響子は裕作と寝ていた。
本当に、本当にひさしぶりの夫婦生活であった。
坂本に言われたからというわけではないが、このままではいけないと思ったのである。
まだ若いのに、互いに愛し合っているのに、身体的な不都合があるわけでもないのに、この二ヶ月以上セックスレス
なのはどう考えてもおかしかった。
夫の仕事が忙しいというわけでもない。
今まではこの状態で週に何度も愛し合っていたのだ。
それがパッタリなのである。
裕作に元気がないというのが気になって響子が遠慮していた、というのはある。
さらに、ホテルで坂本に犯された時に裕作の浮気を知らされ、証拠写真まで見せられたのも大きかった。
夫を信じたい、でもあの写真はどう受け取ればいいのだろう。
裕作に聞いてみたいと何度思ったか知れなかった。
だが、そこで夫に決定的なことを告げられたらどうしよう。
そして仮に裕作がそれを認めたとしても、果たして響子に夫を非難できるのだろうか。
響子の方こそ、騙され、レイプされたのだとしても、坂本にもう何度も犯されているのである。
最初はともかく、最近は呼び出されても素直に従い、その身体を任せているのだ。
脅されていたというのはあるが、それなら早くに裕作に打ち明けていればよかっただけの話なのだ。
今となってはもう遅かった。
そこに知らされた裕作の不倫。
あれだけ子作りにこだわっていた響子にしても、夫と同衾することへの躊躇が出ても仕方がなかった。
もしや本当に裕作は浮気しているのかも知れない。
坂本に犯されて以来、抱かれていないのは事実だ。
だとすれば裕作の方とて、男の生理を我慢できるものではないのだろう。
だとしたら、他の女に、と考えても無理はない。
裕作の性格からすれば、風俗で遊ぶよりはそっちの方が敷居が低いのかも知れない。
前は、当然のように響子から求めるよりは裕作からしてくることの方が多かった。
互いにセックスに嵌るほどではないにしろ、互いの身体に触れ合う機会が3日もないことは珍しかったのだ。
夫に確かめたかった。そ
んなこんなで響子はようやく決意し、夫を誘った。
「んっ……んちゅ……んん……」
響子は、上に乗った夫の首に手を回し、その唇を吸った。
響子の柔らかい唇は裕作の口を吸い、唇を吸うと、すっと位置をずらして頬にキスし、舌で舐めた。
そしてまた唇に吸い付き、その舌を裕作の口の中に入れる。
「んんっ、んじゅっ……ちゅぶ……んじゅ、じゅっ……ちゅううっ……」
キスされている夫の方は大いに戸惑っている。
確かに妻の方が年上であり、未亡人でもあった。
性体験は妻の方が豊富ではあるだろう。
それにしたって響子は慎ましやかな性格であり、亡夫とも半年しか結婚生活がなかったのから「豊富」とまでは
言えないと思う。
事実、裕作と結婚した後も、裕作から求める方が多かったのだ。
妻から「抱いて」と言ってくることもないではなかったが、ここまで激しく求めてきたことは未だかつてなかった。
「ん、んふっ……んちゅっ……んむむ……」
響子は自分の方から舌を差し入れ、夫の舌に絡みつけてきた。
歯茎にまで舌を這わせ、こそぐように舌で愛撫してくる。
積極的というよりも、むしろ夢中になって舌を絡ませてきた。
そんなことは今までされたことはなかったし、裕作からそんなことをしたわけでもない。
響子が雑誌の「その手」の記事を読んだということも考えられなくはないが、それにしては慣れているように思えた。
裕作の心にいぶきの声が響く。
響子が、妻が他の男に抱かれている。
ウソだと思ったが、写真まで突きつけられたのだ。
そこには紛れもない妻の痴態が撮影されていた。
まさか響子は、その男に仕込まれてこんな濃厚なキスを覚えたのだろうか。
そんな疑惑が裕作の中に持ち上がっていく。
響子の方は、そんな夫の心の動きを察してはいないようで、裕作の背を抱きしめてはキスを繰り返していた。
それどころか、驚いたことにキスしながら裕作のペニスを手で愛撫してきたのだ。
救いだったのは、ただ肉欲を求めてという感じではなく、愛おしそうに優しくさすっていたことだ。
「んん……んんん……ん、んちゅっ……」
響子は濃厚なディープキスをしながら、片手で肉棒を、片手で裕作の乳首を転がしている。
それどころか、夫の胸や腹に乳房を巧みに押しつけてきていた。
乳首はもうはっきりと勃起し、それが裕作の皮膚を心地よく刺激していた。
響子がやっと唇を離した。
妻にばかり主導権を取られ、何となく悔しかった夫がのしかかる。
背中を抱きしめている妻の手を振りほどくようにして、その乳房に吸い付いた。
「ああっ!」
