な響子への愛情は、この連中にはとても理解出来なかった。

「そうなら余計に中出しだ。奥さんを孕ませるつもりで中に出すからな」
「い、いやっ、中はいやあっ……お願いです、外に、ああっ……外に出して、中はだめえ……あああ……」
「よがってる女にそんなこと言われて「はい、そうですか」なんて言う男はいねえよ」
「よ、よがってなんかいませんっ……やめて、もう……抜いてぇっ」
「ああ、抜いてやるよ、中に出してからな」

膣を犯していた相原は、響子の腰をぐいっと引き寄せると自分の腰を密着させた。
そのままでぐりぐりと奥を抉って亀頭を刺激させると、唸り声を上げて響子の中で子種を放った。

「いやああっ、出てるっ……だめっ、ああっ、抜いて、すぐにっ……ひっ、熱いの、いっぱい出てるっ……んんんっ!」
「く、くそっ、すげえ締め付けだ! こうだ! もっと出してやるっ!」
「ひああっ……!」

びゅるるっと熱い精液が子宮口を穢すと、響子はしなやかな背中をぐうっと反り返らせて達した。
胎内でびゅくびゅくと射精を感じ取りながら、響子は何度も「ああっ」と喘ぎ、小さく身体を痙攣させている。
仰け反った響子の頭が、後ろからアヌスを犯していた井田の右肩に乗ると、響子の髪の甘い香りがぷうんと鼻腔をくすぐった。
そのフェロモンが井田の欲望までも一気に炸裂させた。

「い、いったな、奥さん! 尻まですげえ締まりだ、くそっ、俺もだめだ!」

井田は、前を犯して射精している相原から響子を奪い取るようにして、その腰を掴み、自分の腰に押しつけた。
響子の柔らかい尻の肉感にも刺激され、肛門括約筋の締めつけに暴発寸前だった井田の肉棒も射精した。

「うおっ、出るっ!」
「んひぃっ、お、お尻にも出てるっ……熱い、熱いっ……あ、あ……お尻の中に……あああ……」

いった瞬間に、響子は上坂のものを掴んでいた手をきゅっと握りしめた。
肉棒を潰すような強さではなく、ちょうど気持ち良いくらいの強さでカリ首を握り、しかも擦り上げたものだから、上坂もたまらず射精していた。

「い、いやっ、汚いっ……!」

上坂から放たれた精液が響子の顔を襲ったが、何とか手で防いで直接かかるのは避けられた。
しかし、腕や手のひらにべっとりと精液がひっかかり、その饐えたような悪臭が鼻をつく。

一通り射精を終えると、男たちは申し合わせたようにそれぞれの位置を変えた。
今度は響子を四つん這いにさせると、その下に上坂が潜り込み、相原がバックから響子の尻を抱え込む。
そして井田は響子の美しい顔にペニスを押しつけてきた。
響子の肌に擦りつけているだけで、男たちの肉棒はたちまち硬く勃起し、彼女の柔らかい肉をまた貫いていった。

相原がアヌスを、上坂が膣を、井田が手を使って響子を辱め、その身体を穢した。
またポジションを変える頃には、輪姦されるショックとその疲労で響子は半ば失神しかけていたが、男たちは構わずその肢体を味わい尽くした。
三人は、それぞれが三度ずつ射精を終えると、ようやく響子を解放し、「また来るぜ」と薄笑いを浮かべながら部屋から出ていった。
響子はぼんやりした目で、倒れている頼広を見ていた。
頼広は身体を丸めたまま、ぴくりとも動かなかった。

────────────────────

叩きのめされた挙げ句、雁字搦めに縛られた目の前で響子を穢された頼広の怒りは尋常でなかったが、さすがにその晩はどうにもならなかった。
頼広の受けたダメージも大きかった。
喧嘩馴れしている彼にとって、これくらいはどうということはなかったのが、顔中血まみれになった頼広に響子の方が動転し、仕返しするという
彼を押しとどめて看病したのだった。

頼広は、柄になく感動していた。
響子は、頼広が原因で凄惨な輪姦を受けているのだ。
なのに、輪姦されて心身ともに傷を負った自分のことなど差し置いて、頼広の身体を心配し、「手当てなど必要ない」と言い張る彼を叱り飛ばしてまで
看病したのである。

