もうこれで何度目になるだろうか。
響子はそんなことを思いながら、瞬の夕食につき合っていた。
今日は和食──会席料理だそうである。
小さな器や皿、椀がいくつも出て来るフルコースのような料理だ。
よくは知らないが、きっと高級なものだろう。
響子は、おいしいものは好きだったが、美食というものにはまったく興味はなかった。
自分で調理するのが好きだったから、高級食材を使うよりはむしろスーパーで安い食材を見つけて創意工夫しながらおいしい料理に仕立て上げる方がずっと楽しかった。
和食で高級と言えば思いつくのは寿司くらいで、響子にとっても江戸前の寿司やせいぜいうなぎくらいしか食べたことはない。
こういうものを裕作と一緒に食べたらどうだったろう。
きっと自分もあの人も味わうより緊張の方が先立ってしまって、何を食べたかよくわからず、互いに苦笑して顔を見合わせたことだろう。
そんな彼女の感覚としては、瞬の「つき合っている」だけであり、一緒に食事を楽しむ……という感じではないのだ。
その証拠に、箸はつけているものの、あまり料理は減っていない。
瞬としては、セックスはもちろんだが、その前戯のひとつとして食事──デートも楽しみたかったのだが、さすがにそれは贅沢だったかも知れない。
どうあれ、彼女にとっては浮気であり不倫であり、夫を裏切る行為に他ならないからだ。
しかし、二回目の時に彼女を初めて気をやらせてから少しずつ変化が出てきているように感じていた。
何しろ、最初と二回目の食事はまったく手をつけなかったし、瞬の話も生返事ばかりでまともに相手をしてくれなかったのだ。
本来そんな気難しい女ではなし、むしろ人は良いはずなのだが、やはり夫のことを思えば瞬に愛想を振りまいたりは出来ないし、楽しむなんて論外だと思っていたのだろう。
だが、理由はわからないが変化は生じてきている。
まさか、彼に絶頂まで導かれたから──では、あるまい。
響子はそんな女ではないことくらい、瞬もよく知っている。
響子はぼんやりと窓から見える夜景を眺めたり、料理を興もなげに見つめたりしていた。
たまに瞬の顔も見たが、何だか少し印象が変わった気がした。
自信家で強引なほどの積極性を持っている男だが、少し痩せた感じがする。
以前も贅肉のないスタイルでスマートではあったが、筋肉質だったし痩せている印象はなかった。
が、今は少しだが頬が痩けている気がするし、太そうな首筋も心なしか細くなった気がした。
そう言えば、この男は重病なはずだ。
なら、だんだんと痩せていって当然なのか。
「……どうかしましたか?」
「いえ、別に……」
響子は問いかけにも気のない返事をした。
それでも、前菜のいくつかは口に運び、椀も半分ほどは飲んでみた。
お造りも三切れほどは食べ、今は主菜らしい牛肉の網焼きが前に出ている。
何も食べず、返事くらいしかしてくれなかった前回までと比較すれば、だいぶ解きほぐれてきてくれていると瞬は実感した。
恐らくは今回の件で、夫の裕作との関係がギクシャクしているのだろう。
それについては申し訳ないとも思うのだが、今の瞬には時間がない。
そのことすらも「好機」と捉え、目的を果たすしかなかった。
「こういうところ初めてなもので、ちょっと……」
「緊張してますか? はは、そうかも知れませんね。あなたがそう思うかと思って、個室にしたんですが」
部屋にはふたりっきりである。
他の客はいないし、世話をする仲居も料理を運んで説明したり、膳や器を下げる時にやってくるだけだ。
しかし響子にとっては、ふたりっきりだからこそ警戒しているという面はあるだろう。
瞬はさりげなく言った。
「まあ、そう固くなることはありませんよ。ここは有名なお店ではあるんですが、それほど高いわけじゃありません。そうですね、今回のコースでも1万5千円くらいです。高いところを探せば、この3倍、5倍くらいするところもありますよ」
「それでも充分高いですよ、私たちにとっては。1万5千円もあったら、夫婦で一週間くらい食べられますから」
「そうですか?」
「そうですよ。外食だって、定食とかおそばとか……、ラーメンとか。それくらいです。お寿司を食べに行くことだって滅多にありませんから」
「なら、余計に今を楽しんで下さいよ。あなたにリラックスしてもらって、少しでも楽しんでもらえなければ僕も張り合いがない」
「……」
そう言う男の気持ちもわかるが、あくまで相手が恋人や妻だった場合だ。
今のふたりの立場は、どう言い繕っても不貞なのである。
しかも響子にとっては「致し方なく」なのだ。
さほど会話は弾まなかったが、響子に今までの固さが取れ、食事もそれなりに食べてはくれた。
牛の網焼きの後は海鮮てんぷらの揚げ物、そして茶碗蒸しと続いてから、〆の炊き込みご飯に香の物、椀がついた。
一品一品の量は少なかったが、それでもこれだけメニューが続くとは思わなかったようで、響子も少し驚いていた。
もともと食欲のある「状況」ではないのだ。
それでも少しずつ食べてあとは残したせいか、最後まで味わうことは出来た。
それどころか、最後の水菓子に出たザクロの甘酸っぱいアイスクリームが殊の外美味だったようで、響子は目を輝かせて平らげてしまった。
