マリアはそれから一週間ほど監禁されていた。
トッドによるレイプはその間ずっと続き、マリアは彼の言葉通り、紐育時代の記憶をイヤと言うほど蘇らせた。
最初は嫌悪感とおぞましさで激しく拒絶するものの、自由を奪ってから犯すというトッドの趣味もあり、常にベルトで拘束されたりロープで縛られてか
ら穢されていた。
その屈辱と憤怒も、恥辱的な責めと羞恥心を煽るような言葉を受け続け、しまいには喘ぎ、よがり、歓喜の声を放っていた。
あの頃に肉体へ刻み込まれた官能の傷跡は容易には戻らず、恥辱にまみれながらも望まぬ快楽に屈してしまうのだった。

その間、ヒマを見てバレンチーノフもたびたび現れ、トッドに犯されて気をやるマリアを蔑んだり、自らも犯そうと試みることもあったが、それだけは拒否
していた。
その気になれば、トッドに命令してマリアを縛り上げ、強引に思いを遂げることも可能ではあったが、なぜかそれはしなかった。
マリアが「あなたに抱かれることだけは絶対にいや」と拒否すると、薄笑いを浮かべて引き下がっていた。
どうせ裏で何か考えているに違いなく、バレンチーノフの態度が不気味が不気味だった。
そのバレンチーノフが、トッドを引き連れて部屋に現れた。
マリアは反骨心を露骨に表した表情で、入ってきたふたりを睨みつけた。
バレンチーノフが来る直前まで、トッドによって数回の浣腸責めを受け、ぐったりしていたはずなのに、気の強さは少しも薄れていなかった。
その美貌を見てボスが苦笑する。

「やれやれ、きみのプライドというか強情さにはほとほと呆れてしまうね。そろそろ楽になりたいだろう」
「……」
「だが、いいね、その目つき。そんな女をいたぶると思うとぞくぞくするんだよ、俺は」
「……変質者め」
「威勢が良いが、さっきまで浣腸されて悶えていて、今は素っ裸で手足を引き延ばされた格好で言っても迫力がないね。君はその立派なおっぱいといやらしいマンコで俺と勝負しようと言うのか?」
「つくづくゲスなやつだわ、あなたは……」

マリアが吐き捨てるように言っても何ら効果はなく、ふたりはゲラゲラと笑い合っている。
しかし、少し様子がいつもと違った。
トッドとバレンチーノフが一緒に現れることはなかったし、バレンチーノフはともかくトッドまでがスーツを着ているのは初めて見た。
いつもマリアを嬲る時は、上半身裸のままやってくるのである。
その黒人が、膨れあがった腹にへばりつくようなシャツに、きちんとタイまで締めていた。
そのトッドが、マリアの乗るストレッチャーの取っ手を掴み、ガラガラと押し始めた。
スチールドアが観音開きで左右に開かれ、そこからマリアを連れ出していく。
ひさしぶりに部屋から出て、その外気が冷たく肌に当たる。

「……どこへ行くの」
「なに、約束の舞台に出ていただくのさ」
「……何ですって?」

マリアは唖然とした。
舞台だの映画だの、そんなことはマリアを地獄へ引きずり込むための口実で、嘘っぱちだと思っていたのだ。
第一、こんな格好で芝居など出来るはずもない。
そもそも台本すら渡されていないのだ。
マリアの疑問にバレンチーノフはこう答えた。

「言ったろう、セリフを覚える必要はない、と。すべてアドリブさ、いやアドリブとも違うな。その時のきみの素直な気持ちを言葉や身体を使って表現してくれればいい」
「……意味がわからないわよ」
「すぐわかる。もう観客はお待ちかねなんだよ」
「……」

廊下を真っ直ぐ進み、その突き当たりを左に折れる。
右には上へ繋がる階段があった。
廊下が狭まり、ストレッチャーの横幅ぎりぎりとなり、ベッドはたびたび壁に当たっている。
すぐにホールらしい広間に出た。正面には、劇場やホールのような大きな扉がある。
見るからに気密性や防音性に優れていそうだ。
その脇に小さなデスクが設置されており、若い男がひとり腰掛けていた。
男はバレンチーノフを見ると、すっと立ち上がった。
そして興味深そうにマリアを──というより、マリアの身体を──見ながら言った。

「ボス、その女ですか」
「そうだ。準備は出来ているか?」
「はい、トーマスとアンソニーが引きだしてきました。楽屋に持ってきてあります」

バレンチーノフは頷きながら腕時計を見た。

「客が来るまで……、あと一時間ほどだな。もし早めに来た客がいたら、バーで時間を潰させろ」
「わかりました」

どうやら地下には客をもてなす簡易バーまであるらしかった。
若い男がドアを左右に開くと、トッドはそのままマリアを乗せたベッドを押し進めていく。

内部は小さな劇場だった。
と言っても、客席が整然と並んでいるようなものではない。
薄暗い場内には、小さなテーブルとそれを囲むように5つの椅子が設えたセットが6つほどある。
奥にはせり上がった舞台があり、そこにスポットライトが当てられている。
着いたり消えたり、照らす場所が移動したりしている。
照明のテストをやっているようだ。

真ん中に通路があり、そこをマリアのストレッチャーが転がっていく。
ここまで来れば、何が起こるのかマリアにも判った。
その怜悧な美貌から血の気が引き、青ざめてくる。

「ま、まさか、あなたたち、私を……」
「ん? そうだよ。きみはこれからこの舞台の上で主役になってもらう。そのために呼んだのだからな」
「……!!」

見せ物にされるのである。
しかもマリアは裸で、しかも拘束されている。
芝居などではないことは明白だ。

「なんだ緊張しているのかね? 日本でも舞台経験は積んでいるんだろう? それに、あの時も言ったがセリフは覚える必要ない。アドリブでけっこうだ」
「何をバカな! わ、私は女優であって、こ、こんなことは……」
「ほう、何をされるのかはわかるわけだ」
「……」

淫らなショウに違いないのだ。
それもヌード・ショウなどというおとなしいものではあるまい。
もちろんそれだって断固拒絶するが、恐らくは観客の前で嫌がるマリアを犯すというセックス・ショウ──というよりもレイプ・ショウなのだ。
トッドがいるということは、恐らく犯す相手はこの男に違いない。
客が来るから、わざわざ正装してきたのだろう。
マリアは首をもたげて叫んだ。

「せ、絶対にいやよ、そんな!」
「きみに拒否権はないんだよ。何しろ正式に一ヶ月間、招聘したんだからね」
「は、話が違うわ!」

舞台正面の板を下げるとスロープとなっている。
ストレッチャーはそこを昇って舞台の上に上げられた。
マリアは、手首や足首にベルトを食い込ませてもがき、暴れている。

「ふざけないで! 私は絶対にしないわ、そんなこと! 人前でこんな男に抱かれるなんて……!」
「違うさ。ま、それは後の楽しみにとっておくがいい。今回、おまえの相手になるのはな……」

バレンチーノフの残虐な笑みを浮かべつつ、舞台の袖に向かって軽く手を振った。

「……!?」

ふたりの男が押してきた大きな檻を見て、マリアは絶句した。

何か黒いモノがうねうねと蠢いていた。
生物のようだ。
形状は大きくふたつに別れている。
下部は下が広い柱体に見えるが、もしかしたら円錐なのかも知れない。
固まったコールタールのような質感だが、ぬめぬめと鈍く光っており、少し濡れているようだ。
体液が滲み出ているのかも知れない。
床にだらしなく広がっているから、不定形なのかも知れなかった。
特徴的なのは上部で、下部を土台として無数の触手が生え、それがうねっていたのである。
マリアはイソギンチャクを思い出したが、色もサイズも違いすぎる。
その化け物は、下部の直径で2メートルはありそうだし、幾つも伸ばしている触手は、まっすぐ伸ばせば何メートルあるのかもわからない。
下部は黒いが、上に行くに従って青黒くなってきている。
触手もほぼ同色だが、中には赤い色のものも混じっていた。

いったいこれは何なのだ。
マリアは、そのあまりにもおぞましい生物を目の当たりして背筋が震えた。
こんなものでどうしようというのだろう。
そこでマリアはハッと気づいた。

「こ、これ……、降魔!?」
「そう、よくわかったな、マリア」
「そんな……!」

やはりそうだったのだ。
長年、降魔どもと戦ってきたマリアのカンは、この化け物を降魔だと見抜いていた。

「どこでこんなものを……」
「話せば長くなるがね、アーカンソーの片田舎で見つけてきたものだ。こいつをニューヨークまで持ってくるのは一苦労だったよ」
「な、なぜ……、どうして!? どうしてこんなものをっ……!」
「なに、あの田舎町で化け物伝説があってね。俺は仕事でそこへ行って偶然聞きつけたんだよ。珍しい動物なら売れるし、見せ物にしてもいいからな。
そうしたら、カネを出せば本物を見せてくれるという男がいてな。半信半疑だったが金を出すと、そいつは家の納屋につれてってくれたのさ。そうしたら、
これがあった」
「……」
「こんなものをどうしているのかと聞いたらな……」

