「……」

翌日、マリアはバレンチーノフの執務室から移された。
地下室である。
ドアは鉄製で、かなり頑丈そうだ。
かなり広いが、コンクリートが剥き出しで、装飾性はまったくなかった。
よく見ると、大きな換気扇がふたつも壁にはめ込まれている。
壁際にスチール製の棚が並び、ごちゃごちゃと訳のわからぬ道具や部品らしいものが押し込まれている。
本棚となっているものもあるが、ここも無造作に本やファイルが積み上げられていた。
床はリノリウムで、排水溝がいくつもついていた。
ベッドが部屋の中央にしつらえてあるが、これはストレッチャーに近いものだった。
それでも一応、クッション部分はあり、寝ていて背中が痛くなるようなことはなさそうだ。
しかもサイズは大きく、クイーンサイズくらいはあるだろう。
その簡易ベッドは、折りたたまれたものがいくつも部屋の隅に寄せられている。

マリアは、窮屈な格好でそのベッドの上に転がされていた。
四つん這いに──正確には三つん這いである。
両膝と顔で身体を支えているのだ。
手枷と足枷がセットになっている皮の拘束具でがっちりと固定されている。
手首に嵌められた手枷と、足首を拘束している足枷の間を数センチのチェーンが繋いでいた。
そのままうつぶせにされているので、マリアは顔をシーツに押しつけて膝を立て、尻を持ち上げるという羞恥極まる格好にされている。
完全に四肢拘束されていた。
膝は30センチほどの間隔で開かされていて、臀部の谷間がくっきりと晒されている。
そこに外気の当たるうそ寒さが、この上なく恥辱的な姿にされていることを自覚させた。
マリアが身体をもぞつかせていると、唐突にドアが開いた。

「……!!」

バレンチーノフかと思い、身を固くしたマリアだったが、そこに現れたのは彼以上に予想外の相手だった。
マリアの切れ長の目が、驚きで大きく見開かれる。

「……トッド!」

忘れたかった忌まわしい記憶が蘇る。
マリアが最初に集団レイプされ、徹底的に犯し抜かれた時にいた男。
まだ処女だった彼女の官能を強引に引きずり出し、何度となく屈辱の絶頂にまで到達させた黒人。
トッドを見た途端、マリアの胸にふつふつと怒りが込み上げてくる。
その口から出た言葉は、怨嗟の炎で燃えるように熱かった。

「きさま……、生きていたのか」

あやめと協力してレイノルズ・ファミリーを壊滅させた際、彼はたまたまその場にいなかったのである。
昨日のジョンも同じで、マリアたちはアジトを襲った際にも、いちいち全員いたかどうかまでは確認していない。
皆殺しが目的ではなかったし、紐育を脱出するのが先決だったからだ。
死んだと思っていたバレンチーノフでさえ生きていたのだから、当然、他にも生き延びた者はいたのだろう。

しかし、選りに選ってこの男が生存し、しかもこうしてまたマリアの前に出てくるとは思いもしなかった。
年齢は40歳前後と思われるが、若い頃から剃り上げていた頭部には髪は一本もない。
ギョロリとした目、大きな鷲鼻に分厚い唇、たくましい猪首。
大きく腹が突き出ており、ビヤ樽体型なのだが、体つきはがっしりとしている。
腕も脚も太いが、贅肉ばかりでなく鍛えられた筋肉も鎧のようにまとわりついていた。
ボディビルダーのような体型ではないが、充分にマッチョである。
綿のスラックスに薄手のジャケットを引っかけただけのファッションも昔通りだった。

トッドはにやにやしながらマリアの拘束されているベッドにドンと腰を下ろした。
その衝撃でマリアの身体が軽く弾む。

「しかしよお、今朝、バレンチーノフの旦那に聞いたが、半信半疑だったんだよ。あのマリアがまた紐育に来ているなんてな」
「……」
「それがどうだ、本当にいやがる。しかも、こんな色っぽい格好でな」
「うるさい! きさま……、きさまも死んだと思っていたのに……」
「そう簡単に死んでたまるかい」
「こ、殺してやる……、きさまだけは絶対に……!」

ある意味、バレンチーノフよりも個人的な恨みは大きいのかも知れない。
確かにバレンチーノフにはロシアでもここでも裏切られ、挙げ句、最愛の男まで巻き込まれて死んでいる。
そういう意味では最大の仇敵ではあるのだが、実際にマリアに対して外道な振る舞いを仕掛けてきたのは、このトッドなのである。
最初のレイプはもちろんのこと、マリアが「練れる」まで、トッドたち「プロ」がその肉体を仕込んでいったのだ。
マリアがレイノルズの女となるまでは、娼婦時代も含めて、ことあるごとにトッドに犯されていたのだ。

女としてのプライドを完膚なきまでに破壊され、いやというほど恥辱を味わわされた。
そしてその反面、性の快楽や喜悦、官能の奥底まで覗かされ、その身体をトッド好みに染められていった。
殺したいほどに憎んでいた黒人に犯され、この世のものとも思われぬほどの快楽を与えられ、その絶頂を晒して死ぬほどの屈辱を何とも噛みしめたものだった。
同じ組織だったため殺すわけにもいかず、またマリア同様、このトッドもなぜかボスのお気に入りだったため、どうにもならなかった。

マリアはその頃からある意味で狡猾であり、レイノルズの女にされてしまった不運や哀しみを逆手にとって、自分の立場を強化するのに利用していた。
すなわち、ボスとの寝物語の中で、邪魔な連中を排除するよう遠回しに要請したり、彼らに不利な情報を流して粛清させたりしていたのである。
しかし、トッドを始め、マリアを最初に輪姦した連中に対してはそれが出来なかったのだ。
レイノルズの情婦となることでトッドに抱かれることはなくなったし、それ以降はマリアに裁量権がかなり与えられたため、トッドのことなどさほど
気にしないようにはなっていた。

ただ、マリアの恨みが消えることはなかった。
だから最後の戦闘の時、もしトッドがいたら、マリアは「最後の殺し」を行なっていたはずである。
とはいえ、あの混乱の中、いちいちこの黒人を捜してまで殺す余裕はなかったし、どうでもいいと思っていたのも事実だった。

そのトッドがまたマリアの前に現れた。
黒く厚ぼったい手のひらをマリアの尻に這わせながら言う。

「それにしてもすげえ身体になったもんだな、おい。乳も尻も、前より一回りはでかくなったな。とてもジャップとの混血とは思えねえぜ。肌もあの頃は
ぴちぴちだったが、今はしっとりとおとなの肌になってやがる」
「余計なお世話よ、触らないで」
「この俺に対してよくそんな口が利けるな、マリア。おまえを「女」にしてやったのは、どこの誰だか忘れたのか?」
「……」
「おお、おっかねえ。くくっ、その気の強そうなツラを見てると思い出すぜ。最初は散々抵抗して暴れやがっても、俺さまのものを突っ込まれちまえば
すぐに喘ぎ出したもんだ」
「……あの頃と一緒にしないで」
「生意気なところは変わらねえな。だが、そのうまそうな身体がすぐに俺を思い出すだろうぜ」
「どうかしらね。昨日もバレンチーノフが似たような
ことを言ってたけど、結局は……」
「一緒にすんな。あの旦那も女好きだが専門外だよ、俺とは違う」
「……」

確かにトッドは女のプロだった。
その体力や強面を利用しての恐喝など、ケチな仕事もしてきたが、女を仕込む技巧によって売春組織の元締めでもあった前ボスのレイノルズから
信頼を得ていたのだ。