乳首を吸われると、響子は枕に後頭部を押しつけて仰け反った。
坂本のような技巧はないが、それでも乳首をちゅうちゅうと吸ってくる夫の愛撫に響子は喘ぐ。
左の乳房を揉まれ、右乳房の乳首を唇で愛撫されている。
その快感に喘ぎ、響子の右腕がぐっと上に上がり、何かを掴もうとするかのように開き、握られた。
響子の白い腕が思い切り伸ばされていたため、腋窩がはっきりと剥き出しになった。
強く惹かれた裕作は、そこも舐めてみた。
「くうっ……!」
思いの外大きく妻は反応した。
過去にも響子を抱いた際に、戯れを装ってそこを責めてみたことはあった。
が、響子はくすぐったがり、かなり恥ずかしがってやんわりと拒絶されたため、それ以上はしなかったのだ。
あの時は指でくすぐり、軽く舌先で突っついただけだったが、今度はぺろりと舐め上げてみた。
「あーーっ……くっ……あ、あなた、そこっ……いっ……」
責める裕作が驚くほどの鋭敏な反応だった。
こそばゆがっていただけのあの時とは明らかに反応が違う。
響子のそこは、坂本もことさら好んだこともあってすっかり開発され、その快感を発掘されていたのだった。
「くっ……いいっ……ああっ!」
舐められているのは腋なのに、子宮まで痺れるような鋭い快感があった。
クリトリスや乳首までがキュンと痺れ、尖っていく。
「か、感じる……感じます、あなた……ああ、いいっ……」
責めながらも、裕作は妻の身体の変化を見取っていた。
あれだけ恥ずかしそうだったのに、今ではむしろ積極的にそこを裕作の舌に差し出している感すらあった。
裕作の胸に疑惑が膨らんでいく。
今までの妻の肉体とは違うような気がする。
愛撫が止むと、妻は潤んだ瞳で夫を見つめ。そっと身体を動かした。
「はあ……、あ……あなたの……大きくなってる……ほら……」
「響子……」
響子は夫の顔から目を離さず、そのまま顔を彼の股間に下ろしていった。
邪魔だと思ったのか、掛け布団は剥いでしまった。
脚を拡げた裕作の股間に響子は正座し、そのまま上半身を屈ませて夫のペニスに手を伸ばした。
「お、おい響子……」
「しても……いい?」
その返事を聞く前に、響子は裕作のものを口にした。
「ふあっ……!」
妻の唇と舌の心地よさに、裕作は思わず呻いた。
妻は欲情しているとしか思えなかった。
響子と欲情という言葉ほどアンマッチなものはないと思うのだが、今の響子を見ているとそう見えて仕方がない。
「ああ……、もうこんなに硬くなって……」
響子はうっとりと夫のものを掴み、それを軽くしごき上げた。
剥き出しになった亀頭の先から、ぶわっとカウパーがあふれ出る。
響子は口を開けると、その透明な粘液が零れたままのペニスを躊躇なくその咥内に含んでいった。
「くうっ!」
「んんむ、ちゅぶっ……んんん……んじゅるっ、じゅぶっ」
裕作は、妻が頭を振りながら盛んに自分のペニスをしゃぶっている姿を信じられない思いで見つめていた。
その視線を感じていないのか、響子は懸命になって裕作の肉棒に舌を這わせている。
夢中になってしゃぶるだけでなく、口から抜き差しして出す時には右手でサオをしごいてくる。
それだけでなく、左手は玉袋を優しく包んでさすってくるようなマネまでした。
そんなことをされたのは初めてである。
「誰に教わったのか」と思わず問い質しそうになったが、響子がずずっと亀頭を吸い上げてきたので、その鋭い快感
に呻いてしまう。
一度ペニスを口から出して、響子が言う。
「き、気持ち良い?」
「あ、ああ……だけど、ううっ!」
裕作が全部言う前に、響子はまた肉棒を口に吸い込んだ。
ここまで熱烈な愛撫を妻から受けたことはなかったから、早くも裕作は込み上げてきている。
もうカウパーは我慢しようもないほどに零れ出ているのに、妻はそれを嫌悪せず、すべて飲み込んでしまっている
ようだった。
「ん、ん、んふっ……んくっ……じゅぶぶっ……んくっ……ん、んちゅっ、ちゅぶぶっ」
もうビクビクと痙攣している亀頭を舌でねっとりと包み込み、ねぶり上げ、裏筋にも舌を這わせる。
唇はきゅっと強く締め付けて、肉棒の根元を盛んに刺激していた。
驚いたことに妻は、裕作のものを喉まで飲み込んでいるようだ。
響子の唇の感触を股間で感じている。
陰毛が妻の頬や鼻に擦りつけられているのがわかる。
時々、苦しそうに「んんっ」と呻くのだが、響子は決して吐き出そうとはしなかった。
「くっ……響子っ……」
「ん、んふっ……んんっ……」
裕作はもうとても我慢しきれず、妻の頭を掴むとぐいぐいと自分の腰に押しつけていく。
そんなことをすれば、喉にペニスが当たると思うのだが、響子は気にした様子もなく受け入れている。