そこでバレンチーノフはにやっと嗤った。

「その男、こいつで女を嬲らせて愉しんでいたというんだな。いい女がいたら是非つれてこい、そうすれば面白いものを見せてやる、と、こうだ。
俺はすぐに、ジャップの浮世絵にあったあの変態ポルノを思い出したね」

バレンチーノフが言っているのは、北斎の「蛸と海女」のことであろう。
タコの触手に身体を巻き付かれ、レイプされているような春画である。

「俺は「これはいける」と思ったね。こいつのような変態はニューヨークにだっていくらでもいる。これを使ったショウをやれば金になる」
「……」
「そこで詳しく話を聞いた。どうも、このコーマの巣があるようなんだな。ただ、そいつによるとコーマはこの一種類だけじゃなく、他にもいるらしい。
この化け物はまるで戦意がなくて無害なんだが、他の連中は人でも獣でも何でも殺しやがるらしい。その地方に伝わっていた悪魔伝説や妖怪伝承は、この
連中のことだったようだ。そいつがたまたま巣を見つけた時は、コーマどもは他に出払っていてほとんどいなかったらしい。あの男、俺と同じでこれを
見せ物にすれば金になる、どうじゃなくても大学の連中に言えばきっと買ってくれると思ったようなんだな。そこで、残っていたコーマをライフルで
仕留め、まんまとこれを持ってきたというわけだ」

ライフル銃で降魔を仕留めたというのは意外だった。
銃はほとんど通用しなかったはずだ。
大口径の火砲で砲撃すれば効果はあったが、街中で砲撃戦をするわけにもいかず、軍は手をこまねいていたのだ。
つまり物理的攻撃はまったくの無効というわけではない。
しかし銃でどうにかなるとは思わなかった。
恐らく、誕生したばかりか何かで、まだ表皮が薄く、力も弱い降魔だったのだろうとマリアは思った。

「で、俺はこいつを買い取ったというわけさ。男はカネに目は眩んでいたが、こいつで女を虐めるのを見られなくなるのを惜しんで随分渋っていたがね。
俺は、それなら見たくなればいつでも俺のところへ来い、タダで見せてやると条件をつけて買ったんだ」
「きさま……」

マリアの瞳に、怒りの炎が滾った。

「きさま、わかってるのか!? おまえが買ったのは降魔なのよ! 日本でも仏蘭西でも、いいえ、この米国でも各地で人を襲い、殺している化け物よ!
それを……、それをおまえはっ……!」
「そう、きゃんきゃん喚くなよ。さっきも言ったが、こいつは人畜無害だよ」
「なぜそんなことがわかるの!」
「実際、ここに連れてきて何度もショウに使ったが、こいつは誰も殺してないからさ」
「え……?」
「別に何も悪さはしねえ。見てくれは薄気味悪いし不気味だがな、こうしてうようよしているだけさ」
「……」
「ま、なぜか女には興味があるようで、俺たちはそれを見て愉しむわけだがな、くくく……」
「こ、こいつ……!」
「餌も要らんし、水も飲まないようだ。どういう構造なのか知らんが、排泄物もない。まったく世話がかからん良いやつだよ。マリアを飼ってるより、
ずっと楽なんだぜ」
「か、飼う……?」

マリアの感情が憤激した。
「降魔を飼う」という異常さと、「マリアを飼う」という侮蔑的な物言いに怒りが込み上げる。
だが、すぐにこれからどうなるかを察し、慌てて叫んだ。

「ま、待って! そ、それじゃ私は……、そ、その化け物に……降魔に……?」
「そう。こいつと絡んでもらうことになる。ま、セックスとは違うが、なに、似たようなものさ」
「ふざけるな!!」

同じ人間であるトッドに嬲られるのだって我慢ならないのに、こんな化け物に──降魔に凌辱されるなど絶対に認められない。
それは、今まで帝都の平和のため、人間の誇りを懸けて降魔と戦ってきたマリアにとって、決して許されないことだった。

そしてマリアは、先日ラチェットが言っていたレイプ事件のことを思い出した。
紐育を中心に、全米で発生しているという降魔によるレイプ事件は、これなのかも知れない。
だが、あの時ラチェットは、目撃者談として、悪魔や蜥蜴に犯されたという話をしていた。
どうもこいつはそれには見えないのだ。
しかし、同じく女を犯すらしい。
何か関係があるかも知れなかった。

「……っ!」

檻の鉄格子が四方に倒れた。
中にいた触手降魔がうねうねと気色悪く蠢き、ゆっくりと土台から降りてくる。
どうやら移動も出来るようだ。
しかし、舞台の中央にまで来ると、何本もの触手をうねらせたまま移動を止めた。
すうっと数本の触手がマリア目がけて伸びてくるが、そこまでは届かないようだ。
それを見てトッドとバレンチーノフが嗤う。

「もうこいつはマリアに興味を持ってるみたいだな」
「いやよ!!」
「諦めな、もうどうにもならねえさ」
「絶対に断るわ。無理にけしかけたら死ぬわよ」
「……」

マリアは怒鳴るでもなく、限りなく氷点下に近い声でそう言った。
大声で喚き、泣いて嫌がって許しを乞うのではなく、冷酷なまでの冷たい声だったので、さすがの悪漢たちも驚いたような顔をした。

「死ぬ? どうやってだね?」
「舌を噛むわよ」

舌くらい噛んでも死なないだろうが、少なくともこの場からは逃れられると思っていた。
まさか、口を中心に血まみれになったマリアを客に見せるわけにはいかないだろう。
そういうのを好む変態もいるかも知れないが、そういう趣向で今回の客を集めたわけではないはずだ。
舌を噛んだ結果、どんな障碍や後遺症が出るかわからなかったが、このまま降魔に辱められるよりはマシだと思った。

マリアの態度はブラフではない。
本気だろうとバレンチーノフは思ったが、まだ余裕の笑みを浮かべている。
マリアは不気味そうに言った。

「……何がおかしいの」
「いやいや、なかなか大した度胸だと思ってね。あのクワッサリー、いやブラッディ・マリアなら、それくらいのことはやりかねない」
「……」
「だがね」

バレンチーノフは、見るからにいやらしい笑みを頬に刻んで言った。

「これを見ても同じことが言えるかね」
「え……?」

トッドが小さなスクリーンをセットしている。
見れば、小さなデスクの上には映写機が乗っていた。
何かの映像を見せようというらしい。
映画用の一般的な35ミリフィルムではないようだ。
35ミリが国際規格になってからまだ10年そこそこで、それまではサイズはまちまちだった。
規格以前のものらしい。
劇場用というよりは小さなホール用にちょうどよさそうだ。
薄暗い照明の中、バレンチーノフが投影を開始した。

「あ……っ!」

何が始まるのかとスクリーンを見つめていたマリアが息を飲んだ。
暗く、ノイズの混じる映像には、とんでもないものが映っていた。

かえでだった。

しかも、複数の男たちに輪姦されている姿であった。
音声はなかった。
映画の世界でトーキーが開発され、普及していくのは、この数年後のことである。
当時、音声つきの映画もないわけではなかったが、撮影と同時に録音したレコード盤を再生するだけだったので、フィルムとシンクロさせることは難しかった。
一度ずれたら最後までずれっぱなしであり、途中まで合っていたとしてもフィルムかレコードどちらかに何らかのトラブルがあれば、もうそこで狂ってしまうことになる。
アフレコもなかったから撮影同時の一発録音しかなく、
ノイズだらけであった。
従って、普通は弁士と呼ばれる解説者がナレーションと、シーンによっては演技者のセリフまでしゃべることとなる。
場末のポルノなどは、音声なしが普通であった。

しかし、それだけにマリアの目に映るフィルムの中のかえでの痴態は生々しく、正視に耐えぬものだった。
あのかえでが、すべての女穴を弄ばされている。
膣や口はもちろん、肛門にも深々と男根が突き刺さっていた。
両手にもそれぞれ一本ずつのペニスを握らされている。
かえでは全身を使って男の欲望に奉仕させられているのだ。

しかし、暴力的に支配されているとばかりは言えなかった。
かえでの顔は苦悶しつつ、音声はないものの呻き声を上げているのもわかるが、自ら腰を振りたくり、懸命にペニスをしごいていたのである。

