(また少し……、痩せたのかしら……)

響子は瞬を見てそう思った。
今回の件で、ひさしぶりに一刻館に訪ねてきた時も、以前よりも痩身になったイメージだった。
テニスのコーチを辞めて会社経営者になっているようだから、運動不足だったのかも知れない。
彼のことだから、スポーツジムにでも通って身体を鍛え直し、ダイエットしたのかな、くらいにしか思っていなかった。
しかし、気のせいかも知れないのだが、何だか会うたびに痩せていく感じがしていた。

そう言えば瞬は重病なのだ。
不治の病である。
であるならば、抗がん剤の治療ということもあり、日に日にやつれていくのは当然だろう。

ただ、それが日を追うごとに顕著に実感させられるというのは、少しおかしいようにも思った。
最初は単に「少し痩せたかな」程度だったのに、今日の彼は少し頬が痩けている。
がっしりしていた肩口も、少し小さくなっているように見えた。
それに、響子は今回の件で初めて彼の裸を見たわけだが、思ったよりも筋肉質ではなかったのだ。
恐らく、以前は響子の想像通りの筋肉がついていたのだろうが、入院と化学治療に伴い、筋肉がかなり落ちたに違いなかった。

健康美を象徴するような瞬が衰えていくのを見ると、響子はやり切れなさともの悲しさを抑えることが出来なかった。
瞬の方も、自分の体力がかなり落ちていることを実感しているだけに、急ぐ必要があった。
それには響子の心を解きほぐすのが不可欠だったが、これはそう容易く出来るものではない。

しかし、これまでの「努力」が功奏したのか、響子は今までよりずっとリラックスしているように見えた。
事前の会食でも、押し黙ったり生返事のみということはなくなり、普段の響子に近い朗らかな印象が戻ってきている。
さすがに「仲睦まじい」とか「気心の知れた」という感じではないものの、婚前の頃に戻ったような雰囲気だった。
知らない人が見れば普通のカップル──「夫婦」と判断するだろう。
まだぎこちないところはそこかしこにあるものの、瞬はもちろん笑顔を絶やさないし、響子も時々声を上げて笑うことまであった。
「変心」したわけではあるまいが「開き直った」ようにも思えた。
少なくとも瞬には、響子が芝居でそうしているようには見えなかったのだ。
瞬にも察するところがあり、敢えてそのことには触れずにいた。

今日、連れて来られたのは居酒屋である。
今までは各国料理の専門店だったり、和食でも高級な会席とか寿司だった。
その瞬がこういう店を知っているというのは少し意外だった。

「……三鷹さんも、こういうお店に来られるんですね」
「もちろんですよ。あ、もしかして僕はああいう堅苦しい店にしか行かないと思ってましたか? 誤解です、誤解です。そりゃあ仕事……、会社の接待なんかではこういう店はちょっと使えないんですけど、普段、会社の連中と飲みに行ったりする時なんかは、むしろこういう店の方が多いんですよ」
「そうなんですか。私も、どちらかというとこういうカジュアルな感じの方が好きです。それに、この前までみたいに個室よりもこっち方が……」
「そうですか。周囲に気兼ねすることもないだろうからと思って個室にしてたんですが……」
「ええ、それはわかります。けど、私なんかは周囲が少し騒がしいくらいの方が落ち着きます。一刻館がいつもそうでしたから」

そう言って響子も笑顔を見せた。
今回のように、響子から話題の口火を切るというのは今まではないことだった。
常に瞬が話しかけなければ沈黙を貫いていたし、話題を振っても興もない感じで流されることの方が多かったのだ。
今日の彼女は、いつになく打ち解けてくれていることを瞬は実感した。

周囲の壁には、大きな和凧がいくつも飾ってあり、響子は珍しそうにそれらを眺めている。
ここはやはり、響子たちがよく行ったような庶民的な居酒屋というわけではないようだ。
客層も違って、大学生のグループや若いサラリーマンたちは見あたらない。
スーツ姿の会社員風の客が主力だが、どことなく落ち着いた雰囲気であり、若者が醸し出す騒々しさとは無縁である。
会話自体は弾んでいるようで、そこかしこに笑い声も聞こえてくるが、無遠慮なものではない。
「おとな」の雰囲気だった。
出て来る料理も串焼きにしろ揚げ物にしろ、量は多くないが味は絶品であり、調理も素材も一流らしいことは響子にもわかった。