カリの部分に妻の舌が触れると、その心地よさに裕作の手がぎゅっと妻の髪を掴む。
「んぶっ、ちゅっ……んんむ……むむっ……」
縦横無尽に動く舌が、亀頭やカリ、裏筋やサオ全体に唾液をまぶし、愛撫していった。
唇が窄まり、頬がへこみ、じゅるじゅると唾液とカウパーを吸い、飲み込んでいく。
裕作のペニスがもう限界だと言わんばかりに膨れあがった。
ビクビクと痙攣し、今にも射精してしまいそうだ。
裕作はそれでもいいと思った。
出してしまったら本格的なセックスは出来ないが、これだけでも充分に満足できる。
しかし、あわやという時に妻はペニスを口から出した。
「あっ……」
夫は驚いたように、そして「もっとしてくれ」とでも言うように、慌てて響子の頭を押さえつけた。
妻はそれを優しく振りほどき、夫に微笑みかけた。
「……いきそうだった?」
「あ、ああ……だから……」
「だめ。その……だ、出すなら、あの……」
響子はそう言って顔を伏せた。頬が赤い。
最後はセックスで、と言っていることくらいは、鈍い裕作にもわかった。
実は今日、裕作は昼間いぶきと会っている。
つまり、彼女とセックスしているのだ。
二度ほども射精させられたから、しばらくは性的に大丈夫だと思っていた。
少なくとも今夜に妻を抱くことはないと思っていたのだ。
なかなか抱けないもどかしさや性欲で、妻を押し倒してしまおうかと思う夜もあったが、今日はそんなことは
なかったのだ。
その時に押し倒せなかったのは、自分といぶきの爛れた関係に対する妻への申し訳なさと、妻が不倫しているかも
知れないという疑惑の双方が邪魔していたからである。
響子が裕作に甘えるようにしなだれかかる。
目に妖しい炎を灯しながら、裕作のものを優しく手に取った。
そのまま響子は裕作の上に乗る。
夫との行為では騎乗位自体が少なかった上、響子からそうなることはかつてなかったことだ。
裕作はややたじろいで、妻が腰に跨るのを見ていた。
妻の媚肉は、もう蜜で光っている。
裕作の男根を手にしたまま、少しずつ腰を下ろしていった。
「あっ! く……ああ、あなたのが……は、入ります……あっ……」
「……っ」
硬くなった夫のものが膣口を押し開いて奥に入っていく。
裕作の方も、ひさびさに味わう妻の媚肉に呻いていた。
相変わらず狭くて、それでいてよく馴染む極上の膣だった。
響子は腰を小さく震わせつつ、そっと腰を沈めていく。
「あはっ……!」
裕作の腰の上に大きな臀部を下ろし、両手は夫の腹の上で突いていた。
「んむ……は、入った……入りました……あなたのが全部……ああ……」
「きょ、響子……」
響子はそのまま腰をさらに押しつけ、裕作の腰の上に擦りつけてくる。
全部入ったというのに、まだ奥まで来ていないからのようだ。
しばらくそのまま腰を押しつけていたが、やがて諦めたように腰を動かし始めた。
「ああ……あなた……あっ……」
響子の腰が上下に弾んでいる。
後ろでひとまとめにした髪が、少し乱れていた。
「んんっ」と声を噛み殺し、自分の乳房を揉んでいた。
裕作の肉棒をくわえ込んだ膣もひくひくと蠢き、抜き差しされるたびに愛液をにじみ出させている。
ペニスが外に出てくると、全体に響子の蜜がまぶされていた。
見たことのない妻の媚態に、裕作の興奮も高まってくる。
夫も妻も、互いに互いの浮気疑惑について問い質したいと思っていたのだが、もうそんなことはどうでもよくなって
しまっている。
裕作は自分の上で上下運動させていた妻の腰を掴むと、下から腰を突き上げていく。
「あっ、あ、あっ……あ、あなたっ……ああっ、いいっ……」
突然の夫の動きに驚きつつも、響子はすぐに受け入れ、その動きに腰を合わせていく。
喘ぐ声もはっきりと上げ始め、蜜も一層に分泌される。
夫が腰を掴み、主導権を握ったことで、響子は「好き勝手に身体を弄ばされている」感じを持つことができ、さらに
高ぶっていく。
何度となく坂本に凌辱され、強引に犯される快感、男の思うままに嬲られる被虐感を植え付けられた響子は、愛し愛される
ことよりも刺激的な快楽を覚えて込んでいたのである。
裕作が腰を思い切り引き寄せ、腰が密着するほどに貫かれると、今度は響子の方から腰を上げ、引き抜きにかかる。
これを繰り返して、より強い摩擦感と長いストロークを味わうことが出来た。
「あっ、あ、あなた、いいっ……くっ……いいです……お、おっぱいも……ああっ!」
響子はそう叫ぶと、夫の手を取り、自分の乳房を掴ませた。
裕作はそれに応えるように妻の柔らかく大きな胸肉を揉みしだいた。