「そ、そんな……かえでさん……」

大きく開脚させられた股間には、太い肉棒が二本も挿入され、ひしめきあっていた。
狭い膣とアヌスに醜い男根をねじ込まれ、強引に押し広げられた粘膜を拡張し、擦り上げている。
口もいっぱいに開けさせられ、イラマチオを強要されていた。
酸鼻なまでの激しい責めだが、かえでの官能は反応し、裸身をうねらせている。
今、男根を押し込まれている口からも、きっとくぐもったような喘ぎ声が漏れているに違いなかった。
肉棒が激しく出入りするたびに膣から漏れ出る蜜の量も多く、かえで自身はもちろん前後から責める男たちの腰や腿まで汚していた。

「や、やめて……、こんな酷いことやめさせて、すぐに!」
「興奮するな、マリア。これはキネマだよ、今そこでやられてるわけじゃないんだ」
「……」

バレンチーノフは平然としているが、トッドはこれを見るのは初めてらしく、生唾を飲み込んで凝視している。
スラックスの前は、みっともないほどに膨らんで、今にもファスナーを弾き飛ばしそうだ。

スクリーンでは、膣と肛門に男根を突き立てられて蹂躙され、かえでが髪を振り乱して身悶えている。
媚肉もアヌスも爛れさせ、ひくひくさせながらもかえでは腰をうねらせ、男の突き込みに腰を合わせている。
後ろからかえでの肛門を責めている黒人が、大きく手を広げて豊かな乳房を揉みしだいている。
普段は軍服に押しつけられていて気づきにくいが、かえでのバストもかなり成熟していた。
その胸を思うさま揉み込まれ、かえでは乳首をはっきりと屹立させて喘いでいる。
汗を浮かせた身体を男に押しつけ、なおも深い挿入を求めているようにも見えた。

あのかえでが、これほどまでに淫らに崩れるとはとても思えない。
彼女は、マリアのように調教を受けた過去もないだろうし、きっと男関係も綺麗なものだっただろう。
処女ということはないだろうが、誰とでも寝てセックスを愉しむようなタイプでは決してなかったはずだ。
なのに今、マリアの目の前で喘ぎ悶えているかえでは、犯されることに快楽を感じ、乱暴な愛撫に反応し、性の愉悦に狂っているように見えた。

マリアはハッとした。
そして、怒りに満ちた声でバレンチーノフを糾弾する。

「あ、あなた、まさか……、まさかかえでさんにドープを使ったの!?」
「ほほう、よくわかったね。そうか、きみも経験者だからね」
「だ、黙りなさいっ……!」

レイノルズは、売春宿も運営したし、街娼を束ねてもいたが、常に娼婦は不足していた。
それも美人となると余計に少なかった。
そこで彼らは「これ」と思った女を誘拐、拉致し、トッドらによって性の泥沼に引き込んでからコールガールとして使ったのである。

しかし、それでもマリアのような屈しない女もいたし、体質的に冷感な女もいた。
そうした場合、最後の手段としてレイノルズは麻薬を使ったのである。
阿片を元にした一種の合成麻薬であり、もちろん中毒性もあった。
ドラッグを買うためのカネを得るために、そしてドラッグを使ったセックスの喜悦にのめり込むために、女たちは身を売るようになったのだ。

これを使われると、女たちは一様に自我を失い、意識が混濁したまま男に抱かれることになった。
それを何度も繰り返され、女たちはそれを日常として受け入れるようになり、またセックスにも目覚めていったのだ。
ドープの力で積極的に男にその身体を提供するようになっていったのである。

マリアも同じだった。
但し彼女の場合、そうした精神混濁というよりも、副作用的にあった媚薬的効果がより顕著であり、より鋭敏にさせられた肉体をトッドらに徹底的に
犯されて官能を突き崩されてしまったのだった。
その頃のマリアは人生など諦観していたから、中毒になる前に組織に下り、その中で活路を見出したからよかったが、中毒から抜けきれずボロボロに
なって死亡する女性も少なくなかった。
そんな危険なドラッグがかえでにも使われてしまったのだ。

「ど、どれだけ使ったの!? かえでさんは……」
「しぶとかったんでね、けっこう使ったかな。ドープの致死量などは知らんが、普通の三倍くらいはね」
「そんなに……!」
「それだけじゃない、犯すたびに注射したよ。ちっとも屈しないものでね、仕方なかった。新たな成分も加えたから以前より強力になっているはずなんだ
がな。きみもそうだが、ジャップの女はかなり手強いよ」

立て続けに投与されたらしかった。
マリアも致死量はよく知らないが、連日連夜それだけ注射されたらただでは済むまい。
それに、急性中毒で死亡する可能性ももちろんあるが、そうならなかったとしてもそんなに使われたらたちまち中毒になってしまうだろう。

「きさまっ……! ゆ、許さない、絶対に許さないわ!」

マリアは絶叫した。
映像では、相変わらずかえでが5人の男たちに蹂躙されていた。
思わずペニスを口から離し、大きな声で喘いだらしいかえでの頭を男の手が押さえこむ。
腹を突き出した白人が、かえでの髪に手を突っ込みながら自分の腰に押しつけているのだ。
その時、かえでの喉がぐぐっと膨れたようにも見えた。
男はかえでの喉奥まで犯していた。
激しく口から出入りする赤黒いペニスは、浮き出た太い静脈をかえでの唾液で淫らに光らせている。

男たちは、かえでの肉体とその反応に興奮し、遠慮なく激しく責め立てていた。
前後から、そして上下から激しく突き上げられ、かえでの華奢な身体は何度も何度も大きく揺さぶられている。
音声がないことが余計に想像力を刺激するのか、映像の中で喘ぐかえでの声が聞こえるような気がした。
怒張を強引にねじ込まれる悲鳴、望まぬ快楽に戸惑う声、そして官能を突き崩されて喘ぎ、よがる声がスクリーンから飛び出てくるのかようだ。
マリアはとても見ていられなくなり、顔を背けて目を堅くつむった。
目尻には涙が滲んでいる。

「やめて……! お願い、もうやめさせて……」
「……」
「かえでさんには何の関係もないわ! どうしてこんなことを……!」
「どうして? マリア、きみにその理由がわからないのかね?」
「……」

映像では、かえでへのレイプが続いていた。
肉感的でグラマラスなマリアとはまた違うが、充分に熟れた女体を男どもに貪られている。
肉づきのいい臀部が思い切り潰され、これでもかと直腸深くまでペニスが入っているのがわかる。
肉厚気味な媚肉にも、日本人より一回りは太そうな肉棒に貫かれ、奥深くまで抉られていた。

その尻を揺すりながら、かえでが喘いでいる。
かえでの口を責めていた男の表情が歪んだ。
と思うと、かえでの顔を抱え持って激しく腰を打ち込んだ。
かえでが目を大きく見開くと、男の腰が何度も震え、突き出していた。
次の瞬間、肉棒をくわえ込んでいた口の隙間から白い体液が溢れ出す。
男がかえでから離れると、かえでの口からたった今放出された精液がどろっと溢れ出した。

それを見て高ぶったのか、かえでの右手にペニスを掴ませ、しごかせていた男も呻いて射精する。
亀頭の先から勢いよく精液が噴き出され、かえでの右瞼と頬にびしゃっと引っかけられた。
続けて左手担当の男も大きく吠えて射精した。
びゅるっと音が聞こえそうなほどに激しく顔射され、かえでの顔を汚していく。
なおも射精しているペニスが、かえでの頬に突きつけられ、その美しい顔に精液がなすりつけられていた。

「ど、どうすれば……」
「なにかね?」
「どうすればいいのよ!」
「わかってるだろう。きみが我々のものになればいい」
「……」

要は、この魔物──降魔に弄ばれ、その様子を見せ物にさせろというのである。
そして、最終的には帝撃を捨てて紐育に残り、バレンチーノフの女となるのだ。
レビュウや歌劇の女優ではなく、ポルノ・スターとして大成させられる。
当然、バレンチーノフの政治的な手段として、コールガールの真似事もさせられるだろう。
レイノルズ一家にいた時の再現になるのだ。
いや、それよりもさらに過酷で侮蔑的なことになるだろう。
マリアは小さく震えていた。

「そんなこと……、できるわけないわ!」

降魔を憎み、対降魔専門部隊にいた彼女が、その降魔にレイプされる。
その恥辱と屈辱、そして恐怖は一般女性とは比較にならぬほど大きかった。
それでも屈さなければならない。
まったく無関係な──いや、恩人であるあやめの妹を巻き込むわけにはいかなかった。
というより、もう完全に巻き込んでしまっており、かえでは見るも無惨に犯されているのだ。
それを止める手立ては、マリアの身体しかないのだ。

マリアは今一度、フィルムのかえでに目をやった。
かえでは身体をぶるるっと震わせて大きく仰け反っていた。
気をやってしまったらしい。
それでも男たちは許さず、かえって激しく突き込んでいく。
射精を終えた男たちは、またかえでの手でしごかせ、あるいはペニスを掴んで乳房に突き立てている。
膣と肛門を突いている男の腰の動きが素早く、短くなっている。
射精が近いのだ。
犯されているかえでにもそれがわかるのか、その身悶えが一層に激しくなっていった。