「勇ましい格好だな、マリア。そのでかい尻で俺を張り合おうってのかい?」
「……」

バレンチーノフと同じだ。
言葉でもマリアを辱めようというのだ。
その誘いには乗らない。
どんなに反論し、抗っても、結局は好き放題されるのだ。
何しろ相手はこっちの決定的な弱みを握っているのである。
最後には従わざるを得ない。

そこでマリアも考えた。
あの頃もそうだったが、ヘタに抵抗しても男をかえって男を悦ばせるだけになる。
ならば、こちらは徹底的に冷たく対処に反応しなければいいのだ。
あの頃だって、トッドはマリアがぐったりするまで責め抜いたものだが、失神したり、疲労困憊して反応が鈍くなると、そこで終わったではないか。
こいつら変態は、女が抵抗したり反応したりすると大喜びで虐めるが、醒めたり気を失ったりすれば興味を失うのだ。
最初から失神したかのような無反応を示せば、トッドもマリアへの執着が失せるのではないだろうか。
そう決心したマリアは、睨みつけていた視線を黒人から逸らすと、前を向いて目を閉じた。
覚悟が決まったのである。

一方のトッドは、マリアの見事な裸身にみとれていた。
輝くような白い肌だ。
しかし白人のそれとは微妙に違う。
ミルクを溶かし込んだような、あるいはペンキで塗りつぶしたような白さではなく、どちらかというと色素が薄いという感じだ。
「透けるような白い肌」という表現になると思う。
皮膚が薄いのだろう。
それだけに、感じ始めたらすぐに肌がピンク色に染まってくるのだ。
臀部はぷりっと突き出され、まるで「犯して欲しい」とでも言っているかのようだ。
四つん這いになっているせいで、乳房が重たそうに吊り下がっている。
真っ白い乳房の先っぽに、薄い鴇色をした乳首が官能的に息づいている。
トッドは、マリアの香しい体臭を鼻いっぱいに吸い込みながら、顔をその胸に近づけていく。
そして舌を伸ばしてそっと乳首を舐め、軽く口に含んでちゅううっと強く吸った。

「あっ……!」
「おう、可愛い声だ。そのハスキーな声でよがってくれよ」
「……」

乳首を吸われる感覚につい声を上げてしまったマリアは、悔しそうに顔を背け、再び無反応を装った。
今の不意打ちだったからだ、もうあんなみっともない声は出さない。
そう誓うのだが、乳首を軽く舐められただけで背筋に強い電流が走ってしまっている。
この上、さらにねちっこく責められたら、どこまでよがらず耐えきれるだろうか。

トッドは余裕綽々で、唾液で濡れ光る乳首を指で転がしつつ、反対の乳首をまた強く吸う。
豊かに張った乳房の感触を愉しみつつ、乳房に顔が沈むほどに唇を強く押しつけて、舌先をゆっくりと旋回させながら乳首を嬲る。
唇で軽く挟み、舌先でコロコロと転がし、指で軽くひねってやると、マリアの乳首は見る見るうちに硬くなっていく。
トッドは見た目は粗暴だし、性格的にも野蛮なのだが、ことセックスに関しては繊細で、驚くほどの根気を見せる。
そのギャップに大抵の女は戸惑い、狼狽え、彼の術中に嵌っていくのだ。

マリアは、感じやすい乳首からの快感に揺さぶられ、その結果を表に出すまいと堪えている。
それでも、執拗で粘着質な愛撫を受け続け、乳房を大きく波打たせていく。
マリアの反応が手に取るようにわかるトッドは、にやっとしながら囁きかけた。

「もう感じ始めやがったか。相変わらず敏感な身体しやがって」
「……」

乳首を弄んでいた手は乳房全体をじんわりと揉みあげている。
黒い手がたぷっ、たぷっとゆっくり揉み込み、白い乳房にトッドの手の黒さが染みこんでいくかのようだ。
乳房だけでなくなめらかな腹を撫で、揉み、ヘソを愛撫し、やがて下半身へも進んで行く。
鳥肌を立てながら震えていた腰を撫で、そのまま腿を擦り、とうとう股間に潜り込んできた。

「っ……!」

声こそ出さなかったものの、さすがにそこをいじくられるのはイヤなのか、マリアは身を捩ってトッドの手から逃れようとした。
そんなことで諦めるほどにトッドはあっさりしていない。
柔らかいマリアの腹を揉んでから、すっと手を股間に伸ばす。
指先に乾いた柔らかい手触りの陰毛を感じる。
当然、まだ濡れてはいなかった。

「んっ……」

太い指が、媚肉の亀裂に潜り込んでくる。
そっと差し込まれた指は、じっくりと花弁を左右に寛げていった。
そしてその頂点にある小さな女芯を探り出すと、それを引き出すように摘んでやると、マリアは歯を食いしばり、脚を踏ん張ってその感触に堪え忍んだ。
それでも、執拗に肉芽をいびられると、マリアの食いしばった唇から抑えた呻き声が漏れ出てきた。

「んんっ……く……」
「遠慮しないでよがっていいんだぜ。おまえの弱いところはみんなわかってるんだ、我慢できるわけがねえ」

トッドは片手でクリトリスを嬲りながら、もう片方の手で白い乳房を搾るように揉み上げていった。
指先の繊細な動きと、女の官能を絶妙に刺激するタッチによって、電流のような快感が背中から脳天にまで流れていく。
マリアの肉体は徐々に女として目覚めさせられていった。
さっきまでの強がりはどこへ行ったのか、襲い来る快感に堪えきれず、マリアは身体を小さく震わせていた。
もう一押し、もっと強く、あるいは別の性感帯を責められれば、たまらず声を上げてしまいそうだ。
さりさりとした乾いた手触りだった恥毛からも、僅かにぬめりが感じ取れてきた。

トッドが手を離すと、マリアはぶるっと裸身を震わせ「ああ……」と小さくため息をついた。
まだ腰が小さくうねり、乳房が揺れ動いている。
身体の奥の官能に火をつけられ、その熱がまだ冷めないのだ。
なのに黒人はマリアから手を引き、愛撫をやめてしまった。マリアはホッとしたような、物足りないような思いで俯いている。
トッドの方を向いたら、睨みつけるのではなく、切なそうな顔になってしまいそうだったからだ。

「ひゃっ!?」

マリアは突然に背中へ冷たい感触を得て驚き、奇妙な悲鳴を上げてしまった。
びっくりして振り返ると、トッドがガラス製の薬ビンのような小さな入れ物から、何か液体状のものをマリアの背に垂らしている。

「な、何をしてるの!」
「ん? 少し冷たいだろうが我慢しろ、すぐに熱いくらいになるぜ」
「だから何をかけてるのよ!」
「そうきゃんきゃん喚くなって。心配すんな、ヤクだの毒だの、そういう危ねえもんとは違う。オイルだよ」
「オイル……?」
「ああ、ただのオイルだ。つっても、食用油とは違うがな。でも無害だ、舐めてもな」
「……」

意味がわからなかった。
そんなものをかけて何をするというのだ。
トッドの目的は言うまでもなくオイルを使ったローションプレイだったが、この時代、そんなものはまだ一般的ではない。
マリアが知らなくても当然だった。
しかし、わけもわからず妙なもので身体を汚されるのはゴメンである。
マリアは身体を揺すって嫌がった。