下から両手で支えるように持ち上げ、その美しい形状やたっぷりとした量感を確認するように愛撫する。
「あなた、ああ……も、もっと強く……強く揉んで……ああ、いい……」
妻に促され、裕作は乳房に指が食い込むように鷲掴みにした。
爪を立てないように注意しながら、ぐいぐいと力を入れて揉み込んでいく。
「いいっ、ああ、いいです、あなたっ……気持ち良いっ……も、もっと……あああっ」
裕作が激しく揉み始めると、妻は顎を突き出してよがり出した。
信じられぬ思いで裕作は妻を見上げていた。
彼自身そんなに激しい愛撫は好みではなかったし、妻の方も優しく可愛がられるように揉まれるのが好きだったはずだ。
いつからこんな嗜好になったのだろう。
今日、響子を抱いてから微かに感じていた違和感が徐々に大きくなっていく。
大事にしてきた愛妻の裸身に、いったい何が起こったのだろう。
そんな夫も思いも知らず、妻は裕作に跨ったまま喘ぎ続けていた。
「あ、いい……あはっ……も、もっと……くっ、つ、突いてっ……」
「突いて」と言いながら、自分から腰を振り、裕作の上で何度も弾んだ。
響子は間違いなく裕作を愛している。
それでいて、坂本とのセックスを通じて、自分の性癖に気づいてしまい、夫とのそれに物足りなさを感じていた。
つまり裕作が、坂本のように強引で激しいセックスをしてくれれば響子にとっては申し分なく、いつでも坂本と別れられたのだろう。
もしそうなら、響子の方からもっと早く裕作に打ち明けていたのかも知れなかった。
不審を抱きつつも、妻の喘ぐ美しい表情に裕作もどんどんと高ぶっていく。
「響子っ……響子、俺……俺、もうっ」
「あ、あなた、いいっ……ま、待って……くうっ……」
響子が冷静なら、いきそうになった夫を確認し、もっと愉しみたいのであればペースを落としただろう。
しかし今の響子には望むべくもない。
すっかり性的に貪欲となってしまったことに加え、裕作とのセックスもひさしぶりだったのだ。
もう歯止めが利かなく
なってしまっている。
裕作は響子の乳房を掴んでいたが、それはむしろ妻の動きを止めようとしていたのだが、響子はそうは受け取らず、
ぎゅっと胸肉を握ってくる夫の手に鋭い快感しか感じなかった。
「んくっ……いっ、いいっ……あなた、気持ち良いわ……ああ……」
腰を振り、弾ませ、顔を振りたくって黒髪を舞わせている。
初めて見る性に狂う響子の美貌と、盛んに収縮してくる媚肉の甘美さに、そろそろ我慢できなくなってきた。
妻の腿を掴むと、思い切り突き上げてきた。
響子は顔を仰け反らせてよがった。
「ああ、いいっ……あ、もっと……もっとして、あなたあっ……」
「くっ……もう……」
「あ、ま、待って! くうっ……も、もう少し……もうちょっと……ああっ……」
裕作がいきそうなことにようやく気づいた響子だったが、腰の動きは止まらなかった。
夫の手が胸から離れたので、自分で揉みしだいている。
豊満な尻たぶをひっきりなしに夫の腰に落とし、叩きつけていた。
「きょ、きょおこぉっ……!」
「やっ、待って……! わ、私、まだ……」
「だめだっ!」
裕作はぐぐっと腰を突き上げ、跨った妻を持ち上げた。
響子の膣がきゅううっと締まり、その刺激に耐えかねた裕作は吠えるように唸ってから精を放った。
「ああ!」
びゅるるっと夫の熱い精液が膣内に放出されるのを感じ、響子は軽く身震いした。
ぐぐっと腰を夫に押しつける。
裕作の射精を中に受けるのはいつ以来だろう。
そんなことを考えていると、裕作は腰をドッとシーツに落とした。
いつもの響子なら、ここで裕作に身体を重ね、その余韻を愉しむようにキスでもしていたことだろう。
「……」
激しく絶頂に達したらしい夫を、響子は跨ったまま見下ろしていた。
ひさしぶりに裕作に抱かれ、確かにひとときの快楽を味わうことは出来た。
しかし、「いった」というほどではなかった。
ただ、少し醒めた。
(あなた……、私は……)
響子は無言のまま裕作から降り、そっとその側に横たわった。
どうしてかわからなかったが、背中を向けていた。
───────────────
「響子……、あのさ……」
「あ……、ごめんなさい、あなた。今日は、その……」
「そう……、わかった」
二ヶ月ぶりのセックス以降、何度か裕作から求められることがあった。
しかし響子はその思いに応えることが出来なかった。
確かに、前回夫に抱かれた時に、燻るような不満があったのは確かだった。
しかし、それが理由ではない。
響子は、例え裕作とのセックスが多少物足りなくとも、以前のように何度も身体を重ねていれば何とかなると考えていた。