後ろから犯していた黒人が、かえでの張った骨盤をしっかりと掴むと強く突き上げていく。
かえでの身体が浮き上がるほどの激しい責めだ。
そしてかえでの尻を腰に押しつけ、出来るだけ奥にペニスを突き刺してからぶるっと痙攣した。
小さく何度も腰が突き上げられ、腸内に射精されると、マリアはぐぐっと背中を反り返らせて絶頂していた。
その腸壁には、熱い精液が染みこんでいることだろう。

続けて媚肉を犯していた男も、子宮まで突き刺すような勢いで腰を密着させ、そこで射精する。
精液の勢いを子宮で直接感じたのか、かえでは目を剥いて大きく口を開けていた。
音声があれば、大声で絶頂を告げるかえでの声が耳に出来たことだろう。

彼らがマリアを言いなりにさせるために、かえでを使って脅すのであれば、単に彼女の頭に銃を突きつけてやればいい。
そうすればマリアは従うしかないのだ。
なのに、わざわざかえでに危害を加え、女の恥辱を味わわせている。
マリアは改めてバレンチーノフらの嗜虐性、残虐性に憤激を抱いた。
こんなことをするのは、マリアをいいように使うためだけでなく、美しいかえでの淫らなシーンを見たかったからに違いない。
マリアにとっては、かえでの指を一本切り落として送りつけ、脅迫するのと同じようなものだ。

「わかったわ……」

マリアは消え入りそうな声でやっとそう言った。
語尾が震えているのは隠しようもなかった。
トッドがにやにやしながら近寄ってくる。

「覚悟が決まったようだな」
「さ、触らないで!」
「おいおい、俺様が触る方がずっとマシだと思うぜ。これからされることを思えばな」
「……!」

マリアの目の前には、彼女が見たこともない降魔が蠢いている。
戦闘的な降魔ではないようだが、彼らの話を信じるならば人間の女に欲情し、犯すというのである。
そんなことをされるくらいなら、本当に殺された方がマシに思えてきた。
しかし、ここでマリアが死んだら、バレンチーノフはその身代わりとしてかえでに対してさらに惨いことをしてくるだろう。
マリアは進退窮まっていた。

「い、いや!」

マリアの乗ったストレッチャーが降魔の檻に近づくと、さすがに脅えた悲鳴が上がった。
バレンチーノフが嫌みな口調で問いかける。

「ほう、いやなのかね」
「……い、いやじゃないわ……」
「だろうね。よし、マリアの拘束を解け」
「へへっ」

トッドは嬉しそうにマリアの裸身から拘束具を取り外していく。
駄賃代わりにその身体をいじくってくるが、もはやマリアはそんなことにかまけてはいられなかった。
ベッドから下ろされると、マリアは背中を突き飛ばされてそのまま檻の中に転げ倒れた。

「ひっ……!」

マリアらしからぬ悲鳴が飛び出た。
転んだ時、腕が降魔に触れたのである。
いかに降魔戦闘の専門家とは言え、降魔そのものに直接触れたのはこれが初めてだった。
もっとぬめぬめしているのかと思ったが、ぺたぺたした感じである。
それでも気色悪いことに変わりはなく、マリアはまた悲鳴を放ち、慌てて後じさった。
マリアに触れたことで降魔は一気に活性化したらしく、うねうねと触手を蠢かせ、それをマリアの肢体に伸ばしていく。
それを見てバレンチーノフがドアマンに言った。

「ようし、観客を入れろ」

ドアが開くと、どっとばかりに人が入り込んできた。
無論、全員男である。
男たちは口々に「おおっ」とどよめき、驚いた顔で舞台の袖に近寄ってきた。
それをトッドが制している。

「客人、あまり近づかないでもらいましょう。テーブルを用意してありますんで、ご自分の番号が記入されているところで着席してください。すぐに
酒のサービスもありますんで」

大柄な黒人に注意され、客たちは自席に引き下がった。
その間も、舞台で展開されつつある不気味な絡みから目を離せなかった。
ガタガタと椅子を引く音がしただけで、あとはみんな押し黙るように舞台を凝視している。
普通、この手のショウはわいわいがやがやと賑やかに見るこことが多い。
舞台の女やその仕草や反応を肴に酒を飲むのだ。
ツッコミを入れたり野卑な評論をしたり、アルコールが入っていることもあって騒々しいのだ。
クライマックスになるとさすがに静かになってじっくりと見るのだが、総じて賑やかなものだ。

しかしこのショウだけは違った。
得体の知れないモンスターと美しいブロンド美女とのセックスシーンという、普通は考えられないショウなのだ。
高い金を払ってきただけの価値は充分にあったようだ。
その中にふたりほど、落ち着き払った様子で舞台を眺め、他の客に解説している連中がいた。
どうやらリピーターらしく、このおぞましいショウの常連らしかった。

そのうち、トッドの言う通りウィスキーが配膳されていった。
禁酒法が施行されているこの時代のアメリカでも、実は飲酒は禁止されていなかった。
製造と売買が禁止されているだけなのだ。
だから飲む分には罪にならぬが、造っても売っても買ってもならぬということで、事実上飲酒は出来ない。
マフィアはそこにつけ込んで、自ら密造したりカナダなどから酒を買い込んで、こうして高額で密売し、提供して資金源としていたのだった。

「い、いや……いやあああっっ……!」

マリアの絶叫が響く頃には、場内はすっかり満席となっていた。
マリアは無数の触手に絡みつかれ、宙づりになっている。
足首や膝に触手が巻き付き、大きく開脚させていた。
腕も触手に取り付かれ、自由を奪われている。
マリアの腕がわなわなと震え、筋肉が浮き出ている。
腕力に物を言わせて何とか腕を引き寄せようとしているのだが、とても降魔の力には及ばなかった。

この触手、内部に骨があるようには思えないのだが物凄い力であった。
触手というよりも「触腕」と呼びたいくらいだ。
骨はないようだが、皮膚の下にはかなり強力な筋肉があるらしく、自在に動き、目標に絡みついたり巻き付いてくる。

そのうち、皮膚感覚が変化してきた。
最初はぺたぺたした感じだったのに、今ではぬらついている。
どうも皮膚から体液がにじみ出てきているらしかった。
ぬるぬるしてくれば、当然摩擦抵抗力は落ちるので、巻き付いた触手から腕や脚がぬるりと抜けそうなものなのだが、どうしたことか、これがまったく
抜け取れなかった。
幾重にも巻きついていているせいもあったし、想像以上に強く絡みついていたのである。

「くっ……、き、気持ち悪いっ……!」

マリアはあまりのおぞましさに鳥肌を立てて抗った。
両脚をばたつかせ、腕に力を込めて何とか逃れようとするのだが、ぬるぬるした体液が肌に塗りつけられるだけで、一向に思い通りにはならなかった。
暴れさせている足や腕がたまに降魔の身体を蹴ったり殴ったりすることもあるのだが、まさに「柳に風」状態で何のダメージもないようだった。
手で触手を掴み、ぎゅっと握ってみると、触手はむくむくと反応し、熱く、そして太く変化していく。
そのペニスのような反応に、マリアは驚いたように手にした触手を見つめている。

「ううっ……、い、いや……こんなの……くっ、は、離れろ、この化け物っ!」

なおも観念せず、マリアの抵抗は続いた。
いかにブラッディ・マリアと言えども、こうなってしまっては逃亡は不可能と見ているのか、バレンチーノフたちも客たちも、マリアの抵抗を愉しげに
眺めている。
スポットライトに照らされ、降魔と絡むマリアの白い裸体が妖しく浮かび上がっていた。
白い柔肌に濃褐色の触手が数十本も食い込み、巻き付き、絡んでいる。
雪肌が黒いロープで緊縛されているような、そんな淫靡で妖艶さがある。
しかも縛っているのはただの縄ではなく生物だということが、余計に妖美さを醸し出していた。
触手が淫らに絡みついているのは腕や脚だけではない。
尻にも腿にもそれが巻き付き、細いウェストを締めつけるようにぐるぐると縛り上げている。
触手の隙間から、女の柔らかい肉がはみ出しているのが見えた。

「くっ……、いや! こ、この……ああっ……!」

マリアがもがき、暴れると、豊かな乳房がぶるんぶるんと大きく揺れ動く。
その乳房にも触手は巻き付いており、片方ずつ乳房の根元にぐるぐると巻かれていた。
そのせいで、まるで絞り出されるように乳房が括り出され、マリアの巨乳が一層に強調されている。
うねる触手どもは、マリアの肌に体液をぬりつけるようにその身を擦りつけていた。
触手は腋にも股間にも伸び、首筋を這い、指の間をのたくった。
ぬらっとした体液が、いやでもトッドとのオイルプレイを思い出させてしまう。
その時の恥辱、そして快楽までが肉体に蘇ってきてしまった。
マリアの乳首は情けなくも反応してしまい、ぷくりと乳輪ごと膨らんでいた。

