「セ・ン・セ」
「その呼び方はやめろって言ってるだろ。俺はもうおまえの先生じゃない」
「カタイこと言わないでよ、先生。あたしにとってはずーっと先生なんだから」
「……そんなつまらんことを言うために呼び出したのか?」
「違うわよ。だからさっきから言ってるでしょ。セックスしよ」
「いい加減にしろ!」

裕作はカッとして立ち上がった。
時計坂から二駅ほど先の私鉄沿線にあるホテルの一室だ。
もちろんビジネスホテルなどではなく、いわゆるラブホテルだ。

裕作は苦々しげに、ベッドにまき散らされた写真を見ている。
自分といぶきが裸で絡んでいるシーンだ。
言うまでもなく、先日、いぶきに「犯された」ときのものである。
男が犯されたというのも珍妙な話だが、裕作はいぶきと寝る気はまったくなかったし、ベッドに縛り付けられて
いた上での行為なのだから、そう言っても吝かではあるまい。

ただ、それでも彼にも引け目はある。
男は、女と違って、それこそ「その気」にならねば行為は出来ないからだ。
いぶきに男根を弄ばされ、あまつさえ口でも愛撫を受けた。
そんなことをされれば勃起してしまうのは致し方ないし、客観的に見れば八神いぶきという女は美人なのだ。
スタイルも悪くない。
そんな女性に性的サービスを施されれば「そうなってしまう」のはやむを得ないだろう。

それにしても裕作には、妻の響子に対する申し訳なさはある。
いぶきが裕作に気があったことは響子も裕作も知っていたし、その上で酔った状態で深夜に飲んでいたのだから、
こうなる危険はあったのだ。
そんなことは言い訳にならないと思っていた。
いかにも気が弱く、生真面目な裕作らしい考え方だ。
それを存分に利用したのがいぶきなのだった。

そのいぶきは、ベッドで半身になっている。
気の早いことに、もう下着姿である。
それも黒いレースの下着で、しかもほとんどの生地がシースルー状態だ。
下などは、クロッチが辛うじて不可視になっているだけで、あとはもう裸と変わらない。
奔放な女子大生は、シーツの上で乱雑にばらまかれている写真を弄ぶ。
裕作は、こんなものがいつ撮られたのかまったく憶えていない。
いぶきがカメラを構えたところは見てないから、隠しカメラでもあったのか、あるいは第三者がいつの間にか撮影
したのか不明だ。
あの時裕作は、かなり酔っていたから、そんなことを気にするような状態ではなかったのかも知れない。

「こんな写真、奥さんに見られたくないでしょう?」
「……」
「堅そうっていうか、潔癖そうだもんね、先生の奥さん。こんなの見たら卒倒するんじゃないの? 違うか、先生の横っ面とか張り飛ばしそうだよね」

裕作はそうは思わない。
響子は確かに思い込みが激しいし、やや天然なところはあるが、話してわからない相手ではないのだ。
裕作が事情を説明すればわかってくれるだろう。
何しろ、いぶきには独身時代に散々悩まされたのである。
その彼女がしでかしたことだと知れば、さもあらんと思ってくれるに違いない。

だが、それにしても裕作がいぶきと性交してしまった事実は変わらないのだ。
響子も表面上は許すだろうし、また許してあげようと思ってくれるだろうが、どこかにわだかまりは残るはずだ。
永遠に残る傷だとは思わないが、完治するには長い時間を必要とするだろう。
しかも写真が
巧妙だ。
いぶきとセックスしているのが裕作だというのはわかるし、そのくせ、彼が拘束されているところは微妙に写って
いないのだ。
不自然なポーズや体位になっているものが多かったから、縛られていたと主張すれば信じて貰えるかも知れないが、
実際にそれがわかるカットはないのだ。
いぶきは最初からそうするつもりだったらしい。

「帰る、なんて言わないよね」
「……」
「さぁさ、しよしよ。してくれたら、この写真はあたしが責任持って預かるから。少なくともその間は、奥さんに
見せたりしないわ」
「……全部よこせ」
「いいけど」

いぶきは戸惑う男を見てにっこりした。

「いくらでもあるのよ、これ。ここに全部持ってきたわけじゃないしさ、ネガだって」
「全部だ」
「それは約束できないなあ」

いぶきは半身を起こし、裕作の腰を押さえながら言った。

「だって、全部渡したら最後、もう二度と会ってくれないでしょ?」
「当たり前だろ! って、おまえ、まだこんなことを続けるのか!?」
「当然。だってあたし、五代先生を愛してるんだもん」
「やめろ!」

裕作は顔を背けた。
まったく、この女は何を考えているのか、さっぱりわからない。
本気なのかふざけているのか、それともからかっているだけなのか、表面上からは判断できない。
そのいずれも、八神いぶきという女であればやりそうだからだ。

「さ、もういいでしょ」
「お、おい! 人の言うことを聞け! おまえなあ……」
「先生」

裕作のジーパンのファスナーを下ろしたいぶきは、仁王立ちしている彼に言った。

「まだ先のことはわからないわ。今はただ、先生としたいだけ。そのためにこんなもので脅迫してるの。いい? 
だから先生がごねたり拒否したりすれば、あたしは……」
「よせ!」
「頑固ねえ、夫婦揃って」
「夫婦揃って? おまえ、まさか……、響子にも何か……」
「んなこと気にしないでいいの」
「答えろ! 響子に……」
「何もしてないわよ。あたしはね」
「……」
「じゃあ、せめておとなしくしててね。こないだみたいに、あたしの方からしてあげるから」
「……そ、それで……」
「ん?」
「この前と今度の件は響子には……」
「言わないわよ、まだね」
「まだ? まだっておまえ……」
「い・い・か・ら。今度は縛らないから、黙って言うこと聞いて。そしたらこの写真はみんな先生にあげる。
奥さんにもばらさない。まだね」
「……今回だけだ」
「あん、またそんなつれないこと言って。ま、いいわ。取り敢えず今回だけね。後のことはまた考えましょ」
「今回だけだ」
「わかったわよ。ほら、動かないで」
「くそ……」

裕作は顔を逸らして目を瞑った。
彼はMっ気はないから、女の側からこんなに積極的──というより犯されても愉しくはない。
むしろ屈辱的に感じてしまう。
せめてもの意地として、いぶきがどんな媚態を見せようとも、何をしてこようとも、その気にならないでやると
誓っていた。
勃起さえしなければ、妻を裏切ることにはならないのだ。
例え身体中いじくられることになっても立ちさえしなければ、決定的なことは出来ないはずだ。

しかし、あまり自信はなかった。
裕作自身、あまり女に免疫がなかったし、前回も、あれほど酔っていたのに、見事に勃起してしまい、いぶきと
つながってしまったのだった。
ジーパンを脱がされ、トランクスも剥ぎ取られた。
下半身はソックスだけという、かなり情けない格好である。
もちろんペニスはまだダラリと垂れ下がっている。

