またお尻だ。
浣腸責めといい指責めといい、どうしてこの男はそんなところばかりに興味を示すのだろう。
大神が、セックスに関しては馬鹿馬鹿しいほどにノーマルだっただけに、さくらは秋月のよう
な変質者の嗜好がまったく理解できなかった。

「お尻はいやですっ……。な、何度言えばわかるんですか!」
「浣腸をやめるんだから、これくらい当然さ」
「そんな……」
「それとも浣腸にするかい?」
「ぜ、絶対にいやっ!」
「なら、これにするしかないね。こいつをさくらくんの肛門に入れてあげるのさ」
「……」

さくらは唇をわななかせながら目をつむった。
従うしかないのだ。
浣腸もだめ、この責めもいや、などと言っていれば、業を煮やした秋月がアイリスのことを
持ち出すに違いない。
項垂れたさくらを見て、秋月は調子に乗って言った。

「わかったようだね。じゃあ、さくらくんから言ってもらおうか」
「……何を……ですか……」
「これを使ってくれと、きみから僕に頼むんだよ」
「……!!」

どこまでいたぶれば気が済むのだろう。
お尻を責められるのがイヤでイヤでしようがないのに、自分から尻責めを望むように口にさせ
るとは。
拒否すれば強引に浣腸されるだろうし、その後にこの責めをされるかも知れない。
どっちみちいやらしくて恥ずかしいことをされることは変わらないのだ。
さくらは肩の力を抜いて諦めた。
この上は、なるべく反応しないように堪えるくらいしか抵抗手段がない。

「わ、わかったわ……」
「ちゃんと言ってくれないと困るね」
「……。そ、それを……」

あまりの惨めさと羞恥に顔を真っ赤に染め、さくらは口を開いた。

「それを……さ、さくらのお尻に……入れて、ください……」

固く目を閉じたまま、死ぬような思いでさくらはそう言った。
握りしめた手がぶるぶると震えているのは恥辱のせいか、それとも秋月への怒りだろうか。
若い陸軍士官は、もちろんそんなことは露程も気にせず、手にしたアヌス棒に何やら塗りた
くり始める。
透明で、ねっとりとした液体である。
塗り終わると、それをさくらのアヌスにも塗りたくった。

「ひっ……」

その冷たく、ぬるついた感触に、思わず「いやっ」と言いそうになったさくらだが、どうせ
言ったところでやめてくれるはずもない。
むしろ秋月を喜ばせるだけだと思い、必死になって我慢した。
秋月としては、いやなものを懸命に我慢するさくらの美貌を見ても愉しめるので、どちらでも
変わらなかった。
塗り終えたらしい男の指が離れて少しホッとしたさくらだったが、それも束の間だった。
今度は尻を割られ、中に何か押しつけられている。
冷たい感覚を尻たぶに感じた。

「つ、冷た……」

金属らしく、冷たい感触は体温に吸い取られてすぐになくなった。
だが、いつまで経っても尻たぶを割り開かれている感覚はなくならない。
ぐっと括約筋に力を込めて閉じようとするのだが、何か固いものが挟まれているようで出来ない。

「何をしたんですか……」
「気にしないでいい。直に気にする余裕もなくなるさ」

秋月が使ったのは金属製のリングだった。
直径5センチほどの大きさで、それがさくらの尻たぶを開くように挟まっていたのだ。
そのせいで、普段は臀部の谷間に隠れている菊門が剥き出しになっていた。
ひくひくと恥ずかしげに蠢くアヌスを見つめて、秋月は満足そうにうなずいた。
これで責めやすくなるというものだ。

しかし、さくらがもう観念している様子なのが面白くない。
嫌がってくれないと愉しみが半減する。
そこで秋月は、責めの実況をしてやることにした。
それをさくらに聞かせて羞恥や屈辱を煽ろうというわけだ。

「覚悟できたようだね。それではさくらくんのお尻の穴に入れるよ」
「い、いや……やっぱりしないで……あっ、ああっ……!」

秋月は慎重に、そして昂奮で息を飲みながら、さくらのアヌスに異物を挿入していった。

「ひっ、いやっ! やっぱりいやあっ、しないで、ひっ……」

肛門に感じる異様な感覚で、さくらは思わず力が入り、踏ん張る。
わずかに侵入したアヌス棒を、健康そうなアヌスがきゅっと絞るように締めつけた。
がっちりとくわえ込み、少々の力では動きそうもない。

「さくらくん、お尻の力を抜くんだ。そのままだとかえってつらいよ」
「いやっ、いやですっ……あ、あっ……」

さくらが締め付ける力が秋月の指に伝わってきた。
かなりきつい。
ペニスを挿入した時の快感を想像し、秋月の顔が緩む。

いつまでも力を込めっぱなしにしていることも出来ず、時折、ふっと力が抜けることがある。
もちろんすぐにまた力むのだが、隙はあった。
秋月は焦らず、さくらが力を抜いた時を狙って、ぐっと責め具を押し込んでいった。