「い、や……あっ……う、ううっ……」

まるで揉みしだくかのように触手が蠢き、マリアの乳房を絞り上げていく。
触手の一本が蛇のようにむくりと鎌首をもたげた。
そして、その亀頭にも見える先端がパカッと口を開いたのだ。

「ひ……!」

小さく開いたその口と思しき穴には歯はなかった。
その代わりに無数の小さな触手群があった。触手というより襞なのかも知れなかった。
恐ろしげな表情でそいつを見つめていたマリアの顔が引き攣った。
触手がぐぐっと迫ってきたのだ。
悲鳴を上げる間もなく、触手は小さい口でマリアの勃起した乳首に吸い付いてきた。

「くあっ!!」

触手に思うさま乳首を吸われ、マリアは大きく喘いだ。
触手はマリアの突起した敏感な箇所に吸い付くと、咥内の襞を一斉に蠢かせて乳首を締めつけ、擦り、刺激した。
人の口に吸われ、舌で嬲られるのとはまるで違う愛撫に、マリアは激しく反応する。

「あっ、あっ! ひっ、いやあっ、んあっ……だ、だめ、あああっ!」

強烈な快感だった。
無数の小さな舌が同時にひとつの乳首を舐めしゃぶっているかのようで、居ても立ってもいられない。
勝手に腰がうねり、背中が反り返った。
足の指までぐぐっと大きく反っていた。
触手はうねうねと蛇のようにマリアの乳房に巻き付き、絞り上げながら、その突端の口を開いて乳首を激しく吸っている。
もう片方の乳首も、別の触手が同じように責め始めていた。

「あっ、そ、そっちも……だ、だめええっ……!」

マリアの悲鳴が喘ぎに飲み込まれていく。
責められているのは乳首だけではない。
股間にも触手が取り付き、その胴体で激しく媚肉と肛門を擦り上げている。
もうマリアのそこはぐっしょりで、それは降魔の体液だけではないようだった。
たまらないとでも言うように、マリアの尻がくりっ、くりっと左右に振られている。
その動きに刺激されたのか、下半身を責めている太い触手が、マリアの震える臀部に潜り込んだ。
尻の谷間に入り込まれ、マリアは絶叫した。

「いやああっ、そ、そこはあっ……あ、あはあっ……!」

奥で恥ずかしげにひくついていたアヌスに興味を持ったのか、触手はそこにぐぐっと頭を押しつけている。
湿り気を帯び、すっかり柔軟になっていた肛門は、押しつけられた異物におののくようにキュッと収縮した。
過去に開発されたものの、トッドに執拗に責められて忘れかけていた快感が込み上げてくる。
触手がぐりぐりと押しつけられると、まるでそれを飲み込もうとするかのように口を開けかけ、腸液がとろりと漏れ出てきた。

「ああ……、いやあ、お尻……しないで……くあっ!」

人の言葉が通じるはずもなく、マリアの言葉を無視して触手がそこに入り込んでいく。
亀頭にも似た円錐形になっている触手の先端は、僅かに肛門に食い込むと、ぬるっとばかりに受け入れてしまった。
まるで自分から飲み込んだかのように、ほとんど抵抗なくあっさりと貫かれた。

「あっ! そんな……、お、お尻に降魔が……んああっ!」

マリアの肛門はしっかりと触手をくわえ込んでいた。
胴体を絞られるように締めつけられた触手は、やや動きづらそうにゆっくりと抜き差しを始めた。
ぬぷっ、ぬぷっと深くまで挿入され、奥深くまで突っ込んだまま胴体を回転させて直腸をかき回すような動きすら見せている。

「んひぃっ! い、いやあっ、動いちゃいや……くうあっ!」

マリアは嬌声にも似た悲鳴を放って全身を震わせた。
そのくせ腰を絞るようにして、アヌスにくわえた触手をより強く絞り上げている。
筋肉質で硬く、そして熱かった。
知らないままで犯されていれば、人間のペニスだと勘違いしそうなものだった。

「い、いや……あう……あっ……んっ……んっ……んんっ!」

ぬぷっ、ぬぷっと深くまで突かれ、そして引き抜かれる。
犯されるようにリズミカルに律動され、アヌスの粘膜がめくれ上がり、まためくれ込んで中に押し戻されていく。
マリアの神経はいやでもアヌスに集中してしまうのだが、触手どもはひっきりなしに他の性感帯も愛撫している。
乳房に乳首、腋、脇腹、首筋、内腿、そして足の裏や指の股まで、およそ考えられる性感帯を刺激され続けていた。
媚肉も、挿入こそされていないものの、膣穴と肉芽の上を下から上へ、また上から下へとぬらついた胴体を使って盛んに擦ってくる。
バレンチーノフの言う通り、人間の女を犯し続けることにより、反応の強い箇所を学習しているのだろう。

わからないのは、なぜそんなことをするのか、ということだ。
殺すでもなく、捕食するわけでもなさそうだ。
淫虐な男のように、ただひたすら美しい女を嬲り、犯すことに専念しているように見えた。
マリアが腰を捩る。

「んんんっ、だめっ……あ、あ、そんな深くまで……」

トッドの逸物でも30センチはなさそうだった。
しかし触手の方は数メートルはある。
その気になれば、マリアの肛門から挿入し、口まで突き通すことも可能なのだろう。
そこまでいかないにしても、マリアのアヌスを犯している触手は深々と腸腔を抉っていた。
直腸を通り抜け、小腸にまでも届きそうなほどだ。
マリアのなめらかな腹部に、腹深くまで入り込んだ触手の形がなだらかに浮き上がっている。
抜き差しされるたびにそれが激しく蠢き、マリアの腸管を擦り上げていた。

「あうう、深いっ……ふ、深すぎるっ……やっ、怖い……深すぎて、ああ……んひぃっ!?」

それまで苦鳴と喘ぎを交互に放っていたマリアは、目を剥いて絶叫した。
唐突に触手の先から液体が噴出してきたのだ。
腸管の奥で口を開いた触手から、どぼっと濃い液体が腸内に注ぎ込まれていく。

「ひぃああっ、いやああっ! やっ、何か……何か入ってくるうっ……やめて、いやあああっ!」

マリアは大量に注がれてくる液体を腸管で感じ取り、美しいブロンドを振り乱して絶叫した。
トッドに何度も浣腸責めされているが、それとはまた違ったおぞましさだった。
あの時は、肛門にノズルが入り込んでちゅるちゅると注入されたが、今度はノズルなどよりずっと太いもの──まるで男根のような──を挿入され、
そこからどっとばかりに注ぎ込まれるのだ。
浣腸されているというよりは、肛門性交で大量に射精されているかのような感覚だ。
マリアは何とか逃れようと激しく双臀を振りたくるものの、深々と入り込んだ触手が抜けるはずもなく、大きな尻たぶから生えた尾のように打ち振られるだけだった。

降魔による浣腸責めに、見守る観客たちは声もなく見入っている。
それまでの触手による女体愛撫だけでも充分に変態どもの劣情をそそるものではあったが、その触手が女の中に入り込み、射精までしているのだ。
客の中には、ズボンの前を押さえ込んで舞台を凝視している者もいた。

「は、はあっ……はああっ、いやあっ……ぐぐ……お尻……お尻が変になるっ……ひぃっ!」

どぶどぶと注入されていく降魔の体液は、浣腸液のように冷たくはなかった。
降魔の体温と同じなのだろうが、ぬるま湯のような温度である。
温度的には楽なはずなのだが、何しろ入れられる量が段違いだ。
強制的に体液を肛門に注がれて、マリアのそこはきゅっ、きゅっと強く締まって触手を絞り上げている。

「い、いや、あうう……もういや……もう入れないで、ああ……くううっ……」

アヌスに首を突っ込んだ触手がうねり、どくどくと体液を吐き出している。
他の触手たちの動きもおとなしくなり、まだマリアの肌に這ってはいるものの、愛撫自体は弱くなっていた。
それでも、一時も休まず性感帯を刺激し続けていることに変わりはない。
マリアの声がつんざくような悲鳴から、呻くような苦鳴に変化してきた。

「んっ……んむう……う、ううっ……あ、あ……はああっ……」

見ようによっては、マリアのアヌスからマリア本人の腸管が飛び出しているようにも見える。
その触手の管を通り、体液は相変わらず注入されていった。
もうマリアの腸管にはかなりの量の体液が溜まっているはずだ。
トッドに連続浣腸責めされた時ですら、一回あたりの注入量は1リットル弱だった。
それくらいの量はもう充分に入っていそうである。