その様子を微笑ましく見つめていた瞬が
「ご満足いただけましたか?」
と尋ねると、響子は少しだけ頬を赤らめて
「はい……、アイスが美味しくて、少し食べ過ぎてしまいました……」
と答え、はにかんで見せた。
事前の裕作との諍いのせいか、響子はほんの少しだけ瞬に対して親近感を覚えた。
────────────────────
瞬は、響子はかなり揺れ動いていることを覚った。
それは食事での彼女の様子や言動を見てもわかったし、前回のセックスで感応してしまったことでも薄々感じ取っていた。
何やら裕作と諍いもあったらしいし(恐らくは瞬と響子の関係について、だろうが)、今の彼女なら以前より脆くなっているに違いない。
チャンスである。
無論、響子を自分のものにすることは不可能だが、一時でもいい、そう思わせてくれることくらいは出来そうだ。
それにはやはりセックスがキーになるだろう。
響子と裕作の絆は深い。
残念ながら、瞬はそこへ食い込むことに失敗し、敗北したのである。
愛情の点では勝ち目はなかった。
こちらの一方的な思い込みだけでどうにかなるような女ではないのだ。
ならば──夫の裕作に比べて、瞬の方が優っている事象で勝負するしかない。
だが、金銭など経済的なもの、物質的なものでは響子という女は靡かない。
それは瞬が裕作に敗れたことで証明されている。
勝機があるとすれば、裕作との間に出来たヒビを利用し、そこから漏れ出た愛情につけ込むことである。
裕作と仲違いしたら──一時的なものであるにせよ──、誰かに縋りたくもなるだろうし、甘えたくもなろう。
そしてセックスだ。
響子という女は慎ましやかだが、性感は極めて良好な上、貪欲な性欲を抑え込んできたらしいフシがある。
今回はそれをほじくり出して、瞬の持つテクニックを総動員して堕とすしかない。
完全に「寝取る」ことは難しいし、そもそも瞬にそんな時間は残されていないが、少なくとも今回の件を瞬への同情や金銭との引き替え以上のもの──すなわち「瞬とのセックスが気持ち良い」と思わせることは出来るかも知れない。
彼はそこに一縷の望みを託していた。
前回の行為から考えて、あと一押しだと思っている。
となれば、今回は心を鬼にして、響子を徹底的に嬲ってみよう。
何度も何度もいかせて、泣いて許しを乞うても許さずに気をやらせ続けるのだ。
その上で響子から求めさせ、挿入し、射精する。
そしてまた絶頂させる。
そこまでやったらどうだろうか。
瞬はそう決意し、行為に臨んだ。
響子はいつもように、着衣を全部脱いでから(瞬に脱がさせることは決してしなかった)、ベッドに横たわった。
身体を堅くして彼を待つのもいつものことだったが、今夜はいつになくそわそわしているように思える。
やはり前回のことが頭に残っているのだ。
とは言え、前回はあまりに快楽を得てしまったから今回も期待している──などという浮ついた気持ちではなく、今夜も前のように乱れてしまったらどうしよう、裕作に申し訳ない、という、貞淑な妻としての心情故であった。
そうした響子の思いなど、経験豊富な瞬はお見通しであり、だからこそ攻略したいと強く願うのである。
それに、その夫への思いを逆用し、裕作を愛しているのに瞬に抱かれて強く感じてしまう羞恥や被虐感を煽り、より強い快感へと導いてやれるかも知れない。
瞬はいつも以上に気合いが入るのを感じた。
白いシーツの上に横たわる響子の美貌とそのスタイルの素晴らしさに、瞬は改めて生唾を飲み込む思いだった。
肌は滑らかであくまで白く、若い張りや艶は控え目だったが、その分、しっとりと熟れた魅力を放っている。
乳房は豊満なだけでなく、子供を産んでいないせいか、まだ瑞々しさを保っていた。
腰の張りや潰された臀部、そして太腿にはたっぷりと肉を蓄えているが、ウェストや膝、足首など、締まるところはきゅっと括れている。
無駄な贅肉は一切ついていない……というわけではなく、程よく適度に脂肪が乗った、男なら誰でも「抱いてみたい」と思う人妻の裸体であった。
その横にすっと滑り込むようにして瞬が身体を寄せていく。
響子は一瞬、身体をビクリとさせた。
恥ずかしいのか、まだ躊躇いがあるのか、顔を背けたままの響子を見ながら、瞬はその乳房へと手を伸ばした。
「っ……」
触れられた瞬間、響子はピクリと反応したが、またすぐに身を固くして彼の愛撫に堪え忍ぼうと備えている。
瞬の愛撫、そしてセックスに溺れるようなことがあってはならない。
あくまで金銭との引き替えに、この身体を提供するだけのことだ。
もし「それ以上」になってしまったら、裕作に申し訳ないというより、彼への思いまで薄れてしまうような気がしてきている。
響子は、左手薬指にはめた結婚指輪を見つめて裕作を思い起こし、ぎゅっとその手を握りしめた。
しかし一抹の不安は隠せなかった。
初回こそ「人形のように」反応せず、やり過ごしたものの、前回ははっきりと感じさせられてしまい、気をやってしまった。
「いってない」と誤魔化したものの、百戦錬磨の瞬には恐らく知れてしまっただろう。
今晩また、あの日と同じような──いや、あの日以上の責めと受けたら、とても耐える自信がなかった。
「んっ……」
響子は思わず鼻から息を漏らした。