「やめて! おかしなものは使わないで!」
「じっとしてろ、すぐ終わる」

トッドは太い腕でマリアの腰を抱えて押さえ込むと、ひとビン分をその背中に零し終えた。
綺麗に伸びた正中線の窪みにオイルが溜まっている。トッドは大きな手のひらを使い、それをマリアの白い肌に擦り込んでいく。
男の手はがさがさしているか、あるいは滲んだ汗でベタベタしているかだったが、オイルを使っているためか、黒人の手が滑らかにマリアの肌を滑っていく。

「くっ……よせ……」

ぬるっとした液体を塗りたくられる気色悪さと同時に、マッサージされる心地よさが混じり合う。
その不可思議な感覚にマリアは戸惑った。
実際、トッドはマッサージのようにマリアの肌や肉をさすり、揉んでいた。黒い手のひらが脇腹の肉を腋窩へ寄せ集めるように、グッと押し上げる。
そのまま何度も揉みほぐしてから、その手を胸へ回して乳房を愛撫し始めた。

「っ……」

力強く揉まれているのだが、ぬるっ、ぬるっと手から乳房の肉が逃げていく。
その感覚に狼狽し、マリアはつい息んで鼻から息を漏らした。
それでも「声を出すまい」と、必死になって唇を噛んでいる。
トッドは乳房を下から上へ持ち上げ、搾るように揉みほぐしている。

「でけえ乳になったな、おい。揉み心地も抜群だぜ」
「く……」
「ティーンの頃からいい身体だったからな。それから5年……、6年か、予想通りにボインになってやがった」
「……っ!」

羞恥の言葉を浴びせられ、顔を背けていたマリアだったが、首筋にトッドの生暖かい呼気を感じ、背筋がゾクリとした。
なおも乳房への愛撫は続き、丸い肉塊全体をなぞるように揉みほぐしている。
指が円を描きながら乳房の裾野から頂点へと進み、乳輪をなぞっていく。

「んっ……くっ……!」
「いいんだろ、マリア。我慢しねえでいいんだぜ、おめえは昔っから感じやすかったからな」
「……」

誰が感じてなどやるものか、とマリアは思うのだが、乳房から来る刺激は間違いなく快感であった。
トッドの執拗で粘着質な愛撫を受け続けていると、つい紐育時代に彼から責められたことを思い出してしまう。
あの時はオイルなど使わなかったが、やはり粘っこくマリアの若い肢体を嬲り、快楽の渦に沈め込んでしまった。
思い出すと、マリアの腰の奥がきゅんっ締まり、カッと熱くなってくる。

(だ、だめ……思い出しちゃ……)

心ならずも性の頂点を味わわされ、最後には受け入れて、何度も気をやらされた。
あの屈辱は忘れたことはない。
しかし精神的な屈辱もそうだが、肉体的な愉悦も忘れていなかった。
長いことセックスとは無縁の生活だったから、そんなことは忘却の彼方に追いやったと思っていたのだが、甘かった。
手のひらが、軽く乳首を擦っただけで、マリアは仰け反った。

「あっ……!」

びっくりするほどに感じてしまった。
ただの愛撫でなく、オイルを使ったマッサージということもあって、余計に感じやすくなっているようだ。
しかし、乳首へはそのワンタッチだけで、あとは乳肉全体や乳輪周辺をじんわりと指圧し、揉みしだくだけである。
ホッとしたような、物足りないような切なさを感じ、マリアはつい腰を小さく捩る。

いつしか全身がカッカと熱くなっている。
トッドの言う通り、オイルが熱を持ってきていた。
身体をいじくられることでマリアの身体自体も熱くなっているのだろうが、オイルはそれ以上に高温だった。
どういう理屈なのかわからないが、恐らくは身体に擦り込んでいるうちにオイル自体に加温されえてきているのだろう。
その熱が身体の奥まで染みこんで来てくるのがわかった。膣が、腰の奥が熱かった。
心ならずも濡れてきてしまう。
淡い恥毛が湿り気を帯び始めているのは、汗のせいばかりではなかった。

「う……あ……っ」

トッドの熱い手が下半身にまで伸びてくると、マリアの裸身がびくりと反応する。
嫌悪心からだとは言い切れなかった。
トッドの手が脛やふくらはぎにかかり、入念に揉みほぐしていく。
身体にかかったオイルだけでは足りないのか、追加のオイルを手のひらに垂らしてから、またマリアの白い肌に塗り込んでいった。
オイルのぬめりのせいで、手のひらはふくらはぎから足首まで一気に滑っていく。
徐々に手が腿にまで上がり、やはり滑るように手のひらが揉んでくる。
指先に力が入り、太腿に食い込ませながらグーッと往復してマッサージしていた。

マッサージ効果で筋肉がほぐれ、緩んでいく。
太腿の付け根を指でぐっと押されると、びりっとした刺激があり、少し痛い。
気持ち良いと言えば気持ち良かった。
相手がトッドでなく、目的が淫らなことでなければ、きっと心地よく身を任せていたに違いない。
ここでもトッドは、媚肉やクリトリスには触れず、その周辺のみにタッチしていた。
割れ目の付近を指でなぞったり、手のひらで尻たぶを揉むようなことはしたが、決して膣に指を入れたり、アヌスに触れたりはしなかったのだ。
ここでも焦らされ、じりじりとマリアの身体に欲求が溜まっていく。

「うっ……んん……ふっ……く……」
「つらそうだな、マリア。気持ち良いなら声を出せや」
「気持ち良くなんか……うっ……な、ないっ……くんっ……」

トッドが何を言っても反応しないと誓っていたのに、いつの間にか彼の言葉に応えるようになっている。
身体の震えや悶えも激しくなりつつあった。
少しでも声を出して体内の熱を放出させ、身体を揺すって溜まった快楽を逃がさないと、官能に引きずり込まれそうになるからだ。
と、またトッドは下半身から上半身へと責めの方向を改めた。

「うっ……ああ……」

マリアの背に覆い被さってきたトッドの手が、後ろから乳房を鷲掴みにする。
むにむに揉まれたかと思うと、むにゅうっと強く握られる。
指の隙間から乳の肉が溢れ出してきた。
同じように乳房を揉まれていても、今までと違うオイル越しの感覚に、マリアはぞくぞくするような快感を覚えた。
トッドはマリアの乳房、大きく開かせたり、逆に寄せ胸したりして弄んでいる。
瞳がとろんとしてくる。
頬も白磁の色を失い、仄かなピンク色に染まっていた。

「んうっ!」

マリアが顎を上げ、顔を仰け反らせた。トッドの指が、ちょんと乳首に触れたのである。
信じられないような快感だった。
散々乳房を愛撫されているのに、ほとんど乳首には触れてくれなかったから、そこは驚くほどに敏感となっていた。
マリアの裸身がうねり、尻を少し振りながら、上半身を下げると、ちょうど胸の下にトッドの手があったらしく、手のひらに乳首がまた触れた。

「んんっ……!」

またぴりっとした痺れとともに、甘く妖しい快感が突き抜ける。
マリアはそっとトッドの方を窺うものの、その手はそのまま動かなかった。
そこはかとなく屈辱を感じつつも、マリアは自分の胸を揺することをやめられなかった。
重たそうな乳房が徐々に下がり、下にある手のひらに乳首が当たる。

「っ!」

ぞくりとする愉悦が走る。
マリアは羞恥を噛みしめながら、そのまま乳首をトッドの手のひらに押しつけるようになっていた。
手のひらで乳首を潰し、そのまま乳房を動かして摩擦感を得ている。
マリアの唇からは、あえやかな喘ぎさえ漏れ出るようになっていた。