「どうぞ」
「あ、すみません……。じゃ、私もご返杯を」
「ありがとう」

瞬と響子は、差しつ差されつして酒を楽しんでいた。
ある意味、こういう光景が「瞬の夢」だった、という面はあるだろう。
緩めの燗にした純米吟醸酒は飲みやすく、いくらでも飲めそうな気がした。
銚子は空になるたびに店員がスッと下げていくので、何本くらい飲んだのか響子にはよくわからなかったが、すくなくとも二合徳利を五本や六本は空けているはずだ。
その前に生ビールを中ジョッキで二杯ずつ飲んでいたから、響子は生中を二杯、日本酒を五合以上は飲んでいることになる。

さすがに自分でも「少し酔ったかも」と思ってきた。
瞬の前でベロベロに酔うわけにはいかない。
いつもの響子であれば自制して、ここまで飲まなかったであろう。
しかし今日は……、今日だけは飲んで、そして酔う必要があった。
「覚悟」を決めるためであり、そして「麻痺」するためでもあった。
響子は腕時計を見て、時間を気にする素振りを見せつける。
すると瞬は敏感に反応し、店員を呼んで精算を始めた。

────────────────

「はあ……、む……んん……んっ……んう……」

響子は、一心不乱に瞬の男根を咥え込んでいた。
未だ不慣れなのか、あるいはやはり瞬のものをしゃぶるのは抵抗があったのか、やり方がかなりぎこちなかった。
瞬は、仁王立ちになって響子にペニスを委ねながら、その様子をじっと見つめていた。
顔を振ると、豊かな黒髪が優雅に動き、さらさらと白い肌の上を滑っている。
なだらかな肩、すっと伸びて官能的なカーブを描いている背中のラインが実に美しかった。
特に肩胛骨や背筋の間にある窪みの色気は絶筆に尽くしがたい。
さらにその下には、グッと大きく張り出した腰骨と、それを豊かに覆う見事な臀部が揺れ動いている。
男なら誰しも生唾を飲み込む光景だった。

今、響子が自分のものを咥えているという、その事実が瞬には未だに信じられない。
徐々に響子を官能の渦に巻き込み、前々回、前回あたりは、彼女に気をやらせることも出来た。
しかし、快楽に溺れそうになりつつも、響子は決して積極的にはならず、あくまで受け身のままだった。
瞬は「プレイの一環」としてなら、強引なレイプじみたセックスも好きだったし、少々変態じみた行為も面白がった。
が、やはり愛し合う行為の方が好ましかったのだ。
彼は意外なほどに、セックスにはノーマルだったのである。

まして響子は人妻であり、瞬に対しては複雑な感情を持ち合わせている。
その彼女に「フェラチオして欲しい」と告げるのは、瞬にとってもかなり勇気が必要だったのだ。
30過ぎの男が情けないと思うかも知れないが、彼は響子に拒絶されることを恐れていたのだった。
これが、いつもの調子の軽いノリでいけるような女相手なら、そんなことはなかったろう。
だが、相手は三鷹瞬をして、長年惚れ続けさせた女だったのだ。
しかも、今の自分の状況を考えれば、彼が少々弱気になるのも無理はなかった。
しかし瞬に残された時間はもう少なく、それが間もなく尽きるであろうことは自分でわかっていた。
だから意を決して響子に頼んでみたのだ。
返事は意外なものだった。
突然、そのことを言われた響子は、案の定、かなり動揺し、困惑していた。
当然の反応だったが、驚いたことに彼女はその要望を受け入れたのである。
かなり躊躇し、迷いに迷っていたのが手に取るようにわかったが、それでも瞬の願いを聞き入れてくれたのである。

響子は必死になって瞬のものに舌を這わせていた。
その様子を見て瞬は察した。彼女は明らかに「不慣れ」なのである。
技巧的に劣るのは、経験値がかなり低いからに相違なかった。
いやいややっている面もないではないだろうが、それ以上に「やり慣れていない感」が大きかった。
裕作と響子のカップルを思えば、それも「宜なるかな」である。

裕作の方は興味があるだろうし、是非やって欲しいと思うだろうが、それを響子に言うのはやはり抵抗があったのだろう。
しかし、響子が気を利かせたのか、あるいは裕作が思いきって言ったのかは知らないが、この夫婦間でも口唇愛撫は何度かあったらしかった。
ただ回数自体が少なく、結果として「不慣れ」ということのようだ。