その響子の思いに押され、その日だけは堪えたが、頼広の復讐心は潰えなかった。
自分のことはもういい、復讐など考えないでくれと懇願した響子を振り切り、頼広は立ち上がった。
まず翌日、ぬけぬけと自室にいた相原から血祭りに上げた。

「!」

頼広は、止める響子を振り切って隣室を強襲した。
鍵も掛かっていない部屋に相原はいた。
相原は、頼広が突然にドアを蹴破るようにして侵入してきた時には驚いたようだったが、すぐに冷静になる。
見れば、壁に木刀が立てかけてあるのだ。
頼広を見るなり、相原はにやりと笑って木刀を手にした。

「……なんだよ、鷹小路。人の部屋に入るときはノックくらいするもんだ」
「……人のことが言えるのか?」

それを聞くと相原は腹を抱えて笑った。

「そりゃそうだ。しかし、まさか昨日の今日でここに来るとは思わなかったぜ、くくっ」
「……」
「ほお、俺たちにやられた顔は腫れぼったいが、どうやら手当はしてもらったらしいな。あの飼ってる人妻にしてもらったのかい?」

相原はそう言うと、木刀を構えて立ち上がった。
その落ち着いた構えを見ていると、どうやら剣道をやっていたようだ。

「あれはいい女だな、え? 美人で肉づきも最高だ。それだけじゃねえ、マンコも尻の穴まで絶品じゃねえか。おまえなんぞにゃもったいねえ女だ」
「……」
「だから俺たち三人がおまえの代わりにあの女を囲うことにしたぜ。くく、明日にでもおまえんとこに行って強奪するつもりだったが、おまえの方から
お礼参りに来るとはな。予定よりは早いが手間が省けたぜ」

相原はそう言ったものの、若干の不安は感じている。
明日、頼広の部屋を襲って響子を奪うつもりだったのは確かだが、その時は井田や上坂も引き連れて行くつもりだったのだ。
マッチョマンである頼広相手にひとりでは分が悪いと思ったのである。

しかし、相手は手負いだ。
しかも、こっちは武器を持っている。
中学、高校と剣道をやっていて二段の腕前である。
その自分が木刀を持って立ち向かえば、大抵の相手に勝てる自信があった。
どうぜ頼広は見かけ倒しだろう。
体格こそ立派だが、何か格闘技をやっていたとも思えない。
もしそうなら、昨日、あんな無様にぶちのめされはしないだろう。

「てぇい!」

先手必勝だ。そう信じている相原は、木刀を振りかぶると頼広の頭頂部目がけて振り下ろした。
むざむざ直撃される頼広ではない。
喧嘩馴れした頼広は、相原の木刀が頭部を狙ったと知るや、瞬時に身を屈めると、素早く右の拳を繰り出した。

「おぐっ……!」

相原の一刀は頼広の左肩を僅かに掠り、代わりに頼広の拳は相原の左肋に命中した。
鈍い嫌な音がしたところを見ると、そのパンチ一撃で骨折したようだ。
頼広はそのままタックルするように相原へ突っ込み、床に突き転がした。
必殺の一撃の不発と肋の激痛で表情を歪めた相原だったが、それでもさすがに有段者で、すぐに右腕一本でまた木刀を打ち込もうとした。
しかしその一撃は最初のそれより数段鋭さを欠き、頼広は木刀を左手で難なく掴んだ。

「あっ」

武器に頼り切っていた相原は、頼広に木刀を奪われたところでほぼ戦意を喪失していた。
ガタイが違うのだ。
素手同士でまともにぶつかっては、とても勝てるとは思わなかった。
あくまで人数で勝るか、不意を突くか、あるいは武器を使うかしかない。
そのどれもを封じられ、相原は一方的にぶちのめされた。
木刀を放り投げた頼広は、思い切り相原の左頬を殴り飛ばした。

「ぐあっ」

吹っ飛んで壁に激突した相原の襟首を掴んで持ち上げると、今度は右頬に拳を叩き込んだ。
途端に唇が切れ、あるいは口の中が切れたのか、相原の口からパッと血しぶきが飛んだ。
そして鳩尾に思い切り膝を叩き込み、その苦痛で身を屈めた相原の背に、今度はエルボーを打ち込んだ。
声もなく、ドッと床に頽れた相原をまだ許さず、頼広はまた襟首を掴んで立ち上がらせ、そのまま壁に叩きつけた。

