すみれが呼び出されるホテルは毎回異なっていた。
いずれも老舗、あるいは高級ホテルであり、貴族や名士にふさわしいものだ。
従業員たちも教育が行き届いているようで、もてなしも一流だし、何よりプライバシーを厳守してくれた。1
すみれにしろ、後から来る男客にしろ、いずれ訳ありだとわかるだろうが、興味本位の失礼な目で見ることはなかったし、少なくとも表面上は微笑に感情を隠してくれていた。

今回は帝都ではなく神奈川であった。
すみれにとっては地元であり、出来れば避けたかったが、相手の都合もあって横浜に落ち着いたらしかった。
その代わりすみれは、組織から回されたハイヤーを使い、待ち合わせ場所からホテルまで、一切姿を現さずに済んでいた。

ボーイに案内され、高そうなスイートに通された。
初めての時のことを思い出し、部屋に落ち着くなりすみれはシャワーを浴び、婦人用のガウンを身に纏った。
普通なら下着はつけるのだが、どっちみち脱がねばならないのだ。
それに、男に脱がされるというのも抵抗があった。
すみれは、テーブルに置いてあった蝶型のアイマスクを顔に装着した。

「……」

相手を待たせるのもイヤだったが、待ち時間が長いのも落ち着かない。
どうしたって、今までのこと、これからのこと、そして夫のことを考えてしまうに決まってるのだ。

これですみれは四度目になる。
もう夫以外に三人の男に抱かれているのだ。
当然、全員が膣内射精である。
本音を言えば、いやでいやでたまらなかったが、セックスだけして子種をもらえないというのでは本末転倒になってしまう。
つらく悔しかったし、夫に申し訳なかったが「結果」が出るまで耐えるしかないのだ。
それに、こんなことにも少しずつ慣れてきてしまっている自分がイヤだった。

こんなことは早く終わらせたいと、すみれは定期的に山城の元へ訪れて検診を受けた。
相手やすみれの都合もあって、抱かれるのは週に一度のペースだった。
大学病院へ行くのは、大抵「情事」のあった翌日である。
さすがに前日の「結果」がすぐにわかるとは思わないが、先週の「成果」を調べることは出来るだろうと思ったのだ。

だがすみれは、あてがわれた男と寝るのが不安になってくるのと同時に、山城の診断を受けるのも気が進まなくなってきている。
というのも、医師は医学的な診断よりも、もっと邪な欲望──治療に託けてすみれの性器をいじくり回すことが目的なのではないかと思い始めたからだ。
先日もそうだった。
男を待っている間、すみれの脳裏にはその時のことは鮮烈に思い出されていた。

──────────────────

「やあ、奥さん。ようこそ」
「……」

医師が患者に言う言葉ではないと思いつつも、すみれは軽く会釈した。
山城は満面の笑み──というよりも、いやらしそうに笑っている。
とても見ていられず、すみれは顔を背けた。
山城は気にした様子もなく、すみれを座らせてから問診する。

「いかがですね? そろそろ……」
「いいえ……。徴候らしいのはまだ……」
「そうですか。では、つわりなども……」
「ありません……」

生理は先日あったばかりだ。
それに、一ヶ月や二ヶ月なかったからと言って、即妊娠に直結するわけではない。
すみれは健康体ではあるが、気候の変化や精神状態によって生理不順くらいはあるのだ。
そうあることではないものの、希に一、二度ないこともある。
すみれがそう告げると、医師は了解したというように頷いた。

「わかりました。では診察しましょうか」
「あ、先生、ちょっと……」

すみれは少し躊躇してから言った。

「その……、どうしても、ああいう診察をしないとわからないものなんでしょうか……」
「……」

医師は黙ったまま、すみれをじっと見つめてから言った。

「何かご不審な点でも……?」
「あ、いいえ……。でも、わたしく、ちょっと……」
「ええ、わかりますよ。女性にとっては、ある意味で恥辱的な診察ではあると思います。ま、これに限らず婦人科や産科の診療にはそうしたことがつきまといます」

医師はそう言って、すみれのカルテをペラペラと捲っている。

「……いずれ、そうした診察なしでも判定できるようになってくると思いますよ。女性ホルモンを調べるだけで判断できるようになると思いますが、まだ先のことですね。そうですね、奥さんのお子さんが親になる時代くらいには何とか……」
「……」

すみれはため息をついた。
またあの恥ずかしい診察を受けねばならない。
いっそのこと病院や医師を変えようかとも思うのだが、主治医である平住の顔を潰すわけにもいかない。
それに、他の医師たちも結局同じことをするかも知れないのだ。

「それと……」

すみれには不安な点がふたつあった。
ひとつは、あてがわれる男がだんだんと悪くなっていくような気がするのだ。
最初の北山階──すみれは名を知らないが──は、歳はすみれの父くらいだったが、紳士だったし、すみれに対して優しかった。
口も堅そうで、秘密を守ってくれそうだった。
確かにあの人は名のある貴族か、名士なのだろうと思う。
それで少し安心してしまったのかも知れない。
みんなああいう人なら何とか耐えられると思ったのだ。

しかし甘かった。
一人目より二人目、そして二人目より三人目と、回を重ねるたびに男が悪くなっていく気がする。
北山階は例外だったにせよ、まさかこうなると思いもしなかったのである。
そのことを告げると、山城は申し訳なさそうに頭を下げた。

「そうでしたか……、いや申し訳ない」
「……」
「こちらも人選は厳正にやっています。身分のはっきりしない者……というよりも上流階級の男性しか入れないようになってるんです。だから、おかしな男が紛れ込む余地はない」
「ですけど、現にわたくしは失敬な殿方を相手にしなければならなかったんですのよ? 今後このようなことは……」
「わかりました、こちらも万全を期すように致しましょう」

医師はすみれの怒りを抑えるかのように、両手を拡げて見せた。
このままなら、いっそもう止めると言うかとも思うのだが、ここで諦めたらこれまでの行為がすべて無意味になってしまう。
出来るだけ早く妊娠するよう、すみれも頑張るしかない。
授精するかどうかは意志とは関係ないのだが、その可能性を高める努力は出来るのだ。

「善処はしますよ」

山城医師はそう言ったものの、すみれの要求に応える気はあまりなかった。
組織は、対象の女をリスト化し、それを顧客である上流階級の男たちに提示していた。
男たちは、好みの女や狙った女にいくら払うかを競うのだ。
つまり売春オークションである。
社交界で人気の神崎すみれは特に人気が高く、希望者が殺到した。
それはそうで、まさかあの歌劇団スタァであり、人気女優だった雛子の娘、そして神崎家の令嬢がオークションに出てくるとは誰も思わなかったからだ。

男の入会条件は厳しい上に会費も高額だから、そこらの貧乏貴族では入れない。
条件のひとつに、現会員3名以上の推薦を必要とされる。
もし会員が問題を起こしたら、当該会員のみならず推薦した会員にまで厳しい処分が下されるので、推薦する側も誰でも気軽に紹介するわけにはいかないわけだ。
名のある名士や門閥貴族、華族関係者しかいないのだ。
逆に、いくら金持ちでもいわゆる成金は入れない。
あくまで氏素性がものをいうのある。
そういう意味では「妙な男が紛れ込む余地はない」という山城の言は正しい。
秘密厳守も入会条件だから口外するような者はいなかった。

ただ、それでも変わった性癖を持っている男はいた。
組織は、女を脅迫したり、肉体的に傷つけるような行為は厳禁しているが、それ以外は基本的に何でもしていいことになっている。
だから少々サディスティックで、女を虐めるのが好きな男もいた。
それが「合う」女ならいいが、そうでない場合、女の側から「この男はもうイヤだ」と指摘されれば、もうその女は二度と抱けなくなるのである。
そうした抗議があまりにも多ければ、最悪の場合は退会させられることになる。
但し、過去そうした事例はない。
だから男の側も、そう無茶なことをする者はいない。
だが、逆に言えば、カネさえ積めばどんな女でも一度は抱ける、ということでもあった。