そしてその間、坂本の誘いを断り、彼に抱かれなければいいのだ。
そうすればまた夫との愛の行為で充分に満足できるに違いない。
裕作との間を坂本に割って入られ、この二ヶ月のうちにその激しいセックスの虜にされてしまったが、きっと何かの
間違いなのだ。
また夫の愛を受ければいい。
そう思うのだが、7年に渡って愛情を育み、半年の間愛し合った関係なのに、坂本に僅か二ヶ月間凌辱され続けることで、
あっさりと肉体が陥落してしまっている。
その不安は消えなかった。
だからこそ、裕作にそれを打ち消して欲しかったのだ。
なのに今の響子には、夫の思いに応える術がなかった。
寂しそうに微笑みながら引き下がる夫を、胸の引き裂かれる思いで見ながら、響子は自分の腰に触れた。
服の上からでもはっきりとその感触がわかる。
裕作に抱かれた翌日のことだった。
唐突に坂本がアパートに押しかけてきた。
ここへは来ないでと言ったのにと抗議する響子を無視して、その服を脱がせてしまった。
剥ぎ取られながらも、響子はきっぱりと言った。
「もう抱かれる気はありません」。
その希望に沿ったわけではないが、確かに坂本はその場では響子を犯したりはしなかった。
その代わり、悪辣な仕打ちをこの人妻に施したのだ。
スカートを脱がし、下着を剥ぎ取った坂本は、響子に貞操帯を装着してしまったのである。
あまりのことに響子は唖然とし、外してくれるよう最後には泣いて頼んだ。
何をされてもいいから、こんなのはイヤだと言ったのだが、坂本はにやっとしただけで何もせず、外してもくれなかった。
そしてこう言ったのだった。
「いいか、奥さん。これから一週間はセックス禁止だ」
「な……! そ、それってどういう……」
「言葉通りだよ。五代にも抱いてもらえないし、他の男を見つけて犯してもらうことも出来ないな」
「わ、私はそんなことしませんっ!」
「それはよくわかってるけどな。ま、これも調教の一環だ」
「ちょ、調教って……そんな、人を動物みたいに……。それに……」
「なんだい?」
「こ、これじゃあ、その、さ、坂本さんだって……」
「ああ、俺もあんたを犯せないな。不満かい?」
「……」
黙りこくって俯く響子の顎を掴むと、坂本はその顔を上げさせた。
唇を震わせ、眦を決して響子が睨みつけてくる。
坂本は戯けるようにいった。
「おお、怖ぇ怖え。ひさしぶりに見るぜ、気の強い奥さんらしい顔をな」
「ふ、ふざけないでくださいっ。取って、早くこんなの取ってくださいっ」
「だめ」
坂本はそう言って、右手で持ったキーを弄んだ。
「あっ」
慌てて響子がそれに縋り付く。
貞操帯は施錠されていて、坂本のキーがなければ取り外せないのである。
右腕にしがみつく響子を抱き留め、坂本はその唇を奪った。
「んんんっ……!」
突然にキスされ、驚いたように目を見開いた響子は、顔を振りたくってそこから逃げた。
坂本は執着せず、響子を抱いた腕を離した。
「な、何をするの!」
激怒した響子に、坂本は飄々として言った。
「着けてろよ、一週間なんだから」
「いやです! 第一、こんなの着けてたら……」
「五代に抱いてもらえないってんだろ? いいんだよ、それを防ぐんだから。貞操帯ってのはそういうもんだ」
「そ、それだけじゃありません! これじゃお風呂にも入れないし……、そう、そうよ、それにおトイレなんか
どうするんですかっ!」
「トイレは行けるよ。マンコは塞がってるけども、おしっこの出る穴んとこはちゃんと開口されてるだろ?」
「そんな……」
「ウンチも平気だろ? だって覆ってるのは前だけで、後ろは殆ど紐みたいなもんなんからさ。少しずらしてもらえば
出来るよ」
「ひどい……」
「ああ、女はおしっこの時も紙で拭くんだったな。ま、ウンチの時もそうだが、トイレットペーパーで拭くのは
難しいと思うよ」
「ど、どうすればいいんですか!」
「洗うしかないだろうな。トイレ言ったらすぐにシャワーか何かで股を洗うんだよ」
「そんな……」
「まあ、外では難しいと思うけどな。だからこれから一週間は出来るだけ外出しないことだ」
坂本はそう言い捨てると、泣き崩れる響子を振り返りもせずに出て行ってしまったのだった。
あれからもう6日になる。
取ってくれると言ったのは明日だ。
その間、響子は銭湯にすら行けなかった。
裕作がいる時は、一緒にアパートを出て銭湯に行くのだが、響子は女湯に入る振りだけして、夫が戻るのを待つ
だけだった。
身体や髪を洗うのは、夫のいない昼間に行水するしかなかった。
確かに坂本の言う通り、排尿、排便はそう不自由なく出来た。
