響子が裕作のことを思いつつ、瞬に抱かれているその時刻。
裕作も別のホテルに呼び出されていた。
苦渋の選択で、響子と裕作が瞬の申し出を受けることとなり、その日程が伝えられたすぐ後のことだった。
裕作へ瞬から連絡が入ったのである。

響子が出かけていてそこにいないことを確認してから、瞬は裕作へ指定場所へ行ってくれるよう頼んだ。
まさに響子と瞬がホテルで抱き合っているその日、その時刻である。
まさか自分の妻が瞬に抱かれるところを見ろ、とでも言うのかと思い憤慨した裕作だったが、どうもそうではないらしい。
さすがにそこまで恥知らずではないだろう。
瞬と響子の逢い引き先のホテルは響子しか知らない。
もちろん響子の口から裕作へ教えることは出来たが、そんなことをしても意味がなかった。

映画か何かじゃあるまいし、その場へ乗り込んで引き留めることなど出来はしないのだ。
そんなことをしても、響子が瞬の元へ「抱かれる目的」で出向いた事実は変わらないし、もちろんお金は入ってこない。
響子の、裕作への貞操は守られることになるだろうが、一度は「響子の身体でお金をもらう」という条件を飲んでしまったのだから、ふたりの心に残った傷が消えることはないだろう。

だから響子は裕作に場所は言わなかった。
裕作も聞かなかった。

そんな時に来たのが瞬からの連絡だったのだ。
おかしな内容だった。
理由は聞かず、指定されたホテルのロビーで待っていて欲しい、というものだ。
瞬が来るわけではないだろうし、もちろん響子だって来ない。
いったい何がしたいのか、さっぱりわからなかった。

最初は行くつもりはなかったものの、よくよく考えてみれば、響子が瞬に抱かれている時間をここでまんじりとせずに過ごすのは拷問に近い。
ジリジリと嫉妬の炎が燻り、裕作の胸を焦がすだけだ。
それに、響子が帰ってきた時に、どんな顔をすればいいのかもわからない。

それなら、何をさせるつもりなのか、あるいはするつもりなのか知らないが、それを確かめる意味で出かけてもいい、と思うようになった。
もちろん状況によってはすぐに帰ればいいのである。
響子のことを思うと、いてもたってもいられないのだ。
この際、何でもいいから気が紛れるのであれば行く価値はあるかも知れない。

そう判断した裕作は、妻には内緒で彼女が出かけた後、指定されたホテルへ向かった。
超高層ビルとしても有名な高級ホテルで、もちろん裕作は宿泊などしたことはなく、前を何度か通ったことがあるという程度だ。
裕作は知らなかったが、響子と瞬がいる外資系ホテルといくらも離れていない。

「……」

待ち合わせ場所である3階のロビーに到着したものの、どうにも勝手がわからない。
裕作が待ち合わせに使うのは、せいぜいが喫茶店であり、そうでなければ駅前とか、そういう場所ばかりだ。
ホテルのロビーを待ち合わせ場所に使うという感覚は未来永劫わかりそうもない。

どうしても「場違い」な感じがして、落ち着かないこと夥しかった。
ほとんど「お上りさん」みたいなもので、キョロキョロと辺りを見回すしか出来ない。
響子や瞬がここへ来るはずもなく、よく考えてみれば誰と待ち合わせているのかすら確認していなかった。
裕作は、自分の迂闊さと瞬のいい加減さを呪ったが、今さらどうしようもない。

見れば、さほどごった返しているロビーではなかったが、それなりに人はたくさんいる。
どの人もほとんどがきちんと正装……というか、フォーマルな身なりをしていた。
その辺のことはまったく考えなかった裕作は至って普段着である。
ボーイに胡散臭そうな目で見られても文句は言えなそうにない。
これでは不審者と思われるのではないかと不安になり、帰りたくなったその時だった。

「失礼ですが……」

裕作の7時の方向から声を掛けてきた女性がいた。
いきなりだったので小さくジャンプするほどに驚いた。

「……五代、さん……ですか?」
「あ、はい!」

下から顔を窺うように見つめてくる女性を見て、裕作は直立不動となる。
彼の返事を聞いて、その女は安心したように小さく微笑んだ。

「よかった……。すっぽかされちゃったのかと思いました。私、三鷹から頼まれて……」
「あ、いえ、そんな……。オレ、こんなとこ来たことないもんで迷っちゃって……。それに、お会いするのはどなたなのか三鷹さんから何も聞いてなかったもんですから」

裕作は目の前の美人に、早口でそう言い訳した。

そう、裕作に会いに来たのは美しい女性だったのである。
年齢は恐らく彼と同年代だろう。
妻の響子よりは少々若いだろうか。
髪は薄いブラウンで、染めているのか地毛なのか、見た目では判断できない。
全体的にウェーブが掛かり、ふわっとしたロングである。パーマを当てているのではなく、くせっ毛でこうなっているのかも知れない。
とても柔らかそうな髪質で、これなら後ろで束ねてまとめた方が楽だろうなと裕作は思った。
目鼻の整った顔立ちで、大きな瞳が印象的だった。