瞬の手が彼女の乳房を鷲掴みにしたのである。
その豊かな乳房は、握りしめると瞬の大きな手からも指の隙間から肉が溢れるほどのボリュームを誇っている。
やわやわとしばらく揉んでいるだけで、早くも響子の乳首が固くなっていく。
瞬が手のひらでそっと乳房を上から押し、軽く回転させる。
すると、たちまち乳首はぷくんと膨れあがり、手のひら中心の窪みに心地よい刺激を与えてくれた。
さらに瞬は乳房を握りしめて乳首を括り出させると、にょきっと顔を出したそこを唇で吸い、舌で舐め、歯で軽く甘噛みしてやった。
「ふっ……、あ……んっ……」
優しく愛撫されたかと思うと、今度は強く揉みしだかれる。
あるいは唇と舌を使って、乳房の裾野から麓まで念入りに吸い、舐め込んでいった。
口を離すと、今度は指で両方の乳首を摘み、ぐりぐりと揉み込んでいく。
愛撫自体はまだおとなしく、どうにもならぬほどの快楽ではない。
だが、小さいが確実に快美感を送り込んでやると、響子は僅かに唇を開け、小さく喘いだ。
自分が喘いでしまったことに気づき、響子は慌てて人差し指を咥え、はしたない声と息遣いを堪えていく。
彼の指や口が急所を刺激するたび、響子はクッと全身を息ませ、強く指を噛んだ。
それでも瞬の愛撫が止むはずもなく、じっくりと響子の肉体を燃え立たせている。
乳首が固くなっていくのがわかる。
それだけではない。
あそこまで熱く濡れ始めているのが実感出来てしまう。
乳首もクリトリスもずきずきと疼いて止まらない。
響子は早くも絶望的な思いに打ち拉がれていく。
(ああ、だめ……、ま、また感じさせられてしまう……)
しかも今日は前回とは明らかに違っている。
この前は、まるで響子を焦らすかのように、わざとポイントを外し、その周辺を責めることで追い込んでいった。
なのに今日は、かなり直接的に乳首やクリトリスなど、性神経が集中している箇所を執拗に責めてきている。
乳首だけでなく、媚肉ともっとも敏感な肉芽まで責められ、響子は早くも息を荒くしてきていた。
無意識のうちに瞬の腕を押さえているが、そんなことで男の力に敵うはずもない。
瞬の方は、そんな響子の儚い抵抗をむしろ愉しむかのように胸や脚、そして股間を嬲っていった。
必死に快楽を我慢している響子の横顔を眺めながら、その耳元で瞬が囁く。
「……どうです、響子さん。気持ち良いでしょう」
「しっ……、知りませんっ……あっ……」
進歩だ、と、瞬はほくそ笑んだ。
こうした場合、今までは「違います」と冷たい声で否定するか、無視して答えなかったのだ。
否定は出来ず、返事もしない、ということはなくなっている。
「そうですか? でも、ほら。こんなに濡れている。おっぱいだって……」
「あうっ」
「ほら。乳首もこんなに固くなって立ってますよ。いいんでしょう?」
「だ、だから、私はっ……わからないっ……くうっ……」
「わからない、か……」
瞬はコクッと小さく頷き、響子の細い顎を摘んで自分に向ける。
そして、息を飲む響子にはっきりと宣言した。
「……いいですか、響子さん。今日は手加減なし、です」
「手加減、て……」
「少し「手応え」が出てきたことですし、ご存じの通り、僕にはあまり残された時間もない」
「……」
「だから今日は……、今日こそはあなたを屈服させるつもりです」
「く、屈服って……」
「心まで奪おうとは思いません。そこまであなたや五代くんを見くびってはいない。が……、この身体」
瞬はそう言って、響子の乳房をまた摘んだ。
「あっ……」
「この身体だけは……、今回、僕のものにしてみせる。そして……、あなたが感じていることを認めるまで、絶頂したことを認めるまで徹底的に責めるつもりです」
「こ、怖いこと言わないでください……」
響子はそう言って身を縮めた。
まるで「叩きのめすぞ」と脅されているような感じだ。
実際、瞬はそう言っているのである。
今日こそは、響子の身体を「叩きのめす」くらいに責め上げていかせてみせる、というわけだ。
その上で……、その上で中に出される。
そう思うと、響子はぶるっと震え、そして生唾を飲み込んだ。
「いいですね?」
「や……、いやです、そんな……、ふ、普通に……普通にしてください、じゃないと私……」
「どうなると言うんです? 感じて、いってしまいそうだ、と、でも?」
「……」
「それでいいんですよ。じゃ、いきますよ」
「あ……、はああっ……」
男の口が乳首に吸い付くと、つい甘い声が出てしまった。
ハッとして唇を噛んだが、今度は歯を立ててそのまま「ちゅううっと」強く吸い上げられた。
響子は悩ましげな角度に眉を寄せ、照明に映える白い裸身を反らせた。
形の良い乳房が揉み潰され、こねくり回されている。
乳首は強く吸われているだけで身震いするほどの快感なのに、瞬はその根元に歯を当てて、擦ってきた。
鋭く重い快感がズーンと突き抜け、子宮にまで到達して痺れさせている。
「くうっ! はあっ……、だめ! そこ……ああっ……み、たかさんっ、つ、強く吸い過ぎ……あううっ」
瞬は響子の喘ぐ顔を確認しながら、なおも乳首の根元を責め続ける。
股間に回した手も胸へ移動させ、集中的にそこをいじくった。
響子は、声を出すまいと右手の人差し指を噛み、左手で瞬の腕に爪を立てている。