「うふっ……」

いぶきは悪戯っぽい瞳で裕作を見上げると、おもむろにペニスを手に取った。

「く……」

感じまい、反応すまいと思っていても、そこは男性本能である。
可愛い女の子の柔らかい手で性器を握られれば、そう思っていてもそこは反応してくる。
勃起にはほど遠いものの、だらりとした状態から、やや芯が入ったかな状態になっていた。

「うふ、立たせないようにしてるんでしょ? かーわいい、先生」
「うるさいっ。するんなら何でもしろ! こんなことされたって俺は……」
「立たない? そうね、面白い。もし本当に先生のここが使い物にならなかったら、今日はやめてあげる」
「本当だな」
「ええ、約束」

いぶきはそう言って、軽くペニスをしごいた。
裕作は「うっ」と声を漏らして腰を引いている。
この程度でこの状態なら、いぶきのテクニックの前ではとてもとても意志を押し通すことなど出来ないだろう。
いぶきはベッドから降りて、裕作の前に跪く。
そしていったん裕作のものから手を離すと、自分の胸を両手で支えて軽く持ち上げた。
その胸の膨らみの間に、裕作のペニスを挟み込んだのである。

「おっ、おまえ……!」
「うふふ、どう、こういうのって? 先生、初めてでしょ?」
「……」
「でも好きでしょ、こういうの」

いぶきはそう言って妖しく微笑みながら、自分の乳房を使って裕作を愛撫していく。
妻も響子のバストは、その形状といいサイズといい、また肌の柔らかさから見ても、ほぼ完璧だと裕作は思っている。
だが、いぶきのそれも決して悪くない。
サイズは響子よりも小振りだが、形は良い。
年齢的にもまだ発展途上であり、これからさらに膨らんでくるのだろう。
肌も、響子ほどのもち肌ではないにしろ、ぷりぷりと弾力のある若さ溢れる肌だった。
そんな胸肉をたっぷりと使い、肉棒をその谷間に入れて揉み擦っていく。

「おっ……」

柔らかい肉でペニスを刺激される快感に、思わず腰を引いた裕作だが、逃がさないとばかりにいぶきが膝立ちのまま
すり寄る。
裕作の肉棒は、たちまちのうちに堅くそそり立ち、膨れた亀頭からは早くもカウパーが零れてきた。
それを潤滑油にして、ぬりぬるとぬめりながら胸肉に包まれた男根は、否応なく硬く熱くなっていく。
ビクンビクンと乳房の谷間で跳ねるように反応している。
いぶきは裕作の反応を見ながら、硬くなった自分の乳首を使って、カリや裏筋まで擦ってきた。

「お、おい、八神っ……!」

つい裕作はいぶきの頭を押さえ、突き放そうとした。
いぶきは軽く頭を振って、それを拒絶する。

「やめて、先生。今回だけはするって言ったでしょ」
「でもおまえ……、うっ……!」
「ほら、先生だって気持ち良いくせに。格好つけないでよ」

拒否している割りに、裕作は腰を突き上げてきていた。
肉体的本能では、もはやその快感に逆らいがたくなっているのだ。
尿道口からは、とぷとぷと透明な粘液が溢れてきている。
裕作も、相当に溜まっているらしい。

男の顔とペニスを交互に見ながら、いぶきは妖しげに微笑み、そっと舌を伸ばした。
尖らせた舌先で、ちろっと亀頭の先端を舐めると、裕作は「くっ!」と呻き、腰を震わせた。
なおもいぶきはふたつの肉球で盛んに裕作の男根を揉みしだき、液体を絞り出させている。
にちゅにちゅと粘った淫らな水音が室内に響いた。
もう、どうにも我慢できないのか、裕作ははっきりと腰を動かしてくる。

「くっ……、おまえ、もうっ……よせ……あっ!」

両胸の肉塊に挟まれ、揉みくちゃになっているペニスの先を、いぶきはねっとりと舌で舐め込んでいく。
亀頭を押し包むように舌全体でぺろりと舐めると、快楽に震える亀頭から、どろっと精液混じりのカウパーが
噴き出てきた。
いぶきがそれに気づいたのとほぼ同時に、裕作は呻いて射精してしまった。

「うあっ……!」

腰を引いたのだが間に合わず、びくびくと震えたペニスから引き絞られたように射精が始まった。
びゅるっと勢いよく噴き出た精液がいぶきの顎や頬にあたり、それがどろりと乳房に垂れていく。

「あ……、す、すまん」
「あら、いいのよ、謝らなくても。こうなって欲しかったんだし、うふ」
「……」
「でも、口ほどにもないなあ。絶対立たせないって頑張るんじゃなかったの?」
「そ、それはおまえが……!」
「そうよね。あたしのテクが気持ち良くてこうなっちゃったのよね」
「く、くそっ……」

いぶきはまだ裕作のペニスを解放せず、パイズリし続けている。
射精は終えたらしく、萎えた肉棒が、いぶきの乳房の間でぐったりしていた。
いぶきはそれを見つめながら思わせぶりに言った。

「でも、思ったより呆気なかったな。それに精液もけっこう濃かったし。……先生、もしかして」
「……何だよ」
「もしかして、奥さんをあんまり抱いてないんじゃない?」
「……!」

裕作は一瞬びくりとしたが、すぐに平静を装った。

「そんなことはない」
「以前はそうだったかも知れないけどさ、最近はどう? あんまり……っていうか、全然セックスしてない
んじゃない?」
「……なぜだ」
「だってわかるもん。先生、すぐ出しちゃったし、今も言ったけどザーメン濃かったよ」

実際、裕作はここのところ妻の響子を抱いていなかった。
いぶきとの「浮気」を裕作が気に病んでいて、響子を抱くのが申し訳なかったということもある。
そして何より気になったのは、響子の方からも求めて来なくなったということだった。

響子は性的に開放的とは言い難かったし、慎ましやかな性格だったこともあって、結婚前はもちろんのこと、
夫婦となってからも必要以上に「夫婦生活」を求めてくることはなかった。
裕作は裕作で奥手であり、ややもすると怖じ気づいている面もあったので、とても積極的とは言えなかった。
もちろん、響子に対しての思いが強すぎて、そういう思いをストレートに出すのが憚られたということもある。
それでも、最初に婚前交渉を求めたのは響子の方だったし、彼女自身、裕作の気持ちがよくわかっていたし、年上と
いうこともあって、自分からリードしていたのである。

結婚後、裕作にも多少の自信が出てきてからは、彼の方から誘うことも増えてきたし、だんだんとわだかまりも
消えていった。
互いに求め合うようになっていったのである。
それがここ最近、セックスレスになっている。
前述の理由で裕作からは誘いにくかったし、どうしたことか響子からも言ってこなくなってきている。
裕作としては、こんな精神状態で響子に誘われたらどうしようと思っていたので、求めがなくて安心していた面
もある。
だがいぶきに指摘されて改めて思ったが、裕作の事情を知らずにこんな状況が続くのは確かにおかしい。
裕作は、もしかすると響子が、夫の元気のない様子を察しているのではないかと思ったのだが、それならそれで、
逆に「身体で慰めよう」とするのではないかとも思う。
実際、過去にもそういうことはあったのだ。
それがまったくない。おかしいと言えばおかしかった。
訝しげな表情になった裕作を見上げながら、いぶきはいったん彼から離れた。