実際その通りで、響子が当初当惑していたのも、夫の裕作相手にさえ、あんまりしたことがなかったのに、他人の瞬に対してしなければならないということに動揺したのである。
だが、響子は「ある決意」を持って今日に臨んだこともあり、瞬の望みを聞き入れたのだ。

「ん、ん、んんう……じゅっ……んっ、は……はむ……むむう……」

響子は、夫のものよりも一回りは太く、数センチは長いその肉棒を口に含み、拙い技術で瞬に尽くしていた。
まだ回数も少なく、裕作もあまり指示や指導などしなかったせいか、ほとんど自己流である。
裕作の表情を見ながら「こうすればいいのか」「これはよくないみたい」と判断し、自分なりに経験学習を積んでいったのだ。
響子は、裕作にしてあげた時のことを思い出し、膨れた亀頭の括れやカリ、そしてサオ全体にねっとりと唾液を塗りつけるように舐め回していった。

(確か……、こうして、この裏側を舐め上げて……、この首みたいなところを……、唇で挟むようにして扱いてあげると気持ち良かったはず……)

そんなことを考えていると、何だかとても恥ずかしいことをしているような気がして、響子は頬を赤く染めた。
それでも中途でやめるようなことはせず、裕作へのフェラを思い返しながら、懸命に愛撫を重ねていく。

(やっぱりあの人よりも大きい……喉の奥に届いちゃう……。太くて、唇の端が切れそう……。それに……すごい硬いわ……。こ、こんなのが私の中に入っていたなんて……)

そんなことを考えて、響子はハッとする。
いつの間にか夫のそれと比べている自分が、酷く淫らで浅ましく思えてきた。
裕作への背徳感は常に抱いている。
なのに、だんだんと瞬に対する感情も変化してきていた。

何だか暑くて堪らない。
きっと肌には汗が浮いていることだろう。
頬が火照り、顔を中心に身体中が熱かった。さっきの酒がまだ残っている。
アルコールが身体中に回っているに違いない。
いや、そう思いたいのかも知れなかった。

「うっ……、く……」

瞬は声を殺して呻いた。
確かに拙い技巧ではあるのだが、あの響子にフェラしてもらっている、というだけで瞬のものは暴発してしまいそうになる。
こちらの様子を窺い、表情や反応を見ながら舌と唇を使っている仕草は何ともいじらしく、つい抱きしめたくなってしまう。
そんな瞬の気持ちを知ってか知らずか、響子は行為に没頭している。

「んっ……んっ……んん〜〜っ……んちゅ……んぶっ……じゅるっ……んっ、んむう……」

細い指がサオの根元を支えつつ、先端の方へと扱いていく。
顔を前後させて唇でも扱き、カリ首まで引いては、また奥まで飲み込んだ。
裕作のものよりも大きいだけあって、先が喉の奥にまで到達してしまうこともあった。
しかし、男はこうされるのが気持ち良いということは裕作との経験で知っており、響子は我慢して顔を振り続けている。
つい熱が入ったのか、奥歯が亀頭に触れ、瞬がびくりと身体を痙攣させた。
響子は慌てて口を離し、済まなそうに言った。

「ごめんなさい……。痛かったですか? 私、こういうのあまり慣れていなくて……」
「あ……、い、いや、いいんですよ。痛くありません。す、すいません、続けて……もらえますか?」
「はい……」

瞬の言葉を聞いて、響子はホッとしたように少し微笑み、またそれを口に入れていく。
瞬としては「痛い」どころか、響子の歯が亀頭の先に触れた感触で、つい放出してしまいそうになるほど気持ち良かったのである。
響子は、彼が気持ちよがっていることを察し、少しだけ嬉しそうな表情を浮かべた。
舌を裏筋に這わせつつ、唇を根元から亀頭まで往復させ、カリ首を挟み込むように扱く。
そのまま顔を振ってそこを刺激しながら、今度はまた奥まで咥え込んでいった。

「うっ……」

また瞬の呻き声が聞こえた。
口の中に入ったものは、膨れるだけ膨れあがり、硬くなっていた。
これが本当に人体の一部なのかと思うほどの硬さと熱さで、それがビクビクと脈打って痙攣し始めている。
裕作のものをしてあげた時の経験上、今の瞬がどういう状態なのかわかった。

(ああ……、もう出そうになってるみたい……。三鷹さん、どこに出すつもりなのかしら……。もしかして……、口? 「飲め」って言われるかも知れない……。それとも顔にかけられて……)