男の口は、信じられぬほど器用に責めてきた。
乳首の付け根を歯でくじりながら甘噛みを繰り返し、勃起してジンジンしている先端を舌先で押し返す。
「ああっ……、そんな、乳首ばかり……あっ……いっ……はあっ……んっ、だめ……ああ……」
執拗に乳首を責められ、響子はそこが自分の弱点のひとつであることを思い知らされた。
惣一郎との時は、そんなことを意識するまで経験することはできなかったが、裕作と結婚して閨を共にするようになってから、次々と性感帯が見つかっていった。
膝の裏、腿の内側、そして乳首もだ。
乳首はクリトリスと並んで、どんな女性でも強い快感を得られるポイントのひとつではあるが、響子はその乳首が特に感じてしまうようだった。
胸肉を揉みしだかれ、乳首を虐められると、もうたまらないとばかりに響子は激しく顔を左右に振りたくった。
もう指を咥えているどころではなく、いくら歯を食いしばっても甘い声が零れてしまうようになってきている。
「三鷹さん、もうっ……そ、そこは許して、ああっ……くっ……だめ、私っ……ああっ!?」
それまで控え目に喘いでいた艶やかな声だったのが、突然、絶叫のような鋭い声となってほとばしり出た。
瞬は甘噛みしていた乳首に、強く歯を食い込ませたのである。
美貌の人妻は、背筋をたわめてぶるぶると痙攣していた。
掴んでいた瞬の腕に爪を食い込ませ、全身をわななかせている。
「あ……、はあっ……はあ、はあ……」
浮いたお尻がベッドに落ち、響子は呼吸を整えている。
どうやら軽く達したらしかった。
これには瞬も少し驚いていた。
感じやすいとは思っていたが、胸を責めていただけなのに(とはいえ、彼女の急所である乳首を執拗に責めていたのだが)、深くはないものの気をやるとまでは思わなかった。
軽く開いた股間の中心に触れてみると、さっきよりも蜜の量がかなり増えている。
見れば、シーツに染みができていた。
瞬はそのまま恥毛の上から媚肉を軽く撫でながら言った。
「……もういきましたね」
「あ……」
「素晴らしい身体ですよ、前戯だけで……」
「ち、違います、私……」
「恥ずかしがらなくていい」
瞬はそう言うと、そっと顔を近づけていく。
何をしようとしているのか覚った響子は、咄嗟に両手で瞬の顔を押し返した。
「だ、だめです、それは……」
「……」
「お願い……、キスは……、キスだけは許して下さい……」
無理に、あるいは渋々性交するのは仕方がない。
だがキスだけはしたくなかった。
ある意味、響子はセックスよりもキスの方が好きであり、これは好いた相手としかしたくなかったのだ。
瞬もそれを察したのか、意外なほどにあっさりと手を引いた。
だが諦めたわけではなく、きっと響子の方からキスを求めてくるようにさせるつもりだった。
「あっ、またっ……」
響子は身をすくませ、呻いた。
キスしてくれない仕返しとばかりに、瞬がまた乳首を攻撃してきたのである。
いやいやするように顔を振る響子に構わず、瞬は乳首をこねくり、音がするほどに強く乳首を吸った。
その鋭い快美感にビクンビクンと反応して跳ねる裸身を抑え込むように、瞬は乳房をぎゅうぎゅうと強く揉みたてた。
「んっ、ああっ、いっ……はあっ、だめっ……や、胸はもう……ひっ……ち、乳首おかしくなっちゃいますっ……やあっ……うああっ……」
立て続けに責められる響子も、自分の身体が信じられないくらいだ。
なぜ乳首しか責められていないのに、ここまで感じてしまうのか。しかもさっきは本当にいってしまったのだ。
乳房と乳首から押し寄せる喜悦が電流のように全身を走り、体内にはどんどんと熱が籠もっていく。
この「熱」の正体がきっと「絶頂」なのだろう。
これが一気に発散されると「気をやった」状態になるのだ。
響子はその熱を放出するのように「はああっ」と熱く太い息を吐き、首を反らせて喘いだ。
もう声を抑える気にもなれない。
そんなことをすれば、ますます熱が溜まっていくのだ。
身体がジンジンと疼く。
乳首は瞬の愛撫で少しは疼きが解消されている。
だが下半身──媚肉やその内部、さらにその奥の熱と疼きはどうにもならなかった。
ズキンズキンと鼓動に合わせて熱く反応し、たまらず響子は両脚をもじもじと擦り合わせた。
そこに瞬の手が伸び、合わせた両脚の間にすっと手を潜り込ませて内腿を揉み、擦る。
「くうっ……!」
響子は声を堪えつつ、それでも背が浮き上がるほどに反ってしまうのを止められない。
柔らかい腿の感触を愉しみつつ瞬が囁く。
「こっちもいじって欲しいですか?」
「……」
「おや、またダンマリですね。じゃあ仕方ない、また胸を……」
「あ、胸はもう……あ、あっ……ひっ……」
乳首を少し強くきゅっと捏ねられ、響子は鋭い声を放った。
背が浮いている。
まるで胸肉を瞬の手に押しつけているかのようだ。
それは下も同じだった。脚や股間を瞬に押しつけるように、お尻が持ち上がっている。
言葉では言えないが、もう身体の方はすっかり蕩けてしまい、瞬を求めていた。
「……すごく濡れてますね、響子さん。こうなってくれて僕も嬉しい」
「私は……」
「それとも、まだ胸を責められたいですか?」
「やっ……」