「あはあっっ……やあっ……い、入れないで……んんっ……」

ゆっくりと、さくらが脱力した時だけ狙って挿入していったが、アヌス棒のほとんどはもう
さくらの中に埋め込まれている。
秋月は、わずかに顔を覗かせている先端を指で押さえながら、額の汗を拭いた。

「どうだ、さくらくん。もうすっかり中に入ったよ」
「やあっ……ど、どうしてこんな……お尻にこんなことを……」
「恥ずかしいのかい?」
「は、恥ずかしい……ああ、見ないで……」
「恥ずかしがってるさくらくんは最高に可愛いよ」

そう言いながら、秋月は沈み込んだ責め棒を今度はゆっくりと引き抜きだした。
たちまちさくらのアヌスと直腸に凄まじいほどの感覚が走る。
肛門粘膜と腸内粘膜がイボに引っ掻かれ、びりびりっと痺れる。
腸内が熱を持ってくる。

「ひっ、動かさないで! あっ、いや……あ、あうう、そんな……」

秋月は、さくらのアヌスが慣れるよう、じっくりと責め上げていく。
突っ込まれる時も引き抜かれる時も、表面に浮き出た無数の突起がさくらを責め苛んでいく。
抜き差しされるだけでもたまらないのに、秋月は抜きながらクルクルと責め具を回転させた。
イボで肛門が引っかかる感覚がいっそう強まった。

「あっ……そ、それ、やっ……あ、あくっ……あうむむ……んん……」

思わず大声が出そうになるところを、さくらは死ぬ思いで耐えた。
おぞましさに対する絶叫ならいいが、徐々に感じ取ってきている妖しい感覚への喜悦の声で
ないとは言い切れなかったからだ。
そう、さくらは責めをしつこく繰り返されるうちに、これがそれほどいやではなくなってきて
いた。
媚薬や浣腸、そして降魔の「食事」のせいで、腸内もアヌスもむずむずと疼いていたし、痛い
ような痒いような弱い刺激が、焦れったく続いていたからだ。
初めてアヌス棒を入れられた時は、お尻の穴が痛くてたまらなかったが、それが今では心地
よくなっていた。

さくらは、イボがアヌスや腸内を引っ掻くから、痒みが収まるせいだと思っていた。
確かにそれもあったが、今のさくらなら、痒みがなくても、この刺激を性の悦楽として感じ取
っていたかも知れない。
それほどに翻弄されてしまっていた。

「あ、あは……いや……あ、あくっ……」

さくらはもじもじと尻を振りだしていた。
責め口がのろくて焦れったいと訴えているようにも見える。
実際、本格的な尻責めはこれが初めてだというのに、さくらは極めて鋭敏な反応を示している。
秋月は、油が乾くとまた垂らし、さくらのアヌスが傷つかないように責めていた。

そのとろりとした油の感触も、さくらに性感をもたらす。
焦れったいほどにゆっくりだったアヌス棒の抜き差しが、だんだんと速度を上げてきた。
挿入する時は一気にずるずるっと押し込み、イボが粘膜を擦る感覚をいやというほど与える。
一方、引き抜く時はゆっくりとだが、アヌス棒を回転させながら抜いていく。
突き込まれる時とは別の刺激が肛門周辺と直腸に響き、さくらは腰と頭を振りたくって身悶
えた。

「あ、あう……あうう……うっ……あ、いや……あああああ……」

淫棒の抜き差しは何度も何度も繰り返された。
責められるさくらの臀部にじわっと汗が浮いてきていた。
その尻はもぞもぞもじもじと淫らなダンスを踊り始めている。
直腸深くまで刺し貫かれ、一気にそれを抜かれる時、さくらの胎内にぞわぞわっとした快感が
突き上げてくる。
責められているのは恥ずかしい排泄器官なのに、どうして陰部が濡れてしまうのか、わけが
わからなかった。
わかっているのは、媚肉を責められている時と変わらぬ肉悦を感じ始めていることだ。

「や、は……あああ……あ、あんっ……ううむ……ああ……」

さくらが徐々に艶っぽい反応を示してくると、秋月も思わずアヌス棒を思い切りこねくり回し
たくなったが、そこは何とか我慢した。
今は嗜虐願望はなるべく抑えて、さくらにアヌス廻りの快楽をしっかり覚え込ませることが
先決だった。

「あん、むう……ああ……」

秋月は、さっきより一回り太い棒に変えて肛門に突っ込んだが、さくらはびくりとしただけで
難なく受け入れていた。
そのアヌスの収縮性にも驚かされるが、それを苦痛を感じ取っていないさくらの感受性にも
感心した。
この女は、前よりアヌスを責める方が屈服が早いかも知れないと秋月は思った。

「あ……あ……も、もう……いや……ひっ……ああ……」

いやと言いながら、さくらの尻振りは収まらない。
責める秋月の手とアヌス棒に調子を合わせるように、淫らな動きを見せている。
よくよく観察すると、さくらのアヌスからねっとりとした透明な粘液が漏れ出ていた。
腸液だろう。
腸液を分泌しているとなれば、もう潤滑油を垂らす必要はないだろう。
さらによく見てみると、さくらは媚肉からもポタポタと蜜を溢れさせているのだった。