響子は、瞬の精液を飲まされる、あるいは顔に浴びせられることを想像し、きゅんと股間が疼き、熱くなるのを感じた。
自然と行為に熱が入り、いつしか響子は激しいストロークで瞬のものを愛撫している。
顔を前後に往復させ、上下に揺らし、左右に振る。
響子の慎ましやかな口元からは、彼女の唾液にまみれたグロテスクな男根が盛んに抜き差しされていた。
肉棒が出入りするたびに、響子の口から唾液が漏れ出て、綺麗な顎を伝って絨毯に滴っている。

「んうっ……!」

響子は顔を顰めて、涙目になっている。
響子だけでなく瞬の方も力が入り、つい響子の喉奥を亀頭で突いてしまったのだ。
それでも響子はそれを吐き出すようなことはせず、嘔吐きがこみ上げてきても必死に我慢して、なおも愛おしそうにペニスをしゃぶっていた。

そんな響子の健気な姿に、瞬の興奮も上限に達しようとしている。
力強い指が黒々とした艶やかな髪を絡めながら響子の頭を掴んで前後運動させ、自分でも腰を突いていく。
もはやフェラチオというよりイラマチオ状態になっているが、響子も瞬もそうとは気づかず、響子は瞬のペニスを、瞬は響子の舌と唇を感じながら悦楽の時に浸っている。

「んんっ! んうっ! ……んくっ、んもっ……んっ、じゅぶっ……ん、ちゅぶっ……ちゅううっ……んじゅうっ……」

責められるばかりだった瞬とのセックスで初めて、フェラチオによって主導権を奪った響子だったが、今また男に手綱を握られた。
瞬の手で勢いをつけて顔を前後させられ、激しい口唇ピストンを繰り返す。
唾液が潤滑液になっているとはいえ、激しい動きによる摩擦で唇が熱くなってくる。
時折、喉奥を突かれ、眉を寄せて苦悶の表情を浮かべていた。

なのに、なぜかその行為がイヤではなかった。
口を性器として使われるという屈辱的な行為のはずなのに、響子の美貌は愉悦に蕩けて、身悶えが露わとなって来ている。
被虐的な快楽を覚え始めたのである。

「んっ、んむ……ぐうっ……、うん、うんっ……じゅっ……んくうっ……」

それでもやはり喉を突かれると苦しいらしく、何とか舌で亀頭を押し返し、その行き先を逸らそうとしている。
響子の舌を亀頭全体に感じ、瞬はいよいよ我慢できなくなった。
それまでも丹田に力を込め、脚を踏ん張って堪え忍んできたが、もうどうににならない。
そもそも、あの響子にフェラチオさせているという事実だけでも射精しそうになっているのだ。
瞬の手に力が籠もった。

「うっ……、くうっ……、きょ、響子さん、もうっ……!」
「んっ……、ぷあっ……!」

意外なことに、瞬は響子の頭を両手で掴むと、そのまま腰を引き剥がすようにしてペニスを口から引き抜いた。
響子の唾液が滴る肉棒は真っ赤に充血し、今にも射精しそうにビクビクと震えている。
実際、亀頭の先から垂れている透明な液体は、響子の唾液ではなくカウパーだったかも知れない。

「あ……」

響子は少し驚いたように声を上げ、瞬を見つめた。

(なぜ……? どうして? あのまま……、出してもよかったのに……。口に出しても、顔にかけても……)

つい、そんなはしたないことを考えてしまった自分が酷く淫らに思え、響子は羞恥に顔を染めた。
夫の裕作相手でも、そんな風に考えたことはなかったというのに。
瞬は響子の様子に気づくこともなく、呼吸を整えている。

「……僕も、そのままあなたの口へ出したい気持ちもあったけど……。もう、あまり余力がないんです」
「……」

弱々しい微笑を浮かべてそう言う瞬に、響子は何も言えなかった。

「だから今日は……、今日こそは、きっとあなたを孕ませたいと思う」
「三鷹さん……」
「いいですね?」
「……」

返事はしなかったものの、響子は俯いたまま小さく頷いた。
瞬は響子の肩を抱き、その耳元で囁いた。
響子は少し驚いたような顔をして瞬を見たが、やがて「わかりました」と言って、おずおずとベッドに昇った。
そして、もう一度だけ振り向いてから、四つん這いとなって瞬を待ち受ける。
後背位で繋がろうというのだ。
瞬が軽く手を尻に置くと、ピクリと震えたものの、拒絶の声は上げず、動きもしなかった。