      


着ているベージュのジャケットも織り柄の落ち着いたデザインで、襟なし──ノー・カラーである。
フロントフックが内側にあるようだが、すべて外していた。
八分袖から覗く肌が白く、きめ細やかそうだ。
首もとには、大きなパールで彩られたヴァンクリーフ&アーペルのネックレスを着けている。
腰に巻いたタイトスカートも、一層に大人びた雰囲気を醸し出していた。
履いているパンプスも同色だった。
「上場企業のOL」という感じがする。
どう見ても裕作と関わりのある人種とは思えなかった。

裕作が呆然と見つめていると、女性の方は少し首を傾げながらも部屋へ誘った。

「……こんなところで立ち話も何ですので、お部屋へ行きましょう」
「部屋……、ですか?」
「はい。今晩一泊ですがお取りしていますよ」
「えっ……」

何のことだかわからない。
それに、どこの誰とも知れぬ相手──、しかも妙齢の美人とホテルの一室に宿泊?
こんなところを嫉妬深い響子に見つかったら、一週間は口を聞いてもらえないだろう。
以前、白石衿子とホテルへ行こうとした時に響子と出くわした時のことを思い出した。

どう対応していいものやらわからない裕作を尻目に、女はその手を掴むと部屋へと先導していった。
37階にあるその部屋に入っても裕作は落ち着けない。
応接セットのソファに座らされている間、かの女はテキパキと(「そそくさ」ではなく「テキパキ」というイメージだ)茶の支度をしているようだ。

女がテーブルまでトレイで運んできたのはお茶やコーヒーなどではなく、酒だった。
あの特徴的なボトルは、確かバランタインだ。
キャバレーに勤めていた頃、飲んだことはないが給仕をしたことはあった。
それで憶えていたのだ。
女は慣れた手つきで裕作のグラスに注ぎ、ついでに自分のグラスも遠慮なく酒で満たす。

「ミネラルウォーターがありますけど、水割りでいいですか?」
「……」
「それともストレートで……」
「あ、み、水割りで」
「はい」

どぎまぎした裕作の仕草が面白いのか、女は小さくクスリと笑った。
裕作の方はグラスを差し出されても飲むことが出来ず、まだ呆然と女を見ていた。
それまでニコニコしていた女だったが、次第に不安そうな表情になってきている。
そして、少し顔を伏せて裕作に聞いた。

「あの……、本当に五代さん、ですよね?」
「は、はい……」
「五代裕作さん、で、間違いないですね?」
「はい、そうですけど……」
「……」

裕作の返事を聞くと、女は少しだけ寂しそうな顔になった。

「あの……、憶えてないですか?」
「は?」
「私のこと……」
「えっ……」

かなりビックリしていた。
裕作に憶えはない。
響子に惚れていたとは言え、裕作も男である。
それなりに「女」には興味はあった。
だから、もしこんな美人と知り合っていれば忘れることなどないと絶対に思う。

「そう……。無理もないですね。一度お会いしただけですし、もう何年も前のことですし……」

女は残念そうに言ってから、無造作に髪をまとめて後ろへ持っていき、ハンドバッグから取り出した髪留めのクリップでそれをまとめる。
さらにバッグから眼鏡を取り出したかと思うと、それを掛けて見せた。

「これでもわからない?」


        



一瞬の間が開いてから、裕作は今度ばかりは本当に驚いたとばかりに大声を出した。

「あーーーーっっ! あ、あ、あの、北海道で……」
「そう。大口小夏っ!」

思い出した。

この髪型。
このトンボ眼鏡。
間違いない。

独身時代、響子との行き違い──大学の後輩である白石衿子とのラブホテル未遂騒動──が拗れ、頭を冷やすため北海道へ一人旅をしたことがあった。
そこで偶然出会ったのが彼女──大口小夏だったのである。

詳しい事情は知らなかったが、小夏が北海道を訪れたのは、どうも失恋の傷心を癒すための一人旅だったらしい。
そこで自分以上に落ち込んでいる、あるいは迷っているように見えた裕作に声を掛けてきたのが知り合ったきっかけだ。
裕作の響子に対する思いや、彼女への手紙のことなど、当時の状況が似ていたこともあって、素直に話せたとは思う。
とは言え、せいぜい身の上話をした程度の関係であり、裕作の方もそれ以上の興味はなかった。

が、その時、不意に小夏の方からキスされたことだけは鮮烈に憶えていた。


    