「うおおっ……!」

こんなことくらいでは、とても自分の恥辱と響子凌辱への憤怒は収まらなかった。
響子の恨みを晴らす意味もある。
もう気絶していた相原の腹に、何度も蹴りを叩き込んでいる。
そこで響子が悲鳴を上げて部屋に転がり込んできた。

「やめて! もうやめて、鷹小路さんっ!」

首輪を外されたばかりで、首の周囲にはまだ赤い跡が生々しく残っている。
裸ではないが、下着姿のままだ。
しかし響子はそんなことを気にする状態ではなく、何としても頼広を止めなければと思っていた。
響子は思わず鷹小路に抱きつき、相原への暴行を止めた。

「や、やめて……!」
「あんた……」
「やめて……、もうやめてください、鷹小路さん……」
「だが……、あんたにあんな酷いことをしたやつなんだぞ」
「わ、私のことならもう大丈夫です、だから……」

驚いたことに響子の目は涙に濡れていた。

「こんなことはやめてください……。もし、この人に何かあったら……、し、死んでしまったら鷹小路さんが捕まってしまいます……」
「……」

頼広の動きが止まった。
見下ろすように響子を見つめている。
響子は泣きながら頼広に抱きつき、しゃくり上げていた。
この時の響子は、愛情から彼に抱きついたというわけではない。
ただ「止めなければ」という思いだったのだが、それでも以前なら、こうはならなかっただろう。

「お願いです、もうやめて……」
「あんた……、本当に人が良いんだな」
「……」

頼広は、半ば呆れたように言った。
自分をレイプした相原の命を心配しただけでなく、頼広が犯罪者になることをも気に留めていたのだ。
頼広にしても、響子をレイプした挙げ句、拉致監禁したのだし、そういう意味ではもう犯罪者ではあるのだ。
これ以上、罪を重ねないで、という気持ちだったのかも知れないが、それだけではないようにも思えた。

「も、もう気が済んだでしょう? これ以上は……」
「俺の気が済んだ、とか、そういう問題じゃない。あんたを穢したこいつらには、それなりの制裁を与えなきゃならん」
「わ……、私の……ため……?」
「そうだ」

頼広はややぶっきらぼうにそう言うと、視線を逸らせた。響子は「信じられない」という目で男を見ている。
自分のために、己の危険を顧みず、殴り込みをかけたというのだ。

「私のために……」

響子はもう一度噛みしめるようにそう呟いた。
そして、思い詰めたように男へ言った。

「私のためというなら……、もうこんなことはしないでください。お願い……」
「……わかった。響子はそう言うのならな。だが」
「……」

響子を愛しげに見つめてから、頼広はきっぱりと言った。

「だが、俺はこのままじゃ済まないんだ。この連中には、あんたを穢した罰と、俺を侮辱した罰を受けさせなきゃならん」
「でも……」
「心配するな。もう、こんな暴力沙汰はしない。それは約束する」
「鷹小路さん……」
「だが、復讐は復讐だ。何としてもあとふたり、やつらに礼をしてやらなけりゃ俺の気が収まらん」
「やめてください……」
「もういいんだ。これから先は、あんたには関係ない」
「え……?」
「俺の復讐劇なんだ。響子とは無関係だ。だから……」

頼広はそう言ってから、少し言葉を切った。
そして言った。

「……あんたはもう、好きにしていい」
「え……」
「帰りたければ帰ってもいい。俺は残りのふたりに復讐せにゃならん。部屋も引き払うつもりだ」

井田と上坂を捜し出して、ケジメを付ける。
頼広はそう言った。
暴力はしないが、いずれ法を犯すこととなるから、逃亡生活になる。
もともと、響子を拉致するために勤めは辞めているから、そっちの心配はない。
追跡と逃亡のための資金も、響子監禁計画のために蓄えたものがある。
そう言ってから、頼広は薄く笑った。

「生憎、あそこまで送っていくことは出来ないが、帰りたければ帰ってくれ。……まあ、あんたを攫ってこんなとこへ連れ込んだくせに「帰れ」とは
勝手なヤツだと思うだろうが、仕方がない。俺にとっても、今回のことは想定外だったからな」
「……」
「帰るくらいのカネは渡す。着替えもあるぜ。俺が買ってきたのは下着だけじゃない。あんたの趣味に合うかどうかはわからんが、上に着るのも買ってある。
だから……」
「鷹小路さん……」