一度試してみたが、やはり拭くことは出来ず、結局、洗うしかなさそうだった。
非道だったのは、ただの貞操帯ではなかったことだ。
レザー製で、注意してみなければ服の上からはバレることはなかったが、その股間には突起があったのだ。
もちろん膣に入る仕掛けになっている。
といってもディルドのようなサイズではなく、太さは3センチほどもあったが、長さにして5センチしかなかった。
まるで生殺しだった。
響子は何度か外そうと試みたのだが、とても出来そうになかった。
腰紐や股下、そして肛門を覆っているのは革製なのだが、要所要所が金属なのだ。
ステンレスらしい。
これが全革ならば、刃物を使えば何とかなったかも知れないが、これではどうしようもない。
ニッパーを使ったこともあったが、響子の力では金属部を切断することが出来なかった。
結局、響子は坂本が外してくれるまで、それを装着し続けるしかなかったのである。
この恥ずかしい処置をされた身体を夫から隠して生活せねばならない。
響子は、坂本に完全に管理されてしまっている身体に絶望感を抱いていた。
そして響子を悩ませるのは、そうした背徳感や屈辱感だけではなかった。
膣に入り込んでいる突起は、響子は足腰を動かせば当然その中で動き回り、彼女の媚肉とその中を刺激して止まないのだ。
深いところがより感じる彼女ではあったが、入り口やその付近も立派な性感帯である。
立ったり座ったり、歩いたりするだけで、その淫らな突起が膣内で暴れ、響子の敏感な粘膜を擦り回っていた。
少し歩くだけで、つい悩ましい声を出してしまうことすらあった。
それでいて、決して奥までは入らず、突き込んでくれることもない。
響子は焦燥で気が狂いそうになった。
坂本に犯されず、裕作とのセックスが禁じられるだけであれば何とか堪えられたかも知れない。
自慰でもすればよかったからだ。
だが、こんなものを着けられていてはオナニーもできない。
それでいて、普段は突起によって焦らされるような快感を与え続けられるのだからたまらなかった。
だが、そのうち響子もこの状態に慣れ、愉しむ方法を会得していた。
貞操帯の上から手で押せば、少しだが中に入る。
僅かだが動いて別の箇所が擦られるのだ。
手だけではなく、畳に座布団を敷いて、その上にうつぶせになって腰を押しつけ、蠢くような自慰もした。
いちばんよかったのは、テーブルの角に押しつけることだった。
簡単に力が入り、プラ製の突起が響子の中を浅く抉るのだ。
このせいもあったが、響子は頻繁に下着を替えるようになっている。
ただ歩くだけでも軽く感じさせられ、濡れてしまうのだから無理もなかった。
日によっては、3度も4度も履き替えることすらあった。
響子は、この時ほど濡れやすい自分の体質を恨んだことはない。
況して夫が居る時などはいたたまれなかった。
抱かれたくて仕方がないのに、夫の誘いを受けることが出来ないのだ。
拷問に近かった。
夫も、響子に避けられていることがわかるのか、だんだんと求めなくなっていった。
それどころか、一緒に寝る時も背中を向けていることすらあった。
普段は変わりないものの、床を共にする時には、明らかに以前の夫とは違っていた。
響子は、その悲しみと燻るような官能に悩まされた。
貞操帯の僅かな隙間から指を入れようと試みたこともあったが、いくら響子の細い指でもとても入るようなものではなかった。
仕方なく、夫の不在を見計らって胸を愛撫してみたりもするのだが、かえって身体が熱く火照り、膣の奥がじりじりと灼けるような焦燥感が募るだけだった。
───────────────
あの男からの呼び出しの電話を受けると、響子は矢も楯もたまらずにいつものホテルに駆けつけた。
指定された部屋はいつもと違うのだが、そんなことは気にもせずに部屋へ訪れた。
いつも使っていた部屋よりも狭かった。
そこには、小型のテレビと冷蔵庫の他に調度らしい調度はなく、あとは円形の大きなベッドが置いてあるだけだ。
そして、どういうわけか入り口がふたつある。
響子が入ってきた廊下側のドアの他に、部屋の奥にも扉があった。
そこの壁には、ほとんど一面に渡ってカーテンが引いてある。
だが、今の響子にはどうでもよいことであった。
彼女は椅子に腰掛けている坂本の前で、いきなりスカートを脱ぎ始めたのである。
坂本の嘲笑が聞こえた。
「おいおい、奥さん。いきなりそれかよ」
「……」
「そんなに俺が恋しかったか? そんなに犯して欲しいのか」
「違います! こ、これよ」
スカートを下ろすと、ショーツの下でやけにゴツゴツとしたものが浮いている。
それを見て坂本が笑った。