その翌朝、裕作が珍しく早起きしてペンションのベランダに出て見ると、隣から「おはようございまーす」と声を掛けられた。
誰だろうと見てみると、実に美しい女がこちらを見て挨拶している。
ドキッとするほどの美人だったが、こんな知り合いはいない。
相手は少し呆れたようだったが、すぐに小夏だと名乗ると、裕作はまた驚かされた。
髪を下ろし、眼鏡を取っただけでこれほど印象が変わるとは思ってもいなかったのである。
本当に行きずりで知り合っただけで、まさか同じペンションの隣の部屋に泊まっていたとは気づかなかった。

それもあって気にはなっていたが、結局、小夏とはそれっきりだったのだ。
互いに行き先も告げていなかったし、連絡すら取っていない。
やっと裕作が思い出したことで、小夏は本当に嬉しそうな表情になった。

「よかったぁ。ホントに忘れられてるとか思っちゃった、あたし」
「いやあ……、憶えてるよ。何だか懐かしいなあ……」
「うん。あれからもう3年……、もっとかな、経つんだね」

それまでは「ですます」調の丁寧語だったのが親しそうなタメ口になり、一人称も「私」から「あたし」に変わっている。
こっちが「素」なのだろう。
その小夏はテーブルで手を組み、その上に顎を乗せてニコニコしている。
裕作は何だか喉が渇き、小夏が作ってくれた水割りを一気に飲み干した。
少し濃い。
ふうっと一息ついて、そこで初めて気がついた。

「ところでさ……、何できみがここに?」
「ん……。あたしは三鷹の代理。聞いてるでしょ?」
「三鷹さんから呼び出されたのは確かだけど、何も詳しいことは知らないんだ。それに、なぜ大口さんが三鷹さんの代わりなのかってことも」
「そうね、説明が必要か」

小夏はそう言いながら、マドラーで自分のグラスをかき回すと、クィッと一口だけ飲んだ。
ちょっとだけ考えてから、小夏は話し始めた。

「簡単に言うと、あたしがあなたのお相手をするってこと……、かな」
「相手って……」
「わからない? あたしはあなたと「寝る」ために来たんだけど……」

裕作はドキッとしてから、判りきったことを聞いてみた。

「ね、寝るって、そのつまり……」
「そうよ。五代くんとセックスするってこと」
「っ!」

さすがに驚いた。
話の展開からしてそういうことだろうと薄々感じてはいたが、はっきりそう言われると、やはりかなりの衝撃がある。
裕作は性体験自体多くはないし、深い仲になった女性だって響子しかいないのだ。
あとは風俗で一、二度あるだけだ。

その秘めたる行為を女性の口からハッキリ言われて、今さらながら怖じ気づく。
「女」が怖いわけではない。
今のこの状況に著しい違和感を覚えているのだ。
裕作は落ち着きなく言った。

「や……、いや、でもどうして!? 何で大口さんがオレなんかと……」
「あ、ちょっと待った」

小夏は話の腰を折って、手を翳して裕作の言葉を止めた。

「その「大口さん」っての、やめてくれる? 小夏でいいわよ」
「いやでも大口さん……」
「「大口」って名字、あんまり好きじゃないのよね。だから親しい人には名前で呼んで貰ってるんだ。だから小夏って呼んで」
「……わかったよ、じゃあ……、小夏、さん……」
「呼び捨てでいいんだけど……、ま、それでもいいわ。ね、タバコ吸っていい?」
「え……? ああ、いいけど……」
「ありがと。そっか、五代くんは吸わないんだね」

小夏はそう言うと、またバッグを開いてタバコを取り出し、それを口に咥えた。
細身の白いタバコを薄い紅を引いた唇に挟んだ姿が、何だかとても似合っている。
ライターで火を付けると、小さくため息をつくかのように白い煙を吐き出した。

「で、事情を説明するけど……。三鷹は……、瞬は本当に何も言ってないの?」
「なにも……」
「そっか。しょうがないなあ、もう……」
「そもそも、小夏さんと三鷹さんはどういう関係なの?」

北海道で偶然会っただけの女が何で東京の三鷹とつながるのか、裕作にはさっぱりわからない。

「わかりやすく言えば……、あたしと瞬はその……、愛人関係ってとこかな」
「え……? あ、愛人て……。だって三鷹さん、結婚してたんじゃあ……」
「だから愛人。そう言ったでしょ?」

絶句している裕作に、小夏はさらに詳しく説明する。

「ショックかも知れないけどさ、世の中ってそんなもんよ」

どれほどのこともないとばかりに、小夏はタバコを噴かした。

「悪口ってわけでもないけどさ。瞬って、そういう男なのよ」
「そういうって……、その、奥さんがいるのに外で女を作るようなってこと……?」
「う〜〜ん……、まあ半分正解かなあ」
「半分?」
「だってあたしと瞬は結婚前からのつき合いだもの」
「えーっ」
「そりゃ驚くわよね。でも事実だから」
「じゃ、その……、な、何で三鷹さんと結婚しなかったの……?」
「瞬がプロポーズしてこなかったから」
「……」
「あの頃はさ……」

