すみれは本心から心配している。
本当にこのままこんな爛れた行為を続けるべきなのだろうか。

確かに子は欲しい。
すみれと一郎はさほど焦ってはいないが、そうしないと親族が納得しない。
その結果、一郎が居づらくなり、最悪の場合、離縁を強制される可能性もあるのだ。
だからこそ、恥を忍んでこんなことをしている。

最初は、あくまで子種を貰うだけ、そのために男に抱かれる。
そう思っていた。
しかし、最初の男のテクニックに動揺し、以後の男どもの倒錯的なセックスに翻弄されてしまっている。
石のように冷たく、感じないよう努めようとしていたのに、感じることこそ男児を身籠もるコツだと言われてしまい、それも封じられている。

それでも夫以外の男に抱かれて感じてしまうことを恥じ、出来るだけ我慢はしていた。
しかし、一年に及ぶ一郎との結婚生活に於いて、すみれ自身も性に対する興味が湧いてきた矢先だったのだ。
彼女の性格もあって、むしろ積極的に愉しむようにすらなっていた。
そんな時に降って湧いたのがこの話であり、すみれはその熟れかけた女体を男どもに捧げることになったのである。
硬い蕾だったすみれの性は、夫によって徐々に柔らかくなり、そして百戦錬磨の男たちによって開花させられていった。
今では、この行為に対してかなりはっきりとした快楽を感じ、ほぼ確実に気をやるようにすらなっていた。

どの男たちも夫よりも上だった。
無論「そのため」にやってくる連中なのだから、長けているのは当然だ。
しかし、このまま行ったら、この行為に溺れてしまうのではないかという不安は、すみれの中で膨らんでいく。
今は渋々だが、そのうち快感を求めて自ら身体を開くようにすらなるのかも知れない。
すみれはそれが怖かった。
早く、出来るだけ早くこの関係を終わらせねばならない。
何とか早く懐妊したかった。

こうして山城の紹介による多数の男たちとの関係を続け、早一ヶ月が過ぎていた。
かれこれ、今回で八人目の男になる。
違う男に抱かれるたび、一郎に対する申し訳なさと背徳を感じていたが、それとは別に暗く妖しい得体の知れぬ被虐感も醸し出していた。
その気持ちと肉体的快楽が、少しずつ夫の存在を遠ざけていくような気がする。
それでもすみれはその身体を男に差し出さねばならないのだった。

すみれは決意していた。
もう、これっきりにしよう。
これ以上不貞は働けないし、平静を保てる自信もなくなっていた。
取り敢えず、しばらく休むのだ。
その間、もちろん一郎とはセックスを続ける。
それで懐妊すればいちばん良いが、そうでなくとも一ヶ月か二ヶ月くらい、他の男との交渉は中止する。
だから今日が最後だ。
相手がどんな男であっても我慢しよう。
運良く身籠もればそれで良し、そうでなくとも中断だ。

すみれは呼び出されたホテルに赴き、指定された部屋で男を待っていた。
以前ほどの緊張感はなかった。
今日でおしまいだと思っているからだろう。
シャワーを浴び、ガウンを身に着け、アイマスクをしたところで男が入室してきた。
まるで測ったかのような正確さである。
男はずかずかと部屋へ入り、おもむろに上着を脱いでハンガーに掛ける。
挨拶もしない。
すみれが呆気にとられていると、下着一枚になったところでようやく目の前にやってきた。

「やあ」

人を食ったような挨拶に、すみれは口を開けたままで男を見つめた。

見たところ、かなり若そうだ。
すみれ自身、まだ21歳なのだが、もしかすると彼は10代かも知れない。
髪型は一郎とよく似ていて、裾を刈り上げた短髪である。
上に伸ばしているが、髪が硬くそのままツンツンと立っていた。
中肉中背だが、どちらかと言えば痩身だろう。
筋肉質というほどたくましくはない。
この男もどこかの貴族や華族、士族といった身分なのだろうから、あまり鍛えた印象はない。
ただ足は長く、そういう意味でスタイルは良かった。
顔つきも悪くなく、切れ長の目元がすっきりと通っており、そこそこモテそうではある。
なぜかアイマスクは装着していなかった。
男はにこりと笑って言った。

「僕はもう汗は流してきました。さっそく取りかかりましょうか」
「あ、あなた……マスクは……?」
「え? ああ、僕は要りません。出来ればあなたにも着けないで欲しいけど……」
「それは困ります、わたくしは……」

この男は、自分に正体を知られることを恐れていないのだろうか。
確かに、女性であるすみれと違って、男の側は無頓着なのかも知れない。
既婚である神崎財閥の一人娘と関係を持ったと知れれば、社交界からも後ろ指を指され、陰口を叩かれるのは必至だ。
それはすみれも同じであり、女であり結婚までしている分、彼女の方が影響は大きいだろう。
それに、世間というより相手の男に身分や正体がバレるのを恐れているのだ。
夫がいるのにも関わらず外で男を漁色しているなどと評判が立てば、すみれ本人のプライドはもちろん、神崎家としても計り知れないダメージを受けかねないからだ。
男はあっさりと受け入れ、頷いた。

「そうですか、それなら仕方ない。では始めましょう」
「……。え……?」

すみれは少し驚いて身を引いた。
男はサッと全裸となり、己の下半身をすみれに突きつけてきたのだ。

「ちょ、ちょっと……」
「なんです? まさか、したことがないわけではないでしょう」
「そ、それは……」

男はペニスをすみれの顔の前に持っていった。
子種を貰うだけの行為にムードなど期待はしていないが、それにしても直接的だ。
若い男は、まるで自慢でもするかのように、まだ半分萎えている男根を持ち、すみれの顔に近づけている。

「お、大きい……」

今まで抱かれた男たちのものの、かなりのサイズではあった。
だからこそすみれも、男たちの巧みな性技に加え、その大きな肉棒にも狂わされていたのだ。
まるで山城が、わざと大きなペニスを持ったものを押しつけてきたとしか思えない。
それとも、その組織に属する条件に大きな男根を持った者という括りでもあるのかも知れなかった。

この男のものも、夫のものよりもだいぶ大きかった。
萎えていてこれである。
勃起したらさらに大きく太くなるのだ。
そう思うと、すみれは脅えとともに淫靡な期待すら抱いてしまう。
男は満足そうに嘯いた。

「ん? 大きいですか? あなたのご主人のは短小なんですかね」
「……」
「おっと、これは失敬。それより、早くやりましょうよ」

若いからなのか、今までの男たちよりも性急というか、滾っている気がする。
すみれとしても、この恥辱の時間はさっさと終わった方が良いのだが、この男が一回で済むようには思えなかった。
男は少し焦れたように言った。

「ほら、すみ……あ、いや、奥さん。早く!」
「……」

仕方なくすみれはそれを手に取り、口に咥えた。
もとより、一郎にはしてきているし、これまでの男たちも大抵要求したから、あまり抵抗はなかった。
それでも、その醜塊なものを目の前にして一瞬表情を歪め、覚悟したように舌を伸ばす。
恐る恐る出した舌先でちろちろと舐めていくと、男は少し呻いて膨らんだ男根をすみれの咥内に押し込んだ。

「んむうっ……!」

いきなりの暴虐に驚いたようだったが、すみれは素直にそれを受け入れる。
屈辱の時間は短ければ短い方が良い。
そう思ったすみれは、仕込まれた口技を思い出しながら、亀頭を中心に肉棒をねっとりと責めていった。

「ん、んむ……むううっ……じゅっ……」

細い皺のような裏筋に舌を這わせ、カリ首を唇で強く挟む。
そのまま顔を前後に揺すっていくと、ヘアバンドで止めた髪がふさふさと揺れ動いた。
まだまだ拙い性技ではあるが、高貴な神崎すみれが男根を奉仕していると思うと、男の方が勝手に興奮してくれる。
男はすみれの髪に指を突っ込んで頭を支えると、そのまま腰を静かに使ってきた。

「ん、んん、んうっ……んぐ……うんっ、うんっ……んんっ!」

すみれの細い指が肉竿を支え、舌で唾液を塗り込みながら唇でしごく。
早くも漏れ出したカウパーを舌先で掬い取り、それを亀頭に塗っていくように愛撫した。
すると、ますます男根は興奮して膨張し、見る見るうちにすみれの小さな咥内を圧倒するかのように大きく、硬くなっていった。
若い男は快感に表情を歪め、呻いた。

