百瀬が響子を解放したのは4時間後だった。
普通、ここまで徹底して嬲ったら、少しは女も休ませないとつぶれてしまう。しかし百瀬は、
今度ばかりはそうする気はなかった。
何度も言うように、これは罰である。
落とし前なのだ。
響子が泣こうが喚こうが、それを思い知らせる必要があった。
ヤクザの恐ろしさを、その身に染み込ませてやるのだ。
百瀬が部屋を出ると、30分もしないうちに五十嵐が入ってきた。
響子はそれにも気づかず、ただグッタリと縄目に身体を預けていた。
五十嵐は、汗まみれの女体を縄から解き、そのままベッドに移し変えた。
それでも響子は軽く呻いただけで起きられなかった。
五十嵐に頬を軽く叩かれて、ようやく目が覚めた。
「ああ……」
「こってり虐められたようだな、奥さん。兄貴の責めはきつかったか?」
きついなんてものじゃなかった。
浣腸されてはお尻を犯されるということ何度繰り返されたのか。
しまいには、浣腸されるだけされて排泄を許されないまま肛門性交されたのだ。
最後には口から泡でも吹いて倒れそうになったくらいだ。
まだお尻の穴がずきずきと疼いている。
あれだけ浣腸を繰り返され、百瀬の巨根で犯されれば当然だろう。
今度は五十嵐が責めるらしいと知り、響子はうわごとのように言った。
「ああ、もう堪忍してください……これ以上はもう……あっ」
そう言って初めて気がついた。
響子は素っ裸のまま仰向けにされ、両手両足をベルトで固定されていた。
これでは動けない。
もっとも、そうされていなくとも彼女に抵抗する力など残ってはいなかったろう。
五十嵐もそれはわかっていたが、響子を固定したのは理由がある。
いかに疲労困憊していようと、これから五十嵐がすることを知ったら、絶対に抵抗するとわかっ
ていたからだ。
五十嵐は手に注射器を持っていた。
それを見た響子は力なくつぶやいた。
「ああ……また浣腸を……」
五十嵐は首を振った。
「そうじゃねえよ。もう浣腸は兄貴が散々したろうが。それとも、まだされてえのか? 兄貴
の話だと、奥さんも浣腸で感じるようになったそうだしな」
「いや……もう、もう浣腸はいや……」
「だから浣腸じゃねえって言ってるだろ。だいたい、こんなちっぽけな浣腸器じゃあ、奥さん
は満足できねえだろうさ」
「ひどい……」
責めに感応したことを言われると悲しくなる。
百瀬に責め続けられるうちに、おぞましい浣腸で気をやるようになってしまった自分の肉体が
恨めしかった。
五十嵐は左手で響子の乳房を揉みながら嗤っていた。
そして、右手に持っている50ccほどの小さな注射器を響子に翳した。
「よく見な。こいつにゃ針がついてるだろうが」
「注射器……?」
「そうだ。中身はなんだかわかるか?」
「……」
「風邪薬じゃねえことくらいわかるだろ? ま、いい。とにかく、こいつをおまえに注射すん
のさ」
「え……」
響子が呆気にとられているうちに、五十嵐は左手で響子の右の乳房を持ち、その乳首を指で
押さえた。
どこに注射する気なのかやっとわかった響子は愕然とした。
「ま、まさか、あなた……」
「そうさ。こいつは奥さんの、このきれいなおっぱいにしてやるからな」
「ひっ、やあっっ!!」
「暴れんな! 針が折れたらどうすんだ!」
「ひっ!」
その一言で響子の動きが止まった。
五十嵐は慎重に針先を響子の乳首に向ける。
そしてわなわな震える響子の乳房をしっかり掴んで、そのてっぺんに針を挿した。
「ひっ、痛いっ!」
「動くなってんだよ! ホントに折れるぜ」
乳首の真上に針を挿し、そのままぐうっと押し込む。
響子の乳首が針先を受けてひしゃげた。
ぶすりとそこに刺さった。
五十嵐はかまわずそのまま押し込み、針が乳房の中に消えるまで差し込んだ。
「……」
響子は痛みと恐怖で声も出なかった。
そんなところに注射されるという恐ろしさで身動きがとれない。
一方、五十嵐の方は、美しい人妻の乳房に針を刺すという倒錯的な悦びに恍惚となっていた。
仰向けになり、やや扁平になったとはいえ充分に豊かな乳房に注射する。
ぞくぞくするような嗜虐感が湧き起こった。
若いヤクザは生唾を飲み込みながらシリンダーを押した。
「くっ……」
乳房の内部に薬液が入る違和感と苦痛に、響子は顔を歪めた。
乳房が中から爆発しそうな圧力を感じている。
見る間に薬液はすべて注射されてしまった。
「あう」
針を抜かれると、刺された時以上の痛みがあった。
その痛みに呻くうち、今度は左の乳房に注射された。
「ああ……」
そっちも終わり、針を抜かれると、わずかに血が滲んでいた。
五十嵐はそれを舐め取りながら響子に言った。
「毒だとかじゃねえから安心しな。奥さんを天国に連れてってくれるおクスリよ」
そう言いながらゆっくりと響子の乳房を揉み込む。
「あ……」
五十嵐の愛撫に身を委ねていた響子は、しばらくすると身体の異変に気づいた。
感じるのだ。
男の愛撫に感じやすくなったのは、百瀬らに調教されたからだが、今度のは何か違う。
感じ方が激しい。
身体の中が熱い。
股間がたちまち濡れてきた。
乳首も肉芽も痛いほどに屹立しているのがわかる。
さらに彼女を驚かせたのは、身体の疲れがすっかり取れていることだ。
百瀬によって、変態的なアヌス責めを4時間にわたって受け続け、身も心もクタクタだったの
に、肉体的疲労が消え失せているのだ。
むしろ、心地よいほどに身体がすっきりしている。
響子の様子に気づいたのか、五十嵐がニヤニヤしながら言った。
「へへ、ヤクの効果が出てきたようだな」
響子に注射したのは覚醒剤であった。
もちろん百瀬は響子をクスリ漬けにするつもりはない。
だから使うのは今回だけだ。
量にもよるが、一、二度やったくらいでは依存症にはならない。