すみれは毎回違う男を希望したが、それが失敗だったかも知れないと思い始めている。
最初の人にしてもらおうかとも思ったが、よくよく考えてそれはやめた。
理由のふたつめはそれなのだ。
北山階は性技が巧みで、すみれは何度も気をやらされている。
そうすれば男子が産まれるかも知れないのだが、怖くもあった。
彼のテクニックに溺れてしまいはしないか、ということだ。
夫と寝ても物足りなくなってしまい、その男のことばかり考えるようになったら困ると思ったのだ。
事実、すみれは一回目より二回目、そして三回目の方が、より強く感じてしまうようになっている。
山城の話だと、すみれのような不妊治療の他に不感症の治療もするらしい。
ということは「うまくて当然」なのだ。
それにはまってしまうのが恐ろしかった。

すみれは結婚まで純潔を守ってきた。
そして大神と結婚して処女を捧げ、神崎の跡取りを作るために、それこそ毎夜のように抱かれてきた。
女として熟し始め、セックスを覚えつつあった時に、夫よりも遥かに巧みなテクニックを持つ男たちに抱かれ続けているのだ。
すみれの「女」は、ここにきて一気に開花し始めていたのである。
その不安を抱きながらも、すみれは呼び出しに応じ、子種を求めて男に抱かれていた。
すみれがそわそわしてきたのを見て、山城はおもむろに言った。

「それでは、と……」

カルテを束ね、とんとんとデスクで揃えながら言う。

「そろそろやりましょうか。お召し物を脱いで、そこへ……」
「……」

すみれは一度医師を見て、諦めたように小さく息をついた。
確かめるにはこれしかないのだ。
衝立の向こうでバッグを脱衣カゴに置き、そっと下着を脱いだ。
受診しやすいように、今日も洋装のワンピースである。
脱いだ下着を小さな巾着袋へしまうと、それをバッグに入れた。
衝立から出ると、医師は背を向けて器具を用意していた。
すみれは、そっと内診台にお尻を乗せ、羞恥で頬を染めながら、開かれた脚台に両脚を乗せた。

「よろしいですか?」
「はい……」

医師は内診台の周囲を衝立で囲い、横たわるすみれの腰の位置にも衝立を置いた。
衝立の白いカーテンが、腰からすみれの上半身と下半身を分断している。
すみれからは下半身が衝立に遮られて見えず、そちらにいる山城も見えない。
山城からはすみれの下半身しか見えない。
医師は、脚台に置かれたすみれの足首をベルトでしっかりと固定した。

「……」

それだけですみれは不安になる。
見えないというのは何をされているかわからないから怖いのだが、見えてしまうと今度は恥ずかしくなってしまうだろう。
医師は何やらガチャガチャと音をさせながら、膿盆に置かれた器具をいじっている。
それがまたすみれの不安を大きくさせていく。
医師の声がした。

「よろしいですかな? いきますよ」
「っ……!」

さあっと冷気が腿に当たった。
ワンピースが捲られたのがわかる。
下には何も着けていないのだ。
しかも脚は恥ずかしいくらいに開かされていて、しかも動けない。
居心地の悪さに羞恥も加わり、すみれの身体が恥ずかし気にもぞもぞと動く。
医師はそっとすみれの腿に手を置いて言った。

「いつも言っていますが、恥ずかしいのはわかります。ご主人以外の男に身体を見られているんですからな。でも、これは診療ですし、私は医者です。そんなふしだらな気持ちで患者さんを診るようなことはありませんよ」
「わ、わかっていますわ」

すみれは内心の動揺を抑えるようにそう返事をした。
気丈に見えるすみれだが、いかに相手が医者とはいえ、裸になった下半身を見られるのだから、恥ずかしいし怖いし、心細いのである。

「では失礼」
「あっ……!」

男のぽてぽてした指がいきなりすみれの媚肉を捉えた。
愛撫するという感じではなかったが、花弁を開かせて、その奥を覗き込んでくる。
山城は落ち着き払った声で言った。

「ふむ、健康そうな色ですな。おや、もう少し濡れてきている……」
「そ、それは……!」
「わかってますよ、奥さん。膣分泌液というのは、性的に興奮した時だけでなく外陰部に刺激を受けたりすると出てくるものなんです。そうでなくとも、平常時でも常に一定量は分泌されて膣粘膜を保護している。今はこうして私はここに触れているのですから、少しくらい濡れて当然だ」
「……」

すみれは、それだけではないと思っていた。
膣内が少し熱を持ってきている。
じわっと滲み出てくるのがわかる。
医師の視線が、大事なところに突き刺さっている感じがした。
それを意識するだけで、なぜかあそこが濡れてきてしまうのだ。
医師は指を離し、すみれに言った。

「中を診させていただきますよ」
「ひっ……! 冷た……」

山城が手にした膣鏡の長い嘴が、すみれの膣口に挿入されていく。

「んっ……あ、いや……」

嘴の根元まで入れられると、そこからじわじわと口を開かれていく。
深く沈んでくる金属の冷たい感覚と、膣をこじ開けられていく感覚。
たまらずすみれはずり上がって逃げようとするが、足首にはしっかりと皮革ベルトが巻かれていて動けない。
すみれが小さな悲鳴を噛み殺して我慢している間にも、医師の器具が柔肉を押し広げ、とうとういっぱいにまで開口されてしまう。

「よし、これでいい。どうです奥さん、拡げられているのがわかりますか?」
「あ……あ……」
「では拝見しますよ」

何度味わっても慣れることがない。
気が狂いそうな羞恥と恥辱に、すみれの身体が小さく震える。
内腿が僅かに熱を感じ取り、何かが近づいて来る気配があった。
山城の顔が、くっつくほどに側へ来たのだ。
中まで見られている……そう自覚すると、すみれの頬が真っ赤に染まり、手は寝台の縁をぎゅっと掴んだ。

銀色の金属が肉を抉り、その熱でぼうっと白くけぶっている。
無惨に広がった膣口からは、ムッとするようなすみれの甘い匂いが漂ってくる。
医師は小さなライトを取り出し、奥の方まで照らした。
山城の目に、綺麗な薄いピンク色の肉の輪が見えてくる。
子宮口に相違なかった。
見られているのを意識しているのか、膣内がひくひくと蠢き、じわっと愛液までにじみ出てきている。

「お? クリトリスが充血して肥大してきましたね。陰唇もだ。ほほう、膣は収縮してますね、弛緩と締め付けを繰り返している。膣液の分泌もだいぶ増えてきましたなあ。もしや奥さん……」
「やっ……! ち、違いますわ、はしたない! わたくしは、そんな……」

触られてもいないのに、明らかな官能を感じている。
恥ずかしいところを見られているだけで感じてしまう自分に、すみれは大きく動揺した。
しかし、感じてきてしまっているということを覚られたら立つ瀬がない。
すみれは必死で否定した。
医師はにやにやしながら言った。

「恥ずかしがることはない、それでいいんですよ。感じやすいお身体をしているという証だ。こういうことをされても、ちっとも気持ち良くなれない女性もいるんですよ。それに比べれば幸せというもんです」
「で、でも……恥ずかし……あっ……」
「いいですか、奥さん。前にも言いましたが、性交している時、ちゃんと感じていますか? 絶頂しないと……出来れば何度も気をやる方がいいんです。その方が……」
「わ、わかってます!」

恥ずかしくて仕方がないが、その行為をする際、快感を得た方がいいらしい。
感じれば感じるほどに、男の子が出来る可能性が高まるというのだ。
要するに、男に抱かれて絶頂し、その上で射精される。
それが理想らしい。
見知らぬ男と、まるで夫との愛の営みのようなことをせねばならないのだ。
精子を受けるために、ただ身体を投げだせばいい、というだけでは済まない。
すみれには、それが何よりつらかった。

医師は、恥辱で震える人妻の性器を悪戯しながら、なおも奥を覗き込んだ。

「おお……、子宮口が見えますな」
「い、いや……」
「うーん、色も綺麗だし形も良い。素晴らしい子壺ですよ、きっと感度の方も……ぐふふ。これで妊娠できないわけがない」

そう言いながら、山城はすみれの「女」の部分を丹念に調べていく。
クスコで思い切り膣口を開かせてすみれに悲鳴を上げさせ、子宮頸管や子宮口にまで綿棒を這わせて呻き声を絞り出した。
とろとろに濡れている胎内を軽く擦ってやると、綿棒の先はたちまち愛液を吸い取ってどろどろになる。
膿盆の上には、あっという間に使い終えた綿棒の山が築かれた。