「……奥さんがしてくれないんじゃない?」
「……! な、何を言って……」
「違うの? じゃあ、してくれてる?」
「……そんなことはおまえには関係ない」
「ああら冷たいなあ。でもね……」
いぶきはそう言うと、半身になって身体を伸ばし、自分のバッグから何やら取り出した。
「これ見て」
「なんだ」

写真だった。
しかもポルノ写真である。
女の真っ白い裸身が写っている。
しかも下半身だ。
脚を開かされ、股間に男と思われる腰が入っていた。
よく見ると、女の性器に男根が挿入されている。
裕作は顔を背けた。
こんなものを見る趣味はなかった。

「なんだ、その写真は。俺はそんなもの見たくはないぞ」
「ふふん、そうかしら? これ見ても同じこと言える?」

いぶきは二枚目の写真を差し出しながら、上目遣いで裕作を見る。
二枚目の写真を見て、裕作の表情がぴくりと動いた。

「これが何だ」

そこに写っていたのは、妻の響子だった。
しかし顔だけである。
長く細い首や、その下の鎖骨あたりまで写っていたが、それだけだ。
響子にしては珍しく露出が多いが、そういう服がないわけではない。
妻の表情が苦悶に近いのが気になるが、どうということはなかった。

「奥さんでしょ」
「だから、それが何だ。響子が浮気してるとでも言いたいのか」
「あら、ご明察。じゃ三枚目をどうぞ」
「あっ……」

つい声が出てしまった。
その写真の響子は、明らかに裸だったのだ。
裸の胸を露わにして横たわっていた。少なくとも上半身は何も身につけていない。
だめ押しするように、いぶきが四枚目を裕作に渡した。

「……!!」

裕作は声もなく、その写真を奪い取った。写真を持つ両手が小刻みに震えている。
食い入るように見つめていた。

「これは……」

そこに写っていたのはやはり響子で、しかもひとりではなかった。
髪をまとめた響子が男に押し倒され、組み伏されている。
ふたりとも全裸のようだった。

いぶきはさらに写真を示した。
どの写真でも、響子が男と絡んでいた。乳房を揉まれ、あるいは首筋を舐められ、あるいは腰が重なっていた。
どう見てもセックスしているようにしか見えなかった。
どの写真も、響子の顔ははっきりと写っているが、抱いている男の顔は微妙に、あるいは巧みに隠されている。
裕作にとって僅かに救いだったのは、響子の方にはのめり込むような感じがなかったという点だけだ。
どの表情も苦悶し、喜々としている感はない。
だがそれだけに、得も言われぬ妖しい色香を感じさせる。
裕作は、声まで震わせて問い質した。

「……八神、おまえこれをどこで……」
「……」
「言え! どこなんだ!? 男は誰だ!?」
「んなこと、どうでもいいじゃない」

いぶきは少し投げやりに言った。

「問題はさ、そうやって奥さんも浮気してるってわけよ」
「……」
「言っとくけど、奥さんの不倫、それ一回じゃないわよ。もう何度も……」
「ウ、ウソを言うな! 響子がそんなことを……」
「ウソじゃないわ。見せてあげようか、他のも。いっぱいあるわよ」
「み、見たくない!」

裕作は大きく戸惑い、頭の中がぐるぐる回っている。
考えがまとまらない。
何が起こっていたのかわからない。
妻が、響子が浮気? 
そんなことがあるわけがない。
何不自由ない生活……とは言わないが、「狭いながらも楽しい我が家」を地で行っていたはずだ。
経済的には恵まれていなかったが、愛情だけはたっぷりあるつもりだった。
愛し、愛されていると信じ切っていた。
男に無理に襲われ、セックスに目覚めてしまった。
そんな官能小説のようなことがあるとは思えなかったし、況して響子には余計に無縁な話だ。

「八神! おまえ、これをどこで手に入れた!?」
「どうでもいいじゃない」
「よくない! 言え! それともおまえが響子に……」
「あたしはしてないわよ。先生、現実を見てよ」
「現実だと?」
「ええ。ほら、これ。一度じゃないんだってば。もし奥さんが無理に犯されたんだとしたら、こう何度も何度も別の男と関係するわけないじゃない」
「それは……」
「ね? 奥さんが淫らだとは言わないけどさ、あの人も女だってことなんじゃない? 先生があんまり抱いて
あげないから、つい……」
「そんな……」

確かにここ最近、妻の身体に触れていない。
しかし、だからと言って浮気する理由にはならないと思う。
そう言うと、もと教え子はきっぱりと否定した。

「それが男の思い込みだってのよ。なに? 男には性欲はあるけど女にはないって言いたいの? ひどい男女
差別よ、それ」
「さ、差別って……俺は別に」
「なら何よ。男の浮気は許されるけど女はダメだっての?」
「そんなこと言ってない! 俺も響子も不倫なんか……」
「してるじゃないの、お互いに」
「……」

そうは言っても、裕作の場合はいぶきの強引な誘惑と狡猾な罠だったわけだし、きっと響子の方にしても、やむに
やまれぬ事情があったに違いないのだ。
一度だけではないにしても、既成事実を脅迫に使われているのかも知れないではないか。
それを聞いたいぶきがツンとして言う。

「じゃあ、そのことを奥さんに確認してみる? おまえ、誰かに犯されてないかって。そのことで脅されてる
んじゃないかって」
「……」

とても聞けない。
いぶきは、持っていた写真をバッとまき散らして言った。

「だからさ、こんなの大したことじゃないって割り切ればいいのよ。先生も奥さんも」
「大したことないって、おまえ……」
「大したことないじゃない。アバンチュールよ。奥さんだって、たまには旦那以外の男に抱かれたいって思った
のかもよ」
「響子は違う! そんな女じゃない!」
「思い込みよ。窮屈だなあ、そういうの。奥さんもそう思うかもよ」
「……」

押し黙ってしまった裕作のペニスに、いぶきがまた手を伸ばす。優しく甘く擦っていく。

「だから先生も愉しめばいいのよ。ね? 奥さんと同じくね」
「……よせ」
「やめないわ。奥さんにばらしちゃうから。写真も添えて」
「おまえ……」
「そんなことしたくないわ。だから。ね?」
「……」
「してないんでしょう、しばらく女と。だったらしたいわよね、男なら」

いつしか裕作の男根に、また力が籠もってくる。
いぶきの柔らかい掌の中で、それはむくむくと膨れ、硬くなっていく。
そそり立ったペニスをピンと指で弾くと、いぶきはごろりとベッドに横たわった。

「……来て、先生」
「や、八神……」

思う壺だった。
裕作はふらふらといぶきに向かっていく。
心の中は荒れていた。

信じられない妻の浮気。
否定しようにも、写真にはばっちりとその様子が撮影されている。
そして自分も、今こうして再びもとの教え子と関係しようとしていた。
あまりにも倒錯的な状況に混乱する一方だが、どうしたことか肉棒の方はめきめきと勃起していく。
無防備に寝ている美女にそそられたというのもあるし、直前に見た妻の痴態に暗い興奮を覚えてしまったこと
もある。
慎ましい響子がどう犯され、どんな反応をしたのか。
自分に抱かれている時とは異なる感じ方だったのだろうか。
まさか気をやってしまったのだろうか。
それがクセになり、その男が忘れられずに何度も……。