この調子で毎日注射されてしまえば、一月もしないうちにそうなるだろうが、そうはしない。
五十嵐は火照った裸身をうねらせて身悶え始めた人妻を満足そうに眺めながら、自らの腕にも
覚醒剤を注射した。
──────────────
「五十嵐はどこだ?」
外出から戻った百瀬が、事務室の中を見回して訊いた。
ヒマそうにテレビを眺めていたチンピラが、天井を指差して答える。
「上。屋上のペントハウスに篭ってますよ。もうかれこれ……5時間くらいになりますかね。
何やってんのやら……」
それを聞いて百瀬は苦笑した。
百瀬と五十嵐が響子を連れ込んで何をしているのか、知っている者は少ない。
この若者も何も知らないのだった。
それにしても5時間もやり続けるとは呆れ──大したものだ。
ひょっとすると、五十嵐も自分に覚醒剤を使っているかも知れないと思った。
人間、いくら好きとはいえそう何時間も持続してセックスできるものではない。
休み休みやったところで、三分の一から半分の時間はセックス以外のこと─食事とか会話とか─
をするのが普通だろう。
だが、五十嵐は多分、5時間連続でずっと響子を犯しているに違いないのだ。
普通の人間にそんなことが出来るわけはないが、彼らは今「普通ではない」。
そう、覚醒剤の効果だ。
俗に、覚醒剤を用いたセックスは素晴らしいと言われている。
その理由はいくつかある。
五感が鋭敏になるから、あらゆる愛撫を快感として受け止めてしまう。
さらに脳が常に覚醒している状態で、集中力も異常に高まっているため、それこそのめり込む
ように行為に没頭する。
だが、それ以上に凄い──恐ろしいことがあるのだ。
それは「疲労を忘れる」という点に尽きる。
とにかく疲れない。
眠くならない。
何時間でも起きていられるし、いくら仕事をしても疲労を感じることがない。
その上、気が大きくなって度胸がついている。
太平洋戦争当時、突撃前の兵や特攻隊員に軍が処方したのも、そういう理由だ。
従って、今の五十嵐と響子のように、セックス時に用いると、これはすごいことになる。
いくらやっても疲れないし、あとからあとからとんでもないほどの快感を得てしまう。
3時間でも5時間でもセックスを続けられ、それでももっとしたいと思うほどはまってしまう。
ヤクザが女をヤク漬け、セックス漬けにするというのは、こういうことなのだ。
この凄まじいセックスで女を縛り付けるのである。
これを悪用ではななく、恋人同士、夫婦間で使うのは悪くないのではないかと思うかも知れ
ないが、とんでもない話だ。
覚醒剤は精神的依存度が高く、何度も使っているうちに中毒者になってしまうのは知られて
いるが、他にも怖いところはある。
覚醒剤を使用すると疲労を感じないのはその通りだが、これはあくまで身体が「疲労を忘れて
いる」状態に過ぎない。
疲労していないわけではないのだ。
だから、クスリの効果が切れるとひどいことになる。
夜通しセックスしていたと思ったら、クスリが切れた途端、ひどい疲れのため身体が動かせず、
10時間も20時間も眠り続ける、なんてことになってしまう。
もちろん、クスリが切れたと思った時に、新たに注射すれば、また眠らず動けることになるが、
そんなことを繰り返していれば、当然、身体は壊れる。
脳は薬で覚醒しようとも、そんな無理な行動に肉体がついていけるわけがないのだ。
もとより百瀬には響子をクスリ漬けの安物売春婦になどするつもりはない。
そんなことをすればボロボロになってしまう。
肌もだいぶ荒れるらしい。
響子の、陶器のようなすべすべした肌をそんなことにはしたくなかった。
だからこうしたプレイは一時的なものに収める。
覚醒剤を使って散々セックスに狂わせたあと、その事実を突きつける。
おまえはもうヤクザの女なのだとわからせるのだ。
クスリが切れた後の物凄い疲労感、倦怠感、脱力感、嫌悪感も充分に罰になる。
逆らえば、また覚醒剤を注射してセックス漬けにすると脅せばいい。
百瀬は、様子を見ようとペントハウスに顔を出した。
合鍵で中に入ると、そこは男女の熱気でむせかえるようだった。
入ってきた百瀬に気づかないほどに、ふたりの男女は性行為に没頭していたのだ。
「ああっ……あうう……」
百瀬は、見慣れたはずの響子の美貌にハッとした。
頬や額を赤く染め、瞳は潤み、生々しいほど熱い吐息を発していた。一瞬、酔っぱらっているの
かと勘違いしたほどだ。
身体全体がとろけているかのようで、圧倒されんばかりのフェロモンを発散している。
男女の体液と汗の匂いで充満した部屋は、思わず口を覆ってしまいそうな濃密な空気で満ちていた。
さらに百瀬を驚かせたのは、響子自ら五十嵐の口に吸い付いていたことだ。
「んんっ……ん、ん、んじゅるるっ……あ、はんむっ……む、んむむ……じゅっ……ちゅるっ……」
響子は、五十嵐の反応がもどかしいかのように、唇と言わず頬と言わず首筋と言わず、彼の皮膚
を求めて唇を動かしていた。
「ん、んふっ……ん、ん、ん、じゅっ……はあ、んむ……んるるっ……」
ようやく五十嵐が唇で応じると、むしゃぶりつくように若者の口を吸った。
もごもごと口が動いている。
舌同士でまさぐりあっているのだろう。
驚いたことに、響子の方から五十嵐の口の中を舌で愛撫しているのだ。
舌を強く吸い、唾液を飲ませ、頬裏や歯茎までも舐め回す。
今までは響子が百瀬らにされていたことで、決して自分から男の口にしたことはなかった。
それが今は貪るように男の舌を求めている。
あの貞淑な響子が……と、百瀬は今さらながらクスリの力を感じていた。
百瀬はそこまで見ただけで部屋を後にした。これ以上見物していたら、こっちもおかしくなり
そうだ。
中に入って五十嵐とふたりで嬲ってもいいが、こっちは素面である。