ふっと小夏の目が遠くを見る感じになる。

「まだ瞬が、きみの奥さん……、響子さんだっけ? 彼女を追っかけてる時よ。その時からあたしは瞬とつき合ってたもの。北海道から帰ってしばらくしてから……かな」
「だ、だからそれがわからない! きょ、響子に迫ってきていた時にも、すでにきみとつき合ってたってことだよね!?」
「そうなるかな」
「そ、それできみは……、小夏さんはいいの!?}
「良くはないけど、でも仕方ないわ。瞬はあたし以外の女を選んだってことだもの。それだけよ」
「そ、そうだけど……、三鷹さんは結婚してたわけだろう? 奥さん、亡くなったのは知ってるけど……」
「でも、その前からあたしは……」
「つき合ってたっていうんだろ? それがわからないんだ。小夏さんにしたって、三鷹さんが結婚したってのにどうしてまだつき合ってるんです? いったい、どういうつもりで……」
「ま、ま、そう興奮しないでよ」

小夏は、いつの間にか腰を上げて瞬を糾弾していた裕作を落ち着かせ、取り敢えずソファに腰掛けさせる。
今度は少し薄く作った水割りを差し出すと、裕作はそれも一気に飲み干した。
冷たい液体が口から食道を伝わっていくと、すぅっと熱くなった身体と気持ちが鎮まっていく。
その液体が胃の腑に落ちると、今度はカッと熱を持ってくる。

旧知の男が少し落ち着いたのを見計らって、小夏はまた話し始めた。

「あたしは今でも瞬が好きよ」
「なら……」
「でも」

裕作の言葉を途中で止め、小夏は話し続ける。

「でも、好きって言っても、もしかすると瞬と結婚したいとか、そういうことじゃないのかも知れない。う〜〜ん、これは自分でもよくわからないんだけどね」
「け、結婚したくないの? 恋人だったわけじゃないの?」
「恋人……だったと思うよ、それは今でもね。多分……、瞬もそう思ってくれてると信じてる」
「それでも結婚は……」
「だからわからない。結婚してもいいとは思うけど、しなくてもいいって感じかな。あたし、そう結婚願望は強くないしね」
「でもさ、その三鷹さんとは……」
「もちろん寝てたわよ」
「……!」

小夏は裕作が目を剥くようなことを事も無げに言った。
何だか頭がくらくらしてくる。

「……小夏さんは三鷹さんとどこで知り合ったの?」
「きみと会ったのは北海道だけど、あたしは当時──って、今もそうだけど、東京に住んでるんだもの」
「そっか……」
「だから瞬とは東京で知り合ったのよ。あたし、OLやっててさ、自分で言うのも何だけど、そこそこの会社なわけ。で、部長についてパーティに出ることも多かったから、そこで瞬と顔見知りになって……」

瞬の方からアプローチしてきたらしい。
トンボ眼鏡で髪をひっつめた野暮ったい格好の小夏では食指は伸びなかったろうが、今みたいに美しく着飾っていれば元は良いのだから、当然、漁色家の瞬の関心を惹くだろう。

小夏も、洒落て垢抜けていた瞬に惹かれ、つき合うことになったらしい。
驚いたことに、瞬はその時、正直に「きみと結婚はしないと思う」と告げたというのだ。
当時はまだ響子にご執心だったろうし、その後は明日菜と結婚したわけだから、確かに小夏の入り込む余地はない。

「それでいいと思ったの、小夏さんは?」
「まあね。最初はびっくりしたわよ、つき合ってくれって言った舌の根も乾かないうちに「結婚する気はない」って言うんだもの」
「だよね……」
「うん。でもさ、正直な人だなって」
「正直?」
「だってそうじゃない? 単に女ったらしで結婚詐欺師みたいな人だったら、逆に結婚をちらつかせてお金をせびり取るか、女の身体を弄ぶか、じゃないかな?」
「そうだね……」
「要するに、本命は他にいるんだけど、おまえのことも好きだって意味でしょ? だからデートはしたいし、抱いてみたい。そういうことよね」
「そうだけどさ……、何かそれって不誠実じゃない? 小夏さんは三鷹さんを「正直だ」って言ったけど、どの女性に対しても好きだって言うようなもんでしょうに」
「そうなんだけど……、でも「不誠実」ってことはないのよ」

小夏は、そこのところは強く主張した。

「あの人は……、瞬はね、ある意味バカバカしいくらい誠実なのよ。自分の嫁さんに対しても愛人に対しても……、こう、何て言うかな、それぞれ同じように愛してるんだと思う」
「そんなのわからないよ」