「くっくっ、もう我慢できなくなったのか。自分からでかいおっぱい押しつけやがって」
「……!」
「おまえは乳首でオナニーしてるのと一緒だぞ、しかも俺様の手を使ってな。わかってるのか?」
「く……」

マリアの動きがピタリと止まる。
屈辱を噛みしめながらも、また自然に腰がうねってきた。
焦れて焦れて気が狂いそうになってきた時、唐突にトッドの指が乳首を摘んできた。

「ああっ!」

マリアは、思わず大きな声で喘いでしまった。
その時、トッドと視線が合い、その目が嘲るように嗤っているのを見て、悔しそうに顔を背ける。
しかしトッドは、ここぞとばかりに乳首を集中的に責め込んできた。
乳首の回りを指先でくるくるとなぞってくると、まだ乳輪しか触れていないのに乳首を直接いじくられているような快感がマリアを襲ってくる。
そして乳首を指でこねくられ、摘んで引っ張り上げられると、たまらず顔を反らせて喘いだ。

「あうっ! はああっ……!」
「気持ち良いのか、え、マリア」
「くっ……」

それでもマリアは、トッドの問いかけにぶるぶると激しく首を振りたくった。
認めたくなかったのだ。
マリアの細い髪が宙を舞い、甘い香りを周囲に振りまいている。

「んっ、んんっ……くんっ……!」
「んうううっ……はんっ!」
「……っ、あ……くううっ……」

それからというもの、20分近く乳首と乳輪ばかり責められ続け、もうマリアは足腰ががくがくになっていた。
快感が込み上げるたびに全身を息ませて耐えているのだ。
それが長時間続けば、腰が砕けるのも無理はなかった。
立てた膝はガクガクと震え、今にも倒れてしまいそうになっている。
ついトッドの方に身体を倒してしまうと、彼は意地悪く身体をずらし、マリアはそのままベッドに倒れ込んでしまった。

トッドは横倒しになったマリアに手を掛け、身体をぐるんとひっくり返した。
マリアは左右の手首と足首をまとめられた格好のまま、仰向けにさせられてしまう。
拘束されたM字開脚である。
その正面にトッドがいた。
トッドに股間をまともに見られてしまう姿に、マリアは真っ赤になった顔を必死に背けた。
それでも黒人の視線がどこに行っているのか、痛いほどにわかった。
媚肉にも肛門にも、いやらしい男の視線を感じてしようがなかった。

(く……、見られてる……、ト、トッドなんかに、あそこを……いや……)

狼狽するマリアを嬉しそうに見ながら、トッドは自分の手にオイルをたっぷりと取っている。
その手でマリアの足の裏、指の股に指や手のひらを滑り込ませていった。

「くっ……!」

ぬるんっという感じで、指の股にトッドの指が通ると、マリアは思わずギクンと反応する。
足の裏を手のひら全体で撫でられると、もうじっとしていられなくなった。
くすぐったいことはくすぐったいのだが、気持ち良いと言えば気持ち良い。
ぞくぞくするような快感と裏腹のこそばゆさだった。
時折、足の甲や足首をマッサージされるとリラックスしてくる。
そしてまたくすぐったいところを責められるのだ。
頃合いを見計らい、トッドの手が、足首からふくらはぎ、そして腿まで一気にぬるーっと勢いよく滑ってきた。
指先がその付け根に触れると、マリアは「あっ!」と小さく悲鳴を上げて身を捩った。直後、顔が真っ赤になる。
腰を上げてしまっていたのだ。
明らかにトッドの行為に性反応してしまっていた。

「んっ……く……んんん……あっ!」

指が付け根をぐっと押し、腿を指で強く揉み、そして指の腹で太腿全体を擦っていく。
黒人の指が踊り、肌の上を滑るたびに、マリアの膣からはじゅんっと蜜が滲み出していた。
トッドの太い指が膣の近くにある。それを意識するとマリアは脚をもぞつかせてしまう。
あの指が膣に入ってきたら……と想像するだけで腰の奥が熱くなった。

「んあ!」

とうとう手が媚肉の上にやってきた。
膣口に指を挿入することはなかったが、手のひらで性器全体をぬるっと撫でている。
オイルにまみれた手は適度に熱く、心地よかった。
巧みにクリトリスを避け、膣口には入らず、恥毛の上を撫でるように手を押しつけ、オイルを塗り込んでいった。

「はっ……うう……や……んんっ……んっ!」

媚肉が熱い。
ジンジンしてきている。
今、貫かれたら、マリアは歓喜の声を上げてしまいそうだった。

「随分ぬらついてるな。くく、これは本当に俺のオイルだけかな?」
「……」

反論できなかった。
間違いなくマリア自身が分泌した愛液が混じっている。
それもかなりの量だ。
その証拠に、オイルの匂いに混じってマリアの甘く香しい匂いが部屋に籠もってきていた。
マリアの手も足も、ぐっと握りしめられている。
込み上げてくる快楽に、必死になって抵抗しているのだ。
それを嘲笑うかのように、トッドはマリアの媚肉に指をかけた。
左右の割れ目を指をかけ、媚肉をくぱあっと大きく拡げた。

「いやあ!」

初めてマリアが女らしい悲鳴を上げた。
女性器を開かれる恥辱とともに、開いた瞬間に蜜が粘った恥ずかしい音が響いてしまったからだ。
マリアの香りが一層に強く匂う。

くっちゅ、にちゃっ。
ぐちゅっ、にちゅ。
にちゃあっ。

「随分恥ずかしい音をさせるんだな、おまえのマンコは」
「や、やめて! ああ、そんなこと……うんっ!」

今一歩、ここでペニスを、いや指でも挿入すれば、マリアはたちまちいってしまうだろう。
マリアもそれを覚悟し、顔を背けた。
それでも腰が勝手に宙に浮き、トッドの指に押しつけようとしている。
かつてのブラッディ・マリアが、こうもこちらの手管に乗ってしまうのを見て、トッドは快哉を叫んでいた。
非情な女ヒットマンも、性的にはまったく脆かった。
ボスの情婦として寝ることはあったし、命令でコールガールの真似事もした。
そして女の武器で敵を誑し込み、その上で殺したこともあった。
マリアはそのすべてを仕事と割り切っており、のめり込むことはなかったのだ。

しかし、心はそうでも身体はそうはいかなかった。
人並み外れてグラマラスで敏感な肉体を持っていたこともあり、ややもすると男の行為に恥ずかしく反応してしまうこともあった。
それほどだから、トッドのような輩にかかれば、その身体はたちまち花開いてしまうのだった。
トッドの手は上半身へ移る。

「あっ……」

股間から離れる黒い手を思わず掴んで止めそうになり、マリアは悔しそうに顔を伏せた。
これでは相手の思う壺である。
そんなマリアの葛藤など、百戦錬磨の黒人にはすべてお見通しで、トッドの方は余裕を持って責めている。

「んんっ!」

黒い指が大きな乳房の輪郭をなぞった。
それだけでぞくぞくするような快感が背中を突き抜けてしまう。
なのに指は肝心な場所には来ず、乳輪までしか撫でられない。
乳輪の縁を指先でなぞると、マリアは胸を突き出して強い刺激を求めてしまう。
トッドの指が、豊かな乳房に半ばまで沈んだ。
それでも乳首には触れず、乳輪を摘んで乳首を括り出すと、マリアは歯を食いしばって声を出すのを堪えた。