「くっ……、う、うまいじゃないか、奥さん。その調子だよ」
「んむっ……ううん、うん、うんっ……んちゅ……ふむう……」

しつこいほどに裏筋を舌で刺激しつつ、硬く尖らせた舌先で尿道口を抉るようにほじくる。
鋭い快感が湧き、男は呻いてすみれの頭を強く押さえた。
すみれはその手を振りほどくようにして顔を引き、そしてまた深くまでペニスを呑み込んでいく。
男どもの仕込まれていくうちに、いつしかペニスを──男を追い込んでいくことに嗜虐的な快楽を得るようになっていたのだ。
唇を窄め、わざと音をさせながら肉棒をしごき、唾液を塗りたくっていく。
たまらず男はすみれの頭を抱えるようにして、強く腰をストロークさせていった。
顔を強引に前後させられ、喉奥にまで亀頭で責められて、すみれは目の端に涙を滲ませつつ愛撫を続ける。

「んん、んうっ……むうっ……んむ、ぐうっ……うぐっ!」

無理矢理に激しいストロークをさせられ、まるで口を犯されている気分になる。
もはやフェラチオではなくイラマチオだ。
そのせいか、すみれの頬がぼおっと薄く染まってきていて、徐々に被虐の快楽を感じ始めているようだ。

硬く膨れあがった亀頭が遠慮なくすみれの咽喉を突いてくる。
それを押しとどめようとするように、すみれの舌が亀頭を押さえ、宥めるようにサオを舐めしゃぶった。
その陶酔したような美貌を見ていると、男に抑えが利かなくなる。
早漏とかいう問題ではなく、すみれのような美女のそんな顔を見ていれば、男なら誰だってそうなるに違いなかった。

すみれは、男の仕草や口を貫いてくるピストンの勢いを見て、もう限界に近いということを覚った。
もう充分に大きく、硬い。
いつでも射精できるに違いない。
あとはこれを膣に入れ、子宮目がけて精液を出してもらうだけだ。

(すごい……こ、こんなカチカチになって……こんなの入れられたら、わたくし……)

そう思ったすみれは両手で男の腰を押し、口からペニスを抜こうと試みた。
しかし男の方は興奮しきっており、このまま引き抜くなど考えもしないようだった。
そうしているうちにも亀頭はますます膨れあがり、サオも太く、そして硬度を増している。
ぼやぼやしていたら、このまま射精されてしまう。
すみれは激しく顔を振り、何とか男を押しやろうと力を込める。
しかし男は意に介せず、むしろすみれの後頭部を押さえ込んで自分の腰に押しつけてきた。

(こ、この人っ……このまま出す気なの!?)

すみれは慌てて顔を引こうとしたが、もう間に合わなかった。
亀頭を覆う舌を弾き飛ばすように、精液が尿道口から噴き上がってきた。
男の手がすみれの後頭部を強く押し、自分の腰へめり込むほどに押しつけている。

「ぐううっ!?」

喉の奥へ勢いよく叩きつけられてくる粘液の感触に、すみれは目を剥いて呻いた。
喉の深いところで精液がぶつかり、咥内へ弾け飛んだ。
頬裏や上顎、そして舌の裏側にまで男の体液がなだれ込んでくる。

「ん、んぐっ……んむうっ!」

すみれは拳で男の腰を殴りつけ、腹を叩いた。
それでも男は決してすみれの顔を離さず、そのまま射精を続けていた。
口に入りきれない精液が唇の端からだらだらと零れ落ちている。
呼吸困難となったすみれは仕方なく、喉へ流れ込んでくる精液をそのまま嚥下した。

「んっ……んく……んん……ごく……んんん……」

噎せ返りそうになるものの、それでも男は解放してくれない。
死ぬ気になっていくら呑み込んでも、男の精液は後から後から注ぎ込まれてきた。
射精の快楽のためか、男の力が少し緩くなった隙を窺い、すみれは思い切り突き飛ばしてペニスを吐き出した。

「ぷあっ……! ぐっ……ごほっ……けほけほっ……」

思わずすみれは口を押さえ、喉に手を当てて座り込んだ。
口を手で覆っているものの、飲みきれない精液が溢れ出してくる。
そんなものは飲みたくなかったが、吐き出すところを見られる恥辱にも耐えられない。
苦悶の表情を浮かべながら、口に残った分だけでも飲み干そうとしたが、あまりに濃厚で飲みづらく咳き込んでしまい、とうとう逆流させた。

「ぐほっ! ……くっ……」
「ああ……、全部飲んでよ、せっかく出したのに」

男はそう言いながら、まだ射精を続けているペニスを掴んで、残りをすみれの顔や髪に引っかけている。
すみれは慌てて避けたものの、黒髪や白い頬にべっとりと精液を浴びてしまった。
表からも中からも、ムッとするような男臭さに苛まれながら、すみれはキッと男を睨みつけた。

「な、何するんですの!? こんな……、く、口に出すなんて……、あっ、汚いっ! 顔に掛けないで!」
「あれ、ご主人には出してもらってなかったの?」

男はいつの間にか敬語ではなくタメ口になっている。
すみれは怒りを露わにして叫んだ。

「あ、当たり前ですわっ! あの人はこんな酷いことはしません!」
「酷い? そうかなあ、愛する人のものなら飲めると思うけど……」
「わたくしはあなたを愛してなんかいませんわ! そ、それにこんな……こんなもの飲むものじゃありませんっ!」

その酷い味に、すみれは顔を顰めている。
生臭く、生温かい。
どろりとした気色悪い液体は猛烈な男性フェロモンを放っていた。
危うくすみれは、その男性ホルモンにやられてしまいそうになり、必死になってそれを振り払う。
まだ喉の粘膜や口の中に気持ち悪い粘液の残滓がある。
顔にへばりついた精液も半ば固体化していて、頬についたものはだらりと垂れるのではなく、塊とぼろっと落ちていく感じだった。

苦しむすみれの美貌に触発されたのか、男のものは射精を終えたばかりなのに、またそそり立っていく。
そしてそれを再びすみれの口へ押し込んでしまった。

「ぐっ……!」

柔らかい唇を割り、頬を手で掴まれて口を開かされ、ペニスを挿入される。
男の肉棒はすみれの暖かい咥内粘膜の刺激を受け、むくむくと大きく硬くなっていった。

(ま、またこんなに……ああ、どんどん大きくなっていく……熱くて硬い……)

それまで吐き気すら感じるほどだった生臭い異臭は、徐々にすみれを汚染していく。
若い男の強烈な男性ホルモンが、すみれの「女」を刺激して止まない。
口から鼻腔をくぐり抜けていく精液の匂いはすみれの脳髄にまで到達し、くらくらしてくるのと同時に膣奥が熱いほどに熱を持ってくる。
男は何度か腰を使い、すみれの唇で肉棒をしごきあげてからそれを引き抜いた。
もう、ほとんど射精前と変わらぬほどに勃起したそれは、今にも男の腹にくっつきそうなほどに上へと曲がり、反り返っていた。
思わずすみれはそれを見つめ、息を飲んだ。

(す、すごい……もう、あんなになって……お、男の人ってみんなこうなの? でも、あの人はこんなじゃなかった……)

すみれの目が肉棒へ行っているのを見て、男は嗤った。

「なんだ、そんな目で僕のを見て。気に入ったかい?」
「ふ、ふざけないで! あ……、も、もう早く……」
「欲しいのかな? 良家の若妻にしては好き者なんだね、奥さん」
「ちっ、違いますわ! こんなこと、早く終わらせたいだけですっ」
「そうかい? ま、いいや。じゃ早速ご希望に添うことにしますか」
「あっ……、そ、そんないきなりっ……! あはあっ……!」

口腔性交だけなのに、すみれの媚肉はもう濡れている。
そこを目がけて男根がねじ込まれていく。
ずぶずぶと肉棒を埋め込まれていく感触ですみれは大きく仰け反り、足を突っ張らせて喘いだ。
わなわなと震えながら口をあうあうと喘がせ、突き抜けるような快楽を懸命に堪え忍んでいる。