とても相手できるものではなかった。
淫獣と化した男女は、百瀬が覗いていたことも、出ていったことも気づかずに、相手の肉体を
貪っていた。
夢中になって互いの舌を吸い合っていたふたりはようやく口を離した。
「ああ……は、早く……」
性に狂った人妻は、焦れったそうに男のペニスに手を伸ばしていた。
細くしなやかな指で何度もさすっていたが、そんなことせずとも五十嵐の肉棒は臨戦態勢だった。
「あ……すごい……」
赤黒くそそり立った若いペニスを潤んだ目で見つめていた響子は、それを掴み、口へ持っていこ
うとする。
五十嵐はそれを止め、響子を乱暴に押し倒した。
「それには及ばねえよ、奥さん。もうギンギンだ、すぐにでも奥さんを天国へ連れてってやるぜ」
五十嵐はそう言って響子にのしかかった。彼は、今さらながら覚醒剤の威力を認識した。
もともと美人だった響子がいっそう美しく見える。
人妻の肉に狂う美貌、甘い息遣いが、いつもの何倍にも感じられた。
視覚も聴覚も嗅覚も鋭敏になりすぎている。
もちろん触覚も、そして性感もだ。
ドクン、ドクンと動悸がするごとに、ジャッキアップするみたいに性欲がどんどん高まっていく。
そしてそれが尽きることがないのだ。
もう面倒な愛撫などしていられなかった。
腹にくっつくほど勃起した硬い肉棒を掴むと、いきなり響子の媚肉へと乱暴に突っ込んだ。
「んはあっっ! い、いきなりっ……」
いきなり、と言ったものの、響子のそこも既に濡れ濡れで、難なく五十嵐を飲み込んだ。
それもそのはずで、もうこの挿入が今日7度めのセックスになるのだ。
その間、一度の休憩もとっていない。
「んあああ……ぐううっ、ふ、太いっ……」
どんなに濡れていても、クスリで淫乱になっていても、響子の膣はきつく締まりがいい。
まるで肉布団の隙間に、無理矢理ペニスを突っ込んでいるかのような感触だ。
当然、響子の方も、クスリのせいも相まって、恐ろしいほどの圧迫感を感じている。
狭い膣を軋ませて、ビクビクした硬いものが埋め込まれていく。
みちみちに詰まった膣道を強引に押し開き、とうとうその先が子宮口にぶち当たった時、早くも
響子は絶頂に達した。
「んっはああっ! いっ……くう!!」
犯される人妻は、熱に冒されたような熱い肢体をぶるるっと震わせて絶叫した。
五十嵐は響子の痙攣を手で押さえ込みながら聞いた。
「なんだ奥さん、もういったのか」
「ああ……」
響子は抗うこともなく、コクンとうなずいた。
「だ、だって、ああ……五十嵐さんのがすごくて……お腹の奥が擦れて……」
「くく、そうか。もうおまえは亭主のもんじゃねえ。オレたちのもんだ。そうだな?」
「ああ、はい……。夫のことは、もう言わないで……。わ、私はもう五十嵐さんの……ものです
……」
「可愛いこと言いやがる。よぉし、それじゃあ存分に犯ってやるからな」
「は、はい……お願いします……ああっ」
響子の返事を待つまでもなく、五十嵐は腰を使い出した。
ぐうっと腰を送って響子の最奥を抉り、腰を引いて抜き、そしてまた深く突き入れる。
たったそれだけの行為なのに、男女は憑かれたように繰り返していた。
男が硬い肉棒で女の膣内をこねくり回し、蜜を掻い出すように律動する。
その動きに応え、響子の膣は荒々しく押し入ってくる肉刀を襞を総動員して優しく受け止め、
愛撫した。
その絡みついてくる襞を引き剥がすようにして、五十嵐も激しくピストンする。
「ああっ、いっ、いいっ……き、気持ち、いいっ……」
「そうかい。どこがそんなに気持ちいいんだ? あ?」
「オ、オマンコっ……」
羞じらいもなく響子は恥ずかしい言葉を口にした。
「オマンコ、いいっ……あっ、あなたのおっきいのが、ああっ、お腹、抉って……ひぃっ……
か、硬い……硬すぎて痛いくらい……」
「へへ、そうだろうよ。俺のは硬いんだよ。なんせ自分でも痛くなるくらいだからな」
熟れた人妻にシンボルを褒められて満足げな五十嵐は、突かれるたびにゆさゆさしていた乳房を
掴んだ。
たちまち響子は反応する。
「ああ、いいっ……お、おっぱいが……」
「わかってるさ、奥さん。あんたは優しく揉まれるより、少し乱暴に強く揉みしだかれた方が
気持ちいいんだよな。な、響子?」
まるで年下の女の子のような口の利き方をされているのに、響子は若い男の言葉に従った。
「ああっ、そう、そうですっ……おっぱい強く揉んでぇっ……」
若いヤクザは腰の動きを休めることなく、響子の乳房を握りしめた。
揉みでのある豊かな乳房に五十嵐の指がめり込む。
熱く固く勃起していた乳首を指で弾かれると、頭の中がビーンと痺れる。
仰け反る響子の首筋に唇を這わせながら、乳房を揉み続けた。
柔らかく揉みほぐすようにさすったかと思うと、指の跡が残るほどにきつく揉み込む。
そのバランスが絶妙だった。
胸と媚肉から怒濤のように快感を送り込まれ、響子の爛れた性感はあっという間に頂点にいった。
「ああっ、んああっ……だ、だめっ、あ、またっ……また、いく……いっ……ちゃうっ!」
ガクガクッと身体を痙攣させて人妻はまた気をやった。
だが、まだ射精していない五十嵐が許すはずもなかった。
それに響子もまだまだいけたのである。
クスリの効き目だ。
いった勢いで思わず捩った腰を五十嵐に掴まれた。
まだペニスは挿入したままだ。
逃がさないよう抱え込んだ腰が、五十嵐の腰に押しつけられる。
胎内に埋め込まれていた肉棒が、さらに奥まで入っていった。
「ああおっ! だ、だめ、そんな立て続けにっ……あっ、いくうっ」
響子は見違えるほどに性反応を露わにしていた。
あられもなく乱れ、身悶えて喘いだ。
絶頂に達したまま、そこから降りられないようで、連続的にいきまくった。
それでいて五十嵐を離すまいと、その筋肉質の背中を掻き抱いている。