裕作は吐き捨てるようにそう言った。
小夏も「気持ちはわかる」とばかりに、何度も頷いて見せた。

「まあ万人向けの心情じゃないわよね。一夫多妻な考え方よ。でもこれは本当。亡くなった奥さんも、今、五代くんの奥さんになってる女性も……、そしてあたしや他の女の人たちも、みんな同じように……」
「え、じゃあ小夏さんみたいな人って、他にも……」
「いると思うけど。少なくとも2〜3人はいるでしょ、あいつ精力絶倫だったし」
「……」
「好意的な見方をすれば、病弱そうだった奥さんにあまり負担は掛けられないから、外に女を作ってたのかも知れない」
「そんなの……、言い訳ですよ」
「ええ、あたしもそう思うわよ。そもそも結婚する前からのつき合いなんだから」
「……」
「でも、瞬の肩を持つわけじゃないけど、あれはさっきも言ったけど絶倫の類だったからさ、特定の恋人がいても我慢できないことも多かったんじゃないかなあ」
「我慢……」
「まあ一人前の男なら、そんなこと自分で処理できるでしょうけどね。もうセックスを知ってしまった大の男としては、そういうのは虚しいのかも知れないわね。それに瞬の立場なら──、そうしてくれる女性には困らなかったでしょうし」

聞いているうちに裕作は何だか脱力してしまった。
思考がまるで異なっている。
とてもじゃないが、理解出来そうになかった。
だが、相手の女性側がそれで納得しているのなら、赤の他人である裕作がつべこべ言うべきことではないのだろう。

裕作が言葉に困っていると、小夏はさっさと話を切り上げてしまった。
吸っていたタバコの火だけ器用に折って揉み消し、すっと立ち上がる。

「わかった? じゃあ……」
「じゃあって……」
「だから。寝るんでしょ?」
「寝るって、その……」
「何度も言わせないでよ。セックスするの」
「ま、待って……!」

ジャケットを脱ぎかけていた小夏を裕作が慌てて止めた。
こういう状況で、尻込みしている女の服を脱がせると言うのなら話はわかるが、服を脱ごうとしている女を止める男はそういないだろう。

「なあに? しないの? それとも、あたしなんかと寝たくない?」
「ち、違うんだよ、わかってよ……」
「……」

小夏は動きを止め、ふっと小さく息をついた。

「……したくないの?」
「……その気になれない。あ、誤解しないで欲しいんだけど、小夏さんが嫌いだとか魅力がないとか、そういうことじゃないんだ。あ、あの時も思ったけど……、こ、小夏さん、綺麗だと思うよ……」

裕作が顔を真っ赤にしながらそう言ったのを聞いて、小夏は一瞬呆気にとられ、直後に吹き出した。

「ご、ごめんなさい、笑ったりして。でもさ……」

そう言いながら、また手に口を当てて笑いを噛み殺している。
今度は裕作が唖然とする番である。
ひとしきり声を殺して笑ってから、ようやく小夏はドスンとソファに腰を下ろした。
脱いだジャケットはそのままベッドに放り投げる。

「ああ……、おかしかった。ごめんね、笑われるって気分良くないよね。でもさ、なんかこう……、五代くんらしくって安心しちゃった」
「オレらしい?」
「うん。何かもうイメージ通りってか、期待した通りの反応だったからさ、あははっ……」
「期待した通り?」
「そ。あたしはきみに抱かれるために来たんだけど……、でも、この場面で喜々としてあたしを弄ぶような男だったら……、幻滅しただろうな。抱かれることは抱かれただろうけど。まあ、あたしはこんな女だから、そんなこと言う資格なんかないけどさ」

そう言って小夏は「うんっ」と言って、手足を伸ばした。
しなやかそうな肢体が、服の上からも容易に想像できる。
小夏は、思い切り伸びをしてから首をぐるぐると回転させた。

「で? じゃあ、どうする? もう帰る? 奥さん、まだ帰ってないでしょ?」
「……そうだね。じゃあ、もう少し話を聞かせてくれないかな」
「いいわ。あたしが知ってることなら……、言える範囲のことなら何でもどうぞ」

小夏は再びニコニコして裕作と向き合った。
裕作は、なぜこんな美人が自分に対して好感を持ってくれているのか、さっぱりわからない。
だが、それよりも今はいくつもある疑問を解消しておかねば据わりが良くない。

「まず……、三鷹さんはなぜ小夏さんをオレのところへ遣わしたんだろう?」
「ああ、それね」

小夏は何度も小さく頷いた。

「まあ簡単に言えば……、そうね、罪滅ぼしというか……、ちょっと違うかな、あいつなりに気を回した結果、なのかな」
「よく意味がわからないけど……」
「ん、だからさ、この時間……、五代くんはいてもたってもいられないんじゃない? ……言いにくいけどはっきり言うわね。今、まさにこの時間にさ、五代くんの奥さんは瞬のやつに……」
「あ……」