そんな淫靡なもやもやを振り切るように、裕作は頭を強く振った。
目の前には、男を招くように片手をさしのべている若い女がいる。
男は、矢も楯もたまらず覆い被さった。

「うふ、その気になった?」
「うるさい、うるさいっ……くそっ!」
「あん、そんなに乱暴にしなくても……」

いぶきは、焦って襲いかかってくる童貞少年を窘めるかのように優しく言った。
年齢ではともかく、経験では圧倒的に年下の女が上回っている。

「いいわ、来て先生……。欲しいの、あなたが」
「……」
「あなたのたくましいのが欲しいの。来て」

裕作は黙ったまま、震える指をその乳房に伸ばしてきた。
裕作自身の液でぬるぬるになっているいぶきの乳房は、室内の灯りを受けて妖しく光っている。
女の美貌や表情にもいざなわれ、裕作はその豊かな膨らみをぎゅうっと握りしめた。

「んあっ……、ああ……」

力強く胸を掴まれ、いぶきは小さく喘いだ。
まるで取り込まれてしまったかのように、裕作は荒々しく息をしながら、女の乳房を揉みしだきてきた。
ぎゅっと揉み立てると、硬くなった乳首がピンッとそそり立つ。
技巧も何もない愛撫だが、いぶきにとっては天にも昇る快楽だ。
過去に愛した男を奪い取った女から奪い返す。
愛妻を裏切りつつ、自分の裸身にのめり込む男。
辿々しい性技しか知らぬ裕作をセックスでリードし、虜にする。
そのどれもがいぶきを高ぶらせていった。

「あ、あんっ……先生っ、先生っ……」
「くっ……や、八神、俺は……」
「な、何も言わないで、ああっ……今はこのまま……ああ、いいわ、先生……」
「ほ、本当にいいのか、八神」

そう言いながらも、裕作は早くもペニスを持ち、いぶきの股間にあてがっている。
普通なら、もっともっと女の裸身を愛撫し、愉しませて欲しいところだが、今の裕作にはテクの面でも精神面
でも無理だろう。
何度も抱かれて、少しずついぶきの色に染めていけばいい。
今は自分の身体にのめり込ませる方が先決だ。

「先生ったら、もう入れたいの?」
「お、おまえの方が誘っておいて何だ。焦らしてるつもりか?」
「ふふ、本当にその気になったのね……。いいわ、しても。入れて、先生」

その言葉を待ってから、裕作はいぶきの媚肉に押し当て、ぐっと中に割りいっていく。
すっかり潤っていたいぶきの膣は、すんなりと裕作の肉棒を飲み込んでいく。

「んっ……ああっ! は、入ってくるっ……先生のが……五代先生のがっ……」
「くっ……きょ、響子……俺は……」
「こんな時に奥さんの名前なんか呼ばないで。ほら、もっと深く……あ、そうよ……ああっ!」

ずぶずぶと押し入ってくる肉棒に膣襞が絡みつき、締め付けてくる。
裕作が腰を落とすだけでなく、いぶきの方も自分から腰を持ち上げてきた。
女の腰が浮き、男女の股間が完全に密着する。

「ああ……、全部……全部入ったね……」
「俺は……、くそっ!」
「ああっ!」

ひくひくと収縮する膣肉に、裕作はぐっと腰を打ち込んでいく。
子宮まではいかないが、それなりに深くまでペニスが抉り込まれる。
男を誘ってやまないいぶきの裸身がうねり、強く反応した。

「いいっ……そうよ、先生、ああ、いい……」

上擦った声で喘ぎながら、いぶきは身を仰け反らせた。
裕作の技巧やペニスのサイズは、今のいぶきの男とは比較にもならなかった。
それでいて、その男に抱かれている時以上の快楽がいぶきを襲っている。
いかにセックスが精神面の影響を受けるか、ということだろう。
悩ましい声で喘ぎつつ、いぶきは裕作の動きをねだるように腰をうねらせている。
それを受けて、裕作がずんずんと腰を突いていった。

「ふあっ! あ、いいっ……せ、先生、いいっ……も、もっと……ああっ、もっとして!」
「くそっ……ちくしょうっ!」

裕作は憤り、罵りながら、いぶきの身体を抱いた。
何に対して憤り、怒っているのかわからない。
妻への思いが足りなかったこと、その妻が不倫していたらしいこと、そして今自分が不倫していること、それら
すべてが裕作の感情をかき立てている。
大きくグラインドし、いぶきの膣内を激しく突き込んだ。

「やっ、いいいっ……いいわ、先生……気持ち良いっ……」

いぶきの若いしなやかな肢体が弓のように反り、うねる。
全身に汗を浮かせ、男の手に吸い付くような感触と、逆に指を弾くような張りを見せていた。
いぶきは両手を伸ばして、裕作の背中を抱きしめた。
くっついた男女の腰は互いに跳ね、より刺激と衝撃を双方の性器に与え合っている。
積極的に動いているのは、やはりいぶきの方だった。

「あ、すごっ……すごい、いいっ……いいわっ……せ、先生は? 先生もいい? ああっ」
「俺は……くっ……」

裕作に答えられずはずもなかったが、その腰の動きがすべてを物語っている。
もう女の媚肉に逆らえぬように、その腰は弾み、膣深くまで己の肉棒を送り込んでいた。
裕作の脳裏には妻の姿がある。
しかし目の当たりにしているのはいぶきの悶える裸身であり、部屋に散らばっている響子の痴態写真だった。
しかも響子は、夫以外の男に抱かれて悶えているのだ。
それが悔しさ、憤怒とともに、別の官能を呼び起こしてもいた。
他の男に抱かれてどう反応したのか。
気持ち良がったのだろうか。
まさか最後まで……膣内に射精までされたのだろうか。
そんなことを考えると頭の中がカッと熱くなり、むらむらと獣欲が込み上げてくる。
制御不能の肉欲が、下にいる若い女にぶつけられていった。

「いいっ……やっ……あ、なんだかもういきそうっ……先生、いいっ……」

ベッドが激しく軋み、いぶきの嬌声とよがり声が響く。
律動が激しくなると、いぶきは苦しげに呻き始めた。
呼吸が苦しくなっているらしい。
それでいて、貪欲に快楽を求めて自分で乳房を揉みしだいている。
焦れったいのか、裕作の腕をとって、その胸を揉ませることまでした。

「そっ、そうよ先生っ……ああ、おっぱいも愛して……いいっ……気持ち良いわ……先生じょうずっ……!」

裕作が胸も愛撫し始めると、安心したようにまた両腕を背中に回して抱きしめる。
僅かに空いた両者の隙間に手を入れ、男は女の乳房を揉みしだいていた。

「せ、先生、キス……」
「それは……」
「キスして!」
「あ、よせ、うむっ!」

躊躇する裕作の頭を抱え、いぶきはその唇に口を押しつけた。

「ん、んちゅっ……ちゅるっ……んんん……」

驚いた裕作が口を開けると、すかさずその中に舌を入れる。
戸惑う男を尻目に、舌をその咥内に潜り込ませ、動き回った。
女の甘い舌の感触に、ついに裕作も耐えきれず、その舌を強く吸った。