いくたびにグッと力が籠もり、彼の背中に爪を立てるのだが、その痛みや出血すら気にならない
のか、五十嵐は厭きることなく響子を責め続けた。
「ああ、いいわっ……ひっ……すっ、すごいっ……あはあっ……ううんっ、おっきいのがあっ、
お、奥まで来てるっ……」
ふたりは全身体液まみれだ。
上半身は汗。
顔や首筋はお互いの唾液でぬめっている。
下半身は、腰だけでなく腿や臀部まで男女の粘液でねとついていた。
結合部は、律動のたびに、にち、にち、にち、と、粘度の高い汁の音がしている。
五十嵐の肉棒も赤黒いが、響子の媚肉も赤く爛れきっている。
太いもので擦り切れそうなほどに激しく抜き差しされているのだから当然だ。
今にも血を噴き出しそうなくらいで、普通なら痛みを感じるところだろうが、そうした負の感覚
は一切失われていた。
響子の脳内はドーパミンを放出しまくっているのである。
「ひぁっ、いいいいっ……あ、あうっ、は、激しいっ……激しいわっ……」
「その激しいのがいいんだろ?」
「ああ、そうよっ……あ、あなた、もっと激しくぅっ……」
響子は、行為の途中から五十嵐を「あなた」と呼んでいた。
もう五十嵐を主人と認めているのか。
それとも、まだ記憶の底で裕作がいて、彼に抱かれている気になっているのか。
響子にはもうどうでもよかった。
この失神しそうなほどの肉悦が、恍惚となる愉悦が永遠に続けばいい。
それだけが心を支配していた。
そんな響子を、これも恍惚とした表情で五十嵐が見ていた。
慎ましやかな人妻を、覚醒剤を使ったとはいえ、ここまで堕としたのだ。
男冥利に尽きるというものだ。
「おいおい、何度いったら気が済むんだ? そんなに立て続けにいってたら身が保たないぜ」
「いいのっ!」
響子は大きく何度も首を振った。
「ああうっ、いいっ……どっ、どうなってもいいっ……なんでもするぅっ……ああ、だからっ
……」
「だから死ぬまでいかせて欲しいんだな、奥さん」
「そうっ……ああ、そうですっ……お、オマンコ、いいっ……」
「へっ、とんでもねえ好きもんだ。まあいい、後で許してくれって言ってもカンベンしねえぞ。
いかせまくってやる」
もはやそんな言葉も耳に入っていないのか、性に狂った人妻は身も心もどろどろにとろかされ
ている。
腰はくにゃくにゃと力が入らず、若者の力強い突き上げを受け、ガクン、ガクンと大きく仰け
反っていた。
その細腰は今にも砕かれてしまいそうだが、その実、大きな臀部が男の攻撃をしっかりと受け
止めていた。
静脈の浮き出たたくましい肉棒が激しく出入りするごとに、響子の媚肉からは愛液が迸る。
自分から積極的に腰を振り、さらに深い突き込みを求めていた。
責める五十嵐の方も、徐々に意識が虚ろになってくる。
クスリが効いてきているのだ。
考えることが面倒だ。
百瀬には、響子を犯す時は必ず言葉で責めて羞恥心を煽れと言われているのだが、もうどうでも
よくなった。
欲望のままにこの人妻を犯したかった。
セックスの快感だけが思考を占めるようになっていた。
「よぉし奥さん、きっちりいかせてやるからな」
「ああ、はいっっ……」
響子は、男なら震いつきたくなるような妖しい苦悶の表情でガクガクうなずいた。
それを見てから五十嵐は、力の入らない響子の腰を掴むと、今まで以上に凄まじいほどの律動を
加えていった。
大きくぶるんぶるんと揺れる乳房に吸い付き、乳首を咬み、肌にキスマークが残るほどにきつく
責める。
一段と激しくなった責めに、響子はたちまち追い上げられた。
「いいいっ……はっ、激しっ……いいっ! ……すごいっ……き、気持ちよくって……気が……
気が狂うううっ……」
媚肉を貫き、膣を打ち砕かんばかりのペニスの攻撃に、子宮から全身へ強烈な愉悦が突き抜けて
いく。
響子は全身で五十嵐を受け止めていた。
口が舌を伸ばしてキスをせがむ。
彼の手が乳房に迫れば、胸を反らせて揉みやすくする。
腰を捻って奥まで突き入れようとすれば、自分でも腰を動かしてより深くまで受け入れた。
もう口からは、セックスの快美に応える声しが出てこない。
「ああっ……あおおっ……ひぃっ……いいっ……ああっ、あうっ……いっ、いくっ……ああ、また
いっちゃうっ!」
さすがに五十嵐も今度は耐え切れそうにない。
肉の悦びに悶え喘ぐ美女の顔と、肉棒を締め上げる膣の心地よさ。
五十嵐は唸りながら、思い切り腰を打ち込み、響子の子宮口に亀頭部を何度も叩きつけた。
「そっ、そこっ! ……そこがいいっ……ああ、いくっ……い、いきそうですっ……」
「よし、いけっ! 中で出してやるぜ!」
「ああ、はいっ……な、中に……中に出して!」
「すっかり中出しが気に入ったようだな、奥さん! そんなに中がいいのか!」
「中がいいっ……はっ、早くっ……中にいっぱい……熱いのをたくさん出して!」
「出るぜ!」
「い、いくっ……またいきますっっ!!」
激しい絶頂に達し、ペニスを食いちぎりそうなほどの収縮を受けた五十嵐は、たまらず射精した。
どびゅるるっ。
びゅるるっ。
どぷぷっ。
どぶっ、どびゅっ。
「でっ、出てるっ!」
射精された瞬間、響子は続けてまたいかされた。
どろりとした熱い粘液が、驚くほど大量に人妻の子宮を襲った。
その精液が、いかに濃くて粘りが強いのかが、響子には子宮でわかった。
響子は射精された精液の熱さと濃さ、そしてその量の多さに痙攣し、身悶えていた。
無秩序で荒々しい突き込みで、膣の内壁はすっかり爛れていた。
そこに濃くて熱い精液がしみた。
しかし今の響子には、その痛みすら至上の快楽としてしか捉えられなかった。
五十嵐の方も、射精したというのに一向に性欲が収まらなかった。
まだ何度でも出来る。
これが出来るからわざわざ自分にも覚醒剤を打ったのだ。