響子は脅えたように顔を振った。
これでまた乳房を……というより乳首を責められたら、きっとまたいってしまう。
それもさっきよりも激しく絶頂しそうなのだ。
それに、このまま股間を放って置かれたらどうにかなってしまいそうだ。
しかし、自分から求めるほど恥知らずではない。
どうしようもなくて脚をもじもじさせたり、知らず知らずのうちに乳房を瞬に押しつけるくらいしか出来ない。
瞬の責めが一転して緩く、ゆっくりしたものに変化していく。
乳首は撫でる程度、乳房もゆさゆさ、たぷたぷとじっくり揉み込んでくる。
じわじわと責められ、響子の性的焦燥感は強まる一方だ。
これなら、いっそのこと犯された方がマシだ。
いや、自分が瞬を「欲しがっている」わけではない。
早くケリをつけて終わらせたいのだ。
響子は、そう自分に言い訳した。
その間にも肉体の方は容赦してくれず、燃え広がってくる。
響子は涙ぐんだ表情で瞬に言った。
「も、もう胸は……、胸は許して……こ、これ以上責められたら私……」
ゾッとするほどの色香を湛えたその美貌に、瞬はゴクリとツバを飲み込んだ。
このまま一気に貫き、欲望を果たしてしまいたくなったが、ここは我慢するしかない。
今日は響子を堕とすつもりなのだ。
「では、下を……、響子さんの大事なところを責めてもいいんですね?」
「……」
返事の出来る質問ではなかったが、否定もしなかった。
黙認ということだ。
響子の潤んだ瞳を見つめながら、瞬は頷いた。
「わかりました。では……」
「あ……、ちょ、それ……あっ!」
瞬の指が媚肉の割れ目に触れる。
やや肉厚のそこを開くと、透明なねっとりした液体がぬるっと零れ落ちた。
もう内腿は響子の流した愛液でべとついている。
瞬は指でその蜜を掬い取るようにして拭い、内部の小さな孔に向かった。
その孔に指の腹を押しつけ、ぐっと押し込むような素振りを見せると、響子は「ああっ」と喘いで胸をわななかせる。
が、そこで挿入せずに、指で孔を拡げるように円を描くこそいでいく。
その間、左手は乳房を覆い、たぷたぷと揉み続けている。
焦れったそうに響子が呻くのを見てから、瞬の指はクリトリスを一度だけするっと撫でていく。
「うあっ……!」
痛烈な刺激に、響子はがくがくと腰を震わせた。
なおも指が半分顔を出しているクリトリスの包皮を完全に剥き上げ、ピクピクと蠢いているそれを親指で軽く押さえつつ、中指をぬるっと膣内に挿入した。
「ふわっ……」
響子はもうじっとしておられず、うねるように裸身をくねらせ尻を浮かせている。
挿入した中指を引き抜くと、たっぷりと蜜にまぶされている。
それをまた中に入れ、抜くことを繰り返した。
響子は激しく裸身をよじり、白い首筋を仰け反らせた。
「ああっ、指が……、あ、ああっ……やあ……うんっ……はっ、く……ああっ……」
乳首も膣も疼きっぱなしだ。
快感を与えられてはいるものの、決定的なものではない。
どうせなら一気に燃え上がらせてさっさと終わって欲しいのに、これでは生殺しだ。
響子がいい加減疼きに耐えかねていると見た瞬は、左手で腹を軽く押さえると、右手のひらを上向きにして中指をすっと挿入した。
第二関節まで埋め込むと、そっと腹の裏側付近を指先でまさぐる。
(……ここか)
やや曲げた指先にほんの少し、ざらついた感触がある。
瞬は慎重にそこを撫でていく。
「あ……!? あ、あ……んん!?」
初めて感覚に響子は戸惑い、腰を捩る。
ビリビリと弱い電気が走る感じがする。
くすぐったいような、少しだけ痛いような、それでいて不快ではなく、そのまま続けて欲しいような不可思議な感覚。
思わず脚を閉じかけるが、瞬の左腕を挟み込み、強引に押し開いた。
しばらく内部を指で擦られているうちに、何だか中の一部がぐぐっと「勃起」してくるような感じがした。
乳首やクリトリスが立ってくるのと似た感覚だ。
瞬もそれに気づいたらしく、そのポイント──小さな小さな肉の球のように膨らみ、ビクビクしているものがある。
「ここだ」と確信した瞬は、すかさずそこを責め、刺激していく。
この時、強くしてはいけない。
それでは女性は痛みしか感じない。
そこが充分に膨らんだと見るや、指の動きが一転し、激しく振動していった。
響子は目を剥き、大きく口を開けて喚くように喘ぐ。
「うあああっっ……! ひっ、やっ、ああっ、だめえっ……いやああっ!!」
響子は、膣に瞬の指を咥え込んだまま、激しく身を反らし、ビクンビクンと大きく痙攣した。
尻というより腰が大きく浮き上がり、腿やふくらはぎは筋肉が攣りそうなほどに力が入っている。
その瞬間、響子の媚肉からは勢いよく液体が噴出していた。
そのままわなわなと震え続け、やがてがっくりと尻が落ち、背がベッドに沈んだ。
Gスポットを責められたのは初めてだった。
そもそも、そんなところが自分にあるとは思いもしなかったのである。
強烈というか激烈な快感に、本当に失神してしまうかと思ったくらいだ。
響子は自分の身体の成り行きに仰天していたが、瞬の方もかなり驚いていた。
Gスポット責めでいわゆる「潮吹き」をする女性は珍しくない。
しない人もかなりいるが、してもおかしくはないのだ。