ますます秋月は昂奮する。
最初は直径1センチくらいだった責め具は、今では3センチほどのものになっている。
さくらが慣れてくるごとに、5ミリずつ太いものに変えていったのだ。
それでもさくらは苦痛を訴えたりはしなかった。
最初から太いので責めたり、ここまでじっくりと肛門を解さなければこうはいかなかっただ
ろう。
さくらは、むしろ太くなっていく責め具の刺激を愉しんでいるかのようにすら見えた。

「あううっ……あはっ……ああ……ひぅっ……あっ、く……」

ずぶずぶっと太い責め具が入り込むと、さくらはガクガクと腰を震わせる。
肛門と腸道を押し広げられる感覚がたまらないのだ。
それをクルクルと回しながら抜かれると、尻の痙攣が一層大きくなった。
イボイボがあちこちに引っかかり、粘膜を虐めているのだ。

責める秋月も、さくらの反応と肉体に辛抱できなくなってくる。
埋め込む時に、イボがアヌス周辺の粘膜を巻き込みながら腸内にめくり込まれていく。
引き抜くとイボが直腸の粘膜を引きずりながらめくれ上がってくるのだ。
その健康そうなさくらのピンク色の腸壁を見ているだけで、強引にそこへ肉棒を突っ込みたく
なる。
それを押さえ込むように、さくらに言った。

「ふふふ、感じて感じてしようがないんだね、さくらくん」

さくらはハッと我に返った。

「そっ、そんなこと……ありません……」
「無理とウソはいけないよ。だって、さっきまで引き締まっていたさくらくんのアヌスは今
じゃこんなに柔らかいよ」

秋月はそう言いながら、アヌス棒でさくらの肛門を抉り、内部をかき回した。

「それにオマンコはどうだい。自分でも気づいているだろう、もうびしょびしょになってるのが」
「そ、それは……」

実は気づいてはいなかった。
アヌスと直腸への刺激が鮮烈すぎて、そこまで気が回らなかったのだ。
しかし秋月に指摘されてみると、股間というより膣の奥が熱くなっているのを感じた。
じゅんっと奥から愛液が噴出しているのもわかる。
言われて気づいたが、もう内腿はねっとりとした蜜が滴ったあとがいくつも出来ていた。
淡い陰毛の先にも、淫液の滴が出来ている。
クリトリスも膣襞も充血しきって、ぱっくりと淫らに口を開いていた。
その奥で膣口がヒクヒクと蠢いている。

「こ、こんな……こんなことって……」

排泄器官を責めるなど、人の所業ではないと思った。
だが、その人ならぬ責めで悶えているのは自分だった。
肛門を責められ、恥ずかしい反応を露わにしている自分の肉体が、さくらは信じられなかった。
しかし、恥辱や羞恥を乗り越えたところでこみ上げてくる暗く甘美な官能に、さくらの若い肉体
は抗い続けることができなかった。

「ふふ……」

さくらに、己の恥ずかしい姿と妖しい快楽を気づかせると、秋月は再びアヌス責めを再開した。
徐々に棒を太くして、とうとう5センチほどのものを飲み込ませることに成功していた。
さくらのアヌスは、太さをものともせずに飲み込み、さらに深くへといざなっているかのよう
に蠢いていた。

「あああ……お、お尻……お尻、いや……ひんっ……ああう……」

5センチの太いものをずぶずぶと抜き差ししても、まったく抵抗を見せなくなったところで、
秋月はいきなりそれを全部抜き去ってしまった。

「あっ……」

肛門への刺激が突如なくなると、さくらの尻は慌てたようにアヌス棒を追ってぐぐっとせり
上がった。
意識した動きではないだろうが、さっきまでの快楽の続きを求めたのだろう。

「ああ……」

それを秋月に言われるまでもなく、さくらは恥じ入って呻き、泣いた。
これほどの屈辱と羞恥があるだろうか。
自分を騙した憎んでも余りある男に、排泄器官という恥ずかしい場所を淫らに責め抜かれ、
あろうことか肉悦を感じ取ってしまった。
挙げ句、責めが中断されると、もっともっとと言わんばかりに身体が動いてしまう。
こんなことで感じるようにされてしまったことと、責める男の前であさましい姿を見せてしま
ったことで、言いようのない羞恥を感じ、消えてなくなりたいと思った。

秋月はズボンを脱ぎながらさくらに言った。

「なんだい、そのお尻は。もっとして欲しかったのかい?」
「……」

答えられるわけがない。
正直に言ってしまえば、秋月に屈服したことになる。
といって、強がってウソを言うには、あまりにも肉体がとろけてしまっていた。

「頑固なんだね。ま、そこが可愛いところだが」

秋月はそうつぶやきながら、さくらの前に回った。

「!!」

花組の美少女は、目の前に突き出されたものを見て息を飲んだ。
若い男の股間には、隆々たる男根がそそり立っていたのだ。
ここに連れ込まれて以来、秋月には何度か犯されている。
しかし、直に彼のペニスを目の当たりにするのは初めてだった。
媚肉に挿入された感覚で、かなり大きいとはわかっていたし、秋月自身も大神より大きいと
言っていた。