射精の快感の余韻が冷め切らぬまま、またしても人妻の媚肉を犯していく。
「ああっ……い、いったばかりなのにっ……ひぃぃっ、ま、まだ出てるのに突き上げてるっ……」
射精してもまるで衰えない肉棒に、恐怖とたくましさを感じた人妻は、つきあうように腰を動か
し始めた。
男の精液と自分の愛液でどろどろにされた胎内を、大きな硬いペニスで、またしても引っかき回
されている。
膣の襞や子宮にこびりついている粘った精液が、肉棒で内壁に擦りつけられていく感覚がたまら
なかった。
「奥さんよ、こんなもんでまいるなよ。まだまだやってやるからな」
「あはあっ……いっ、いいわっ……な、何度でも響子を犯してっ……いっぱい、いっぱい射精
してぇっ……」
「可愛いこと言いやがる。どこがいいんだ? どこを責めてもらいたいんだ?」
「お、奥っっ……いちばん深いとこまで入れてっ……あうう、奥が、感じて……いいいっ……」
ピストンするごとに、媚肉の隙間から男女の性液のミックスが洩れてくる。
それを押し返すように、五十嵐は腰をグイングインと突き入れた。
度重なる激しい絶頂に、響子も抑えが利かない。
と言うより、抑えようという気すらなくなっていた。
ふらふらとだが、すぐに頂点まで達してしまう。
「はあううっ……いいっ……だ、だめ、またっ……またいっちゃうっ……気持ちいいっ……気
持ちよくて……ああ、いく……いっくうっ!」
数えるのが面倒になるほどに、響子を気をやり続けた。
そのたびに五十嵐は締めつけられるのだが、そう何度も我慢は出来ない。
響子が2,3度いくごとに、五十嵐の方も射精を続けた。
幾度となく膣内射精を繰り返される人妻は、喘ぎよがり続けて掠れた声を出しかなかった。
「まっ、またっ……また出てるっ……お腹いっぱいになる……あ、あなたの精液でいっぱい…
…ううむっ、またいくっ!」
響子は、比喩でなく数え切れないほどの絶頂を味わわされた。
何度いったかなんてもうどうでもよかった。
とにかくいった記憶しか残っていない。
深々と貫かれ、中を抉られ、大量に射精される。
その繰り返しなのに、狂おしいほどの快楽と愉悦が人妻を満たしていた。
ところどころ記憶がない。
憶えているのは、胎内に濃厚な精液を吐き出され、脳天を突き抜けるほどの快感でいかされた
ことだけだ。
響子と五十嵐は、都合10時間近くも性交を続け、百瀬を呆れさせた。
──────────────
その日、三鷹瞬は不機嫌だった。彼は父に呼ばれ、父の会社の社長室に来ている。
瞬は、父の経営する会社の子会社のひとつの社長に納まっていた。
社会的立場としては父親の部下である。
だから、こうして呼び出しを受けたからといって、不平に思うのは間違いだ。瞬
の機嫌が悪いのは、社長たる父親から受けた命令の内容が不満だったからである。
「……」
「瞬」
「いやですよ」
「……」
息子に断られ、父は困った顔をした。
事業家として少しは名を知られている瞬の父は、辣腕を振るっていくつかの会社を経営する
オーナーに納まっている。
一代でのし上がったのだから、立派なものだ。
瞬もその功績は認めるのだが、時々こうして厄介な頼みごとをしてくるのだけは閉口している。
父も一代の財を築いたように、三鷹家では独立独歩を家訓としている。
だから瞬も、父の会社を継ぐ気はさらさらなかった。
父の方は、せっかく大きくした社なのだから、息子に引き継いで欲しいと思っている。
家訓には反するものの、父親としてはもっともな感情だろう。
ところが瞬の方はさっぱりその気がなかったから、大学卒業後、父の会社に入るよう薦められた
のをきっぱりと断った。
独立してテニススクールを開校したわけである。
それでも、自分が長ずるにつれ父は老いていく様子を見るにつけ、わがままも言っていられなく
なった。
母からの懇願もあり、結婚と同時にスクールを辞め、父の会社に入社したのである。
思えば、結婚したのも、父に泣きつかれた叔父によって見合いを設定されたからだった。
よく出来た妻だから特に不満はないものの、自主自尊をモットーとする瞬には、いささか面白く
ない結果である。
そして、今日もまたひとつ面倒な依頼を押し付けられたのだ。
瞬はうんざりして言った。
「だいたい、それはヤクザでしょうに。いつまでそんなのとつき合ってるんですか?」
「そう言うがな、瞬。世の中、奇麗事ばかりじゃない。清濁併せ呑むことだって必要なのだ。
それくらいおまえだって……」
「わかってますよ、僕だって子供じゃない」
「いいや、わかっておらんさ。いいか、わしだって阿漕なことをするために連中とつき合ってる
んじゃない。千木良さんとこがただの暴力団だったら、わしだってとっくに切り離してる。だが
な……」
「わかってますって。……どうしたって総会屋は必要だと言いたいんでしょう?」
三鷹グループ──といっても、関連会社を含めて11社ほどのものだが──に外敵をよせつけないためとして、社長は地元のヤクザと手を結んだのである。
ただ、父も言っている通り、暴力団を利用するといった類のことではない。
ひとつは瞬が言った総会屋対策である。
三鷹グループの株主総会は千木良一家が仕切っているため、他の暴力団や総会屋が手を出せない
のである。
これによって総会での嫌がらせの類はほとんどなくなった。
といって、三鷹は彼らを悪用もしていない。
一般株主を締め出したり、いわゆるシャンシャン総会にするために彼らを使っているわけでは
ないのだ。
あくまでトラブル防止用である。
また、多くの社員たちがヤクザ絡みの面倒な厄介ごとに巻き込まれた時などにも有効に作用する。
また、千木良一家のシマであれば、三鷹の社員たちがヤクザやチンピラに絡まれることもなかった。