「んっ……ああ……や、もう……せ、先生、もういや……あっ……」

すみれは恥ずかしい声を抑えるために必死で口を塞ぐが、指の隙間から熱い喘ぎが洩れてしまう。
子宮口をゆるゆるとまさぐられると、勝手に腰がうねり、ぶるっと小さく震えた。
するとクスコを飲み込まされた膣がきゅっと収縮し、襞は綿棒を絡め取ろうとする動きまで見せた。
子宮が下降しているのか、それとも子宮口が伸びて来たのか、子宮口がグウッと迫ってくるのが医師の目にはっきりと見えた。

「ふむ……。奥さん、抱かれた時にちゃんと射精されましたかな?」
「……」
「答えてください。どうです、男から精液を……」
「さ、されましたわ! た、たくさん……」

カーテン越しで見えないが、恐らくすみれの顔は羞恥で真っ赤になっていることだろう。

「そうですか」

医師はククッと喉の奥で嗤った。
そして、さらに恥ずかしい質問をしかけてくる。

「では、ちゃんとオルガスムスを感じましたか?」
「そっ、そんなこと……」
「絶頂しましたか、と聞いているんです。単に気持ち良いだけじゃなく、ちゃんと気をやらないと……」
「い……、いきました!」

これ以上ねちねちといやらしい言葉で虐められるより、ひと思いに言ってしまった方がいい。
すみれは死ぬ思いではっきりとそう告げた。

「そうですか、そうですか、それはいい」
「……」
「しかし変ですなあ。大量に射精されたにも関わらず、妊娠した徴候はありませんな。奥さん、もう少し頑張らないと。相手の男が引いてしまうくらい、奥さんから求めてはいかがですかな」
「はしたない! あなたは何てこと言うんですの!?」
「はしたなくなんかありませんよ。あなたは子作りのために抱かれているんでしょうに」
「そ、そんなことわかってます!」
「だったら何を恥じらうんです? これは子を為すための崇高な行為だ、淫らなものではない。まあ、少しくらい恥じらった方が男は燃えるものですがね」
「っ……!」
「おっと、これは余計な一言でしたな。いずれにしても奥さん、嫌がらずに抱かれてくださいよ。頻度ももっと増やした方が良い」

医師はそう言いながら、すみれのスカートを元に戻した。
その際、当然のように腿を撫でまわしたが、ホッとしたすみれは気づかなかった。

──────────────────

こんなことが数度繰り返されている。
相手は医師で、すみれのために色々と手を尽くしてくれていると思うから怒鳴りつけるようなことはしなかった。
紹介してくれた平住医師への配慮もある。
山城という男はどこか胡散臭いところがあると思っていたが、小さい時から診てくれている平住医師は信頼しているのだ。
その平住が紹介したのだから、間違いはないと思う。
しかし、すみれは身体に悪戯されるような検診に嫌気が差している。
だからこそ早く懐妊したかったのである。

ガチャリとドアが開く音がして、ベッドに腰掛けていたすみれは反射的に立ち上がった。

「……」

入ってきたのは、トランクを手にした小太りな中年男だった。
きちんと三つ揃えを着ているものの、最初の北山階のような気品さは欠片もない。
どこぞの田舎から出てきたお上りさんが、精一杯の一張羅を着ている、という感じしかしない。
それでも、山城の仲介で来たのだからおかしな人物ではあるまいと思い、すみれは一応挨拶をした。

「初めまして……。本日は、その、よろしくお願いします……」

「お願い」する内容を思い、すみれはやや頬を赤らめる。
男はすみれの挨拶に軽く頷いただけで、いきなり服を脱ぎ始めた。
シャワーで汗を流さず、いきなり抱くつもりらしい。
すみれはまた少し暗い気分になる。
北山階以後、だんだんと男の「質」が下がっていたからだ。
この四番目の男も、あまり質が高くないように思えた。
そんなことを考えている間に、男はパンツ一枚になっている。
すみれは戸惑い、目を背けた。

「あ、あの……」
「え? ああ、あんたも脱いで」
「え……」
「脱ぐんですよ。そのために来てるんでしょう?」
「……」

すみれは仕方なくガウンを脱ぎ去り、下着一枚となる。
男は軽くうなずき、トランクから取り出した黒いものを持ってすみれに迫った。
反応的に恐怖感を覚え、すみれは後じさる。

「そ、それは……」
「気になるかな? だが心配しないでけっこう、乱暴はしないよ」
「でも、それ……」

すみれが指差したものは、黒い皮革製のベルトだった。
咄嗟に身を屈め、座り込んだ。

男は常盤川輝光といい、これでも子爵の爵位を持っている。
とはいえ、家督は継いだものの、明治政府の要職に就いていた父親の七光りで権威を持っているだけと評されていた穀潰しである。
常盤川はそのまますみれの腕を持って持ち上げ、ベッドへ引き摺った。

「い、痛い……痛いですわ、何するの!」
「だから、おとなしくしてれば乱暴な目には遭わないよ」
「言う事は聞きます! だから、そんなものは使わないで!」
「言うことを聞くんなら、黙って従って貰いましょうか。そうすれば、あんたの望みは叶えてやる」
「……」

山城の説明では、相手にはすみれ(つまり女)に暴力は振るわないよう堅く指示されているのだそうだ。
もし殴られたりしたら、事後、山城に抗議すれば、その男は組織から除外されるとのことだ。
ただ、人は千差万別だから、変わった性癖を持っている男もいるだろうが、それは我慢して欲しいと言われている。
だが逆に言えば、暴力を振るわねば何でも出来るということであり、すみれの不安は消えなかった。

仕方なくすみれは抵抗を止め、男にされるがままになった。
常盤川は手際よくすみれにベルトを掛け、その自由を奪っていった。
すみれはベッドへ俯せにされ、動けなくなった。左右の手首には腕輪を掛けられ、足首も同じく革ベルトが巻かれている。
問題なのは、左右の腕輪についているDリングから伸びる短い細い鎖が、足首に装着された拘束具に繋がっていることだ。
左右の足首と手首が連結されてしまい、すみれは膝立ちとなって腰が持ち上がり、上半身はヘッドに押さえつけられるような格好になってしまった。

「こ、こんな格好させるなんてっ……!」

すみれは羞恥よりも怒りを感じた。
何も拘束せずとも、男の言いなりになるしかないのに酷い仕打ちだ。
しかし、すぐに怒気は収まって、今度は一気に羞恥心がわき上がってくる。

見知らぬ男──それも唾棄すべき男に対して、もっとも隠しておきたい部分を突き出しているのだ。
少し脚を開かされているから、媚肉や肛門まで晒している。
屈辱で胸の奥が熱く、白く灼けていく。
男の執拗な視線がふたつの恥ずかしい穴を──特にアヌスに集中しているのを感じ取り、胸が張り裂けそうな汚辱感に苛まれた。
だが、それと同時に胸が締めつけられるかのような高揚感──陶酔感も得ていた。
それが被虐の快楽であることに、すみれはまだ気づいていなかった。
男の気配が迫り、すみれは慌てたように振り返った。

「何でこんなことをするんですの!?」
「女をこうしていたぶると、俺が興奮するからさ」
「最低ね……」
「それに……」

男はにやっと嗤った。

「こうでもしておかないと、あんたも耐えられなくなると思うよ。言うなれば「思いやり」ってことさ」
「何ですって? い、いったい……いったい何をする気なの!?」
「それはお楽しみに」
「ひゃっ……!」

すみれは吃驚したような悲鳴を上げた。
男の手のひらが、尻をすっと撫でたのだ。
途端に、背筋へゾクゾクするような悪寒が走る。
これが一郎の手であったなら、軽く睨みながらも夫の悪戯を許し、もっとお尻を突き出したことだろう。
今は逆だ、寒気がする。
思わずすみれが叫んだ。

「い、いやらしく触らないで!」
「……」
「そんなことしないで、さ、さっさと終わらせて……!」
「……まだムードのないことを言うなあ。ま、いい」
「……」

男の手が素直に尻から離れて行く。
ホッとしたすみれだったが、少々不安になってくる。
しばらく経ったが、本当に何もしてこないのだ。

ただ、部屋が静かなだけあって男の気配はわかり、息遣いは聞こえる。
もぞもぞと男が姿勢を変えたり、位置を移動しているのもわかった。
だが、触れてこない。
ただ見ているだけだ。
見られているのはわかる。
見られている箇所──肛門とか膣とか──に、何か感じる。
視線に物理的な作用などないことは理解しているが、視線がジリジリと肌に食い込んでくる気がした。
視線が移動すると、肌の上を滑るような錯覚すら起きてくる。