「うっ……ああ……も、もう……ああ……うんっ……んんんっ」

指先はどんどんと頂上に近づき、ぷくりと勃起した乳首の根元まで届いているが、決してそこには触れなかった。
もう乳首が痛いほどに硬く尖っているのが判る。
ジンジンと疼き、熱くてたまらなかった。
ああ、あの黒い手で思い切り揉まれたら……、指で乳首を潰されたらどんなに気持ち良いだろう。
そんなマリアにトッドがにやついて話しかける。

「おっぱいが切なくてしようがないんだろうが」
「……」
「もっとおっぱいいじって、揉んでって言えよ。乳首も触ってって言いな。そうりゃあ望み通りにしてやる」

その屈辱的な物言いに、マリアの死にかけていたプライドが僅かに顔を覗かせる。

「だ、誰が……」
「……」
「誰がきさまなんかに……!」
「おうおう、おっかねえ。美人が台無しだぜ。それに素直じゃねえな、女はもっと男に従順じゃねえとな」

トッドはそう言ってほくそ笑むと、突然、指でピンと乳首を弾いた。

「はあうっ!」

マリアは全身で反応し、ギクッと背中を仰け反らせた。
信じられないほどの快感だった。
電気が爪先から脳天まで突き抜ける。
全身に電流が行き渡ったように痺れ、強烈な刺激が走った。

「ああっ!」

トッドの指が、ここぞとばかりにマリアの乳首を摘み、ぎゅうぎゅうと揉み込んできた。
たまらずマリアは大きく喘ぐ。

「ああっ! くっ……いっ……はうっ……あああっ!」

そこでぎゅっと潰すように乳首をこねると、マリアは全身を突っ張らせて強く反応した。

「ああっ!」

そのまま何度がギクンギクンと身体を跳ねさせ、ぶるるっと小さく痙攣する。
そして、ドッとシーツの上で身体が弾んだ。
黒く大きな顔がマリアを覗き込む。

「なんだなんだ、おめえ乳首だけでいっちまったのか」
「ち、違う……、違う、これは……」
「ほう、そうか。まだいってねえのか」
「いってなんか……ない」

強がりになっていなかった。
マリアはまだ絶頂の余韻で小さく震え、腿には鳥肌まで立っている。
おまけにその瞬間、ぴゅっと小さく媚肉から蜜が噴いていたのだった。

まだ胸を大きく喘がせているマリアの腹の上に、トッドが黒い手のひらを載せ、すーっ、すーっと大きく撫で上げてくる。
腹を撫でられるだけでゾクゾクするほど感じてしまうのに、指が乳房に触れると、もう声を出さずにはいられないほどになる。
勝手に腰がくねついて、淫らに尻を振ってしまうのを止められなかった。

「あっ、あ……く……はああっ……」

マリアの手がぐっと握られ、我慢出来ないように指が開かれると、また強くぐっと握りしめられる。
その動きから、気の強いマリアの心と身体のせめぎ合いが見て取れる。

「あっ」

そこでまた体位を変えられた。
再び膝立ちの三つん這いさせられ、オイルで妖しく光る臀部を突き出している。
その尻に、トッドの真っ黒い手がかかった。

「あっ!」

びっくりするほど感じてしまった。
臀部はもともと肉が厚く、谷間はともかく尻たぶそのものは、そう感じる箇所ではない。
なのにトッドが両手で双臀を大きくマッサージすると、マリアは尻を振って応えてしまう。

「くうっ……あ、んっっ……いっ……ああ……」

尻たぶを掴まれ、ぎゅうぎゅうと揉まれたり、肌に触れるか触れないかくらいの微妙なタッチを受けたり、緩急を付けて責められると、マリアは尻を
振らずにいられなくなる。
くいっ、くいっ、ぷりっ、ぷりっと大きな尻がくねり、悶えている。
そうしているつもりはないのに、尻を思い切りトッドの方に突き出すような格好になっていた。
開かされた股間からは、陰毛を伝ってぽたぽたと粘った蜜が垂れている。
いじられているのは尻なのに、媚肉がジンジンと疼いてたまらなかった。

「あっ!」

それまでは、どちらかというと柔らかい揉み方だったのが、一転して激しく揉みしだいてきた。
黒い指が豊満そのものの臀部に食い込んでくると、マリアは「くっ」と声を漏らし、盛んに腰を打ち振って見せた。
そしてとうとう、黒い手のひらがマリアの恐れていた部分に侵入していく。
尻の谷間に、手刀の形にした手のひらが食い込んでいった。

「あっ、いやあ! そ、それやめて!」
「感じてしようがないのか? ほれほれ、こうやると尻の穴に当たるだろう?」
「いやあっ、し、しないで……んんっ……はああっ……い、いや……くっ!」

オイルのぬめりで、手のひらが尻の谷間をぬるーっと滑っていく。
そのたびに、アナルが手刀に擦られるのだ。
オイルのせいで摩擦感は少ないものの、ぬるっとした感触で激しく擦られ、マリアの肛門はあっという間に反応した。
マリアは自分のそこが、小さく口を開閉しているのを実感している。
トッドの手が通って上に抜けるたびにアヌスが小さく開き、下に下がって擦られると閉じていく。
それを何度も繰り返された。

「い、いや……あ、あ、ああ……うんっ……いや、お尻……あっ……は、はうう……」

にゅるん、にゅるんと何度も何度も尻たぶの中を往復し、アヌスを擦られ、マリアは顔が仰け反りっぱなしになっている。
アヌスをしゅっと擦られると、腰がわななき、白い喉から恥ずかしい声が漏れ出てしまう。
もう媚肉はびしょびしょで、シーツにはかなり大きな染みが出来ていた。

「尻の穴まで感じるんだろ? 言ってみな、尻の穴がいいってな」
「う、るさ……ああっ……」
「いかせてください、最後までしてって言えば、思いっ切り気をやらせてやるぜ」
「ふ、ふざけるな、この……この変態野郎! ファッキング・ニガー!」

自分がハーフなこともあって、ことさら人種差別には敏感なはずのマリアだが、黒人の蔑称で罵らねばいられないほどに動転し、またトッドを
憎んでいたということだろう。
普段のトッドにこんなことを口走れば、その丸太のような腕で殴り飛ばされるだろうが、今は圧倒的に有利な立場にあるせいか、嗤ってマリアの
言葉をやり過ごした。

散々アヌスを虐めてから、オイルでぬめる尻たぶをぺちっと叩いてそこから手を離した。
その刺激だけでマリアは「あうっ」と呻いて腰を震わせていた。
平手で叩かれる痛みすら、皮膚から通って尻肉や腰の中まで痺れさせている。
トッドの魔手は離れたものの、マリアはベッドに倒れることも出来なかった。
足腰は萎えているのだが、強い快感を堪えるために、必死になって息んでいたせいか、全身の筋肉が強張っていた。
膝も腰も細かく痙攣し、姿勢を崩すことも出来ない。
マリアが三つん這いのまま呼吸を整えていると、またその尻に大きな黒い手が置かれる。

「いい尻しやがって。若い頃よりもずっとでかくなって、そそられるぜ」
「……」

確かに、突き出されたその臀部は、ややもすると男に対して挑発的なところさえある見事なものだった。

「待ってろよ、この尻に今いいことしてやるからな」
「何を……?」

マリアがようやく顔を持ち上げて後方を見ると、いつの間に用意していたのか、トッドは何やら大きな筒のようなものを抱え持っていた。
半透明のガラスのようだ。
よく見れば注射器である。
シリンダー内には、たっぷりの薬液が満たされていた。