父はこうした効用のため、彼らとつき合っていたのだ。
もちろん彼らには、「団体の機関紙を買う」とか土木工事に関係組織を雇うとか、あるいは土地
取引で千木良不動産を利用するなどの便宜は図っている。
とはいえ、それ以外の私用面ではノータッチだった。
ただ、三鷹家の行事などに呼ぶことはなかったが、逆に千木良の組の催しの際には、必ず招待状が
届いている。
三鷹としては、あれこれ理由をつけて出来るだけ欠席し、祝い金だけ贈るようにしていたのだが、
今回はかなり強力に出席要請があったらしい。
こうなると三鷹としても無碍には断りにくいものがある。
今までどんな催しにも一度も出ていなかった引け目もあるし、三顧の礼で要請されては如何とも
し難い。
瞬などは、こういうことがあるからこそ、早めに彼らとは縁を切るべきだと思っていたのだ。
次期社長の瞬としては、社長就任の暁には、彼らとは一切手を切るつもりでいる。
だが、今回だけはさすがに父も断れなかったようだ。
瞬は苦虫を噛み潰したような顔で言った。
「……で、何に出ろっていうんです?」
「パーティだそうだ。ゲストに女を呼ぶらしい。……あんまり品のいいものじゃないだろう、大体
想像はつくがね」
「……」
面白くなさそうな顔の息子に、父は頭を下げた。
「頼むよ、瞬。これっきりにするから」
瞬は、情けなさそうな顔で父を見て、ようやくうなずいた。
「わかりましたよ。でも、本当にこれっきりですからね」
「わかっている」
「……しかし、いったいなんで今回はこんなにしつこく誘ってきたんです?」
「さあ、わからんな。ただ……」
「ただ、なんですか」
父は腕組みして答えた。
「主催はもちろん千木良一家になってるんだがな、代表世話人の名前が千木良さんじゃなかった
んだ」
「え、じゃあ代替わりしたんですか?」
「そうじゃなかろう。そんな話は聞いてない」
「……誰になってました?」
「確か、百瀬とか書いてあったな。わしも知らん名だ。もしかすると幹部なのかも知れんな。
おまえ、顔をよく見ておけ」
──────────────
パーティとやらの会場は、市内にあるビジネスホテルだった。
普通のホテルで、そんないかがわしいショーを開催できるわけがないから、ここも千木良の息が
かかっているのだろう。
駐車場にクルマを入れ、ホテルのロビーへ向かう。
すると、瞬がフロントへ行く前に男が近づいてきた。
「三鷹……瞬さんですね?」
「……そうです」
瞬はちょっと驚いた。
その男は、派手なシャツを着た若いチンピラ風だった。
ヤクザであろう。
父から聞いたことがあるが、まともなヤクザは一般人と見分けがつかぬと言う。
してみると、こいつは下っ端、いわゆる三下なのであろう。
だが、そういた連中でも瞬の顔を見分けていることに驚いたのだ。
あらかじめ写真でも渡されてチェックしているらしい。
思っていたより大掛かりなものかも知れない。
男に案内されてエレベータに乗る。
地階で止まり、降りると、今度はきちんとしたスーツを着こなした身なりのいい男がいた。
サングラスをかけてはいるが、これならサラリーマンに見える。
幹部かな、と瞬が思っていると、その男は低頭した。
「三鷹社長の息子さんですね。次期社長になられるとか」
「……三鷹瞬です」
「ようこそいらっしゃいました。三鷹さんにはぜひいらしていただきたいと思っておりました。
私、千木良の部下で、百瀬と申します。以後、お見知りおきを」
「……よろしく」
儀礼上、仕方なく瞬は会釈した。
ヤクザに下げる頭など持っていないと言いたかったが、ここは父の顔を立てるため、やむをえない。
瞬が頭を上げると、百瀬と名乗った男は近くにいた若い男を呼び寄せた。
「五十嵐!」
「へい」
「会場にお連れしろ。特等席を用意してあるだろう、そこへご案内するんだ。失礼のないようにな」
「へい! ……客人、どうぞこちらへ」
「……」
ちらっと彼を見て、五十嵐に連れられて去っていく三鷹を、百瀬はニヤッと笑って見送っていた。
──────────────
会場は隣の部屋だった。
会議場か何かのスペースを改造してあるらしい。
テーブルと客席が用意され、その前には舞台がせり出している。
その部分をぐるっと取り囲むようにいくつかテーブルセットが並んでいた。
恐らく、観客席側に丸く飛び出た部分でショーが進行するのだろう。
五十嵐と呼ばれた若いチンピラが先導してそこへ連れて行こうとするので、瞬は断った。
五十嵐は困ったような表情で訴えた。
「客人、それじゃ困りますよ。どうぞこちらへ……」
「いや、遠慮するよ。僕は後ろでいい」
「そうは行きませんや。百瀬の兄貴にも言われてますんで」
そう言われても、瞬としては下品なショーをかぶりつきで見る趣味はなかった。
彼は女好きではあるが、性欲の権化というわけではない。
セックスは好きだが、それだけではつまらない。
その前後の男女間の駆け引きがあってこそだと思っている。
だから彼は、いわゆる風俗にまったく興味はない。
ポルノを見る趣味もないのだ。
温泉地でストリップだ、コンパニオンだと大騒ぎする中年どもの気が知れない。
その瞬が、こんなお座敷ショーのような趣向を好むわけがないのである。
大仰な舞台装置だが、どうせやるのは白黒ショーだの花電車だのといった、言葉を聞いただけ
では何のことだかわからない、それでいて品のない卑猥な見世物だろう。
そう説明するのも無駄な気がして、瞬は微笑んで答えた。
「僕はスタジアムへ行ってスポーツ観戦する時でも、前じゃなくて後ろから全体を見るのが好き
なんですよ。だから……」
「そう言われましても……」
「さっきの百瀬さん……でしたか? 彼には後で僕からよく話しておきますから。あなたの責任
にはなりませんよ」