「んっ……はああっ……ふ、深いわ……深いぃ……あ、そんな奥、だめですわ……ああ……」
「深い方が妊娠しやすいと思うよ。ほら、もっと奥まで入れてあげるね」
「あうっ、だめっ! はうう、すごい……あ、し、子宮に届いてる……んああっ」

荒い息を吐き、すみれは顔を振りたくって快感に酔い痴れている。
胎内奥深くまで貫かれていく感触は、男には決して味わうことの出来ない快楽だ。
深々とペニスを咥え込んだ膣はひくつき、中の粘膜はねっとりと絡みついていく。
まだ刺し貫かれただけで動いていないのに媚肉は愛液にまみれ、すみれは早くもいきそうになっている。
ひくひくと収縮してくる膣圧は、責める男に心地よい快楽を与えてくる。

「お、もうこんな締めつけてるよ。そんなのにいいの? もしかして、もういきそう?」
「しっ、知らない……余計なこと、ああっ、言わないで、んんっ、は、早く終わらせ……あうっ」
「口の減らない奥さんだな。ま、いいや。それじゃ本格的に……」
「あ、あっ……待って、だめ、動いたらっ……今、動いたらわたくし……あああっ!」

男はすみれの腰を掴んで持ち上げ、座った膝の上に乗せて腰を突き上げて来た。
その衝撃に、すみれはひとたまりもなかった。

「だ、だめえっ……! く、来るっ、来ちゃうっ……ああっ!」

すみれが達してしまうと、膣もそれに比例して激しく収縮し、男のペニスから精を絞ろうとしてくる。
子宮まで届いた肉竿全体が強く締めつけられ、男も危うく出してしまうところだった。
男の精力からすれば、二、三度出したところでどうってことはない。
だが男は、この生意気な女を徹底的に責め上げ、何度もいかせて屈服させてから出したかった。

男は若いに似ず、なかなかのテクニシャンのようだった。
欲望のままにただ抉るだけでなく、深くまで入れた時は子宮口周辺を擦ったり、浅く引いた時には腰をうまく使ってお腹の内側をカリで刺激したりした。
その時のすみれの反応を確認しつつ、弱点を探っている。
すみれは、奥深く挿入されて子宮口を虐められた時と、お腹の裏側のざらついた箇所──Gスポット──を擦られると特に強く反応するようだった。

男はすみれの尻を膝に乗せ、深くまで入れて亀頭で奥を確かめる。
亀頭に触れた感じでは、早くも子宮口が緩んできているようだ。
男は亀頭をそこに押しつけたまま腰を回転させ、ぐりぐりと子宮口を擦ってやった。

「ああっ! そ、そこはだめですわっ……ひっ、ひっ……うああっ!!」

甲高くも悩ましい声を張り上げ、すみれは達した。
男の膝に乗せた尻をぶるぶると痙攣させ、長い脚を伸ばして何度も突っ張らせた。
ぐっ、ぐっと数度身体をわななかせると、荒い息を吐いてがくりと萎えた。
それでも肉棒を咥え込んだ膣はひくひくと収縮し、たっぷりと蜜を載せた襞もきゅうきゅうと絡んできている。
男は手を伸ばし、グッと力を入れて乳房を掴む。

「もういったね。綺麗な顔をしてるくせに、けっこう派手に気をやるんだなあ」
「くっ……、い、言わないで……あ、そ、それより……」

まだ出されていない。
見知らぬ男に女の生き恥を晒してしまったというのに、肝心の射精は終わっていないのだ。
それがなければ、何のために恥辱的な行為をしているのかわからなくなる。
絶頂の余韻に痺れながらも、すみれは抗議するように言った。

「な、なんで……なんで出さないのよ……これじゃ意味ないわ……」
「焦ることないって。大丈夫、ちゃんと出してあげるから。ふふ、奥さんのオマンコ深くにたっぷりとね」
「……」
「でもさ、せっかくだからお互いに愉しもうよ。気持ち良くなってさ」
「た、愉しんでなんかいませんわ……ああ、早くして、終わらせて……」
「……情緒がないな。ま、いいや」

男は少し不満そうだったが、すぐに腰を送ってすみれの中を抉った。
すみれはすぐに反応し、軽く仰け反る。
すみれが朦朧となるまでいかせてからゆっくりと出すつもりだったが、考えを改めた。

そんなに射精されたいなら何度でもしてやればいい。
すみれが泣いて許しを乞うても容赦せず、何度も何度も気をやらせて溢れかえるほど射精し、失神するまで犯してやる。
それを想像すると男の肉棒も興奮したのか、さらにぐぐっと硬く反り返った。

太くなったものが、すみれの狭い膣内を圧迫している。
ぴっちりと隙間なく埋まっているはずなのに、内部の愛液が豊潤なせいか動きにくいということもない。
襞がざわつき、ペニスを覆う。
膣口が根元を絞り、サオ全体を襞が包み込み、男の官能を刺激して止まない。
男は息を飲んだ。

(なんだこれ……入れてるだけなのにすげえな、この女……。こんなマンコ初めてだぜ……)

夫以外の太い肉棒で何人もの男たちに犯され、貫かれ、気をやらされているうちに、すみれのそこも少しずつ変化していた。
膣口は小さく、中も狭いのは変わらないのだが、幾分余裕が出来てきているのだ。
太いものを押し込まれ、今にも裂けそうなほどの苦痛はなくなっている。
きついことはきついが我慢できるレベルであり、「気持ち良い」きつさであった。
男にとってもそれは同じで、ただ窮屈できついだけではなく、中は程よい狭さで熱く柔らかく、男根を包み込んでくる感じがたまらなかった。

すみれの方も、心はともかく肉体の方はどっぷりと快楽に浸ってしまっており、自ら腰を使い出している。
男が激しく揉み込む乳房は、その指から逃げるように形を変え、硬く盛り上がった乳首が乱舞している。
膣の収縮はなお激しくなり、男はたまらなくなってきた。
強く柔らかく締めつけられるペニスの快感に加え、悶え喘ぐすみれの美貌を目の当たりにしては、とても耐えられそうにない。
思わず突き上げを緩めると、すみれの方はもどかしそうに喘ぎを上げつつ、身を捩るようにして続きをせがんでくる。
言葉にはしないものの、男の腕をしっかりと掴み、脚を伸ばして腰へ絡めてきた。

「んっ! はうっ……ああ……くううっ……!」

すみれはこんな男に犯され、激しい快感を得てしまっている事を強く恥じているのだが、やがてその恥辱心も性の官能に呑み込まれ、薄まっていってしまう。
そうだ、感じた方が男児が産まれる確率が上がるのだ、感じていいのだ。
すみれは世継ぎを作りたい一心で、背徳感や屈辱感を押しのけ、夫以外の男によるセックスの快楽を受け入れていった。

男女の結合部はぐちゅぐちゅと淫らな音をさせ、激しく抜き差しが行われている。
すみれの腰が勝手に蠢き、貪欲に快感を貪っていく。
男が、短いながらも素早く強いピストンを打ち込むとたちまち昇り詰め、「んんっ!」と呻いてまた達した。
肢体をぐうっと反り返らせ、腰をびくびくと痙攣させている。
もちろん媚肉は激しく男を締めつけ、「なぜ出さないのか」と抗議するかのように収縮を続けていた。
男は歯を食いしばって射精を堪えつつ、表向きは余裕を持ってすみれの肌を撫で、揉んだ。

「くっ……、ど、どうだ、気持ち良いかい?」
「そ、んな、こと……あっ……んんっ、深いっ……」
「言うんだ、奥さん。いいんだろ?」
「くっ……」

すみれはもう逆らえず、何度も頷いた。
もう、この悦楽には抵抗出来そうにない。
恥を晒すまいと必死に堪えていても、腰の奥からこみ上げてくる蕩けそうな快楽に、身体だけでなく心までグスグズと溶解してしまいそうになる。
男の手が乳房を乱暴に掴んで揉み上げ、舌が首筋を這い、腋窩を舐め込んでくると、もうそれだけでいってしまいそうになるのだ。