男が手出ししてこないのが物足りないのかも知れない。
そんな思いが一瞬浮かんだものの、すぐに頭を振って追い払った。
いやらしい視線を受け続けることがイヤなだけだ。
どのみち、犯されることは決まっている。
だったら焦らしたりせず、嬲って欲しいとすら思ってきた。

すみれの臀部がもぞもぞと蠢き始めている。
膝をすり合わせようともぞつかせ、くりっ、くりっと尻たぶが跳ねた。
狂おしいほどの妖美な欲望がすみれの胸の奥で渦巻き、耐えきれないように叫んだ。

「ね、ねえっ……何してるのよ!」
「触るなって言うからな」
「だ、だからって見てるだけなんて……は、早く済ませてってば!」
「わかったよ」

男はにやりとしてそう返事をした。
かれこれ20分ほど視姦しただけで、すみれの媚肉はすっかり濡れそぼっていた。
羞恥のためか、肛門までひくつかせている。
かなり被虐願望がありそうだ。
これはいたぶり甲斐があると常盤川は思った。
常盤川は真っ白い尻たぶに唇を押しつけながら、開かれた尻の奥に潜んでいた蕾をそっと揉み込んだ。

「ああっ!?」

驚いたすみれはビクッと身体を震わせ、全身を息ませた。

「ど、どこ触ってるのよ!」
「どこって尻の穴だよ、あんたの」
「お、お尻のって……あなた正気なの!? そんなところ、ああっ……やっ、やめて、そこ触らないで!」

すみれの悲鳴を聞きながら、常盤川は揺れる乳房を左手で揉みつつ、アヌスへの愛撫を加えていく。
そんなところを触られる屈辱と汚辱感で、すみれは真っ赤になった顔を振りたくっている。
ともすれば、倒錯した変態行為へのめり込みそうになるのを必死で押さえ、懸命になって尻を振り、男の手から逃れようとする。
常盤川は、すみれの堅く窄まったアヌスをほぐしながら言った。

「ねえ、すみ……あ、いや、奥さん」

慌てて男は言い直した。
相手が神崎家の令嬢だと知らないことになっているのだ。
本人の前で名を出すの御法度である。

「旦那にここをいじられたことはないの?」
「あっ、いやっ! あ、あるわけないでしょう! あの人はあなたみたいな変態じゃな……やあっ!」
「ふうん、そうなのか。そりゃもったいないなあ。あんたのここ、具合良さそうだよ」
「しっ、知らない! や、触らないでよ、そこ!」
「へへへ、なら、ここは処女なんだな、奥さん」
「処女って何のこと……ああっ!」

一郎にもされたことのない恥ずかしい責めに、すみれは激しく腰を振って抵抗する。
最初の男は優しかったが、二番目の男は偏執的だった。
すみれの身体を褒め称えるのはともかく、執拗なまでに全身の肌を舐め回した。
額から足の指まで丹念に舐めしゃぶり、すみれはそれだけでいきかけたくらいである。
お尻の谷間や腋ににまで舌が伸びて来て、すみれが戸惑うほどの妖しい快楽を注ぎ込んだ。

三番目の男はすみれを裸に剥かず、着衣のまま犯すことに拘っていた。
すみれの着てきたものではなく、男が持参してきた和服や袴、すみれでも恥ずかしくなるくらいのミニスカート、果てはメイド服や淫靡なデザインの下着などを着せ、それを引き剥がし、あるいは脱ぎかけのまま抱き、貫いた。

だが、今回の男はそれ以上の変態だと思った。
何しろ排泄器官に興味を示し、そこばかり責めてくるのだ。
男は一度手を離し、指に何やら怪しげなクリームをたっぷり掬い取って、それをアヌスに塗り込んできた。

「やっ、やあっ!」

男の指先は淫靡に動き、肛門愛撫をしながら括約筋をほぐしていく。クリームをアヌスに乗せ、周囲へ拡げるように塗っていく。
油分が多いのか、クリームは滑らかに塗り拡げられ、肛門周辺を鈍く光らせていた。
塗り込み、愛撫していくうちに、そこを指で嬲るたびにニチニチと粘着質の音を立て始める。

「ううっ、いや……指、しないで……んんっ……」

すみれは汚辱感で胸を灼き、悔しさに顔を歪め、涙すら流していた。
それでも、せいぜい尻を振るくらいしか抵抗出来ず、男の指による蹂躙を許していた。
常盤川の指は、いつの間にかアヌスに潜り込んでいた。
すみれがそのことに気づいた時には、指先が腸内を擦り始めていた。
クリームと愛撫で柔軟にとろけ始めていたそこは、実にあっさりと指先を飲み込んでいたのだった。

常盤川は興奮していた。
あの神崎すみれの尻の穴の中に、指を入れているのだ。も
う根元まで指を飲み込んでいたすみれの肛門は、苦しそうにひくついていたかと思うと、キュッと強く締めつけてくる。
指先に感じられる腸内のぬめっとした感触もたまらなかった。

「いっ! いああ……やだ、もう……んんん……うっ!」

男の指が淫らに蠢くたびに、すみれの朱唇から艶めかしい呻き声が洩れる。
いじられているのはアヌスだけだ。
他はどこにも触られていないだけに、尻の穴に食い込んだ指が動くと、その刺激が直に脳髄へ響いてくる。
汚辱と不安とやるせなさが入り交じった不可思議な感覚であった。
ややもすると恍惚としてしまいそうな刺激に、すみれは唇を噛んで堪え忍ぶ。
何だか、身体が深いところに沈んでいってしまうような、こんな焦れったい責めではなくもっとどうにかして欲しいような気持ちに囚われてしまい、ぐっと強く手を握りしめている。

「うんっ! や……ふうっ……いっ!」
「くく、良い声じゃないか、お嬢……じゃない、奥さんだったな。気持ち良くなってきたのかな?」
「ふ、ふざけないで、あっ! こ、こんな……こんないやらしいこと、いやなだけよ! んんっ……ぬ、抜いて……ああ……」
「本当に抜いて欲しいのか? とてもそうは聞こえないぜ」

常盤川はそう言ってせせら笑った。
10分、20分と、そこばかり責め続けていくうちに、すみれのアヌスはすっかり柔らかくとろけ、今ではごく自然に男の指をしゃぶっていた。
もうほとんど痛みはないようだが、その異物感や気色悪さにおののいている。
だが、ややもするとその脅えが官能を呼び起こし、すみれを困惑させていた。
若いすみれの女体を手玉に取るように、常盤川は余裕を持って責め立てていく。
アヌスを愛撫しながら、突然、乳房を揉まれたすみれは小さく悲鳴を上げた。

「なっ……なにを……」
「ん? おっぱいだよ。これからまぐわうんだから、これくらい当然だろ?」
「そ、そうですけど……くっ!」
「おうおう、もう乳首がこんなに硬いな。お尻を責められて感じていたのか?」
「ちっ、違いますっ! はしたないこと言わないで!」
「ふん、はしたないのはどっちかな。おっぱいはこんな張りが出てきて……」
「さっ、触らないで……ああっ」
「ほら、乳首だってこんなだ。こういじられるとたまらないだろう?」
「んんっ……いっ!」
「乳首いじられるたびにピクンピクンしてるぜ。女の身体って面白いなあ」
「こ、この……バカにしてっ……んはっ!」

指で乳首を転がされ、鋭い刺激が背中を突き抜けていく。
たまらずすみれは仰け反り、背をうねらせて喘いだ。

「ん? オマンコも濡れてるじゃないですか。やっぱり、あんたは……」
「いっ、いやらしいことばかり言わないでくださいっ! さ、さっさと終わらせて! もう、これ以上あなたとするのはいや!」
「そうはいきませんな。お互い満足するまでしないと、私の方も子種が出てくれないからね」
「最低……」

すみれはおぞましそうに男から顔を背け、吐き捨てるようにそう言った。
責める常盤川は一向に気に留める様子はなく、指で掬ったクリームを腸内にまで塗り込んでいった。
周辺筋肉を解すだけでなく、腸壁や腸襞にまで念入りに擦り込む。
同時に媚肉や肉芽にも愛撫を加えていたせいか、すみれはその麻薬的な快楽に囚われ、心までもが痺れてきている。