そうだった。
小夏との突然の再会に驚き、動転していて、そのことがすっかり頭から抜けていた。

「でしょ? だから……」
「罪滅ぼしって……、じゃあ三鷹さんが響子を抱くから、そのお詫びというか見返りにきみを……、自分の女である小夏さんをオレに抱かせるって、そういうことですか」

裕作の声が少し低くなる。
その口調に、ほんの少しだけ迫力を感じて、小夏はここへ来て初めて緊張した。
裕作は少し声を震わせている。

「そんなの……、そんな勝手な理屈はないでしょう! 小夏さんに対してだって失礼だ」
「まあまあ、そう興奮しないでよ。ほら、もう一杯どう?」
「酒飲んでる場合じゃありません!」
「落ち着いてって。わかってるわよ、こんなの瞬の独りよがりだし、それできみを懐柔しようなんて思ってるわけじゃないってば」
「……」
「五代くんたち夫婦にあのバカが何を頼んだのか……、大体のところは聞いてるから、それは言わないし、聞かないわね」

小夏は少しだけ言いにくそうにそう言った。

「今も言ったけど、これはあくまで瞬の……、そうね、余計な気遣いってことよ。「思いやり」という名の「お節介」。大きなお世話。だからきみは当然拒否する権利もあるわ。でもね、これだけはわかってあげて欲しいんだけど、瞬は悪意とか五代くんを小馬鹿にしてこういうことしてきたってわけじゃないのよ」

そこでいったん小夏は言葉を切った。
裕作が何も反論しないので、そのまま続ける。

「自分がそうだからってわけじゃないでしょうけど、今の五代くんの感情を考えて、誰か他の女でも抱かせれば気休めになるか、とか考えたんじゃない? それと……、これは穿ちすぎかも知れないけど、もしかしたらバランスを取ろうとしてるって面もあるかもね」
「バランス?」
「そう。奥さんは意に染まず瞬に抱かれなきゃならないわけでしょ? それも一度だけで終わるとは限らないし、その間も当然五代くんたちは夫婦として一つ屋根の下で生活するわけで……、これは気まずいし、虚しいじゃない? だから五代くんにも同じことをしてもらえばお互いの気持ちが少しは「相殺」出来るかも、とか、こう……、何て言うか……、ね? 言いたいこと、わかるでしょ?」
「わかりますけど……、でも、理解はできないよ。まるで小夏さんをモノか売春婦扱いにしてるじゃないですか!」
「ちょ、待って」

思うままに感情を吐き出していた裕作を、小夏がそこで止める。

「きみさあ、あたしが瞬に命令されたからここへ来たと思ってんの?」
「え……? ち、違うの?」
「待ってよ、それこそあたしに対して失礼じゃない? 確かに瞬に頼まれはしたわよ。でも「断ってくれていい」って言われたもの」

予想外の返答に裕作の矛先が弱まった。

「そ、それじゃあ何で……」
「あたしの意志よ。あたしが「行ってもいい」と思ったからここへ来たの。その意志を五代くんは無視するわけ?」
「……」

言葉を返せなくなった裕作に、今度は小夏の方がたたみ掛けていく。

「さっきも言ったけど、瞬にはあたしみたいな女が何人かいるのよ。瞬が言うには、その全員に今回のこと──つまり五代くんと寝るってことよね──を頼んでみたんだってさ」
「え……」
「全員断ったそうよ。当たり前よね、あたしだってそんな話、受ける気なんか全然なかったもの」
「じゃあ……、じゃあ何で……」

裕作はさっきと同じことを繰り返して尋ねた。
小夏はそんな裕作の顔を上目遣いで覗き込むように見ながら答える。

「……相手がきみだったから」
「は……?」
「五代裕作くんが相手だとわかったからよ。だったら受けてもいいって……」

またしても裕作は言葉に詰まった。
口を開けて何か言おうとしているようだが、あうあうと意味不明の音しか漏れ出てこない。
まさか、そんな告白があるとは思わなかったからだ。
小夏は平静を保ちつつ話を続けた。

「詳しい話を聞いてると、どうも相手がきみらしいってわかったのよ。念のためにフルネーム聞いたら「五代裕作」だって……。びっくりしたわよ、まさか瞬ときみにそういう繋がりがあるとは思わなかったもの。でも……、だからあたしはこの話を受けたの」
「……」
「もちろん、それ相応の「お礼」はくれたわよ。もうひとつの条件も呑んだし」
「もうひとつの条件……?」
「あ、それはいいの、五代くんたちには関係ないから。でも、あたしが「やってもいい」って返事をしたら、さすがの瞬も驚いてたわよ。そりゃそうよね。瞬にはあたしと五代くんの関係──ま、関係ってほどの関係じゃないんだけどね──は一切話さず、あたしはここへ乗り込んだわけ。最悪、同姓同名の別人だったとしたら、適当にその場を誤魔化して帰っちゃったでしょうね。相手が怒ることになっても知ったことじゃないし」
「あの……、小夏……さん」
「ん?」