(お、大きい……こんなに大きいなんて……)

さくらの心が震えた。
そもそも彼女は大神のそこだって、ろくに見たことはない。
恥ずかしくて、とても見られなかった。
また、大神はさくらに口で奉仕することも要求しなかった。
従って、じっくりと男性器を見たのは、ほとんどこれが初めて近い。
猛々しくいきり立つそれを、どう表現したらいいのだろう。
見るからに硬そうで、ビクビクと震えている。
真っ赤というか赤黒く、秋月のヘソにくっつきそうなくらいに勃起していた。
さくらには、それがまるで怒り狂っているかのように見えた。
そいつは女に中に挿入して射精しない限り、怒りが解けることはないのだろう。

「いやっ!!」

さくらは思わず顔を伏せて叫んだ。
秋月はあっさりさくらの後ろに回った。
口にくわえさせるようなことはしないらしいとわかり、さくらはひとまずホッとしたが、安心
してもいられない。
四つん這いの姿勢の後ろに回られたのだから、また犬の姿勢で犯されるということだ。
強姦者と向き合ったまま犯される正常位だっていやだが、獣の体位で凌辱されるのもたまらな
かった。
自分では何も出来ず、ただ男が欲望のまま動くからだ。

それまで肛門を愛撫され、アヌス棒で抉られる快感に悶えていた喜悦は冷め、また犯される、
大神を裏切ってしまう、という脅えと背徳で震えだした。
いやいやと盛んに腰を振るものの、秋月のたくましい腕で細腰を掴まれてしまうと、動くのは
尻だけとなり、かえっていやらしい姿になってしまう。
それでもさくらは尻を振るのがやめられなかった。
秋月はペニスをさくらの股間にすっ、すっとなぞらせ、彼女に悲鳴を上げさせて愉しんだ。

「い、いや……もういやです……しないで、お願い……」
「オマンコされるのはもういやなのかい? そうでもなさそうだったがね、昨日なんぞは。
けっこうさくらくんも気持ちよかったんじゃないかい?」
「いやっ」

さくらは激しく顔を振った。
無理矢理犯しておいて、ひどい言いぐさだった。
しかし、最初より二度目、二度目より三度目と、だんだんと肉体的快感が強まってしまっている
のは事実だった。
それを秋月に覚られてはならなかった。
知られてしまったら、彼はかさにかかって責めてくるだろう。
耐えきる自信は、嬲られ、犯されるごとにすり減っていった。
凌辱されるたびに、大神が遠くへ行ってしまう気がする。

「そんなにオマンコされるのがいやなら、やめてもいいがね」
「……」

一瞬、希望を持ったさくらだが、すぐに顔を伏せた。
この男は、さっきだって浣腸はやめてやると言いながら、それに勝るとも劣らない尻責めを
しまくったのだ。
性交するのはやめてくれても、代わりにどんな恥ずかしいことをされるか、わかったもので
はない。

「それなら、いよいよさくらくんの処女でもいただこうか」
「は……?」

何を言い出すのか、と思った。
処女も何も、拉致以来、秋月は何度さくらを犯したと思っているのだろう。
降魔の「食事」が終わるや否や、飽きもせず毎日毎日、この少女の身体を貪り続けてきたのだ。
だいいち、処女はすでに大神に与えている。
今さら何だというのだろう。
さくらの不思議そうな顔が見えたのか、秋月がにんまり嗤った。

「こっちだよ」
「こっちって……ああっ!?」

さくらは意外なところに熱を感じて仰天した。
秋月はさくらの尻たぶを割り、その奥に鎮座している後門にペニスをあてがっていたのだ。

「ま、まさか、秋月さん……」
「ああ、そうだ。僕はさくらくんの肛門をいただこうと思ってね」
「そ、そんな……そんなこと……」
「これまでさくらくんを抱いてわかったけど、どうも君らはあんまりセックスはしてなかっ
たみたいだね」
「……」

それはその通りだった。
お互い、肉体的な欲望がないわけではなかったから、セックスはしていた。
しかし両名ともに、肉の交わりよりはスキンシップとしての意味を大切にしており、裸で抱き
合っただけで性交そのものには及ばなかったこともあるくらいだ。
さくら自身、セックスよりもキスの方が好きだったし、身体をいじくり回されるよりも、手を
つなぎ、腕を組む方が好みだった。
秋月は蔑むように嗤った。

「ま、大神の野暮天じゃ、さくらくんを悦ばせるようなセックスは出来なかったろうね」
「お、大神さんの悪口、言わないでくださいっ」
「……」

この期に及んで、まだこの女は大神のことを思っている。
また秋月の胸に、めらっと嫉妬の炎が燃え上がった。

「まあいい。さくらくんの身体は僕が隅々まで開発してやるさ」
「いや!」
「きみの意志など関係ないさ。僕に抱かれるうちに、きっとよがりながら屈服するようになる」
「そんなこと、なりませんっ。バカにしないで!」
「ふふ、お尻を犯されても、そんな生意気が言えるかな?」
「やっ! ああ、いやあっっ!!」