「そうですか……? まあ、客人がそこまで言われるのでしたらねえ……」
五十嵐は首を捻りながら最後部のテーブルへ瞬を案内した。
彼には逆に瞬の気持ちがわからない。
あれだけいい女なんだから、間近で見なきゃつまらないだろうに、という感情である。
五十嵐は、金持ちの考えることはわからねえ、と肩をすくめながら歩み去った。
五十嵐が去ると瞬は腰を下ろした。
まだ室内は薄暗い。
テーブルの上にある小さなライトが、照明のすべてだ。
まだ開演まで時間があるのかと思ったが、よく周りを観察するともう半分ほど席は埋まっていた。
低い声でざわざわと話す声も聞こえた。
大抵のテーブルは数人の男たちが固まっていて、ひとりで座っているのは瞬だけのようだ。
これから始まるショーにも興味はなく、話す相手もいないとなれば、もう飲むしかない。
テーブルの上には、琥珀色の液体の入ったデカンタとグラス、アイスボックスが用意されている。
五十嵐の話では、何かオーダーがある時には無言で手を挙げてくれれば対応するとか言っていた。
瞬はひとつため息をついて、グラスに氷を入れ、デカンタから洋酒を注いだ。
ぷんと松脂臭い香りがした。
ブランデーのようだ。
瞬は一息でそれを飲み干した。
──────────────
「……」
どれほどの時間がたったのだろうか。
気がつくとショーが始まっているようだ。
むしゃくしゃするままにブランデーを呷っていたので、まるで気がつかなかった。
見ると、デカンタの中身が半分くらいになっている。
飲み過ぎだと思いつつもグラスに口を当て、やっと舞台に目をやった。
「……」
瞬は顔をしかめた。
案の定、悪趣味なことをしている。
舞台の上には、主役と思しき女と、ふたりの男がいた。
女は素顔だが、男はプロレスか何かのマスクをつけ、その上にサングラスをかけていた。
女は後ろから男に抱えられている。
両膝の下に手を入れられ、股を広げられている。
まるで幼児にオシッコをさせているような格好だ。
瞬は呆れた。
女を見世物にすること自体、彼の理解を超えている。
舞台では、もうひとりの男がマイクを使って喋っていた。
「ご覧ください、キョウコのこの見事なアソコを! ほとんど色素も溜まっておらず、実に美しい
ものでしょう。とても子持ちとは思えません」
司会者の言葉に、会場からも感嘆の声が上がる。
「おお、これは確かに綺麗だ。29歳とは思えんな」
「まったくや。生娘みたいなきれいなオマンコしとるわ。ホンマに子供がおるんかいな?」
瞬はまったく別の反応をした。
「キョウコ……?」
女の名前らしいが、彼にも憶えのある名だ。
しかし、よくある名前だし偶然だろうと思った。
さっき聞こえた「29歳」「子持ち」というのも偶然の一致だろう。
だが、どうも気になる。
瞬は目を凝らして舞台の女をよく見た。
恥ずかしがっているのか、顔を逸らしているのでよくわからない。
瞬は飲みすぎたことを後悔した。
少し酔ってきている。
視線の焦点がよく合わない。
そこでテーブルの上のモニタを見た。
五十嵐の説明だと、このモニタでショーのクローズアップシーンが見られるようになっている
らしい。
見てみると、女の顔ではなく、無惨に開かれた股間ばかりが映されている。
瞬は舌打ちしたが、これはそういうものなのだろう。
周囲を見回すと、あの五十嵐がいたので、すっと手を挙げて呼んだ。
目敏く、彼はすぐに寄って来た。
「何か?」
「ああ、あの女性なんだけど……」
「キョウコですかい?」
「それだ。名前は本名なのか?」
「ええ、そうです。……っと、それ以上は言えませんがね」
五十嵐はニヤニヤしながら答えた。
「教えてくれないかな」
「そう言われましてもね……」
「頼むよ」
瞬はそう言って、五十嵐の手に紙幣を掴ませた。
五十嵐はそれが一万円札2枚であることを確認すると、いやらしそうな笑みを浮かべて言った。
「……本当は客人に教えちゃまずいんすけどね……」
「……」
「わかりましたよ、他ならぬ三鷹さんのお願いじゃ断れねえや」
「すまないね。で、どんな字なんだキョウコってのは?」
「ああ、ええと……ほれ、女優でいたでしょうや、その……」
五十嵐は、喉元まで出掛かっている名前を搾り出そうと、指で額を叩いた。
「そう、真野響子! 真野響子って色っぽい女優がいるでしょう、ウィスキーかなんかのCM
やってる……。あれと同じ字でさあ」
「真野響子? ……じゃあ、「響く子」と書くんだね?」
「へい」
「苗字は?」
「……」
五十嵐は少し迷ったようだが、再び瞬に一万円札を握らされ、呆気なく答えた。
「確か、五代って言ってましたね」
「五代……響子か!」
驚愕する瞬に、五十嵐は顔を寄せて囁いた。
「客人、これは他言無用ですぜ。バレたら俺らが叱られますんで」
「わかってるよ、ありがとう」
返事をした瞬の口調は虚ろだった。
そんな、まさか……という思いが拭いきれない。
それでいて、舞台の上の「主演女優」には、確かにあの女性の面影が残っている。
実のところ瞬は、ここ2年ほど響子と顔を合わせていない。
最後に会ったのは、響子の結婚披露宴の二次会である。
以降、どちらも家庭を持ったわけだから、独身時代のように気軽に会うわけにはいかないし、
またその必要もなかったからだ。
瞬は、呆然としながらも、女とモニタから目が離せなくなっていた。
──────────────
見世物にされている女は微かに呻いた。
「ああ……」
後ろから抱っこされ、股間を晒されている。
しかも、あろうことか、もうひとりの男が響子の股間に手を伸ばし、割れ目を開いているのだ。
男の指が器用に響子の大陰唇を開き、小陰唇の中にまで潜り込み、そして膣口そのものを晒して
いる。