ようやく口を挟めた裕作が恐る恐るといった感じで聞いてきた。

「あなた何で……、って、さっきからオレ、このフレーズばっか使ってますけど、わからないことだらけなもんで……。あ、それはともかく……あ、相手がオレだから「来てもいい」と思ったってことは……」
「うん。五代くんなら抱かれてもいいかなって」
「……!!」

この手の告白をされたのは、恐らく裕作の人生にとって初めてのことである。
結婚した響子にしたところで、プロポーズは自分からしたわけだし、響子の口から「好き」と言う言葉を聞いたのは、初めて結ばれた夜のことだ。
況して「抱いて欲しい」といった類のことは一切言われていない。
思い返せば、相手をセックスに誘ってそれが成功したのは、コンパの時の白石衿子くらいだ(結局、この時は途中で偶然に響子と出くわしてしまい、未遂に終わったわけだが)。
それくらいだから「抱かれてもいい」となんて言われたことがあるはずもなかった。

「あたし、五代くんのことけっこう好きだったもの。まあ結婚したいとか彼氏になって、とか、そういうのとは少し違う気がするけど……。でも、北海道で会った時も興味を持ってたのは事実よ。だから……」

途中まで言いかけた小夏は、言おうかどうしようか迷った風情している。
だが、そう見せているだけで、実は思わせぶりを言っているのかも知れない。

「だからあの時も……。五代くんに、あたしの方からキスしたじゃない? って、こんなセリフ、奥さんには聞かせられないね……」
「……」
「で、その時はキスだけだったけどさ……、実は五代くんに「抱かれてもいい」って思ってたのよ、あたし」
「ほ、本当に……」
「うん。あの頃はあたしも色々あったからさ……。ちょっと寂しかったっていうのはあるかも知れない。ペンションで隣部屋だと知ってたら、ふふっ、あたし、夜這いかけてたかもね」

小夏は際どい冗談を言って笑った。
裕作は、やや言い淀みながらも口を開いた。

「で、でもさ……、だからと言って……、それじゃあ小夏さんがあまりにも……」
「……やっぱ優しいよね、五代くんてさ。思った通り」

小夏は頬杖を突き、微笑んで言った。

「そういうところ、好きよ。だから抱かれる気になったんだもん」
「あの……、そのことで、ちょっといいかな?」
「なに?」
「いやその……、なに?って改めて聞かれると困っちゃうんだけど……」

裕作は言いづらそうに頭を掻いた。

「小夏さんはその……、好意を持った相手なら、その……」
「ん? ああ、誰とでも寝るのかってことね? なら答えはノーよ」
「……」
「勘違いしないで欲しいんだけどね、あたしは別に男なら誰でもいいっていう、いわゆる「ヤリマン」……って、女が使う言葉じゃないわね。でも、そういうんじゃないのよ」
「そ、そうなの?」
「当たり前でしょ? それじゃあ色情狂じゃないのよ。でもね、ある意味できみの言うのも当たってる」
「当たってる?」
「うん。あたしは……、誰とでもってわけじゃないけど、好感を持てた相手なら別にしてもいいと思ってる。なんか言い訳みたいでイヤだけど、あたしにとって男と寝る……セックスっていうのは、こう……、誤解を恐れずに言えば「挨拶」……みたいなものかな」
「あ、挨拶?」
「そう。ほら、外国人なんかさ、人前でも平気でキスしたりするじゃない? べったり抱き合ったりとか。日本じゃとても考えられないよね。でも彼らにとっては普通のことなのよ。まあ、これはあたしがアメリカやオーストラリアに旅行してみて初めてわかったことなんだけどさ。他にも……」
「え……、あっ」

小夏がいきなり抱きついてきたので、裕作はかなり焦った。
ふわっとした柔らかそうな髪から甘くて良い香りが漂ってくる。

「こういうの、あるじゃない? ハグってやつ。あと……」
「わっ……!」

今度はキスするのか思うくらい顔を近づけてきた。
慌てて裕作が顔を背けると、小夏はその頬に自分の頬を擦りつけてくる。

「こういうやつ。これも広い意味で「キス」らしいんだけどね」

小夏が離れて腰を下ろすと、裕作は真っ赤な顔をしている。
酒が回ったから、という言い訳は利かないだろう。

「ハグとか今のキスとかってさ、親密さを表す表現ではあるけど、性行為とは別物なのよね。唇同士のキスにしても、ディープじゃなければ仲の良い友人とだって、それこそ親子でもするんだもの。ちょっと話が脱線しちゃったけど、あたしにとって──恐らく瞬にとってもそうだと思うけど──、それと同じなんだ、セックスっていうのも。挨拶とか握手に近い感覚」
「性行為じゃない……、と?」
「そこまでは言わないけど。でも「絶対に操を守る」とか「恋人や夫以外の男には許さない」とか……、そういう感情は薄いわね」
「そ、そうなんだ……」
「そう。だからその場で……、こう、盛り上がっちゃったら行きずりの相手でも寝ちゃうかもね。五代くんの場合もそう。もともと興味あったし、けっこう好きになれたから「五代くんなら」と思ってここへ来たの。おわかり?」