響子は少し考えていたが、思い詰めたように頼広を見て言った。

「どうしても……」
「……」
「どうしても……ですか?」
「……」
「どうしても……、どうしてもそうされるんですか? 少なくとも、私は復讐なんか望んでません」
「言ったろう。これはあんたのためというよりは俺のためだ。だからあんたはもう退場してくれと言ったんだ」
「……」

そこまで言い切ると、頼広はさすがに少し口ごもった。

「でもな、「俺のため」というのも、あんたのことを思ってのことだ。あんたは「もういい」と思えるかも知れないが、俺には出来ない。大事なあんたを
あんな目に遭わせたやつらをタダではおかん。そういうことだ」
「鷹小路さん……、でも……」

そこで頼広はまた少し笑った。
男臭い笑みだった。

「我ながら少し図々しいとは思うがな。俺だってあんたを拉致して監禁したんだ。やつらのことは言えないよ。それに、あんたを穢したのはやつらだ
けじゃない……、俺だって……」
「それは言わないで……」
「……済まん。だが、要するにそう言うことなんだ。ここから先はもう俺の物語だ。あんたは日常に戻ってくれ。それがあんたの……」

響子は少し怒ったような、あるいは拗ねたような表情で頼広を見返した。
柄にもなく、頼広は少し狼狽えた。
響子の美しい顔に、怒りと決意が感じられたのだ。

「勝手なことばっかり……」
「……?」
「勝手なことばかり言わないでくださいっ。私がここにいるのは誰のせいなんですか!?」
「あ、いや……、それは、だから……」
「「だから」じゃありません!」

響子の迫力に押され、頼広がたじろいだ。
ふたりが顔を合わせて以来、こんなことは初めてであろう。

「どうして男の人って、こんなに自分勝手なんですか?! ここまで……」

そこで響子は顔を伏せた。

「ここまで私を巻き込んでおいて、今さら「帰れ」なんて……」
「いや、だが響子……、あんたは……」
「……ここを出て行くんですか」
「ま、まあ、そうなるかな……」

響子は顔を上げ、キッとした表情になる。

「なら……」
「……?」
「なら、私も……、ついていきます」
「は?」

頼広は呆気にとられた。
初めて見るパターンの表情だった。

「ついていくと言ったんです! こ、このままあなたを放って置いたら……、またこういうことするんじゃないんですか!?」
「あ、いや、それはだから……、もう殴る蹴るはしないと……」
「信じられません!」
「……」
「今だって、私が止めなければ、この人が死んじゃうまでやってたんじゃないんですか? 感情が先走って、何するかわからないじゃないですか!」

この時点で、もう普通の男女の会話になっているのだが、このことには響子だけでなく頼広も気づいていない。

「い、いや、それは……、あ、あのな、あんた……」
「「あのな」じゃありませんっ。私、決めました」
「な、何を?」
「……ついていきます」
「は?」
「ついていきます。あなたがバカなことしないように、です」
「あ、い、いや、しかし……、そんなことしたら、あんたも……」
「私のことはどうでもいいですって、さっきも言いました!」
「……」

これは思いの外、気が強い。
響子の意外な面を見た思いで頼広は驚いているが、裕作や三鷹などにはお馴染みである。
普段は気も優しく人当たりの良い響子だが、いったん怒らせると、男どもでは手が着けられないほどなのだ。

「いいですね?」

響子が念押しするように強く言うと、頼広はぎこちなく肯定した。
それを見て、響子は少しだけホッとしたような笑顔を浮かべている。

もちろん頼広は嬉しかった。
本当は、どこまでも一緒にいたかったからこそ誘拐したのだから。
ただ、今回は犯罪を犯し、逃亡するための道行きになるのだ。
そこに愛する女を巻き込むのは不本意だった。
頼広はともかく、響子は徹頭徹尾被害者であり、しかも巻き込まれただけで何の落ち度もない。

なのに自分の破滅への道へ導くのは気が引けたし、強く拒むべきだと思う。
だが、頼広はやはり嬉しかったのだ。
頼広は「わかった」と言って響子の肩を優しく抱いたが、響子はするりとその腕から逃れ、すたすたと先に立って頼広の部屋に戻っていった。
その、怒っているのか、それとも照れているのかわからない後ろ姿を見ながら、頼広は響子の希望通り「暴力沙汰」だけは起こさず、復讐する方法を
あれこれ考えていた。



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