「んんっ……んじゅっ……ちゅううっ……」

裕作のキスは、ただ強く吸うだけだった。
舌を絡め合ったり、女の咥内を舌で愛撫するようなこともない。
本来のいぶきであれば、まるで物足りないキスだったが、そこは憧れの裕作との初めてのキスである。
彼の頭を抱えて顔をくっつけ、その舌を好きに吸わせていた。

「んあ……」

裕作が口を離すと、追いかけるようにいぶきの小さな舌が伸びていた。
唾液の糸がふたりの間をつなぎ、その光景が異様なほどに卑猥に思えた。
裕作は、また肉棒に力が入るのを感じる。

「あ、先生のまた大きくなった……。あ、いいっ……そ、そうっ、もっとして……もっと動いて!」

いぶきの媚肉がぴったりと裕作の肉棒に吸い付き、収縮と弛緩を何度も繰り返していた。
裕作は思いのままに、力任せに突き込んでいるのだが、いぶきの性器はそれを受け止め、なおも奥へと導こうとしていた。
いぶきの若い媚肉に
裕作は耐えきれなくなる。

「やっ、八神っ……もうっ!」
「あ、せ、先生っ……ま、待って、もう少し……くっ……もうちょっと、あっ、頑張って!」

汗の浮いた裸身を震わせ、いぶきは裕作に抱きついてそう言った。
裕作がもういきそうなのは、膣に収められた肉棒の震えを感じてわかっている。
しかし彼女の方は、まだ足りなかった。
いぶきの明け透けな性格やその美貌に惹かれ、彼女をその胸に抱いた男は多い。
彼らに鍛えられ、育てられた魅惑的な肢体は、裕作のセックスくらいでは簡単に満足しなかった。

「いっ、いいわっ……あ、そうっ……うんっ……も、もっと強く……ああっ!」

いぶきのとろけるような声に応え、裕作は脳裏から妻を追い出して激しく腰を打ち込んだ。
彼の突き込みにはっきりと反応し、いぶきの嬌声があふれ出る。
裕作は男としての誇りを感じていた。

「い、いいのか、八神っ……お、俺のがっ……」
「いいっ……先生のいいっ……」

いぶきの膣内の温度が上昇し、裕作の肉棒に伝導されていく。
収縮も小刻みとなり、盛んにペニスを締め付けた。
繰り返し込み上げてくる射精欲を懸命に堪えつつ、裕作はいぶきの中を抉り抜いた。
彼は、自分の妻に対しても、ここまで頑張ったことはないことに気づいていない。
響子とのセックスでは、基本的には自分が出したい時に出していたのである。

「すごいっ、先生っ……ああ、いい……。ね、先生、あっ……お、奥さんよりあたしの方がいいでしょ? ああっ」
「な、なに? 何でこんな時に……」
「こんな時だから、あっ……ね、言って……あたしの方がいいって……お願いぃっ……」
「八神……おまえ……」
「言ってっ……あ、いく……いきそうになってる……いいっ……」

いぶきの媚肉は今にもいきそうなのに、さらなる快楽を求めて肉棒を食い締めている。
ひくつく甘い刺激に、男も射精したくてたまらなくなった。

「八神っ……!」
「せっ、先生、いくっ……あ、来るわっ……」
「もうっ……だめだ! 抜くぞ!」
「いやっ!」

いぶきは、いつ絶頂してもおかしくない肉体に鞭打って、その長い脚を裕作の腰に絡みつけた。
左右の足首をしっかりと絡ませて「絶対に離さない」と締め付ける。
裕作が動揺した。

「お、おい、おまえ……!」
「いや! 離さない! 出すなら中に……ああっ……あたしの中に出して!」
「バカッ、そんなことしたら……」
「いいの! 出していいの! 先生のが欲しいっ……!」

メリハリのついた裸身をたわませ、ほのかにピンク色に染まった肌を誇示しながら、女子大生は何度もそう言った。
憧れ続けた男とのセックスによる喜悦に酔い、その快楽を貪るように受け入れている。
響子にはない痴態であった。
いぶきの声がいよいよ切羽詰まってくる。

「せっ、せんせえっ……あたしも、もうっ……い、いく……いっちゃうっ!」
「八神、俺もっ……」
「い、いって! 先生も一緒にぃっ! あ、いく……いっくっ……!」

いぶきの身体が大きく仰け反り、背中がベッドから浮いた。
尻と頭で身体を支え、ぐぐっと弓なりにしなった。
同時に膣が恐ろしい勢いで締まり、とても我慢しきれなくなった裕作も決壊した。

「くおっ……! で、出るっ!」
「ああっ!」

裕作の精液が激しく噴出し、いぶきの胎内にまき散らされた。
びゅくびゅくと膣内のあちこちに引っかけられ、そのたびにいぶきを全身をわななかせて喘いだ。

「あっ……! な、中に出てる……五代先生のが……も、もっと……もっと出して……ああ……」

どくどくと射精されるごとに、いぶきは愉悦に表情をとろけさせながら熱い息を吐いていた。
膣にかかる熱い精液を感じるのか、時折小刻みに痙攣している。

「熱いわ、先生の……あ、いっぱい……」

男の背をしっかりと抱きしめていたいぶきの両腕から力が抜け、どたりとシーツに落ちた。
ほぼ同時に、裕作の腰に巻き付いていた脚も力なく広がった。
それでもまだ女は、男の腰に自分の腰をすりつけていた。

「先生……。奥さんよりよかった?」
「……」

裕作は答えなかったが、いぶきは手応えを感じていた。
確かに彼は何も言わなかったが、否定もしなかったのである。
かつての裕作であれば、言下に退けたことだろう。
いぶきとのセックスが終わったばかりで、まだその余韻があったこともあるだろうが、裕作らしくはなかった。

これでいいと彼女は思った。
「妻命」の裕作から、少しずつ響子を削っていけばいい。
そこに自分が入るのだ。
自分には、響子にない若さと行動力がある。
絶対に負けないといぶきは信じていた。

「……先生」

いぶきはそう言って、また裕作のペニスに手を伸ばしていた。
男女の淫液でどろどろになって、幾分萎んだ肉棒を指で巧みに愛撫する。
裕作の表情は虚ろで、女の行為を拒絶することはなかった。

────────────────

「……」

響子は虚ろな表情でおとなしくしていた。
こうして坂本に呼び出されるのは何度目になるのだろうか。

あの夜、一刻館で、寝ている裕作の前で犯されてから、ことあるごとに呼び出しを受けていた。
断れば、またアパートに押しかけられる。
やむなく出かけると、そこで響子との情事を撮影した写真をちらつかせ、彼女の抵抗を奪った上で、強引にその
身体を犯された。
そんなことが、もう6回も繰り返されている。
いつも同じホテルで、同じ部屋だった。