「なんだよ奥さん、そんなもん履いてんのか。貞操帯の上にパンツ履いてる女なんて初めてみたよ」
「そ、そんなことどうでもいいから、早く取って!」
「わかった、わかった」
坂本はキーをチャラチャラさせながら、響子の前で前屈みになる。
貞操帯を着けているとはいえ、股間を間近に見られる羞恥で人妻の美貌が赤く染まる。
いや、貞操帯を着けている姿を見られているからこそ、激しい羞恥を感じているのかも知れなかった。
坂本は、わざと鼻を鳴らして響子の匂いを嗅いだ。
「ん〜〜、いい匂いだ。奥さんのいやらしい匂いがプンプンするぜ。よーく練れてる熟れた女の匂いだ」
「やっ!」
「なんかもう、マンコも濡れ濡れみたいだな。ちっちゃいのを入れられていくにいけず、もじもじしてたんだろうが」
「……」
「おい、そこを手で隠されたら鍵を開けられないぞ」
「ホント……最低ね……」
「ふふん」
響子の白い手が離れると、坂本はキーを回して錠を外した。
カチャリと軽い金属音がして、ようやく響子を悩ませ続けた貞操帯が外される。
膣口に挿入されていた短い樹脂の突起が抜き取られると、それは響子の蜜でどろどろになっていた。
抜かれた膣口からも、とろりと愛液が滴っている。
「なんだよ、これは」
坂本が突起から掬い取った蜜を指につけ、響子に見せつけている。
「好き者になったもんだな、響子。以前の貞淑した人妻とは比べものにならねえや」
「だ、誰のせいで……、こ、こんな……」
「俺のせいだってか?」
「あ、当たり前でしょう!」
「そうか、そうか。そりゃあ光栄だ。俺が奥さんをここまで育て上げたってことなんだな」
「……」
憤りながらも、響子は暗い気持ちで坂本の言葉を聞いていた。
その通りなのだ。
もう響子の身体は夫のものではなかった。
裕作のものだった瑞々しい肢体は、目の前の野卑な男によって調教され、その肉体を作り替えられてしまった。
夫もそれとなく感じていただろう。
抱かれ方が違っている。
感じ方も激しくなっている。
響子を抱いた時、違和感を感じていたに違いなかった。
そして響子の方も、明らかに夫のセックスでは物足りなくなってしまっていた。
「奥さん」
「……」
「奥さん。響子」
「あ、はい」
ぼんやりと夫のことを考えていた響子に、坂本が命じた。
「脱げよ、全部」
「……」
「早く」
「い、いや」
「今さら何を言ってんだ。そのつもりで来たんだろうが」
「……」
「早くしろ。やってやらねえぞ」
「……」
響子はのろのろとブラウスのボタンを外し、叱咤される前にスリップとブラも取り去った。
不貞を働くという夫への背徳とか、こんなことはいけないという理性とか、坂本の前でまた痴態を晒すという屈辱も、
もうすっかり薄れている。
頭にないわけではないが、それよりも今はまず、この身体の火照りと肉の疼きをどうにかしたいと思っていた。
「何をぼさっとしてんだよ。ほれ」
「何を……」
「決まってるだろ、まず口からだよ。わかってるくせに清純ぶるなよ」
「……」
今までの響子なら、ムダと知りつつも一言二言抵抗していたはずだが、もうそんな気力もないらしく、項垂れてはいるが、
素直に坂本のペニスを掴んでいた。
坂本の言葉で、もう散々この男に身体を弄ばされたということが心に突き刺さっている。
見る見るうちに、響子の頬が赤くなり、白い肢体まで朱に染まってきた。
「ぐっ……!」
坂本がぐぐっと腰を押しつけると、醜い肉棒が響子の朱唇を押しつぶした。
人妻は小さく唇を開くと、その大きく膨れていた亀頭をつるりと口に含んだ。
響子の咥内の温かさと柔らかさを感じ取り、あっという間に男根が硬く膨れていく。
たちまち響子の口を圧倒し、唇の端が切れそうなほどに太くなった。
「んっ、んぐ!」
坂本が響子の頭を自分の腰に押しつけるように押さえ込むと、そのペニスは響子の舌の上を滑りながら喉奥にまで到達する。
初めて喉の奥まで犯された時は、むせ返るような男の生臭さと刺激で嘔吐きが止まらなかったものだが、今ではもう
馴らされてしまっている。
気道を塞がれてしまうとさすがに息苦しくて咽せてしまうが、それをうまく避ける方法も身につけていった。
喉の奥まで貫かれると、本当にこの男のものにされてしまった感が強くなり、響子を一層に倒錯した官能に導いていく。
そこまでこの清楚な人妻を堕とした冷酷な男が命令する。
「何やってんだ。ほら、手で握って摩れよ。顔を振るんだよ。舌を使え。何度も言わせんなよ、ちゃんと教えただろ?」
「んっ……んむ……んんう……んう……」
クッと眉間に皺を走らせてから、響子はゆっくりと顔を動かし始めた。