「ううっ……ああ……」
「だいぶ柔らかくなってきたな。ほれ、もう指を根元まで飲み込んでいる」
「や……くっ……」

抜き取ろうにも拘束されていてはロクに動けず、いたずらに尻を振り、腰を揺するばかりだ。
男の指が杭のように食い込み、すみれは赤く上気した顔を弱々しく振っていた。
男は指を深くまで押し込むだけでなく、円を描くようにしてアヌスを拡げようと試みている。
その頃になると、すみれは息み、踏ん張るようにして呻き始めた。
すみれは、排泄器官を通じて、はっきりとした被虐の快楽と性的快感を知覚してきていたのだ。

「んっ……ああっ、そ、そこっ……!」

常盤川は、右の中指で肛門奥を抉りつつ、左の中指を使って膣口を貫いた。
同時に挿入されてしまうと、すみれは「ああっ」と喘いで筋肉を突っ張らせ、ぶるぶると痙攣した。
片方が奥まで突いてきて、片方が引き抜かれる。
かと思うと、同時に深々と抉ってきた。
そうされると足の付け根や腰骨までがジーンと痺れ、その電気が背筋を走って脳天にまで届いてしまう。
ふたつの女穴は男の指をしっかりと食い締め、うねっている。
もはや苦痛や恥辱よりも快感の方が強くなっていた。

「んっ、んんっ……あっ……くううっ……い、いや……ああっ!」

すみれの額や首筋には、ねっとりとした脂汗が浮いている。
整った眉を寄せた美貌には、羞恥と快楽が同時に表現されていた。
恥ずかしい声を上げまいと、必死に歯を食いしばっているのだが、ついつい甘く熱い喘ぎが洩れ出てしまうのが止められなかった。
常盤川は媚肉をほじってから愛液を絞り取り、腸内にクリームを塗りながらアヌスを抉った。
そのたびにすみれは、汗ばんだ尻肉をうねらせ、くりっ、くりっと悶えさせている。

「んんっ……ああっ!」
「どうした、そんな声を出して。いきそうなのか?」
「くっ……」

いきそうになったのだ。
だが、お尻を責められて達してしまうなど、そんな変態的なことは出来ない。
すみれは必死に堪え忍んだが、意外なことに常盤川が指を引いていった。
肛門だけでなく、膣責めまで中断した。
すみれは「あっ」と小さく叫んで、慌てて尻を振り、指を追いかけてしまう。
すぐにその行為の恥ずかしさに気づいたが、燃え始めていた肉体はもはや宥めようもなかった。
すみれは、肉欲で赤くなった顔を逸らし、悔しそうに目を閉じた。
陰険な貴族は意地悪そうに言った。

「……なんだい、そのお尻は。奥さん、欲しくなったのか?」
「……」
「尻を責められるのはイヤなんだろう?」
「い、いやよ、当たり前ですわ!」
「じゃ、やめてやろう」
「えっ……」

すみれは驚いて振り向いたが、常盤川は本当に責めを止め、ベッドの縁に腰掛けている。
アイマスクのせいで目元はわからないが、口元が嗤っていた。
焦れたすみれの方から「欲しい」と言わせるつもりなのだろう。
その手に乗るかとばかりにすみれは顔を背けた。
だが、すぐに自分の身体の変化に気づいた。

「あ……」

熱い。
身体が火照ってくる。
上気した頬よりも、下半身が熱かった。
中でも股間──というよりお尻が熱い。
しかも、臀部よりも肛門が、そして肛門よりも腸内が熱く疼くのだ。
熱いだけでなく、むず痒い。
どうにもじっとしていられず、肛門をひくひくさせ、尻を振り始めた。
アヌスを収縮させると、肛門のむず痒さは少し解消されるものの、その内部はどうにもならない。

「くっ……、か、痒い……ウ、ウソ、お尻の中が痒い……あ、あなた、わたくしのお尻の中に何を……」
「うん? ああ、大丈夫だよ、毒だの劇薬だのって類じゃない。無害だ」
「む、無害って、あなたね……、現に、か、痒いのよ……んくっ……」
「どうにかして欲しいのかな?」
「……」

すみれはプイッと顔を逸らした。
そんな恥ずかしいことを言えるはずがない。
しかし、痛さと違って痒みやくすぐったさというのは我慢できるものではなかった。
5分もしないうちに呻き出し、尻を振り出した。
男は立ち上がり、真後ろからすみれの尻を眺めていた。

「なんだなんだ、いいとこの奥さんがそんなみっともなく尻なんか振って」
「だ、誰のせいだと思ってるのよっ……くっ……お、お尻が……ああ……」
「痒いのかな? じゃあ、片手だけ解いてあげるから、自分でお尻の中を掻いてみるかい? もちろん俺の目の前でね」
「バカなこと言わないで! 誰がそんなはしたないことっ……」

そう叫んだものの、もう我慢の限界に来ている。
だが、こいつの前で自分からお尻の穴に指を突っ込んで中を掻くなんて恥ずかしいことが出来るはずもなかった。
お尻の苦悩を和らげるためにも、早く「本来の目的」をこなしてもらうしかない。
すみれは血を吐くような思いで告げた。

「くっ……、は、早く……」
「お尻をいじって欲しいのかな」
「ちっ、違う……さっさと済ませて……」
「ほう。もう犯して欲しいと」
「……」
「言えないならしてやらない」
「わ、わかったわよっ……し……して……早く……」
「ちゃんと言いな。「犯して」ってな」
「酷い……なんて人なの!?」
「そうか。じゃ、帰るかな」
「ま、待ってよ……!」

ここで帰られてはたまらない。
こんな恥ずかしいことに耐えているのは、子種を受けて懐妊するためだ。
そうでなければ、誰がこんな男の自由になるものか。
すみれは、尻の中の痒みもあって、淫らがましく尻まで振って求めた。

「早くっ……ああ、犯して……犯していいから早く……」
「ふふん、ま、いい」

常盤川はそう言って、すみれの尻たぶをぺろりと撫でた。
それからおもむろにすみれの腰に手を掛け、位置を固定させた。

「……」

すみれは恥辱で顔を染めながら、その時を待った。
こんな動物じみた体位で犯されるのはイヤだったが、頼んでも解いてはくれないだろうし、この格好で拘束されていてはどうしようもない。
それに、山城から聞いたところによると、どうやら後背位で抱かれる方が妊娠しやすいらしい。
その方が、男が挿入しやすく、また深くまで入れられるからだそうだ。
すみれは羞恥を噛みしめて男に尻を提供し、屈辱の体位で受け入れる覚悟をした。
男の手を尻たぶに感じ、すみれは寒気がした。
もう、この男とは二度と会うことはない。
この瞬間だけ我慢すればいいのだ。

「あっ……」

熱くて硬そうなものが尻に押しつけられる。
もう何度も味わわされた男根の感触だ。
しかし、それが開かれた尻の谷間を滑って押し当てられると、すみれは驚いて振り返った。
ペニスは膣まで届くことなく、途中にある肛門の上で止まったからだ。
男は亀頭の先でそこを揉みほぐすように肉棒を動かしている。

「ちょっと……! そ、そこ、違いますわ!」
「違わないさ。俺はここをやる」
「だ、だって、そこは……」
「お尻の穴だよ。俺は奥さんの肛門を犯すんだ」
「な……」

すみれは驚愕し、紅潮していた顔が青ざめていく。
夫の一郎とは正常な性行為しかしていない。
まさか、そんなところを犯されるなど想像もしなかった。
直にペニスがじわっと肛門を割り、めり込んできた。

「ああっ! や、やめて、そんなっ……」
「いいんだよ、ここで。お尻の中が痒いんだろう? 俺のチンポで掻いてやるから」
「いっ、いい! そんなことしないでいいですわ! そ、それより早く前に……」
「俺はこっちがいいんだよ」
「そんな……んあ!」