響子が坂本の治療院で初めて凌辱を受けてから、まだ一月と経っていなかった。
つまり週に二度は呼び出され、犯されていたのである。
呼び出されるのはいつも午前中からで、それから4時間あるいは5時間に渡り、徹底的に凌辱され、調教を受けていた。
いかに成熟した人妻とはいえ、濃厚なセックスを長時間に渡って繰り返されたのだから、身も心もくたくたであった。
なのに、このけだもののような男は、醜い男の性欲を隠そうともせず、響子の肉体を欲し、貪っていった。

浴室のドアが開いて坂本が入ってきた。
もう全裸である。
響子も同じように全裸にされているが、その身体を緊縛されていた。
両腕を後ろ手で縛られ、胸の上下にロープが巻き付いている。
真っ赤なロープが、真っ白い響子の胸で見事なコントラストとなっている。
上下二本ずつの縄が、もともと豊満な響子の乳房を縊りだし、さらに大きく見せていた。
脚は自由だったが、逃げられるはずもない。
これでは服を着ることも出来ぬし、そもそも脅迫されている以上、逃げようがないのだ。

「いい格好だな、奥さん」
「……」

響子は顔を背けた。
坂本など見たくもない。
そして見られたくもなかった。
男の無遠慮な手が響子のなだらかな肩を撫で、背中をさすってくる。
響子は鳥肌が立った。

「触らないで」
「ほう。言うなあ、奥さん。俺と奥さんは、もうそんなこと言うような関係じゃないだろ」
「……」
「何度も俺に抱かれて悩ましい声を上げてたのは響子じゃないか。くくっ、旦那の五代に内緒でな」
「いや! 言わないで!」

響子は激しく顔を振りたくった。
坂本はその顎を掴み、響子の顔を正面から見据えた。
もともと気の強い響子は、厳しい顔で坂本を睨んでいる。
その頑なさを揉みほぐすように、坂本は響子の乳房をゆるく揉んでいた。

「……いいね、その気丈そうな顔。身体は好きにされても心は亭主のものだってことかな」
「……そうです」
「そうかねえ。でも奥さん、俺に抱かれて……いや、犯されて、か。犯されて感じまくってたじゃないか。何度も
気をやってさ」
「……」
「もともとスケベな身体してたってことだよ。こんな淫乱な女房もらって、五代も気の毒に」
「違います! 失礼なこと言わないで! 強姦されて感じるなんて……そんなはしたないっ……」
「でも感じてたろ? いったじゃないか。奥さんが、犯されて感じるようなふしだらな女じゃないとすれば、俺に抱かれて
いかされたってことは、愛し合ったってことだろ? 和姦なわけだ」
「そんな……ひどいです……」
「だってそうじゃないか。奥さんが絶頂したってことは、奥さん自身が淫らな身体をしてるってことか、俺とは和姦
だったってことになるだろうに」
「ああ……、もういや……」

響子はなよなよと頭を振った。
さっきとは違い、動きが弱々しい。
心の虚に、この男の意地悪な言葉が突き刺さってくる。
思い当たるところがあるだけに、響子は強く否定も出来なくなっていた。

「ああ……、もういや……いやです……あっ……」

響子の背中からまとわりついた坂本は、左手で乳房をやんわりと揉み、右手を股間に滑り込ませた。
そして恥肉に指をあてがうと、そこをすうっと撫で上げる。

「くっ……!」

響子が顎を突き出して顔を仰け反らせる。
早くも男の指先が粘液にまみれてきた。

「もう濡れてるのか。さすがに熟れた人妻、準備が早いな。それとも、縛られただけで感じてたのか? 今日はどんな
ことされるのかって期待してたりしてな」
「……」

響子は黙っていたが、身体が火照ってきていることは事実だった。
股間に入った男の手を腿で挟んで拒もうとしているのだが、膣の奥が潤ってきてしまっている。
媚肉から、ねっとりとした透明な汁がにじみ出してきた。

「ああ……」

すっかり坂本の愛撫に馴らされてきてしまっている。
それを実感した人妻は、首から上を真っ赤に染めていた。

この男は、犯すたびに体位を変え、愛撫に工夫を凝らしてきた。
話だけは聞いていたような体位で犯されたり、響子が見たことも聞いたこともないような格好で貫かれたりもした。
膣を犯す時だけでなく、その全身への愛撫も、夫とはまるで違う執拗で念入りなものばかりだった。
自分が触りたいからというよりも、響子をいかに感じさせようかというものだ。
まだまだ未開発だった響子の肉体から、次々と新たなスポットが発見され、響子はその新鮮な快感と愉悦に呻き、
喘ぎ続けた。
犯され、気をやらされるごとに生まれ変わったような気すらするのだった。

室内には、もうもうと湯気が上がっている。
響子は気づかなかったが、いつの間にか坂本がシャワーを全開にしていたようだ。
そのせいか、湯船に浸かってはいなかったが、寒くはなかった。

「あ……、こんな格好……」

清楚な人妻は頬を染めた。
響子はバスタブの縁に腰掛けさせられていた。
それも、尻を乗せるというよりは、腿の付け根を乗せる感じだ。
つまり尻たぶは湯船の外に突き出すイメージである。
坂本はその雄大なヒップの前にしゃがみ込み、そこを覗き込んでいた。

「み、見ちゃいやです……」
「いい女ってのは尻の穴まで可愛いな。色が綺麗だよ、奥さん」
「そ、そんなところだめっ……見ないで!」

そう言って尻を振るのだが、逃げたり立ち上がったりは出来ない。
逆らえば写真で脅される。
夫にすべてが明るみになってしまう。
ここまで耐えてきた以上、我慢し通すことしか彼女には出来なかった。
ここで夫に打ち明けるのであれば、最初からそうしている。
そうしていれば、何度も何度もこの男の毒牙に掛かることもなかったのだ。
それができなかったからこそ、こうして耐えているのだ。
ここで音を上げたら、それまでの苦労が水の泡となってしまう。

「いや……いや……見ないで……」

男の視線を感じるのか、響子のアヌスがひくひくと蠢いている。
どうしてこの男は、こうも恥ずかしいことばかりしてくるのだろう。
おぞましい排泄器官などを観察され、響子は気がおかしくなりそうだ。
見るだけでなく、アパートでは淫靡な玩具を使って肛門を弄んできた。
以降も、このホテルで何度もお尻をいびられて、響子は羞恥と恥辱で気死しそうになったのだ。

だが、その反面、そんな恥ずかしい責めに対して肉体が徐々に反応してしまうのが恐ろしかった。
いやでいやでたまらないのに、そうされると身体の奥が熱くなる。
どういうわけか子宮までは反応してくるのだ。
坂本には「奥さんは恥ずかしい責めをされると感じる」と指摘された。
そんなことはないと否定した響子だったが、もしかすると当たっているのかも知れなかった。
でなければ、お尻を責められても感じるような淫らな女だということになってしまう。
どっちも認めたくはなかった。
認めたくはなかったが、こうして尻を責め続けられると耐えきれなくなってしまうのはどうしようもなかった。