犬のように這って男に尻を向ける姿勢がよほど恥ずかしいのか、響子の腰がなよなよと蠢いている。
響子は強い羞恥を感じていただけでなく、心のどこかで微かな期待感があったことを否めなかった。
そんな格好で男に貫かれるのを待っている自分が酷く惨めに思えるのと同時に、膣奥の子宮が疼き、媚肉全体が熱を帯びてくるのを止められない。
背徳的な被虐の炎は、今、確実に美貌の人妻を白く灼いていく。
細かく震えている響子の尻を眺めながら、瞬が聞いた。

「……あまりこういう格好ではしませんでしたか?」
「は、はい……。何だか動物みたいだし、恥ずかしいです……」

響子は俯いて目を堅く瞑りながらそう答えた。
ベッドに突いた手が拳を作り、微かに震えている。

「だから夫が求めてきた時も断って、普通にしてもらってました……。あ、でも、一回もしたことがない、ということはありませんけど……」

いわゆるバックの姿勢を嫌う女性は多い。
響子の言う通り、動物じみている格好ではあるし、無防備に男へ尻を差し出すポーズなのだから、これは恥ずかしいに決まっている。
セックス慣れした女性であれば、むしろこのラーゲが好きな人もいるが、響子はその範疇ではないだろう。

「お、男の人って……、こういうのが好きなんですか……?」
「そうですね……、人にもよるでしょうが、好きな人は多いでしょう。何て言うか、こう、征服欲をそそられるって感じですかね。でも今回はそれとは別だ。この体位だと奥の方まで挿入出来ますし、妊娠しやすいという説があるんですね。だから、恥ずかしいでしょうが、つき合ってもらいます」
「……」

響子は、もう我慢できないとばかり言った。

「み、三鷹さん……」
「はい?」
「す、するなら早く……。この格好、恥ずかしくて、もう……」
「わかりました」
「あっ……」

瞬の手ががっしりと腰を抱え持つと、響子は一瞬身を固くしたが、逃げることはしなかった。
彼のペニスを尻たぶに感じ、またピクリと震える。
瞬は響子の背に覆い被さり、大手を拡げて胸を弄んだ。

「んっ……」

重力で重そうに揺れている乳房を掴まれ、たぷたぷと揉み込まれた。
根元から搾り込むように揉み上げ、乳輪を摘んで乳首を括りだし、それを指で弾き、こねくる。
ポイントを抑えた瞬の愛撫は、いつも響子を戸惑わせ、官能へと誘っていく。
ペニスの先が媚肉に触れると、そこがもう既に濡れていることに気づいた。
なよなよと力なげに蠢く腰を押さえ、なおも亀頭が割れ目をこじ開け、膣穴を突っついている。

「ああ……」
「……もう濡れてますね、響子さん」
「いやっ……、は、恥ずかしい……」
「恥ずかしがることはない。素晴らしい身体だということですよ」
「そ、そんなこと褒められても……」
「いつからこうなったんです? もしかしたら、僕のものを口にしていた時からですか?」
「……」

響子は口をつぐんだが、彼女の沈黙が瞬の想像を肯定していた。
そう、響子は瞬にフェラチオをしている時──あるいはイラマチオされていた時に濡れ始めていたのだ。
もちろんペニスを口にしただけで女は感じるようなことはないが(「感じる」と主張する女性もいるが)、屈辱的な行為をさせられていることで被虐的な悦楽を感じ取り、それで燃えてくる女性は少なくない。
響子もそのひとりだったのだろう。

ペニスの先で媚肉をこねくられ、指で乳首を嬲られていくうちに、響子の腰のうねりがますます大きなものとなっていく。
美貌の人妻は、さも焦れったそうに呻く。

「んんっ……くっ……、み、たかさんっ、あっ……も、もう平気ですからっ……あっ……」
「入れて欲しい、と」
「……」

そんな浅ましいことは言えないとばかりに、響子は悔しそうに唇を噛んだ。
しかしもう身体の方は燃えたっており、瞬の問いかけを認めるかのように、グッと腰を彼に突き出していた。
その思いに応えるかのように、瞬はゆっくりとペニスを響子の中に埋め込んでいく。

「くうっ……!」

柔らかくぬめる粘膜を押しのけ、掻き分けるようにして挿入される男根の威力に、響子は小さく呻いて全身を息ませる。
異物を押し返そうとするかのような襞の動きは、ペニスに心地よい抵抗感を与えていく。
響子が身体を固くしているせいか、いつもよりもさらに膣の中は狭く、きつかった。
そこを強引に挿入し、肉棒はゆっくりと響子を串刺しにしていった。

(ああっ、は、入ってくる……入って来ちゃう……また三鷹さんのが私の中に……や、やっぱり太い、大きいっ……!)