「はっ……く、苦しい……お腹が苦しいわ……あ、もう……」

マリアの美貌が苦悶していく。
お腹もぐぐっ、ぐるるっと鳴りだした。
それでも降魔は注入を許さず、なおも体液を吐き出している。
マリアは歯を食いしばって苦しさに耐えていた。

「も、もう……入れないで、あ、もう入らないわ……苦しいっ……お腹が……ああ……」

触手がうねり、どくっと体液を注入してくるたびに、マリアの腰がびくっと小さく痙攣した。
もう全身は汗にまみれ、珠のような肌に汗が伝い落ちている。
媚肉もぐっしょりだ。
触手表面から分泌されている体液もあろうが、それ以上にマリアの内部から漏れ出てきた愛液によって陰毛がべったりと肌に貼り付き、毛先からぽたぽたと
垂れ滴っていた。

「もうだめ……あっ……い、入れないで、あああ……お、お尻もお腹もおかしくなるわ……」

マリアの臀部が力なくなよなよと振られている。
よほど苦しいらしい。
しかし、マリアの言葉など降魔に理解出来るはずもなく、己の満足するまで体液を放つのだろう。
見ているバレンチーノフたちだって、当然止めるつもりはなかった。

「やっ、あ、まだ……まだ入ってくるっ……も、もう入らないのにぃっ……うあっ……」

この辺りから、マリアの白い腹部がなだらかに膨らんできた。
相当量入っているようだ。
とてもたまらず、マリアは腰を振り、身体を捩るのだが、そんなことをすれば余計に液体が腸内に広がり、染みこんでいくことになってしまう。
それでも、どぶっ、どろっと体液の射精があるたびに、勝手に腰が激しく振られてしまうのだった。

「い、いや……きつい……お尻がきついっ……く、苦しくてもう……ああ……」

美しい女が苦悶し、身悶える姿は男の官能を激しく刺激する。
快楽によがり泣く姿もいいのだが、サディストたちにとっては苦しむ美女を眺めることこそ至高の快楽だった。
テーブルの客たちは、舞台の上で異様な浣腸責めに妖しく呻くマリアの肢体を、息を飲んで鑑賞している。
サービスしているバニースタイルのウェイトレスたちまで、声もなく舞台を見つめていた。

「やめて、もう……ああ、まだ入ってくる……無理、もう本当に無理よ、ううっ……お尻、どうにかなる……苦しいっ……!」

マリアの美貌が青ざめている。
眦を決し、蒼くなった唇がわなないていた。
もう腰の痙攣は止まらず、足首が盛んに曲げられ、また伸ばされている。
足の指はもう屈まりっぱなしである。

そのうち腰の動きが止まってきた。
細かく痙攣するだけで、あまり身体を動かさなくなっている。
あまりにも多くの量を浣腸されたため、僅かに動くだけで内臓の鈍痛が激しく、漏れ出てしまいそうになっているのだ。
このまま際限なく浣腸が続けられればマリアは失神してしまうだろうし、死に至る可能性すらあった。
しかし降魔の方もマリアを害するためにやっているのではなく、彼女の変調を見てとったのか、その時点で体液の噴出を止めた。

「ああ……」

ようやく浣腸が終わり、マリアは小さく安堵の息を漏らしたものの、ぶるるっと大きく臀部を震わせた。
マリアの腸内は降魔の体液で満ちあふれており、渦巻くような排泄欲に苛まれていた。
トッドの浣腸責めも激しかったものの、それでも一回あたりの量は1リットル弱だった。
今回はその3倍近く入っている。
とても我慢できるようなものではなかった。

しかし、まだマリアのアヌスには太い触手が深々と突き刺さっている。
排泄を見せ物にされる恥辱はあるが、それすら許されない状態になっていた。
肛門に入り込んだ触手は、マリアのそこを拡げるように回転し、粘膜を巻き込んで擦り上げていく。
乳房を責める触手も相変わらずだし、股間を撫でまわしている触手どもも、たっぷりの体液を媚肉やクリトリスに塗りつけている。
そのどれもがマリアの便意を激しく刺激した。
ちょっと触れられるだけで肛門が決壊しそうになっている。

「やっ……、お、お尻に響く、あっ……ぐぐ……、お腹が……お腹が苦しいっ……ああ……」

淫らな男たちの目の前で排泄させられることを恐れ、マリアは死ぬ思いで便意を堪えている。
一方で、早く出したいのに触手が埋まっているせいで出せないというジレンマに苦しんでいた。

「あ、ああっ……!」

アヌスに挿入されていた触手が、突然にぬるぬると抜き取られていく。
5センチ、10センチと少しずつ肛門から外に出て行っている。
美女のアヌスから太い触手が抜かれていくさまは何とも妖しく、主催者側のバレンチーノフたちでさえ、声もなくマリアの痴態を見つめている。

「あう!」

大方出終わったあたりで、マリアが甲高い悲鳴を上げた。
触手の顎のあたり──ペニスで言えばカリ首の出っ張った部分が肛門の内側に引っかかったらしい。
それにしても随分長いものが入っていたようだ。
マリアのそこから姿を現した触手は1メートル近かったのである。

「あ、そんな……、やっ、ぐりぐりしちゃだめえっ……で、出てしまう……あ、あっ……」

思わずマリアが括約筋を引き締めると、今度はずずっと奥に潜り込んでいく。
そして腸内に満ちている体液をかき回すように、うねうねとうねくるのだった。
たちまちマリアの腹痛は酷くなり、気も狂うような便意が押し寄せてくる。
その腹からはひっきりなしにグルグルッと地鳴りのような熱い音を立てていた。
マリアの震える唇から引き攣ったような声が上がる。

「だ、だめ……もう本当にだめっ……あ、出る……あああ、だ、出したいっ……さ、させて、お願いっ……もう本当に……苦しいっ」

マリアの全身が切羽詰まったようにわなないている。
観客達は息を詰め、身を乗り出して、決壊直前の哀れな美女を見つめていた。
バレンチーノフはマリアと降魔の様子を見て、さっと手を挙げる。
すかさず舞台の袖から黒服の男たちが飛び出してきて、降魔とマリアが絡んでいるあたりに丈夫なビニールシートを敷き詰めた。
それを合図にしたかのように、マリアの肛門から触手がずるるっと引き抜かれていく。
腸壁と肛門粘膜を思うさま擦られ、マリアは白い喉を大きく仰け反らせて喘いだ。

「んひぃぃっ……!!」

マリアはガクンガクンと大きく裸身を二度ほど揺すった。
絶頂したらしかった。
そしてまたカリ首がアヌス内壁にひっかかったが、今度はそこから一気にずぼっと引き抜かれた。
気をやった余韻に浸る間もなく、マリアはまた全身を大きく痙攣させる。

「あ、で、出るっ……出てしまう……あ、あっ、もうっ……もう我慢できないっ……」

懸命に肛門を引き締めたマリアだったが、その気力もあらかた使い果たしたようで、引き窄められたアヌスが内側からぐぐっと大きく膨らんできた。

「だめっ……もうだめっ、で、出るっ……ああ、出ちゃう、見ないで……んんんっ、で、出るっ、いやあああっっ!」

絶望的な絶叫を残し、マリアは恥辱の塊を解き放った。
それまで必死になって押しとどめていた便意が炸裂し、硬く窄まっていた肛門が開ききって粘膜まで晒しながら激しく排泄する。

「あ、あっ……ああ……いやあああ……」

嗚咽混じりの呻き声を上げつつ、マリアのアヌスは大量の溶液を吐き出し続けている。
但し、そこには便はほとんどなかった。
事前にトッドが執拗に浣腸責めしたせいだろう。
これがあるからこそ「前処理」として、あの黒人はマリアに浣腸を仕掛けたらしかった。
さすがに飲食をしている観客の前で脱糞させるわけにはいかないだろう。
マリアの肛門からは、切れ目なくどぶっ、どぶっと排泄が続き、たちまちシートの上は降魔の体液でいっぱいになる。

「う、あっ……いや、まだ……まだ出る……ううんっ……見ないで、いやあっ……あ、出る、まだ出ちゃうっ……はああっ……」

苦悶した美貌を歪ませながら、マリアは臀部をぶるるっと震わせながら、ドッと排泄している。
苦しげに呻き、喘ぐマリアの表情は妖艶ですらあり、見ている男たちはそそり立った。

「やっ……ああ……で、出る……止まらない……あああ、出てる……見られてる……こ、こんな……こんなことって……ああっ、出るっ……!」

マリアはわななく唇を半開きにしながら、開ききった肛門から垂れ流し続けている。
時折ぴくっと痙攣し、背を反らせている。
媚肉が濡れそぼち、陰毛から蜜が滴っているところを見ると、便意を解放し、排泄することの快感で絶頂しているのかも知れなかった。