「くうっ……!」

男の指が、ちょんとアヌスを突いただけで、つい声を上げてしまう。
指を感じた肛門は、驚いたように引き窄まっていた。

「ふふ……」

響子の反応を見て、満足気に笑った坂本は、一度響子の身体から離れた。
響子はホッと息をつく間もなく、背後で何やらごそごそしている男の動きが気になった。

「な……何をしてるんですか……」
「何だと思う?」
「知りません……」
「知りたいかい、奥さん」
「……もう、何でもすればいいいわ」
「なんだ、投げやりじゃないか」
「どうせ何を言っても、あなたは私に淫らなことをするのでしょう」
「よくわかってるじゃないか。じゃ、覚悟してもらおうか」

その言葉にゾッとした響子がおずおずと振り返ると、男は何やら透明なチューブらしいものを握っていた。
坂本が手にしている先端には小さなノズルがついていて、根元は背後の壁から出ている小さな注入口に繋がっている。
ラブホテルの中でもここは特殊なようで、いろいろな仕掛けが部屋にも施してあった。
天井や壁にはフックがあったし、部屋には様々な責め具まで用意してあった。
このバスルームもかなり広く、響子にはよくわからない仕掛けがあるようだ。
シャワーも3つもあったし、蛇口もバスタブの他に二箇所もあった。
他に、今、坂本が使っている小口の注入口がある。
水やお湯が出るのではないのかも知れない。
他にも、浴室には不似合いな大きな換気扇まである。

坂本の持ったノズルから、ちょろっと液体が出てきた。
やや薄い黄色がかった水のようだ。
手元に栓があるらしく、自在に噴き出させたり止めたりしていた。
試しているのかも知れない。

「な、なにを……」
「何でもすればいいって言ったろ?」
「……」

そう言われると、響子はプイとそっぽを向いた。
坂本はその様子をにやにやしながら見て、響子のアヌスを揉み始めた。
途端に響子の裸身が飛び跳ねる。

「きゃああっ!」
「動くなよ。いいか、逃げたりするなよ。逆らったら……」
「わ、わかってますっ! でも、でもそんなところ……」
「いいからおとなしくしろって」
「……」

微かに震える臀部を撫で回しつつ、坂本は器用に尻たぶを片手でくいと割った。
冷たい外気が触れるのか、見られて恥ずかしいのか、響子の肛門がひくひくとわななく。
そこにチューブから薬液をちょろっとひっかけると、響子は「ひっ!」と小さく悲鳴を上げて腰を持ち上げかけた。
だが、すんでの所で堪え、立ち上がりはしなかった。

「ああ……、ま、またお尻を……」
「察しがいいね。奥さんの尻は最高だからなあ」
「い、いやらしいっ……」
「そう、今日も奥さんはいやらしい責めを受けるのさ。じゃ、いくぜ」
「あっ!? 痛っ……!」

つぷりとノズルが響子のアヌスに挿入された。
先端は細かったが、根元は少し太くなっている円錐形だった。
ストッパーになっているのだろう。
大した太さではなかったが、そんなところにそんなものを入れられたのは初めてだったから、驚きも痛みもあった。

「な、何するの!」
「なにって、ここまでされてまだわからない? 浣腸だよ」
「か……んちょうって……」
「カマトト? まあいいや、知らないなら教えてやる。これでな、奥さんのお尻……というか、お腹の中に薬を
入れるんだよ」
「く、薬って……」
「心配すんな、おかしなもんじゃないよ。グリセリンだ。こいつを奥さんの腹ん中に入れるわけ」
「な……」
「知ってるだろ?」

驚愕で人妻はわなわなと震えた。
要するに、強制的に排便させようというのではないのか。
響子はもちろんしたことはなかったが、それくらいの知識は当然あったし、出産の際にはされることも多いと
聞かされていた。
だが、そんなことをセックスプレイとして行なうとは思ってもみなかった。

「や、やめて、そんなっ……!」
「動くなよ。五代に全部ばらすぜ」
「で、でもっ……でも、浣腸なんて……!」
「いやか? いやでも何でも響子は浣腸されることになるんだよ。拒否権はない」
「そんな……」
「あまり口答えしたり嫌がったリしたら、毎回浣腸してやるぞ」
「ひっ……、いやあっ! あ、そんなに深くっ……!」

坂本はにやにやしながら、抵抗できない人妻を嬲っていた。
チューブを握ると、するっと響子の腸内深くまで挿入する。
先端が腸壁に当たったのか、「ひっ」と悲鳴を上げて腰が上がりかける。
坂本に叱責されるとまたバスタブに座るが、チューブをくるくると回されてアヌスを刺激されると、我慢できないと
ばかりに身を捩った。

「い、いや、もう……ああ、そんないやらしいことはいや……ああ……」

性格的には短気な坂本だが、こういうことだけは執拗で粘り強かった。
嫌がる響子を叱咤し、言葉で嬲りながら、根気よくその肛門を抉っていく。
ずぶっと深くまで入れたかと思うと、今度はぬるぬるとゆっくり引き抜く。
アヌスの粘膜はチューブにへばりつき、おびえたようにひくついている。
それが中にめくれ込み、外へめくれ上がっていく。
さらに肛門の粘膜を巻き込むようにチューブを回転させると、響子はぐっと両手を握りしめて、呻きとも喘ぎとも
つかぬ声を漏らし始めていた。
坂本は、アヌスだけでなく、左手で乳房も揉み込んでいる。
嫌悪感ばかりでなく快楽も交えて、響子に新しい官能を覚えさせようとした。

「あ、あ……あうっ……あう、深い……うんっ……あ、回さないで……お、お尻が……巻き込まれる……あああ……」

声がねっとりとしてくる。
拒絶する言葉も出なくなっていた。
いやなのはいやだろうし、恥ずかしくもあるのだろうが、それだけではないことを物語っている。
坂本に揉みしだかれる左の乳房にも、じんわりと汗が浮いていた。
呻く人妻の耳元で坂本が囁く。

「入れるよ、奥さん」
「い、いや……」

栓が緩められると、グリセリン液が一気に響子の腸内に流れ込んでいく。
その異様な感覚に、響子は身体をぐぐっと伸び上がらせて悲鳴を上げた。

「ひぃああっ! やっ、やああっ……は、入ってくるっ……何か入ってくるぅっ……!」

突然の注入に、泡を食ったようにアヌスが引き締まるものの、それで流入が止まるはずもなかった。
ちゅるちゅると流れ込んでくる生温かい溶液の感触に耐えきれず、響子は髪を振り乱して叫んだ。
思わず立ち上がろうとするのだが、坂本がしっかりとその腰を押さえ込んでしまう。
いくら腰を振り立てても、男の太い腕に抱え込まれていて逃げようもなかった。
その間にもどくどくと薬液が肛門から入っていく。

「うあっ……はあああっ……い、いやっ……お尻、変っ……ああ、あっ……」
「どうだい響子、初めての浣腸は? 思ったより悪かないだろう」
「やっ、やめて! ああ、もうしないで……あ、あ……入ってくる……まだ入ってくるっ……」