「あ、あっ……熱い……あそこが熱い……いい……あうう……」
「そうそう、素直にならなきゃ。じゃ、ご褒美だ」
「あ、そんな激しくっ……!」

若者はすみれにそう嘯いたものの、何のことはない自分も我慢できなくなっていたのである。
すみれが気を失うまで犯してから出そうと思っていたものの、もう保ちそうもなかった。
男は抱え込んでいた腿を離して腰を持ち直し、ガスガスと音がしそうなほどに激しく責め立てていった。
それはすみれをいかせようというよりも、自分がいくための攻撃だった。

「ひっ、ひぃっ、だめっ! 激しすぎるっ……し、死ぬ……ああ、いく……だめえっ」

すみれは仰天したように目を剥き、ヘアバンドが飛びそうなほどに髪を振り乱しながら大きく叫んだ。
しかしそれでもしっかりと身体は反応し、男の腰に回した脚はしっかりと締めつけている。

「やあっ……はああっ、いくっ……い、いっちゃうっ……いやあっ」
「こ、この……たまらない声でよがるな、こいつ……くそっ、僕もいくぞ!」
「は、早くっ……もうだめ、保たないからっ……いいっ……!」

男心をどろどろに溶解させるようなよがり声を放ち、すみれの媚肉が盛んに男根を締めてくる。
さっきから突き上げている子宮はすっかり観念したようで、もう小さく口を開けていた。
男をそこを狙って、最深部まで打ち込み、限界まで突き込んでいく。

「いっ、いくっ……だめ、いくっ……早くしてっ、いくっ……うあああっ!!」
「おおっ……!」

今日、最大の締め付けがペニスを襲い、強烈な収縮が発生した。
すみれの肢体が大きく痙攣し、頭の天辺から爪先まで何度も突っ張り、わなないている。
堪えきれない快感に襲われ、たまらず男はすみれの最奥に若い精液を放出した。

「んああっ……!」

びゅるるっと噴き出してくる射精の勢いを直に子宮口で感じ取り、すみれは何度も反り返った。
男も、腰の後ろと股間に強烈な快感を感じ、足の裏まで痺れるような射精感に酔い痴れた。
濃厚な塊が尿道を走り抜け、亀頭が痛いほどの勢いで射精されていくのがわかる。
射精を胎内に受けるたびに、すみれの白い裸身が跳ね、わななき、仰け反っていた。

「出てるっ……ああ……お腹の奥に……い、いい……」

射精するたびに男はその快感に腰を震わせたが、同じようにすみれも精液を注がれるたびにビクンビクンと痙攣し続けていた。
中出しされる快感──胎内、それも子宮近くで射精される喜悦を女体が覚え込んでしまったようだった。

男はしばらくの間すみれを抱きしめ、腰を振っていたが、射精を終えるとようやく肉棒を引き抜いた。
すみれの方も、抜かれる瞬間にまたぶるっと震えたものの、男の手が離れるとがっくりと力を失った。
綺麗な額に汗が浮き、半開きになった口からは甘く香しい匂いが漂う。
思わず男はすみれの唇を奪い、力強く口を吸った。

「……」

すみれは力なく口を吸わせ、男の好きにさせていた。
他の男から子種を受けることを決意した時、キスだけは拒もうと思っていた。
なのに、これで何度目のキスになるのだろう。
一郎と交わす、優しく甘いキスとはまるで違う。
最初の男はともかく、他の連中は読む某剥き出しにして、まるですみれを口から犯すようにその唇を貪るのだ。
もうすみれも、そうした乱暴なキスに馴染んでしまい、むしろ強引で荒々しいキスに対して妖しい魅力すら感じるようになってしまっている。

すみれの甘い舌をたっぷりと嬲り、満足したのか、男は顔を引いて笑顔を浮かべた。
両者の唇を唾液の糸が結んでおり、それを男が指で絡め取っている。
ひどく淫らな光景のはずだが、もうすみれはそんなことも気にしなくなっていた。
絶頂の余韻で鼓動に合わせて小さく弾んでいる乳房に手を這わせ、男は言った。

「聞きしに勝る素晴らしい身体だったよ……、すみれさん」
「え……?」

名を呼ばれたすみれは霞んだ目を開け、笑う男を見つめた。
若い男がまた呼びかけてくる。

「神崎すみれさん……だよね?」

すみれは唖然とし、直後に青ざめた。正体がバレている。
絶対に身元は明かさないというのが、山城との約束だったというのに。

「あ、あなた……何でそれを……」
「え? そりゃ知ってますよ、僕だけじゃなく、今まであなたを抱いた男たちはみんなね」

と、男はこともなげに言った。
そのままトンとベッドに腰掛け、すみれの顔を指差した。

「だから、あなたも……すみれさんも、そんなもの取ってよ、無意味だし」
「……」
「ああ、すいません。僕の身元も明かさないと不公平だね。僕は小倉英彦。ご存じありませんか? 小倉子爵家の三男」

そう言えば見覚えがある。
すみれが参加したパーティや舞踏会で、何度か見かけた記憶があるのだ。
手を取ってダンスをしたことはなかったと思うが、紹介されて軽く挨拶くらいはしたかも知れない。

「あなた……、いくつですの?」
「僕? あれ、いつだったか自己紹介した時に言わなかったっけ? もっともあれからもう一年以上経つのかな? 僕は今年で17歳」
「じゅ、17……?」

そんな若い男を送り込んでくるとは思いもしなかった。
するとすみれは、さっきまで4つも年下である10代の男にいいように犯され、挙げ句、気をやらされたということになる。
呆然としているすみれの顔に手を伸ばし、英彦はマスクを取り外した。

「何をしますの!?」
「もうやめようよ、こんなのつけるのは。野暮、野暮。もうお互いに相手のことは知ってるわけだし」
「だ、だからどうしてですの!? わたくしは、山城先生から身元は秘密で互いに知らないままで……」
「建前はそうなってるようだけどね。実際には、男の側には女性の身元は知らせてるよ」
「何ですって……?」
「本当だって。だから、すみれさんが抱かれた男たちもあなたのことを知っていて抱いていたってわけ」
「そんな……」

最初の男はわかる。
女性に対する気遣いもあったし、いわゆる紳士だった。
いかにも上流階級者らしい人物だったから、そうしたことは黙っているだろう。
しかし、以降の男たちはいずれも少々変わった性癖の持ち主──すみれに言わせれば「変態」──だったし、人格的にも褒められたようなタイプではなかったから、きっと本当に身元は知らないのだろうと信じていた。
だが、どうやら違っていたのだ。
あんな連中に正体を知られ、その上で淫らに犯されていたと思うと、すみれは羞恥や恥辱よりも怒りがこみ上げてきた。

「な、なんでそんなっ……わたくし、帰りますわ!」
「帰る? まだ早いでしょ? どっか行くの?」
「決まってますわ! 山城先生へ抗議するんです。そして、もうこんなことは……」
「そうはいかないんだな」
「あっ!」

いきなり少年は立ち上がり、出て行こうとしたすみれの腕を掴んだ。

「痛い……! 何するの!」

左腕を掴まれて持ち上げられ、その苦痛に悲鳴を上げながらも、カッとなったすみれは右手で英彦の頬を張ろうと振り上げた。
だが英彦はその反撃も予想していたらしく、すみれの右手も受け止めて、左手と一緒に手首を掴んで捻る。

「痛いっ……! 何するの、やめて!」
「何するのっていうのは僕のセリフだよ。せっかくあなたに精子を提供するために来たのに」
「も、もうけっこうですわ! あなたとなんか寝たくありません! い、痛い、手を離して!」
「……ふふん、なるほど。噂通りのじゃじゃ馬だ」
「あっ……」

そのまますみれはベッドに突き転がされた。
腰紐が解け、ガウンの前が大きく開く。
すみれは慌てて前を合わせたが、英彦は強引にガウンを剥ぎ取ってしまった。
いつものように下には何も着けておらず、全裸にされてしまう。
英彦は、すみれをベッドに押しつけたまま冷たい声で言った。

「さ、もう一度やろうか。念には念を入れて妊娠させないとね」
「誰が……! は、離して!」
「僕とはしないということ?」
「当たり前ですわ!」
「いいの? それで」

英彦はベッドに腰掛けてくると、馴れ馴れしく近寄ってくる。
すみれは反射的に身を引いた。

「山城先生から伺ったところよると、旦那さんに子種がないんでしょう?」
「……」
「でも、どうしても子供が欲しい。ジレンマですよね」
「……」
「まあ判りますよ、うちも江戸から続く九州の旧家なんでね。跡取りの問題は大きいもんね。すみれさんは神崎家の一人娘ですし、お子さんが出来なければ養子でも取るしかない。でも、出来るだけそれは避けたい、と」