浣腸、降魔、そしてアヌス棒と、尻責めのフルコースを受けたさくらのそこは、もうすっかり
ほころびており、腫れぼったくなっていた。
まだアヌスが痺れ切っているのだろう、完全に閉じきることが出来ないようで、小さく口を
開けっぱなしのまま、ヒクヒクと蠢いていた。

「や、やめて、そんなこと……ああ、怖い……」
「そうして怖がるさまが、本当に処女喪失の時みたいに見えるよ。ふふ、出来るだけ深くまで
入れてやるから、たっぷり味わってくれよ」

逃げようとしてよじり、膝を使って前へずり上がろうとするさくらの尻を掴むと、秋月はゆっ
くりと肉棒を埋めていった。
なにしろさくらにとって初めての肛門性交である。
慎重に布くに越したことはない。
これまでの肛門責めを見ても、この美少女は膣に勝るとも劣らない性感をアヌスにも持っている
ことは確実だが、秋月の巨根で引き裂いてしまっては意味がないのだ。
アヌス棒は最大直径3センチだったが、秋月のものは優にその倍くらいはありそうだ。

「い、いや……ううんっ……」

さくらは本能的に括約筋を引き絞った。
異物挿入を避けようとしているのだ。
秋月は、それをものともせず、じわじわと腰に力を入れていった。
少女の肢体がビクッと反応し、さらに全身が固まる。
悲鳴を上げてもがいたものの、肉棒は少しずつ確実に肛門の粘膜を突き破りつつあった。

「ひっ、い、痛いっ……だ、だめ……」

ここで秋月はさくらの尻から手を離し、細い腰へと持っていく。
腰は押さえ込んだが、臀部は解放したのだ。
途端にさくらは自由になった尻を振り立てる。
だが、さくらの肛門には半分ほど亀頭が沈んでいた。
さらに秋月は腰を押し込んできている。
そこでさくらが尻を振ったらどうなるか。
妨害になるどころか、むしろ秋月の挿入を助けることになってしまうのである。

「痛、痛い……あ、秋月さんっ……ほ、本当に痛いんです……お願い、やめ、ああっ」
「痛ければ少しは自分で考えろ。尻の穴を締めるんじゃなくて息むんだよ、排便する時みたい
に。そうすりゃもう少しスムーズに中へ入る」
「だ、だから……中には入れないでって言ってる……あ、ああっ……」
「もう少しだ、頑張れ。先だけ中へ入っちまえば、あとは楽なはずだ」
「く……ああ……さ、裂けるぅ……」

強引に押し広げられる肛門が軋んでいる。
さくらの可憐で控えめに見えたアヌスが、もう無理というところまで広がっていた。
そこで秋月はぐっと腰を送った。

「ぐううっっ!」

さくらは身体が引き裂かれたかと思った。
絶息したような呻き声を上げ、苦痛に脂汗を浮かべていた裸身が、ぐぐっと伸び上がった。

真宮寺さくらのアヌスは、見事にもっとも太い部分を飲み込んでいた。
ホッと息をついた秋月は、苦痛に震えるさくらの臀部を撫でながら、さらなる奥を目指して
肉棒を挿入していく。

「あ、ううむっ……あ、あ、あ……ま、まだ……まだ入ってくる……ぐぐ……」

さっきまでのアヌス棒などの比ではない。
それどころか、降魔の触手口よりも太いような気がした。
狭い腸管が中から引き裂かれそうだ。
直腸からミシミシと苦しそうな音が聞こえてくる錯覚を受けた。

「あ、あう、む……」

肉体、精神への、あまりの衝撃でさくらは失神しかけた。
それではつまらないと、秋月が、ポニーテールを引っ張って彼女を覚醒させた。

「あ、あう……苦しい……お腹……ああ……お尻が……痛い……あくっ……」

さくらは凄まじい異物感に呻いていたが、実際の挿入はスムーズだった。
亀頭を飲み込ませるのに少々手間取ったものの、そこが入ったあとは問題なかった。
散々嬲られたせいか、さくらのそこは腸液が滲むほどに分泌されていたし、降魔が吐いた粘液
もある。
お陰で、直腸内はぬるぬるで、秋月の挿入を助けていた。
ずぶずぶと奥へ奥へと突き込み、さらに腰をよじって、出来るだけ深くまで挿入した。

「どうだ、さくらくん。めいっぱい奥まで入れてやったよ」
「ああ、そんな……う、うう……」
「ふふ、これでさくらくんの肛門処女は僕がいただいたことになった。大神のやつ、さくら
くんが僕と尻の穴でつながったと知ったらどんな顔するだろうな」
「ひどい……ひどいです……」