「かはっ……!」

瞬の腰と下腹部が、響子の豊満な臀部に密着すると、響子はぶるっと大きく震えて呻いた。

「んんっ……、ふ、深い……お、奥まで来てる……ああ……」

瞬は亀頭の先に響子の最奥を感じ取り、そこをなぞるように擦ってやると、響子はビクッと身体を跳ねさせ、痙攣した。
そこを刺激するたびに響子の膣がキュッと締まり、男根を強く絞り上げている。

瞬はしばらくそのまま動かないでいた。
肉棒の先で響子の子宮口を味わい、サオ全体で膣の締め付けを愉しんでから、ようやく腰を使い出した。
速度も控え目で動きも優しく、膣内をペニスで撫でまわすかのように腰を回し、突き込んだ。
慌てることなく、じっくりと人妻を責め立てていく。

「んあっ……いっ……はっ……っく……あっ……」

媚肉をゆっくりをかき回され、響子は苦悶とも快楽ともつかぬ喘ぎ声を洩らし、身悶えした。
もう響子の膣襞は瞬のペニスに慣れ親しみ、誘うように絡みつき、へばりついてくる。
だいぶ馴染んだ頃合いを見て、瞬はそれまでと同じくゆっくり腰を引く。
そして膣口から抜け出そうなくらいまで引き抜くと、一転、今度はグッと力を込めて一気に最奥まで貫いた。

「はああっ……!」

突然の衝撃に、響子はぐうっと背筋を弓なりにして大きく喘いだ。
瞬の攻勢が始まり、絡みついて締め上げてくる襞を引き剥がすように腰を引いてから、また一気に打ち込んだ。
そして奥まで挿入すると、その中を抉り、こねくり回し、意識して子宮口をこそいでいる。
出来るだけ奥まで貫いてから時間をかけて引き抜き、突き込む時は素早く一気に子宮まで責めた。

響子の膣は、奥まで埋め込まれた太いものをじっくり味わわされてからゆっくりと引き抜かれ、それを惜しむように襞が絡みつく。
襞が引き出されていく感覚に震えていると、巻き込むようにまた勢いよく挿入され、何度もわなないた。
抜かれる時は苦しそうに熱い息を吐き、打ち込まれると甲高い悲鳴でよがる。

「はあっ! あうう……いあっ……んんん……ふあっ……くくっ……んあ!」

張り出したカリが膣の内部を強く擦り、子宮を押し上げるかのように奥まで収まると、響子は噛みしめた唇から甘い声が漏れるのを止めることが出来なくなる。
それでもまだ官能的な反応を示すのが恥ずかしいのか、あるいは夫の裕作への思いが抜けないのか、響子は身体を固くして耐えている。
ぎゅっと閉じられた目の縁と眉間には皺が刻まれ、踏ん張るようにした腿はぶるぶると痙攣していた。
ベッドに突いた手はぎゅっとシーツを握りしめている。
熱く濡れた肉を無理に引き摺り出し、まためくれ込ませるように肉棒を激しく出入りさせると、響子の尻がパンパンと打ち鳴らされ、全身が大きく揺れ動く。

「うんっ……ああっ……激しい……ああ、いやっ……ひっ……み、三鷹さん、激しっ……ああっ!」

響子の甘い悲鳴を聞きながら、瞬はなおも責め立てていく。
更にペニスの動きは加速され、ピストン運動は激しくなっていった。
響子の深部からは、否応なく蜜が分泌され、抜き差しされるごとに肉棒との隙間から溢れ出した。
もう響子の陰毛だけでなく股間全体、太腿まで濡らしている。
責める瞬の股間すら、響子の愛液で汚していた。
ベッドに突いた膝と手がぶるぶると痙攣し、響子はわななき、グッと踏ん張った。