そうなのだ。
だからこそ、こんな屈辱的な仕打ちに耐えてきたのである。

「だったら、するしかない。わかるよね?」
「や……、いやっ!」

英彦は有無を言わさずすみれを押し倒し、その肉棒を深々と膣奥へと挿入していった。

────────────────

あの後、すみれは英彦によって数度に渡り犯され、結局、四回も膣内射精された上で解放された。
すみれは這々の体で帰宅して、翌朝いちばんで山城の元へ怒鳴り込んだ。
当初、医師は呆気にとられていたものの、すみれの抗議を受けて渋々事実を認めた。
但し、名を知らせたのは確かだが、すみれの懐妊に協力しようとしたのは本当だと言い訳もした。
そして、この不祥事に関しては謝罪するが、妊娠するまで続けたらどうかと言ってきた。
もうすみれの名を出すことはせず、純粋に精子提供者を紹介すると言うのだ。
もちろん小倉英彦に関しては除名処分とし、もう二度とすみれとは会わせない。
そして今後は、さらに厳密にチェックをした上で男性を紹介する。
医師はそう言ってすみれを説得した。

しかし、もうすみれは医師を信用しなかった。
山城による「妊娠検査」も、今思えば怪しいものだ。あれはすみれを弄んでいただけではないのか、とすら思えてくる。
信頼関係を台無しにしたのは山城たちでであり、これ以上恥辱的な行為をするつもりはない。
すみれがはっきりとそう告げると、医師は名残惜しそうな表情を見せたが、仕方なく同意した。
すみれの気性の激しさは知っていたし、非はこちらにあるからどうしようもなかった。

以来、山城から呼び出しがかかることはなくなったものの、それはそれで不安でもあった。
山城の誘いを拒否するということは、取りも直さず「子供を作ることが出来ない」ということでもある。
夫の一郎とは同衾していたものの、彼との間に子が出来ないのは明白なのだ。

どうすればいいのか。
家と夫との板挟みとなり、苦悩しつつも神崎財閥の若令室として振る舞っていた。
今日のパーティもその一環だった。
とても出かける気分になどなれなかったが、今やすみれは神崎家の「顔」である。
帝撃でも世話になり、退団にあたっても尽力してくれた花小路伯爵主催のパーティということもあり、出ないわけにはいかなかった。
両親も列席するし、行きたくはなかったものの、その理由を説明することは出来ない。
少なくとも花小路には顔を見せ、挨拶くらいせねばなるまい。
憂鬱であった。

だが、そんなすみれの感情に関わらず、この夜も彼女はパーティの華だ。
引退したとはいえ帝国歌劇団の人気女優だったし、そうでなくとも彼女の美貌や気品は評判なのである。
さすがに独身時代とは違い、交際を申し込まれたり、見合いを勧められたりはしなくなったものの、結婚しても彼女の美貌は損なわれておらず、どこにいても目立ち、すみれがいるだけでパッと花が咲いたようになるのだ。
無理もなかった。
持って生まれた気高さや美しい容貌だけでなく、ファッション面でも目が離せない。
主賓ではないということで多少遠慮があり、華美なフラワーラインではなく、ごく一般的なAラインのドレスを着用している。
デザイン的には派手さはないが、それでもかなり露出は多い。
普段着からしてすみれは大胆に肩口を開いた着物を着ているが、それはこうした舞踏会でも変わらない。
今日のドレスも胸元はかなり大きく開き、ノースリーブでストラップもない。
層仕立てのドレス・スカートこそ長いが、肩口から腕にかけて肌を露出している。
その腕には、ドレスと同色のロング・グローブを嵌めていた。
シルクの生地に散りばめられたパールがどの角度から見てもきらきらと輝き、一層にエレガントさを強調している。
色彩は深みのある紫で、大人の成熟した女性をイメージさせていた。
高貴な色とされるこのカラーは、いかにもすみれに似合っている。

すみれを見る誰もがその美貌を褒め称え、ドレスのセンスの良さに感心した。
すみれはそれらを相手に挨拶を交わしたり、軽く受け答えをするだけで、ちらちらと大時計を見て時間を気にしていた。
パーティは3時間ほどでお開きになる。
早く終わって、家路に就くことだけを考えていた。
すみれの元へ流れてくる人の波がようやく途切れ、少しホッとしてシャンパンを口にした時だった。

「こんばんわ、すみれさん」

声を掛けてきた男がいた。タキシードを決めたその若者を見て、すみれが青ざめる。
小倉英彦だった。
すみれは周囲に覚られぬよう、形だけ微笑を浮かべて挨拶をした。

「……あら、こんばんわ。お父さまはいらしてるの?」
「いいえ、今日は僕だけです」
「そう」

すみれは出来るだけ素っ気なくそう言った。
充分に英彦を意識しているのだが、それを覚られるのは恥辱である。
おまえなんか何とも思っていない。
そういう素振りを見せたかった。

バックからゆったりとした音楽が流れてくる。
奥にいる楽団が生演奏を始めたらしい。
ブラームスの15番だ。
参加者たちは近くにいた者に微笑みかけ、会釈をして手に手を取り、ムードに乗せてステップを始めた。
男女は手を握って躍りながら、顔を近づけ、耳元で何事か囁き合い、微笑を浮かべている。

「……!」

英彦は、当然のようにすぐ側にいたすみれの手を取り、リズムに合わせてステップを踏んだ。
まだ若造ではあるが、さすがに場馴れしている。
すみれは、とてもダンスなどする気にはなれなかったが、雰囲気を壊すわけにもいかない。
仕方なく英彦の誘いに応じ、音楽と彼に合わせてワルツを踊った。

すみれは出来るだけ手を握らないようにはしているが、英彦の方はしっかりとすみれの華奢な手のひらを握ってくる。
顔が近づいてきたが、すみれは顔を背けるようにして嫌悪を示した。
しかし英彦は気にする様子もなく、すみれの耳元で小さく囁いた。

「……綺麗ですよ、すみれさん。そのドレスも本当に良くお似合いだ」
「……」
「ふふ、返事もしてくれないんですか。いいのかな、そんな態度で」
「ど、どういうことよ」
「あの夜のこと……、よーく憶えてるよ」
「……!」

英彦の言葉に、すみれの動きが止まった。
震える唇から小さく、そして早口で叫ぶ。

「あ、あなた……! そのことをっ……」
「いえいえ、言ってないよ。まだね」
「……まだ? あなた、何を言って……」
「でも」
「あっ」

英彦はすみれの手を取ると、頭上へ持ち上げるようにして腕を引き延ばした。

「すみれさんの態度によっては……、ふふっ、どうしようかなあ」
「あなたという人はっ……」
「声が大きいよ。ほら、こっちへ来て」
「何をしますの!?」

腕を引っ張られ、強引に壁際へと引き摺って行かれた。
躍りながら人の波を縫って行くものの、それでもあちこちでダンスしている人たちにぶつかり、その非難がましい目線を浴びながら、ふたりは部屋の隅に辿り着く。
焦ったすみれは周囲を気にしながら言った。

「ちょ、ちょっと……!」
「お話があるんだ、その小部屋に行こうよ」

英彦は顎をしゃくって廊下の外を指し示した。
着替え用の小さな部屋が、広大なパーティルームのすぐ近くに三つほどある。
いずれも空室の札が下がっていた。
英彦はすみれの腕を握ったまま、ちらっと後ろの様子を見てみたが、特に誰もこちらを気にしている様子はない。
真ん中の小部屋を無造作に開けると、英彦は突き転がすようにすみれを室内に押し込んだ。

「何をなさいますの!? 危ないじゃありませんか!」

蹌踉めいて倒れかけたすみれは、小さな鏡台に手を掛けて何とか身を支えた。
英彦はまたすみれの手を取り、自分の方へぐいと引き寄せる。

「お静かに、すみれさん。あんまり大声を出したら人が来ちゃうよ」
「そんなこと知りませんわ! こんなところに連れ込んで、どういう気なの!?」
「声が大きいってば。人が来たら困るでしょ?」
「わ、わたくしは別に……」
「そうかな? すみれさんが僕の言うことを聞かずに助けを呼びでもしたら、僕はあの夜のことを喋っちゃうよ」
「……っ!」
「それだけじゃない。僕だけじゃなく、すみれさんは他に何人もの男に抱かれて……」
「やめて……!」