「クスリでも使う気なの……?」

確か、以前のレイノルズ一家でも麻薬は扱っていた。
阿片もヘロインもあったはずだ。
もしかして自分を薬漬けにするつもりなのだろうか。
しかし、それにしては注射器が大きすぎる。
プッシャーどもが使うのは、ごく小さなポンプのはずだ。
僅かな溶液で充分な高価があるのだし、何しろ高価なのだから当然である。
なのに黒人の太い腕に抱えられているのは、一升瓶とまでは言わないが、かなり大きな注射器だ。
あんなに大量のクスリを注射したら、中毒は中毒でも急性中毒で死んでしまうに決まっている。
トッドがにやりとする。

「そんな野暮なことはしねえ。そもそも、おまえの身体には傷を付けるな、ヤクは使うなと言われてるんでな」
「じゃあ……」

では一体何なのだ。
だが、そう言われれば少しおかしい。
注射器にしては先に針がないのだ。
眉をひそめていたマリアの表情に衝撃が走った。
忌まわしい紐育時代の記憶が思い起こされる。

「き、きさま、まさかっ……!」
「そう、その「まさか」だよ。わかるだろ、浣腸さ」
「……っ!!」

やはりそうだった。
ボスのレイノルズは、マリアを自分好みの性癖を備えた女にするため、そしてコールガールとしても使えるよう、性の調教師たちにあらゆる責めを要求した。
その中にはあまりハードではないにしろSMもあったし、肛門性交もあった。
メニューには浣腸もあったのだが、マリアは、それだけは断固として拒否したのである。
当然と言えば当然で、そんな責めを受け入れる女はいないだろう。
物心両面で力尽くに強要することは出来たが、その頃にはマリアも組織内で殺し屋としての腕を認められていたし、あまりに追い詰めて組織を抜けられても
困ると判断したボスが、「そこまで嫌うのなら」とエネマだけは控えてくれたのである。

そのお陰でマリアは浣腸というおぞましい責めを受けずに済んだが、仕込んでいたトッドは残念に思っていた。
レイノルズは多少なりともマリアの人間性を認めていたが、トッドの方は女など「肉」としてしか見ていない。
もしトッドに権限が与えられていれば、泣こうが叫ぼうがマリアを浣腸で責めていたに違いなかった。
そうさせてくれなかったボスは甘いとトッドは思っていたし、ボスに取り入って自分の責めから逃げたマリアを憎々しくも思っていた。
従ってトッドにとっては、6年振りに訪れた絶好にチャンスなのだった。

逆にマリアにしてみれば、その責めだけはどうにも容認出来なかった。
兄とも恋人とも慕っていた男を自分のミス(当時はどう思っていた)で死なせ、異国へ逃亡して裏社会で身をやつし、挙げ句、組織犯罪の手先となって
殺し屋となり、また娼婦としても使われた。
そんな中で生きることへの意味を喪失し、投げ遣りとなっていたマリアにして、浣腸だけはイヤだったのだ。
そんなことをされることへの憤りもあったが、そもそも浣腸などをしたがる男の性癖も理解出来なかった。
その悪夢が現実のものとなって蘇ってきた。

トッドは、わざと重そうに浣腸器を抱え、そのノズルにゴムのチューブを装着していた。
マリアは逃げようにも足腰が言うことを聞かなかった。
まだ腰も膝も強張り、僅かに揺することしか出来なかった。
手足を拘束され、ずっと同じ格好にされていることも影響していた。

浣腸器から伸びたゴムチューブの先には、樹脂のノズルか装着されている。
浣腸を嫌がるマリアが暴れて、ノズルが直腸内で折れてしまうことを恐れてのことだろう。
トッドは、そのノズルにたっぷりとオイルを塗ってから、ゆっくりとマリアの肛門に押し当てていった。
じわじわとアヌスを貫いてくる硬質な感触に、マリアは思わず絶叫し、腰を捩ってずり上がって逃げようとする。
しかし手足が萎えていることに加え、右手右足、左手左足で拘束されてしまっていて、必死になってもがいてもほとんど進めなかった。

「くく、入っていくぜ、マリアの尻の中にな」

トッドにからかわれても、マリアは呻くだけでろくに返事も出来なかった。
ゴムで肛門を擦りながら、ノズルが腸内へどんどんと入ってくる。
肛門はオイルと汗でぬるぬるだったからまだよかったが、それでも異物が侵入してくる汚辱感はぬぐい去れてない。
マリアは顔を持ち上げ、ぐうっと背中を湾曲させて呻いていた。

「ぐっ……ううっ……い、いやあ……」

トッドがチューブをつまんで、ぐいぐいと奥まで挿入していく。
彼にしてみればアナルセックスの代用行為であり、事前練習でもあった。
マリアは懸命に括約筋を引き締めて侵入を拒もうとするのだが、そうするとかえってゴムが強く粘膜を擦ってくるし、ノズルが腸壁に食い込んでしまう。
それにおびえて緩めれば、調子に乗ったトッドがさらに奥まで差し込んできた。

「い、や……っ……」

チューブが20センチ近く押し入れられると、トッドはその手をようやく止めた。
マリアは、腸内の奥深くまで入り込んでしまったノズルの感触に震え、悶えている。
黒い手でいやらしくマリアの臀部を撫で回しながらトッドが言った。

「さて、準備完了だ。いよいよだぜ、マリア」
「い、いやっ……!」
「こんないい尻見たら、浣腸しないわけにはいかねえだろうが。たっぷり入れてやるからな」
「いやよ……、くっ……、ぬ、抜いて……抜きなさい、トッド!」
「そんなこと言っても、そのうちたまらなくなるんだぜ。くく、浣腸されたくてしょうがない身体にしてやるからな、楽しみにしてろや」
「ぜ、絶対にいやっ……!」

マリアは激しく腰を振り立てるが、もうノズルは直腸内に深々と突き刺さっていてとても抜けるものではない。
いくら暴れてもチューブが蠢くだけで、トッドが抱えている浣腸器には何の影響もなかった。

「見てみろ、でけえ浣腸器だろうが。おめえ用の特別あつらえだぜ」
「いやっ……!」
「俺様はエネマシリンジなんてものは使わねえ。やっぱりこれが最高だな。見ろよ、何となくペニスに見えるだろ? こんな巨根で尻をやられるんだ、嬉しくてしょうがねえだろう」
「へ、変態……」
「普通は8オンスくらいの浣腸器を使うもんらしいし、でかくでも16オンスくらいだな。ところがこいつはな、なんと1クォーターも入るんだぜ」

それを聞いてマリアは震えた。
1クォーターと言えば、おおよそ0.95リットルである。
トッドは、浣腸などされたこともないマリアに、いきなり1リットル近い薬液を注入しようとしているのだ。

「入れるぜ、マリア」
「だ、だめっ! そんなこと絶対にいやあ!」
「くく、全部飲ませてやるからな」

マリアはそのクールな美貌を滑稽なほどに狼狽させ、盛んに首を打ち振って拒絶したが、非情な黒人は容赦なくシリンダーを押し込んだ。

「あ、あっ……んうう〜〜っ!」

ガラスが擦れ合う音が響くと同時に、筒いっぱいに収まっていたグリセリンがマリアの腸内に注入されていく。
マリアの白い裸身がびくっと反応し、全身が強張った。
悲鳴を放って尻を振り、流れ込んでくるものを拒もうとするが、浣腸液は腸内深くに挿入されたノズルから為す術もなく注入される。
腸壁にひっかかる薬液のおぞましさに、マリアの肌に鳥肌が立ち、背筋が震えた。