「ひっ……ああっ……だめっ、あ、もうっ……いあっ!」
「……もういきそうですか? なら、響子さんの好きなここを責めたらすぐにいってしまうかな?」

そう言うと瞬は突如矛先を改め、腰の角度を変えた。下から抉り上げるように打ち込んでいたのを、一転して今度は上から下へと打ち込んだのだ。
膣奥を責めていた亀頭が腹の内側を強く擦ってくると、響子はたちまち絶頂した。

「うあああっ……、い、いく!!」

そう絶叫すると、響子はガクガクと大きく痙攣し、俯せのままどさっとベッドに沈み込んだ。
先日覚えたばかりのGスポット感覚の快感は凄まじく、いい加減煽り立てられていた官能は一気に燃え尽きてしまった。

瞬は、気をやった響子の膣の締めつけに耐えながら、汗に濡れた尻たぶを優しく撫でた。
まだ響子はいかされた余韻に浸っており、はあはあと熱い息を吐き、時折思い出したように腰をわななかせ、手足をぶるっと痙攣させている。

「……やっと言ってくれましたね、「いく」と」
「あ……」

思わず口にしてしまった「禁断の言葉」に気づき、響子は唖然とし、後悔もしたが、「もう、どうでもいい」とも思っていた。
もう何度も瞬に対して恥を晒した──絶頂した姿を見せてしまったのだ。
今さら「いってなどいない」と抗弁するのも虚しかった。

絶頂の激情が去ったからか、まだ瞬に対して尻を捧げている姿勢が急に恥ずかしくなり、もぞもぞと腰を動かした。
まだ膣の中で大きなものがゴロゴロしていることに気づく。

「三鷹さんの……、まだ……」
「ええ。まだ僕はいってない、出しませんからね」
「……」

裕作とのセックスでは、ほとんど同時にいくことが多かった。
あるいは裕作の方が先に達してしまい、響子は未達のこともあったが、それが不満に思ったことはなかった。
一緒にいくことが多かったから、幸せなことだと思っていた。

だが、瞬は全然違った。
彼が先にいってしまうことはまったくなかった。
響子を何度も何度もいかせて、いきすぎてくたびれた頃合いになってから自分がいくためのセックスに入るのだ。
それでも響子のクタクタになった身体は反応してしまい、瞬の射精を受けると同時に、その日最大の絶頂を迎えることになる。

今日はまだそれがないのだ。
期待と脅えがない交ぜになった響子の表情で、また瞬の性感が昂ぶっていく。
切なそうな響子の美貌を見て、またペニスがむくむくと膨らんでいった。
瞬はまた激しく腰を打ち込み、響子を抉り上げた。

「あっ、あうっ! やだっ、もう……だめ、あっ……ああっ……ひあっ!」

突然再開された激しいピストンに、響子は目を剥いて悲鳴混じりの喘ぎ声を放った。
たまらず大きな枕をぎゅっと抱きしめ、顔を隠すように埋める。
官能に蕩け掛かった表情を隠し、思わず発してしまう快楽の声を抑えるためだが、瞬の攻撃は容赦がない。
そんな響子から強引に官能を引き摺り出し、枕で抑えているはずの口から喘ぎ声が引っ張り出す。

瞬の方も、絶頂した響子の膣に締め上げられる快感に耐え、呻きながら、奥をゴリゴリと責め立てた。
いかされて、まだ頂点から下りきる前にまた強制的に送り込まれる快楽に、響子は激しく顔を振りたくり、抑えきれぬ喘ぎが口を割って溢れ出る。
さっきまでの大きなストロークで深々と抉る律動とは異なり、突き込むスピードがかなり速くなっている。
それでいて、奥まで突き込む深度はちっとも変わらず、子宮口が虐められ続けていた。
反り返ったペニスの先が、膣の背中側の思い切り擦り、腹側のGスポットとはまた違った快感に響子は思わず枕から顔を離し、大きく仰け反った。

「いあっ、いっ……ああ、そこっ……うんっ、いっ……はああっ……いっ、は……あうんっ!」

響子は喘ぎつつ、何度も首を振った。
今ではもう、自分の喘ぎ声すら彼女を興奮させる材料となり、なおも昂ぶらせていった。
直線的な律動だけでなく、腰を回転させて膣内の襞を擦り、角度を変えて膣のあちこちを刺激している。
休むことなく与えられ続ける快感のうねりに、響子の白い裸身は赤く染まり、妖しい悶えが止まらなかった。
瞬の肉棒がGスポットを刺激したり、子宮を押し上げるまで打ち込まれると、響子は喉を引き攣らせて悲鳴を上げ、顔を左右に振り、背中をたわませ、あるいは仰け反らせて反応した。