激しい排泄で体力を使い果たしたのか、マリアはぐったりとその身体を降魔の触手に預けていた。
腹は大きく波打ち、豊かな乳房も汗にまみれ、荒々しい呼吸で激しく揺れ動いている。
その疲れ切った美女の裸身に、それでまえ遠慮がちに動いていた触手どもが本格的に蠢き始める。

「はうっ!」

ふたつの触手が口を開き、それぞれ左右の乳首に食らいついていく。
たっぷりとした乳房も、幾重にも触手が巻き付きいていった。
ぎゅうっと絞り出され、縊り出た乳首を強く吸われ、咥内の無数にある襞でこねくられ、マリアは活が入ったように裸身を突っ張らせた。
他の触手たちも腕を絡め取り、腿に巻き付き、腰を締めるように絡んでいった。
一斉に攻勢に出てきた触手の動きに戸惑いながらも、官能ポイントへ絶妙なタッチと愛撫を加えてくる降魔に対し、マリアは為す術もなく喘いでしまう。

「んっ、いや……もう、いやよ、あっ……くっ、あ、そこっ……いっ……あああっ!」

突然にマリアの目が驚いたように見開かれた。
ビクンッと小さく裸身が震える。

「ああ、変よ……お尻が……お腹が変だわ、熱い……か、身体が熱いっ……」

大量の体液を受け止めさせられた腸管がカッと熱くなってきた。
腸壁に染みこんだ体液がじわじわと全身へと広がっているのがわかる。
それと同時に、灼けてきているのが腸だけではなく下半身全体へと伝わってきていた。

内臓が熱い。
腸管はもちろん、なぜか膣道やその奥──子宮やその中まで熱を帯びてきている。
熱いだけではない。
たまらないほどに疼いてきていた。あっと気づいた時には、甘い痺れが上半身へも届いている。
乳房まで熱い。
それも乳房の中が燃えるように熱かった。
乳首がジンジンと痺れ、乳輪が盛り上がるほどに膨れあがっていた。
そこを触手の舌で舐められ、襞で擦られるのだからたまらない。
マリアは頬を紅潮させ、熱い吐息で喘いでいた。

「あ、あ……おかしいわ、こんな……だめ、こんなの……ああ、熱い……う、疼いて、もう……ああ……」

明らかに媚薬効果が出ている。
女を犯すこの降魔は、自ら分泌させた成分を使って、獲物を性的に興奮させる能力を持っているらしかった。
もしかすると皮膚表面から滲み出ていたぬるぬるした体液が、マリアの肌から染みこんだのかも知れない。
そして、あの大量に浣腸された体液こそ媚薬だったのだろう。
吸収の良い直腸からそれを吸わせ、女の身体を蕩かせ、燃え立たせ、それによって降魔を受け入れさせるに違いなかった。
かえでに投与したドープに加えた新たな成分というのも、恐らくはこの体液のことだと思われた。

触手の中でも太めの数本が、悶えるマリアに興奮したかのように、ぐぐっと鎌首をもたげた。
それに気づいたマリアが本能的に股間を守ろうとして脚を引き寄せようとしたが、触手が左右の脚にしっかりと巻き付いてビクともしなかった。
淫らにM字開脚され、無惨に割り開かれた股間に、太いものがぬーっと近寄ってきた。

「い、いや……、あああっ!」

触手はその口から蛇のような舌をちょろっと伸ばしてマリアのそこに這わせている。
マリアは目を堅くつむってその感触に耐えているもののの、小刻みに裸身が震えるのが止まらない。
直径7センチくらいはありそうな触手は、マリアの媚肉に亀頭を食い込ませた。
硬さはトッドほどではなかったが、太さはさらに一回り太そうだった。
触手はほとんど抵抗なくずぶずぶっとマリアの膣口へ入り込んでいく。
蛇が穴に入り込むように胴体をうねらせ、奥へ奥へと潜り込んでいく触手に、マリアは目を剥いた。

「んんああっ、ふっ、太っ……太いっ……あ、入るっ……奥まで……奥まで来るっ……あ、まだ入るの!? だめ、深いぃっ……! んひっ!」

子宮口に到達し、触手の頭がそこにぶち当たると、マリアは背を仰け反らせて悲鳴を上げた。
なおもそこに頭をめり込ませ、ぐりぐりと子宮口を責めてマリアを何度も喘がせている。
かと思うと、ずるるっと素早く引き抜き、またずぶずぶっと奥深くまで抉ってくる。
そのスピードが半端ではない。男の腰使いではとても無理な速度と勢いで激しく突いてくるのだ。

「うああっ、はっ、激しいっ……激しすぎるっ……ううんっ……だ、だめ……ひっ……いああっっ!」

マリアはびくんと大きく裸身を弾ませて達した。
媚薬のせいもあるが、ものの数分で絶頂してしまったのだ。
マリアが気をやったことがわかったのか、客席からも「おおっ」とどよめきが上がった。
続いて淫らな笑い声や、野卑なかけ声もかかった。
そんなものを気にしている余裕はなく、マリアはさらなる攻撃に身を震わせるしかなかった。

それでも、顔に近づき口を狙っているらしい触手に気づくと、慌てて頭を振りたくり、顔を背けた。
だが、マリアも降魔に責められる異様な快楽に取り込まれつつあった。
無理もなかった。
全身にうねうねとした触手が無数に絡みつき、ぬめった皮膚を擦りつけているのだ。
あらゆる性感帯への愛撫が、人外のものに責められるという屈辱と汚辱を飲み込んでいく。
そしてマリアの肢体が上下前後へ激しく揺さぶられるほどに強い突き込みを受け、次第に息を熱く荒げていった。

「んっ、ああっ! うああっ、だめ、深いっ……ああ、そんなところまで……子宮が壊れちゃうっ……!」

乱暴に突き上げられながらも、マリアは苦鳴よりも喘ぎの方が多くなっていく。
そんなマリアの様子に興奮しているのか、マリアの周囲で蠢く他の触手どもも、じわじわと汗にまみれた白い身体に近づいてくる。

「ひっ!」

いきなり尻を割られ、マリアは悲鳴を上げた。
数本の触手が器用に動き、双臀を割り拡げたのだ。
あっと思う間もなく、一本の触手がその鎌首をピタリと肛門にあてがった。
予想もしなかったところに硬い感触を受け、マリアは驚いたようにそっちを見やった。
触手たちが協力し、マリアの太腿に巻き付いて大きく開脚させ、その上で尻を割っている。
谷間の奥に隠れていた窄まりには、触手が亀頭を突っ込もうとしていた。
人間だけでなく降魔までもが排泄器官に興味を持つことにマリアは驚愕していたが、この触手降魔は単に暗くて暖かいところが好きなだけなのだろう。
だからこそ女の穴という穴──膣に口、そしてアヌスまで──に関心を示すのだ。
その奥の粘膜に体液を蒔くのを目的としているのである。

「だ、だめ、お尻っ……いやああっ!」

媚肉を太いもので貫かれ、抜き差しされるたびにアヌスはひくひくと蠢いていた。
そこを降魔が見逃すはずもないのだ。
しかし人間の男と違って、そこが使用可能になるまで揉みほぐすようなことはしないらしい。

「だ、だめ、両方なんてだめえっ!」

マリアはそう叫ぶものの、人語が通じるはずもなかった。
ぐぐっと肛門が割られそうになると、マリアの裸身が脅えたようにひくついた。
少しでも逃げようと腰が浮きそうになるが、それを他の触手たちが絡みついてがっしりと押さえ込んでいる。
口先を尖らせ、食い込んでいた降魔は、そのまま禁断の穴にずぶずぶと入り込んでいった。

「んぐあああっっ……!」

いきなりの肛門性交だったが、マリアのアヌスは触手を受け入れてしまい、皺をいっぱいに伸ばして広がって中へと侵入させていく。
いっぺんに前後の穴を占領され、マリアは苦しげな悲鳴を放った。
そのすぐ前では、媚肉を貫き、子宮を押し上げている触手が繰り返し繰り返し抜き差ししている。

「んっ、ああ……苦しいっ……どっちも太くて……苦しい……はああっ……」

大柄で豊満なら肉体を持ったマリアだが、その豊かなヒップすら窮屈そうに見えるほどに、そこを貫く二本の触手は太く、長かった。
さすがに苦しいらしく、時折大きく口を開けて息苦しさを訴えている。
前後を同時に深々と貫かれた美女が苦悶の表情を浮かべても、もちろん降魔は頓着しない。
見ている客たちも、むしろその苦しそうなマリアの美貌にマゾっ気を感じるらしく、ますます興奮しているようだった。
マリアを犯す触手たちも、いっそうに活き活きと蠢き、うねくっている。
マリアの膣やアヌスの締めつけ、胎内の温度や柔らかさなどが好みに合うらしい。