すみれは英彦の手を振りほどき、激しく顔を振って両手で耳を押さえる。
今考えれば、思い出したくもない悪夢だった。
いかに子作りのためとはいえ、夫を裏切り、幾人もの男に身を任せたのだ。
たっぷりと膣内に射精され、人妻の聖域を穢された。
一郎に知られたら、どう謝っても許してもらえない気がした。
それどころか、両親にも「ふしだらな娘」だと思われてしまうのではないか。
すみれはこの世から消えてしまいたくなる。
英彦はすみれは自分の方に向かせてから、ゆっくりと言った。

「安心してよ、そう簡単には言ったりしないから」
「……」
「だけど、僕の言うことには従ってね。じゃないと……」
「条件は……」
「ん?」
「条件は何なの……。どうすれば……」

英彦はそれを聞いてにやっと嗤った。

「そう来なくちゃね。なに、難しいことじゃないよ。あの時のすみれさん、素敵だったよ。あれと同じことをしてくれればいいだけだよ」
「いやよ……!」

すみれは思いの外強く否定した。
もうあんなことはやらない。
そう決めたのだ。
子供に関しては、まず一郎に真相を告げて相談するしかない。
よく考えれば、なぜ最初からそうしなかったのか不思議だった。
一郎のプライドも考えての結論だったのだが、現状の方がよほど彼の矜恃を傷つけるものだろう。
だからこそ、このことは絶対に洩らせなかった。

「二度といや! わたくしは、もう誰にも……」
「僕にも?」
「あ、当たり前ですわ! 誰があなたなんかっ……」
「そうですか。じゃ、ここに誰か呼んで話を聞いてもらいますか。それともまた会場に戻って話しましょうか?」
「そんな……!」

顔から血の気が引くのがわかった。
脚ががくがくする。
足下の床が抜けて、身体が奈落に落ちていくような錯覚に陥った。

この子は脅迫しているのだ。
あのことを恐喝材料にして、またその身体を抱かせろと言っている。
すみれは剥き出しになった肩をわなわなと震わせながら言った。

「すべて告白する、という気ですの?」
「そうさ」
「そんなこと出来るはずありませんわ」
「へえ、何で?」

英彦は反論するすみれを面白そうに見ていた。
追い詰められたこの女が、どんな手立てで「窮鼠猫を噛む」を演じるつもりなのだろう。

「こんなことが表沙汰になったら……あ、あなただってタダでは済みませんことよ! いいえ、それだけじゃありませんわ、あなたの家だって……」
「そんなこと、どうでもいいよ」
「え……?」

想定外の返答に、すみれは呆気にとられた。
年下の少年は平然と言ってのける。

「家って、小倉家のこと? そんなのどうだっていいよ。言ったでしょ、僕は三男なんだよ。嫡男じゃない。わかる? 家を継ぐのは長男に決まってるし、その長兄に何かあったとしても次は次男だよ。とてもとても僕までお鉢は回ってこない」
「……」
「学校出たら、そうだな、どっか適当な家柄のお嬢さんと結婚させられるんだろうな。家から追い出されるわけ。それに反発して自分から家を出てっても、気にも止めないだろうよ。僕なんて、それだけのものなんだ。だから僕も小倉家がどうなろうと知ったこっちゃないよ」
「あ、あなた……」
「確かにね、僕が小倉家の後継者だったなら、今回のスキャンダルは命取りだよ。人妻と……それも神崎家の一人娘と通じた、なんてことがバレでもしたら大変だ」

実際の貴族だの華族だのといった連中は、裏ではドロドロした関係が絡まり合っている。
人妻と通じる、娘に手を出すなどというのは日常茶飯事である。
だが、あくまでそれは水面下のことであり、表沙汰にでもなれば大騒ぎだが表面化していないのだ。
もし今回の件で、自暴自棄になった英彦がこのことを暴露しても、困るのはすみれと神崎家、そして小倉家であり、英彦本人は痛痒を感じないのだ。

すみれは青ざめた顔を怒りに震わせていたが、やがてがっくりと肩を落とした。
やはり、あのことは大きな過ちだった。
相手がこうしてくるかも知れないことは、容易に想像できたはずなのだ。
英彦以外の男たちがきちんとルールを守り、一夜限りのことにしてくれていた。
だが、それはあくまで紳士協定のようなもので、遵守してくれるとは限らないらしい。
現に英彦は、こうしてすみれを脅迫しているのだ。
すみれは、自分の判断が取り返しのつかない事態を引き起こしていることを知り、震えが止まらなくなっていた。

「ああ……」

すみれは小さく呻いて、ふらっとよろめき、鏡台に手を突いた。
すかさず英彦はすみれの背中を押さえ、スカートを大きく捲り上げた。
「あっ!」と、すみれが驚くも気にせず、そのまま下着を膝まで引き下ろす。

「や、やめて……!」

必死に抗い、そう叫んだすみれだったが、英彦のペニスが割れ目にくっついてくると喉を鳴らして腰を引いた。
その腰を英彦が引き寄せ、強引に肉棒を押し込んでいく。

「い、いやっ! やめて、やめなさいっ!」
「声が大きいよ、すみれさん。ドアの鍵はしてないんだから、あんまり騒ぐと人が来るかもよ」
「っ……!」

途端にすみれの抵抗が弱まり、英彦はそのままグッと腰を沈め、ペニスを挿入した。
すみれは口を押さえて悲鳴を堪え、背を反らせた。

「んんっ!? だめっ、中に……入っちゃうっ……!」
「当然でしょ、入れるためにやってるんだから」
「だ、だからだめっ……あうんっ!」

熱くぬめる粘膜を押しのけ、四歳年下の少年の男性器がずずっと胎内に入っていく。
太いものにこじ開けられていく窮屈さと圧迫感に、すみれは肢体を仰け反らせる。

(や、やっぱり大きいっ……き、きつ、い……)

「んっ……んはっ……!」

英彦は根元まで押し込み、すみれを串刺しにしてやった。
なんだかんだ言っても、すみれの中はもう驚くほど熱く、そして潤っていた。
下腹部にすみれの柔らかい臀部が当たるまで押し込むと、すみれはぶるっと全身を痙攣させた。
全部入れてやった快感に満足し、英彦が言った。

「ほうら奥まで入った。いいでしょう、すみれさん。ほら、どうです、僕のは」
「や、やめ……んんっ……ぬ、抜きなさい、あっ、ふ、太いぃ……やっ、ふ、深すぎる……ああ……」

奥を突いてやると激しく反応するすみれを面白がり、英彦はわざと亀頭の先で子宮を擦ってやる。
そのたびにすみれはビクッ、ビクッと身体を震わせ、背筋を伸び上がらせている。
とうとう犯されたことに、すみれは悔しそうな顔をしながら罵った。

「あ、あなたはっ……あっ……なんてことするの……あうっ……」
「何って言われてもな。セックスじゃないですか、神崎すみれさんとセックスしてるんですって」
「ふ、ふざけな……うあっ!」

グンッと突き上げると、たまらずすみれは大きく喘ぐ。
そして自分の淫らな声に驚いたようにハッとして、慌てて口を押さえている。
その仕草が何とも言えず愛らしく、そして色っぽかったので、英彦はさらに腰を打ち込んでいった。

「や、めっ……あっ……くっ……」
「気持ち良いなら声出しいいよ。でも、後ろから犯すのっていいね。こないだは僕も焦ってたからね、バックからする余裕なんてなかったもんでさ。こうやると、いかにも「犯している」って感じがしてすごくいいよ。すみれさんもそうでしょ? 旦那以外の男によって強引に犯されてるって感じが気持ち良いでしょうに」
「バ、バカっ……わたくしはそんな、あっ……あなたみたいな、んんっ、へ、変態じゃありませ……ああっ!」
「変態とはご挨拶だな。その変態に犯されてよがってるのはどっちだよ」
「わたくしはよがってなんか……あっ……」
「喘ぎながら言っても説得力ないよ。ま、いいや。それなら、すみれさんが変態になるまで、僕が徹底的に仕込んであげるから」
「いっ、いいっ、そんなこといらないっ……やめっ……くあっ、う、動いちゃだめえっ!」
「動いちゃだめ? どうして? 感じちゃうから?」
「ちっ、違いますわっ……誰があなたなんかでっ……」
「ふうん。じゃ、これは?」
「ひあっ……!」