薬液が冷たくなかったのがせめてもの救いだった。
これが冷えた溶液であれば、たちまち響子の腹部が苦しげに呻くことになっただろう。
しかしこれも時間の問題で、このまま注入され続ければ、いずれはそうなるのだ。
強制的に注ぎ込まれるグリセリンに脅えたように、響子のアヌスがきゅっ、きゅっと引き窄まっている。
目が眩み、頭の中が暗くなってくる。
勝手に腰が捩れ、蠢いた。
その美しい額には細かい汗が浮き始め、朱唇からは熱い呻き声が漏れ始めた。

「あ……ううっ……も、もう入れないで……あ、苦しい……ああ……」
「そんなでかい尻をしてるんだ。まだまだ飲めるはずだよ、響子」
「そ、そんな……もう無理……あ、あく……」

響子の様子を見ながら、坂本は栓をさらに開いた。
さっきまではちょろちょろとゆっくり入っていったグリセリンは、ずずっと勢いをつけて大量に流れ込んでいく。
途端に響子が目を剥いた。

「ひっ、ひぃっ! あ、く、苦しいっ……あ、そんなにたくさん……や……もうやめて……あああ……」

響子の美貌が見る見るうちに苦悶に歪んでいく。
その美しい表情が苦しむ様は、何よりも男を興奮させた。
響子の腹からぐぐっ、ぐきゅうっと低い唸りを上げてきた。
苦しいのか、響子は盛んに腰をもじもじさせている。
時折びくっと小さく震え、呻き続けていた。

「い、いや……お願い、もう入れないで……ああ……ううむ……」

もう響子は妖美な尻ダンスを止めることが出来ない。
おぞましい溶液がどくどくと注入されるたびに、勝手に尻がうねり、悶える。
内臓がグリセリンに犯されているのが、いやでも実感できた。
苦しくて仕方がないのになぜか気怠く、爪先まで震えてくる。

「ああ……もう……もう耐えられない……お願い、やめて……さ、坂本さん、お願いっ……」

響子が涙すら流して哀願し、必死になって腰を振っている。
そんなことをしてもムダなどころか、かえって逆効果で、便意を呼び起こすことになる。
だが、それを知っていても、響子は尻を振ることがやめられない。
注入されると、どうしても腰が蠢いてしまうのだ。

「ああっ……だめ……もう、だめ……は、入らない……これ以上は……ああ、お腹が苦しい……」
「まだだよ。ふふっ、奥さんのお腹がグルグル鳴ってるね、恥ずかしいな」
「いやあっ、言わないで! あ、だめ……お願い、坂本さんっ……もうだめっ、本当にだめなんです……ひっ……」
「それだけ喋れればまだまだだよ。ほれ」

坂本は注入しながらチューブを抜き差ししたり、回転させたりして響子に悲鳴を上げさせている。
そんなことをされれば、余計に便意が高ぶってくる。
重苦しい感覚圧迫感が、美しい人妻を苦しめていた。

「だ、だめっ……あ、あう……お尻、壊れそうっ……お腹、痛いっ……お、お尻が……ああっ!」

坂本は、響子の柔らかい腹に手を当てながら浣腸を続けている。
腹に当てた手のひらに、グルグルと悲鳴を上げている腸の様子が直接伝わってきた。
響子は、もうとてもじっとしていられないのか、脚をうねらせ、尻を振りたくり、手を握ったり開いたりを繰り返していた。
肌には鳥肌が立ち、細かい痙攣が止まらない。

「おっ、お願いっ……!」

響子が語尾を震わせながら言った。

「も、もう我慢できませんっ……」
「ほう。だから?」
「だ、だからって……」

坂本の意地の悪さに絶望した。
浣腸されたらどうなるかくらい、した本人がわからないはずはないのだ。
また響子に恥ずかしいことを言わせようとしているらしい。
あまりの屈辱感に唇を噛んだが、それでも我慢など出来るはずもない。
響子は死ぬ思いで口にした。

「お、おトイレっ……おトイレにつれてって……!」
「ようし、言えたな。この俺に「トイレにつれていけ」と言ったんだな」
「ああ……」

がっくりと頭を垂れた響子だったが、もう便意はそこまで迫っている。
腸の中に、熱く滾った便意の塊が渦巻いているのがわかる。

「は、早く……」
「いいだろう。ほら、これにするんだよ」
「こ、これ……!」

あまりのことに、響子は坂本を見返した。
男はポリバケツを響子の尻の下に置いたのである。
この卑劣な男は、ここで響子に排泄させようというつもりらしい。さすがに響子も激怒した。

「バ、バカなこと言わないで! こ、こんなところで……できるわけありませんっ」
「そんなこと言っていいの? じゃあバケツを片付けるぜ」
「おトイレに行くんですっ。は、早くっ……あっ」

響子は坂本が指にぶら下げているものを見た。鍵である。
この浴室は内鍵がかかるのだ。
中からも外からもキーがなければ開かないらしい。
これでは、例え響子が意を決して立ち上がっても、ここからは出られないということだ。
つまり、どうしてもここで済ませる必要がある。
かといって、禽獣ではないのだから、どこででもできるはずもない。
まき散らすわけにはいかないのだ。
とすれば、坂本の用意した簡易便器とでも言うべきバケツにするしかない。

哀れな人妻は、悪知恵を働かせる坂本を心底憎んだ。
しかし、もう生理的な限界は間近に迫っている。

(ああ……、ど、どうしよう……。でも、まさかこんなところで……できっこない)

「いいのか、バケツをしまっても」
「……」
「返事がないな。じゃあ……」
「あ、ま、待って! 待ってくださいっ」

坂本は思わせぶりに振り向く。

「じゃあ、ここにするんだな」
「……」
「返事は」
「は……い……」
「ちゃんと言いなよ、奥さん。させてくださいってな」
「……。さ……させて……」
「いいだろう」

坂本は再びバケツを置いた。
響子は恥辱と屈辱にまみれつつ、そこに尻を突きだした。
ぷるぷると震えているのは、迫り来る崩壊に脅えているのか、見られている羞恥に身悶えしているのか。

「どうしたの。早くしなよ」
「……み、見ないでください……」
「いいや、見るぜ。かぶりつきでな」
「そんな……。あっ」

坂本は響子にまとわりついたかと思うと、いきなり乳房を揉み出した。
それだけでなく、やや膨れた腹部を撫で回している。
途端に便意が急激に高まる。

「ひっ! さ、触らないで! ああ、で、出てしまいますっ」
「出てしまうったって、したいんだろうに」
「そ、そうですけど……ああ、いやあ!」

男の手が蠢くたびに、腸にビンビンと響いてくる。
今にもアヌスが決壊しそうだ。

「いいんだよ、奥さん。気にすることはない、思いっ切りしてみなよ」
「だ、だめ……触らないでっ……やあっ、い、いじっちゃだめっ……」

坂本がいきなりチューブを引き抜いた。

「ひぃっ!」

栓のようになっていたノズルが取り去られ、あやうく粗相してしまうところだった。
それでも、引き抜かれた刺激でアヌスが震えだし、響子の柔肌にぞわっと鳥肌が立つ。

「だっ、だめっ! で、出てしまいますっ……いやああっ、見ないでぇっ!」

絶望の絶叫を喉から噴き出させ、響子は肛門の崩壊を実感した。


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