そう言って小夏は微笑んだ。
妖艶さとか色気のあるそれではなく、親しい友人と楽しい時間を過ごしている……、そういう笑顔だった。

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結局、裕作は小夏とはベッドを共にせず、話をしただけで帰宅した。
何というか、いかにも彼らしいエピソードだが、もともと裕作はそんなつもりで出かけたわけではないし、響子のことを思えばとてもそんな気になれなかった。

さらに、響子より早く帰る必要があった。
傷心の妻が帰宅した時、家を空けているわけにはいかないのだ。
とはいえ、裕作は帰ってきた響子をどう迎えればいいのか、さっぱりわからなかった。
「ご苦労さま」というのも何だか変だし、意味深に取られてしまっても困る。
そんなことを考えているうちに妻が帰ってきた。

「ただいま……」
「あ、お帰り」

力なくそう言った妻に芸もない言葉だと思うのだが、やはり「お帰り」がいちばん良い気がした。

「あなた、ご飯は……」
「大丈夫、適当に食べたから。響子は?」
「私も……。あんまり食欲なかったけど」

そう言うと、響子はどさりと座り込んだ。
そんな愛妻に何と言葉をかけていいのかわからず、裕作は茶を煎れて響子に勧めた。
響子はそれを飲むでもなく、じっと見つめていた。
この「間」がたまらず、裕作は声を掛けた。

「あ、あの、響子。オレは……」
「いいの。何も言わないでいいの」

響子はそう言って、夫の言葉を止めた。
そして顔を俯かせたまま、小さな声で言った。

「……あなたの気持ちはよくわかってるつもりです。だから何も言わないで」
「……」
「すみませんけど、私、ちょっと疲れちゃって……。もう休みますね」
「あ、じゃあ布団を敷くから」
「平気です。あなたは?」
「ああ……。じゃあオレも寝ようかな」
「……わかりました」

何もしてやれず、言葉を掛けることも止められた裕作は、寝具を用意している妻をもどかしげに眺めていることしか出来なかった。

ふたりとも不器用で、そして相手への気遣いが過剰だったのかも知れない。
響子は、泣き出したい気持ちを抑えずに、素直に夫の胸に飛び込んで甘えればよかったのだ。
裕作は、その妻をそっと優しく抱き留めてあげればいいのだ。
もし妻が何もしてこなかったとしても、裕作の方から抱きしめてやればよかったのである。
響子は、他の男に抱かれてしまったことを恥じていたし、裕作は妻の身体に別の男が触れたという事実が頭から離れない。

夫は、妻の身体から薫る薄甘い芳香が大好きだった。
しかし、もしその匂いに混じって男──瞬の残り香がしたらどうしようと酷く恐れた。
妻も同じで、事後のシャワーで肌が赤くなるくらいしっかり洗い落としたつもりだが、いつもと違う匂いがしたら、夫を傷つけることになるだろうと察した。

いつもの通り、ふたりは布団を並べて横になったが、灯りを消してからも夫が妻を自分の寝床に呼ぶことはなかったし、妻も夫の布団に潜り込むようなことはしなかった。
互いに背を向けて眠ったふりをしている。
そのくせ、背中を──というより全身を耳にして相手に聞き耳を立てていた。
たまに衣擦れの音がするだけで、どちらも声を掛けたりはしなかった。

だが、会話などいらなかったのだ。
いつも通り抱けばよかっただけだ。
何もセックスまですることはない。
抱きしめ合って、互いの体温の温かさを確認すれば良かっただけだ。
そうすれば、ふたりも少しは慰められたことだろう。

響子は、他の男に抱かれて穢れた身体を夫に捧げるのが辛かった。
だが、もし裕作が求めてくれば、それは応じるつもりだった。
裕作の性格を考えれば、むしろ自分の方から誘った方がよかったのではないか、とも思った。
だがそれも、何となくわざとらしい感じがして、その一歩が踏み出せなかった。

裕作は、布団にくるまって背中を向ける妻を見て、胸の奥が不快に熱くなっていくのを感じていた。
しばらく経ってから、それがいわゆる「嫉妬」であることにようやく気づいた。
妻を奪われたような悔しさと口惜しさがタッグを組んで、裕作の胸を白く灼いた。



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