排泄器官を犯されたというショックと汚辱、そして大神への申し訳なさで、少女は呻き、泣い
た。
腸管に感じ取れるたくましい肉棒が、お腹の奥までこの男に征服されたことを実感させた。
びっしりと詰め込まれ、無理にくわえさせられたアヌスはめいっぱい拡張されて、今にも裂け
そうなくらいにズキズキと痛んだ。
無意識のうちに、埋め込まれた肉棒をキュッと締め付けてしまう。

「も、もういや……抜いて、痛いんです……ううむ……」
「抜けだって? バカを言っちゃいけない。アナルセックスはこれからだよ。さくらくんに
はしっかり僕のペニスをお尻でも覚えてもらわないとね」
「いや……もういや……あっ!? ひっ、う、動かないで!」

秋月はゆっくりと腰を突き上げてきた。
そのたびに、深くまで埋め込まれた男の硬いペニスが、ぐっ、ぐっとさくらの腸壁を抉っていく。
太いものを飲み込まされ、痺れていたアヌスも、出入りする肉棒に摩擦され引き裂かれそうだ。
抉り込んでくる怒張で擦られ、肛門と直腸の粘膜が軋み、激痛が走る。
悲鳴を上げて泣き出したさくらの背筋に、びりびりっと電流が走った。
意識が白くなりそうなほどの衝撃が、苦痛の電流と腸の苦しさで薄まっていく。

責める秋月の方は、天にも昇る気持ちだった。
惚れた女が、すでにライバルのものだった悔しさも、その男すら触れていない処女地を犯して
やったことで解消された。
加えて、さくらの反応にも舌を巻いた。
初めての肛交で、痛がり苦しがるのは当然だ。
しかし、挿入はそう手間取らなかったし、いったん入れた後の身体の反応が素晴らしい。
まだ汚辱感はなくなるまいが、肉体の方はすっかり受け入れ態勢だった。
感じているところまではいってないものの、アヌスは妖しげな動きを示している。
秋月が突っ込むと、すっと括約筋が緩み、抜いていくとキュッと締まるのだ。
この状況下で、まさかさくらが自分の意志でやっているとも思えないから、これは身体が勝手
にそう反応しているのだろう。
素養は抜群というわけだ。
これでさくらを追い込んでいけば、充分にアナルセックスで快楽を享受できるはずだ。

「ぐううっ……いやあ……し、しないで……ああ、は、早く終わってぇ……」

徐々に速まっていくピストンで、四つん這いの乳房もゆさゆさと揺れる間隔が早く激しくなって
いく。
目も眩むような汚辱感で、さくらは口を閉じることも出来ずに呻いていた。
秋月の想像通り、官能どころの騒ぎではない。さくらの脳裏は、排泄器官を犯される羞恥、肛門
とペニスとの摩擦熱と苦痛、内臓をこねくり回される気色悪さが支配していた。

一方、責める秋月はさくらのアヌスの素晴らしさに酔い、知らず知らずのうちに動きが激しく
なっていく。
パンッ、パンッと、よく張ったさくらの尻たぶを腰で打ち付け、ペニス全体で直腸を味わう。
そして、ずるずるっと引き出して、さくらの内臓を直に見る征服感を満喫していた。
激しく責め立て、さくらのアヌスはぬめぬめとした粘膜をめくり出され、まためくり込まされ
ている。

さくらは、気を失いそうになっても、次々に突き込んでくる秋月のたくましさに目が覚め、呻
かされた。
尻から入れられた男根が、そのまま胃や腸を突き通し、口を飛び出してきそうな気すらした。

「ああ、いや……あ、うんっ、うんっ、うんっ、うんっ、ううんっ……ひっ、はっ、激しいっ
……」
「くっ、そんなにいいのか、さくら!」

一目惚れした女の肛門を犯している。
ライバル・大神の女を凌辱してやっている。
たまらない満足感に加え、彼女のアヌスが与えてくる収縮の強さが、秋月を舞い上がらせた。
もっともっとこの女を辱めてやりたい。
穢してやりたかった。

秋月はさくらの唇を奪おうと、ポニーテールを掴んで顔をこちらへ向かせた。
綺麗な額に髪がかかり、汗で張り付いている。
ひきつったような苦悶の表情だが、それが苦痛なのか、異形の快感のせいなのか、外見からは
判別不能だ。
頬は火照って薄紅色に染まり、口は半開きで熱い吐息を吐き続けていた。
何もかもが美しかった。
少女の可憐さを残したまま、成熟しつつある女の艶やかさが同居している。
羞恥極まる責めを繰り返され、肛門を犯され、悶え苦しむ美貌は凄絶なほどだ。
そのさくらの美貌を目の当たりにしてしまい、秋月はたちまち堪えきれなくなった。
キスどころではなかった。
だらしないと思ったが、彼の男の本能が爆発してしまった。