響子の場合、過去に一度も経験はなかったから知らなかったのだが、瞬の見たところかなり「潮」の量が多い。
油断していた瞬は、響子に咥え込まれた指を抜くタイミングが遅れ、その強烈な締めつけに驚かされた。
大げさでなく、一歩間違えば指の骨を折られていたかも知れない。
それだけではなく、モロに顔へ響子の潮を浴びてびしょ濡れにされてしまった。
響子はまだ息を荒く吐き、自分の状態がよくわかっていないらしい。
いかされたことはわかるが、なぜこうなってしまったのかは理解できていない。
困惑する人妻に、プレイボーイの男が言った。
「……派手にいきましたね、響子さん」
「あ……」
「それにしても……、あんなに反応するとは思いませんでした」
「い、今のは……、何なんですか……」
「あ、初めてでしたか。そうでしょうね。あそこはね……、Gスポットと呼ばれている箇所です」
「G……スポット……」
「そう。乳首とかクリトリスとか、そういうのと同じで、女性がとても感じるところなんです。ただ、そっちほど一般的ではなかったので、知らない人がいてもおかしくありません。気に入りましたか?」
「……」
そんな返事が出来るはずもなく押し黙っていると、瞬はまた響子の中に指を入れてきた。
慌てて響子がその手を押さえようとしたものの、逆に瞬が彼女の両手をひとまとめにして頭上へ持っていき、固定してしまった。
響子は慌てて言った。
「やめて……! は、離して下さいっ」
「まだ終わってませんよ、僕は入れてませんし」
「だ、だったら早くして! 私はもう……」
「まだまだ。せっかく覚えたポイントなんですから、もう少し味わってみて下さい」
「やあっ……、さ、さっきのところはもういや……っ、あ、ああっ!?」
瞬は指先でGスポットを確認すると、そこを擦り上げる。
さらにその奥の肉芽を捉えると、出来る限りのスピードで腕を往復させ、指を振動させて撫で擦った。
但し、速くはしたが力は入れていない。
敏感な箇所だけに、強くしては痛みばかりで快感などなくなってしまう。
その辺の微妙な力加減、速度加減はさすがにプレイボーイの瞬だった。
響子は「あっ」という間もなく、たちまち追い上げられ、達してしまった。
「やあああああっっ……うああっ、きゃああっっ!!」
ガクンガクンと仰け反り、腰を何度も弾ませた。
そのままお尻を持ち上げ、瞬の手に押しつけたままビクビクと痙攣していたが、やがてがっくりと腰を落とした。
朧な意識の中で、響子は愕然としていた。
初めての快感である。
男根を膣に挿入されるセックスとは、また違った鮮烈な快美感だった。
膣を犯されると、重く大きな波のような官能が打ち寄せてくるのだが、このGスポットはそれとはまったく違っていた。
媚肉に大きなものを入れられる満足感はないのだが、鋭い切れ味を持った突き抜けるような快感だ。
ペニスの挿入が激烈なら、こっちは峻烈という感じがする。
どちらにしても、脳天にまで届き、全身を痺れさせるような喜悦が得られた。
「あ……、はあ、はあ、はあ……ああ……」
「またいきましたね」
「も、もういや……ああ……」
「これからが本番ですよ。指なんかじゃ物足りないでしょう? お待ちかねのこっちを……」
そう言って瞬がペニスを手に持ち、響子の媚肉に押し当てる。
響子は「ひっ」と悲鳴を上げて後ずさりした。
(だめっ……、ああ……、今……、今あんなの入れられたら、私、絶対に……)
脅えて逃げようとするものの、腰が痺れ切ってしまって言うことを聞いてくれない。
瞬は赤子の手を捻るように響子を抵抗を遮り、おののく人妻の膣に勃起した肉棒を押し込んでいく。
響子の小さな膣穴にはとても入りそうにない太いものが、ウソみたいにあっさりと飲み込まれてしまう。
適度に硬く熱いものがぐぐっと中に入ってくると、響子は目が零れそうなくらい大きく見開いて仰け反った。
「うあああっっ……ああああっ……!」
焦らされた挙げ句、初めてのGスポット攻撃による連続絶頂、その上での男根挿入で、響子の性感はほとんど頂点にまで到達している。
膣が肉棒の圧倒的な存在感と圧迫感で軋み、腰がぶるぶる震えていた。
(ふっ、太いっ……やっぱり大きい……あ、あの人よりずっと……あああ、だめだめ、比べたりしちゃ……だめ……で、でも、お、おっきい……)
喉を仰け反らせ、鳥肌を立てながらビクビクと痙攣が続く。
媚肉は、入ってきた太いものに順応し、絡みつき、締めつけていた。
瞬は、響子が一息つくヒマも与えず、腰を激しく使い始めた。
ぐいっと体重を乗せ、重い突き込みを人妻に加えていった。
収縮する肉襞を引き剥がし、こそげ取るように鋭く激しいピストンが数度繰り返されただけで、響子はもう絶頂してしまう。
「やあああっ、ま、またあっ……ひぃっ!!」
ぐうっ、ぐうっと背中が反り、脇腹が窪んで肋が浮き出てくる。
響子は瞬に腰を取られたまま、股間を押しつけるように藻掻いていた。
収縮が止まり、膣が少し緩むと、瞬は中で射精せずにペニスを引き抜いた。
そしてまた響子の股間に手を伸ばし、膣の中に指を入れた。
「ああっ……」
「ペニスより細くて寂しいでしょうが、今度はこっちでいかせてあげます」
「い、いやっ……、ああうっ!」
人差し指に中指を絡めて挿入し、その内部を抉る。