さらに指は中へと進み、膣口を開かせる暴虐まで行なっていた。
外気とともに、いやらしい男どもの視線が膣の中に入ってくるのを、女──五代響子は感じていた。
(ああ、恥ずかしい……み、見られてる……自分でも恥ずかしくてよく見たことがないのに……)
腰が熱い。
腰の奥が熱を持ってきている。
男の野卑な野次や視線に、熱や物理的圧力でもあるかのように、響子の膣を刺激していた。
(み、見てる……)
響子はぶるるっと震えた。
心がレイプされていく。
(ああ、男の人たちが見てる……知らない人たちが、私の……あそこの中をじっくり観察してる
……ああ……)
その時、自分の胎内の変化を響子は感じ取っていた。
中が熱くなったのは、熱を持った粘い蜜が分泌してきていたかららしい。
とろりと膣内をゆっくり流れるそれを感じた時、響子は戦慄した。
(だ、だめっ……こ、こんなときに……ああ、濡れてる……濡れてきてる……)
客席からも「おおっ」というどよめきが上がる。
口を開けた響子の膣から、ねっとりとした愛液がにじみ出てきたのがわかったのだ。
「この女、濡らしとるぞ!」
「見られて濡れるとは……相当な好きものらしいですな」
響子は大声で否定したかった。
(違うっ……違うんです! こ、これは……か、身体が勝手に……)
「あ、あ……」
それは声にならず、ただ色っぽい喘ぎになるばかりであった。
膣をいびっていた男がようやく腰から離れ、客席に向かい合った。
「いかがです? 素晴らしい持ち物でしょう?」
まるで自分のものを自慢するかのように男は誇らしげだった。
そして響子を抱えている男に合図すると、彼女を立たせた。
すらりとした肢体だが、乳房や腰回り、そして太股の肉付きは見事だった。
腰や膝、足首が締まっているからこそ、余計に響子の豊満さが強調されている。
色白な肌を際立たせるためか、響子はガーターのストッキングだけを履かされていた。
足には真っ赤なハイヒールを履き、背伸びするような感じになっているため、ぐっと臀部が持ち
上がり、豊かなヒップを誇示しているように見える。
全裸よりも、何か一部着衣をつけていた方が、より色っぽいということを、客たちは響子の裸身
で再確認していた。
司会の男が続けた。
「いいのはオマンコだけじゃありません。どうです、この見事なおっぱいは」
そう言って響子の後ろへ回り、背中から大手を広げて彼女の乳房を抱え込む。
乳房の重みを確かめるかのごとく、下から掬い上げるようにゆっくりと揉みこんだ。
子持ちだけあって、今にも乳が垂れてきそうな豊潤さだ。
その、よく練れた柔らかそうな人妻の乳房が、男の手によってぐにゃぐにゃと形を変えさせら
れるさまは、息をのむほどの色気を湛えている。
「ああ、いや……」
抗いながらも、人前で乳房を嬲られる被虐と羞恥に、響子はまだ困惑している。
それでいて、男の手から胸肉に送り込まれる快感も敏感に感じ取ってしまうのだ。
悲劇の人妻が、必死になって胸の快楽に耐えていると、今度はくるりと反転させられた。
背中を客に見せるポーズだ。
司会の男は、そこで屈み込むと、よく張った響子の尻たぶをグイと割り開いて見せた。
「ああっ、いやあ!」
思わず人妻は絶叫し、腰をくねらせて避けようとする。
だが、腰はしっかりともうひとりの男に押さえ込まれていた。
「ああ……」
響子は悲しげに呻いた。
実のところ、彼女が舞台に上がったのはこれで三度目になる。
死ぬほどの恥辱だった。
初めての時は、本気で舌を噛んで死のうと思ったくらいだ。
しかし、百瀬に腹の子のことを指摘され、死ぬのを思い留まった。
いかに百瀬の子であり、祝福されぬ子であるとはいえ、生まれてくる子には何の罪もない。
母親の都合で、その生を絶つことは許されないと思った。
いずれ生まれ来る子のために、響子は生き恥を晒し続けねばならなくなっていた。
毎回、こうして裸身を晒し、恥ずかしい箇所を見られている。
しかし、どうしても響子は慣れることが出来なかった。
見知らぬ男たちにいやらしい目で見られることは耐え切れない。
百瀬たちは、そうした響子の羞恥にまみれた姿が客を喜ばせるといって、いっそう彼女が恥ず
かしがることを強要したのだ。
「いや……」
響子は小さく呻いた。
局部もだが、こうしてアヌスを見世物にされるなど信じられない。
そんなところを見て喜ぶ男の心理もわからなかった。
「綺麗なもんや。よう窄まっとるし、形も崩れとらん……。まだアナル処女かいな?」
大阪弁で下品な質問をした客に、司会が答えた。
「いえいえ、この響子はもう充分に調教してございます。もちろんアナルもばっちり仕込んで
ありますよ」
おお、と、どよめく声が上がる。
件の客がまた声を掛けた。
「そうかいな。なら、今日はその奥さん……奥さんでええんやな、人妻なんやから。奥さんの
アナルプレイも見られるんかいな?」
「もちろんですとも。本日のメインは響子のアナルですから」
「ひぃっ……」
観客の歓声とは裏腹に、響子は恐ろしげに悲鳴を上げた。
やはり、とうとう客の前でお尻を嬲られるのだ。
過去2回は、そこまでされなかった。
一回目は、身体を晒した後、ローターやバイブ、アナルドリルなどで膣や肛門をいたずらされた。
初回ということで、あまりショックを与えない配慮があったのか、犯されることはなかった。
しかし2回目は、股間を観察されたあと、イマラチオされ、男三人がかりで念入りなペッティ
ングをされてから、司会の男に犯された。
だんだんと行為がハードになってきていたから、もしかしたら今度はお尻にされるかも知れない
と恐れていたところだった。
それが現実となった。
抵抗は無意味だった。
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