英彦は腰をすっと引いてペニスを引き抜く。
サオの回りにはべっとりと蜜がまぶされ、ぬらぬらと淫らに光っている。
カリ首が膣口に引っかかるところまで引き抜いてから、一気にずぶっと根元まで突き通した。

「くあっ……!」

子宮口を思い切り突かれた衝撃に、すみれは目を剥いて首を反らせ大きく喘ぐ。
すぐに両手で口を覆うものの、指の隙間から押さえきれぬ喘ぎ声が何度も洩れ出てしまう。
すみれは快楽を振り落とすかのように顔を振り、足腰を踏ん張ってうねる身体を押さえ込もうとする。
しかしそうすると、イヤでも括約筋が締まり、膣が締まる。
結果として、呑み込まされているペニスの長大さと硬さを思い知らされるのであった。

締めつけ、絡みついてくる襞を引き剥がすようにして、英彦は腰を引き、そしてまた深々と打ち込む。
ズン、ズンと大きなストロークで深く重く抉り込まれ、すみれは苦しげに息を吐き、悲鳴と喘ぎを噛み殺して身悶えた。

「んはっ……はうう……い、いや、もう……あっ……しないで、あっ……いっ……」
「おっ、締めつけてきたね、すみれさん。それにしてもすみれさんの中は最高ですよ。こんなにきつく収縮してくるのに、人妻らしい柔らかさもある。たまらないな」
「やっ……そんなこと、あっ、言わないで……くうっ」

言下に「感じている」ことを指摘されると、すみれはその美貌を一層に紅潮させ、堅く目を閉じて打ち震えた。
剥き出しになった肩口や背中には汗が浮き、香しい女臭を漂わせている。
声でなく、匂いでバレそうなほどに濃厚なフェロモンが噴き出されていた。

「んっ、あうう……い、いや……あああ……」

少年とは思えぬほどに大きく張ったカリが、引き抜かれるたびにゴリゴリと膣を擦り上げていくのがたまらない。
奥まで突き通され、子宮口を虐められるとイヤでも声が出た。
ぎゅっと閉じた目の脇の泣きぼくろが異様なほどの色香を放っている。
眉間の皺が深く刻まれ、よがり声を洩らすまいと唇を噛みしめていた。

「あ、あうっ、いや……お、奥に当たってる……だめ、そんな深いの……あっ……」
「そう言えばすみれさん、この前も奥を突いてあげると良い声で鳴いたよね。ほら、ここが好きなの?」
「んあ! ふ、深いって言ってるでしょっ……やめて奥は……くっ、当たるっ……」
「そんなにここが感じるんだ。旦那さんにも、ここを責めてもらってたの?」
「っ……!」

一郎のことを言われ、熱くうねって悶えていたすみれの動きがぴたりと止まる。
ビクリと反応し、太い男根に絡みついた膣がきゅっと強く締まった。
英彦はそれを無理に引き抜き、また深くまで抉った。

「ほら、言ってよ。旦那さんはここを虐めてきたのかな?」
「しっ、しないわよっ……あの人は……ああっ……あの人はそんな酷いことしな……ああっ!」
「酷い? そんなことないでしょ、そんなによがってるのにさ」
「んくっ、やめっ……ああっ……」

深く浅く突き込まれ、背中が浮き上がるほどに強く打ち込まれて、すみれの身体が大きく揺れ動く。
英彦はピストンを速め、強めていく。
ふたりの肉がぶち当たるたびに、男女の体液が弾け飛び、辺りを汚していった。
若く力強いペニスは、ゴリゴリと膣内を削り、愛液を絞り取っていく。
激しくなっていく攻撃に、すみれの性感はたまらず屈し、男の前に惨めな敗北を晒してしまう。

「んっ、ああっ……やあっ、いいっ……こ、こんな……こんなことっ……ふああっ……やあっ……いああっっ!!」

すみれが白く細い首筋を晒し、大きく喘いで達した。
辺りを憚ることのないよがり声に、すみれよりもむしろ英彦の方が肝を潰した。
だが、ホールではまだダンスが続いているようで、廊下や部屋の周辺に人の気配はほとんどない。

「ああ……」

絶頂の痙攣に震えながら、すみれの身体から力が抜けた。
髪が乱れて額にへばりつき、ドレスも汗で綺麗な白い肌にくっついてしまっている。
その瞬間の収縮で、思わず出してしまいそうになった英彦だが、ここは何とか欲望を堪えた。
まだ挿入したままのペニスで、いったばかりの人妻の中をかき回している。

「……なんだ、もういっちゃったの?」
「……」
「生意気な口を利いていても、やっぱり女だね。ふふ、それにしても色っぽいイキ顔だなあ」

英彦はそう言って、また腰を打ち込み、内部を抉り始める。
気をやった余韻からまだ脱していないすみれは、突如再開された責めに悲鳴を上げ、喘ぎ出した。

「やはっ……も、もう終わったのに何で……うあっ……」
「終わった? 終わってないよ、僕まだ出してないし」
「やあっ、はっ、激しっ……激し過ぎるわっ……いいっ……!」
「ふふふ、よがりながら文句言うなんてあなたらしいな。どうかな、旦那さんと比べて僕のは」
「くっ……あ、あの人のこと、あっ、言わないでよっ……こ、こんな時にぃっ……ああっ」
「こんな時? ああ、僕とセックスしてる時にあんな男のことなんか口にするなってここと?」
「あ、あんな男なんて言わないでっ……わたくしはあの人をっ……あ、愛して……ああっ……いやあっ、いいっ……」
「愛してる? ふん、その旦那以外に犯されてよがってるくせに、よくそんなこと言えるね。ほら、どうです、僕の方が大きいでしょ?」
「しっ、知らない……やっ、深い、深すぎますわっ……」
「ここまで届くの、旦那さんは? 言ってよ、ほらっ」
「そんな強く突いちゃだめっ……ああっ、い、言うわよ、言うからっ……」

すみれは立て続けに責められ、強制的に快楽を送り込まれて、為す術もなく燃え上がらされていく。
もう声を堪えようもなく、責める英彦の方が外を気にするほどによがり声を張り上げていた。
英彦の手が上半身へ伸び、ドレスの前をはだけさせてブラジャーをむしり取る。
ぽろんと零れ出た見事なバストは、律動されるごとにゆさゆさと蠱惑的に揺れ動いていた。
それを鷲掴みにして、たぷたぷと揉みしだかれ、すみれは顔を仰け反らせっぱなしで喘ぐ。
英彦の指が乳首を捉え、こねくり、弾き、乳房に埋め込むように愛撫してくる。
乳首をこねくられるたびに、勝手に身体が跳ねてしまう。
すみれは、歳に似合わぬ英彦のテクニックに動揺しつつも、それに巻き込まれていく。
こんな若いのに、もうこれだけ女の扱いに長けていることに、すみれは戦慄する。
このままどこまで調教されてしまうのかと思うと、目眩すら覚えた。

「お、お願いぃっ、もうっ……もう許してっ、あうっ……どうにかなっちゃいますわっ……」
「許して欲しけりゃ言いなよ。僕のと旦那さんの、どっちが大きい?」
「くっ……」

一郎を思い、そして自分のプライドも考えたすみれだったが、そんなものは絶頂直後の連続責めの前には何ほどのこともなかったようだ。
一瞬、唇を噛みしめたものの、屈したように口を開いた。