いったばかりの膣は、また入ってきた異物を悦んで受け入れ、慕うように絡みついてきた。
瞬は指で膣口を拡げるように回転させて襞を擦ってから、またGスポットを嬲っていく。
「いやあっ、そこっ……だめえっ!」
響子は本気で嫌がり、思い切り肢体を捻り捩ったが、中に入り込んでしまった指はどうにもならない。
指が膣奥の肉球を擦り、転がすと、また腰が勝手に持ち上がり、悲鳴のような喘ぎ声を上げながら、またも気をやった。
「うあっ、きゃああああっっ……!」
恥ずかし気もなく、ぷしゃあっと潮を噴き出し、足腰をガクガクさせてから唐突に力が抜け、ドッとベッドに肉づきの良い尻が落下した。
凄まじい快楽から立ち直るまで待つこともせず、まだ絶頂の余韻で虚ろになっている状態の響子に瞬は容赦なくペニスを挿入していく。
そしてまたペニスでいかせてから、指でGスポットを攻撃し、これも絶頂させた。
指によるGスポット責めとペニス挿入を交互に行ない、何度も何度も気をやらせていく。
指とペニスの連携による強烈な色責め──二種類の快感による連続絶頂地獄を5度ほども繰り返し、響子が10回以上も気をやらせると、瞬はようやく手を休めた。
響子はもう喘ぐ声すら掠れ、体力のほとんどを絞り取られた感じで、身体の自由が利かなくなってきている。
さすがに瞬も少し疲労を感じている。
特に右腕は激しい運動をさせ続けただけあって、疲れというより痺れすら感じていた。
そうでなくとも瞬は病を得ているのである。
こんなところを担当医が見たら、激怒して響子から引き離したことだろう。
「っ……」
一瞬、目眩を感じ、瞬はふらっと意識を失いかけた。
今のセックスが激しいから疲れているということもあろうが、「あの倦怠感」がずっと続いている。
あまり無理は出来ないかも知れない。
しかし、今後のことを考えれば機会を失うわけにはいかなかった。
どうせ放っておいても半年後には死ぬ可能性が高いのだ。
無理をしてでも目的を達成しておきたかった。
「……」
響子は仰向けのままぐったりとしている。しどけなく脚を開き、その間と言わず周辺と言わず、シーツは湿っていた──というより、ずぶ濡れに近かった。
響子の愛液だが、それは瞬の想像以上に多く、ここまでとは思わなかった。
恐らくはシーツだけではとても吸い取れず、下のマットレスまで汚してしまっていることだろう。
まあ、いい。響子がここまで濡れやすい、感じやすいことが確認できただけでも良しとすべきだ。
ホテルにマットレスの弁済とボーイへのチップをはずんでおけばそれで済む。
それより今は、股間でギンギンになっている分身を響子の中で鎮めなければならない。
瞬はマネキンのようになった響子の脚を掴むと、ぐいと大きく割り開き、前触れもなくそのまま肉棒を突き刺した。
「んんっ……」
ほとんど失神しかけていた人妻は、股間への圧力と異物感に目を覚ました。
いつの間にか瞬がのしかかって腰を振っていた。
「ああ……」
太く、硬いものが縦横無尽に響子の胎内で暴れていた。
「あっ、あうっ……ああっ……」
もう指での責めのような柔らかいものではない。
そそり立ったペニスは響子の最奥へ叩きつけるように突き刺され、中を抉り回した。
瞬は正座となり、響子の腰を抱え持ってその尻を自分の腿の上に乗せている。
その状態で腰を大きく打ち込み、出来るだけ大きなグラインドで膣内の肉襞を削り取らんばかりに擦り上げていく。
響子の裸身が弓なりとなり、豊かな黒髪がばさばさと宙を舞った。
突き込まれて全身を揺さぶられると、大きな乳房が根元から千切れ飛びそうなくらいに大きく揺れ動いている。
密着したふたりの股間は、その性器同士の相性の良さを示すかのように縺れ合い、絡み合っていた。
響子の蜜は自分の腰や腿だけでなく、瞬の股間や脚までべたべたにさせている。
「んんっ……ああっ! くっ……んむ……んんんっ……」
たまらなくなった響子は涸れた声を絞り出し、大きく喘いだ。
自分のよがり声に驚き、慌てて両手で口を塞ぐが、喉の奥から次々に淫らな喘ぎが零れ出て来る。
瞬は腰を使いながら、煽り立てるように響子に言った。
「我慢することはない。声を出していいんですよ、響子さん」
「んんっ……んんっ!」
口を塞ぎながら、いやいやと顔を振る響子だったが、声が出るのは止まりそうにない。
抜き差しがなおも激しくなると、響子は声を気にするどころか呼吸をすることすら困難になってきている。
喘ぎ、呻き、わき出る唾液を飲み込むだけで、吸うヒマがほとんどないのである。
激しい動きで裸身が大きく揺さぶられ、ほつれた黒髪が額や頬に張り付き、肩や胸にもへばりついていた。
「いっ、あ……ああうっ……ぐううっ……んんっ……はあっ……いっ……あはあっ!」
「ほら言って。「気持ち良い」って言いなさい。「いい」と言えば楽になる」
「くっ……、い、いや! ああっ……い、言えない、そんな……うあっ……はうううっ!」
熱く蕩けた膣内をかき回すように、瞬の男根が激しく動く。
ぐちゅっ、ねちゃっと粘った水音が響き、激しいピストン運動でベッドのスプリングがギシギシと軋んだ。
響子の膣襞は瞬のペニスにへばりつき、離そうとしない。
それを強引に引き剥がし、奥へと押し込み、そして引き抜く。