「こ、こんな……いやあっ……い、入れないで、抜いて!」
「遠慮すんな、じっくり味わえや」
「あ、あっ、いや……いやあっ!」

とうとう、あのマリアに浣腸してやった。
捨て鉢でいながら、気高さを持った美貌のマリアが恥辱の責めを受け、身悶えている様子を見ていると、シリンダーを押す手にもつい力が入る。
トッドの逸物がもう痛いまでに勃起し、トランクスの前開きを突き破るようにそそり立っていた。
自分を蔑んだ美女に、浣腸を受ける恥ずかしさ、辛さ、悔しさを思い知らせてやると思うだけで、今にも射精してしまいそうだ。

「ど、どうだマリア、え? 大嫌いな俺様に無理矢理浣腸されてる気分は」
「くっ……、こ、このキチガイ、変態っ……、お、おまえは最低の男よ……ああっ……」
「どうかな。その最低の男に浣腸されてるおまえはどうなんだよ。それにな、そのうち俺のことを最高の男だと思うようになるさ」
「だ、誰がそんな……あむっ……、ゆ、許さない……、おまえだけは絶対に許さないわ、トッド!」
「許す? そんな必要はねえさ。そのうちおまえの方が「もう許して」と泣き叫ぶことになるんだからな」

際限なく注入されてくる感覚に、マリアは気死しそうになる。
腸の深いところで、怪しげな薬液がどくどくと流れ込んでくる。
アヌスに押し込まれているチューブだけでも吐き気がするほどの異物感があるというのに、腹の中にどんどんと液体を注がれ、それが溜まっていっているのだ。
その汚辱感、屈辱感に嘔吐感すらしてくる。
嘔吐き上げるものを堪えつつ踏ん張ると、目の前が暗くなってきた。
我慢しているからなのか、歯の根が合わず、カチカチと鳴っている。
浣腸される圧迫感が腸内を支配し、マリアは今にも身体が内側から破裂するのではないかとすら思った。

「ん、ん……むむう……」

シリンダーを押し込み、注入されるたびに、マリアの臀部が色っぽくうねり、捩られる。
それを見ているとますます嗜虐嗜好に火がつき、トッドの手に力が入っていく。

「や、めろ……く……あうう……」

マリアは唇を噛んで悲鳴を抑え、顔を仰け反らせた。
ちゅるちゅると体内に送り込まれてくる薬液の感覚に息が詰まる。
その恥辱と汚辱のつらさは、この冷徹な美女ですら動揺させていた。
おぞましい魔液が内臓の隅々まで行き渡り、じわじわと染みこんでいく。
気怠い嫌悪感が頭の先から爪先まで支配した。
全身からじわっと粘い汗が滲み出し、その異常な感覚のせいか、抗う気力まで根こそぎ奪われていく。
マリアの尻がぶるっと大きく震える。

「も、もう……もうしないで……うっ……」

浣腸される息苦しさだけでなく、腹の底からじわっと便意も込み上げてきていた。
それを意識し、マリアは戦慄した。
浣腸は、される恥辱と苦悶だけではない。
「され終わった後」にこそ、最大の屈辱が待っているのだ。

「だ、だめよ、もう……い、入れないで……くう……」
「なんだ、もう降参か? まだ1/3も入っちゃいないぜ」
「もういや……、し、しないで……」
「だめだ、全部入れる。そう言ったろ?」

まだ半分以上も残っていて、それも全部注入すると聞くと、マリアは目眩がしてきた。
もうお腹は限界だと思う。
薬液のせいで腸が張っているし、熱まで帯びてきている。
冷たい溶液を入れられているというのに、腸内で暖められ、逆に熱くなってきていた。

「そんな……、む、無理に決まってる……」
「無理でも入れるんだよ、おらおら」
「ぐうっ……!」

トッドは分厚い唇を歪ませて笑い、欲情を隠そうともしなかった。
休まずシリンダーを押し、マリアを呻かせている。
呻き、喘ぐマリアのあまりの色気に、黒人のペニスはびくびくと震えて硬度を増していた。
浣腸器を放り出してすぐにでも犯したい衝動を堪え、なおもポンプをじわじわと押し込んだ。
溶液はもう半分以上がマリアの中に注ぎ込まれ、残り1/3を切っている。
初めての浣腸なのだから、200ccでも怖いくらいの量だろうに、マリアはもう500cc以上注入されていた。
しかも、まだ許されず、全部で1リットル近いグリセリンを入れられるのだ。

「あ……ううっ……」

腸が蠢動した。ググッ、グウウッと熱っぽく鳴り、高まっていく便意をマリアに伝えていた。
チューブをくわえるアヌスがきゅっと引き窄められる。
腸内だけでなく、肛門のすぐ内側まで熱くなってきていた。
便意がそこまで来ているのである。
マリアは血を吐く思いで呻いた。

「や、やめて、もう……お願いよ……ああ……」

こんな男に「お願い」などと言いたくはなかったが、もう身体が保ちそうにない。
臀部は強張ったままで力が抜けず、痙攣が続いている。
アヌスは引き窄まったり、緩んだりを繰り返していた。
美しい額にも脂汗が浮き、それがつうっと頬に伝っている。

「もうちょっとだぜ」
「いや……、もういや……す、するならさっさとして……もう耐えられない、こんなの……」
「そうか? なら残り全部を一気に入れてやるか」
「や……、いやっ! ま、待って、そんな……!」
「待てねえな、そら」
「んひぃっ!!」

残り2オンスほどの薬液が一気に注入され、マリアはまるで達してしまったかのような声を上げて、しなやかな裸身をぐうっと仰け反らせた。

「おっ……、く……!」

その色っぽい姿と声に、思わず出してしまいそうになり、トッドは慌てて浣腸器を置き、ペニスを押さえ込んだ。
一度や二度で枯渇するような精力ではないが、最初の濃い一発は是非ともマリアの中にぶちまけてやりたいのだ。
危うく射精しそうだったところを何とか耐え、ホッとしてトッドはマリアのアヌスからチューブとノズルを引き抜いた。

「あう!」

ずるるっとチューブを抜かれ、アヌスを擦られる感覚にマリアはまた仰け反る。
最後にノズルが肛門内側に引っかかったものの、それすらも強引に引き抜かれ、悲鳴を上げて尻を揺すった。
そして慌てて肛門を引き締める。
一緒に排泄してしまいそうになったのだ。
排泄という事態を避けたせいか、マリアは幾分ホッとしたようにぐったりと顔をシーツに押しつけている。
噛みしめた唇をわななかせ、ときどき堅く閉じた口を緩めて熱い息を吐いていた。

トッドはマリアの腰を掴み、ぐいっと引っ張り上げて腰をせり上がらせた。
マリアは低く呻いたが、抗うことすら出来ない。
浣腸されている時は、その圧迫感で真っ赤になっていた顔が、今では青ざめている。
トッドはそのマリアの汗の浮いた尻を執拗に撫でまわしていた。

「どうしたマリア。もう生意気な口は利かねえのか?」
「こ、この変態……、けだものよ、おまえは……うっ……」

その間にもマリアの臀部がぶるぶると小さく震え、悶えている。
恥ずかしい便意を覚られまいと、必死になって堪えているものの、注入された薬液の量と効果は、マリアの忍耐力を遥かに超えていた。
そもそも我慢できるようなものではないのだ。
荒々しいまでの便意がマリアの腸内を激しく刺激し、肌に冷や汗を出させ、震わせていた。