常盤川の男根がじわじわと食い込んでいく。
熱くほぐれ、腸液と愛液で濡れ、クリームでとろけさせられたそこは、意外なほど抵抗なく常盤川を受け入れてしまう。

「や、やめて……! 痛い!」
「まだ痛くはないでしょう。痛いとしたらこれからだ」
「やああっ……!」

前へずり上がって逃げようとする腰を、男ががっしりと抱え込む。
そのまま腰をグイグイと押しつけ、すみれの秘境を貫いていく。
太い亀頭がめり込み、肛門の皺が強引に引き延ばされ、引き裂けそうな苦痛が襲ってくる。

「いっ……たいっ……んんっ……や、やめ……痛いっ!」

すみれは仰け反り、歯を食いしばって呻いた。押し広げられた肛門の粘膜からめりめりと音がしそうだ。
小さな穴に太いものをねじ込まれる苦痛が脳髄を直撃する。
しかし、そんな痛みよりも、もっとも恥ずかしい場所を犯されるという恐怖と恥辱がすみれの頭の中を灼いていった。

「痛い……さ、裂けちゃうわ……あぐっ……し、しないで……んああっ!」

すみれは金魚のように口をパクパクさせ、何度も深呼吸して酸素を求めた。
息が詰まりそうなのだ。
すみれのアヌスは皺を伸ばし切り、ゴムか何かのように限界まで拡げられている。
常盤川のペニスは最も太い亀頭のカリ部分に差し掛かり、すみれのそこを裂かないよう、注意深く、だが確実に挿入されていく。

「あ、あむ……ううんっっ……!」

ついに亀頭がすみれのアヌスを割り、埋め込まれてしまった。
太いものが無理矢理通った激痛に、すみれは背を震わせて呻き、激しく痙攣した。
常盤川は、すみれの前をいじり、腰を回転させながらゆっくりと動いていく。
亀頭を貫通させたことでさすがにホッと息をつき、そのままサオの部分をねじ込んだ。
硬いもので肛門を擦られる苦痛にすみれは呻き、白い手をぎゅっと握ってわなわなと震えていた。
男はそのまま腰を捩り、とうとう根元まで埋め込んでしまった。

「……全部入ったよ、奥さん」
「ああ……」
「先が入る時は大変だったろうけど、そこが通ったら案外楽に全部入ったろう?」
「や……痛い……抜いて……ああ……」

すみれは血の気が失せた美貌で唇を震わせていた。
脂汗が浮いていた額からは、冷や汗が滴っている。
お尻の入ったものを意識すると、勝手に肛門が窄められ、イヤでもその長大さを思い知らされてしまう。
お尻が弾けそうなほどに押し広げられ、しっかりと常盤川のペニスを咥え込んでいた。
男はうっとりと呟いた。

「ううん、なかなか良い感じだよ、奥さん。初めてだったろうに、裂けた様子もない。柔軟性も抜群だな。中も灼けるように熱いし、ぬめぬめして気持ち良い。ふふ、押し返そうとしてるのがわかるよ。お腹の中の襞が絡みついてくるからね」
「い、いや……抜いて……もう、お尻が……」
「きついかい? そうだろうな、俺が奥さんの初めての男なんだからな。くく、前は何人の男に何度犯されたか知らないが、こっちは初めてだろう?」
「ああ……、は、初めてよ……初めてだってば……痛い……」
「そうだろう。尻でも男を知った気持ちはどうだ?」
「し、知らない……痛い、抜いてよ……あっ……」

すみれは苦悶に呻きつつ、その圧迫感と息苦しさに耐えた。
お腹の中いっぱいに男のものが入り込んでいるのがわかる。
腸管を串刺しにされてしまい、腰を捩ることも出来ない。
そのくせ動かないでいると、お腹を貫いた男の肉棒を強烈に感じ取れてしまう。

常盤川は根元まで呑み込ませてからしばらく動かず、すみれの腸内を味わっていたが、アヌスがひくつき出したのを感じ取り、ゆっくりと腰を振っていく。
速度は遅いが、ずぶりと奥まで突いたり、浅い深度で中をかき回したりして、美女の腸管を愉しんでいた。
ちょっとでも動かれると苦痛が蘇り、肛門粘膜を巻き取られるきつさが再現されていく。
すみれは悲鳴を上げて仰け反り、背筋を震わせた。

「ひっ、ひぃっ! う、動かないで!」
「動くためにやってるんでね。それに中で動いてやらないと、いつまでも痒いのが治らないよ」
「そんなこと言っても……んんっ……ああっ!」

すみれは、男に抉られ貫かれるたびに悲鳴を上げ、呻いた。
アヌスが軋み、腸管がうねる。
裂けないのが不思議なくらいのきつさだが、同時に痒みが解消されていく。
男根が腸壁にぶつかり、そこを擦ってくるからだ。
その心地よさが苦痛を呑み込み、痒みが止まる快感が官能として知覚されていった。
いつしかすみれは自分から尻を振り始めている。

「んんっ……ああ……も、もっと深く……あああ……」
「ほう、もう肛門性交の良さに目覚めたのか。すごいな、奥さん」
「やっ、違いますわ、あっ……お、奥がまだ……か、痒い……」
「そうかい。これでいいかな」

男がそう言って腰がくっつくほどに押しつけ、奥まで抉ると、すみれはぶるるっと小さく痙攣して「ああっ」と喘いだ。
痒みが取れると同時に、得体の知れぬ妖しい感覚が腸内や肛門に広がっていく。

「ああ……はあ……し、死ぬ……お尻が……ああ……」

すみれの吐息は火が着きそうなほどに熱くなっている。
蒼白だった美貌は再び朱を帯び、唇が薄く開いて悩ましい声を洩らしてきた。
官能を感じているのは明らかで、それを恥じるかのように時折顔を振っている。
男も少し驚いたように言った。

「本当に感じているようだね、大したものだ。素晴らしい身体だよ、奥さん」
「違う……違うわ、わたくしは……あ、あうっ、深いっ……た、たまらない……」

男がぐぐっと抉り上げると、すみれの肛門は敏感に反応して引き窄まり、抜こうとするとフッと緩んでくる。
食い締める力も強く、男は肉棒の根元に痛みを感じるほどだ。
常盤川はすみれの反応を確認しながらリズミカルにアヌスを突き上げ、手を前に回して媚肉や乳房を愛撫した。
同時に責められると、すみれは一層に身悶えを露わにする。

「あっ……あう……いっ……んんっ、お尻の奥に来てる……あっ……」

いつしか張り裂けそうな苦痛は消え失せ、爛れた快楽の疼きに呑み込まれていった。
ぬぷっ、ぬぷっと何度もペニスがアヌスを貫く。
すみれの肛門はもうほとんど抵抗なく肉棒を受け入れ、中へ引き込むかのように蠢いている。

常盤川はすみれの反応を確認しつつ、腰を小刻みに打ち込んだ。
抜き差し自体は数センチだが、押し込んだ時には腸内にほぼ埋没するほどに深かった。
抜くと粘膜が肉棒にへばりついて引き出され、挿入すると巻き込まれて元に戻る。
太いものを咥え込まされ、動かされることで。すみれのアヌスは音がしそうなほどに軋んでいたが、それが徐々に快感となっていく。
今や、痒みを治めるためにそうされているのか、それとも性的快楽を得るためにしているのか、わからなくなっている。

「んっ、はううっ……あ、あう、お尻っ……こ、壊れる、ああ……んあ!」

男の動きがダイナミックになり、突き上げる深さと速度が激しくなると、犯される人妻は汗の浮いた背中を反らせ、何度も喘いだ。
突かれるごとにふさっと宙に舞う黒髪を掴まれ、すみれの顔が引き寄せられる。
その耳元で男がいやらしそうに囁いた。

「奥さん、あんたの尻の穴すげえぜ。どうなってるか、わかるか?」
「しっ、知らない……あうっ、深いっ……!」
「くくっ、引き抜くとな。俺のチンポにあんたの肛門がへばりついてくるんだよ。いい眺めだ」
「やっ……いやあっ!」
「綺麗なもんだぜ、ピンク色でな。それをこうやって押し込むと……」
「あう!」
「……巻き込まれて入っていくんだ。どうだ、奥さんも見てみたいだろう?」
「そっ、そんなの見たくないっ……ああ……」

例え実際に見ずとも状況を描写されるだけで、すみれの脳裏にその光景が構成されていく。
夫以外の男性器を受け入れさせられている排泄器官。
男の言う通り、そこは一郎にも触れさせたことのない場所だった。
そこを深々と貫かれ、無惨なまでに犯されている。
すみれの肉体は、背徳と被虐の悦楽に染まっていった。