響子はもう半分理性が飛びかけている。
理性を完全に失うのが先か、いかされて失神するのが先か、わからない。
響子がいきかけているのを知り、瞬がまた言った。
「言いなさい、気持ち良いって」
「いやあっ……、だめ、そんな……いっ……あはあっ……」
「どうしても言えないなら、いかせてあげませんよ」
「そんなっ……」
響子は唇をわななかせて喘ぎ、瞬を見た。
ここでまた焦らされたら……、いきかけているところで「お預け」されたら気が狂ってしまう。
犯され続ける人妻は、本気でそう心配していた。
さっきみたいに気が飛びそうになるくらい続けざまにいかされるのも苦痛だが、今にもいきそうなところで止められ、焦らされたらおかしくなるに違いない。
響子は滑稽なくらい焦って瞬に言った。
「だ、だめっ……こ、このままにされたら私っ……」
「そうでしょう? だったら……」
「で、でも言えませんっ、そんな……ああっ……」
それが響子最後の砦であり、意地だったのかも知れない。
もう、これだけ反応している姿や顔を見られてしまっている以上「感じてなどいない」とは言えなかった。
だが、それでも「気持ち良い」とか「いく」と言った、ある意味で「屈服」してしまったことを認める「禁断の言葉」だけは口にしたくなかったのだ。
必死になって堪え忍ぶ響子の姿は、余計に男を燃え立たせていく。
「仕方ありませんね」
瞬はそう言いながらも腰の動きを止めない。
それどころか、また両手を伸ばして響子の乳房を鷲掴みにして揉みしだき、あるいは両方の乳首を指で引っ張って喘ぎ混じりの悲鳴を上げさせている。
「じゃあ「いかせてください」と言いなさい」
「っ……! いやっ!」
「どっちもいやなら、今晩中このままですよ。いきそうでいけない状態で……」
「いやあっ、そんなのいやですっ……!」
「では正直に言うことです。いや、口にしなくてもいい。意思表示をしてくれればいい。いきたいんですね?」
「くっ……」
響子はもうどうにもならず、コクッと小さく頷いてしまった。
瞬は内心で「よしっ」と喜んだが、表情には出さずなおも言った。
「もう一度はっきりと。響子さん、いかせて欲しいんですか?」
「くうっ……!」
今度はさっきよりも大きく、はっきりと何度もがくがくと頷いて見せた。
自分を犯している相手に「いかせて欲しい」と懇願するような仕草を見せるのは屈辱だし、恥辱この上ない。
裕作を思えば、もう完全に裏切っているようなものだ。
だが、今の響子の状態では、もうどうしようもないのだ。瞬は満足げに頷いた。
「いいでしょう。では……」
「うああっ……!」
室内はどろっとするような濃密で淫靡な空気が漂っている。
聞こえるのはベッドが軋む音と、響子が発する喘ぎだけだ。
攻撃を続ける瞬の方も限界が近い。
響子の中はもう発熱状態と言ってもいいほどに体温が上がっており、膣内の収縮も激しい上に痙攣までしている。
あの響子がこれほど乱れ、喘ぐ姿や美貌を見ているだけでも興奮するのに、膣はこれ以上ないほどの快感を肉棒に与えてきている。
迫り来る射精感に堪え切れそうになく、瞬は「負けてたまるか」とばかりに腰を打ち込み続けた。
響子はもう涙すら流しながらよがり、身悶えている。
「うはああっ、すごいぃっ……やあっ、もう……くああっ、だめ! ああ、もうだめですっ……!」
「くっ、響子さんっ!」
あまりの締めつけに、瞬はカウパーが噴出してしまっていることを実感した。
もう我慢できないと覚り、響子の腰骨を砕かんばかりに腰を叩きつけた。
響子は悲鳴を上げて大きく仰け反り、腕を伸ばして瞬の腕をぐっと掴んだ。
「あっ、あっ、あっ、ああっ、もうっ……もうだめっ……んあああっっ!!」
「くっ」
瞬は、腕の皮膚が引き裂かれたのを感じた。
響子がぐっと爪を立て、肌に食い込ませたのである。
ぶらぶらさせていた脚に力が籠もり、爪先がぐうっと内側に屈まり、そしてまた外へと開いた。
「きょ、響子! 出すぞ!」
「っ……!!!」
その瞬間、熱い奔流となった精液が響子の子宮に叩きつけられた。
粘る濃い精液を胎内と子宮口で感じ取った響子は、その何回目になるかわからない絶頂に達していた。
もはや声も出せず、視界が白く飛んでいる。
白濁の精液がどくどくと噴出し、膣襞を汚すたびに響子はわななき、何度も仰け反った。
瞬が射精を終えてペニスを抜き去っても、まだ全身を小刻みに震わせている。
時折、身体が絶頂の余韻でピクピクと痙攣し、そのたびに注入された精液が膣からとろりと流れ出ているのがわかる。
薄れていく意識の中で「やっと気をやれた」という満足感の裏腹に、またこんなにたくさん出されてしまったという絶望感があった。
射精を受け、早く妊娠せねばならないのだが、人妻としての理性がそれをまだ拒んでいた。
響子は、この二律背反にどうケリをつければいいのかわからなかった。
自分の中で踏ん切りがつくまでに瞬によって孕まされてしまうか、あるいはこのドロドロのセックスに取り込まれてしまうのではないかと思い、人妻の心は脅え、ぶるっと震えていた。
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