「なんだ震えてるじゃねえか。あのマリアが震えるなんてな、くくく……」
「さ、触るな変態……ううっ……」
「もっと触ってやるさ、ここはどうだ?」
「ああっ!」

トッドは、汗に濡れた尻たぶに手を掛けて大きく割り開くと、その奥で震えている肛門に指を伸ばしていく。
そこを指でまさぐられ、擦られると、マリアは弾けるように激しく反応し、絶叫した。

「やめてっ! そ、そこはだめよ、あっ……、い、今そこはだめえっ」
「今はだめ? じゃあ、後でなら触って良いのか」
「そ、そういうことじゃないっ……、やめて、あっ……」

ゆるゆるとアヌスを揉み込まれ、マリアはそこが緩んでくるのを感じた。
踏ん張っても括約筋に力が入らず、指の愛撫に誘われるようにアヌスが柔らかくなっていく。
まさかこんなところで漏らすわけにはいかない。
マリアは悲鳴を上げて必死に引き締めるものの、指に刺激されて肛門は緩みかけ、便意までも駆け下ってくる。
もう一瞬もじっとしていられず、腰がひとりでにうねり、肛門が疼いた。
今にも排泄してしまいそうなのを堪えるのが精一杯で、呼吸すらまともに出来なくなった。
トッドはにやにやしながら言った。

「苦しそうだな、マリア。ウンチさせてくださいってお願いしてみろよ。そうすりゃ考えてやるぜ」

マリアは血が出るほどに唇を噛みしめて激しく首を振った。
それだけはイヤだった。
こんな卑劣な男に、排泄を乞い、哀願するなど絶対にできない。
トッドは、マリアの強情さと気位の高さに舌を巻く思いだったが、焦りはしなかった。
浣腸されて、ずっと我慢できるはずはないのだ。
トッドが何もしなくとも、マリアの方から崩壊してくれる。

「ひゃっ!?」

男装の麗人は、彼女らしからぬ悲鳴を上げて大きく震えた。
トッドの指が、そっとアヌスをいびってきたのだ。
必死になって排泄を耐えている肛門に触れられるなど信じられなかった。
太い指がアヌスの皺を拡げるようになぞってくると、そのおぞましさから括約筋がきゅっと締まる。
それはいいのだが、腹筋に力が入るためか、ビリビリと腸にまで響いてくるのだ。
余計に便意が刺激されてしまう。

「や、やめて、ううっ……た、たまらないわ……」
「たまらない? 気持ち良くてたまんねえのか?」
「ち、違う……ああ、そこだめ……うっ!」

つい肛門が花開きそうになり、マリアは呻いて括約筋を絞った。
油断したらすぐにでも出てしまいそうだ。
もう臀部がぶるぶると震えるのが止まらない。

「も、もう……もうだめ……くっ……お、おトイレ……」

マリアはプライドをズタズタにする思いで、ようやくそれを口にした。
どうにも堪えきれず、悔しさと羞恥にまみれながら、卑劣な黒人に懇願する。

「お、お願い……」
「……もう、だめなのよ……お願い、おトイレに行かせて……ああ……」

涙すら滲ませているマリアの高貴な美貌を眺めつつ、トッドは喉の奥で嗤っている。
ボスのお気に入りとしての立場で、俺を蔑んでいた(と、トッドは思い込んでいた)あのマリアが苦悶し、哀願しているのだ。
これ以上ない征服感と嗜虐的快感だった。
トッドはそんな美女の哀れな要望など無視して、さらに悪逆な仕打ちを仕掛けてくる。
今度は浣腸液で満ちた腹部を揉み始めたのだ。
マリアは驚き、急激に高まる便意にのたうった。

「ひっ、やめて! お、お腹、さすらないで! ああっ、お、お尻もだめ、いじらないで、あうっ!」
「ふふ、あのスマートだったおまえの腹が少し膨れてるじゃねえか。今度は3クォートくらい浣腸してやるか。そうすりゃ、この綺麗な腹が孕み腹みてえになるだろうな」

トッドはそう言いながら、ヘソの辺りを中心に手のひらで撫で回した。
時折、ぐっと腹を押すようにすると、マリアはつんざくような悲鳴を上げて激しく身を捩った。
しかしその直後、「あっ!」と別の悲鳴を上げて動きを止める。
あまり激しく動くと出てしまいそうなのだ。

「あ、あ……もう……もうっ……!」
「出そうか?」
「く……」

マリアは心底辛そうに小さく頷いた。
女性にとって、生理現象の有無を知られることほど辛いことはない。
しかも相手はトッドである。
しかし、そんなことを気にしていられるほどの余裕はとうに失せていた。

「よし。じゃあ、こう言え。「ウンチしたい、させてください」だ」
「バカなことを……! あっ……」
「ならさせねえ。どうだ?」

マリアは恨めしそうにトッドを振り返り、屈辱に呻いた。
頬も瞼も引き攣っていて、見た目でも、もう限界なのがわかる。
マリアはわななく唇で恥辱の言葉を口にした。

「……させて……」
「……」
「ああっ、お願いっ……、し、したいのよ、もうっ……」

トッドは、楽しくてたまらぬといった口調でなおも命令する。

「まあ、いいか。じゃあ次だ。「ウンチしたら、またマリアに浣腸して。たくさんして。お尻の穴にいやらしいことをして」ってな」
「ああ、もう何でもいいから……」

マリアの直腸が便意で破裂しそうになっている。
さっきから、腸内が熱くて沸騰しそうなほどだ。
グルグルとくぐもった音が止まない。
腸内どころか、アヌス自体が熱くて熱くてたまらなくなっていた。
もう、出るものがすぐそこまで来ていて、内部から肛門を熱く灼いているのだ。

「言え」
「マ……」
「……」
「マリアに……ううっ……ま、また浣腸、して……あっ……た、たくさんして……お、お尻に……う……いやらしいことして……あああ、もう……」

もうマリアは、自分がどんな恥辱的なことを言っているのかという意識もない。
早く苦痛の塊を出してしまいたいという排泄欲しかなかった。

「よぅし、よく言えたな。ご褒美だ、していいぜ」
「ああ……」

マリアは安堵の息を漏らしたが、またすぐにその表情が引き攣った。
トッドがバケツを手にしていたのだ。

「ま、まさか……」
「そうよ、おまえのトイレはここだ」
「そんなっ……!」
「今からトイレ行こうったって間に合わねえだろ?」
「いやよ、そんな! こ、こんなところで出来るわけないわ!」
「なら、させねえ。もっと苦しみな」
「くっ……!」

あまりの仕打ちに、一瞬、その美貌に憤激を浮かべたものの、そんなものは限界を超えつつあった便意によってあっさりと飲み込まれた。
もう、どうでもよかった。

「あ、あっ……もう……もうっ……、は、早く……早くっ!」
「これでいいんだな?」
「何でもいいから早くっ……で、出ちゃうわっ」
「あのマリアが「出ちゃうわ」か。たまらねえな」

そう言いながら、トッドは突き出されたマリアの臀部にバケツをあてがった。
バケツが尻たぶに触れ、その冷たい感触で我に返った。
最後の気力を振り絞り、トッドに言った。

「み、見ないで……」
「しっかり見てやる。マリアがどんな風にするのかをな」
「い、いや……あ、あ、だめ……で、出る……出ちゃう、見ないで!!」

ぶるるっとマリアの大きな臀部が震えたかと思うと、割られた尻の谷間の奥でわなないていた肛門がぐううっと内側から膨れあがった。
それから慌てたように引き窄められたが、それも一回だけだった。
すぐに生々しく膨れあがると、痙攣していたアヌスが炸裂した。



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