「く、くそっ、色っぱい顔しやがって! 出してやる! 出すぞっ!」
「ひ、ひぃぃっ!」

どびゅびゅるっ。
どぷぷっ。
びゅるるんっ。
びゅるっ。
びゅるっ。

粘っこい男のエキスがさくらの直腸を直撃した。
どろっとした熱いものを、びしゃっと引っ掛けられる感覚を腸内に得て、さくらはぶるるっと
痙攣した。
ショックだった。
口には出さなかったものの、さくらは自分が絶頂してしまったことはわかっていた。
大神とのセックスでも、毎回毎回イクわけではないというのに、秋月によって頂点まで導かれ
てしまった。
それも、恥ずかしい排泄器官を犯されて、である。

「あ……あ……そんな……お尻の中に出すなんて……あ、ま、まだ出てる……もう出さないで
……ああ、まだ……」

秋月は、もうぐったりしているさくらの尻たぶを掴み、射精の発作を繰り返した。

びゅびゅっ。
ぴゅるっ。
ぴゅく、ぴゅくっ。

未練がましく、全部出し終わるまでさくらから離れなかった。
射精が終わると同時に、さくらはガクッと力が抜けた。
秋月は黒髪を引っ張り、さくらの半身を起こして言った。

「どうだ、さくらくん。これできみのお尻は僕のものだ」
「ああ……。あ?」

さくらはピクンと反応した。
彼女の直腸奥深くに精子を吐き散らし、果てたはずだったものがムクムクと起き出したのだ。
今し方、たっぷりと精液を放出したばかりなのに、肛門に入っている男根は再び力を取り戻し
つつあった。

「こ、こんな……こんなことって……」

さくらの動揺に、秋月は嘯いた。

「まだまだ出来るよ、さくらくん。もしかして大神のやつは、きみを抱く時、いつも一回しか
しなかったのかい?」
「……」
「図星か。まあ、あいつはそんな程度だろうな」
「大神さんの悪口は言わないで!」
「ふふん。さっきまで僕にお尻を掘られて泣いていたくせに、もうそんな生意気を言うのか」
「ああ……」
「大神のことなんざ、綺麗さっぱり忘れさせてやるさ。さくらくんの肛門は素晴らしくおいしい
し、いくらでも出来そうだ」
「ああ、いや!」

さくらは怖くなった。
自分のお尻に入り込んだ異物は、秋月の言う通り、またしてもたくましさを取り戻している。
ぐぐっと大きくなり、さくらの腸管を内側から拡げていく。
いやがって腰を振り、尻をよじれば、挿入されたペニスはその刺激でさらに太さと硬さを増して
いった。

「さっきは、さくらくんのお尻を初めて犯した感激でさっさと出してしまったけど、今度はたっ
ぷり愉しませてあげるよ」
「いや……もういやああっっ!」

秋月はゆっくりと腰を突き上げ始めた。

─────────────────

神奈川県横浜の神崎邸。
唐突にすみれが帰ってきたので、家令の宮田などはかなり驚いていた。
すみれの気まぐれには、彼女がまだ在宅していた時分から慣れてはいたが、前触れも何もなか
ったから無理もない。
叉丹との闘いの最中、新光武開発の資金援助を求めて顔を出して以来である。

もっとも、宮田は知らなかったが、父親の重樹にはあらかじめ連絡はしてあった。
ケンカ別れのように出て行ったわけではあるが、両親はすみれのことを愛していたから、無論
歓迎した。
それに、前回の資金援助要請と財界からの援助を根回しを頼んだ時に、すみれの方もわだか
まりはほとんどなくなっていた。
ハタでどう見えるかはともかく、すみれと父親の関係は悪くなかった。

「防疫給水部?」

居間でソファに腰掛けた重樹は顔をしかめた。
対面に座ったすみれは、紅茶のカップを持ったまま聞いた。
重樹は民間人だが、霊子甲冑の開発企業ということで、それなりに軍の重鎮とのつき合いはある。
その部隊を知っているかどうかはともかく、関係者に面識がある可能性はあった。

「ええ。お父様はそれがどんな部隊がご存じですの?」
「……。この部隊がすみれたちに何か関係あるのかね?」

父は娘の質問には答えず、別の問いを出した。
すみれは、こうした腹のさぐり合いはあまり好きではないから、ずばり答えた。

「あるかないかはまだわかりませんわ。でも、今帝撃で起こっている事件に関連している可能
性がありますの」
「……そうか」

重樹は、娘の真剣な眼差しを受けて、諦めたように顔を振った。

「防疫給水部というのは、陸軍の各師団にある部隊だ。文字通り、防疫──つまり戦場での
疫病対策と、給水──飲料水の補給が主な仕事だ」
「そんな部隊が必要なんですの? 軍医がいるでしょうに」
「いや、必要らしいよ。日本という国は、綺麗な水がびっくりするほど豊富にあるし、明治
以来、近代国家を目指して衛生関係にも力を入れてきた。だから、江戸時代ならともかく、
今の日本はコレラだのチフスだのが蔓延しているわけではない。しかしね、発展途上国は
そうもいかんのだ」
「……」
「真水のない地域はもちろん、水はあっても汚れていれば飲めないだろう。濾過が必要になる
な。疫病が流行りやすい不潔な環境も多い。そういった場所は戦場になった場合のためなんだ
よ。逆に言えば、国内に配備される師団にはいらない、ということになる」