「ああ……へ、変よ……変だわ……お尻が……いっ……」
「そうだろう、お尻が気持ち良いんだろう?」
「ち、がう……わたくしはそんな……で、でも、ああ……おかしくなりそうっ……あっ!」

明らかにすみれの声質が変化してきている。
早くも肛虐の快感を覚え始めたのだ。

常盤川は狂喜していた。
あの神崎すみれを抱けるだけでも有頂天だったのに、その女は肛門性交にまで目覚めてきた。
しかも、その快楽を叩き込んだのは自分なのだ。
これ以上ない征服感だった。

男はさらに興奮し、腰をすみれの尻たぶへ激しく叩きつけ、めり込むほどに深くまで犯した。
すみれは甲高い悲鳴を上げつつも、時折漏らす甘い喘ぎも多くなっていく。
その声を聞いているだけで、常盤川のペニスがぐぐっと反り返る。
それがわかるのか、すみれは悲鳴を上げながらもアヌスで肉棒をきつく締めつけた。
すみれの肛門収縮に耐えかね、常盤川も限界となった。

「だ、出すぞ……尻の奥で受け止めるんだ」
「やっ、やあっ……そんな……だめっ……!」

背筋に痺れが走り、腰が重くなる。射精の疼きを堪えつつ、男は激しくすみれの尻を抉った。
すみれのアヌスがきつく窄まり、背中が仰け反って大きく喘ぐ。
常盤川は腕を前に伸ばしてすみれの乳房をぎゅっと掴み、熱く柔らかい女体を強く抱きしめながら欲望を放出させた。

「くうっ……、出る!」
「だっ、だめええええっっ……!」

びゅるるっと勢いよく放たれた熱い粘液が腸管に浴びせられた瞬間、すみれは上に乗った男を弾き飛ばすほどに大きく仰け反った。
常盤川はすみれの尻を抱き込み、腰をめり込ませて出来るだけ深いところで射精している。
アヌスの収縮に合わせるように射精の発作が起こり、びゅるっ、どびゅっと何度も尻の奥を精液で穢す。
すみれは顎を反らし、震える声で呻いた。

「あうう、出てる……そんな……お尻の中で出すなんて……あ、熱い……」

男は終わるまですみれの尻を離さず、射精が済むまで堅く抱きしめていた。

「……」

すみれはもう何も言えず、ただひくひくと身体を痙攣させていた。
また夫以外の男にいかされてしまった。
しかも媚肉ではなく、肛門でだ。
自分の身体が信じられなかった。
こんなにも性的に敏感で、しかも貪欲だとは思いもしなかったのだ。
夫では得られなかった快楽を他の男に教え込まれ、覚えさせられていく。
本当に「調教」されている気がした。

「あ……」

肛門に違和感を覚えたすみれが恐る恐る振り返った。
射精を終えると同時に萎えていた男根が、再び硬度と太さを取り戻しつつあったのだ。
犯された後も男と繋がりっぱなしだったことに気づき、すみれは頬を赤らめて抗議した。

「も、もう抜いて……早く……」
「もうかい? でも、あんたの尻の穴は俺を咥え込んで離してくれないぜ。お陰での俺のもまた大きくなっちまった」

男はすみれの胸を軽く揉みながら嘯いた。
すみれは男の指摘で羞恥を刺激されつつ、身を捩ろうとする。

「だ、だったら……ちゃんと前で……」

そうしなければ、今日こいつに抱かれた意味がないのだ。
こんな男とは二度とイヤだが、機会を逃すわけにはいかない。
これで終わってしまえば、今日の屈辱がすべて無駄になる。
男はすみれの乳首をきゅっと抓って軽く悲鳴を上げさせつつ、意地悪そうに言った。

「どうしようかな。俺はこっちが好きなんでね」
「何を言ってるの!? それじゃ意味が……」
「意味なんて、どうでもいいさ。じゃあ、もう一回尻を掘ってやろう」
「ちょっ……! ま、待ちなさい! 前でしないのなら、わたくしはもう……ああ、いやあ!」

悲鳴を上げて前へずり逃げようとするすみれの腰が、常盤川によって抱え込まれる。
その間にも、すみれの腸管を押し広げるように肉棒が硬く膨らみ、蠢いていく。
たちまち肛門をいっぱいにまで拡げた男根が、グイッと腸管深くまで打ち込まれた。

「んっ、んあ! だ、だめ、動かないで、ひっ……ぐううっ……」
「さっきよりは楽になるだろうし、もっと気持ち良くなれるよ。ほらほら」
「ああっ……!」

排泄器官の奥深くまで肉の凶器を打ち込まれ、それが杭のようになって男とすみれを繋ぎ止めていた。
深くまでねじ込まれ、何度も抉られ、突き上げられているうちに、次第にすみれの悲鳴は呻くような喘ぎへと変化していった。
二度目も、嫌がるすみれを尻目に腸内で射精された。
すみれのアヌスへの執着は激しく、今は三度目の肛交が行われており、赤く爛れ始めているすみれのアヌスに太いペニスが突き刺さっていた。
もう手足の拘束は解かれ、男はすみれの太腿を両腕に抱えながら腰を送っている。

「お尻がいいんだろうが、ほら、どうだ?」
「んくっ……き、きついだけですわ……やあっ……んむっ……ああ……」
「ウソを言うなよ、声が甘くなってるぞ」
「そんな……ああ……ことない……んあっ、激しいっ……!」

肉棒が出入りを繰り返す肛門からは、引き抜かれるたびにねっとりとした腸液が掻き出されてくる。
すみれは掌に爪を食い込ませるほどに強く手を握りしめていたものの、苦痛ときつさが快楽へと変化し始める頃になると、もどかしそうに手を開いたり握ったりを繰り返すようになった。
常盤川がからかうように言う。

「ふふ、身体は正直だな。気持ち良くなってきたか? 我慢しないで良い声で喘いでくれよ」
「だ、誰がそんなっ……我慢なんか、あっ、し、してませんわ……いっ!」

抗いつつも、すみれは大きく戸惑っている。
いくら食いしばっても、唇の端から熱い喘ぎが洩れ出ていく。
男の長大なものでお尻の中をこねくり回され、それを快感として捉えている自分が怖くなる。
すみれは必死になって息み、尻からだけでなく身体の奥からこみ上げてくる快感を堪えようとしていた。

「ん、んん……あ、だめよ、そんな……あうう……」

耐えようがなくなったのか、強張っていた尻たぶが柔らかくなっていく。
抜き差しされるたびにすみれの肢体から力が失われ、代わりに痺れるような愉悦が押し込まれていった。

「んう……んううっ……いっ……あ……お、お尻……はああっ……」

深くまで抉られると、我慢できないとでも言うように顔を振りたくり、髪からふわっと甘い香りが漂う。
そのうち、男が突き込むと尻を突きだし、抜かれる時にはアヌスを窄めてその摩擦感を味わうようになっていった。
急速に肛門が締まっていく。
すみれはアヌスとその奥が火のように熱くなっているのを感じていた。

「お? いきそうなのかな、奥さん」
「やっ、そんな……あ、あ……いい……」

とうとうすみれはそう口にして、自分から尻を振り始めた。
その美貌は苦悶に歪んでいるが、薄く開けた口からは熱い喘ぎしか出て来なくなっている。
臀部はぶるぶると痙攣し続け、肛門は強くペニスを締めつけていた。
三度目にして、はっきりとアナルセックスでの快感を求め始めたすみれを見て、常盤川の興奮も極に近づいていく。

「い、いくのか、奥さん」
「ああっ、いいっ! お、お尻……いいっ……だ、だめ、もう……が、我慢できないっ……い、いく……いきそうですわっ……ひっ!」
「く、くそっ、色っぽい声でよがりやがって! ちくしょう、出るぞ!」
「うああっ……!」

すみれは喉が張り裂けそうな声を放ち、激しく肢体を震わせて達した。
その締めつけに耐えきれず、男も野獣のように吠えて腰を数度打ち込み、膨れあがった亀頭の先から激しく精液を噴出させた。
腸内へ射精が行われている間中、すみれは仰け反ったままの姿勢で固まって、全身を痙攣させていた。
射精が終わってペニスが引き抜かれると、まるで芯を失ったかのように腰が砕け、どさっとベッドに突っ伏してしまった。
男が感心したように呻いた。