「あ、あなたよっ……あうっ、いいっ……あなたの方が、くううっ……お、大きいっ……」
「そうだよね。もっと言ってよ」
「お、おっきいのよっ……ふ、太くてか、硬いし……奥まで届くっ……」
「旦那さんのは? ここまで届いたのかな?」
「やあっ、そこ、いちばん奥だってばっ……」
「ほら、言ってよ。僕の方が大きい、僕の方が良いってさ」
「そうよ……ああっ、そ、そうよ! くっ……あ、あの人より……あの人よりあなたの方が気持ち良いわよっ……ぺ、ペニスも大きいし……あうっ、深いっ……そ、そこ……そこまで届かないのよ、あの人は……ああ……で、でも……でもあなたは、ああっ……お、奥まで届くのよっ……ひっ……ああ、そんな奥までっ……いいっ……あ、いきそう……いきそうなのよぉっ……!あの人のは……ああっ……あの人のは、と、届かなかったわっ……こ、こんな深いなんて……やあっ、いいっ」
「よしよし。じゃあ、どっちの方が良いのか言えるよね」
「あなたよっ……」

すみれはまた追い立てられ、もう正常な判断力がない。
倫理観も道徳心もなく、言ってはいけないことの区別もついていない。
ただ、肉体からこみ上げてくる快楽と、その表現だけは素直に口に出来た。

「あなたの方がいいっ……ず、ずっといいのよっ……な、なんでこんな……こんな男のが良いのかわからないっ……ああっ、い、いきそうっ!」

完全に屈服した言葉を吐き、すみれのリミッターが弾け飛ぶ。
心が挫かれ、肉欲の箍が外れた。
そんなすみれの悩ましい美貌と喘ぎ声に刺激され、英彦の方も出したくてたまらなくなってきている。
そうでなくとも、さっきいかせた時からすみれのそこはペニスを締めつけて離さないのだ。
英彦は唸りながら大きく腰を使い、しゃくり上げるようにグラインドを加えていく。
すみれの身体はそのたびに跳ね、爪先立ちになって身体を支えている。

「いきそうなんだね?」
「くっ……い、いきそうよっ……ああっ、もうっ……」

すみれの声は喘ぎ過ぎて掠れがちとなり、吐く息は一段と熱くなる。
英彦に突き込まれるだけでなく、その動きに合わせて自ら腰を振るまでになっていた。
もう耐えられないとばかりに激しく顔を振りたくり、ばさばさと黒髪を宙に舞わせている。
今にもヘアバンドが外れそうにである。
「あっ、あっ」と断末魔の喘ぎを上げつつ、全身をガクガクとわななかせていた。
なおも男のペニスが最奥を突き、子宮口をこじ開けんばかりに擦ってくると、もう絶頂は目の前に来ていた。

「もうっ……もうだめえっ……奥、だめよ、いくっ……くううっ……あっ、ホントにいきそうなのよっ……」

すみれは激しく突き込まれる英彦の腰に翻弄され、乳房を揺らし、ハイヒールをカタカタと鳴らしている。
太いものを埋め込まれた膣口からは、ひっきりなしに愛液が飛び散り、腿を濡らすだけでなく、床に小さな水たまりを作るまでになっていた。
責めに身悶え、よがり声を上げ続けるすみれの痴態に我慢できず、英彦のペニスも胎内でビクビクと痙攣している。
亀頭は一回り大きく膨れあがり、今にも炸裂しそうだ。

「くっ、す、すみれさんっ……僕ももうだめだ、出るっ」
「や、だめよ、そんな……中はだめっ……」
「何で今さら……子供が欲しくてやってることでしょうっ」
「そ、そうですけど……ああっ……あ、あなたの子なんかいや……あなたの子だけはいやよっ!」
「くそっ、僕をバカにするのかっ。僕の精子じゃ不足だって言うのかよっ」
「そ、そうじゃありませんわっ、でも、あなただけはいや! わたくしは……いいっ……ひぃっ」
「ちくしょうっ! 出してやる。そんなこと言うならいちばん奥にたっぷり出してやるぞ! 絶対にあなたを……神崎すみれを孕ませてやるっ!」
「いやああっ……」

さらに強く突き込み、懸命に腰を使ってくる英彦にすみれは恐怖した。
夫以外の子を身籠もることは覚悟していたものの、この少年だけは絶対にいやだった。

(こ、この子……本気で……本気でわたくしを妊娠させる気ですの!?)

すみれは祈念していた妊娠のことすら忘れ、必死になって抗った。

「だめっ……いやよ、それは許して! 中には出さないでぇっ……!」
「拒否されたら余計に興奮してきたよ。くそ、絶対に中に出す! 食らえ、すみれっ!」
「やっ、やだやだ、やめてぇっっ……!」

英彦はすみれの腰を抱き込み、引き寄せた。
下腹部が豊かな臀部に沈み込むことに腰を密着させ、すみれの最も深いところまで肉棒を到達させる。
そして、子宮を前へ押し上げるようにして亀頭を子宮口にくっつけ、そのままグリグリと思い切り擦りつけてやった。
その摩擦感による強烈な快感は、責める男と責められる女の双方を絶頂へと押し上げていった。

「んああああっ……ひっ、ひっ、それだめえっ……い、いく……いっくううううっっ……!」
「くそっ、出るっ……!」
「いやああああああああああああっ……!」

熱い塊のような精液が胎内で暴発した。
ホースの先を絞ったような勢いで射精された白濁液は、僅かに口を開けていた子宮口の中へと流れ込んでいく。
子宮がひしゃげるほどの強さで射精され、まともに精液を食らったすみれは大きく目を剥いて仰け反った。

「いっ、いくううっ……」

弓なりになり、背骨が折れるかと思うほどにすみれは反り返る。
英彦はその腰を押さえ、抱え込んだまま踏ん張るようにして、その膣に射精を続けた。
まるで生命力が直接流し込まれるかのような感じで、精嚢から尿道を通って精液が噴き上げられる。
その勢いで尿道口が痛くなるほどだった。
事前に中出しを拒絶されたことが、英彦により大きな興奮を呼んでいた。
嫌がる女を犯し、妊娠させるほど射精することが、これほどの快感だとは思わなかった。
しかも相手は、かの巨大財閥の神崎すみれなのだ。

「おっ……おおっ……まだ出るぞ……」

自分でも信じられないほどに射精が続き、すみれの胎内を穢していく。
射精され、精液を膣内に浴びせられるたび、すみれは全身をわななかせていた。

「いや……あうう……すご……まだ出てますわ……びゅくびゅく言ってる……ああ……本当に孕むぅ……」

断続的に胎内で弾けた精液は、胎内のあちこちにべったりとへばりついた。
射精が終わるまで腰を突かれ、ようやく出し終えて肉棒を引き抜かれると、すみれの身体から力が抜け、くたりと床に座り込んだ。
英彦は呆然としている。

「すげえ……なんて気持ち良いんだ……」

そう言いながら、気をやってぐったりと鏡台にもたれかかったすみれを見やった。
汗に濡れた身体も、快楽で紅潮した美貌も、そのすべてが男を魅了して止まない。
剥き出しになったすみれの白い背を撫でているうちに、英彦の肉棒がまたむくむくと大きく硬くなっていく。

「……もう一度……いや、出来るだけやりますよ」
「……」

英彦は、もう返事も出来ないすみれの身体を押し倒し、ひっくり返してその両脚を抱え込んだ。
愛液と、おのれの出した精液でどろどろになった媚肉を目にするとペニスはさらにそそり立ってしまう。
英彦は有無を言わさず、再びすみれを貫き、その媚肉を犯していった。
二度のつもりが止められず、三度、四度と休ませることなく犯し続けた。
五度目の射精に至っては、いくら若い英彦とはいえ、もうほとんど精液は出て来なかった。

「……」

時計を見ると、まだあれから一時間ほどしか経っていない。
短時間に、よくこれだけ犯し、出し続けたものだ。
ふと気づくと、締めておいたはずのドアが薄く開いている。
誰か覗いていたのかも知れない。
すみれがあれだけ大きな声で喘ぎよがれば、気づかれても仕方がない。

だが、英彦にはどうでもよかった。
もしその覗き野郎が、今回のことをネタにすみれを脅し、凌辱するならそれもいいと思った。
この際、徹底的に穢して屈服させるのだ。
これで夫以外に何人の男に抱かれたのか知らないが、そのうち数え切れないほどの男に犯させてやろうと思う。
そうして精神的に打ちのめして、夫ではなく英彦が主人だと調教するのだ。
英彦は、失神していたすみれを立ち上がらせて起こし、ぐちょぐちょに汚れたままの股間にそのままパンティを履かせ、外に連れ出した。
すみれはふらつきながらも意識を取り戻し、英彦にもたれかかったまま、ホールへと戻されていった。


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