時々、ハッとしたような表情に戻るのは、自分の喘ぎ声に驚き、一瞬正常に戻るからだろう。
だが、それもすぐに性の奔流に押し流され、襲い来る快感と懸命に戦うものの、もろくなった肉体と心はいともあっさりと挫かれてしまう。

「ふわっ! あっ、あっ、三鷹さん、そこはあっ……だめっ、感じる、感じ過ぎますっ……」

瞬の指先が、綺麗に、そして官能的に窪んだ背筋をなぞっていくと、響子は活が入ったかのようにピンッと痙攣した。
背筋を指で擦られ、脇腹を手のひらで撫でられると、響子は強く反応し、きゅううっと膣が収縮する。

そこは、瞬によって新たに発見、開発された性感帯だった。
瞬は最初と二回目のセックスで響子の全身をくまなく探り、刺激して、どこが感じるのかを調べ上げていた。
その上で、立派な性感帯であり、物凄く敏感なのに、それまで本人も気づかなかったポイントもいくつか見つけていたのだ。
それが背中の窪みだった。
内腿などは裕作とのセックスで見つかったポイントだが、腋窩、膝の裏側、足の指の股、脇腹などはすべて瞬によって発見、開発された場所だった。

「はああっ、んんんっ……いっ……は……ああ……んっ……んっ……うんっ」

響子の声は、喘ぎから嬌声に変わりつつある。
吐く息には熱と湿気が籠もり、四つん這いになった脚がジタバタと暴れ出した。
膣奥だけでなく、瞬に開発された愉悦の弱点を集中的に責められ、響子は全身をわななかせ、今にもまた達しようとしている。

響子を散々喘がせてから、瞬はいよいよ本命の子宮攻撃に焦点を絞った。
射精したくてうずうずしている亀頭部で、子宮口をゴリゴリと擦り、抉る。響子はググッと仰け反り、大きく口を上げて嬌声を放った。

「ああっ……! もうっ……もう、だめえ……奥っ……奥、しないで、ああっ……はうう……あああああ……」

蕩けきった膣口は、もはや肉棒を拒むことは出来ず、一方的に攻撃を受けている。
敏感な背筋や乳首、脇腹を責められ、なおかつ子宮まで抉られて、響子は頂点付近で彷徨い、その快美感に溺れてきている。
瞬も顔を顰め、盛んに収縮してくる響子の反撃に耐えていたが、もうそろそろ限界のようだ。

「響子さんっ……、僕もいきますよ、いいですね!?」
「ああっ……ああっ、もう何でもいいですからっ……だめ、我慢できませんっ、あ、いく……ど、どうしよう、いきそうですっ……」

いよいよ出される、また穢されるという恐怖と、やっと絶頂寸前の快楽地獄から逃れられる、そして精液で満たされる……という期待が、喜悦の渦に巻き込まれてひとつになっていく。
膣道とその壁の襞がうねうねと蠢き、強く収縮して瞬のものきつく搾る。
その刺激にはたまらず、瞬は一声大きく吠えて響子の子宮口へペニスを突き立てた。
そのまま子宮を思い切り押し上げ、あまつさえ子宮口をこじ開けるように突き込んだ時、堪えに堪えていた射精感が瞬の足の裏から背筋を突き抜け、脳天に達した。

「くっ……、出る、出すぞっ!!」
「ひっ……、いあああああっっ、いくうっっ!!」

どびゅうっと、勢いよく精液が放出されると、響子はグウッと背中を弓なりにさせて快楽の声を上げた。
最初の一撃が子宮口を直撃しただけで激しく達した響子だったが、さらにびゅくびゅくと続く射精を受け続けるたびに「ああっ、ああっ」と喘ぎ、絶頂を味わい続けていた。

びゅるるっ、びゅるっ、びゅくくっと、膣内で暴発する精液の音が聞こえそうなほどの激しい射精だった。
とても病人のそれとは思えなかった。
断続的に子宮口付近で弾ける瞬の精液を、しっかり奥で受け止めた響子は、射精が終わると同時にガックリとベッドに突っ伏していた。

(ああ……、中にいっぱい……三鷹さんのがいっぱい出てる……。お腹が熱い……)

瞬の精液の熱さだけでなく、響子の子宮自体が熱を帯びてきていた。
子宮で感じ始めていたのである。



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