「……奥さん、本当にすごいな。初めてとは思えなかったぜ」
「あ……はあ……はあ……はあ……」
「どれ、女になった尻の穴を見せてもらうか」
「あ、やあ……」

尻肉を大きく割られ、底に風が当たる。
外気だけでなく男の吐息まで感じてしまい、いやでも見られていることを意識させられる。
爛れた肛門がひくひくと蠢いているのが自分でもわかる。
少し染みるのは、そこから男の放った熱い精液が逆流してしまっているからだろう。
排泄器官を犯されて気をやってしまったこともだが、いかされたばかりのアヌスを観察される羞恥と屈辱感がたまらなかった。
男は充分に凝視してから、ぺしゃりとすみれの尻を叩いた。

「良い尻だったぜ、奥さん。どうだい、また今度会わないか? 覚えたばかりの尻の穴をもっと鍛えてやるぜ。何度もいかせてやるからさ」
「……」
「ふん、気取りやがって。チンポ抜かれればもう他人ってか?」

常盤川は鼻を鳴らして立ち上がり、下着を着け始めた。
絶頂後の気怠さを振り払いながら、すみれが言った。

「あ、待って……! 肝心なことがまだですわ!」
「肝心なこと?」
「……」

すみれの顔が羞恥で染まる。
言わずともわかっているはずなのに、このいやらしい男はすみれの口から言わせようとしているのだ。
男はわざとらしく言った。

「俺の方はもう満足したからな。これでおしまいで構わないぜ」
「……」
「何をして欲しいか言えよ。じゃないと俺は……」
「い、言います……!」

すみれは泣きたくなる。
今までの男たちも、決まってすみれに淫らなことを言わせたがっていた。
どうして男というのは女にそんなことを言わせようとするのか、さっぱりわからない。
だが男にしてみれば、すみれのような美人──しかも有名な女優であり、高貴な身分の女に恥ずかしいことを言わせてみたいという欲望は誰にでもある。
肉体だけでなく、精神までをも犯そうというわけだ。
すみれは悔しさを噛み殺しながら、消え入りそうな声で言った。

「し……してください……」
「もっと他の言い方があるだろ? オマンコに入れて、オマンコ犯してって言うんだよ」
「そんな……」
「じゃ止めるか」
「や、待って、言う! ああ……お……オマン、コ……に入れて……オマンコ、犯して……ああ、こんなこと言わせるなんて……ひどい……」
「いいだろう、そら」
「あっ……」

常盤川は、すみれの盛り上がった白い尻を見ながら何度かペニスをしごいて勃起させていく。
そうしてから。俯せで尻を向けていたすみれをひっくり返した。
見事な尻を見ながら犯したいのは山々だったが、そうすると膣よりも尻を貫きたくなってしまうからだ。
無造作にすみれの脚を開かせ、四度目とは思えぬほどに隆起した逸物を媚肉にあてがうと、一気に挿入した。

「ああっ……!」

亀頭がグロテスクなまでに膨れた男根が柔肉を分け入り、襞を巻き込むようにして潜り込んでいく。
その硬さと太さに、今さらながらすみれは目眩がする思いだ。

(ああ……、ど、どうしてこんなに……もう何回も出したのに、なんでこんなに大きいんですの……!?)

夫の一郎とのセックスでは、とても考えられなかった。
一郎もまだ若いから、連戦に及ぶことはあったものの、それでも二回が精々だった。
なのに、山城からあてがわれた男は、二回どころか三回、四回と平気ですみれを犯してくるのだ。
しかも、毎回多すぎるほどの精液を注ぎ込んでくる。
子作り目的だからということで絶倫な男を選んでいるのかも知れないが、それしても凄かった。
毎回毎回、すみれが失神するまで犯してくるのだ。

「あうんっ……!」

亀頭が子宮にまで達し、その衝撃ですみれが仰け反る。
男の陰毛が股間で擦れるほどに密着されていた。
男は根元まで刺し貫き、すみれの乳房を揉みながら言った。

「どうだ、深くまで入れてやったぜ、満足か?」
「ん……ああ……」

肉棒を挿入されると、待ちかねたように膣襞が蠢いた。
まるで肛門にばかり入っていたことに不満を抱くかのように絡みつき、粘り着いた。
散々アヌスを犯され、そこでいかされた絶頂感がまだ燻っており、すみれは早くも感じ始めている。
男は乳房を乱暴に握り、ぎゅうぎゅうと絞るように揉みしだきながら突き上げていった。

「あ、あ……あむ……んんっ……ああ、いい……」

あっという間にすみれは官能の呑み込まれていく。
太くたくましいものが胎内を抉り、子宮を小突き、へばりつく襞を絡め取る。
肛門を穢された時のような屈辱はなく、膨れあがる快楽は大きかった。
媚肉は勝手に快感を貪り、子宮や膣が引き攣るような収縮を始めている。

「……相変わらずいい顔でよがるんだな、奥さん。今度は尻でやる時も最初からその表情を頼むぜ」
「やっ……いい……ああ、いいっ……あ、あ、も、もう……ああっ……」
「なんだ、もういくのか。いくら何でも早すぎるぜ」

常盤川はそう言って嗤うと、意地悪く腰を引きかける。
ペニスが膣から抜け出そうになると、すみれは恥も外聞もなく慌てて腰を揺すって叫んだ。

「あっ……、なんで……」
「欲しいのか、奥さん。好き者なんだな、え?」
「くっ……」
「いいぜ、その悔しそうな顔がいい。美人てのは得だな、どんなツラしても褒められるんだからな」
「余計なこと言わないでさっさと……」
「出して欲しきゃそう言いなよ」
「あ、あなたという人はどこまで……」

こんな男の子は孕みたくないという思いと、出来るだけ早く身籠もらなければという相反する気持ちがせめぎ合う。
こんな惨めな気持ちを二度と味わわないで済むためにも、すみれは嫌悪感を押し潰し、死んだ気になって常盤川を受け入れる。

「……だ、出して……中に出してください……」

常盤川は心の中で快哉を叫んでいる。
あの神崎すみれに中出しをねだらせたのだ。
男として、これ以上の達成感はないだろう。
おまけにこの女は人妻なのだ。
満足げに頷くと、男は腰をうねらせた。

ずぶりと奥まで突き通され、すみれの身体がガクンと跳ねる。
今度は本腰でいかせようというのか、常盤川の腰がダイナミックに動き出す。
もっともこの男の興味はアヌスが中心らしいから、さっさと終わらせようとしているのかも知れない。
それでも硬い心棒の入った肉筒の威力は絶大で、すみれは胎内をひっかき回され、襞を削られて、官能がググッと高まっていく。

今にもいきそうだ。
今、射精してもらえれば絶頂と合わせられる。
そうすれば男子が誕生する可能性が高まるのだ。
すみれは喘ぎつつ男に告げた。

「あっ、ああっ……い、いきそうですっ……あ、あなたもいって……だ、出して……出来るだけ奥でっ……ああっ!」

すみれの背中がたわみ、そして弓なりになる。
せり上げた胸に男の指が食い込み、激しく乳房を揉み込んでいた。
乳房と媚肉を同時に責められ、肉棒を咥え込んだ腰が強張り、尻肉が硬く引き攣っていく。

「んんんっ……ああっ、いくっ……ひっ、ひっ……いっ、いくううっ……!」

一声そう叫ぶと、すみれは全身を激しくわななかせて媚肉を強く収縮させた。
常盤川はすみれが気をやったのを確認すると、ガスガスと子宮口を突き上げて亀頭を刺激し、その快感で一気に射精してみせる。

「ひぃっ……!」

激しく子宮を小突かれ、その直後に子宮口へ熱い精液を浴びせられ、すみれはぶるるっと痙攣してまたしても絶頂した。
余韻でガクガク震える身体をしっかりと抱きしめられ、射精されながら腰を打ち込まれている。

「どうだ奥さん。たっぷり出してやったぜ、満足かい?」
「んんっ……で、出てるわ、たくさん……熱いのが子宮に来てる……ああ……ま、まだ出てる……あうう……」

子宮口で男の精液の濃さと量を実感し、その快楽を存分に味わったすみれは、まだ射精の最中だというのに、すぅっと意識が遠くなっていった。



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