「ぐ、ぐっ……だめ、裂けるっ……ああっ……」

やがて触手の太さにも慣れたのか、マリアの悲鳴がか細くなってきている。
変わって、籠もったような呻き声と、微かに漏れる喘ぎが漏れ出てきた。
マリアの変化がわかるようで、触手たちもリズムを合わせてその股間を埋め尽くし、抉り回した。マリアの口が半開きとなり、熱い喘ぎを漏らすようになってくると、それまで口を狙って拒絶されていた触手が色めき立ってくる。
僅かに開いた唇を目がけて、これも太い触手が近づいた。

「んっ、ぷあっ!? い、いや……! あ、あむううっ!」

はち切れそうなほどに膨張した触手が、マリアの唇に押しつけられたかと思うと、容赦なく侵入していった。

「むぐっ……!」

美貌を歪ませながらも、マリアはその太い触手を口いっぱいにくわえ込んでしまった。
舌で奉仕するなど思いも寄らなかったが、何せ太くて口いっぱいになっているせいで、触手の胴体や亀頭が咥内のあちこちに当たり、舌に触れてしまう。
その柔らかさと熱さ、ぬめる粘膜に狂喜した触手は、喉の奥にまで入り込もうとしていた。
今やマリアは、股間の二穴を同時に突き込まれ、口にも太いものが隙間もないほどにくわえさせられている。

(ふ、太いっ……どれも太すぎて……すごいっ……!)

もうほとんど抵抗力を失ったマリアの腕に触手が力強く巻き付いた。
二の腕に巻かれ、手首にまで届くと、手のひらに潜り込んでいく。
マリアは反射的にそれを握ってしまった。両手とも触手を握らされ、しごいている。
いや、しごいている感覚ではないのかも知れない。
掴んで振りほどこうとしているのか、あるいは握りつぶそうとしているのかも知れなかった。
しかし触手の皮膚はぬめっていて、いくら握ってもぬるっと逃げるように上下に動く。
結果的にそれがしごいているのと同じ効果を生み、触手は大喜びでマリアの手に握られている。

「むぐっ……ぐぐっ……」

もう鼻からしか呼吸が出来ず、喉奥まで太いものに貫かれたマリアは噎せ返りながらも触手を受け入れ、必死になって飲み込み、吸い立てていた。
腰も触手に合わせて蠢いており、完全に受け入れている。
上下前後からの激しい突き上げでガクガクと裸身を揺らし、全身をうねらせていた。
口に突っ込まれた触手がなければ、よがり声を放っていたかも知れない。
手は懸命になって触手をしごき、口でも触手にむしゃぶりついている有様だ。
降魔憎しのマリアがここまで反応してしまうところを見ると、どうやら降魔の分泌する体液の媚薬効果はかなりのものらしかった。
もっとも、それだけでなく、マリアは嫌っている男に嬲られたり、無理矢理に辱められたりすると燃える体質でもあるようだから、そのせいでもあるのだろう。

「むむう……んむっ……んんんっ……!」

三つの穴を同時に犯され、さらに両手にまで触手を握らされたマリアは、もう何が何だかわからなくなってきている。
命令されたわけでもないに口で啜り、手を動かし、腰を必死になって揺すり、半狂乱になって身悶えていた。

「んっ、んむっ……んむううっ……」

マリアの裸身から小さな痙攣が止まらなくなってきている。
腿も腕も粟立っていた。
いきそうになっているのだ。

(だ、だめよ、こんな……、こんなことでいくなんて……絶対にいや! ……ああ、でも……でも、もうっ……!)

突然、マリアが目を剥いた。
胎内深くまで入り込んだ触手が、いよいよ子宮に攻め込み始めたのである。
マリアの子宮口は硬い亀頭で散々突き上げられ、あるいはぐりぐりと抉られていたが、とうとう屈服し、小さく口を開いてしまった。
それを確認すると、触手の亀頭がパカッと割れた。
そこからいくつもの細い子触手が顔を出している。
マリアの乳首に食いついているのと同類なのだろう。
その細い触手は、先っぽから興奮の先走り液を滴らせながら、マリアのおののく子宮口へと侵入していった。
一本がするりと子宮内に入り込むと、他の子触手も一斉に子宮口へと殺到していく。
子宮内を子触手の伸ばすさらに小さな舌で舐め上げられ、マリアは声もなく絶頂した。
マリアがオーガズムに到達すると、降魔全体がぼうっと青白く光る。

「……っ!!」

内臓の内側を無数の舌で舐められるその快感に、マリアは背骨が折れそうなほどに仰け反り、腰をぶるるっと何度も大きく震わせて気をやっている。
そのたびに降魔も小さく痙攣し、青く光った。口も極太触手で塞がれているため、喘ぐ声や快感を訴えるよがり声も出て来ないが、常にくぐもった熱い呻き声が漏れ出ている。
マリアが連続的に絶頂に達し始めると、触手どもの動きも忙しないものになっていく。
乳輪ごと盛り上がった乳首に吸い付いているやつは、小さな歯を立ててマリアのそこを引っ張り上げている。
アヌスに入り込んだ太い触手は、乳首や媚肉を責めているのとは違うらしく、口を開けて子触手を出したりはしなかったが、太くて硬いままどこまでも奥へと進もうと藻掻き動いていた。
喉を犯している触手も、出来るだけ奥へと入り込もうとしているのか、咥内から喉にまで到達していた。
今では、マリアの細い首は触手の形に膨らんでいる有様だ。
手のひらに握られている触手も、マリアの指がまるでペニスを愛撫するかのように擦り、扱いていた。

「むううっ……むうっ!」

マリアがまた気をやった。絶頂させられるごとに、マリアの穴が一斉に収縮し、引き窄められる。
締めつけられると触手の方もぐぐっと硬く膨らんでいくのがわかる。
今ではもう限界まで膨張し、張り詰め、触れれば破裂しそうなほどに勃起していた。
この辺もまるでペニスと同じだ。

「む、むううっ……ぐうううっっっ!」

マリアの裸身が大きくたわみ、しなやかに跳ねる。この日、何度目になるかわからない絶頂に達すると、その締め上げには耐えきれなかったらしく、触手どもも大きくぶるっと震えた。

「……っ!」

その瞬間、マリアは声にならぬよがり声を発し、また達した。
膣と肛門を犯していた触手が、ほぼ同時に射精したのだ。
直腸には、さっきの浣腸と同じように大量の精液がどぷぷっと放出され、マリアの腸管を穢し、腸壁に染みこんでいく。
膣──というより子宮を犯していた触手の方は、伸びた細触手が何本も子宮内に入り込んで、そこで射精している。
細いから一本あたりの量は大したことはなかったが、何本もの触手が同時に射精し、マリアの子宮内を精液で白く染めている。

子宮内をくまなく精液で犯され、マリアは何度も気をやった。
降魔の全身から、ぼうっと青いオーラが何度も上がった。
どうもこの降魔は、マリアの性的エネルギーを吸い取っているようだった。
つまり、マリアのオーガズムに到達させ、その時に発せられる「気」を養分としているのだ。
青いオーラが色が濃かったり、光り方が強かったりするのは、マリアの絶頂の激しさや深さを表現しているらしい。
こうしてエネルギーを得るとともに、その子宮に子種を植え付けて繁殖させているのである。

「んんっ!? んっ、んごっ……んく……んく……んぐっ……」

喉を犯していた触手も射精している。
ほとんど食道まで犯していたから、こうなると口で飲ませるというよりは、直接に胃の中へ射精しているようなものだった。
精液が降魔本体から迸り、触手の胴体をせり上げながらマリアの内臓へ射精する。
マリアは、触手の胴体が精液で盛り上がり、亀頭から激しく射精されている様子を、喉や食道で感じ取っていた。
マリアが絶頂し、その手がきゅっと触手を握りしめると、しごかれていた触手も精液を放った。
左右の手に掴まれた触手は、マリアの顔や胸に激しく射精し、性的興奮でピンクに色づいた肌に白濁の精液を飛び散らせている。

マリアは、身体の奥深くで注ぎ込まれる精液の刺激を受け、何度も絶頂した。
飲まされ、顔にかけられて、精液の濃さと熱さを実感し、身を震わせて達している。
匂いも味も男のものとは違ったが、その噎せ返るような悪臭すらもマリアを被虐の快感へと導いていた。
媚肉、肛門、そして口からも、触手が抜き取られる。
触手はぶるっと震え、その口から精液を垂らしていた。
触手の形に口を開いたままのアヌスや膣からも、多すぎる精液がどろっと逆流し、半開きになった口の端からも精液が糸を引いて垂れ落ちている。

(だめ……もうだめ……、私は……私はこのままいきながら死んでしまう……)

マリアは意識が混濁し、すうっと失神しかかった。
だが、まだ降魔は許さないらしく、各穴から抜け出た触手に代わり、別の触手が再び奥深くまで挿入されていった。



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