やや唇を窄めながら、静脈の浮いた太い男根を吸い、しごいていく。
「舌はどうしたんだよ。舐めろ、ほら」
「ぐっ……!」
なおも深く怒張を押し込まれ、咽せながらもペニスを愛撫していく。
奉仕する響子の、何と艶っぽいことか。
恥辱に歪む美貌、そして男の指示に逆らえず肉棒を頬張る姿。
頭を振ると、豊かな乳房も小さく揺れている。
頭からうなじ、首筋が綺麗に伸びて見える。
背中の窪みも、ことさら扇情的だ。そしてくびれたウェストからぐっと張り出した腰、大きな臀部まで、どこも
かしこも色気たっぷりだ。
小鼻から漏れる苦しそうな息遣いまでが男を興奮させる材料になっている。
「ん、んふ……ちゅっ……んちゅ、ちゅぶっ……ん、んっ……んくっ……ちゅるっ……んじゅっ……」
イヤイヤやらされている感じだったのに、次第に響子の動きに熱が籠もってくる。
フェラ自体は、まだまだ稚拙でぎこちなかったが、少しずつ確実にその口技は上達していた。
「ん、ん、んん……んむう……ん、んくっ……ちゅっ……」
坂本のものが反り返り、響子の上顎に亀頭が当たっている。
それを宥めるかのように、響子の舌がペニスを這い、唾液を塗りつけていた。
小さいがよく動く舌が、盛んにカリや裏筋を這い回り、刺激していく。
「く……」
口では蔑むようなことばかり言っているが、坂本もかなり感じているらしい。
その手は響子の頭を掴み、髪を握っている。
力が入り、指を立てていた。
腰が時々小さく震え、爪先がねじれるように屈まることもあった。
「んむっ……んんうっ……ん、んく……んくっ……ちゅっ……じゅじゅっ……んくちゅっ……」
響子の鼻息が坂本の陰毛にかかり、震わせていた。
頬を紅潮させ、しっかりとつぶった瞼が震え、睫毛が揺れている。
ふっと緩んだように目が開くと、その瞳はすっかり情欲で濡れていた。
女がフェラチオして肉体的に感じるわけはないが、その行為をしていることに興奮してしまい、精神的に官能を感じることはある。
今の響子がそうだった。
人妻なのに、愛する夫ではなく他人の性器を口にしている。
しかもその相手は、自分を完膚無きまでに凌辱し尽くした憎い男だ。
自分を辱めたペニスを愛撫しているという事実に、響子は被虐的な快美感を得ていた。
「ん、んう……んんっ……じゅっ……じゅぶぶっ……じゅるっ……」
唾液がだいぶ分泌されてきたようで、響子の唇の端からはゆっくりと透明な唾液が垂れてきていた。
じゅるっとした水音も盛んに聞こえる。
愛撫も佳境に入り、響子は坂本の下腹部が顔に触れるまで男性器を飲み込み、そして唇にカリが引っかかるところ
まで抜いていく。
出来るだけ長く摩擦し、男に快楽を与えようとしていた。
時折、じゅるっと強く亀頭を吸い上げることも忘れない。
「ん、ん……んちゅっ……んむう……むむ……んじゅるっ……」
坂本が何も言わなくなった。
響子がもう指示されなくとも充分な愛撫をしているということもあったが、それ以上に、響子自身にフェラ音を聞かせるという意味もあった。
静かな部屋の中で、聞こえるのは自分が男根をくわえ込んでいる淫らな音だけだ。
自分を犯し抜き、しかも肛門でまで性交したペニスを口にしゃぶっているという屈辱感に背中が震えた。
そう思うと、カッと羞恥と恥辱が蘇り、響子の裸身を美しく染めていく。
それでいて、込み上げる官能を抑えることが出来ないようで、響子はもじもじと腿を擦り合わせてすらいた。
その脚を開かせれば、きっと股間は濡れているのだろう。
坂本がゆっくりと手を伸ばし、響子の乳房をぎゅっと掴んだ。
「んくっ!? ぷあっ、だ、だめっ……今はまだ……」
「今は? 後でなら揉んでもいいのか?」
「……」
響子は声まで濡れていた。
弱々しく抗う声が震えている。
男に哀願するような表情で、じっと坂本を見つめていた。
「ああっ!」
坂本は両手でふたつの乳房を揉み込んだ。
乳輪の境界を指で摘むと、もうすっかり勃起した乳首がクリッと動く。
尖った乳首を転がされると、響子はたまらず喘いだ。
「ああ、いやっ……あ、ああ……くうっ……」
弱点のひとつである乳首を責められると、響子はもう快感を誤魔化そうともせずに仰け反り、大きく喘いだ。
「もっとして欲しいか」
「……」
「くく、まだ完全に堕ちきってもいないんだな。いいぜ、そういうの。ぎりぎりのところで踏みとどまって、最後に
堕ちるってのがいいんだ」
「か、勝手なことばかり……」
「うるせえ。いいから続きをしろよ」
「……」
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