それが何なのだろう。
なぜそんな部隊出身者がふたりも帝撃に来るのだ。
重樹は続けた。

「防疫給水部というのはふたつあってな、ひとつは今言ったように師団内にあるものだ。規模
も小さい。もうひとつは軍直轄の部隊だ。おまえが持ってきた軍歴書を見ると、ふたりとも
軍直轄の方らしいな」
「軍の直轄って……」
「おまえは知らんだろうが、石野中将という男がいる」
「石野?」

すみれにとっては、もちろん初めて聞く名だ。

「この男は軍医で、石野式濾過装置というのを発明して、一躍名を売ったのだ。それまで軍で
使っていた濾過器というのが甚だ大きくて、持ち運びに不便だったのだな。重たくて使いにく
く、戦場向きではなかった。おまけに効果も薄い。そこで石野中将は、小型で軽便なタイプを
開発した。それで軍上層部に注目されるようになった」
「……」
「ところがな、この石野というのが野心家というか俗物でな。出世欲、名誉欲の塊のような男
だった。防疫給水部を軍直轄の組織にしたのもそうだ。もちろん、そこの最高責任者に収まっ
ているのは石野中将だ」

米田とはまったく別のタイプの軍人らしい。
すみれの見る限り、米田は昇進だの勲章だのには、まるで無頓着に見えた。
大神も同じだったろう。

「今は経理部の管轄下になっている軍医部門を独立させようとしているらしいな。そこで陸軍
大将にまで出世して、帝国陸軍初代の軍医総監になるのが夢なんだろうよ。今では統制派……
といっても、おまえにはわからんだろうし、関係もないが……まあ軍上層部に媚びを売ってる
最中だ」

聞いているだけで厭な男である。
しかし、父がそんな男を詳しく知っているのが解せなかった。

「お父様はどうして石野中将のことをご存じなんですの?」
「面識があるんだ」

どうも石野は神崎重工へ何度となく訪れたらしい。
重樹は二度会っただけだが、資料室や研究開発部へ入り浸り、あれこれ聞き回っていたことは
耳に入れていた。
すみれにはわけがわからなかった。

「どうして軍医が神崎に興味を持つんでしょう?」
「霊子甲冑だよ」
「霊子甲冑……ですって?」

すみれは呆気にとられた。

「どういうわけか知らんが、霊子甲冑開発の資料を洗いざらし調べていたらしい。初回はひとり
だったが、以降、部下を連れてきたということだからな」
「部下?」
「ああ。いつも同じふたりだったそうだがね。ん? そういえば……」

重樹は何か気づいたようにふたりの軍歴書を眺めた。

「……このふたりかも知れんな」
「本当ですの?」
「実際に会ってはいないから断言できんがね。確か、若い陸軍中尉と女性士官だったとは聞い
ている……」

それでは間違いないだろう。
時期的にも、秋月や杏花が防疫給水部に所属していた頃のはずだ。
しかし、軍医部門が霊子甲冑に関心を持っても仕方がないだろう。
となれば、やはり搭乗員の霊力に着目しているのではないだろうか。

そうだとすると、これは大がかりなことになる。
目下売り出し中の陸軍将官とその部隊が相手ということだ。
迂闊には動けない。
すみれが父を見ると、重樹も何か考えている様子だった。

「……そのふたりが一緒に帝撃へ来たとなると……やはり霊力絡みと見るべきだろうな……」
「お父様は……軍医と霊力の関係をどう見ます?」

神崎グループ総帥も首を捻りながら言った。

「わからんね。ただ、おかしな噂を聞いたことはある」
「と言いますと?」
「ああ……」

重樹は、いかにも「困った」というような顔で言う。

「よくは知らんがね、知り合いの将官から聞いたんだが、石野中将は「不死身の兵隊」を作ると
嘯いているんだそうだ」
「不死身……ですって?」

そんなことがあるだろうか。
霊力は確かに優れた能力ではあるが、だからと言って不死身になるわけではない。
だからこそ、さくらの父親である真宮寺一馬大佐は対降魔戦で戦死しているのだ。
霊力を持った者から霊力を奪っても──そんなことが可能だとは、すみれには思えないのだが
──、不死身にはなれまい。
それをどう吸収するのか不明だし、出来たところで死なないわけがない。
娘の不安そうな顔を見て、父親はおどけたように言った。

「ま、そんなことは気にする必要はないと思うがね。絵空事だよ」
「絵空事……」
「決まってるだろう。どんなに鍛えたって人は人だよ。まあ、霊子甲冑に生命を与えることが
出来れば、不死身に近くはなるかも知れんがね」
「出来るんですの!?」

思わず立ち上がったすみれに、重樹は笑って言った。

「出来るわけがあるまい。いかに石野中将でも、機械に生命を植え付けることは出来まいよ」

笑う父親を、すみれは一抹の不安を湛えた顔で見つめていた。




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